(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-28
(45)【発行日】2023-01-12
(54)【発明の名称】自動移植機および移植方法
(51)【国際特許分類】
A01G 9/08 20060101AFI20230104BHJP
A01G 31/02 20060101ALI20230104BHJP
【FI】
A01G9/08 610B
A01G31/02
(21)【出願番号】P 2018190707
(22)【出願日】2018-10-09
【審査請求日】2021-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】592018629
【氏名又は名称】三進金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】照井 太
(72)【発明者】
【氏名】道上 登
(72)【発明者】
【氏名】宇都 美亜
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-289820(JP,A)
【文献】特開平08-205686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/08
A01G 31/02
A01C 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の苗が所定の苗ピッチで配置される苗パネルが設置される苗パネルレーンと、
苗パネルレーンと平行に配置され、かつ苗パネルの苗ピッチよりも広い苗ピッチで苗が移植される移植パネルが設置される移植パネルレーンと、
苗パネルレーン上および移植パネルレーン上を相互に移動する移動機構と、
移動機構に、苗パネルの複数の苗に対応して複数設けられ、かつ苗を個別に把持/解除する移植フィンガーと、
複数の移植フィンガーを個別に昇降させ、外面に支持軸を有する複数の昇降シリンダと、
複数の昇降シリンダのぞれぞれの支持軸を支持する複数の支持孔を有し、これらの支持孔に支持軸を係合させることにより昇降シリンダを支持する支持板と、
複数の昇降シリンダの支持軸が係合される複数のガイド孔を有し、複数の移植フィンガーの各間隔を、苗パネルの苗ピッチに対応する間隔と、その間隔よりも広い間隔との間で変更するピッチチェンジャーと
、
ピンチチェンジャーを昇降させる昇降手段とを備え、
前記支持板の複数の支持孔が、それらの長径方向を水平方向に沿って直列状に配列された長孔または円形孔であり、かつそれらの長径が一端側から他端側に向かって漸次大きくなるように設定され、
前記ピンチチェンジャーの複数のガイド孔が、それらの長径方向が前記支持板の支持孔の長径方向に対して斜め方向に配列された長孔または円形孔であり、かつそれらの長径が一端側から他端側に向かって漸次大きくなるように設定され、
前記昇降シリンダーの支持軸が支持板の支持孔およびピッチチェンジャーのガイド孔に係合され、ピッチチェンジャーの昇降により、支持軸が支持板の長孔の支持孔内およびピッチチェンジャーの長孔のガイド孔内の一端と他端の間を移動することにより、複数の移植フィンガーの各間隔が、苗パネルの苗ピッチに対応する間隔と、その間隔よりも広い間隔との間で変更される自動移植機。
【請求項2】
前記各昇降シリンダの支持軸が支持板の各支持孔の一端において支持されるときに複数の移植フィンガーの各間隔が苗パネルの苗ピッチに対応し、他端において支持されるときに、複数の移植フィンガーのうちの2つの移植フィンガーの間隔が移植パネルの苗ピッチに対応する請求項1に記載の自動移植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水耕栽培用の苗パネルで一定の大きさまで育てた苗を、苗パネルの苗ピッチより大きな苗ピッチで移植パネルに移植するための自動移植機および移植方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、その種の水耕栽培用自動移植装置と移植方法が示されている。同文献の自動移植装置は、2つのモジュールを備える。各モジュールは、苗パネルと移植パネル間を相互に移動し、モジュール間の間隔を変えることができる。各モジュールには、複数のチャックユニットが設けられており、各チャックユニットに備えられたチャックを用いて、苗パネルにおいて多列で並ぶ複数の苗を一行毎に複数挟んで持ち上げ、移植パネルに移動し移植を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示す従来の自動移植装置は、各モジュールに係る個々のチャックの間隔は変えずに、モジュール間の間隔のみを変えることにより移植する幅に対応させ、移植パネルに移植を行う自動移植装置である。このため、2つのチャックを移植パネルの苗ピッチに対応させて配置し、一行に2つの苗を同時に移植することはできるが、3つ以上のチャックを移植パネルの苗ピッチに対応させることはできず、一行に3つ以上の苗を同時に移植することは困難である。従って、一行に3つ以上の苗を同時に効率良く移植することが困難であるという課題があった。また、個々のチャックの間隔を変更できないため、ピッチの異なる苗パネルに容易に対応できない課題があった。
【0005】
これに対し、本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、種々の苗パネルから移植パネルに効率良く移植することができる自動移植機およびその移植方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は以下の構成を要旨とするものである。
【0007】
[1]複数の苗が所定の苗ピッチで配置される苗パネルが設置される苗パネルレーンと、
苗パネルレーンと平行に配置され、かつ苗パネルの苗ピッチよりも広い苗ピッチで苗が移植される移植パネルが設置される移植パネルレーンと、
苗パネルレーン上および移植パネルレーン上とを相互に移動する移動機構と、
移動機構に、苗パネルの複数の苗に対応して複数設けられ、かつ苗を個別に把持/解除する移植フィンガーと、
複数の移植フィンガーの各間隔を、苗パネルの苗ピッチに対応する間隔と、その間隔よりも広い間隔との間で変更するピッチチェンジャーとを備える自動移植機。
【0008】
[2]請求項1に記載の自動移植機を用いた移植方法であって、
複数の移植フィンガーの各間隔を、移動機構が苗パネルレーン上と移植パネルレーン上とを相互に移動中に、変更するようにしたことを特徴とする移植方法。
【発明の効果】
【0009】
発明[1]の自動移植機によれば、複数の移植フィンガーの各間隔を変えることができるため、ピッチの異なる苗パネルに対応でき、一行に2つ以上の苗を同時に効率良く移植することができる。このため、種々の苗パネルから移植パネルに効率良く移植を行うことができる。
【0010】
発明[2]の移植方法によれば、移動機構の移動と並行して移植フィンガーの間隔を変更しているため、実質的に移植フィンガーの間隔を変更するのに要する時間を省略できて、その分、移植作業をより一層効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は本発明に係る自動移植機の使用時における平面図である。
【
図2】
図2は本発明に係る自動移植機の使用時における正面図である。
【
図3】
図3は本発明に係る自動移植機の右側面図である。
【
図4A】
図4Aは本発明に係る自動移植機の移動時における平面図である。
【
図4B】
図4Bは本発明に係る自動移植機の移動時における正面図である。
【
図5】
図5は実施例における移植時の移動機構の説明図である。
【
図6】
図6は移植フィンガーを備えた昇降シリンダの側面図である。
【
図7】
図7は移動機構の移動前後における説明図である。
【
図8】
図8は8列×15行の配列の苗パネルから2列配列の移植パネルおよび3列配列を含む移植パネルへの移植方法を示す平面図である。
【
図9】
図9は9列×15行の配列の苗パネルから3列配列の移植パネルへの移植方法を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は本発明に係る自動移植機の平面図、
図2は正面図、
図3は右側面図である。
【0013】
これらの図に示すように、本実施形態に係る自動移植機は、架台30を備えている。架台30には、車輪31と固定ジャッキ32が設けられていて、必要時には固定ジャッキ32による固定を解除して車輪31を介して架台30を移動させることができるようになっている。架台30の一側部(右側部)には、前後方向(以下、
図1の紙面に対して右側を前方、左側を後方として説明する。)に沿って配置される苗パネルレーン1が設けられ、他側部(左側部)には、苗パネルレーン1と平行に、前後方向に沿って配置される移植パネルレーン2が設けられている。さらに、苗パネルレーン1と移植パネルレーン2上方に移動機構4が設けられており、移動機構4は苗パネルレーン1上および移植パネルレーン2上を相互に移動する。また、苗パネルレーン1上方であって、移動機構4後方に本実施形態に係る自動移植機の動作を制御する制御盤21が設けられている。
【0014】
次に苗パネルレーン1について詳細に説明する。苗パネルレーン1は架台30に対し前後方向にスライドできるようになっており、ロック機構でスライド動作を固定できるようになっている。また、
図4A、
図4Bに示すように、苗パネルレーン1は後方にスライドさせることによって、必要に応じて架台30に収納できるようになっている。苗パネルレーン1には、苗パネルP1が設置される。苗パネルP1はウレタン性の素材から成り、
図8(b)に示すように、8列×15行で計120個の穴が形成されていて、120個の穴の全ての穴に苗が植えられている。本実施形態において苗パネルP1の苗ピッチとは、各行に植えられている、隣り合う苗の間隔X
bを指す。
【0015】
図1に示すように、苗パネルレーン1には、フィーダー5が備えられており、フィーダー5は以下の3つの役割を担っている。まず1つ目の役割は、移植を始める際の苗パネルP1のスタート位置を決める役割であり、次に2つ目の役割は、苗パネルP1を一行分進める役割である。そして最後に3つ目の役割は、
図6に示す移植フィンガー10で、苗パネルP1に植えられている各苗の周囲のウレタン部分(以下、単に「被覆部」と称す。)を苗と共に挟めるように、その被覆部を約10mm持ち上げる役割である。また、
図3に示すように、苗パネル検知センサ7が備えられている。この苗パネル検知センサ7は、光電センサで苗パネルP1の有無を検知し、苗パネルP1がない場合にはエラーを表示させる機能を有している。さらに、
図2に示すように、苗パネルレーン1の後端には、苗パネル排出シュート6が後方に下り傾斜するように設けられている。全ての苗が移植され、空になった苗パネルP1は苗パネル排出シュート6により排出される。苗パネル排出シュート6は、苗パネルレーン1を収納した時は下方垂直に配置されて不要なスペースが無くなるように設計されている。
【0016】
次に移植パネルレーン2について詳細に説明する。移植パネルレーン2は、
図4A、
図4Bに示すように、折り返し点3を中心に前部が折り畳めるようになっている。移植パネルレーン2には、移植パネルP2が設置される。移植パネルP2も苗パネルP1と同様にウレタン性の素材から成っているが、苗の配列には様々な配列パターンがある。例えば、
図8(a)(c)に示すように、一行に3つの苗を植えることができる穴が形成された配列を持つ移植パネルP2や、一行に2つの苗のみを植える穴が形成された配列を持つ移植パネルP3がある。本実施形態において移植パネルP2、移植パネルP3の苗ピッチとは、各行に植えられている、隣り合う苗の間隔a、cを指す。
【0017】
図3に示すように、移植パネルレーン2の下方にバキューム14が備えられている。このバキューム14の役割は、移植フィンガー10の下降と同時に上昇して移植パネルP2下面に密着し、移植する苗を下から吸い込み、根が確実に移植パネルP2の穴から下方に引き出されるようにする役割がある。また、苗の被覆部の高さが移植パネルP2と面一になるように苗の被覆部を吸引してパネル穴に移植する役割もある。そして、バキューム14は次のように動く。苗を移植パネルP2に移植する際、移植フィンガー10の下降と同時に上昇して移植パネルP2下面に密着し、根や被覆部を吸引し、吸引し終わると下降する。そして、移植パネルP2がプッシャー15により1ピッチ分送られる。
【0018】
図1、
図2に示すように、プッシャー15はサーボモータ8で駆動される。また、移植パネルレーン2の後方でプッシャー15の上方には、多数の空の移植パネルP2が積層状にストックされており、ストックの有無が、
図1に示す移植パネル検知センサ9により検知されて、ストックが無くなった場合にエラー表示で示される。プッシャー15は、移植パネルレーン2の前方へ空の移植パネルP2を押し出して送る装置であり、最後まで空の移植パネルP2を押し出すと、再び初めの位置に戻り、次の空の移植パネルP2を押し出す。サーボモータ8は、プッシャー15により正確に空の移植パネルP2を送るための装置である。これらにより能率的な移植が可能となる。
【0019】
なお、本発明に係る自動移植機は、使用時には安全面を考慮して、苗パネルレーン1は備えられているロック機構により固定されており、移動時には
図4A、
図4Bに示すように苗パネルレーン1に備えられたハンドルで、苗パネルレーン1の固定を解除し、苗パネルレーン1を後方にスライドさせることで架台30に収納する。さらに、移植パネルレーン2を折り返し点3を中心に前部に折り畳んで収納することで、コンパクトに、かつ安全に移動することが可能となっている。
【0020】
次に移動機構4について説明する。
図3および
図5に示すように、架台30に設けられている苗パネルレーン1と移植パネルレーン2との上方には、左右方向に沿って水平レール42が設けられている。移動機構4は、この水平レール42に設けられている。移動機構4は水平レール42に沿って苗パネルレーン1上と移植パネルレーン2上を相互に移動することで、苗パネルレーン1に設置された苗パネルP1の苗を移植パネルレーン2に設置された移植パネルP2へ移植するものである。
図5に示すように、移動機構4にはエアシリンダ11、8本の昇降シリンダ12、およびピッチチェンジャー13が備えられている。また、
図3および
図7に示すように、移動機構4には、昇降シリンダ12を支持する支持板41も備えられている。
図7に示すように、支持板41には各昇降シリンダ12に対応して、支持孔24が設けられている。支持孔24は、エアシリンダ11から最も離れた支持孔24を除いて、横方向に長い長孔形状に形成されている。さらに、支持孔24は、エアシリンダ11に近い支持孔24であればあるほど、横方向の長さが長くなっている。また、昇降シリンダ12は支持軸333を介して支持孔24に支持されて、エアシリンダ11から最も離れた支持孔24を除いて、支持孔24の長さ方向(左右方向)に沿って移動できるようになっている。
【0021】
次に、
図7(a)(b)に示すように、ピッチチェンジャー13は、ピッチチェンジャー上側部材18とピッチチェンジャー下側部材19の2つの部材から成る。ピッチチェンジャー13は、ピッチチェンジャー上側部材18とピッチチェンジャー下側部材19が、結合部材222を介して結合している。なお、結合部材222はエアシリンダ11に最も近い昇降シリンダ12と、2番目に近い2つの昇降シリンダ12との間に設けられている。ピッチチェンジャー13には、各昇降シリンダ12に対応してガイド孔23が設けられている。ガイド孔23は、エアシリンダ11から最も離れたガイド孔23を除いて、斜め方向に長い長孔形状に形成されている。さらに、ガイド孔23は、エアシリンダ11に近いガイド孔23であればあるほど、斜め方向の長さが長くなっている。
【0022】
ピッチチェンジャー13が昇降することによって、ガイド孔23にガイドされて、昇降シリンダ12が支持孔24に沿って左右方向に移動する。これにより、昇降シリンダ12の各間隔を変更することができる。また、ガイド孔23の傾斜角度は全て一定であり、昇降シリンダ12の各間隔を変更してもしなくても、各間隔は等距離に保持される。この点、ガイド孔23を個々に別部材で形成させるようにしておけば、一部を不等間隔にすることも可能となる。
【0023】
なお、本実施例において、ピッチチェンジャー13として、ピッチチェンジャー上側部材18とピッチチェンジャー下側部材19の2枚を組み合わせて用いているが、ピッチチェンジャー13はセンター部分に1枚だけで用いても良い。また、ピッチを拡大する手段としてパンタグラフなどのリンク機構を利用しても良い。ピッチチェンジャー13によるピッチの拡縮は、エアシリンダ11に代えて、スライド板やスライド溝を設けて、これにピッチチェンジャー13を沿わせることにより、昇降シリンダ12の間隔を拡縮させるようにしても良い。
【0024】
図6に示すように、個々の昇降シリンダ12には、上下方向に動く移植フィンガー10が備えられている。移植フィンガー10は、2本のツメを有しており、2本のツメを水平方向に動かして苗の被覆部を把持または解除することができる。2本のツメが苗の被覆部を把持することで、移植フィンガー10により苗が傷つかないように工夫されている。ここで、
図8(b)に示すように、本実施例は8列×15行の苗パネルP1を用いて移植する場合の実施形態であるため、昇降シリンダ12の本数は8本であるが、昇降シリンダ12の本数は8本に限定されておらず、
図9(b)に示すように、9列×15行の苗パネルP5を用いて移植する場合は、昇降シリンダ12の本数として9本の昇降シリンダ12が備えられている自動移植機を用いる。
【0025】
次に、本実施形態に係る自動移植機による移植方法について説明する。苗パネルレーン1には、8列×15行の計120個の穴が形成された苗パネルP1が設置されており、苗パネルP1の全ての穴に苗が植えられている。移動機構4は、苗パネルレーン1に設置された苗パネルP1の上に、苗パネルP1の一行目の苗の位置と8本の移植フィンガー10の位置とが合うように配置されている。すなわち、8本の移植フィンガー10の各間隔と苗パネルP1の苗ピッチは一致している。この状態で、8本の移植フィンガー10が同時に下降し、苗パネルP1の一行目に植えられている苗を同時に把持して持ち上げる。そして、移植パネルレーン2へ向かって移動を開始する。苗を把持している移植フィンガー10の各間隔は、苗パネルP1における苗ピッチと一致しており、苗パネルP1における苗ピッチと移植パネルP2における苗ピッチとは異なるため、移植フィンガー10の各間隔を変更する必要がある。そこで、移植フィンガー10の各間隔を変更するため、苗パネルレーン1から移植パネルレーン2への移動中に、ピッチチェンジャー13を上方に動かすことで、移植フィンガー10の各間隔を変更する。
【0026】
そして、移動機構4が、移植パネルレーン2に設置された移植パネルP2上の一行目の移植位置に配置された際、複数の移植フィンガー10のうち、一行目の移植位置に苗を移植する移植フィンガー10の位置と移植パネルP2上の一行目の移植位置とが一致している。そこで、一行目の移植位置に苗を移植する移植フィンガー10を同時に下降させ、移植する。続いて、移植パネルP2を一行分送り出し、移植パネルP2の二行目の移植位置に移動機構4を配置し、二行目の移植位置に苗を移植する移植フィンガー10を、二行目の移植位置に対応して配置する。その後、二行目の移植位置に苗を移植する移植フィンガー10を同時に降下させて、二行目の移植位置に苗を移植する。以下同様にして、移植フィンガー10が把持している残りの全ての苗を移植し終わると、移動機構4は苗パネルレーン1へ向かって移動し、再び初めの位置に戻り、以下同様に移植を繰り返す。このようにして苗パネルP1上の全ての苗を移植パネルP2に移植する。
【0027】
次に、
図7(a)~(d)および
図8(b)(c)を用いて、本実施例におけるピッチチェンジャー13の動作について説明する。なお、ここでは移動機構4が苗パネルレーン1上から移植パネルレーン2上へ移動する場合を用いて説明する。初めに、
図7(b)(d)に示すように、移動機構4が苗パネルレーン1に設置された苗パネルP1上に配置されている際、ピッチチェンジャー13と昇降シリンダ12の支持軸333の位置が、ガイド孔23の上端の位置、かつ支持孔24の右端の位置にあるようにピッチチェンジャー13は静止している。また、
図8(b)に示すように、8列×15行の苗パネルP1を用いる場合、一行目の4番の苗と8番の苗(以下、n番の苗をn番と表記する)のピッチはb(mm)(本実施例においては、278.4mm)であるため、隣り合う苗のピッチはX
b(mm)(本実施例においては、278.4/4=69.6mm)となる。このため、
図7(b)(d)に示すように、苗パネルP1上における移動機構4に係る個々の昇降シリンダ12のピッチはX
b(mm)、すなわち69.6mmとなっている。
【0028】
一方、
図8(c)に示すように、移植パネルP3の4番と8番のピッチはc(mm)(本実施例においては、295mm)であるため、隣り合う昇降シリンダの間隔はc/4(mm)(本実施例においては、c/4=73.75mm)となる。このため、
図7(a)(c)に示すように、移植パネルP3上における移動機構4に係る個々の昇降シリンダ12の間隔はX
a(mm)、すなわち73.75mmとなっている。従って、苗パネルP1上の苗を移植パネルP3に移す場合、個々の昇降シリンダ12の間隔をX
a-X
b(mm)、すなわち73.75-69.6=4.15mmずつ広げる必要がある。そこで、
図7(b)に示すように、ピッチチェンジャー13を下降させた状態にすることにより、苗パネルP1上における個々の昇降シリンダ12の間隔がX
b(mm)、すなわち69.6mmとなるようにし、移植するに際し、移植パネルP3上における個々の昇降シリンダ12の間隔がX
a(mm)、すなわち73.75mmとなるように、苗パネルレーン1上から移植パネルレーン2上に移動中に、エアシリンダ11でピッチチェンジャー13を上方向に動かし、個々の昇降シリンダ12の間隔を4.15mmずつ広げる。これにより、苗パネルP1から移植パネルP3への移植をスムーズに行える。
【0029】
具体的に説明すると、個々の昇降シリンダ12に備えられている移植フィンガー10により、苗パネルP1の一行目(
図8(b)の最下端の行)の、8本の苗が植えられている苗の被覆部を同時に把持して持ち上げる。この際、持ち上げる高さは、根の長さを考慮して200mmとする。なお、隣り合う苗のピッチはX
b(mm)、すなわち69.6mmである。持ち上げた苗を移植パネルP3の移植位置に移植するために、苗パネルP1から移植パネルP3への移動中に、上述したピッチチェンジャー13をエアシリンダ11で上方向に動かし、個々の昇降シリンダ12の間隔を4.15mmずつ広げる。これにより、移植パネルP3上に到達した際、持ち上げた苗のうち、4番と8番の苗の位置が、移植パネルP3の一行目の移植位置と一致する。そして、4番と8番の苗を挟んでいる移植フィンガー10を同時に下降させ、移植する。また、移植フィンガー10の下降と同時にバキューム14が上昇し移植パネルP3下面に密着して、根や被覆部を吸引し、吸引し終わると下降してパネルが1ピッチ分であるd(mm)(本実施例では113mm)送られる。この状態においては、2番と6番の苗の位置が、移植パネルP3の二行目の移植位置と一致している。そこで、一行目と同様に、2番と6番の苗を移植する。
【0030】
その後、同様にパネルが1ピッチ分送られるが、3番と7番の苗の位置が移植パネルP3の三行目の移植位置と一致していないため、これらの位置を一致させる必要がある。そこで移動機構4を、隣り合う昇降シリンダ12の間隔Xa(mm)、すなわち73.75mmだけ苗パネルP1から遠ざかる方向に移動させ、3番と7番の苗の位置を移植パネルP3の三行目の移植位置と一致させる。そして、同様にして3番と7番の苗を移植する。その後、移植パネルP3が1ピッチ分送られ、この状態においては、1番と5番の苗の位置が、移植パネルP3の四行目の移植位置と一致しているため、1番と5番の苗を移植する。これにより、苗パネルP1の一行目の苗が全て移植され、移植装置4は再び、苗パネルP1上の最初の位置に戻り、以下、同様のサイクルが繰り返される。なお、苗パネルP1は1サイクル毎に1ピッチずつ送られる。
【0031】
次に、
図8(b)に示す8列×15行の苗パネルP1の苗を、
図8(a)に示される配列を持つ移植パネルP2への移植方法について説明する。上記の2列千鳥配列の移植パネルP3への移植方法と同様に、まず、個々の昇降シリンダ12に備えられている移植フィンガー10により、苗パネルP1の一行目(
図8(b)の最下端の行)の、8本の苗が植えられている苗の被覆部を同時に挟んで持ち上げる。上述したように、持ち上げる高さは200mm、隣り合う苗のピッチはX
b(mm)、69.6mmである。持ち上げた苗を移植パネルP2の移植位置に移植するために、苗パネルP1から移植パネルP2への移動中に、上述したピッチチェンジャー13をエアシリンダ11で上方向に動かし、個々の昇降シリンダ12の間隔を4.15mmずつ広げる。これにより、移植パネルP2上に到達した際、持ち上げた苗のうち、2番,5番および8番の苗の位置が、移植パネルP2の一行目の移植位置と一致する。そして、2番,5番および8番の苗を挟んでいる移植フィンガー10を同時に下降させ、移植する。
【0032】
また、移植フィンガー10の下降と同時にバキューム14が上昇しパネル下面に密着して、根や被覆部を吸引し、吸引し終わると下降してパネルが1ピッチ分であるd(mm)(本実施例では113mm)送られる。この状態においては、3番と6番の苗の位置が、移植パネルP2の二行目の移植位置と一致している。そこで、一行目と同様に、3番と6番の苗を移植する。その後、同様にパネルが1ピッチ分送られるが、1番,4番および7番の苗の位置が移植パネルP2の三行目の移植位置と一致していないため、これらの位置を一致させる必要がある。
【0033】
そこで移植装置4を、隣り合う昇降シリンダ12の間隔Xa(mm)、すなわち73.75mmだけ苗パネルP1から遠ざかる方向に移動させ、1番,4番および7番の苗の位置を移植パネルP2の三行目の移植位置と一致させる。そして、同様にして1番,4番および7番の苗を移植する。これにより、苗パネルP1の一行目の苗が全て移植され、移植装置4は再び、苗パネルP1上の最初の位置に戻り、以下、同様のサイクルが繰り返される。
【0034】
最後に、
図9(b)に示す9列×15行の苗パネルP5の苗を、
図9(a)に示される3列配列の移植パネルP4への移植方法を説明する。この場合も上述した方法と同様に考え、移植パネルP4の一行目の移植位置に3番,6番および9番の苗を移植し、二行目の移植位置に2番,5番および8番の苗を、三行目の移植位置に1番,4番および7番の苗を移植する。そして、以下、同様のサイクルが繰り返される。なお、
図8(b)に示す8列×15行の苗パネルP1から
図8(a)に示す移植パネルへP2の移植と、
図8(b)に示す8列×15行の苗パネルP1から
図8(c)に示す移植パネルP3への移植は同じ条件で行っているため、個々の昇降シリンダ12の間隔は共にX
a(mm)、すなわち73.75mmである。
【0035】
また、4列配列の移植パネルへの移植方法と8列配列の移植パネルへの移植方法に関しては図を用いていないが、
図8(b)(c)を用いて簡単に説明する。4列配列の移植パネルへの移植の場合は、
図8(c)において、2番,4番,6番,8番の苗の移植と、1番,3番,5番,7番の苗の移植とを順に行えばよい。また、8列配列の移植パネルへの移植の場合は、1番~8番の苗を一度に移植すればよい。
【0036】
このように、本発明に係る自動移植機は、2列千鳥配列の移植パネルP3への移植と同じ条件で、一行に2つまたは3つ以上の苗を移植する場合においても同時に効率良く移植することができる。従って、本発明により、一行に2つまたは3つ以上の苗を同時に効率良く移植することができる。
【0037】
なお、本実施例においては、ピッチチェンジャー13を上方向に動かすことで、個々の昇降シリンダ12の間隔を4.15(mm)ずつ広げて移植する場合のみを説明しているが、ピッチチェンジャー13により広げることができる間隔は4.15(mm)に限定されない。例えば、エアシリンダ11をボールネジのような進退距離を制御できる位置変更手段に代えて、ピッチチェンジャー13の上方向への動きを任意の位置で止めることで、4.15(mm)以内の間隔であれば任意の間隔に広げて移植することができる。
【0038】
さらに、ピッチチェンジャー13のプレートを、異なる傾斜角度を有するガイド孔23を備えるプレートに代えて、昇降シリンダ12が支持孔24に沿って左右方向に移動できる距離を変更することで、個々の昇降シリンダ12の間隔を任意の間隔に広げて移植することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明に係る自動移植機は、例えば稲の栽培等に適用することができる。
【符号の説明】
【0040】
1:苗パネルレーン
2:移植パネルレーン
4:移動機構
10:移植フィンガー
13:ピッチチェンジャー