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  • 特許-塗装用マスキングシート固定具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-28
(45)【発行日】2023-01-12
(54)【発明の名称】塗装用マスキングシート固定具
(51)【国際特許分類】
   B05B 12/24 20180101AFI20230104BHJP
   B05C 21/00 20060101ALI20230104BHJP
【FI】
B05B12/24
B05C21/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019013290
(22)【出願日】2019-01-29
(65)【公開番号】P2020121243
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】519033926
【氏名又は名称】黒川 渉
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】黒川 渉
【審査官】磯部 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-100745(JP,A)
【文献】実開昭57-173872(JP,U)
【文献】実開平04-096336(JP,U)
【文献】登録実用新案第3066692(JP,U)
【文献】特開2003-341267(JP,A)
【文献】登録実用新案第3117118(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 12/24
B05C 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状に延びる平坦な底面を有する長尺状をなし、且つ、磁性体からなる車体表面に着脱可能に磁気を帯びており、塗装用マスキングシートを上記車体表面と上記底面との間に挟み込んで固定可能な可撓性長尺体を備えた塗装用マスキングシート固定具であって、
上記長尺体の一側面には、上記塗装用マスキングシートを上記車体表面に固定した状態において、上記底面の一側縁部から当該底面の他側縁部の反対側に進むにつれて次第に上記車体表面から離れるように延びる第1傾斜面部が上記長尺体の長手方向一端から他端に亘って設けられていることを特徴とする塗装用マスキングシート固定具。
【請求項2】
請求項1に記載の塗装用マスキングシート固定具において、
上記長尺体の一側面には、中途部が外側方に張り出す断面半円状の湾曲面部が上記長尺体の長手方向一端から他端に亘って設けられ、
上記第1傾斜面部は、上記湾曲面部の上記底面との連続部分で構成されていることを特徴とする塗装用マスキングシート固定具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の塗装用マスキングシート固定具において、
上記可撓性長尺体は、弾力性を有するゴム材又は樹脂材で形成され、その内部には、少なくとも1つの中空部が長手方向に所定の間隔をあけて形成され、
上記中空部には、磁石が埋設されていることを特徴とする塗装用マスキングシート固定具。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の塗装用マスキングシート固定具において、
上記長尺体は、弾力性を有するゴム材又は樹脂材で形成され、その内部には、多数の磁気を帯びた粒状体が上記長尺体の全域に亘って散りばめられていることを特徴とする塗装用マスキングシート固定具。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の塗装用マスキングシート固定具において、
上記長尺体の他側面には、上記底面との間の断面が鋭角をなすように上記底面の他側縁部から上記長尺体の一側面側に傾斜して延びる第2傾斜面部が上記長尺体の長手方向一端から他端に亘って設けられていることを特徴とする塗装用マスキングシート固定具。
【請求項6】
請求項5に記載の塗装用マスキングシート固定具において、
上記第2傾斜面部は、外側方に張り出すように断面が湾曲状をなしていることを特徴とする塗装用マスキングシート固定具。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の塗装用マスキングシート固定具において、
上記第2傾斜面部の延出端は、上記湾曲面部における上記底面との連続部分とは反対側の縁部に連続していることを特徴とする塗装用マスキングシート固定具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車体表面に塗装を施す際において、車体表面における塗装領域以外の非塗装領域に塗料が付着しないように当該非塗装領域を覆う塗装用マスキングシートを車体表面に固定するための固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車の修理等を行う際に車体表面の一部領域にのみ塗装を施す場合があり、その際、塗装領域以外の非塗装領域を新聞紙等の塗装用マスキングシートで覆って当該非塗装領域に塗装作業時における塗料が付着するのを防ぐようにする必要がある。
【0003】
ところで、上述の如き塗装用マスキングシートは、粘着テープを用いて車体表面に固定するのが一般的であるが、作業が煩雑であるという問題がある。
【0004】
これを回避するために、例えば、特許文献1では、塗装作業の簡素化を目的として、車体表面に着脱可能な固定具を用いて塗装用マスキングシートを車体表面に固定するようにしている。上記固定具は、帯状に延びる長尺状をなす可撓性を有する磁石体を備え、該磁石体の一側部は、端縁に行くにつれて次第に厚みが薄くなる断面形状をなす一方、磁石体の他側部には、塗装用マスキングシートが接続されている。そして、車体表面における塗装領域と非塗装領域との境界部分に磁石体の一側縁部が一致するように、且つ、塗装用マスキングシートが非塗装領域を覆うように固定具を車体表面の形状に沿うように変形させながら固定した後、塗装作業を行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開昭60-189359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の如き固定具を利用して塗装を行う場合、塗装後に固定具を車両表面から取り外すと、車両表面における塗装領域と非塗装領域との境界部分において塗料が固定具の一側面に沿って固まってしまい、当該部分に階段状の段差が発生してしまう。特に下地塗装等においては塗装後に形成される塗膜の厚みが厚いので、顕著に段差が発生してしまう。したがって、その塗装の上にそのまま上塗り塗装等を行うと、段差部分を起因として塗装不良になるので、上塗り塗装の前にサンドペーパーを用いて時間を掛けて塗装の段差を無くす作業が必要になり、塗装作業が煩雑になるという問題が生じる。
【0007】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、塗装を施した後の作業時間が短くなって塗装作業を効率的に行うことができる塗装用マスキングシート固定具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、固定具を用いて塗装用マスキングシートを車体表面に固定する際に固定具と車体表面との間に断面鋭角な空間が形成されるようにしたことを特徴とする。
【0009】
具体的には、帯状に延びる平坦な底面を有する長尺状をなし、且つ、磁性体からなる車体表面に着脱可能に磁気を帯びており、塗装用マスキングシートを上記車体表面と上記底面との間に挟み込んで固定可能な可撓性長尺体を備えた塗装用マスキングシート固定具において、次のような解決手段を講じた。
【0010】
すなわち、第1の発明では、上記長尺体の一側面には、上記塗装用マスキングシートを上記車体表面に固定した状態において、上記底面の一側縁部から当該底面の他側縁部の反対側に進むにつれて次第に上記車体表面から離れるように延びる第1傾斜面部が上記長尺体の長手方向一端から他端に亘って設けられていることを特徴とする。
【0011】
第2の発明では、第1の発明において、上記長尺体の一側面には、中途部が外側方に張り出す断面半円状の湾曲面部が上記長尺体の長手方向一端から他端に亘って設けられ、上記第1傾斜面部は、上記湾曲面部の上記底面との連続部分で構成されていることを特徴とする。
【0012】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、上記可撓性長尺体は、弾力性を有するゴム材又は樹脂材で形成され、その内部には、少なくとも1つの中空部が長手方向に所定の間隔をあけて形成され、上記中空部には、磁石が埋設されていることを特徴とする。
【0013】
第4の発明では、第1又は第2の発明において、上記長尺体は、弾力性を有するゴム材又は樹脂材で形成され、その内部には、多数の磁気を帯びた粒状体が上記長尺体の全域に亘って散りばめられていることを特徴とする。
【0014】
第5の発明では、第1から第4のいずれか1つの発明において、上記長尺体の他側面には、上記底面との間の断面が鋭角をなすように上記底面の他側縁部から上記長尺体の一側面側に傾斜して延びる第2傾斜面部が上記長尺体の長手方向一端から他端に亘って設けられていることを特徴とする。
【0015】
第6の発明では、第5の発明において、上記第2傾斜面部は、外側方に張り出すように断面が湾曲状をなしていることを特徴とする。
【0016】
第7の発明では、第5又は第6の発明において、上記第2傾斜面部の延出端は、上記湾曲面部における上記底面との連続部分とは反対側の縁部に連続していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
第1の発明では、車体表面における塗装領域と非塗装領域との境界部分に長尺体の第1傾斜面部が対応するように、且つ、塗装用マスキングシートが非塗装領域を覆うように長尺体を車体表面の形状に沿うように変形させながら固定した後、塗装領域に対して塗装を行うと、塗装領域と非塗装領域との境界部分における車体表面と第1傾斜面部との間に塗料が入り込むので、車体表面と第1傾斜面部との間に入り込んだ塗料が固まって端部に行くにつれて次第に厚みが薄くなる形状の塗膜が形成される。したがって、塗装を施した後にサンドペーパーを用いて作業する時間が短くなるか、或いは、サンドペーパーを用いた作業を無くすことができるようになり、塗装作業を効率的に行うことができる。
【0018】
第2の発明では、作業者が把持する際の触感が良くなるので、操作のし易い固定具にすることができる。
【0019】
第3の発明では、長尺体を磁石の磁力によって車体表面に簡単に着脱させることができる。また、作業者が把持する部分が弾性力を有するゴム材又は樹脂材で構成されるようになるので、作業者が把持する際の触感をさらに良くすることができる。それに加えて、磁石が埋設された各中空部の間の可撓性を有する領域によって長尺体が全体的に曲がり易くなるので、車体表面の形状が複雑であってもそれに沿わせて塗装用マスキングシートを固定することができる。
【0020】
第4の発明では、長尺体を磁石の磁力によって車体表面に簡単に着脱させることができる。また、長尺体における各粒状体の間の領域が弾力性を有するゴム材又は樹脂材で構成されるようになるので、長尺体の形状を第3の発明よりもさらに所望の形に変形させ易くなり、車体表面の形状が複雑であってもそれに沿わせて塗装用マスキングシートを固定することができる。
【0021】
第5の発明では、車体表面における塗装領域と非塗装領域との境界部分に長尺体の第2傾斜面部の先端が一致するように、且つ、塗装用マスキングシートが非塗装領域を覆うように長尺体を車体表面の形状に沿うように変形させながら固定した後、塗装手段を用いて塗装領域から非塗装領域に跨るように塗装領域に対して塗料を吹き付ける際、長尺体があっても塗装手段から吹き出す塗料が第2傾斜面部に沿って塗装領域から離れる方向に滑らかに移動するようになり、塗装手段から吹き出す塗料が長尺体に遮られて塗装領域側に跳ね返ってしまうといったことが少なくなる。したがって、塗装領域に付着する塗料の膜厚が塗装領域の非塗装領域との境界部分だけ厚くなってしまうといったことを避けることができる。また、長尺体の第1傾斜面部側において塗装を行う場合とは異なる使用方法で塗装できるので、塗装方法の選択肢が増えて使い勝手の良い固定具にすることができる。
【0022】
第6の発明では、第2傾斜面部が平面形状の場合に比べて、長尺体の他側方の厚みが増すようになる。したがって、剛性の高い固定具にすることができる。
【0023】
第7の発明では、長尺体の断面が略滴形状となるので、意匠性が高く、見栄えの良い固定具にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態1に係る塗装用マスキングシート固定具の斜視図である。
図2】本発明の実施形態1に係る塗装用マスキングシート固定具を用いて車体表面に塗装を行っている状態を示す斜視図である。
図3図2のIII-III線における断面図である。
図4】本発明の実施形態1に係る塗装用マスキングシート固定具を図2及び図3とは異なる使用方法で用いて車体表面に塗装を行っている状態を示す断面図である。
図5】本発明の実施形態2に係る図3相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0026】
《発明の実施形態1》
図1は、本発明の実施形態1に係る塗装用マスキングシート固定具1を示す。該塗装用マスキングシート固定具1は、例えば、図2及び図3に示すように、自動車の修理等を行う際に車体表面10の塗装領域R1以外の非塗装領域R2を新聞紙4(塗装用マスキングシート)で覆うように当該新聞紙4を車体表面10に固定して非塗装領域R2に塗装作業時における塗料が付着するのを防ぐようにするものであり、細長い形状をなす可撓性長尺体2を備えている。
【0027】
該長尺体2は、弾力性を有する樹脂材からなる本体部20を備え、該本体部20の下部には、長尺体2の長手方向に帯状に延びる平坦な底面2eが形成されている。
【0028】
本体部20の内部には、複数の中空部2dが長尺体2の長手方向に所定の間隔を明けて形成され、各中空部2dには、磁石3がそれぞれ埋設されている。
【0029】
すなわち、長尺体2は、磁性体からなる車体表面10に着脱可能に磁気を帯びており、新聞紙4を車体表面10と底面2eとの間に挟み込んで固定可能になっている。
【0030】
本体部20の一側面には、中途部が外測方に張り出す断面半円状の湾曲面部2aが長尺体2の長手方向一端から他端に亘って設けられ、湾曲面部2aの下端縁部は、底面2eの一側縁部に連続している。
【0031】
つまり、長尺体2の一側面には、新聞紙4を車体表面10に固定した状態において、底面2eの一側縁部から底面2eの他側縁部の反対側に進むにつれて次第に車体表面10から離れるように延びる第1傾斜面部2bが長尺体2の長手方向一端から他端に亘って設けられ、該第1傾斜面部2bは、湾曲面部2aの底面2eとの連続部分で構成されている。
【0032】
湾曲面部2aの表面は、その全域に亘って起伏が小さな凹凸面となっていて、新聞紙4が接触した際に当該新聞紙4との接触面積が減るようになっている。
【0033】
一方、本体部20の他側面には、底面2eとの間の断面が鋭角をなすように底面2eの他側縁部から本体部20の一側面側に傾斜して延びる第2傾斜面部2cが長尺体2の長手方向一端から他端に亘って設けられている。
【0034】
該第2傾斜面部2cは、外側方に張り出す断面が緩やかな湾曲状をなしていて、その延出端は、湾曲面部2aにおける底面2eとの連続部分とは反対側の縁部に連続している。
【0035】
つまり、長尺体2の断面は、略滴形状をなしている。
【0036】
第2傾斜面部2cの表面は、その全域に亘って起伏が小さな凹凸面となっていて、新聞紙4が接触した際に当該新聞紙4との接触面積が減るようになっている。
【0037】
次に、塗装用マスキングシート固定具1を用いて車体表面10に塗装を施す際について詳述する。
【0038】
まず作業者は、図2に示すように、例えば、車体表面10における塗装境界線10aに長尺体2における底面2eの一側縁部が対応するように、且つ、新聞紙4が塗装領域R1側に位置するように新聞紙4を車体表面10と底面2eとの間に挟み込んだ後、長尺体2を覆うように新聞紙4を折り返して当該新聞紙4が非塗装領域R2を覆うようにする。このとき、長尺体2は、可撓性を有しているので、長尺体2を車体表面10の形状に沿うように変形させながら新聞紙4を車体表面10に固定することができる。
【0039】
次に、作業者は、図3に示すように、塗装スプレー5を把持して塗装領域R1に向けて塗料を吹き付ける。すると、車体表面10における塗装領域R1に塗膜6が形成される。尚、便宜上、図3の塗膜6の厚みの寸法を大きく記載している。このとき、塗装領域R1と非塗装領域R2との境界部分における車体表面10と第1傾斜面部2bとの間に塗料が入り込むので、車体表面10と第1傾斜面部2bとの間に入り込んだ塗料が固まって端部に行くにつれて次第に厚みが薄くなる尖鋭部6aを有する塗膜6が形成される。
【0040】
その後、固定具1及び新聞紙4を車体表面10から取り外した後、サンドペーパーを用いて仕上げ作業を行う。その際、尖鋭部6aによって塗装の塗膜6の端部がなだらかになっているので、サンドペーパーによる仕上げ作業に掛かる時間が少なくなるか、或いは、サンドペーパーによる仕上げ作業をする必要が無くなる。このように、塗装を施した後にサンドペーパーを用いて作業する時間が短くなるか、或いは、サンドペーパーを用いた作業を無くすことができるようになり、塗装作業を効率的に行うことができる。尚、固定具1及び新聞紙4を車体表面10から取り外す際、湾曲面部2a及び第2傾斜面部2cの表面が凹凸形状になっているので、例えば、クリア塗料を用いた塗装のように、新聞紙4を介して固定具1にまで塗料が浸透して固化するような場合であっても、新聞紙4と固定具1との間の接触面積を小さくして固定具1から新聞紙4を剥がれ易くすることができる。
【0041】
次に、塗装用マスキングシート固定具1を図2及び図3に示す使用方法とは異なる使用方法で車体表面10に塗装を施す場合について詳述する。
【0042】
まず作業者は、図4に示すように、車体表面10における塗装境界線10aに長尺体2における底面2eの他側縁部(第2傾斜面部2cの先端)が一致するように、且つ、新聞紙4が塗装領域R1側に位置するように新聞紙4を車体表面10と底面2eとの間に挟み込んだ後、長尺体4を覆うように新聞紙4を折り返して当該新聞紙4が非塗装領域R2を覆うようにする。このとき、長尺体2は、可撓性を有しているので、長尺体2を車体表面10の形状に沿うように変形させながら新聞紙4を固定することができる。
【0043】
次に、作業者は、塗装スプレー5を把持して塗装領域R1に向けて塗料を吹き付ける。すると、車体表面10における塗装領域R1に塗膜6が形成される。このとき、塗装スプレー5を塗装領域R1から非塗装領域R2に跨るように塗装領域R1に対して塗料を吹き付ける際、長尺体2があっても塗装スプレー5から吹き出す塗料が第2傾斜面部2cに沿ってX1方向に塗装領域R1から離れるように滑らかに移動するようになり、塗装スプレー5から吹き出す塗料が長尺体2に遮られて塗装領域R1側に跳ね返ってしまうといったことが少なくなる。したがって、塗装領域R1に付着する塗料の膜厚が塗装領域R1の非塗装領域R2との境界部分だけ厚くなってしまうといったことを避けることができる。
【0044】
このように、塗装用マスキングシート固定具1は、長尺体2の第1傾斜面部2b側において塗装を行う場合とは異なる使用方法で塗装できるので、塗装方法の選択肢が増えて使い勝手が良い。
【0045】
以上より、本発明の実施形態1によると、塗装を施した後にサンドペーパーを用いて作業する時間が短くなるか、或いは、サンドペーパーを用いた作業を無くすことができるようになり、塗装作業を効率的に行うことができる。
【0046】
また、長尺体2の一側面が断面半円状をなしているので、作業者が把持する際の触感が良くなり、操作のし易い固定具1にすることができる。
【0047】
また、固定具1は、本体部20の各中空部2dに磁石3が埋設されているので、長尺体2を各磁石3の磁力によって車体表面10に簡単に着脱させることができる。
【0048】
また、作業者が把持する部分が弾力性を有する樹脂材で構成されるようになるので、作業者が把持する際の触感をさらに良くすることができる。それに加えて、磁石3が埋設された各中空部2dの間の可撓性を有する領域によって長尺体2が曲がり易くなるので、車体表面10の形状が複雑であってもそれに沿わせて新聞紙4を固定することができる。
【0049】
また、第2傾斜面部2cは、外側方に張り出すように断面が湾曲状をなしているので、第2傾斜面部2cが平面形状の場合に比べて、長尺体2の他側方の厚みが増すようになる。したがって、剛性の高い固定具1にすることができる。
【0050】
また、本発明の実施形態1の固定具1は、湾曲面部2a、第2傾斜面部2c及び底面2eによって長尺体2の断面が略滴形状となるので、意匠性が高く、見栄えの良い固定具1にすることができる。
【0051】
《発明の実施形態2》
図5は、本発明の実施形態2に係る塗装用マスキングシート固定具1を示す。この実施形態2では、長尺体2の一部構造が実施形態1と異なっており、その他は実施形態1と同じであるため、以下、実施形態1と異なる部分のみを説明する。
【0052】
実施形態2の長尺体2は、弾力性を有するゴム体で形成され、その内部には、多数の磁気を帯びた粒状体7が長尺体2の全域に亘って散りばめられている。尚、便宜上、図4の各粒状体7を大きく記載している。
【0053】
また、実施形態2の第1傾斜面部2bは、底面2eの一側縁部から当該底面2eの他側縁部の反対側に進むにつれて次第に車体表面10から離れるように真っ直ぐに傾斜して延びている。
【0054】
さらに、実施形態2の第2傾斜面部2cは、底面2eとの間の断面が鋭角をなすように底面2eの他側縁部から長尺体2の一側面側に真っ直ぐに傾斜して延びている。
【0055】
尚、塗装用マスキングシート固定具1を用いて車体表面10に塗装を施す手順は、実施形態1と同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0056】
以上より、本発明の実施形態2によると、長尺体2を当該長尺体2の内部に散りばめられた各粒状体7の磁力によって車体表面10に簡単に着脱させることができる。
【0057】
また、長尺体2における各粒状体7の間の領域が弾力性を有するゴム材で構成されるようになるので、長尺体2の形状を実施形態1の構造よりもさらに所望の形に変形させ易くなり、車体表面10の形状が複雑であってもそれに沿わせて新聞紙4を固定することができる。
【0058】
尚、本発明の実施形態1,2では、長尺体2における一側面の上半部分が断面円弧状をなしているが、これに限らず、その他の形状であってもよい。
【0059】
また、本発明の実施形態1,2では、長尺体2の他側面に第2傾斜面部2cが形成されているが、第2傾斜面部2cを形成することが必須ではない。
【0060】
また、本発明の実施形態1,2では、塗装用マスキングシートとして新聞紙4を用いているが、これに限らず、その他の種類のシートを用いてもよい。
【0061】
また、本発明の実施形態1では、長尺体2の内部に6つの磁石3が埋設されているが、その他の数の磁石3を長尺体2の内部に埋設するようにしてもよい。
【0062】
尚、本発明の実施形態1,2の固定具1は、上塗り塗装や下地塗装、或いは、クリア塗装等、あらゆる塗装に用いることができる。
【0063】
また、本発明の実施形態1,2に係る固定具1は、上述の如き使用例以外にも、車体表面10のあらゆる部位の塗装作業時において、塗装用マスキングシートを車体表面10に固定するのに使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、自動車の車体表面に塗装を施す際において、車体表面における塗装領域以外の非塗装領域に塗料が付着しないように当該非塗装領域を覆う塗装用マスキングシートを車体表面に固定するための固定具に適している。
【符号の説明】
【0065】
1 塗装用マスキングシート固定具
2 長尺体
2a 湾曲面部
2b 第1傾斜面部
2c 第2傾斜面部
2d 中空部
2e 底面
3 磁石
4 新聞紙(塗装用マスキングシート)
10 車体表面
図1
図2
図3
図4
図5