(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-28
(45)【発行日】2023-01-12
(54)【発明の名称】磁界強度測定装置
(51)【国際特許分類】
G01R 33/02 20060101AFI20230104BHJP
B65B 57/00 20060101ALI20230104BHJP
B65B 57/02 20060101ALI20230104BHJP
【FI】
G01R33/02 B
B65B57/00 A
B65B57/02 F
(21)【出願番号】P 2019005413
(22)【出願日】2019-01-16
【審査請求日】2022-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006884
【氏名又は名称】株式会社ヤクルト本社
(73)【特許権者】
【識別番号】000110952
【氏名又は名称】ニッカ電測株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】小松 国男
(72)【発明者】
【氏名】菊地 誠
(72)【発明者】
【氏名】高岡 昌明
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-31024(JP,A)
【文献】特表平7-500183(JP,A)
【文献】特開2009-98036(JP,A)
【文献】特開2003-341605(JP,A)
【文献】特開平11-94922(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 33/02
B65B 57/00
B65B 57/02
B65B 7/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器のキャップに高周波磁界をかけながら誘導電流を発生させて接着剤を溶融させてシールする高周波誘導加熱装置の磁界強度を測定する磁界強度測定装置において、
前記容器の上面開口から内部への挿入又は取り外し可能とし、前記上面開口よりも拡径したツバを有するケーシングと、
前記キャップのシール時に発生する誘導電流を測定する検出コイルを前記ツバに設け、前記検出コイルの測定値を換算する振幅検波回路と、前記振幅検波回路の最大値を記憶するホールドアンプを有する検出部を有し、前記検出部を前記ケーシング内に備えたことを特徴とする磁界強度測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載された磁界強度測定装置であって、
前記振幅検波回路は、順電圧の小さいダイオードと、測定を行う交流振幅範囲のうち測定が必要な領域の検波直線性を得るための減衰器を用いたことを特徴とする磁界強度測定装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された磁界強度測定装置であって、
前記ホールドアンプは、理想ダイオード回路を用いたことを特徴とする磁界強度測定装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1に記載された磁界強度測定装置であって、
前記ケーシングは、前記ツバに前記検出コイルが収まる溝を設け、前記溝に収容した前記検出コイルを覆う絶縁部を設けたことを特徴とする磁界強度測定装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1に記載された磁界強度測定装置であって、
前記ケーシングは、前記ツバと前記ツバ側を袋穴状に形成した測定ヘッドと、前記測定ヘッドに接続して内部に前記検出部を有する円柱状の基板カバーからなり、
前記基板カバーは、前記測定ヘッドよりも硬質な部材を用い、下端側に前記検出部に接続するスイッチと、接続端子を取り付けたことを特徴とする磁界強度測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳酸菌飲料等の容器に電磁誘導電流(渦電流)の発生に伴う熱を利用して行う容器のキャップシール装置の磁界強度を測定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
乳酸菌飲料等を充填する容器の製造ラインには、容器に乳酸菌飲料等を充填した後にアルミキャップで封止するキャップシール用高周波誘導加熱装置を用いた封止工程がある。
この封止工程は、まず加熱溶融性の接着剤を容器との接着面に予め塗布したアルミキャップを容器の上面開口に被せる。そして上方から金属筒状体により高周波磁界をかけながら、容器の下方から押圧手段により上方に押圧する。このとき電磁誘導作用によりアルミキャップに渦電流を発生させて、渦電流とアルミキャップの固有抵抗の発熱作用によりアルミキャップの温度を上昇させて、接着剤を溶融させて封止している。搬送ライン上では、複数の容器を封止できるように金属筒状体と押圧手段の組み合わせを複数設けた構成が採用されている。
【0003】
このような複数の金属筒状体と押圧手段を有する封止装置では、容器に対して磁界の強度に違いが生じる場合がある。磁界強度の違いは渦電流の差、換言すると発熱の差となり、接着強度の不具合の原因となる。このため、搬送ラインでは定期的に高周波誘導加熱装置の磁界強度測定を行っている。
特許文献1に開示の測定装置は、実容器の外形に近似したダミーの容器様ケースの頂部に検出部を設け、シール強度設定のためのデータを測定している。
【0004】
しかしながら、この容器様ケースの材質は、全体をセラミック、合成樹脂等の電気絶縁体としたり、下部がアルミニウム合金製で上部がセラミック、合成樹脂等の電気絶縁体としたりするなど、紙、プラスチック素材の実容器と比べて硬い材質で形成されている。そうすると、搬送ラインにおいて容器を保持するホルダーや搬送ガイド等に接触し、変形が生じ易い。また容器様ケースは繰り返し使用することで変形して破損することがあり、搬送ライン上に異物が混入するおそれがある。また実容器ケースは実容器の形状に合わせて作成しているが、封止装置上で硬さの違いに起因する芯ズレが生じる可能性があり、実容器を用いた場合の再現性が得られず、正確な測定が行えず誤差が生じるおそれがあった。
このため、磁界強度測定の際には、再現性が高く、より実測値に近い実容器を用いる要請が高まっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、上記従来技術の問題点に鑑み、実容器を用いてキャップシール用高周波誘導加熱装置の磁界測定が行える磁界強度測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するための第1の手段として、容器のキャップに高周波磁界をかけながら誘導電流を発生させて接着剤を溶融させてシールする高周波誘導加熱装置の磁界強度を測定する磁界強度測定装置において、
前記容器の上面開口から内部への挿入又は取り外し可能とし、前記上面開口よりも拡径したツバを有するケーシングと、
前記キャップのシール時に発生する誘導電流を測定する検出コイルを前記ツバに設け、前記検出コイルの測定値を換算する振幅検波回路と、前記振幅検波回路の最大値を記憶するホールドアンプを有する検出部を有し、前記検出部を前記ケーシング内に備えたことを特徴とする磁界強度測定装置を提供することにある。
上記第1の手段によれば、高周波誘導加熱装置の磁界測定に実容器を適用できるため、再現性が高く、誤差が極めて少ない測定値が得られる。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するための第2の手段として、第1の手段において、前記振幅検波回路は、順電圧の小さいダイオードと、測定を行う交流振幅範囲のうち測定が必要な領域の検波直進性を得るための減衰器から構成されることを特徴とする磁界強度測定装置を提供することにある。
上記第2の手段によれば、特に交流から直流に変換する際に、検波出力と交流入力電圧の関係において直線性が向上し、交流入力電圧が小さいときでも、検波出力の測定値も直線的な比例関係で(直線変換領域を確保でき)容易に電圧換算できる。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するための第3の手段として、第1又は第2の手段において、前記ホールドアンプは、理想ダイオード回路を用いたことを特徴とする磁界強度測定装置を提供することにある。
上記第3の手段によれば、特に、直流電流から直流電圧に変換する際に、直線的な比例関係で電圧換算を容易にできる。またリーク電流が小さいためコンデンサの放電が起こりにくく、最大電圧値のホールド時間を長く、換言すると測定値を長く保持できる。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するための第4の手段として、第1ないし第3のいずれか1の手段において、前記ケーシングは、前記ツバに前記検出コイルが収まる溝を設け、前記溝に収容した前記検出コイルを覆う絶縁部を設けたことを特徴とする磁界強度測定装置を提供することにある。
上記第4の手段によれば、高周波誘導加熱装置の金属筒状体との密着性が高まって、再現性があり、測定誤差の少ない実測値が得られる。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するための第5の手段として、第1ないし第4のいずれか1の手段において、前記ケーシングは、前記ツバと前記ツバ側に袋穴状に形成した測定ヘッドと、前記測定ヘッドに接続して内部に前記検出部を有する円柱状の基板カバーからなり、
前記基板カバーは、前記測定ヘッドよりも硬質な部材を用い、下端側に前記検出部に接続するスイッチと、接続端子を取り付けたことを特徴とする磁界強度測定装置を提供することにある。
上記第5の手段によれば、実容器内に配置したケーシングの重心を下方に下げて容易に転倒し難くして、製造ラインで安定した搬送が行える。また容器の挿入時に干渉しないケーシングの底面側の開口に電源スイッチと、表示部に接続する測定値出力用と充電部に接続する充電用を兼用する端子を設けてあり操作性、ハンドリング性が良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、実容器を用いているため、搬送ラインで容器を保持するホルダーまたは搬送ガイドの損傷、変形がない。また従来、ダミー容器の再利用に由来する変形又は破損がなくなり、搬送ライン上に異物が混入するおそれがない。
封止工程時の芯ズレがなくなり、再現性が高く、誤差が極めて少ない測定値が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の磁界強度測定装置の構成概略図である。
【
図2】検出部、充電部、表示部のブロック図である。
【
図4】検波出力と交流入力電圧の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の磁界強度測定装置の実施形態について、図面を参照しながら、以下詳細に説明する。本発明は、搬送ライン上で乳酸菌飲料等をポリスチレン等のプラスチック製の容器(実容器ともいう)に充填し、アルミキャップを被せた後にシールするキャップシール用高周波誘導加熱装置の磁界強度測定に適用されるものである。
【0015】
図1は、本発明の磁界強度測定装置の構成概略図である。
図2は検出部、充電部、表示部のブロック図である。
図3はケーシングの説明図である。
図4は検波出力と交流入力電圧の関係を示すグラフである。
図5は測定ヘッドの説明図である。
本発明の磁界強度測定装置10は、磁界強度を測定する検出部20と、測定値を表示する表示部40と、検出部20及び表示部40を充電する充電部50からなる。
[検出部20]
検出部20は、ケーシング12と、検出コイル22と、基板24と、充電式バッテリー26を備えている。
ケーシング12は、測定ヘッド14と、基板カバー16からなり、実容器1の上部開口から挿入可能なツバ付き円筒体である(
図1、
図3参照)。ケーシング12の円筒体の直径は実容器1の上面開口の径よりも僅かに短く設定し、ツバ14aは、上面開口の周縁部とほぼ同じ径、または拡大した径(拡径)に設定している。
測定ヘッド14は(
図3,5参照)、ツバ14aと、内部に充電式バッテリー26を有するツバ14a付きの円筒であり、材質にポリ塩化ビニルなどのプラスチック素材を用いている。測定ヘッド14は、ツバ14a側を袋穴状に形成して実容器1の上面開口側から挿入される搬送ライン上の機器等と接触しないように形成し、かつ、遮断してケーシング12の内部への異物(液体等)の侵入を防止している。
【0016】
基板カバー16は(
図3参照)、測定ヘッド14の端部(ツバ14aと反対側の端部)に接合する円筒であり、内部に検出部20を備えている。基板カバー16は、材質にステンレス鋼材を用い、測定ヘッド14よりも硬質、かつ重い材質を用いている。これにより実容器1内に配置したケーシング12の重心を下方に下げて容易に転倒し難くして、製造ラインで安定した搬送ができるようにしている。基板カバー16の下端(測定ヘッド14と接合している側の反対側)は開口し、電源スイッチ36と、後述する表示部40に接続する測定値出力用と充電用を兼用する端子37が露出するように配置している。
検出コイル22は、外径が0.2mmから2.0mmの銅線等を一巻きし、コイル径が実容器1の上面開口の周縁部の大きさに合わせたコイルである。検出コイル22は(
図5参照)、測定ヘッド14のツバ14aに設けた環状の溝14bの内部に収まる(埋め込む)ように配置している。検出コイル22を収容した溝14bは、絶縁性、耐摩耗性、耐熱性を有する絶縁部14cとなるガラス繊維テープで覆っている。このような検出コイル22は溝14bからはみ出すことなく、ツバ14a上面と同一平面上に取り付けることができ、高周波誘導加熱装置の金属筒状体との密着性が高まり、金属筒状体からの高周波磁界を均一にかけることができる。
【0017】
基板24上には、振幅検波回路30と、ホールドアンプ32と、電圧監視/リセット制御部34と、電源スイッチ36と、端子37を設けている。
振幅検波回路30は、検出コイル22と電気的に接続して検出コイル22内で発生した誘導電流が供給される。振幅検波回路30は渦電流(交流)を整流し、後述するホールドアンプ32に供給している。本実施形態の振幅検波回路30は、順電圧の小さいダイオード、一例としてショットキー バリア ダイオードと、減衰器を用いて、高周波交流を直流に変換している。ここで検波出力(V)と交流入力電圧(V)の関係は、
図4に示す点線で示す曲線のように交流入力電圧が小さいとき、検波出力の測定値は極めて小さくなり電圧換算することができない。このため、順電圧の小さいダイオードと減衰器を用いることにより、特に交流から直流に変換する際に、直線性が向上した実線のような直線にできる。これにより、交流入力電圧が小さいときでも、検波出力の測定値も直線的な比例関係で(直線変換領域を確保でき)容易に電圧換算できる。
ホールドアンプ32は、直流電流を直流電圧に換算して、電圧値の信号中の最も大きい値を一時的に記憶する回路である。本実施形態のホールドアンプ32は、理想ダイオード回路を用いている。理想ダイオード回路は、振幅検波回路30の順電圧の小さいダイオードと減衰器と同様に、特に、直流電流から直流電圧に変換する際に、直線的な比例関係で電圧換算を容易にできる。
また理想ダイオード回路にピークホールド機能を付加し、リーク電流が小さいコンデンサを使用することでホールド電圧の自己放電が起こりにくく、最大電圧値のホールド時間を長く、換言すると測定値を長く保持できる。
ホールドアンプ32で記憶された最大電圧値は、測定終了後に、アナログ電圧として後述する表示部40に供給されてデジタル表示される。
【0018】
電圧監視/リセット制御部34は、バッテリー電圧の低下を監視して警告する回路と、ホールドアンプ32で記憶された測定値をリセットするホールドリセット回路を有している。ホールドリセット回路は、後述する電源スイッチのON信号を受けて、ホールドアンプ32で記憶された最大測定値をリセット(消去)する回路である。
電源スイッチ36は、基板24に接続し、基板カバー16の下端(ケーシング12の底面)から露出するように配置して、検出部20への電源供給のON又はOFFが行える。
端子37は、基板24に接続し、基板カバー16の下端(ケーシング12の底面)から露出するように配置したステレオプラグであり、検出部20の測定値出力用と、充電部50の充電用を兼用している。
充電式バッテリー26は、測定ヘッド14の円筒内に収まる大きさの二次電池である。検出部20は、後述する充電部50で充電可能であり、一例としてニッケルカドミウム電池が用いられる。
【0019】
[表示部40]
表示部40は、表示器42と、二次電池44からなり、検出部20の測定値を表示する機器である。二次電池44は表示器42の駆動バッテリーであり、後述する充電部50で充電できる。
[充電部50]
充電部50は、充電タイマー52と充電回路54を備え、検出部20と表示部40を充電できる。
充電タイマー52は、あらかじめ定めた時間の経過後に信号を出力するタイマーである。
充電回路54は、前記充電タイマー52と電気的に接続して定電流及び定電圧充電制御できる回路である。
【0020】
[作用]
上記構成による本発明の磁界強度測定装置の作用について、以下説明する。
実容器1の上面開口から内部へケーシング12を挿入して磁界強度測定装置10が実容器1内に挿入された状態にする。磁界強度測定装置10を搬送する複数の各実容器1内に挿入しても良い。
磁界強度測定装置10を内部に有する実容器1が搬送ラインで移送される途中で、金属筒状体を通過する際、検出コイル22に電磁誘導作用で誘導電流(交流)が流れ、この電流を振幅検波回路30で直流に換算する。ホールドアンプ32により電流を電圧に換算し、電圧のうち最大電圧値を記憶する。搬送後、実容器1からケーシング12(検出部20)を取り出して表示部40に接続して表示器42で測定値がデジタル表示される。
このような本発明によれば、実容器を用いているため、搬送ラインで容器を保持するホルダーまたは搬送ガイドの損傷、変形がない。また従来あったダミー容器の再利用に由来する変形又は破損がなくなり、搬送ライン上に異物が混入するおそれがない。
【0021】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明した。しかしながら、本発明は、上記実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の変更が可能である。
また、本発明は、実施形態において示された組み合わせに限定されることなく、種々の組み合わせによって実施可能である。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の磁界強度測定装置は、特に乳酸菌飲料等を充填する容器の搬送ライン上にキャップシール用高周波誘導加熱装置を備えた飲料容器の製造分野において産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0023】
1 容器
10 磁界強度測定装置
12 ケーシング
14 測定ヘッド
14a ツバ
14b 溝
14c 絶縁部
16 基板カバー
20 検出部
22 検出コイル
24 基板
26 充電式バッテリー
30 振幅検波回路
32 ホールドアンプ
34 電圧監視/リセット制御部
36 電源スイッチ
37 端子
40 表示部
42 表示器
44 二次電池
50 充電部
52 充電タイマー
54 充電回路