(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-28
(45)【発行日】2023-01-12
(54)【発明の名称】成形装置及び成形製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B22C 9/10 20060101AFI20230104BHJP
B29C 33/44 20060101ALI20230104BHJP
B22D 17/22 20060101ALI20230104BHJP
B22C 9/06 20060101ALI20230104BHJP
【FI】
B22C9/10 S
B29C33/44
B22D17/22 H
B22C9/06 H
B22C9/10 M
(21)【出願番号】P 2018188205
(22)【出願日】2018-10-03
【審査請求日】2021-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】505290542
【氏名又は名称】株式会社MOLE’S ACT
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100104709
【氏名又は名称】松尾 誠剛
(72)【発明者】
【氏名】増澤 久臣
(72)【発明者】
【氏名】松原 健作
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-035480(JP,A)
【文献】特開2002-018904(JP,A)
【文献】特開昭51-073562(JP,A)
【文献】特開2015-223707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 9/10
B29C 33/44
B22D 17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円弧状に湾曲した内部空間を有する成形製品を製造するための成形装置であって、
合体及び離体可能であり、かつ、成形時には合体した状態で前記成形製品の外側形状に対応する形状を有するキャビティを形成可能である一組の金型と、
前記成形製品の内側形状に対応する形状を有し、かつ、成形時には前記一組の金型が形成する前記キャビティの内部に配置される中子と、
前記中子の末端に結合され、成形後には前記中子ごと回動可能
であり、成形時には前記キャビティと接して前記キャビティの外形形状の一部を構成する又は前記キャビティから離隔している回動部材とを備え、
前記回動部材は、前記一組の金型を開閉する力により回動
し、
前記成形装置は、
移動軸に沿って平行移動可能なスライドと、
前記回動部材と前記スライドとを接続するアームと、
前記一組の金型のうちの一方の金型に固定され、前記スライドが平行移動可能な前記移動軸に対して傾斜している傾斜ピンとをさらに備え、
前記スライドには、傾斜孔が形成されており、
前記傾斜ピンは、前記傾斜孔に挿入されており、
前記アームは、取り付け軸を介して前記回動部材及び前記スライドに取り付けられ、前記スライドが平行移動する力を、前記回動部材を回動させる力に変換することを特徴とする成形装置。
【請求項2】
前記回動部材は、前記円弧に沿う仮想
平面に対して垂直
な回動軸を回転の中心として回動可能であることを特徴とする請求項1に記載の成形装置。
【請求項3】
成形時における前記回動部材から見て、成形時に前記キャビティが形成される側を一方の側とし、前記一方の側とは反対の側を他方の側とするとき、
前記成形装置は、成形時に前記回動部材を固定可能な固定部材をさらに備え、
前記固定部材は、
前記一方の金型と一体となっており、成形時には前記回動部材をその前記他方の側から支持することにより前記中子及び前記回動部材を固定し、かつ、成形後には前記回動部材の前記他方の側から退避することにより前記回動部材を回動可能とすることを特徴とする請求項1
又は2に記載の成形装置。
【請求項4】
前記一組の金型を開いて前記成形製品から前記中子を引き抜いたときに
おける前記固定部材
の位置
であって、前記回動部材の前記他方の側から退避したときの前記固定部材の位置を退避位置とし、
前記一組の金型を合体させた成形時
における前記固定部材
の位置
であって、前記固定部材が前記回動部材をその前記他方の側から支持することにより前記中子及び前記回動部材を固定しているときの前記固定部材の位置を固定位置とするとき、
前記固定部材は、
前記回動部材との相対的な関係において、前記退避位置と前記固定位置との間を直線的に移動可能であ
り、
前記固定部材の相対的な移動は、前記一方の金型又は前記一組の金型のうちの他方の金型の移動により実現されることを特徴とする請求項
3に記載の成形装置。
【請求項5】
前記固定部材が前記退避位置から前記固定位置に向かうときの移動方向を第1方向とするとき、
前記回動部材は、前記第1方向に向かうにつれて前記一方の側から前記他方の側に向かって傾斜する第1テーパー部、及び、前記他方の側から前記一方の側に向かって突出する第1突起部を有し、
前記固定部材は、前記第1方向に向かうにつれて前記一方の側から前記他方の側に向かって傾斜する第2テーパー部、及び、前記一方の側から前記他方の側に向かって突出する第2突起部を有し、
前記固定部材が前記退避位置にあるときには、前記第1突起部の先端は前記第2突起部の先端よりも前記第1方向側に位置し、
前記固定部材が前記固定位置にあるときには、前記第2突起部の先端は前記第1突起部の先端よりも前記第1方向側に位置し、
前記第1突起部は、前記第1方向に向かうにつれて前記一方の側から前記他方の側に向かって傾斜する第3テーパー部を前記第1方向側に有し、
前記第2突起部は、前記第1方向に向かうにつれて前記一方の側から前記他方の側に向かって傾斜する第4テーパー部を前記第1方向側とは反対の側に有することを特徴とする請求項
4に記載の成形装置。
【請求項6】
前記第1テーパー部と前記第2テーパー部とは、成形時に接触状態となり、
前記第3テーパー部と前記第4テーパー部とは、成形時に非接触状態となることを特徴とする請求項
5に記載の成形装置。
【請求項7】
前記傾斜孔は、前記傾斜ピンを差し込んだときに、前記傾斜ピンの傾斜方向に沿って、成形時における前記第3テーパー部と前記第4テーパー部との間の距離と同等以上の遊びが存在する形状であることを特徴とする請求項
6に記載の成形装置。
【請求項8】
前記一組の金型は、前記キャビティを複数形成可能であり、
前記中子及び前記回動部材は、前記キャビティごとに設けられていることを特徴とする請求項1~
7のいずれかに記載の成形装置。
【請求項9】
前記成形装置は、金属からなる成形製品を製造するためのものであることを特徴とする請求項1~
8のいずれかに記載の成形装置。
【請求項10】
円弧状に湾曲した内部空間を有する成形製品を製造するための成形製品の製造方法であって、
合体した状態で前記成形製品の外側形状に対応する形状を有するキャビティを形成可能な一組の金型と、前記成形製品の内側形状に対応する形状を有する中子との間に前記成形製品を形成する第1工程と、
成形製品を成形した後に、前記中子を前記中子の末端に結合され
、成形時には前記キャビティと接して前記キャビティの外形形状の一部を構成する又は前記キャビティから離隔している回動部材により回動させて、前記成形製品から前記中子を引き抜く第2工程とをこの順序で含み、
前記第2工程においては、前記回動部材を、前記一組の金型を開閉する力により回動させ
、
前記一組の金型及び前記中子を備える成形装置は、移動軸に沿って平行移動可能なスライドと、前記回動部材と前記スライドとを接続するアームと、前記一組の金型のうちの一方の金型に固定され、前記スライドが平行移動可能な前記移動軸に対して傾斜している傾斜ピンとをさらに備え、前記スライドには、傾斜孔が形成されており、前記傾斜ピンは、前記傾斜孔に挿入されており、前記アームは、取り付け軸を介して前記回動部材及び前記スライドに取り付けられ、前記スライドが平行移動する力を、前記回動部材を回動させる力に変換するものであり、
前記第2工程においては、前記一組の金型が離れるにつれて前記傾斜ピンが前記スライドを平行移動させ、前記スライドが前記アームを引っ張り、前記アームが前記回動部材を引っ張ることで前記回動部材を回動させることを特徴とする成形製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形装置及び成形製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金型を用いた成形(鋳造や射出成形等)の技術分野においては、内部空間を有する成形製品を製造するために、当該内部空間の形状(内側形状)に対応した中子をキャビティ内に配置した状態で成形を行うことが広く行われている。なお、中子はコアやキャビティコアと呼称されることもある。
【0003】
内部空間の形状が直線的で単純な場合には、例えば、イジェクターピンの突出により中子と成形製品とを直線的に分離するような単純な機構により、容易に成形製品を取り出すことができる。
【0004】
しかしながら、円弧状に湾曲した内部空間を有する成形製品を製造する場合には、円弧状に湾曲した中子を用いる必要がある。円弧状に湾曲した中子を直線的に分離しようとすると抵抗が非常に大きくなることから、円弧状に湾曲した中子を用いて円弧状に湾曲した内部空間を有する成形製品を製造する場合には、上記したような単純な機構で成形製品を取り出すことは困難である。
【0005】
特に、金属からなる成形製品を製造する場合には、樹脂からなる成形製品を製造する場合と比較して、単純な機構で成形製品を取り出すことは一層困難となる。金属は樹脂と比較して、強度が高い、弾性が低い、固化した際の収縮力(いわゆるキャッチ力)が強い等、取り出しが困難となる性質を一般的に有するためである。
【0006】
上記の理由により、金型を用いた成形の技術分野においては、円弧状に湾曲した内部空間を有する成形製品を製造するための機構を有する成形装置の研究及び開発が進められている(例えば、特許文献1参照。)。以下、従来の成形装置の一例について説明する。
【0007】
図12は、従来の成形装置900の断面図である。
図12は、回動部材940の回動軸に対して垂直かつ中子930及び回動部材940を半分に割る断面による断面図である。
図13も同様の断面による断面図である。
図13は、従来の成形装置900による成形製品の製造方法を説明するために示す断面図である。
図13(a)~(d)は従来の成形装置900による成形製品の製造方法の工程図である。
【0008】
従来の成形装置900は、円弧状に湾曲した内部空間を有する成形製品P0を製造するための成形装置である。成形装置900は、合体及び離体可能であり、かつ、成形時には合体した状態で成形製品の外側形状に対応する形状を有するキャビティC0を形成可能である一組の金型910,920と、成形製品の内側形状に対応する形状を有し、かつ、成形時には一組の金型910,920が形成するキャビティC0内に配置される中子930と、中子930の末端に結合され、成形後には中子930ごと回動可能な回動部材940とを備える(
図12参照。)。
【0009】
従来の成形装置900による成形製品の製造方法は、以下のとおりである。
まず、一組の金型910,920と中子930との間のキャビティC0(
図12参照。)に成形製品P0を形成する(
図13(a)参照。)。
次に、一組の金型910,920の型開きを行う(
図13(b)参照。)。
次に、中子930を当該中子930の末端に結合された回動部材940により回動させて、成形製品P0から中子930を引き抜く(
図13(c)参照。)。
その後、成形製品P0を金型920から取り出す(
図13(d)参照。)。
【0010】
従来の成形装置900は、中子930及び回動部材940の回動により成形製品P0から中子930を円弧に沿って引き抜くことができるため、中子930を引き抜く際の抵抗を小さくして、中子930の引き抜きや成形製品P0の取り出しを円滑に行うことが可能な成形装置となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来の成形装置900は円弧状に湾曲した内部空間を有する成形製品P0を製造可能な優れた成形装置であるが、実際の使用にあたっては、中子930及び回動部材940を回動させるための機構が問題となる。
従来の成形装置900において、例えば中子930及び回動部材940を回動させるために油圧シリンダーのような機構を用いる場合には、成形製品の成形方法の複雑化を招くことが懸念されるという問題がある。
【0013】
そこで、本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、成形製品の成形方法の複雑化を回避することが可能な成形装置を提供することを目的とする。また、中子及び回動部材の存在に起因する複雑化を回避可能な成形製品の製造方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
[1]本発明の成形装置は、円弧状に湾曲した内部空間を有する成形製品を製造するための成形装置であって、合体及び離体可能であり、かつ、成形時には合体した状態で前記成形製品の外側形状に対応する形状を有するキャビティを形成可能である一組の金型と、前記成形製品の内側形状に対応する形状を有し、かつ、成形時には前記一組の金型が形成する前記キャビティの内部に配置される中子と、前記中子の末端に結合され、成形後には前記中子ごと回動可能な回動部材とを備え、前記回動部材は、前記一組の金型を開閉する力により回動することを特徴とする。
【0015】
本発明の成形装置は、中子及び回動部材の回動により成形製品から中子を円弧に沿って引き抜くことができるため、従来の成形装置と同様に、中子を引き抜く際の抵抗を小さくして、中子の引き抜きや成形製品の取り出しを円滑に行うことが可能な成形装置となる。
【0016】
また、本発明の成形装置は、回動部材が一組の金型を開閉する力により回動するため、一組の金型を開閉する動作により自動的に回動部材が回動することから、油圧シリンダーのような外部の動力により駆動される機構を用いる成形装置と比較して、成形製品の成形方法の複雑化を回避することが可能な成形装置となる。
【0017】
[2]本発明の成形装置においては、前記回動部材は、前記円弧に沿う仮想面に対して垂直な所定の回動軸を回転の中心として回動可能であることが好ましい。
【0018】
このような構成とすることにより、回動部材を安定して回動させることが可能となる。
【0019】
[3]本発明の成形装置においては、前記成形装置は、平行移動可能なスライドと、前記回動部材と前記スライドとを接続するアームと、前記一組の金型のうちの一方の金型に固定され、前記スライドが平行移動可能な方向に沿って傾斜している傾斜ピンとをさらに備え、前記スライドには、傾斜孔が形成されており、前記傾斜ピンは、前記傾斜孔に挿入されており、前記アームは、前記スライドが平行移動する力を、前記回動部材を回動させる力に変換することが好ましい。
【0020】
このような構成とすることにより、比較的単純な機構を用いて、回動部材が一組の金型を開閉する力により回動するようにすることが可能となる。
【0021】
[4]本発明の成形装置においては、成形時における前記回動部材から見て、成形時に前記キャビティが形成される側を一方の側とし、前記一方の側とは反対の側を他方の側とするとき、前記成形装置は、成形時に前記回動部材を固定可能な固定部材をさらに備え、前記固定部材は、成形時には前記回動部材をその前記他方の側から支持することにより前記中子及び前記回動部材を固定し、かつ、成形後には前記回動部材の前記他方の側から退避することにより前記回動部材を回動可能とすることが好ましい。
【0022】
このような構成とすることにより、成形時における回動部材の回動を十分に抑制し、安定した成形を行うことが可能となる。
【0023】
また、このような構成とすることにより、成形時において、回動部材を回動させるための機構に負担がかかることを十分に抑制することも可能となる。
【0024】
[5]本発明の成形装置においては、前記成形製品から前記中子を引き抜いたときに前記固定部材が存在する位置を退避位置とし、成形時に前記固定部材が配置される位置を固定位置とするとき、前記固定部材は、前記退避位置と前記固定位置との間を直線的に移動可能であることが好ましい。
【0025】
このような構成とすることにより、固定部材の移動方向を単純なものとすることで固定部材を安定して移動させることが可能となる。
【0026】
[6]本発明の成形装置においては、前記固定部材が前記退避位置から前記固定位置に向かうときの移動方向を第1方向とするとき、前記回動部材は、前記第1方向に向かうにつれて前記一方の側から前記他方の側に向かって傾斜する第1テーパー部、及び、前記他方の側から前記一方の側に向かって突出する第1突起部を有し、前記固定部材は、前記第1方向に向かうにつれて前記一方の側から前記他方の側に向かって傾斜する第2テーパー部、及び、前記一方の側から前記他方の側に向かって突出する第2突起部を有し、前記固定部材が前記退避位置にあるときには、前記第1突起部の先端は前記第2突起部の先端よりも前記第1方向側に位置し、前記固定部材が前記固定位置にあるときには、前記第2突起部の先端は前記第1突起部の先端よりも前記第1方向側に位置し、前記第1突起部は、前記第1方向に向かうにつれて前記一方の側から前記他方の側に向かって傾斜する第3テーパー部を前記第1方向側に有し、前記第2突起部は、前記第1方向に向かうにつれて前記一方の側から前記他方の側に向かって傾斜する第4テーパー部を前記第1方向側とは反対の側に有することが好ましい。
【0027】
このような構成とすることにより、固定部材の移動に用いられる力(例えば、金型が移動する力)を成形製品と中子とを分離する強い力に変換することが可能となる。
【0028】
[7]本発明の成形装置においては、前記第1テーパー部と前記第2テーパー部とは、成形時に接触状態となり、前記第3テーパー部と前記第4テーパー部とは、成形時に非接触状態となることが好ましい。
【0029】
このような構成とすることにより、成形時(型締め時)には第1テーパー部と第2テーパー部とが接触するために回動部材を十分に固定することが可能となり、かつ、型開き時に第3テーパー部と第4テーパー部とが接触状態となると第1テーパー部と第2テーパー部とが非接触状態となり、回動部材の回動が阻害されないようにすることが可能となる。
【0030】
[8]本発明の成形装置においては、前記傾斜孔は、前記傾斜ピンを差し込んだときに、前記傾斜ピンの傾斜方向に沿って、成形時における前記第3テーパー部と前記第4テーパー部との間の距離と同等以上の遊びが存在する形状であることが好ましい。
【0031】
このような構成とすることにより、第1突起部と第2突起部との接触により回動部材が回動するタイミングよりもスライドの移動により回動部材の回動が始まるタイミングを十分に遅らせることが可能となり、その結果、回動部材と固定部材とが干渉して型開きが阻害されることを防ぐことが可能となる。
【0032】
[9]本発明の成形装置においては、前記一組の金型は、前記キャビティを複数形成可能であり、前記中子及び前記回動部材は、前記キャビティごとに設けられていることが好ましい。
【0033】
このような構成とすることにより、成形製品の成形方法の複雑化を回避しつつ一度に複数の成形製品を製造することが可能となる。
【0034】
[10]本発明の成形装置においては、前記成形装置は、金属からなる成形製品を製造するためのものであることが好ましい。
【0035】
本発明の成形装置によれば、金属の収縮力(キャッチ力)により成形製品と中子とが強力に固着していても成形製品と中子とを分離しやすくすることが可能となる。
【0036】
[11]本発明の成形製品の製造方法は、円弧状に湾曲した内部空間を有する成形製品を製造するための成形製品の製造方法であって、合体した状態で前記成形製品の外側形状に対応する形状を有するキャビティを形成可能な一組の金型と、前記成形製品の内側形状に対応する形状を有する中子との間に前記成形製品を形成する第1工程と、成形製品を成形した後に、前記中子を前記中子の末端に結合された回動部材により回動させて、前記成形製品から前記中子を引き抜く第2工程とをこの順序で含み、前記第2工程においては、前記回動部材を、前記一組の金型を開閉する力により回動させることを特徴とする。
【0037】
本発明の成形製品の製造方法は、中子及び回動部材の存在に起因する複雑化を回避可能な成形製品の製造方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】実施形態1に係る成形装置1を説明するために示す図である。
【
図2】実施形態1に係る成形製品の製造方法のフローチャートである。
【
図3】実施形態1に係る成形製品の製造方法における第1工程S10を説明するために示す断面図である。
【
図4】実施形態1に係る成形製品の製造方法における第2工程S20を説明するために示す断面図である。
【
図5】実施形態2に係る成形装置2を説明するために示す図である。
【
図6】実施形態2における金型10,22と中子30及び回動部材41とを分離して示す断面図である。
【
図7】実施形態2に係る成形製品の製造方法における第1工程S10を説明するために示す断面図である。
【
図8】実施形態2に係る成形製品の製造方法における第2工程S22を説明するために示す断面図である。
【
図9】実施形態2に係る成形製品の製造方法における第2工程S22を説明するために示す断面図である。
【
図10】実施形態3に係る成形装置3を説明するために示す図である。
【
図11】変形例に係る成形装置4を示す断面図である。
【
図13】従来の成形装置900による成形製品の製造方法を説明するために示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の成形装置及び成形製品の成形方法について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。なお、本明細書及び各図面においては、実際の成形装置の構成要素のうち本発明に密接に関連する成形装置の構成要素を説明及び図示し、それ以外の一般的な構成要素(例えば、一組の金型を移動させるための機構)については基本的に説明及び図示を省略する。
【0040】
成形装置、成形装置の部品及び成形製品を表示する図面においては、図示の向きをx軸,y軸,z軸の3軸で表示する。なお、図面に示すx軸,y軸,z軸は例示であり、実際に成形装置を配置する向き等を規定するものではない。
成形装置、成形装置の部品及び成形製品を表示する図面は全て模式図であり、理解を容易にすることを優先するものであるため、図面における成形装置等の寸法、角度、位置関係等は必ずしも現実に即したものとはなっていない。
【0041】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係る成形装置1を説明するために示す図である。
図1(a)は成形装置1の斜視図であり、
図1(b)は一組の金型10,20の型開き面Aに沿う断面の金型10側を表示する断面図であり、
図1(c)は
図1(b)のA1-A1断面図であり、
図1(d)は
図1(b)のA2-A2断面図である。
図1に示す成形装置1は、成形時(型締め時)における形態を表示している。
図1(b)は、回動部材40の回動軸に対して垂直かつ中子30及び回動部材40を半分に割る断面による断面図であるということもできる。また、
図1(c)のような断面図では中子30は隠れて見えないが、説明をわかりやすくするために破線による表示をしている。
図2は、実施形態1に係る成形製品の製造方法のフローチャートである。
図3は、実施形態1に係る成形製品の製造方法における第1工程S10を説明するために示す断面図である。
図3(a)~
図3(c)はそれぞれ
図1(b)~
図1(d)に対応する断面図である。
図4は、実施形態1に係る成形製品の製造方法における第2工程S20を説明するために示す断面図である。
図4(a)~
図4(c)はそれぞれ
図1(b)~
図1(d)に対応する断面図である。
【0042】
実施形態1に係る成形装置1は、円弧状に湾曲した内部空間を有する成形製品Pを製造するための成形装置である。「円弧状に湾曲した内部空間を有する成形製品」としては、インテークマニホールドや各種ハウジング等、自動車のエンジン関連の部品を例示することができる。
【0043】
本明細書において「円弧状」とは、厳密な円弧のみを指すものではなく、おおよそ円弧とみることができる形状(例えば、一部または全部が楕円に沿う曲線や、円弧の端部に直線を付け足した形状等)も含む。したがって、本発明の成形装置に用いる中子は、厳密な意味での円弧状に湾曲した形状でなくてもよい。
【0044】
成形装置1は、
図1に示すように、一組の金型10,20と、中子30と、回動部材40と、スライド50と、アーム60と、傾斜ピン70とを備える。
以下の説明においては、成形時における回動部材から見て(キャビティよりも回動部材側にある部材から見て)、成形時にキャビティが形成される側(例えば、
図1(b)においては紙面右側)を一方の側とし、一方の側とは反対の側を他方の側とする。
【0045】
一組の金型10,20は、型開き面Aで合体及び離体可能であり、かつ、成形時には合体した状態で成形製品の外側形状に対応する形状を有するキャビティCを形成可能である。なお、一組の金型10,20は、成形時には合体した状態で湯道Rも形成可能である。
また、一組の金型10,20は、少なくとも合体した状態のときに、回動部材40が回動するための空間であるSp1、スライド50が移動するための空間であるSp2及び傾斜ピン70が移動するための空間であるSp3を形成可能である。
【0046】
一組の金型について、「合体した状態」は「型を閉じた状態」ということもでき、「離体した状態」は「型を開いた状態」ということもできる。
本明細書において「成形製品の外側形状に対応する形状」は、成形製品の外側形状の全てに対応する形状でもよいし、成形製品の外側形状の一部に対応する形状でもよい。
【0047】
なお、本発明における一組の金型は、いわゆる固定側金型と可動側金型であってもよいし、固定側金型及び可動側金型とは異なる方向に開閉可能な金型(いわゆるスライド金型)であってもよい。また、本発明の成形装置は、上記一組の金型以外を構成する金型以外の金型を備えていてもよい。
【0048】
実施形態1に係る一組の金型は、いわゆる固定側金型と可動側金型である。
実施形態1においては、一組の金型10,20を構成する金型のうちどちらが可動側金型であってどちらが固定側金型であるかは発明の本質に関係しないため、特に区別せず説明する。可動側金型は図示しない駆動機構により移動可能である。
一組の金型10,20は、温度調節媒体(例えば、水)を流す媒体流路を内部に有していてもよい。
【0049】
中子30は、成形製品Pの内側形状に対応する形状を有し、かつ、成形時には一組の金型が形成するキャビティCの内部に配置される。
本明細書において、「成形製品の内側形状に対応する形状」は、成形製品の内側形状の全てに対応する形状でもよいし、成形製品の内側形状の一部に対応する形状でもよい。
【0050】
中子30としては、引き抜きやすさを考慮して、抜き勾配を取ったものを用いることができる。また、中子30としては、回動による引き抜きが可能である限り、一部または全部が楕円の弧に沿う曲線状に湾曲する中子や、円の弧に直線を付け足した形状に沿って湾曲する中子等も用いることができる。
中子30は、温度調節媒体を流す媒体流路を内部に有していてもよい。
【0051】
回動部材40は、中子30の末端に結合され、成形後には中子30ごと回動可能である。
本明細書において「回動」とは、真円の弧をなぞるような回転動作のみをいうのではなく、おおよそ回転動作とみなせる動きをすることも含む。おおよそ回転動作とみなせる動きとしては、楕円の弧をなぞるような動作や、一部に直線状の移動を含むような動作を例示することができる。
【0052】
中子30と回動部材40とは、一体となっていてもよいし、別体となっていてもよい。また、中子30と回動部材40とが別体となっている場合には、中子30と回動部材40とが分離不可能であってもよいし、分離可能であってもよい。
【0053】
回動部材40は、キャビティCと接していてもよいし、キャビティCとは離隔していてもよい。実施形態1においては、回動部材40はキャビティCと接しており、キャビティCの外形形状の一部を構成している。
回動部材40は、温度調節媒体を流す媒体流路を内部に有していてもよい。
【0054】
回動部材40は、一組の金型10,20を開閉する力により回動する(後述する
図3及び
図4参照。)。
回動部材40は、円弧に沿う仮想面に対して垂直な所定の回動軸を回転の中心として回動可能である。このため、実施形態1における「回動」は、真円の弧をなぞるような回転動作になる。
軸棒48は所定の回動軸を中心軸とするものである。軸棒48は、金型10側の端部が金型10に固定されている。
また、回動部材40は、アーム60を取り付けるための取り付け軸40pを有する。
【0055】
スライド50は、所定の移動軸に沿って平行移動可能な部材である。スライド50は、金型10,20が離体したときに金型10側に残留する。
スライド50には、傾斜孔52が形成されている。また、スライド50は、アーム60を取り付けるための取り付け軸50pを有する。
傾斜孔52の直径はおおよそ傾斜ピン70の直径と同じである。
【0056】
アーム60は、回動部材40とスライド50とを接続する部材である。実施形態1においては、アーム60の端部には図示しない丸穴が形成されており、取り付け軸40p及び取り付け軸50pを介してそれぞれ回動部材40及びスライド50に取り付けられている。なお、アームには、丸穴(最低限のクリアランスのみ有する穴)の代わりに、少なくとも一方向にクリアランスを大きく取った穴(例えば、長穴)が形成されていてもよい。当該穴を用いることで、一組の金型10,20の開閉のタイミングと回動部材40の回動のタイミングとを調節することもできる。このような穴は、後述する実施形態2,3においても同様に用いることができる。
アーム60は、スライド50が平行移動する力を、回動部材40を回動させる力に変換する。
【0057】
傾斜ピン70は、一組の金型10,20のうちの一方の金型に固定され、スライド50が平行移動可能な方向に沿って傾斜している部材である。実施形態1においては、傾斜ピン70は金型20に固定されている。傾斜ピン70は、傾斜孔52に挿入されている(
図1(b)及び
図1(d)参照。)。
【0058】
以下、実施形態1に係る成形製品の製造方法を説明する。
実施形態1に係る成形製品の製造方法は、実施形態1に係る成形装置1を用いて行う。
実施形態1に係る成形製品の製造方法は、円弧状に湾曲した内部空間を有する成形製品Pを製造するための成形製品の製造方法である。なお、成形製品Pは金属からなる成形製品である。
【0059】
実施形態1に係る成形製品の製造方法は、第1工程S10及び第2工程S20を含む(
図2参照。)。以下、各工程について説明する。
【0060】
第1工程S10は、合体した状態で成形製品Pの外側形状に対応する形状を有するキャビティCを形成可能な一組の金型10,20と、成形製品Pの内側形状に対応する形状を有する中子30との間に成形製品Pを形成する工程である(
図3参照。)。このため、第1工程S10は、成形製品形成工程ということもできる。
【0061】
第1工程S10においては、まず、一組の金型10,20を合体させるとともに、中子30をキャビティCの内部に配置する(
図1の状態に相当。)。なお、図示は省略するが、中子30のキャビティC内部への配置は、一組の金型10,20を合体させる際、一組の金型10,20が近づくにつれて傾斜ピン70がスライド50をキャビティCが形成される側に向かって平行移動させ、スライド50がアーム60を介してキャビティC側に回動部材40を回動させることで行われる。
その後、キャビティCに熔融した成形材料を導入して固化させ、成形製品Pを成形する(
図3参照。)。
【0062】
第2工程S20は、成形製品Pを成形した後に、中子30を中子30の末端に結合された回動部材40により回動させて、成形製品Pから中子30を引き抜く工程である(
図4参照。)。このため、第2工程S20は、中子引き抜き工程ということもできる。
【0063】
第2工程S20においては、回動部材を、一組の金型10,20を開閉する力により回動させる。具体的には、一組の金型10,20が離れるにつれて傾斜ピン70がスライド50を平行移動させ、スライド50がアーム60を引っ張り、アーム60が回動部材40を引っ張ることで回動部材40を回動させる。当該回動で成形製品Pから中子30を引き抜き(
図4参照。)、その後成形製品Pを取り出す。なお、成形製品Pの取り出しは、ロボットハンド等を用いて行うことができる。
【0064】
3.実施形態1に係る成形装置及び成形製品の製造方法の効果
以下、実施形態に係る成形装置1及び成形製品の製造方法の効果について説明する。
【0065】
実施形態1に係る成形装置1は、中子30及び回動部材40の回動により成形製品から中子30を円弧に沿って引き抜くことができるため、従来の成形装置と同様に、中子30を引き抜く際の抵抗を小さくして、中子30の引き抜きや成形製品の取り出しを円滑に行うことが可能な成形装置となる。
【0066】
また、実施形態1に係る成形装置1は、回動部材40が一組の金型10,20を開閉する力により回動するため、一組の金型10,20を開閉する動作により自動的に回動部材40が回動することから、油圧シリンダーのような外部の動力により駆動される機構を用いる成形装置と比較して、成形製品の成形方法の複雑化を回避することが可能な成形装置となる。
【0067】
また、実施形態1に係る成形装置1によれば、回動部材40は、円弧に沿う仮想面に対して垂直な所定の回動軸を回転の中心として回動可能であるため、回動部材40を安定して回動させることが可能となる。
【0068】
また、実施形態1に係る成形装置1によれば、成形装置1は、平行移動可能なスライド50と、回動部材40とスライド50とを接続するアーム60と、一組の金型10,20のうちの一方の金型20に固定され、スライド50が平行移動可能な方向に沿って傾斜している傾斜ピン70とをさらに備え、スライド50には、傾斜孔52が形成されており、傾斜ピン70は、傾斜孔52に挿入されており、アーム60は、スライド50が平行移動する力を、回動部材40を回動させる力に変換するため、比較的単純な機構を用いて、回動部材40が一組の金型10,20を開閉する力により回動するようにすることが可能となる。
【0069】
また、実施形態1に係る成形装置1によれば、成形装置1は、金属からなる成形製品を製造するためのものであるため、金属の収縮力(キャッチ力)により成形製品と中子30とが強力に固着していても成形製品と中子30とを分離しやすくすることが可能となる。
【0070】
実施形態1に係る成形製品の製造方法は、円弧状に湾曲した内部空間を有する成形製品Pを製造するための成形製品の製造方法であって、合体した状態で成形製品Pの外側形状に対応する形状を有するキャビティCを形成可能な一組の金型10,20と、成形製品Pの内側形状に対応する形状を有する中子30との間に成形製品Pを形成する第1工程S10と、成形製品Pを成形した後に、中子30を中子30の末端に結合された回動部材40により回動させて、成形製品Pから中子30を引き抜く第2工程S20とをこの順序で含み、回動部材40は、一組の金型10,20を開閉する力により回動するため、中子30及び回動部材40の存在に起因する複雑化を回避可能な成形製品の製造方法となる。
【0071】
[実施形態2]
図5は、実施形態2に係る成形装置2を説明するために示す図である。
図5(a)は成形装置2の斜視図であり、
図5(b)は一組の金型10,22の型開き面Aに沿う断面の金型10側を表示する断面図であり、
図5(c)は
図5(b)のA1-A1断面図であり、
図5(d)は
図5(b)のA2-A2断面図である。
図6は、実施形態2における金型10,22と中子30及び回動部材41とを分離して示す断面図である。
図6(a)は中子30及び回動部材41を拡大して示す断面図であり、
図6(b)は金型10,22を拡大して示す断面図である。
図7は、実施形態2に係る成形製品の製造方法における第1工程S10を説明するために示す断面図である。
図7(a)~
図7(c)はそれぞれ
図5(b)~
図5(d)に対応する断面図である。
図8は、実施形態2に係る成形製品の製造方法における第2工程S22を説明するために示す断面図である。
図8(a)~
図8(c)はそれぞれ
図5(b)~
図5(d)に対応する断面図である。
図9は、実施形態2に係る成形製品の製造方法における第2工程S22を説明するために示す断面図である。
図9(a)~
図9(c)はそれぞれ
図5(b)~
図5(d)に対応する断面図である。
図9は、
図8よりも後の時間における成形装置2、つまり、型をより開いた状態の成形装置2を示す図である。
なお、
図5(c)、
図7(b)、
図8(b)及び
図9(b)においては、紙面スペ-スの都合上、第1突起部44及び第2突起部84については符号の図示を省略している。
【0072】
実施形態2に係る成形装置2は、基本的には実施形態1に係る成形装置1と同様の構成を有するが、金型、回動部材、及びスライドが実施形態1に係る成形装置1の場合とは異なる。以下、実施形態2に係る成形装置2について、実施形態1に係る成形装置1と異なる点を中心に説明する。
【0073】
成形装置2は、一組の金型10,22と、中子30と、回動部材41と、スライド51と、アーム60と、傾斜ピン70と、固定部材80とを備える(
図5参照。)。
このうち、金型10、中子30、アーム60及び傾斜ピン70は実施形態1における同名同符号の構成要素と同じものであるため、再度の説明は省略する。
【0074】
金型22は、回動部材41付近において固定部材80と一体となっている他は実施形態1における金型20と同様の構成を有する。
金型について「回動部材付近において固定部材と一体となっている」というのは、「回動部材付近の構造を固定部材として扱える」と言い換えることもできる。
回動部材41における特徴的な構成については後述する。
【0075】
スライド51には、傾斜孔53が形成されている。傾斜孔53は、実施形態1における傾斜孔52と異なり、傾斜ピン70を差し込んだときに、傾斜ピン70の傾斜方向に沿って、成形時における第3テーパー部46と第4テーパー部86との間の距離と同等以上の遊びが存在する形状である。傾斜孔の形状は遊びが存在する限り種々の形状とすることができるが、実施形態3に係る傾斜孔53は、長円状の断面を有する形状である。
本明細書において「遊び」とは、ある部材(ここでは傾斜ピン)が他の部材(ここではスライド)に実質的な力(実効的に動かすことができる力)をかけずに移動可能な余地のことをいう。関連する部材が簡単に移動・伸縮が発生する部材(例えば、弾性部材)ではない場合には、当該遊びは、隙間やクリアランスと言い換えることもできる。
【0076】
固定部材80は、成形時に回動部材40を固定可能な部材である。
固定部材80は、成形時には回動部材40をその他方の側から支持することにより中子30及び回動部材40を固定し、かつ、成形後には回動部材40の他方の側から退避することにより回動部材40を回動可能とする。
実施形態2における固定部材80は、金型22の一部、さらにいえば回動部材41近辺の一部であり、金型22と一体となっている(
図5(c)参照。)。
固定部材80が有する他の構成については後述する。
【0077】
以下の説明では、成形製品から中子30を引き抜いたときに固定部材80が存在する位置を退避位置とし、成形時に固定部材80が配置される位置を固定位置とする。例えば、固定部材80は、
図5及び
図7においては固定位置に配置されていることになり、
図9においては退避位置に配置されていることになる。
【0078】
固定部材80は、退避位置と固定位置との間を直線的に移動可能である(後述する
図7(b)、
図8(b)及び
図9(b)参照。)。
本明細書において、固定部材に関する「移動」とは、回動部材を基準として回動部材と固定部材との間の距離が変化することをいう。このため、固定部材が客観的に動かない場合であっても、回動部材と相対的な関係により固定部材が移動しているとみなすことができることがある。
実施形態2においては、固定部材80の移動は固定部材80と一体となっている金型22の金型10に対する移動により実現される。
【0079】
固定部材80における退避位置及び固定位置は、退避位置と固定位置とが重なる位置からみて、いずれの位置にあっても成形時における回動部材40との位置関係が変わらない。
本明細書において「退避位置と固定位置とが重なる位置からみる」とは、「固定部材の移動軸に沿ってみる」ということもできる。また、「成形時における回動部材との位置関係が変わらない」とは、退避位置と固定位置とが重なる位置から平面的に見て、固定部材及び回動部材が見える状態を仮定したときに、退避位置にある固定部材と固定位置にある固定部材とで、成形時における状態の回動部材との位置関係(遠近感を考慮せず平面視したときの距離)が変わらないということもできる。
【0080】
以下の説明では、固定部材が退避位置から固定位置に向かうときの移動方向を第1方向d1とする。
なお、本明細書において「第1方向側」とは、第1方向が向かう側、つまり、第1方向の下手(順方向)側のことをいう。
【0081】
回動部材41は、第1方向d1に向かうにつれて一方の側から他方の側に向かって傾斜する第1テーパー部42、及び、他方の側から一方の側に向かって突出する第1突起部44を有する(
図6(a)参照。)。
第1突起部44は、第1方向d1に向かうにつれて一方の側から他方の側に向かって傾斜する第3テーパー部46をその第1方向側に有する。
【0082】
固定部材80は、第1方向d1に向かうにつれて一方の側から他方の側に向かって傾斜する第2テーパー部82、及び、一方の側から他方の側に向かって突出する第2突起部84を有する(
図6(b)参照。)。
第2突起部84は、第1方向d1に向かうにつれて一方の側から他方の側に向かって傾斜する第4テーパー部86を第1方向側とは反対の側に有する。
なお、固定部材80が固定位置にあるときには、第3テーパー部46の中で最も一方の側にある部分は、第4テーパー部86の中で最も他方の側にある部分よりも一方の側にある。
【0083】
固定部材80が退避位置にあるときには、第1突起部44の先端は第2突起部84の先端よりも第1方向d1側に位置する。
一方、固定部材80が固定位置にあるときには、第2突起部84の先端は第1突起部44の先端よりも第1方向d1側に位置する。
【0084】
ここで、第1方向d1に対して垂直な平面を基準面とし、ある面が基準面と交わる角度を基準傾斜角度とする。このとき、第1テーパー部42及び第2テーパー部82は、第3テーパー部46及び第4テーパー部86の基準傾斜角度以下の基準傾斜角度を有することが好ましい。
なお、このとき、第1テーパー部42、第2テーパー部82、第3テーパー部46及び第4テーパー部86は、同一の基準面を設定可能な部分を有するものとする。
【0085】
各テーパー部は、平面状であってもよいし、曲面状であってもよい。各テーパー部が曲面状であるときの基準傾斜角度は、同一の基準面を用いて比較する。実施形態2においては、各テーパー部は平面状である。
図示による説明は省略するが、各テーパー部や各突起部の末端の角となる部分に丸みをつけてもよい。
【0086】
成形装置2においては、第1テーパー部42と第2テーパー部82とは、成形時に接触状態となり、第3テーパー部46と第4テーパー部86とは、成形時に非接触状態(間に隙間がある状態)となる(
図5参照。)。
このため、型開き時において、第1テーパー部42と第2テーパー部82とは非接触状態となり、第3テーパー部46と第4テーパー部86とは接触状態となる期間がある(後述。)。
【0087】
なお、実施形態1に係る成形装置2が
図5(c)等に示すように、固定部材80の第2突起部84を含む突出部分が一方の側において回動部材41と対向する面を有する場合には、成形時に、当該対向する部分と回動部材41との間にも隙間がある(回動部材41と対向する面と回動部材41の突出部分側の面とが非接触状態である)ことが好ましい。
【0088】
以下、実施形態2に係る成形製品の製造方法を説明する。
実施形態2に係る成形製品の製造方法は、実施形態2に係る成形装置2を用いて行う。
以下の説明では、実施形態2に係る成形製品の製造方法と実施形態1に係る成形製品の製造方法との差異点を中心に説明する。
【0089】
実施形態2における第1工程S10は、実施形態1における第1工程S10と同様の工程である(
図7参照。)。
なお、実施形態2における第1工程S10においては、図示は省略するが、回動部材41を成形時における位置よりも少し下がった状態(キャビティCから出た状態)にして、第1突起部44と第2突起部84との干渉を避けるようにしておき、この状態で固定部材80(金型22)を第1方向d1に沿って移動させることで、固定部材80を固定位置に配置することができる。このとき、第1テーパー部42及び第2テーパー部82が接触することにより回動部材41は押圧され、回動部材41は成形時に配置されるべき位置に固定される。
【0090】
実施形態2における第2工程S22では、まず回動部材41に一方の側から他方の側へ向かう第1の力をかけ、その後、回動部材41に第1の力よりも弱く、かつ、回動力である第2の力をかけることにより、成形製品Pから中子30を引き抜く。さらに詳しく説明すると、以下のようになる。
【0091】
まず、一組の金型10,22を離体させる(
図8参照。)。このとき、金型22の一部である固定部材80が平行移動を開始し、成形時には非接触状態であった第3テーパー部46と第4テーパー部86とが接触状態となる(
図8(b)参照。)。
【0092】
ここで、第1突起部44及び第2突起部84の第3テーパー部46及び第4テーパー部86が摺動し、かつ、固定部材80は第1方向d1とは反対の方向へ動き続けるため、回動部材41に一方の側から他方の側へ向かう第1の力が発生し、中子30と成形製品Pとが強力に剥離される。
【0093】
このとき、成形時には接触状態であった第1テーパー部42と第2テーパー部82とが非接触状態となるため、第3テーパー部46及び第4テーパー部86の摺動により回動する回動部材41の動きを妨げないようにすることができる。
【0094】
その後、スライド51、アーム60及び傾斜ピン70による第2の力による回動で、成形製品Pから中子30を引き抜く(
図9参照。)。
実施形態2においては、傾斜孔53には傾斜ピン70の傾斜方向に沿う遊びがあるため、傾斜ピン70によりスライド51が動き始めるのは型開きのタイミングよりも後になる。このため、傾斜ピン70によるスライド51の移動は、第1突起部44及び第2突起部84の第3テーパー部46及び第4テーパー部86の摺動による回動部材41の移動を妨げない。
【0095】
上記のように、実施形態2に係る成形装置2は、金型、回動部材、及びスライドが実施形態1に係る成形装置1の場合とは異なるが、実施形態1に係る成形装置1の場合と同様に、回動部材41が一組の金型10,22を開閉する力により回動するため、一組の金型10,22を開閉する動作により自動的に回動部材40が回動することから、油圧シリンダーのような外部の動力により駆動される機構を用いる成形装置と比較して、成形製品の成形方法の複雑化を回避することが可能な成形装置となる。
【0096】
また、実施形態2に係る成形装置2によれば、成形装置2は、成形時に回動部材41を固定可能な固定部材80をさらに備え、固定部材80は、成形時には回動部材41をその他方の側から支持することにより中子30及び回動部材41を固定し、かつ、成形後には回動部材41の他方の側から退避することにより回動部材41を回動可能とするため、成形時における回動部材の回動を十分に抑制し、安定した成形を行うことが可能となる。
【0097】
また、実施形態2に係る成形装置2によれば、成形時には回動部材41をその他方の側から支持することにより中子30及び回動部材41を固定するため、成形時において、回動部材41を回動させるための機構に負担がかかることを防止することも可能となる。
【0098】
また、実施形態2に係る成形装置2によれば、固定部材80は、退避位置と固定位置との間を直線的に移動可能であるため、固定部材80の移動方向を単純なものとすることで固定部材80を安定して移動させることが可能となる。
【0099】
また、実施形態2に係る成形装置2によれば、回動部材41は、第1方向d1に向かうにつれて一方の側から他方の側に向かって傾斜する第1テーパー部42、及び、他方の側から一方の側に向かって突出する第1突起部44を有し、固定部材80は、第1方向d1に向かうにつれて一方の側から他方の側に向かって傾斜する第2テーパー部82、及び、一方の側から他方の側に向かって突出する第2突起部84を有し、固定部材80が退避位置にあるときには、第1突起部44の先端は第2突起部84の先端よりも第1方向d1側に位置し、固定部材80が固定位置にあるときには、第2突起部84の先端は第1突起部44の先端よりも第1方向d1側に位置し、第1突起部44は、第1方向d1に向かうにつれて一方の側から他方の側に向かって傾斜する第3テーパー部46を第1方向d1側に有し、第2突起部84は、第1方向d1に向かうにつれて一方の側から他方の側に向かって傾斜する第4テーパー部86を第1方向d1側とは反対の側に有するため、固定部材80の移動に用いられる力を成形製品Pと中子30とを分離する強い力に変換することが可能となる。
【0100】
また、実施形態2に係る成形装置2によれば、第1テーパー部42と第2テーパー部82とは、成形時に接触状態となり、第3テーパー部46と第4テーパー部86とは、成形時に非接触状態となるため、成形時(型締め時)には第1テーパー部42と第2テーパー部82とが接触するために回動部材41を十分に固定することが可能となり、かつ、成形時には第3テーパー部46と第4テーパー部86とが非接触状態となるために型開き時に第3テーパー部46と第4テーパー部86とが接触状態となると第1テーパー部42と第2テーパー部82とが非接触状態となり、回動部材41の回動が阻害されないようにすることが可能となる。
【0101】
また、実施形態2に係る成形装置2によれば、傾斜孔53は、傾斜ピン70を差し込んだときに、傾斜ピン70の傾斜方向に沿って、成形時における第3テーパー部46と第4テーパー部86との間の距離と同等以上の遊びが存在する形状であるため、各突起部の接触により回動部材41が回動するタイミングよりもスライド50の移動により回動部材41の回動が始まるタイミングを十分に遅らせることが可能となり、その結果、回動部材41が型開き直後に回動し回動部材41と固定部材80とが干渉して型開きが阻害されることを防ぐことが可能となる。
【0102】
なお、実施形態2に係る成形装置2は、金型、回動部材、及びスライドが実施形態1に係る成形装置1とは異なるが、基本的には実施形態1に係る成形装置1と同様の構成を有するため、実施形態1に係る成形装置1が有する効果のうち該当する効果をそのまま有する。
【0103】
[実施形態3]
図10は、実施形態3に係る成形装置3を説明するために示す図である。
図10(a)は成形装置3の斜視図であり、
図10(b)は
図10(a)のAで示す面(型開き面)による断面図である。
図10(b)は、
図5(b)に相当する断面図であるということもできる。
【0104】
実施形態3に係る成形装置3は、基本的には実施形態2に係る成形装置2と同様の構成を有するが、一組の金型がキャビティを複数形成可能である点で実施形態2に係る成形装置2の場合とは異なる。
【0105】
成形装置3においては、一組の金型12,24(
図10(a)参照。)は、キャビティCを複数形成可能である。キャビティの数は、成形装置3においては2個である(
図10(b)参照。)。成形装置3は、実施形態2に係る成形装置2をおおよそ線対称に2つ連結したものであるということもできる。
成形装置3においては、中子30及び回動部材41は、キャビティCごとに設けられている。また、成形装置3においては、スライド51、アーム60及び傾斜ピン70もキャビティCごとに設けられている。
【0106】
なお、本発明の成形装置が回動部材を複数備える場合には、「第1方向」は個々の固定部材ごとに分けて考える。つまり、固定部材ごとに「固定部材が退避位置から固定位置に向かうときの移動方向」が異なる場合には、固定部材ごとに異なった第1方向が想定される。
成形装置3においては、2つのキャビティCにおいてそれぞれの固定部材80の退避位置から固定位置に向かうときの移動方向は同じであるため、それぞれの固定部材80の第1方向は同じである。
【0107】
上記のように、実施形態3に係る成形装置3は、一組の金型がキャビティを複数形成可能である点で実施形態2に係る成形装置2の場合とは異なるが、実施形態2に係る成形装置2の場合と同様に、回動部材41が一組の金型10,22を開閉する力により回動するため、一組の金型10,22を開閉する動作により自動的に回動部材40が回動することから、油圧シリンダーのような外部の動力により駆動される機構を用いる成形装置と比較して、成形製品の成形方法の複雑化を回避することが可能な成形装置となる。
【0108】
また、実施形態3に係る成形装置3によれば、一組の金型12,24は、キャビティCを複数形成可能であり、中子30及び回動部材41は、キャビティCごとに設けられているため、成形製品の成形方法の複雑化を回避しつつ一度に複数の成形製品を製造することが可能となる。
【0109】
なお、実施形態3に係る成形装置3は、一組の金型がキャビティを複数形成可能である点で実施形態2に係る成形装置2とは異なるが、基本的には実施形態2に係る成形装置2と同様の構成を有するため、実施形態2に係る成形装置2が有する効果のうち該当する効果をそのまま有する。
【0110】
以上、本発明を上記の各実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の様態において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0111】
(1)上記実施形態2においては、固定部材80と金型22とが一体であったが、本発明はこれに限定されるものではない。固定部材と金型とは別体でもよい。固定部材と金型とが別体である場合には、固定部材と金型とが別々に動くことが可能であってもよい。
【0112】
(2)上記各実施形態においては、成形製品として金属からなる成形製品を製造する場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は樹脂からなる成形製品を製造する場合にも適用することができる。
【0113】
(3)上記実施形態3においては、成形装置3は、実施形態2に係る成形装置2を2つ連結したような構成を有するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図11は、変形例に係る成形装置4を示す断面図である。
図11は、
図10(b)に相当する断面図である。本発明の成形装置は、実施形態2に係る成形装置2以外の成形装置(例えば、実施形態1に係る成形装置1)を連結したような構成を有していてもよい(
図11参照。)。また、2つ以上の成形装置を連結したような構成を有していてもよい。
【0114】
(4)上記実施形態3及び変形例においては、成形装置3はおおよそ線対称の形状を有するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明に係る成形装置は線対称である必要はなく、実施形態3及び変形例はあくまで一例である。
【符号の説明】
【0115】
1,2,3,4…成形装置、10,12,20,22,24…金型、30…中子、40,41…回動部材、40p…(回動部材における)取り付け軸、42…第1テーパー部、44…第1突起部、46…第3テーパー部、48…軸棒、50,51…スライド、50p…(スライドにおける)取り付け軸、52,53…傾斜孔、60…アーム、70…傾斜ピン、80…固定部材、82…第2テーパー部、84…第2突起部、86…第4テーパー部、A…型開き面、C…キャビティ、P…成形製品、R…湯道