(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-28
(45)【発行日】2023-01-12
(54)【発明の名称】ハイハットアタッチメント
(51)【国際特許分類】
G10D 13/065 20200101AFI20230104BHJP
G10D 13/10 20200101ALI20230104BHJP
G10G 5/00 20060101ALI20230104BHJP
【FI】
G10D13/065
G10D13/10 140
G10G5/00
(21)【出願番号】P 2019215040
(22)【出願日】2019-11-28
【審査請求日】2021-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000195018
【氏名又は名称】星野楽器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】島田 正弘
【審査官】菊池 智紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-224275(JP,A)
【文献】実開平02-019099(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2011/0167985(US,A1)
【文献】米国特許第05668332(US,A)
【文献】米国特許第08822798(US,B1)
【文献】米国特許第07126050(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10D 13/00-13/24
G10G 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トップシンバルとボトムシンバルとからなるハイハットを、ハイハットスタンドに取り付けるためのハイハットアタッチメントであって、
前記ハイハットスタンドは、
前記ハイハットの演奏時に操作されるペダルと、
前記ペダルの踏み込みにより上下動するロッドとを備え、
前記ハイハットアタッチメントは、
前記ロッドに固定されるように構成された固定部と、
前記ロッドに対して摺動可能に支持され、前記固定部の下方で前記トップシンバルを保持するように構成されたシンバル保持部と、
前記固定部及び前記シンバル保持部の一方に設けられ、前記固定部及び前記シンバル保持部の他方と係合可能に構成された操作レバーとを備え、
前記操作レバーと前記固定部又はシンバル保持部とが係合することで、前記シンバル保持部が初期位置に配置されて前記ハイハットが開いた状態になると共に、前記操作レバーと前記固定部又は前記シンバル保持部との係合が解除されることで、前記シンバル保持部が落下するように構成されたハイハットアタッチメントにおいて、
前記シンバル保持部の最大落下位置を規制するように構成された規制部を備え
、
前記規制部は、ネジ機構を備え、
前記規制部は、前記ネジ機構により、前記シンバル保持部の最大落下位置を調整するように構成され、
前記規制部は、前記固定部及び前記シンバル保持部のいずれか一方に設けられ、
前記規制部は、前記固定部及び前記シンバル保持部の一方を他方に当接させることで、前記シンバル保持部の最大落下位置を規制するように構成されている、ハイハットアタッチメント。
【請求項2】
請求項
1に記載のハイハットアタッチメントにおいて、
前記規制部は、前記固定部と前記シンバル保持部とを連結する連結部を備える、ハイハットアタッチメント。
【請求項3】
請求項
2に記載のハイハットアタッチメントにおいて、
前記連結部は、前記ロッドと平行な軸線を有し、
前記連結部の軸線は、前記ロッドの軸線から横方向にずれて配置されている、ハイハットアタッチメント。
【請求項4】
請求項
2又は
3に記載のハイハットアタッチメントにおいて、
前記連結部は、前記シンバル保持部に螺合される連結ボルトからなり、
前記連結部は、
前記連結ボルトの頭部を前記固定部に当接させることで前記シンバル保持部の最大落下位置を規制し、
前記連結ボルトの螺合量を調節することで前記シンバル保持部の最大落下位置を調整可能に構成されている、ハイハットアタッチメント。
【請求項5】
請求項
4に記載のハイハットアタッチメントにおいて、
前記連結ボルトは、前記シンバル保持部に螺合される部分と前記頭部との間に平滑面からなる外周面を有している、ハイハットアタッチメント。
【請求項6】
請求項1~
5のうちいずれか一項に記載のハイハットアタッチメントにおいて、
前記規制部は、更に、
前記シンバル保持部と前記固定部との間に配置されるばねを備え、
前記ばねは、前記シンバル保持部を前記トップシンバルに向けて付勢するように構成されている、ハイハットアタッチメント。
【請求項7】
請求項1~6のうちいずれか一項に記載のハイハットアタッチメントにおいて、
前記操作レバーは、前記固定部又は前記シンバル保持部との係合を解除するための道具によって叩打される叩打面を有し、
前記叩打面は、前記ロッドの軸線から離れるにつれて、前記ロッドの軸線と直交する水平線から下方へ離れるように延びている、ハイハットアタッチメント。
【請求項8】
請求項
7に記載のハイハットアタッチメントであって、
前記操作レバーは、前記ロッドの軸線に近いレバー基端部と、前記ロッドの軸線から離れたレバー先端部とを有し、
前記レバー先端部には、前記叩打面から上方に突出する突起が設けられている、ハイハットアタッチメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイハットスタンドにハイハットを取り付けるためのハイハットアタッチメントに関する。
【背景技術】
【0002】
ハイハットの演奏法として、ペダルの深く踏み込んだ状態から少しだけ戻すことにより、ハイハットを半開き状態にして叩打する方法がある。この場合、ハイハットは閉じた状態と開いた状態との間の中間状態になり、トップシンバルとボトムシンバルとが軽く触れ合う音を響かせることができる。また、演奏者は、ペダルの踏み込み量を調節して、ハイハットの半開きの程度を調整することにより、ハイハットの音色や響きを変えることができる。
【0003】
一方で、2つのシングルペダルを操作して2つのバスドラムを叩打するようにセッティングされたドラムセットがある。また、ツインペダルを操作してバスドラムを叩打するようにセッティングされたドラムセットもある。これらのドラムセットを用いて演奏する場合、演奏者は、2本の足でバスドラムのペダルを操作しながら、ハイハットスタンドのペダルも操作しなければならない。
【0004】
しかしながら、演奏者は、バスドラムの2つのペダルと同時に、ハイハットスタンドのペダルを踏み込むことができない。このため、バスドラムを2つのペダルで演奏している間は、トップシンバルがボトムシンバルから完全に離れた状態になり、ハイハットが開いた状態になる。そこで、操作レバーをドラムスティックで叩くことでハイハットの開き状態を切り替えるように構成したハイハットアタッチメントが提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1に開示のハイハットアタッチメントは、ハイハットスタンドのロッドに固定される固定部と、固定部に対し回動可能に連結された操作レバーと、固定部の下方に配置されるシンバル保持部とを備えている。シンバル保持部は、トップシンバルを保持した状態で、ロッドに対して摺動可能に支持されている。操作レバーの下端には、シンバル保持部の上部段差と係合するフックが設けられている。このハイハットアタッチメントは、ドラムスティックで操作レバーを上方から叩くと操作レバーが回動し、操作レバーのフックがシンバル保持部の上部段差から外れるように構成されている。
【0006】
操作レバーのフックがシンバル保持部の上部段差から外れると、シンバル保持部が初期位置から、トップシンバルと共に落下する。その結果、トップシンバルがボトムシンバルに当接するため、ハイハットが開いた状態から閉じた状態へと切り替えられる。また、ハイハットスタンドのペダルを踏み込むことにより、操作レバーがロッドと共に下降して、操作レバーのフックがシンバル保持部の上部段差と係合する。そして、ペダルの踏み込みを解除することにより、シンバル保持部が落下位置から初期位置まで、トップシンバルと共に持ち上げられる。その結果、ハイハットが閉じた状態から開いた状態へと切り替えられる。
【0007】
しかしながら、この文献に開示のハイハットアタッチメントでは、トップシンバルがその自重により落下してボトムシンバルに当接するため、ハイハットを開いた状態から閉じた状態にしか切り替えることができない。このため、ハイハットを半開き状態にしたときの音を響かせることができない。そこで、特許文献2に開示されるように、ハイハットを開いた状態、半開き状態、及び閉じた状態の3種類に切り替えることができるハイハットアタッチメントが提案されている。
【0008】
特許文献2に開示のハイハットアタッチメントは、ハイハットスタンドのロッドに固定される固定部と、固定部に対し回動可能に連結された左右一対の操作レバーと、固定部の下方に配置されるシンバル保持部とを備えている。シンバル保持部は、トップシンバルを保持した状態で、ロッドに対して摺動可能に支持されている。各操作レバーは、水平に延びる第1脚部と、第1アームの端部から下方に延びる第2脚部と、第2脚部の先端に設けられたフックとを有している。左側操作レバーの第2脚部は、右側操作レバーの第2脚部よりも長く、右側操作レバーのフックよりも下方に延びている。
【0009】
この文献に開示のハイハットアタッチメントでは、ドラムスティックで右側操作レバーの第1脚部を上方から叩くと、右側操作レバーのフックがシンバル保持部の上部段差から外れる。すると、シンバル保持部が初期位置から、トップシンバルと共に落下する。そして、左側操作レバーのフックがシンバル保持部の上部段差と係合すると、シンバル保持部及びトップシンバルの落下が中間位置で止まる。その結果、ハイハットが開いた状態から半開き状態へと切り替えられる。
【0010】
続いて、ドラムスティックで左側操作レバーの第1脚部を上方から叩くと、左側操作レバーのフックがシンバル保持部の上部段差から外れて、シンバル保持部が中間位置から、トップシンバルと共に更に落下する。その結果、トップシンバルがボトムシンバルに当接するため、ハイハットが半開き状態から閉じた状態へと切り替えられる。このように、特許文献2に開示のハイハットアタッチメントでは、右側操作レバー、左側操作レバーを順にドラムスティックで叩くことにより、ハイハットを開いた状態、半開き状態、及び閉じた状態の順に切り替えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許第4928567号明細書
【文献】米国特許出願公開第2011/0167985号明細書
【発明の概要】
【0012】
しかしながら、特許文献2に開示のハイハットアタッチメントの場合、ハイハットを半開き状態にする構成を実現するため、右側操作レバーや、右側操作レバーを固定部に連結するための連結具が追加されている。このため、ハイハットアタッチメントの部品点数が増えると共に、ハイハットアタッチメント全体の構成が複雑化している。また、ハイハットを開いた状態、半開き状態、及び閉じた状態の順に切り替えるとき、右側操作レバー、左側操作レバーの順にドラムスティックで叩く必要があり、切り替え操作が煩雑である。
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、ハイハットを開いた状態から半開き状態へと切り替えるための構成及び操作が簡単であるハイハットアタッチメントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために、トップシンバルとボトムシンバルとからなるハイハットを、ハイハットスタンドに取り付けるためのハイハットアタッチメントであって、前記ハイハットスタンドは、前記ハイハットの演奏時に操作されるペダルと、前記ペダルの踏み込みにより上下動するロッドとを備え、前記ハイハットアタッチメントは、前記ロッドに固定されるように構成された固定部と、前記ロッドに対して摺動可能に支持され、前記固定部の下方で前記トップシンバルを保持するように構成されたシンバル保持部と、前記固定部及び前記シンバル保持部の一方に設けられ、前記固定部及び前記シンバル保持部の他方と係合可能に構成された操作レバーとを備え、前記操作レバーと前記固定部又はシンバル保持部とが係合することで、前記シンバル保持部が初期位置に配置されて前記ハイハットが開いた状態になると共に、前記操作レバーと前記固定部又は前記シンバル保持部との係合が解除されることで、前記シンバル保持部が落下するように構成されたハイハットアタッチメントにおいて、前記シンバル保持部の最大落下位置を規制するように構成された規制部を備えるハイハットアタッチメントが提供される。
【0015】
この構成によれば、規制部によって、シンバル保持部の最大落下位置を規制することで、ハイハットを半開きの状態にすることができる。この場合、シンバル保持部の落下位置を規制する構成を追加するだけで、ハイハットを半開き状態にする構成を実現することができる。よって、簡単な構成によって、ハイハットを開いた状態から半開き状態へと切り替えることができる。また、操作レバーを操作して、操作レバー部と固定部又はシンバル保持部との係合を解除するだけで、シンバル保持部を最大落下位置まで落下させることができる。よって、簡単な操作によって、ハイハットを開いた状態から半開き状態へと切り替えることもできる。
【0016】
前記規制部は、前記シンバル保持部の最大落下位置を調整可能に構成されていてもよい。
この構成によれば、規制部によって、シンバル保持部の最大落下位置を調整することで、トップシンバルの最大落下位置を調整することができる。この場合、トップシンバルの最大落下位置を、ハイハットが半開き状態から閉じた状態までの間で調整することができる。これにより、ハイハットを半開き状態にしたときの音色や響きを微調整することができる。よって、ハイハットの音色や響きのバリエーションを増やすことが容易となる。
【0017】
前記規制部は、ネジ機構を備え、前記規制部は、前記ネジ機構により、前記シンバル保持部の最大落下位置を調整するように構成されていてもよい。
【0018】
この構成によれば、ネジ機構によって、シンバル保持部の最大落下位置を連続的に調整することができ、トップシンバルの最大落下位置を連続的に調整することができる。これにより、ハイハットを半開き状態にしたときの音色や響きを微調整することが容易となる。
【0019】
前記規制部は、前記固定部及び前記シンバル保持部のいずれか一方に設けられ、前記規制部は、前記固定部及び前記シンバル保持部の一方を他方に当接させることで、前記シンバル保持部の最大落下位置を規制するように構成されていてもよい。
【0020】
この構成によれば、規制部を、固定部とシンバル保持部とから構成することができる。これにより、規制部を固定部及びシンバル保持部のいずれとも別の部材から構成する場合と比較して、追加される部品の数を少なくすることができる。
【0021】
前記規制部は、前記固定部と前記シンバル保持部とを連結する連結部を備えてもよい。
この構成によれば、固定部とシンバル保持部とが連結部を介して連結されているため、ハイハットアタッチメントをハイハットスタンドから取り外しても、固定部とシンバル保持部とが分離することはない。よって、ハイハットアタッチメントの取り扱いが容易となる。
【0022】
前記連結部は、前記ロッドと平行な軸線を有し、前記連結部の軸線は、前記ロッドの軸線から横方向にずれて配置されていてもよい。
【0023】
この構成によれば、連結部の軸線をロッドの軸線から横方向にずれて配置することで、シンバル保持部及び固定部の各主要部を避けて、シンバル保持部と固定部との連結構造を形成することができる。この場合、連結構造をシンバル保持部及び固定部の各主要部と同軸上に形成する構成と比較して、ハイハットアタッチメントの上下方向の寸法をコンパクトにすることができる。
【0024】
前記連結部は、前記シンバル保持部に螺合される連結ボルトからなり、前記連結部は、前記連結ボルトの頭部を前記固定部に当接させることで前記シンバル保持部の最大落下位置を規制し、前記連結ボルトの螺合量を調節することで前記シンバル保持部の最大落下位置を調整可能に構成されていてもよい。
【0025】
この構成によれば、連結ボルトを追加するだけで、シンバル保持部の最大落下位置を規制する構成と、シンバル保持部の最大落下位置を調整する構成とを実現することができる。よって、追加される部品の数を少なくすることができ、ハイハットアタッチメント全体の構成を簡素化することができる。また、連結ボルトの螺合量を調節することで、シンバル保持部の最大落下位置を連続的に調整することができ、トップシンバルの最大落下位置を連続的に調整することができる。
【0026】
前記連結ボルトは、前記シンバル保持部に螺合される部分と前記頭部との間に平滑面からなる外周面を有していてもよい。
【0027】
この構成によれば、操作レバー部と固定部又はシンバル保持部との係合が解除された場合、固定部に対して連結ボルトの外周面を摺動させることで、シンバル保持部を落下させることができる。この場合、連結ボルトの外周面が平滑面であるため、シンバル保持部を円滑に落下させることができる。よって、ハイハットを開いた状態から半開き状態、又は閉じた状態へと円滑に切り替えることができる。
【0028】
前記規制部は、更に、前記シンバル保持部と前記固定部との間に配置されるばねを備え、前記ばねは、前記シンバル保持部を前記トップシンバルに向けて付勢するように構成されていてもよい。
【0029】
この構成によれば、ばねによって、シンバル保持部をトップシンバルに向けて常時付勢することができる。これにより、トップシンバルが叩打されて大きく揺れたとしても、ばねの付勢力によって、操作レバー部と固定部又はシンバル保持部との係合が解除された状態を維持することができる。このため、ハイハットスタンドのペダルを操作しない限り、シンバル保持部がトップシンバルと共に持ち上げられ難くなる。よって、ユーザの意図に反してハイハットが閉じた状態から開いた状態へと切り替えられ難くなる。
【0030】
トップシンバルとボトムシンバルとからなるハイハットを、ハイハットスタンドに取り付けるためのハイハットアタッチメントであって、前記ハイハットスタンドは、前記ハイハットの演奏時に操作されるペダルと、前記ペダルの踏み込みにより上下動するロッドとを備え、前記ハイハットアタッチメントは、前記ロッドに固定されるように構成された固定部と、前記ロッドに対して摺動可能に支持され、前記固定部の下方で前記トップシンバルを保持するように構成されたシンバル保持部と、前記固定部及び前記シンバル保持部の一方に設けられ、前記固定部及び前記シンバル保持部の他方と係合可能に構成された操作レバーとを備え、前記操作レバーと前記固定部又はシンバル保持部とが係合することで、前記シンバル保持部が初期位置に配置されて前記ハイハットが開いた状態になると共に、前記操作レバーと前記固定部又は前記シンバル保持部との係合が解除されることで、前記シンバル保持部が落下するように構成されたハイハットアタッチメントにおいて、前記操作レバーは、前記固定部又は前記シンバル保持部との係合を解除するための道具によって叩打される叩打面を有し、前記叩打面は、前記ロッドの軸線から離れるにつれて、前記ロッドの軸線と直交する水平線から下方へ離れるように延びているハイハットアタッチメントが提供される。
【0031】
ハイハットスタンドでは、ロッドの下端が、ペダルの先端に連結された雌ネジ部に螺着されている。このため、ロッドは、雌ネジ部に締め付けられることで、ペダルの先端に固定されている。また、ハイハットアタッチメントを用いてハイハットをハイハットスタンドに取り付けた状態では、ハイハットアタッチメントがハイハットよりも上方に配置されている。この場合、ハイハットをスティックで叩打するときには、スティックを上下に振ることが容易であるものの、ハイハットアタッチメントの操作レバーを操作するときには、スティックを上下に振ることが難しくなる。このため、演奏者は、スティックを立てて前方に押し出すようにして、ハイハットアタッチメントの操作レバーを操作することがある。この場合、操作レバーがロッドの右側にセッティングされていると、ロッドには、操作レバーを介して左回りの力が作用し易くなる。このため、操作レバーの操作が繰り返されると、ロッドが雌ネジ部に対して緩み易くなり、操作レバーを最初のセッティング位置に維持できなくなる。
【0032】
この点、上記構成によれば、操作レバーの叩打面が、ロッドの軸線から離れるにつれて、ロッドの軸線と直交する水平線から下方へ離れるように延びている。つまり、操作レバーの叩打面が、ロッド付近から斜め下方に延びている。このため、ロッド付近から水平方向に延びる操作レバーよりも、操作レバーの叩打面をトップシンバルに近づけることができる。これにより、演奏者は、ハイハットアタッチメントの操作レバーを操作するとき、スティックを上下に振ることが容易となる。このため、操作レバーがロッドの右側にセッティングされている場合、ロッドには、操作レバーを介して左回りの力が作用し難くなる。また、この場合、操作レバーの水平方向の距離が短くなるため、操作レバーを介してロッドに作用するトルクも抑えられる。よって、操作レバーが繰り返し叩打されても、ロッドが雌ネジ部に対して緩み難くなるため、操作レバーを最初のセッティング位置に維持することが容易となる。
【0033】
前記操作レバーは、前記ロッドの軸線に近いレバー基端部と、前記ロッドの軸線から離れたレバー先端部とを有し、前記レバー先端部には、前記叩打面から上方に突出する突起が設けられていてもよい。
【0034】
演奏者は、操作レバーの先端部をスティックで叩いて、ハイハットの開いた状態から半開き状態へと切り替えることが多い。このため、操作レバーの叩打面が斜め下方に延びている場合、操作レバーをスティックで叩いた後、スティックが操作レバーの先端部を通過してから下方へと向かい易い。このため、スティックがトップシンバルに触れたり、トップシンバルを誤って叩いてしまうことがある。この点、上記構成によれば、操作レバーの先端部に突起を設けたことで、スティックが操作レバーの先端部よりも下方に向かわないようにすることができる。このため、演奏中にスティックがトップシンバルに触れたり誤ってトップシンバルを叩いてしまうことを抑制できる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、ハイハットを開いた状態から半開き状態へと切り替えるための構成及び操作が簡単であるハイハットアタッチメントを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の一実施形態に係るハイハットアタッチメントを用いてハイハットが取り付けられたハイハットスタンドの全体構成を示す斜視図。
【
図2】ハイハットアタッチメントの全体構成を示す斜視図。
【
図8】下側ユニットが落下し始めるときの状態を示す部分断面図。
【
図9】下側ユニットが最大落下位置まで落下した状態を示す部分断面図。
【
図10】別例のハイハットアタッチメントの全体構成を示す斜視図。
【
図11】別例のハイハットアタッチメントの全体構成を示す斜視図。
【
図12】(a)(b)別例のハイハットアタッチメントの全体構成を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明のハイハットアタッチメント10を具体化した一実施形態について
図1~
図9を参照して説明する。
図1に示すように、ハイハットスタンド1は、脚部2を有するスタンド本体3と、スタンド本体3の下端に固定されるペダル6と、スタンド本体3の内側に挿通されるロッド7とを備えている。ロッド7は、ペダル6を踏み込むことにより下方に移動し、踏み込みを解除することにより上方に移動する。ハイハット8は、トップシンバル8aとボトムシンバル8bとからなる。ボトムシンバル8bは、支持具9を介して、スタンド本体3の上端に下方から支持されている。トップシンバル8aは、ハイハットアタッチメント10を用いて、ロッド7の上端近傍に取り付けられている。
【0038】
ハイハットアタッチメント10は、ロッド7に固定される固定部としての上側ユニット30と、ロッド7に対して摺動可能に支持される下側ユニット40と、上側ユニット30に設けられた操作レバー20とを備えている。下側ユニット40は、上側ユニット30の下方でトップシンバル8aを保持するシンバル保持部として機能する。ハイハットアタッチメント10は、操作レバー20をドラムスティックで上方から叩くことにより、ハイハット8が開いた状態から半開き状態へと切り替えられるように構成されている。また、操作レバー20は、演奏者がドラムスティックで叩打し易いように、ロッド7の右側にセッティングされている。
【0039】
図2及び
図3に示すように、操作レバー20は、レバー部21とアーム部22とフック部23とからなり、略L字状に形成されている。レバー部21は、ロッド7の軸線に近いレバー基端部21aと、ロッド7の軸線から離れたレバー先端部21bとを有している。レバー基端部21aには、取付ネジ24が挿通される挿通孔21cが形成されている。操作レバー20は、取付ネジ24によって、トーションバネ25と共に、上側ユニット30の上部に側方から取り付けられている。操作レバー20は、上側ユニット30に対して取付ネジ24を中心に回動可能に連結されている。トーションバネ25は、上側ユニット30に取り付けられた状態で、操作レバー20を
図2の矢印Pに示す反時計回りに回動させる方向に付勢している。
【0040】
図7に示すように、レバー部21は、ロッド7の軸線C7から離れるにつれて、軸線C7と直交する水平線C8から下方へ離れるように延びている。つまり、レバー部21は、ロッド7付近から斜め下方に延びている。レバー先端部21bには、レバー部21とほぼ同形状をなす略直方体状のクッションゴム26が装着されている。クッションゴム26の上側面26aは、ドラムスティックによって叩打される叩打面として用いられる。
【0041】
レバー部21と同様に、クッションゴム26の上側面26aも、ロッド7の軸線C7から離れるにつれて、軸線C7と直交する水平線C8から下方へ離れるように延びている。また、クッションゴム26の上側面26aも、ロッド7付近から斜め下方に延びている。クッションゴム26の先端部には、上側面26aから突出する突起26bが設けられている。突起26bは、側面視で略三角形状である。突起26bは、クッションゴム26の上側面26aにおける最下位置に形成されている。
【0042】
図2及び
図3に示すように、アーム部22は、レバー基端部21aから鉛直下方に延びている。フック部23は、側面視で略三角状である。フック部23は、先端をレバー部21に向けて、アーム部22の先端に形成されている。フック部23は、下側ユニット40と係合する平坦な係合面23aを有している。
【0043】
上側ユニット30は、ロッド7に挿通される上側ユニット本体31と、固定ボルト33及びナット部材34とを備えている。固定ボルト33及びナット部材34は、上側ユニット本体31をロッド7に固定するために用いられる。上側ユニット本体31には、ロッド7が挿通される中心孔31aが形成されている。また、上側ユニット本体31において、中心孔31aの軸線から横方向にずれた位置には、上下方向に延びる挿通孔31bが形成されている。挿通孔31bの軸線は、中心孔31aの軸線と平行である。上側ユニット本体31の上面には、挿通孔31bの開口端を囲むように当接部としての筒状当接部35が形成されている。
【0044】
図3及び
図4に示すように、上側ユニット本体31には、固定ボルト33のリング部33aが収容される収容空間31cと、収容空間31cから横方向に延びる挿通孔31dとが形成されている。固定ボルト33は、リング部33aを中心孔31aとほぼ一致させると共に先端部を挿通孔31dから突出させた状態で、上側ユニット本体31の収容空間31cに収容されている。この状態で、固定ボルト33の先端部に螺合されたナット部材34を締め付けると、リング部33aによりロッド7が中心孔31aの壁面に押し付けられて、上側ユニット本体31がロッド7に固定される。
【0045】
図2及び
図3に示すように、上側ユニット本体31の下部には、操作レバー20の回動範囲を規制する規制突起36が形成されている。規制突起36は、上側ユニット本体31から側方に突出すると共に、操作レバー20のレバー基端部21aと対向する位置に形成されている。
図7の拡大図に示すように、規制突起36は、レバー基端部21aを向いて配置される平坦面36aを有している。平坦面36aは、レバー部21とほぼ同方向に延びる斜面である。
【0046】
図2及び
図3に示すように、下側ユニット40は、下側ユニット本体41と、下側ユニット本体41に螺合される中空ボルト42と、下側ユニット本体41に中空ボルト42を固定する固定ネジ43とを備えている。下側ユニット本体41の上部には、操作レバー20のフック部23と係合する係合突起44が形成されている。係合突起44は、下側ユニット本体41から側方に突出している。
図7の拡大図に示すように、係合突起44は、操作レバー20のアーム部22を向いて配置される斜面44aと、フック部23の係合面23aと面接触する下面44bと、斜面44aと下面44bとの間に設けられた当接面44cとを有している。
【0047】
図2及び
図3に示すように、下側ユニット本体41には、中空ボルト42が螺合される中心ネジ孔41aと、固定ネジ43が螺合されるネジ孔41cとが形成されている。また、下側ユニット本体41において、中心ネジ孔41aの軸線から横方向にずれた位置には、上下方向に延びるネジ孔41bが形成されている。ネジ孔41bの軸線は、中心ネジ孔41aの軸線と平行である。下側ユニット本体41のネジ孔41bは、上側ユニット本体31の挿通孔31bと対応する位置に形成されている。また、下側ユニット本体41の上面には、ネジ孔41bの開口端を囲むように筒状支持部45が形成されている。
【0048】
中空ボルト42は、上下方向に延びる筒状体からなり、筒状体の内側にロッド7が挿通されるように形成されている。中空ボルト42の上端部には、円筒状のゴムキャップ46が装着されている。中空ボルト42が下側ユニット本体41に固定された状態で、ゴムキャップ46は、下側ユニット本体41の中心ネジ孔41aの上側開口端から露出して配置されている。中空ボルト42の中央ネジ部42aには、ロックナット47と調整ナット48とが螺着されている。中空ボルト42の下端部における外周面には、円環溝42bが形成されている。中空ボルト42の下端付近には、円筒状のフェルト49が挿通されると共に、ストッパアッセンブリ50が装着されている。
【0049】
ストッパアッセンブリ50は、ストッパホルダ51と、ストッパスライダ52とを備えている。ストッパスライダ52は、ストッパホルダ51内に摺動可能に収容されている。ストッパアッセンブリ50は、ストッパスライダ52を摺動させて円環溝42bに係脱させることで、中空ボルト42に着脱されるように構成されている。
図4に示すように、ストッパアッセンブリ50が中空ボルト42に装着されることによって、トップシンバル8aは、フェルト49と調整ナット48との間に挟持されて、取り付けられる。
【0050】
図2及び
図3に示すように、下側ユニット40は、下側ユニット40の最大落下位置を規制する規制部55を備えている。規制部55は、上側ユニット30と下側ユニット40とを連結する連結部としての連結ボルト56を備えている。連結ボルト56は、上側ユニット本体31の挿通孔31bに挿通されると共に、下側ユニット本体41のネジ孔41bに螺合されている。この状態で、連結ボルト56は、ロッド7と平行な軸線を有している。また、連結ボルト56の軸線C56は、ロッド7の軸線C7から横方向にずれて配置されている。
【0051】
連結ボルト56の上端には、連結ボルト56を回すときに操作されるノブ部材57が固定されている。ノブ部材57は、連結ボルト56の頭部として機能する。連結ボルト56の下端には、下側ユニット本体41に連結ボルト56を固定するときに操作されるロックナット58が螺着されている。また、連結ボルト56は、下側ユニット本体41に螺合されるネジ部56aの上端とノブ部材57との間に平滑面からなる外周面56bを有している。
【0052】
規制部55は、連結ボルト56のノブ部材57を上側ユニット本体31の筒状当接部35に当接させることで、下側ユニット40の最大落下位置を規制するように構成されている。また、規制部55は、連結ボルト56、下側ユニット本体41のネジ孔41b及びロックナット58からなるネジ機構59を備えている。規制部55は、ネジ機構59により連結ボルト56の螺合量を調節することで、下側ユニット40の最大落下位置を調整するように構成されている。
【0053】
ハイハットアタッチメント10によれば、操作レバー20と下側ユニット40との係合が解除されることで、下側ユニット40が初期位置から、トップシンバル8aと共に落下する。規制部55は、下側ユニット40及びトップシンバル8aの落下量を連結ボルト56の螺合量、即ち、ネジ孔41bから上方に突出する連結ボルト56の突出量に応じて決定する。具体的には、連結ボルト56を右へ回して下側ユニット本体41のネジ孔41bに挿入することで、ネジ孔41bからの連結ボルト56の突出量が小さくなり、下側ユニット40の落下量も小さくなる。一方、連結ボルト56を左へ回して下側ユニット本体41のネジ孔41bから抜き出すことで、ネジ孔41bからの連結ボルト56の突出量が大きくなり、下側ユニット40の落下量も大きくなる。
【0054】
図5及び
図6に示すように、連結ボルト56の外周には、ばねとしてのコイルスプリング60が装着されている。コイルスプリング60は、上側ユニット本体31と下側ユニット本体41との間に圧縮された状態で、連結ボルト56に装着されている。また、コイルスプリング60は、上側ユニット本体31と下側ユニット本体41とにより圧縮されることにより、下側ユニット40をトップシンバル8aに向けて常時付勢している。
【0055】
次に、上記のハイハットアタッチメント10の作用について
図7~
図9を参照して説明する。ここでは、ハイハット8を開いた状態から半開き状態へと切り替えるまでの操作手順について説明する。
【0056】
図7に示すように、ハイハット8が開いた状態では、下側ユニット40を初期位置に配置するため、操作レバー20のフック部23が下側ユニット40の係合突起44と係合している。このとき、フック部23の係合面23aが係合突起44の下面44bと面接触している。これにより、下側ユニット40が初期位置に保持されている。また、アーム部22の先端部が係合突起44の当接面44cと面接触している。これにより、操作レバー20の反時計回りの回動が規制されている。尚、下側ユニット40の最大落下位置、即ち、トップシンバル8aの最大落下位置は、ノブ部材57を回して連結ボルト56の螺合量を調節することにより、予め調整されている。
【0057】
図8に示すように、ハイハット8を開いた状態から半開き状態へと切り替える場合、操作レバー20の上側面26aがドラムスティックDSによって上方から叩打される。すると、操作レバー20が時計回りに回動して、操作レバー20のフック部23が下側ユニット40の係合突起44から外れる。これにより、操作レバー20と下側ユニット40との係合が解除されるため、下側ユニット40が初期位置から、トップシンバル8aと共に落下し始める。このとき、操作レバー20がドラムスティックDSによって強く叩打されたとしても、操作レバー20のレバー基端部21aが、上側ユニット30の規制突起36の平坦面36aに当接される。これにより、操作レバー20の時計回りの回動は、最大でも
図8に示す回動位置に規制される。
【0058】
図9に示すように、操作レバー20と下側ユニット40との係合が解除されると、下側ユニット40が初期位置から、トップシンバル8aと共に落下する。このとき、連結ボルト56の外周面56bを上側ユニット本体31の挿通孔31bの内周面に対して摺動させながら、下側ユニット40は、トップシンバル8aと共に落下する。そして、連結ボルト56のノブ部材57が上側ユニット本体31の筒状当接部35に当接されることで、下側ユニット40及びトップシンバル8aの落下が、
図9に示す中間位置で止まる。その結果、ハイハット8が開いた状態から半開き状態へと切り替えられる。その後、ハイハットの半開きの程度を微調整するため、ノブ部材57を回して連結ボルト56の螺合量を調節することで、下側ユニット40の最大落下位置が微調整される。
【0059】
従って、本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)ハイハットアタッチメント10は、上側ユニット30と、下側ユニット40と、操作レバー20とを備えている。下側ユニット40は、下側ユニット40の最大落下位置を規制する規制部55を備えている。この構成によれば、規制部55によって、下側ユニット40の最大落下位置を規制することで、ハイハット8を半開きの状態にすることができる。この場合、下側ユニット40の落下位置を規制する構成を追加するだけで、ハイハット8を半開き状態にする構成を実現することができる。よって、簡単な構成によって、ハイハット8を開いた状態から半開き状態へと切り替えることができる。また、操作レバー20を操作して、操作レバー20と下側ユニット40との係合を解除するだけで、下側ユニット40を最大落下位置まで落下させることができる。よって、簡単な操作によって、ハイハット8を開いた状態から半開き状態へと切り替えることもできる。
【0060】
(2)規制部55は、下側ユニット40の最大落下位置を調整するように構成されている。この構成によれば、規制部55によって、下側ユニット40の最大落下位置を調整することで、トップシンバル8aの最大落下位置を調整することができる。この場合、トップシンバル8aの最大落下位置を、ハイハット8が半開き状態から閉じた状態までの間で調整することができる。これにより、ハイハット8を半開き状態にしたときの音色や響きを微調整することができる。よって、ハイハット8の音色や響きのバリエーションを増やすことが容易となる。
【0061】
(3)規制部55は、ネジ機構59により連結ボルト56の螺合量を調節することで、下側ユニット40の最大落下位置を調整するように構成されている。この構成によれば、ネジ機構59によって、下側ユニット40の最大落下位置を連続的に調整することができ、トップシンバル8aの最大落下位置を連続的に調整することができる。これにより、ハイハット8を半開き状態にしたときの音色や響きを微調整することが容易となる。
【0062】
(4)連結ボルト56は、上側ユニット本体31の挿通孔31bに挿通されると共に、下側ユニット本体41のネジ孔41bに螺合されている。また、規制部55は、連結ボルト56のノブ部材57を上側ユニット本体31の筒状当接部35に当接させることで、下側ユニット40の最大落下位置を規制するように構成されている。この構成によれば、規制部55を、上側ユニット本体31と、下側ユニット本体41のネジ孔41bに螺合された連結ボルト56とから構成することができる。これにより、規制部55を上側ユニット本体31、下側ユニット本体41及び連結ボルト56のいずれとも別の部材から構成する場合と比較して、追加される部品の数を少なくすることができる。
【0063】
(5)規制部55は、上側ユニット30と下側ユニット40とを連結する連結部としての連結ボルト56を備えている。この構成によれば、上側ユニット30と下側ユニット40とが連結ボルト56を介して連結されているため、ハイハットアタッチメント10をハイハットスタンド1から取り外しても、上側ユニット30と下側ユニット40とが分離することはない。よって、ハイハットアタッチメント10の取り扱いが容易となる。
【0064】
(6)連結ボルト56は、上側ユニット本体31の挿通孔31bに挿通されると共に、下側ユニット本体41のネジ孔41bに螺合されている。この状態で、連結ボルト56は、ロッド7と平行な軸線を有している。また、連結ボルト56の軸線は、ロッド7の軸線から横方向にずれて配置されている。この構成によれば、上側ユニット30及び下側ユニット40の各主要部を避けて、上側ユニット30と下側ユニット40との連結構造を形成することができる。この場合、連結構造を上側ユニット30及び下側ユニット40の各主要部と同軸上に形成する構成と比較して、ハイハットアタッチメント10の上下方向の寸法をコンパクトにすることができる。
【0065】
(7)規制部55は、連結ボルト56のノブ部材57を上側ユニット本体31の筒状当接部35に当接させることで、下側ユニット40の最大落下位置を規制するように構成されている。また、規制部55は、ネジ機構59により連結ボルト56の螺合量を調節することで、下側ユニット40の最大落下位置を調整するように構成されている。この構成によれば、連結ボルト56を追加するだけで、下側ユニット40の最大落下位置を規制する構成と、下側ユニット40の最大落下位置を調整する構成とを実現することができる。よって、追加される部品の数を少なくすることができ、ハイハットアタッチメント10全体の構成を簡素化することができる。また、連結ボルト56の螺合量を調節することで、下側ユニット40の最大落下位置を連続的に調整することができ、トップシンバル8aの最大落下位置を連続的に調整することができる。
【0066】
(8)連結ボルト56は、下側ユニット本体41に螺合されるネジ部56aの上端とノブ部材57との間に平滑面からなる外周面56bを有している。この構成によれば、操作レバー20と下側ユニット40との係合が解除された場合、連結ボルト56の外周面を上側ユニット本体31の挿通孔31bの内周面に対して摺動させながら、下側ユニット40を落下させることができる。この場合、連結ボルト56の外周面が平滑面であるため、下側ユニット40を円滑に落下させることができる。よって、ハイハット8を開いた状態から半開き状態、又は閉じた状態へと円滑に切り替えることができる。
【0067】
(9)コイルスプリング60は、上側ユニット本体31と下側ユニット本体41との間に圧縮された状態で、連結ボルト56に装着されている。また、コイルスプリング60は、上側ユニット本体31と下側ユニット本体41とにより圧縮されることにより、操作レバー20と下側ユニット40との係合が解除されている状態で、下側ユニット40をトップシンバル8aに向けて常時付勢している。この構成によれば、トップシンバル8aが叩打されて大きく揺れたとしても、コイルスプリング60の付勢力によって、操作レバー20と下側ユニット40との係合が解除された状態を維持することができる。このため、ハイハットスタンド1のペダル6を操作しない限り、下側ユニット40がトップシンバル8aと共に持ち上げられ難くなる。よって、ユーザの意図に反してハイハット8が閉じた状態から開いた状態へと切り替えられ難くなる。
【0068】
(10)ハイハットスタンド1では、ロッド7の下端が、ペダル6の先端に連結された雌ネジ部に螺着されている。このため、ロッド7は、雌ネジ部に締め付けられることで、ペダル6の先端に固定されている。また、ハイハットアタッチメント10を用いてハイハット8をハイハットスタンド1に取り付けた状態では、ハイハットアタッチメント10がハイハット8よりも上方に配置されている。この場合、ハイハット8をドラムスティックDSで叩打するときには、ドラムスティックDSを上下に振ることが容易であるものの、ハイハットアタッチメント10の操作レバー20を操作するときには、ドラムスティックDSを上下に振ることが難しくなる。このため、演奏者は、ドラムスティックDSを立てて前方に押し出すようにして、ハイハットアタッチメント10の操作レバー20を操作することがある。この場合、操作レバー20がロッド7の右側にセッティングされていると、ロッド7には、操作レバー20を介して左回りの力が作用し易くなる。このため、操作レバー20の操作が繰り返されると、ロッド7が雌ネジ部に対して緩み易くなり、操作レバー20を最初のセッティング位置に維持できなくなる。
【0069】
この点、本実施形態によれば、クッションゴム26の上側面26aは、ドラムスティックDSによって叩打される叩打面として用いられる。また、クッションゴム26の上側面26aは、ロッド7の軸線C7から離れるにつれて、ロッド7の軸線C7と直交する水平線C8から下方へ離れるように延びている。つまり、クッションゴム26の上側面26aが、ロッド7付近から斜め下方に延びている。このため、ロッド7付近から水平方向に延びる操作レバーよりも、クッションゴム26の上側面26aをトップシンバル8aに近づけることができる。これにより、演奏者は、ハイハットアタッチメント10の操作レバー20を操作するとき、ドラムスティックDSを上下に振ることが容易となる。このため、操作レバー20がロッド7の右側にセッティングされている場合、ロッド7には、操作レバー20を介して左回りの力が作用し難くなる。また、この場合、操作レバー20の水平方向の距離が短くなるため、操作レバー20を介してロッド7に作用するトルクも抑えられる。よって、操作レバー20が繰り返し叩打されても、ロッド7が雌ネジ部に対して緩み難くなるため、操作レバー20を最初のセッティング位置に維持することが容易となる。
【0070】
(11)演奏者は、操作レバー20の先端部をドラムスティックDSで叩いて、ハイハット8を開いた状態から半開き状態へと切り替えることが多い。このため、クッションゴム26の上側面26aが斜め下方に延びている場合、操作レバー20をドラムスティックDSで叩いた後、ドラムスティックDSが操作レバー20の先端部を通過してから下方へと向かい易い。このため、ドラムスティックDSがトップシンバル8aに触れたり、トップシンバル8aを誤って叩いてしまうことがある。この点、本実施形態によれば、クッションゴム26の先端部には、上側面26aから突出する突起26bが設けられている。このように、操作レバー20の先端部に突起26bを設けたことで、ドラムスティックDSが操作レバー20の先端部よりも下方に向かわないようにすることができる。このため、演奏中にドラムスティックDSがトップシンバル8aに触れたり誤ってトップシンバル8aを叩いてしまうことを抑制できる。
【0071】
本実施形態は、以下のように変更してもよい。
・本実施形態において、操作レバー20は、上側ユニット30に代えて、下側ユニット40に設けてもよい。例えば、
図10に示すように、操作レバー81を、取付ネジ24によって、下側ユニット40に側方から取り付けてもよい。この場合、ハイハットアタッチメント80は、ドラムスティック等を用いて操作レバー81を上方から叩くと操作レバー81が時計回りに回動し、操作レバー81のフック部83が上側ユニット84の係合突起85から外れるように構成されている。フック部83は、先端をレバー部86と反対側に向けて、アーム部87の先端に形成されている。係合突起85は、
図2に示す係合突起44を上下逆向きにした形状を有している。
【0072】
・本実施形態において、規制部55は、下側ユニット40の最大落下位置を規制する機能のみ備えてもよい。つまり、規制部55から、ネジ機構59により最大落下位置を調整する機能を省略してもよい。
【0073】
・本実施形態において、規制部55は、上側ユニット30及び下側ユニット40のいずれとも別の部材であってもよく、例えば、
図11に示すように、規制部は、ハイハットスタンド1のロッド7に固定される固定具90であってもよい。この構成によれば、操作レバー20を操作して操作レバー20と下側ユニット40との係合を解除した場合、固定具90によって、下側ユニット40を最大落下位置まで落下させることができる。
【0074】
・本実施形態において、シンバル保持部として機能する下側ユニット40の最大落下位置を調整するため、ネジ機構59を、ロッド7の軸線から横方向にずれて配置したが、ロッド7の軸線と同軸上に配置してもよい。例えば、
図12(a)(b)に示すように、ハイハットアタッチメント100は、ハイハットスタンドのロッド7に固定される固定具101と、ロッド7に対して摺動可能に支持されるアタッチメント本体102を備えている。アタッチメント本体102の上部には、ロッド7の軸線と同軸上に配置されるネジ機構103が設けられている。ネジ機構103は、アタッチメント本体102の上部に形成されるネジ孔102aと、ネジ孔102aに螺合されるボルト104とから構成されている。この構成によれば、操作レバー105と固定具101との係合が解除されることで、アタッチメント本体102が
図12(a)に示す初期位置から
図12(b)に示す最大落下位置へと、図示しないトップシンバルと共に落下する。規制部としてのネジ機構103は、アタッチメント本体102及びトップシンバルの落下量Hをボルト104の螺合量、即ち、ネジ孔102aから下方に突出するボルト104の突出量に応じて決定する。この場合、ネジ孔102aからボルト104の突出量が大きいほど、アタッチメント本体102の落下量が小さくなる。
【0075】
・本実施形態において、連結部は、連結ボルト56でなくてもよい。つまり、連結部は、下側ユニット40から上方に延びると共に上端に頭部を有するシャフトでもよい。この場合、シャフトの頭部を上側ユニット本体31の筒状当接部35に当接させて、下側ユニット40の最大落下位置を規制すればよい。また、上記のように、連結ボルト56をシャフトに変更することで、ハイハットアタッチメント10から、下側ユニット40の最大落下位置を調整可能にする構成を省略してもよい。
【0076】
・本実施形態において、連結ボルト56の外周面は、平滑面でなくてもよい、例えば、連結ボルトの軸線に沿って延びる縦溝が形成された面であってもよい。
・本実施形態において、連結ボルト56の外周に装着されたコイルスプリング60は省略してもよい。
【符号の説明】
【0077】
1…ハイハットスタンド、6…ペダル、7…ロッド、8…ハイハット、8a…トップシンバル、8b…ボトムシンバル、10…ハイハットアタッチメント、20…操作レバー、21a…レバー基端部、21b…レバー先端部、26a…上側面、26b…突起、30…上側ユニット、40…下側ユニット、55…規制部、59…ネジ機構、56…連結ボルト、56b…外周面、60…コイルスプリング。