(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-28
(45)【発行日】2023-01-12
(54)【発明の名称】基板処理装置及び基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20230104BHJP
H01L 21/302 20060101ALI20230104BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20230104BHJP
H01L 21/306 20060101ALI20230104BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20230104BHJP
【FI】
H01L21/30 572B
H01L21/30 572A
H01L21/302 201A
H01L21/302 104H
H01L21/306 S
H01L21/306 T
H01L21/304 643A
H01L21/304 645Z
H01L21/304 647Z
H01L21/304 651B
(21)【出願番号】P 2019010345
(22)【出願日】2019-01-24
【審査請求日】2021-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】309042864
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・イー・ティ
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】舟橋 倫正
(72)【発明者】
【氏名】房野 正幸
(72)【発明者】
【氏名】小見山 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】戸田 貴大
(72)【発明者】
【氏名】河合 勇治
【審査官】菅原 拓路
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-079220(JP,A)
【文献】特開2003-086559(JP,A)
【文献】特開2017-123402(JP,A)
【文献】国際公開第2007/123198(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/163672(WO,A1)
【文献】特開2008-192630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
21/30
G03F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を
回路が形成される面である処理面を下向きにして水平に保持し、保持した前記基板を鉛直軸まわりに回転する回転機構部と、
前記回転機構部に保持される前記基板の
前記処理面に一面が
0.5mm~3mmの間隔をあけて対面する位置に固定され、前記処理面との間に流路を形成する固定プレートと、
前記固定プレートの中央部に固定され、内部に中空部を有し、上面に複数の吐出孔から構成される吐出部が形成され、前記中空部でオゾンガスとオゾン水とを混合して気液二相流体を生成する混合器と、を備え、
前記混合器に、前記オゾンガスは20L/分以下の流量で供給され、前記オゾン水は2L/分以上20L/分以下の流量で供給され、前記吐出部は、前記基板の中央部に対向する位置に設けられ、前記回転機構部によって前記基板が回転されている間に、前記流路に対して、
前記気液二相流体を、スラグ流、または前記流路の高さ一杯に広がった大気泡と液体部とが交互に流れる間欠流、として流
す
ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記固定プレートは、前記一面が平坦であ
り、前記混合器の上面と前記固定プレートの前記一面とは同じ高さであることを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記流路に前記気液二相流体を流しているときに、前記基板を加熱するヒータを備えることを特徴とする請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記中空部には、前記オゾンガスと前記オゾン水を混合攪拌するエレメントが設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
水平に保持した基板の
回路が形成される面である処理面を
下向きにして保持し、固定された固定プレートの一面と
0.5mm~3mmの間隔をあけて対面させて前記処理面と前記一面との間に流路を形成した状態で、前記基板を鉛直軸まわりに回転する回転工程と、
前記回転工程中に、前記基板の中央部に対向する位置から前記流路に対して、オゾンガス
を20L/分以下の流量で供給しオゾン水
を2L/分以上20L/分以下の流量で供給し、
前記オゾンガスと前記オゾン水とを混合して気液二相流体を生成し、複数の吐出孔から前記気液二相流体を、スラグ流、または前記流路の高さ一杯に広がった大気泡と液体部とが交互に流れる間欠流、として流す気液二相流体供給工程と
を有することを特徴とする基板処理方法。
【請求項6】
前記気液二相流体供給工程中に、前記基板を加熱する加熱工程を有することを特徴とする請求項5に記載の基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハなどの基板処理装置及び基板処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体のウェハプロセスにおいて、デバイス構造を形成するためのエッチング又はイオン注入などのマスクとして感光性樹脂であるレジスト膜が広く使用されている。すなわち、基板の処理面に形成されたレジスト膜をマスクとしてエッチングやイオン注入などを行なった後に、基板の処理面からレジスト膜を除去する。
【0003】
レジスト膜の除去手法としては、硫酸と過酸化水素との混合液(硫酸過水)を使用するものが広く用いられている。また、環境への影響が小さいオゾン(O3)水を使用する手法が提案されている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2010/140581号
【文献】特開2009-218548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
オゾン(O3)水を使用するレジスト膜の除去手法は、環境への影響が小さいがレジスト膜の除去レートが低く、1枚の基板に対する処理時間が長くなるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記事情を鑑みてなされものであり、レジスト膜の高い除去レートを得ることができる基板処理装置及び基板処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の基板処理装置は、基板を水平に保持し、保持した前記基板を鉛直軸まわりに回転する回転機構部と、前記回転機構部に保持される前記基板の処理面に一面が間隔をあけて対面する位置に固定され、前記処理面との間に流路を形成する固定プレートと、前記基板の中央部に対向する位置に設けられ、前記回転機構部によって前記基板が回転されている間に、前記流路に対して、オゾンガスとオゾン水とを供給し、オゾンガスとオゾン水とを混合した気液二相流体を流す吐出部とを備えるものである。
【0008】
本発明の基板処理方法は、水平に保持した基板の処理面を固定された固定プレートの一面と間隔をあけて対面させて前記処理面と前記一面との間に流路を形成した状態で、前記基板を鉛直軸まわりに回転する回転工程と、前記回転工程中に、前記基板の中央部に対向する位置から前記流路に対して、オゾンガスとオゾン水とを供給し、オゾンガスとオゾン水とを混合した気液二相流体を流す気液二相流体供給工程とを有するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、基板の処理面を固定プレートの一面と間隔をあけて対面させて、処理面と固定プレートの一面との間に流路を形成し、基板の回転中に流路にオゾンガスとオゾン水とを混合した気液二相流体を流すので、高い除去レートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】混合器及び吐出部の構成を示す断面図である。
【
図4】流路内における気液二相流体を示す説明図である。
【
図5】流路内における気液二相流体の別の例を示す説明図である。
【
図6】レジスト膜を除去する手順を示すフローチャートである。
【
図7】気液二相流体を用いたレジスト膜の除去速度とオゾン水を用いたレジスト膜の除去速度とを示すグラフである。
【
図8】混合器をスタティックミキサーとした例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1において、基板処理装置10は、オゾンガスとオゾン水の気液二相流を用いて基板11に形成されたレジスト膜(図示省略)を除去するものである。基板11は、例えばシリコンウエハ等の半導体基板である。この例では、各種の半導体素子、回路が形成される基板11の一方の面が処理対象となる処理面S1であり、基板処理装置10は、この処理面S1に形成されているレジスト膜を除去する。この例の基板処理装置10は、処理面S1を下向きにした状態でレジスト膜を除去する処理を行なうが、処理面S1を上向きにした状態でレジスト膜を除去する処理を行ってもよい。
【0012】
基板処理装置10は、ハウジング12、回転機構部14、ローディング機構15、吐出部16、固定プレート17、供給部18、ハロゲンランプヒータ19、排出部20等を備えている。この基板処理装置10の各部は、制御部(図示省略)によって統括的に制御される。
【0013】
ハウジング12は、有底の円筒状であり、上部には円形状に開口した上部開口12aが設けられている。ハウジング12内には、固定プレート17や後述する回転テーブル21等が収容されているとともに、基板11が収容される。上部開口12aは、基板11よりも大きな径で形成されており、この上部開口12aを通して、ハウジング12に対する基板11の出し入れを行う。また、この例では、後述するように、上部開口12aがハウジング12内に外気を取り込む取込口になっている。
【0014】
回転機構部14は、水平に保持した基板11を鉛直軸まわりに回転するものであり、この例では回転テーブル21、駆動軸22、電動モータ23、基板保持部24等で構成される。回転テーブル21は、円盤状であり、ハウジング12内に収容されている。回転テーブル21は、駆動軸22の上端部に固定されており、鉛直な回転軸Zまわりに回動自在にされており、その上面を水平にした状態で回動する。回転テーブル21と駆動軸22とは同軸にされている。駆動軸22は、ハウジング12の底面12bをその厚み方向(上下方向)に貫通しており、底面12bの開口部に設けた軸受25によって回動自在に支持されている。駆動軸22の下部にプーリー26が固定されている。このプーリー26と、電動モータ23の回転軸に取り付けられたプーリー23aとの間にベルト27が掛けられている。これにより、電動モータ23が駆動すると、駆動軸22と回転テーブル21とが一体に回転する。電動モータ23の速度を増減することで、回転テーブル21の回転速度が調節される。
【0015】
回転テーブル21には、基板11を保持する基板保持部24が設けられている。基板保持部24は、回転テーブル21の周縁部に周方向に所定の間隔で配列された複数の保持具24aからなる。各保持具24aは、回転テーブル21と一体に回転する。なお、
図1では、2本の保持具24aだけを描いてあるが、実際には例えば6本の保持具24aが設けられている。
【0016】
保持具24aは、例えばその先端に段差部が形成されており、各保持具24aの段差部のそれぞれに基板11の周縁部が載る。これにより、基板保持部24によって、基板11が所定の高さで水平に支持される。基板保持部24によって支持される基板11は、回転テーブル21の上面から上方に離して支持される。また、各保持具24aが、それぞれ基板11の径方向に移動することにより、各保持具24aによって基板11が挟持される。このように基板11は、基板保持部24に保持されて回転テーブル21と同軸に固定され、回転テーブル21と一体に回転する。上記の基板保持部24の構成は一例であり、これに限定されない。例えば、基板11の処理面S1側の周縁部に当接して基板11と回転テーブル21に間隔を規定する複数のピンと、基板11を径方向に挟持して固定する複数のピンとで基板保持部24を構成してもよい。
【0017】
駆動軸22には、その内部に上下方向に貫通する貫通孔22aが形成されている。また、回転テーブル21の中央部には、貫通孔22aと連接した貫通孔21aが形成されている。貫通孔21a及び貫通孔22aには、筒状の固定軸28が通されている。この固定軸28は、ハウジング12等とともに外部のフレーム等に固定されている。したがって、回転テーブル21及び駆動軸22は、固定軸28のまわりを回転する。
【0018】
固定軸28の上端には、気液二相流の流体(以下、気液二相流体という)を供給するための混合器29が固定され、この混合器29に固定プレート17が固定されている。混合器29の上面には、吐出部16となる複数の吐出孔30(
図2参照)が形成されている。また、混合器29には、固定軸28の中空部28aに通された供給管31a~31d(
図2参照)からなる供給管部31を介して供給部18が接続されている。なお、固定プレート17を固定軸28に直接に固定してもよい。
【0019】
吐出部16を含む混合器29及び固定プレート17は、基板保持部24で保持された基板11と回転テーブル21との間に配置されている。後述するように、固定プレート17は、その上面が基板保持部24で保持された基板11の処理面S1と間隔をあけて対面する位置に固定されている。
【0020】
基板11の出し入れは、ローディング機構15により、上述のように上部開口12aを通して行われる。ローディング機構15は、収納カセット(図示省略)から処理対象となる基板11を取り出して、基板保持部24が支持する位置まで基板11を移動する。収納カセットには、基板11は、処理面S1が上向きとなる姿勢で収納されている。このため、ローディング機構15は、収納カセットから基板11を取り出し後、基板11の上下を反転して処理面S1を下向きにする。また、ローディング機構15は、処理後の基板11をハウジング12内から取り出した後、基板11の上下を反転して処理面S1を上向きにしてから、基板11を収納カセットに戻す。
【0021】
ハウジング12の上方にハロゲンランプヒータ19が配されている。ハロゲンランプヒータ19は、下向きに赤外線を放射する姿勢で設けられている。このハロゲンランプヒータ19は、移動機構32により、
図1に示されるように、上部開口12aの上方に配されて基板11を加熱する加熱位置と、上部開口12aから基板11の出し入れを行うために上部開口12aの上方から退避した退避位置との間で水平方向に移動する。加熱位置におけるハロゲンランプヒータ19は、上部開口12aの周縁との間に小さな隙間を形成する高さに配置される。なお、
図1では、図示の便宜上、加熱位置におけるハロゲンランプヒータ19と上部開口12aの周縁との間の隙間を誇張して描いてある。また、この例では、ハロゲンランプヒータ19を水平方向に移動して加熱位置と退避位置とにしているが、基板11の出し入れに支障がないように上部開口12aから上方に離れた位置を退避位置としてハロゲンランプヒータ19を移動機構32によって上下方向に移動するようにしてもよい。
【0022】
基板11に基板処理装置10で処理を行う際には、ハロゲンランプヒータ19は、移動機構32により加熱位置とされる。加熱位置のハロゲンランプヒータ19は、それの直下にある基板11の背面S2(処理面S1と反対側の面)に、上部開口12aを通して赤外線を照射して基板11を加熱する。ハロゲンランプヒータ19は、気液二相流体で基板11に処理を行うときに点灯されて赤外線を照射する。ハロゲンランプヒータ19と背面S2との間に障害物がないため、基板11を効率的に加熱することができる。基板11を加熱することで、気液二相流体によるレジスト膜の酸化分解を促進する。
【0023】
なお、この例では、ヒータとしてハロゲンランプヒータ19を用いているが、他の各種ヒータを用いてもよい。また、ハロゲンランプヒータ19を上部開口12aから上方に十分に離して配置できる場合は、移動機構32を省略してハロゲンランプヒータ19の位置を固定してもよい。
【0024】
ハウジング12内には、ガイド筒34が設けられている。この例におけるガイド筒34は、その上部が上方に向って径が漸減するテーパ形状をした筒状である。ガイド筒34は、例えばハウジング12に固定されており、その軸心が回転テーブル21の回転中心と一致するように調整されている。また、ガイド筒34の下端は、ハウジング12の底面12bに達している。ガイド筒34の上部の開口34a内に回転テーブル21が配されている。開口34aの内径は、回転テーブル21の外径よりも僅かに大きい程度であり、回転テーブル21とガイド筒34との間の隙間を小さくしてある。このガイド筒34は、ハウジング12との間に排出のルートを形成する。また、このガイド筒34を設けることによって、回転テーブル21の回転によるパーティクルの巻き上げを防止して、パーティクルの基板11への付着を抑制し、また処理液やその気化物が駆動軸22や軸受25等の機構部に流れることを防止する。
【0025】
排出部20は、上述の取込口としての上部開口12a、ハウジング12の底面12bに形成された排出口37、吸引機38等で構成される。吸引機38としては、例えばポンプが用いられており、配管39を介して排出口37に接続されている。排出部20は、吸引機38の駆動により、基板11と固定プレート17との間及び上部開口12aよりも排出口37の圧力を小さくする圧力差を生じさせる。これにより、基板11と固定プレート17との間から流出する各種のガス、処理液やその飛沫、さらには処理によって発生するパーティクル等の異物を効率的に排出口37に導いてハウジング12の外部に排出する。吸引機38には、分離機構が設けられており、排出口37から吸引した気体と液体とを分離して排出する。
【0026】
また、上記圧力差により、上部開口12aからハウジング12内に外気を取り込むことによって、上部開口12aからハウジング12とガイド筒34との間を通って排出口37に向う気流(
図1の矢印F)を形成する。これにより、オゾンガス、処理液や処理液の気化物、パーティクル等の異物が上部開口12aを介してハウジング12の外部に漏れ出ることを防止するとともに、基板11と固定プレート17との間から流出する各種のガス、処理液、パーティクル等の異物を効率的に排出口37に導きハウジング12の外部に排出する。
【0027】
上から下に向って流れる気流で、基板11と固定プレート17との間から流出する気体、液体、パーティクル等を排出口37に導く観点からは、排出部20を構成する取込口は、基板保持部24に保持された基板11の処理面S1よりも高い位置に設ければよい。また、基板11と固定プレート17との間から流出する気体、液体、パーティクル等を排出口37に導く観点からは、排出口37は固定プレート17の上面よりも低い位置に設ければよい。なお、回転テーブル21上に流れ落ちたオゾン水を考慮して、回転テーブルの上面よりも低い位置に排出口37を設けることも好ましい。
【0028】
したがって、例えば、処理中に上部開口12aを気密に塞ぐ構成とした場合には、ハウジング12の側面の基板保持部24に保持された基板11の処理面S1よりも高い位置に、取込口としての1または複数の開口を設ける。また、ハウジング12を貫通したパイプの一端の開口からハウジング12内に外気を導入する構成としてもよく、この場合にはパイプの一端の開口を基板保持部24に保持された基板11の処理面S1よりも高い位置とすればよい。また、基板11と固定プレート17との間から流出する気体、液体、パーティクル等を排出口37に導く観点からは、例えばハウジング12の側面の固定プレート17(または回転テーブル21)の上面より低い位置に排出口37を設けてもよい。
【0029】
基板11の処理面S1を上向きの姿勢に保持して処理する場合には、固定プレート17が基板11の処理面S1の上方に配される。この場合には、排出部20を構成する取込口は、固定プレート17の下面よりも高い位置に設け、排出口37は保持された基板11の処理面S1よりも低い位置に設ければよい。
【0030】
なお、上部開口12aを気密に塞ぐ構成とする場合、上部開口12aを赤外線の透過率の高い、例えば石英ガラスで塞ぐことで、ハロゲンランプヒータ19等を用いてハウジング12の外側から基板11を加熱することができる。
【0031】
図2において、混合器29は、内部に中空部29aが形成された例えば円柱形状に形成されている。この混合器29は、上述のように、上面に吐出部16を構成する複数の吐出孔30が形成されている。各吐出孔30は、混合器29の上面を厚み方向に貫通した孔として形成されている。混合器29の上面における各吐出孔30は、
図3に一例を示すように、気液二相流体が基板11の処理面S1上を均一に流れるように配置されている。
【0032】
固定プレート17は、基板11よりも僅かに小さい径の円盤状であり、保持具24aの内周側に配されている。この固定プレート17の径は、基板11を保持する基板保持部24の構成等により適宜変更できるが、基板11と同程度またはそれ以上とすることが好ましい。固定プレート17は、その中央部に貫通孔17aが形成されている。この貫通孔17aに混合器29が嵌合して固定されることにより、固定プレート17は、回転テーブル21と同軸にして、固定軸28に固定される。また、このように固定プレート17と混合器29を固定することで、基板11の中央部に対向する固定プレート17の中央部に吐出部16が配される。また、この例では、混合器29の上面が固定プレート17の上面S3と同じ高さとなるように、混合器29と固定プレート17とが固定されている。固定プレート17の上面S3は、平坦になっている。
【0033】
鉛直方向において、固定プレート17は、その上面S3が各保持具24aに保持される基板11の処理面S1との間に間隔Dをあけて対面する。これにより、上面S3と処理面S1との間にオゾンガスとオゾン水との気液二相流体を流す流路41が形成される。流路41の高さとなる間隔Dは、例えば各保持具24aに支持される基板11の処理面S1の位置、すなわち保持具24aの段差の高さを増減することで調整できる。間隔Dは、例えば1mm程度に設定される。この間隔Dは、好ましくは0.5mm~3mmの範囲内、より好ましくは1mm~2mmの範囲内である。間隔Dが0.5mm以上であれば、基板11と固定プレート17との接触を容易に回避して処理することができ、3mm以下であれば、流路41内において、気液二相流の後述するような所要とする流動様式を容易に得ることが可能である。また、1mm以上であれば、基板11と固定プレート17との接触の危険性を著しく低下させることができ、2mm以下であれば少ないオゾン水で所要とする流動様式の高速な流れの形成が容易である。
【0034】
混合器29は、その中空部29aの下部に供給管31a~31dの一端がそれぞれ接続されている。供給管31a~31dの他端は、供給部18に接続されている。供給部18は、オゾンガス供給部18a、オゾン水供給部18b、純水供給部18c、薬液供給部18dを有している。オゾンガス供給部18aは、供給管31aを介して混合器29にオゾンガスを供給し、オゾン水供給部18bは、供給管31bを介して混合器29に純水にオゾンを溶解させたオゾン水を供給する。これらオゾンガスとオゾン水の供給は同時に行なわれる。また、純水供給部18cは、供給管31cを介して混合器29に純水を供給し、薬液供給部18dは、供給管31dを介して混合器29に薬液を供給する。薬液としては、処理面S1のパーティクル等の異物を除去するためのものであり、例えば過酸化水素とアンモニアの混合水溶液であるSC1(Standard Clean 1)が用いられる。
【0035】
オゾン水供給部18bからのオゾン水に添加剤を添加する添加部を設けてもよい。オゾン水に添加する添加剤としては、例えば、ヒドロキシル(OH)ラジカルの増加に寄与しレジスト膜の除去レートをより高くするアンモニア(NH4OH)、過酸化水素(H2O2)及びイソプロピルアルコール(IPA)及びこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0036】
混合器29は、供給されるオゾンガスとオゾン水とを中空部29a内で混合して気液二相流体を生成する。混合器29で生成される気液二相流体は、各吐出孔30から流路41内に吐出される。また、各吐出孔30は、混合器29に純水が供給されることによって純水を流路41内に吐出し、混合器29に薬液が供給されることによって、薬液を流路41内に吐出する。吐出部16から供給される気液二相流体、純水、薬液は、基板11の周方向に広がりながら外周に向って流れる。
【0037】
基板処理装置10では、上記のように流路41に気液二相流体を流して基板11の処理面S1の各部をオゾンガスとオゾン水とに交互に曝すことにより、オゾン水だけを用いた場合と比べ、高いレジスト膜の除去レートを得る。このため、流路41における気液二相流体は、基板11の処理面S1上をオゾンガス(気相)とオゾン水(液相)とが交互に流れる間欠流として流される。
図4に示すように、基板11の処理面S1と固定プレート17の上面S3とで形成される流路41における気液二相流体の流れは、少なくとも流路41の上部においてオゾンガスの大気泡46とオゾン水の液体部47とが交互に流れる。このような気液二相流の流動様式としては、例えばスラグ流が挙げられる。また、気液二相流体の流れは、
図5に示すように、流路41の高さ一杯に広がった大気泡48と液体部49とが交互に流れる間欠流であってもよい。上記のような気液二相流とするために、流路41の高さ(間隔D)に応じてオゾンガス流量とオゾン水流量の比率及び総流量が調整される。
【0038】
次に上記構成の作用について説明する。なお、以下に説明する手順は一例であり、処理の手順を限定するものではない。吸引機38は、常時駆動されており、ハウジング12内の吸引がされた状態になっている。ハロゲンランプヒータ19が移動機構32によって退避位置に移動された状態にされる。この後に、
図6に示すように、ローディング機構15によりカセットから処理対象となる基板11が取り出される(ステップST1)。基板11は、カセットに処理面S1が上向きとなるように収納されているので、ローディング機構15は、取り出した基板11を180°反転させ、処理面S1を下向きにする(ステップST2)。
【0039】
ローディング機構15によって、反転された基板11は、上部開口12aを通してハウジング12内の回転テーブル21上に移動され、その基板11の周縁が各保持具24aの段差に載せられる。基板11に対するローディング機構15の保持が解除された後、各保持具24aが作動されて、各保持具24aによって基板11が保持された状態になる(ステップST3)。これにより、基板11は、処理面S1を下向きにし、また固定プレート17の上面S3と間隔をあけて回転テーブル21に固定される。
【0040】
基板11の固定後、ハロゲンランプヒータ19が移動機構32によって加熱位置に移動される。この後、電動モータ23が駆動され、回転テーブル21が基板11と一体に回転を開始する(ステップST4)。
【0041】
回転テーブル21の回転開始後、オゾンガス供給部18aがオゾンガスの供給を開始し、これと同時にオゾン水供給部18bがオゾン水の供給を開始する(ステップST5)。このときに、オゾン水は、例えばオゾン水供給部18bによって70℃程度に予備加熱されて供給される。オゾン水中のオゾンの濃度は、例えば100ppm以上500ppm以下の範囲内であり、供給量は、例えば2L(リットル)/分以上20L/分以下の範囲内であり、オゾンガスの流量は、例えば20L/分以下となるように調整される。なお、上記オゾン水中のオゾン濃度、オゾン水およびオゾンガスの供給量の範囲は一例であり、それら範囲に限定されるものではない。
【0042】
さらに、ハロゲンランプヒータ19が点灯される(ステップST6)。このハロゲンランプヒータ19の点灯により、基板11が背面S2側から所定の温度にまで加熱される。このときの基板11の温度は、例えば30℃~100℃の範囲内である。
【0043】
オゾンガス供給部18aからのオゾンガスと、オゾン水供給部18bからのオゾン水とは、供給管31a、31bを介して混合器29に供給される。これにより、供給されるオゾンガスとオゾン水とが、混合器29の中空部29aで混合されて、各吐出孔30より気液二相流体として、基板11の処理面S1と固定プレート17の上面S3とが形成する流路41に供給される。気液二相流体は、流路41を流れ、基板11の回転により周方向に広がりながら、基板11の外周に向って流れる。
【0044】
上記のようにして気液二相流体が流路41に流れることによって、処理面S1の全面に気液二相流体が供給され、処理面S1の各部がオゾンガスとオゾン水とに交互に繰り返し曝される。これにより、レジスト膜が酸化分解されて徐々に除去される。基板11の表面近傍に乱流が生じるため境界層が薄くなり、オゾンの基板11への到達量が増加するために除去レートが高くなるものと推測される。また、ハロゲンランプヒータ19により基板11が加熱されているため、オゾンによるレジスト膜の酸化分解が促進される。
【0045】
気液二相流体は、基板11の外周に達すると、圧力差によって排出口37に導かれ排出される。したがって、気液二相流体のオゾンガス及びオゾン水が上部開口12aからハウジング12の外側に漏れ出ることはない。また、処理面S1から離れたパーティクル等は、上述の気液二相流体とともに基板11の外側に運ばれ、上部開口12aからの気流によって排出口37から排出される。
【0046】
気液二相流体の供給開始から所定処理時間が経過すると(ステップST7で「YES」)、ハロゲンランプヒータ19が消灯されるとともに(ステップST8)、オゾンガス及びオゾン水の供給が停止される(ステップST9)。所定処理時間は、レジスト膜を完全に除去できる時間として予め設定されている。
【0047】
続いて、1回目の純水リンス処理(ステップST10)を行う。純水供給部18cから供給管31cを介して混合器29に純水が供給され、その純水が各吐出孔30から流路41に供給される。純水は、基板11の回転により、処理面S1上で周方向に広がりながら、基板11の外周に向って流れる。このようにして、処理面S1の全面に純水が供給されて洗浄される。所定の時間の経過後に純水の供給が停止される。なお、この1回目の純水リンス処理は省略することもできる。
【0048】
次に、パーティクルの除去のために薬液処理が行われる(ステップST11)。薬液処理では、薬液供給部18dからの薬液が供給管31d、混合器29、吐出孔30を介して流路41に供給される。これにより、処理面S1に薬液が供給され、その薬液が基板11の回転により、処理面S1上で周方向に広がりながら、基板11の外周に向って流れる。このようにして、処理面S1の全面に薬液が供給され、処理面S1上のパーティクルが除去される。薬液は、その種類に応じて加温される。例えば、薬液がSC1である場合には、SC1を40℃~80℃に加温して供給し、30秒~60秒の処理時間で薬液の供給を停止する。
【0049】
薬液処理の後に、2回目の純水リンス処理(ステップST12)を行う。1回目の純水リンス処理と同様にして、流路41に純水が供給され、処理面S1の全面に純水が供給されて洗浄される。所定の時間の経過後に純水の供給が停止される。
【0050】
純水リンス処理の後、回転テーブル21の回転速度、すなわち基板11の回転速度が増大されて、基板11のスピン乾燥が行われる(ステップST13)。これにより、基板11の両面に付着している純水が遠心力で飛ばされ、基板11が乾燥される。
【0051】
なお、薬液処理、純水リンス処理、及びスピン乾燥で、基板11や回転テーブル21から流れ出た薬液及び純水、さらにはハウジング12の内壁に付着して流れ落ちる薬液及び純水は、排出口37に吸引されて排出される。また、薬液及び純水の細かな飛沫が発生しても、その飛沫は上部開口12aからの気流によって排出口37に導かれる。このため、薬液及び純水の飛沫が上部開口12aから漏れ出ることはない。
【0052】
スピン乾燥が完了すると、電動モータ23を停止して、回転テーブル21及び基板11の回転を停止する(ステップST14)。保持具24aによる基板11の保持を解除してから(ステップST15)、ローディング機構15により上部開口12aを通して基板取り出す(ステップST16)。ローディング機構15は、基板11を反転して処理面S1を上向きにし(ステップST17)、基板11をカセットに収納する(ステップST18)。
【0053】
以上のようにして、1枚の基板11に対する処理が終了し、この後に同様な手順で新たな基板11に対する処理を行なう。上述のように気液二相流体を用いてレジスト膜を除去しており、その除去レートが高いため、1枚の基板11が短時間で処理される。
【0054】
上記のように構成された基板処理装置10でレジスト膜を除去した際の、レジスト膜の除去速度を測定した結果(符号G1)を
図7に示す。また、
図7には、オゾン水を用いた際のレジスト膜の除去速度を測定した結果(符号G2)をあわせて示す。なお、レジスト膜をオゾン水で除去した際の基板処理装置の構成は、基板処理装置10と同じであり、気液二相流体に代えてオゾン水のみを流路41に流した。この結果より、気液二相流体を用いてレジスト膜を除去することにより、高い除去レートが得られることがわかる。
【0055】
上記では、内部が中空の混合器を用いてオゾンガスとオゾン水との混合を行なっているが、混合器の構成は、これに限定されるものいではない。例えば、
図8に示す混合器51は、その中空部51aに供給管31a、31bを介して供給されるオゾンガスとオゾン水を混合攪拌するエレメント52、53が設けられ、スタティックミキサーとして機能する。また、オゾンガスとオゾン水とを固定プレートの中央部から直接に流路に供給し、流路内でオゾンガスとオゾン水と混合してもよい。
【0056】
上記の例では、ハウジング内に1個のガイド筒を設けているが、上部の開口の高さが異なる複数のガイド筒を、回転テーブルの回転中心と各軸心を一致させて設けるとともに、回転テーブルを、各ガイド筒の上部に形成した各開口内で回転可能なように昇降させる構成としてもよい。この構成によれば、一番外側のガイド筒とハウジングとの間、及びガイド筒とガイド筒との間に気流の複数の経路が形成される。これにより、供給するガスや処理液の種類によって、回転テーブルの高さ変えて処理することで、回転テーブルと基板との間から流れ出るガスや処理液を流す経路を変えて、それらを別々にハウジング外に排出することが可能となる。なお、このような構成については、特開2012-209559号公報、特開2007-180268号公報に記載されている。
【符号の説明】
【0057】
10 基板処理装置
11 基板
12 ハウジング
14 回転機構部
16 吐出部
17 固定プレート
18 供給部
24 基板保持部
21 回転テーブル