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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-28
(45)【発行日】2023-01-12
(54)【発明の名称】消毒するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/18 20060101AFI20230104BHJP
   A01N 59/00 20060101ALI20230104BHJP
   A61L 101/22 20060101ALN20230104BHJP
   A61L 101/34 20060101ALN20230104BHJP
   A61L 101/36 20060101ALN20230104BHJP
   A61L 101/56 20060101ALN20230104BHJP
【FI】
A61L2/18 102
A61L2/18
A01N59/00 A
A61L101:22
A61L101:34
A61L101:36
A61L101:56
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019514189
(86)(22)【出願日】2017-05-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-27
(86)【国際出願番号】 US2017034519
(87)【国際公開番号】W WO2017205649
(87)【国際公開日】2017-11-30
【審査請求日】2020-05-20
(31)【優先権主張番号】62/341,799
(32)【優先日】2016-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518416506
【氏名又は名称】マークスベリー ブルー パール エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】MARKESBERY BLUE PEARL LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100094640
【弁理士】
【氏名又は名称】紺野 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100103447
【弁理士】
【氏名又は名称】井波 実
(74)【代理人】
【識別番号】100111730
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 武泰
(74)【代理人】
【識別番号】100180873
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 慶政
(72)【発明者】
【氏名】マークスベリー、 ダブリュー、 ラッセル
(72)【発明者】
【氏名】パンチェリ、 ユージーン、 ジェイ
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-515072(JP,A)
【文献】特表2009-505655(JP,A)
【文献】特開2000-060418(JP,A)
【文献】特表2002-505658(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0316055(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101801423(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0311691(US,A1)
【文献】国際公開第2010/056871(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/139300(WO,A1)
【文献】特表2013-516359(JP,A)
【文献】K.Y.Bell et al.,Reduction of foodborne micro-organisms on beef carcass tissue using acetic acid, sodium bicarbonate, and hydrogen peroxide spray washes,Food Microbiology,1997年,vol. 14,pp. 439-448
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/00- 2/28
A61L 11/00- 12/14
A01N 1/00- 65/48
A01P 1/00- 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある容積空間内で消毒が必要な表面を消毒する方法であって、
a)過酸化化合物または過酸化化合物と反応して過酸を形成することができる有機酸化合物のいずれかである第1の過酸反応体化合物を有する第1の水性組成物の複数の液滴を前記容積空間内に分散させる工程;
b)前記第1の水性組成物が前記容積空間全体に分散するのに十分な時間を与え、前記表面上の有効な均一な厚さを有する合体層に堆積させ合体させ、前記分散させた第1の水性組成物の量は、少なくとも1ミクロン及び最高で20ミクロンの前記有効な均一な厚さを有する前記第1の水性組成物の前記合体層を提供するのに十分な量である工程;
c)前記第1の過酸反応体化合物の他方である第2の過酸反応体化合物を有する第2の水性組成物の複数の液滴を前記容積空間内に分散させる工程;および
d)前記第2の水性組成物の前記液滴が前記第1の水性組成物の前記合体層上に堆積させて反応層を形成するのに十分な第2の時間を与え、前記分散させた第2の水性組成物の量は、少なくとも1ミクロンであり最高で20ミクロンの有効な均一な厚さを有する前記第2の水性組成物の合体層を提供するのに十分な量であり、それによって前記表面上の前記反応層にin situで過酸を形成し、前記表面を消毒する工程;
を有する、上記方法。
【請求項2】
前記第1の水性組成物および前記第2の水性組成物の少なくとも99.0重量%が、20℃で少なくとも1.0mmHgの標準蒸気圧を有する化合物を有し、前記第1の水性組成物および前記第2の水性組成物が、界面活性剤、ポリマー、キレート化剤、および金属コロイドまたは金属ナノ粒子から実質的にフリーである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記容積空間内に分散される前記第1の水性組成物の前記複数の液滴の大半は、その有効直径が少なくとも5ミクロンであり、かつ100ミクロンまでである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記容積空間に分散され且つ前記表面上の前記合体層に合体された前記第1の水性組成物又は前記第2の水性組成物の前記過酸化化合物の化学量論量が、前記容積空間に分散され且つ前記第1の水性組成物の前記合体層上に堆積された前記第1の水性組成物又は前記第2の水性組成物の前記有機酸化合物の化学量論量に等しいかまたはそれより多く、前記有機酸化合物を含む前記水性組成物のpHが7以下である、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記第1の過酸反応体化合物が酢酸を有し、前記第2の過酸反応体化合物が過酸化水素を含有し、前記第1の水性組成物が、酢酸を少なくとも0.5重量%でありかつ50重量%まで有し、前記第2の水性組成物が、過酸化水素を少なくとも0.5重量%でありかつ25重量%まで有する、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記第1の水性組成物および前記第2の水性組成物の少なくとも1つが、エタノール、イソプロパノール、t-ブタノール、およびそれらの混合物からなる群から選択される低級アルコールを1~25重量%、さらに有する、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記第1の水性組成物または前記第2の水性組成物の少なくとも1つが、マヌカハニー、およびオレガノ、タイム、レモングラス、レモン、オレンジ、アニス、クローブ、アニスの実、シナモン、ゼラニウム、バラ、ミント、ペパーミント、ラベンダー、シトロネラ、ユーカリ、サンダルウッド、ヒマラヤスギ、ロスマリン、マツ、ヴァーヴェインフリーグラス、ラタニアの精油、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される天然殺生物剤、又は、
メチルグリオキサール、カルバクロール、オイゲノール、リナロール、チモール、p-シメン、ミルセン、ボルネオール、カンフル、カリオフィリン、シンナムアルデヒド、ゲラニオール、ネロール、シトロネロール、およびメントール、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される天然殺生物剤を0.001~1重量%含む、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記第1の水性組成物の前記複数の液滴が静電帯電される、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
水から本質的になる第3の水性組成物の複数の液滴を前記容積空間内に分散させる工程と、前記第3の水性組成物が前記容積空間全体に分散するのに十分な時間を与える工程をさらに有する、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消毒および滅菌方法の分野にある。
【背景技術】
【0002】
我々が相互作用する物体の微生物の負荷を最小限に抑えるために、安価で効果的である一方、安全で便利な方法が必要である。また、この方法は、未来の治療に対する耐性を備える微生物を残してはならない。この必要性は、病院および医療施設における容認できないほど高い感染率によって、主に証明される。しかし、保育施設や、学校、食品産業、旅行業界などにも、問題は存在している。さらに、これらの問題は、事実上すべての既知の抗生物質に耐性のある微生物が、より一般的になってきているので、より深刻なものになっている。軽度の感染症でさえも生命を脅かす、プレ抗生物質時代に似ているポスト抗生物質時代に間もなく入り得ることが予測されている。
【0003】
その結果、微生物が耐性を発揮するのを妨げ、ヒト、ペット、およびそれらに曝され得る他の有益な生物に有害ではない成分の化合物を用いる、実質的にすべての微生物を死滅させる方法が必要となっている。これを行う潜在的な方法は、ヒトに対して比較的安全であるが殺菌性のある成分および方法を利用することであろう。
【0004】
抗生物質時代の数世紀前から、ヒトは安全に天然の殺生物剤を利用している。酢は、微生物の影響から食品を保護することがよく知られており、このことは多くの漬け物食品によって証明される。また、エタノール(アルコール飲料)が何年も使用されている。例えば、ヨーロッパでは、地元の水の代わりにワインやビールを醸造したり飲んだりしていた中世の修道士は、寿命が比較的長かった。さらに、特定のスパイス、精油、および蜂蜜もまた、抗菌性を有する。もっと最近では、過酸化水素が微生物と戦うことが示されており、過酸化水素は長い間、動物に感染させる微生物との動物の永遠の闘いの中で進化した内的方法であった。電気は殺生物効果を有する。また、太陽光は、紫外線の波長でエネルギーを放出しており、これは、その殺生物性でよく知られている。
【0005】
これらの安全な殺生物剤の問題点は、各々が個々にあらゆる種類の微生物に対して有効であるのではなく、いくつかの標的の微生物がこれらの殺生物剤に対する防御機構を発達させてきたということである。しかし、これらの殺生物剤の2つ以上の組み合わせは、相乗的に作用してそれぞれの効果を増強することが証明されている。具体的には、過酸化水素と酢酸(酢の主成分)とを組み合わせて過酢酸を形成することが、特に有効であることが判明している。過酢酸を含む過酸を利用したいくつかの方法、装置、および消毒システムは、米国特許第6,692,694号、第7,351,684号、第7,473,675号、第7,534,756号、第8,110,538号、第8,696,986号、第8,716,339号、第8,987,331号、第9,044,403号、第9,050,384号、第9,192,909号、第9,241,483号、ならびに米国特許出願公開公報第2015/0297770号および第2014/0178249号に記載されており、これらの開示は、その全体が参照により組み込まれる。
【0006】
しかし、過酸を使用することによる最大の欠点の1つは、それらが容易に加水分解されて通常の酸、および酸素または水を生成することである。結果的には、過酢酸は貯蔵安定性が制限され、貯蔵期間が短い。過酢酸不安定性は、米国特許第8,034,759号に詳細に記載されており、その開示は、その全体が参照により組み込まれる。市販の製品は、過酸の形態に平衡させるためのかなり過剰な過酸化水素か、安定剤、例えばその他の酸、酸化剤、および界面活性剤を含むことによって、この問題に対処する追加の成分を含有している場合が多い。いくつかの方法は、過酸組成物の個々の成分を一緒に混合し、続いて標的が消毒または滅菌される場所および時間に適用することを必要とすることにより、輸送間や貯蔵間に分解するのを防止してきた。しかし、それにもかかわらず、これらの方法は、多価アルコール、エステル、および遷移金属のような入手困難な高価な添加剤、ならびに特定の反応条件を必要とする。
【0007】
過酸組成物を安定化させるのに採られる措置の非限定的な例として、米国特許第8,716,339号では、アルコール、有機カルボン酸、および遷移金属または金属合金を含む第1の溶液を含む第1の室と、過酸化水素を含む第2の溶液を含む第2の室とを含む消毒剤システムを記載している。消毒に先行して、システムは、混合物を表面上に分配する前に第1および第2の溶液を混合するように構成される。第1および第2の溶液を混合して、分配前に消毒剤システム内で過酸を形成するが、溶液が混合されてから混合物が汚染された表面に到達するまでの期間に過酸を安定化させるのに、遷移金属の存在が必要となる。
【0008】
同様に、米国特許第8,110,538号は、光反応性界面活性剤およびポリマーを組み合わせた平衡反応生成物を伴う過酸化物および過酸を含有する殺菌剤、抗菌剤および除染剤組成物を記載しており、ポリマーは過酸および過酸化物と相互作用する。そのような平衡反応生成物には、酢酸や他のカルボン酸のような有機酸が含まれる。過剰な量の過酸化水素および有機酸を含むことにより、組成物はル・シャトリエの原理を利用して過酸加水分解から平衡をずらし、組成物内の過酸の存在を安定化させる。さらに、ポリマーは、組成物内の過酸および過酸化物と付加物や化学錯体を形成することによって、安定剤としてさらに作用する。
【0009】
上記の例の両方において、追加的に添加された成分は、過酸組成物を消毒される表面上に分配する前に過酸組成物を安定化させるのに役立つ。しかし、これらの構成要素は高価であり、比較的希少であり、消毒する環境内で望ましくない影響を及ぼすことがある。このような望ましくない影響には、処理された表面および表面領域に、除去することができれば、除去する時間、費用および努力が必要である残渣、フィルム、汚れ、および刺激臭が残ることが、往々にして含まれる。そのような望ましくない影響が後で解決できても、その環境を滅菌するために空気伝達の粒子または過酸を環境中に分散させることに関連性のある安全性の懸念が知られている。安全性データおよび推奨される曝露レベルは、Acute Exposure Guideline Levels for Selected Airborne Chemicals, National Research Council (US) Committee on Acute Exposure Guideline Levels, pg.327-367, Volume 8, 2010に詳細に記載されている。その開示は全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0010】
その結果、安価で容易に入手可能な材料を用いながら、同時に効果的で便利で安全である過酸を利用した滅菌および消毒方法が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、過酸の化学的性質を利用して表面を消毒する一方、表面に接触する前の任意の時点で過酸を形成することに関連する不安定性の問題およびヒトの安全性の問題を排除する方法を提供する。本発明は、過酸反応体化合物を別々の適用工程で分散させ、過酸をその表面にin situ(イン・サイチュ)で直接形成することによって表面を消毒するための改良された方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
いくつかの態様において、微生物が将来の世代に耐性を与える突然変異を発生させることができないように、互いに協働して作用する実質的に異なる機構を注意深く選択することにより、広範かつ完全な微生物死滅が達成される。さらなる態様において、本明細書に記載の方法は、特定の表面を腐食および/または微生物の汚染から保護することができる予防コーティングを提供することができる。
【0013】
いくつかの態様において、ある容積領域またはある容積空間内で消毒が必要な表面を消毒する方法であって、a)過酸化化合物または過酸化化合物と反応して過酸を形成することができる有機酸化合物のいずれかである第1の過酸反応体化合物を有する第1の水性組成物の複数の液滴を容積空間内に分散させる工程;b)第1の水性組成物が容積空間全体に分散するのに十分な時間を与え、表面上の層に堆積させて合体させる工程;c)第1の過酸反応体化合物の他方である第2の過酸反応体化合物を有する第2の水性組成物の複数の液滴を容積空間内に分散させる工程;およびd)第2の水性組成物の液滴が第1の水性組成物の合体層上に堆積させて反応層を形成するのに十分な第2の時間を与え、それによって反応層上にin situで過酸を形成して表面を消毒する工程;を有する方法を提供する。
【0014】
いくつかの態様において、有機酸化合物を有する組成物のpHは、約7以下である。さらなる態様において、反応層のpHは約7以下である。
【0015】
いくつかの態様において、分散させた過酸化化合物の化学量論量は、分散させた有機酸化合物の化学量論量に等しいかまたはそれより多い。
【0016】
いくつかの態様において、水性組成物の1つ以上は、反応層の少なくとも90%が、形成されてから30分以内に蒸発することができるような揮発性を有する。さらなる態様において、反応層の少なくとも95%が、標準的な条件で、形成されてから30分以内に蒸発することができる。なおさらなる態様において、反応層の少なくとも99%が、形成されてから30分以内に蒸発することができる。さらなる態様において、反応層の少なくとも99.5%が、形成されてから30分以内に蒸発することができる。さらなる態様において、反応層の少なくとも99.7%が、形成されてから30分以内に蒸発することができる。さらに他の態様において、反応層の少なくとも99.9%が、形成されてから30分以内に蒸発することができる。
【0017】
別の態様において、1つ以上の水性組成物の個々の成分は、容積空間内の表面の滅菌が完了した後に反応層の蒸発を促進する蒸気圧を有するように選択することができる。さらなる態様において、水性組成物の少なくとも約99.0重量%、99.5重量%または99.9重量%の成分が20℃で少なくとも1.0mmHgの蒸気圧を有するように水性組成物の一方または両方を配合することができる。なおさらなる態様において、水性組成物の実質的に100重量%の成分が、20℃で少なくとも約1.0mmHgの蒸気圧を有するように水性組成物の1つまたは両方を配合することができる。
【0018】
いくつかの態様において、本質的に100%の水性組成物が液滴として分散される。さらなる態様において、複数の液滴の有効直径は、液滴が容積空間内で消毒される意図された表面の多様性に到達するのに十分小さく、かつ、液滴が吸入された場合に深い肺への浸透を最小限にするほど大きくなるように制御する。他の態様において、容積空間内に分散される複数の液滴の大半は、その有効直径が少なくとも約1ミクロン、例えば少なくとも約5ミクロン、少なくとも約10ミクロン、少なくとも約15ミクロン、少なくとも約20ミクロン、少なくとも約25ミクロン、少なくとも約30ミクロン、少なくとも約35ミクロン、少なくとも約40ミクロン、少なくとも約45ミクロン、少なくとも約50ミクロン、少なくとも約60ミクロン、少なくとも約70ミクロン、少なくとも約80ミクロン、または少なくとも約90ミクロン、最高約100ミクロンである。さらなる態様において、容積空間内に分散される複数の液滴の大半は、約10~約25ミクロンの有効直径を有する。なおさらなる態様において、容積空間内に分散される複数の液滴の大半は、約15ミクロンの有効直径を有する。
【0019】
いくつかの態様において、第1および第2の水性組成物の合体層は、それぞれ、有効な均一な厚さを有する。さらなる態様において、合体層は、その有効な均一な厚さが少なくとも約1ミクロン、例えば少なくとも約2ミクロン、または少なくとも約3ミクロン、または少なくとも約5ミクロン、または少なくとも約8ミクロン、または少なくとも約10ミクロン、または少なくとも約15ミクロン、最高で約20ミクロンである。なおさらなる態様において、合体層は、約3~約8ミクロンの有効な均一な厚さを有する。
【0020】
いくつかの態様において、過酸化化合物は、過酸化水素、金属過酸化物、およびオゾンなどの非限定的な過酸化物を含むことができる。さらなる態様において、過酸化化合物を含む水性組成物は、過酸化水素を少なくとも約0.1重量%、例えば少なくとも約0.5重量%、少なくとも約1重量%、少なくとも約2重量%、少なくとも約4重量%、少なくとも約6重量%、少なくとも約8重量%、少なくとも約10重量%、少なくとも約12重量%、少なくとも約14重量%、少なくとも約16重量%、少なくとも約18重量%、または少なくとも約20重量%、最高約25重量%含む。なおさらなる態様において、過酸化化合物を含む水性組成物は、過酸化化合物を約5~約15重量%含む。さらなる態様において、過酸化化合物を含む水性組成物は、約10%の過酸化化合物を含む。さらに別の態様において、過酸化化合物は過酸化水素である。さらに別の態様において、過酸化水素は、第1の水性組成物内に分散される。
【0021】
いくつかの態様において、有機酸化合物は、過酸化化合物と反応して過酸を形成することができる任意の有機酸を含むことができる。さらなる態様において、有機酸化合物を有する水性組成物は、酢酸を少なくとも約0.5重量%、例えば少なくとも約1重量%、少なくとも約2重量%、少なくとも約5重量%、少なくとも約10重量%、少なくとも約15重量%、少なくとも約20重量%、少なくとも約25重量%、少なくとも約30重量%、少なくとも約35重量%、少なくとも約40重量%または少なくとも約45重量%、最高約50重量%含む。さらに別の態様において、有機酸化合物を有する水性組成物は、約2~約20重量%の有機酸化合物を含む。なおさらなる態様において、有機酸化合物を含む水性組成物は、約10重量%の有機酸化合物を含む。さらなる態様において、有機酸化合物は第2の水性組成物中に分散される。
【0022】
いくつかの態様において、有機酸化合物は、1つ以上のカルボン酸官能基を有する。さらなる態様において、有機カルボン酸は、蟻酸、酢酸、クエン酸、コハク酸、シュウ酸、プロパン酸、乳酸、ブタン酸、ペンタン酸、およびオクタン酸からなる群から選択される。なおさらなる態様において、有機酸化合物は酢酸である。
【0023】
いくつかの態様において、第1の水性組成物または第2の水性組成物の少なくとも1つは、アルコールをさらに含む。さらなる態様において、水性組成物は、アルコールを少なくとも約0.05重量%、少なくとも約0.1重量%、少なくとも約1重量%、少なくとも約5重量%、少なくとも約10重量%、少なくとも約15重量%、少なくとも約20重量%、少なくとも約25重量%、少なくとも約30重量%、少なくとも約40重量%、少なくとも約50重量%、または少なくとも約60重量%、最高約70重量%含む。なおさらなる態様において、水性組成物は、約1~約25重量%のアルコールを含む。なおさらなる態様において、水性組成物は約15重量%のアルコールを含む。なおさらなる態様において、アルコールは、エタノール、イソプロパノール、およびt-ブタノール、およびそれらの混合物からなる群から選択される低級アルコールを含む。なおさらなる態様において、アルコールはイソプロパノールを含む。
【0024】
いくつかの態様において、第1の水性組成物または第2の水性組成物の少なくとも1つは、1つ以上の天然殺生物剤をさらに含む。非限定的な例として、このような化合物には、マヌカハニーおよび/または精油が含まれる。さらなる態様において、精油は、オレガノ、タイム、レモングラス、レモン、オレンジ、アニス、クローブ、アニスの実、シナモン、ゼラニウム、バラ、ミント、ペパーミント、ラベンダー、シトロネラ、ユーカリ、サンダルウッド、ヒマラヤスギ、ロスマリン、マツ、ヴァーヴェインフリーグラス、およびラタニア、それらの組み合わせなどの精油から選択される。なおさらなる態様において、水性組成物は、天然殺生物剤を約0.001~約1重量%含む。
【0025】
他の態様において、第1の水性組成物または第2の水性組成物の少なくとも1つは、マヌカハニーおよび精油中に一般的に見られる1つ以上の天然殺生物性化合物をさらに含む。さらなる態様において、天然殺生物性化合物は、メチルグリオキサール、カルバクロール、オイゲノール、リナロール、チモール、p-シメン、ミルセン、ボルネオール、カンフル、カリオフィリン、シンナムアルデヒド、ゲラニオール、ネロール、シトロネロール、およびメントール、それらの組み合わせなどからなる群から選択される。なおさらなる態様において、水性組成物は、天然殺生物性化合物を約0.001~約1重量%含む。
【0026】
いくつかの態様において、本方法は、第1の水性組成物、第2の水性組成物、および反応層の少なくとも1つを、紫外光から本質的になる波長で照らす工程をさらに有する。
【0027】
いくつかの態様において、第1の水性組成物および/または第2の水性組成物の複数の液滴が静電帯電される。
【0028】
いくつかの態様において、第1の水性組成物の複数の液滴および/または第2の水性組成物の複数の液滴が静電帯電される。さらなる態様において、第2の水性組成物の複数の液滴は、第1の水性組成物の複数の液滴の反対極性で静電帯電される。
【0029】
いくつかの態様において、第1の水性組成物および第2の水性組成物の複数の液滴の静電荷が、第1および第2の過酸反応体化合物の最も望ましい反応を提供するように最適化される。さらなる態様において、過酸化化合物を含む水性組成物の複数の液滴は、負電荷で分散される。他の態様において、有機酸化合物を含む水性組成物の複数の液滴は、正電荷で分散される。
【0030】
いくつかの態様において、消毒を必要とする表面は接地されている。
【0031】
いくつかの態様において、第1の水性組成物および第2の水性組成物を加熱して、周囲空気において個々の過酸反応体化合物を有する蒸気相が生成され、過酸反応体化合物を有する該蒸気相を容積空間全体に分散させ、冷却されて液滴に凝縮するのに十分な時間を与えることにより、第1の水性組成物および第2の水性組成物の複数の液滴が形成される。
【0032】
いくつかの態様において、第1の水性組成物および第2の水性組成物は、別々に、約250℃を超える温度まで加熱される。あるいは、第1の水性組成物および第2の組成物は、第1の水性組成物および第2の水性組成物の質量を約30分未満、例えば約25分未満、約20分未満、約15分未満、約10分未満、または約5分未満の蒸発時間で蒸発させるのに十分な温度まで、別々に加熱される。さらなる態様において、第1の水性組成物および第2の組成物は、別個に、約2分で、第1の水性組成物および第2の水性組成物の質量を気化させるのに十分な温度に加熱される。
【0033】
いくつかの態様において、蒸気相中の第1の水性組成物および第2の水性組成物は、別個に、約55℃未満の温度に冷却されて液滴に凝縮し、消毒される容積空間内の表面上に堆積する。
【0034】
いくつかの態様において、蒸気相中の第1の水性組成物は、第1の水性組成物を第1の高温のガスの流れの中に導入することによって形成され、蒸気相中の第2の水性組成物は、第2の水性組成物を第2の高温のガスの流れの中に導入することによって形成される。
【0035】
いくつかの態様において、1つ以上の水性組成物は、食品グレードの成分を有してなる。さらなる態様において、1つ以上の水性組成物は、界面活性剤、ポリマー、キレート剤、および金属コロイドまたは金属ナノ粒子から実質的にフリーである。
【0036】
いくつかの態様において、第1の水性組成物および第2の水性組成物の適用は、微生物のログ6以上の死滅を達成する。
【0037】
いくつかの態様において、本方法は、水を有する第3の水性組成物の複数の液滴、一部の態様において水から本質的になる第3の水性組成物の複数の液滴を容積空間内に分散させる工程、及び第3の水性組成物が容積空間全体に分散するのに十分な時間を与える工程をさらに有する。さらなる態様において、第3の水性組成物の複数の液滴が静電帯電される。
【0038】
いくつかの態様において、本方法は、水から本質的になる前処理組成物を容積空間内に分散させ、容積空間内の湿度を増加させて、過酸反応体化合物を含む水性組成物の液滴を安定化させるか又は維持し、過酸反応体化合物の液滴が消毒される表面に到達してそれらに堆積する前に液滴が失われたり環境内や容積空間内に蒸発したりすることを制限または防止する工程をさらに有することができる。いくつかの態様において、容積空間の相対湿度を約50%、例えば少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%の少なくとも1つに上昇させるために、水から本質的になる前処理組成物の十分な体積又は質量を容積空間に分散させることができる。さらなる態様において、水から本質的になる前処理組成物の十分な体積または質量を容積空間内に分散させて、容積空間の相対湿度を約80%以上、例えば少なくとも約90%、少なくとも約95%または少なくとも約99%の少なくとも1つに上昇させる。
【0039】
別の態様において、本方法は、第1の過酸反応体化合物を含む第1の水性組成物の分散後、水から本質的になる中間組成物を容積空間内に分散させる工程を含むことができ、空気から第1の水性組成物のいずれかの過剰な液滴または滞留する液滴の堆積を合体させ、さらに堆積させるようにする。
【0040】
別の態様において、本方法は、第2の過酸反応体化合物を含む第2の水性組成物を分散させて、第2の水性組成物のいずれかの過剰な液滴または滞留する液滴の堆積を合体させ、さらに堆積させた後に、水から本質的になる最終組成物を容積空間内に分散させる工程を含むことができる。
【0041】
いくつかの態様において、水から本質的になる水性組成物の液滴の大半は、その有効直径が少なくとも約1ミクロン、例えば少なくとも10ミクロン、少なくとも約20ミクロン、少なくとも約30ミクロン、少なくとも約40ミクロン、少なくとも約50ミクロン、または少なくとも約100ミクロンである。好ましくは、第3の水性組成物の液滴の大半は、その有効直径が約20~約30ミクロンである。他の態様において、複数の液滴の大半は、その有効直径が約100ミクロン以下、例えば約50ミクロン以下、約40ミクロン以下、約30ミクロン以下、約20ミクロン以下、約10ミクロン以下、または約1ミクロン以下である。複数の液滴の大半の有効直径の有用な範囲は、約1~約100ミクロンの間およびそれらを含む任意の値から選択することができる。そのような範囲の非限定的な例として、約1~約100ミクロン、約10~約100ミクロン、約20~約100ミクロン、約30~約100ミクロン、約40~約100ミクロン、約50~約100ミクロン、または約20~約30ミクロンを挙げることができる。
【0042】
いくつかの態様において、水から本質的になる1つ以上の水性組成物を含む、3つ以上の水性組成物を容積空間に分散させることができる。
【0043】
いくつかの態様において、本発明は、容積空間内の表面を消毒する消毒システムであって、a)ハウジング;b)ハウジングに伴う第1の液体用の第1の容器;c)ハウジングに伴う第2の液体用の第2の容器;d)第1の液体および第2の液体の少なくとも1つの液滴の流れを分配するために、ハウジングに取り付けられるノズルであって第1の容器および第2の容器の少なくとも1つと液体連通するノズル;e)ノズルから分配する際、少なくとも第1の液体に静電荷を付与する任意の手段;及びf)予め選択された質量または体積量の第1の液体および予め選択された質量または体積量の第2の液体を分配するように構成されるメモリおよびプログラミングを含むマイクロプロセッサ;を有するシステムを提供する。消毒システムはまた、g)第1の液体の分配と第2の液体の分配との間の時間を制御するタイミング機構を任意に有することができる。
【0044】
さらなる態様において、消毒システムは、ハウジングに伴う第3の液体用の第3の容器をさらに有し、ノズルは、第1の液体、第2の液体、および第3の液体の少なくとも1つの液滴の流れを容積空間に分配するために、第1の容器、第2の容器、または第3の容器の少なくとも1つと液体連通し;マイクロプロセッサは、予め選択された量の第3の液体を分配するように構成されるメモリおよびプログラミングをさらに有し;タイミング機構は、第2の液体と第3の液体とを分配する間の時間をさらに制御する。
【0045】
ある態様において、単一のノズルは、第1の容器、第2の容器、もしくは第3の容器または他の容器と選択的に液体連通することができる。別の態様において、別個のノズルを第2の容器または第3の容器または他の容器に使用することができる。
【0046】
いくつかの態様において、消毒システムは、紫外光から本質的になる波長を有する、容積空間または消毒される表面を照らす手段をさらに有する。
【0047】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下の詳細な説明から当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1図1は、従来技術による市販のエレクトロスプレー装置の写真を示す。
図2図2は、消毒を必要とする表面上に同一の静電帯電される液滴の分散および分布を示す。
図3図3は、エレクトロスプレー装置のノズルからのx、y、およびz方向の変化の関数としての酢酸の分布を示すプロットを示す。
図4図4は、細菌の死滅パーセントに対するいくつかの実験的な変数の独立した影響を示すプロットを示す。
図5】細菌の死滅パーセントに対するいくつかの実験的な変数の相関効果を示すプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本開示は、特に、2つ以上の別々の適用において過酸反応体化合物を適用することによって、in situでそれらの標的で過酸を生成することによって、部屋、容積領域および容積空間、およびこれらの領域または空間内の表面を滅菌する方法およびシステムを有する。本明細書に記載の方法およびシステムは、微生物集団を死滅させるために過酸を利用する従来の消毒システムを凌ぐいくつかの利点を有する。他の現在の方法およびシステムは、消毒される標的に過酸組成物を適用する前に過酸を形成することを必要とし、その結果、組成物が適用される前の不安定性、分解および最終的なペルオキシ酸活性および効力の損失をもたらす。この問題を説明するために、従来の消毒方法およびシステムは、組成物が適用される前にペルオキシ酸を安定化させるために、反応混合物にさらなる過酸反応物または安定剤を添加することを必要とする。対照的に、本発明の方法およびシステムは、過酸反応物が個別に適用され、反応成分が順次加えられた後に過酸が標的表面に直接形成されるので、安定剤を必要としない。
【0050】
例示的な態様に言及し、それらを説明するために特定の専門用語が使用されるが、本発明の範囲の限定は意図されないことを理解されたい。本明細書に記載された方法およびシステムのさらなる改変、ならびに記載された本発明の原理の追加の適用は、当業者の脳裏に浮かび、本開示の所有するものであり、本発明の範囲内であると見なされるべきである。なお、特記しない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、この特定の発明の態様が関係する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。使用される用語は、それらの態様のみを説明するためのものであり、限定するものとして特定されない限り、限定することを意図するものではない。
【0051】
定義
本明細書および特許請求の範囲で使用する場合、単数形「a」、「an」および「the」は、その内容が明確に別段に指示しない限り、複数の指示対象を含む。
【0052】
本明細書で使用する場合、「約」という用語は、例えば、現実世界で濃縮液を製造するまたは溶液を利用するために使用される典型的な測定および液体を扱う処置によって、これらの処置における偶発的な誤りによって、組成物を製造するためまたは方法を実施するために使用される成分の製造、供給源または純度の差異などによって、生じることが可能な数値的な量の散らばりを言う。「約」という用語はまた、特定の初期混合物に起因する組成物についての異なる平衡条件に起因する異なる量を包含する。同様に、特許請求の範囲が「約」という用語によって修飾されているかどうかにかかわらず、特許請求の範囲には、記載されている量と同等のものが含まれている。
【0053】
本明細書で使用する場合、「水性組成物」という用語は、水を含む液体成分の組み合わせを言う。最も一般的には、水性組成物は、本発明の技術分野で一般的に使用される「溶液」という用語と同義である。しかし、水に加えて組成物中の成分の同一性に依存して、「水性組成物」はまた、混合物、エマルション、分散液、懸濁液などを包含することができる。さらに、水が存在しなければならないが、それは水性組成物の大部分を有する必要はない。
【0054】
本明細書で使用する場合、「殺生物剤」および「殺生物性化合物」という用語は、ヒトまたは動物の健康に有害であるか、天然または製造された産生物に損傷を与える任意の生物に対して、破壊、抑止、無害化、または制御効果を発揮することを意図した化学物質を言う。殺生物剤の非限定的な例として、過酸化化合物、有機酸化合物、過酸、アルコール、マヌカハニー、および精油、および天然殺生物性化合物が挙げられる。
【0055】
「有効直径」という用語は、球形液滴の幾何学的直径、または液滴の最も広い点における歪んだ球形液滴の左右からの距離のいずれかを言う。
【0056】
「有効な均一な厚さ」という用語は、表面上に堆積されるある質量または体積の液体が実質的に均一な厚さを有する表面上の液体の目標の厚さまたは理想的な厚さを言う。
【0057】
「精油」または「スパイスオイル」という用語は、様々な標的細胞との相互作用に基づいて抗菌性を有する芳香族植物によって産生され、抽出された濃縮天然物を言う。
【0058】
本明細書で使用する場合、「食品加工面」という語句は、食品の輸送、処理、調製、または保管をする活動の一部として使用されるツール、機械、設備、輸送コンテナ、鉄道車両、構造物、建物などの表面を言う。食品加工面の例には、食品加工用品または調理器具(例えば、スライス、キャニング、または運搬用設備、例えば水路)の表面、食品加工用品(例えば、食器、食器類、洗濯用品およびバーガラス)の表面、および食品加工が行われる構造物の床、壁、または固定具の表面が挙げられる。食品加工面は、食品の腐敗防止空気循環システム、無菌包装消毒、食品の冷蔵およびクーラークリーナー、消毒剤、食器洗い消毒、漂白器の洗浄および消毒、食品包装材料、まな板用添加剤、第3のシンク消毒、飲料冷却機および加温機、肉用冷却または加熱水、自動食器殺菌剤、殺菌ゲル、冷却塔、食品加工抗菌衣類スプレー、および非水性から低水性の食品調製用潤滑剤、油、およびリンス添加剤に見出され、利用される。
【0059】
本明細書で使用する場合、「食品」という語句は、さらなる調製の有無にかかわらず食用である、抗菌剤または組成物による処理を必要とし得る任意の食料の物質を含む。食品には、肉(例えば、赤身の肉や豚肉)、魚介類、家禽類、生産物(例えば、果物や野菜)、卵、生卵、卵生産物、インスタント食品、小麦、種子、根、塊茎、葉、茎、穀類、花、芽、調味料、またはそれらの組み合わせを含む。「生産物」という用語は、典型的には調理されずに販売され、頻?に包装されずに、時には生食され得る、果物や野菜のような食品および植物または植物由来の材料を言う。
【0060】
「フリーである(free)」または「実質的にフリーである(substantially free)」という用語は、組成物、混合物または成分中の特定の化合物が完全に存在しないか又はほぼ完全に存在しないことを言う。
【0061】
「ヘルスケア面」という用語は、ヘルスケア活動の一部として使用される器具、装置、カート、ケージ、家具、構造物、建造物などの表面の面を言う。ヘルスケア面の例には、医療または歯科用器具の表面、医療または歯科用装置の表面、患者の健康状態を監視するために使用される電子器械の表面、およびヘルスケアが行われる構造物の床、壁または固定具の表面が含まれる。ヘルスケア面は、病院、外科手術室、病人用の部屋、出産室、葬儀場、老人ホーム、および臨床診断室に見出される。これらの表面は、「硬質の表面」(例えば壁、床、ベッドパンなど)、または織物表面、例えば、編み物、織布および不織布の表面(例えば外科用衣類、カーテン、シーツと枕カバー、包帯など)、または患者介護用設備(例えば呼吸器、診断用設備、シャント、ボディスコープ、車椅子、ベッドなど)、または外科および診断用設備として象徴されるものであってよい。ヘルスケア面には、動物のヘルスケアに使用される物品や表面が含まれる。
【0062】
本明細書で使用する場合、「器具」という用語は、本発明による組成物で洗浄することにより利益を得ることができる様々な医療または歯科用器具または装置を言う。本明細書で使用する場合、「医療用器具」、「歯科用器具」、「医療用装置」、「歯科用装置」、「医療設備」、「歯科用設備」という語句は、医学または歯科で使用される器具、装置、ツール、電気製品、器械または設備を言う。そのような器具、装置および設備は、冷殺菌、浸漬または洗浄をし、その後加熱滅菌をすることができ、あるいは本発明の組成物の洗浄から利益を得ることができる。これらの様々な器具、装置および設備として、診断器具、トレイ、パン、ホルダ、ラック、鉗子、はさみ、剪断器、鋸(例えば、骨鋸やそれらの刃)、止血鉗子、ナイフ、チゼル、骨鉗子、ファイル、ニッパ、ドリル、ドリルビット、やすり、バール、スプレッダ、ブレーカ、エレベータ、クランプ、針ホルダ、キャリア、クリップ、フック、穴タガネ、キュレット、リトラクタ、ストレートナ、パンチ、抽出器、スクープ、角膜切開刀、スパチュラ、エクスプレッサ、トロカール、拡張器、ケージ、ガラス製品、チューブ、カテーテル、カニューレ、プラグ、ステント、スコープ(例えば、内視鏡、聴診器、および関節鏡)および関連設備など、またはそれらの組み合わせを挙げられるがこれらに限定されない。
【0063】
本明細書で使用する場合、「微生物」という用語は、任意の非細胞性または単細胞性(コロニーを含む)生物を言う。微生物にはすべての原核生物が含まれる。微生物には細菌(藍藻類を含む)、胞子、地衣類、菌類、原生動物、ヴァリノ、ウイロイド、ウイルス、ファージ、およびいくつかの藻類が含まれる。本明細書で使用する場合、「microbe(微生物)」という用語は微生物(microorganism)と同義である。
【0064】
本明細書で使用する場合、「有機酸化合物」という語句は、消毒剤として有効な過酸を形成することができる任意の酸を言う。
【0065】
本明細書で使用する場合、「過酸」または「ペルオキシ酸」という用語は、ヒドロキシル基の水素がペルヒドロキシル基によって置換されている任意の酸を言う。酸化過酸は、本明細書ではペルオキシカルボン酸と称される。
【0066】
本明細書で使用する場合、「過酸反応体化合物」という語句は、反応してin situで標的表面で過酸を形成する反応化合物を言う。
【0067】
本明細書で使用する場合、「過酸化化合物」という用語は、過酸化水素、金属過酸化物、およびオゾンを含むがこれらに限定されない有機酸と反応して過酸を形成することができる任意の化合物を言う。
【0068】
本明細書で使用する場合、「多価アルコール」という用語は、2つ以上のヒドロキシル基を有するアルコールを言う。水性組成物での使用に適した多価アルコールには、糖、糖アルコール、およびフェノールなどの非脂肪族多価アルコールが含まれるが、これらに限定されない。
【0069】
本明細書で使用する場合、「反応層」という用語は、第1の反応物化合物、例えば、第1の過酸反応体化合物を含む複数の液滴によって表面に形成された合体層上に、第2の反応物化合物、例えば第2の過酸反応体化合物を含む複数の液滴が堆積されるとき、消毒される表面に形成される層を言う。2つの反応化合物の生成物は、反応層にin situで形成される。
【0070】
本明細書中で使用する場合、「蒸気」という用語は、液体組成物の一部が実質的に完全に気体の状態にある流体の相または状態を言い、水性組成物の液滴のかなりの部分が空気中で懸濁される他の態様と対照的である。
【0071】
本明細書で使用する場合、「重量百分率」、「重量%」、「w/w」および他の変形は、物質の重量を組成物の総重量で割って100を掛けたものとしての物質の濃度を示す。「パーセント」、「%」などの用語は、組成物の体積パーセントではなく、「重量百分率」、「重量%」などと同義であることが意図されることが理解される。
【0072】
本開示における消毒方法およびシステムの態様を記載する際に、「第1の」または「第2の」は、それらが水性組成物または過酸反応体化合物を指すように言及される。特定の順序が意図されているということが明確な文脈がある場合を除いて、「第1の」および「第2の」は単に相対的な用語であり、記載された「第1の」組成物または反応物化合物は、まさに「第2の」組成物または反応化合物と簡単かつ便宜的に示してもよく、そのような説明は、本明細書に暗黙的に含まれる。
【0073】
濃度、寸法、量、および他の数値データは、本明細書では範囲形式で提示することができる。このような範囲形式は、単に便宜上や簡潔性のため使用されており、範囲の限界として明示的に記載された数値だけでなく、あたかも各数値および部分範囲が明示的に列挙されているかのようにその範囲内に包含されるすべての個々の数値または部分範囲を含むように柔軟に解釈されるべきであることを理解されたい。例えば、約0.5重量%~約10重量%の重量比の範囲には、0.5重量%および10重量%という明示的に記載された限界だけでなく、1重量%および5重量%などの個々の重量および2重量%~8重量%、5重量%~7重量%などの部分範囲も含まれる。
【0074】
発明の実施形態
これらの定義に従って、それらの表面に過酸をin situで形成することによって、容積空間内の標的表面を消毒するいくつかの方法が提供される。これらの方法の潜在的用途は非常に多様であり、例えば食品や表面の処理、ヘルスケア面および器具;研究所;トイレ;車両;学校;オフィス;公共交通機関;産業用、商業用、およびホームケア施設;暖房、換気、および空調(HVAC)システム;無数の他の領域と表面;の消毒を挙げられるがこれらに限定されない。本発明は、特に溶液中の過酸の不安定性および安全性に関して、過酸を滅菌のために適用する前に過酸を形成することに関連する欠点を克服する。
【0075】
他の滅菌方法は、系の過酸の保持を促進するために反応混合物中に1つ以上の添加剤を含めることによって、過酸の安定性および安全性の問題を解決しようとするが、これらの添加剤の多くは生成するのに高価であり、化学業界に関係のない一般人はたやすく入手することができない。対照的に、本発明は、非常に長い貯蔵寿命を有し、地元の食料品店または百貨店でそれらを得ることができるため一般に安全と見なされる成分を利用しながら、過酸化学の力を利用して標的の表面を消毒する。
【0076】
理論によって制限されることなく、過酸は微生物内のタンパク質やDNAを不可逆的に損傷できる強力な酸化剤であるため、消毒剤と同程度有効であると考えられる。過酸化化合物のような強い酸化剤が有機酸化合物と接触すると、酸触媒反応において過酸が形成される。例えば、有機酸化合物として酢酸を用いる系では、過酸化水素などの過酸化化合物を添加すると、過酢酸と水が下記のような平衡状態で生成される反応が起こり得る。
【0077】
【化1】
【0078】
一旦消毒される表面に過酸が形成されると、それは強度な求電子性となる。過酸化水素を含む溶液に電子が豊富な供給源がない場合、過剰の水により、過酸の加水分解に向かって平衡が動き、もとの酸の生成に戻る。さらに、もとの酸がますます酸性になるにつれて、得られた過酸は同様に反応性が増す。したがって、それはまた、得られた過酸がそれらの条件下で一際優れた消毒剤になる可能性があるとしても、いかに適用する直前に個々の成分が混合されるかにかかわらず、より不安定になり、標的表面に到達しない可能性が高い。したがって、本発明の態様は、より強くより厳密に制御される構成要素が使用されてコストが対象ではない産業での用途において、同様に、現在の技術よりも有効な可能性がある。
【0079】
本発明の第1の態様において、容積空間内で消毒が必要な表面を消毒する方法であって、過酸化化合物または有機酸化合物のいずれかである第1の過酸反応体化合物を有する第1の水性組成物の複数の液滴を容積空間内に分散させる工程;第1の水性組成物が容積空間全体に分散するのに十分な時間を与え、表面上で層に堆積させて合体させる工程;第1の過酸反応体化合物の他方である第2の過酸反応体化合物を含む第2の水性組成物の複数の液滴を容積空間内に分散させる工程;および第2の水性組成物の液滴が第1の水性組成物の合体層上に堆積させて反応層を形成するのに十分な第2の時間を与え、それによって反応層にin situで過酸が形成され、表面を消毒する工程を有する方法を提供する。
【0080】
過酸が消毒される表面にのみ形成される限り、この方法の有効性は、過酸反応体化合物が分散される順序とは無関係であると予想される。したがって、第1の過酸反応体化合物は、第2の過酸反応体化合物が第1の過酸反応体化合物として選択された化合物の反対の化合物である限り、有機酸化合物または過酸化化合物のいずれかとすることができる。例えば、過酸化化合物が第1の過酸反応体化合物に選択される場合には、第2の過酸反応体化合物は有機酸化合物であり、有機酸化合物が第1の過酸反応物に選択される場合には、第2の過酸反応体化合物は過酸化化合物である。過酸反応体化合物を含有する組成物は一般に大部分が水性であるが、水は組成物の大部分を含む必要はない。なお、過酸化化合物および有機酸化合物から過酸の形成を促進することができる任意の液体担体系を用いることができる。
【0081】
過酸化化合物は、有機酸化合物と反応して過酸を形成することができる任意の化合物とすることができる。一般に、これらには、過酸化水素、金属過酸化物、またはオゾンが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの態様において、過酸化化合物を含む水性組成物は、過酸化化合物を少なくとも約0.1重量%、例えば少なくとも約0.5重量%、少なくとも約1重量%、少なくとも約2重量%、少なくとも約4重量%、少なくとも約6重量%、少なくとも約8重量%、少なくとも約10重量%、少なくとも約12重量%、少なくとも約14重量%、少なくとも約16重量%、少なくとも約18重量%、少なくとも約20重量%、または少なくとも約25重量%有する。他の態様において、過酸化化合物を含む水性組成物は、過酸化化合物を約25重量%以下、例えば約20重量%以下、約18重量%以下、約16重量%以下、約14重量%以下、約12重量%以下、約10重量%以下、約8重量%以下、約6重量%以下、約4重量%以下、約2重量%以下、約1重量%以下、約0.5重量%以下、または約0.1重量%以下有する。過酸化化合物の有用な範囲は、約0.1~約25重量%の間およびそれらを含む任意の値から選択することができる。そのような範囲の非限定的な例として、約0.1~約25重量%、約0.5~約25重量%、約1~約25重量%、約2~約25重量%、約4~約25重量%、約6~約25重量%、約8~約25重量%、約10~約25重量%、約12~約25重量%、約14~約25重量%、約16~約25重量%、約18~約25重量%、約20~約25重量%、約0.5~約20重量%、約1~約18重量%、約2~約16重量%、約5~約15重量%、または約7~約12重量%を挙げることができる。いくつかの態様において、水性組成物は、約10重量%の過酸化化合物を有する。好ましい態様において、過酸化化合物は過酸化水素である。
【0082】
有機酸化合物は、過酸化化合物と反応して過酸を効果的に生成することができる任意の有機酸とすることができる。一般に、これらにはカルボン酸が挙げられるが、これに限定されない。使用することができるカルボン酸の非限定的な例として、蟻酸、酢酸、クエン酸、コハク酸、シュウ酸、プロパン酸、乳酸、ブタン酸、ペンタン酸、オクタン酸、アミノ酸、およびそれらの混合物が挙げられる。いくつかの態様において、有機酸化合物を含む水性組成物は、有機酸化合物を少なくとも約0.5重量%、例えば少なくとも約1重量%、少なくとも約2重量%、少なくとも約5重量%、少なくとも約10重量%、少なくとも約15重量%、少なくとも約20重量%、少なくとも約25重量%、少なくとも約30重量%、少なくとも約35重量%、少なくとも約40重量%、少なくとも約45重量%、または少なくとも約50重量%含む。他の態様において、有機酸化合物を含む水性組成物は、有機酸化合物を約50重量%以下、例えば約45重量%以下、約40重量%以下、約35重量%以下、約30重量%以下、約25重量%以下、約20重量%以下、約15重量%以下、約10重量%以下、約5重量%以下、約2重量%以下、約1重量%以下、または約0.5重量%以下含む。有用な範囲は、有機酸化合物を約0.5~約50重量%の間およびそれらを含む任意の値から選択することができる。そのような範囲の非限定的な例として、約0.5~約50重量%、約1~約50重量%、約2~約50重量%、約5~約50重量%、約10~約50重量%、約15~約50重量%、約20~約50重量%、約25~約50重量%、約30~約50重量%、約35~約50重量%、約40~約50重量%、約45~約50重量%、約1~約35重量%、約2~約20重量%、または約4~約12重量%を挙げることができる。いくつかの態様において、水性組成物は、約10重量%の有機酸化合物を有する。好ましい態様において、有機酸化合物は酢酸である。
【0083】
上記のように、有機酸化合物および過酸化化合物からの過酸の合成は、酸触媒プロセスである(Zhao,X., et al., (2007) Journal of Molecular Catalysis A 271: 246-252を参照されたい)。典型的には、酢酸などの有機酸および上記の他の有機酸は、約7以下の酸性pKa値を有する少なくとも1つのカルボキシレート官能基を有し、これらの化合物が過酸化化合物と反応して過酸を生成するのに適するようにしている。いくつかの有機酸、例えばクエン酸は、それぞれ7未満のpKa値を有する複数のカルボン酸基を有し、そのため過酸化化合物と反応して過酸生成物を形成することができる。しかし、カルボン酸官能基の少なくとも1つが約7以下のpKa値を有する限り、7より上のpKa値を有するカルボン酸官能基を有する有機酸も基質として使用することができる。結果として、いくつかの態様において、有機酸化合物を有する組成物のpHは、約7以下である。さらなる態様において、反応層のpHは約7以下である。
【0084】
いくつかの態様において、水性組成物の少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%が、複数の液滴として分散される。さらなる態様において、本質的に100%の水性組成物が複数の液滴として分散される。各水性組成物の複数の液滴が容積空間に分散し、消毒される表面の層に堆積および合体するのに十分な時間は、限定されるものではないが、それらが分散されるときの液滴の大きさおよび速度、容積空間の体積測定サイズおよび湿度、および水性組成物中の成分の同一性および濃度を含む、いくつかの要因に依存し得る。液滴の大きさに関して、液滴が消毒される表面に到達し合体するのに十分な時間は、液滴のサイズにほぼ反比例する。したがって、液滴が小さい、例えば約1~約2ミクロンの有効直径を有する場合、有効直径が約50~約100ミクロンである場合などの液滴が大きい場合よりも、表面に堆積するのにより多くの時間が必要である。これらの大きな液滴サイズは、部屋または輸送コンテナなどのより大きな容積空間で複数の表面を消毒するのに機能上適切であるが、液滴の有効直径が約20ミクロン以上に達すると、重力に打ち勝って、消毒される表面に到達するのに十分な長さ空気中に残る液滴の能力が損なわれることが認められてきた。
【0085】
したがって、いくつかの態様において、複数の液滴の大半は、その有効直径が少なくとも約1ミクロン、例えば少なくとも約5ミクロン、少なくとも約10ミクロン、少なくとも約15ミクロン、少なくとも約20ミクロン、少なくとも約25ミクロン、少なくとも約30ミクロン、少なくとも約35ミクロン、少なくとも約40ミクロン、少なくとも約45ミクロン、少なくとも約50ミクロン、少なくとも約60ミクロン、少なくとも約70ミクロン、少なくとも約80ミクロン、少なくとも約90ミクロン、または少なくとも約100ミクロンである。他の態様において、複数の液滴の大半は、その有効直径が約100ミクロン以下、例えば約90ミクロン以下、約80ミクロン以下、約70ミクロン以下、約60ミクロン以下、約50ミクロン以下、約45ミクロン以下、約40ミクロン以下、約35ミクロン以下、約30ミクロン以下、約25ミクロン以下、約25ミクロン以下、約20ミクロン以下、約15ミクロン以下、約10ミクロン以下、または約5ミクロン以下である。複数の液滴の大半の有効直径の有用な範囲は、約1~約100ミクロンの間およびそれらを含む任意の値から選択することができる。そのような範囲の非限定的な例として、約1~約100ミクロン、約5~約100ミクロン、約10~約100ミクロン、約15~約100ミクロン、約20~約100ミクロン、約25~約100ミクロン、約30~約100ミクロン、約35~約100ミクロン、約40~約100ミクロン、約45~約100ミクロン、約50~約100ミクロン、約60~約100ミクロン、約70~約100ミクロン、約80~約100ミクロン、約90~約100ミクロン、3~約75ミクロン、または約10~約25ミクロンを挙げることができる。
【0086】
しかし、液滴の有効直径が小さい場合にも、潜在的に問題が生じる可能性がある。その全体が参照により本明細書に組み込まれるDrug and Biological Development: From Molecule to Product and Beyond, edited by Ronald Evens, pg.210および適用可能なセクション,2007に示されているように、大気中の液滴は、約8~約10ミクロン未満の有効直径で肺深部に吸入および保持することができることが知られている。結果として、いずれかの水性組成物が液滴形態で分散されている一方、人が領域または容積空間に存在する本発明のいくつかの態様において、液滴の大半の有効直径は、肺深部の浸透を避けるために約10ミクロンを超えて維持されるべきである。したがって、いくつかの態様において、水性組成物に分散される複数の液滴の大半の有効直径は約15ミクロンである。水性組成物が分散されたときに人が部屋に存在しない他の態様において、複数の液滴の大半の有効直径は、上に列挙したような有効直径を含む、1つまたは複数の消毒される表面上への液滴の分散、堆積および合体を容易にする任意の直径とすることができる。
【0087】
本発明のいくつかの態様において、第1の水性組成物の複数の液滴が、消毒される表面上に堆積されると、液滴は、表面上で最大限の適用範囲をもたらすために実質的に均一な厚さを有する層に合体することが好ましい。好ましい態様において、合体層の実際に堆積された厚さは、最小化されながら、また表面上のすべての露出された位置と露出されていない位置とを実質的に覆うべきである。合体層の厚さは、複数の液滴のサイズおよび表面張力の両方に依存する。複数の液滴が水溶液の過酸化化合物または有機酸化合物のみからなるいくつかの態様において、液滴は、20℃で、純水に近い表面張力:約72dyne/cmを有することができる。この状況では、合体層は、液滴が表面上に堆積した後に狭く広がるので、より厚いことがある。したがって、表面全体を完全に覆い、消毒するために、より多くの組成物が必要である。逆に、複数の液滴は、組成物の表面張力を低下させる非水性化合物をさらに含むことができる。例えば、純粋なエタノールは、20℃で約22.27dyne/cmの表面張力を有する。この状況では、より低い表面張力の組成物の液滴がいっそう広範に広がって、より薄い合体層を生成する。表面を完全に覆い消毒するための組成物の必要量はより少なくなる。
【0088】
したがって、いくつかの態様において、合体層は、その有効な均一な厚さ、好ましくは実際の均一な厚さが少なくとも約1ミクロン、例えば少なくとも約2ミクロン、少なくとも約3ミクロン、少なくとも約5ミクロン、少なくとも約8ミクロン、少なくとも約10ミクロン、少なくとも約15ミクロン、または少なくとも約20ミクロンとすることができる。他の態様において、合体層は、有効な均一な厚さ、好ましくは実際の均一な厚さが約20以下、例えば約15以下、約10以下、約8以下、約5以下、約3ミクロン以下、約2ミクロン以下、または約1ミクロン以下とすることができる。水性組成物の合体層の実質的に均一な厚さの有用な範囲は、約1~約20ミクロンの間およびそれらを含む任意の値から選択することができる。そのような範囲の非限定的な例として、約1~約20ミクロン、約2~約20ミクロン、約3~約20ミクロン、約5~約20ミクロン、約8~約20ミクロン、約10~約20ミクロン、約15~約20ミクロン、または約3~約8ミクロンを挙げることができる。
【0089】
いくつかの態様において、水性組成物の一方または両方にアルコールを添加して、組成物の表面張力を低下させ、消毒される表面に付着した液滴を減少させることができる。いずれかの水性組成物に含まれるアルコールは、液滴の大きさをより小さい有効直径に減少させる必要なく、より薄い合体層を促進する。十分直径が小さいことで、領域または容積空間の任意のヒトまたは動物の肺深部の浸透が潜在的に生じ得る。さらに、一部のアルコールはまた、独立して、過酸から分離した殺生物活性を付与する。したがって、消毒される表面にin situで過酸を形成することを、アルコールを使用することと組み合わせると、過酸化化合物および有機酸化合物のみを含む反応層と比較して、抗菌活性にさらなる効果を与えることができる。
【0090】
液体の形態のアルコールは、器具または表面を殺菌するために高濃度(70重量%以上)で使用することができるが、多くのアルコールは、揮発するとき、特に領域または容積空間の温度が上昇するときに、同じ濃度で可燃性である。したがって、いくつかの態様において、アルコールを有する水性組成物は、アルコールを少なくとも約0.05重量%、少なくとも約0.1重量%、少なくとも約1重量%、少なくとも約5重量%、少なくとも約10重量%、少なくとも約15重量%、少なくとも約20重量%、少なくとも約25重量%、少なくとも約30重量%、少なくとも約40重量%、少なくとも約50重量%、少なくとも約60重量%、または少なくとも約70重量%含み得る。他の態様において、アルコールを含む水性組成物は、アルコールを約0.05重量%以下、0.1重量%以下、1重量%以下、5重量%以下、10重量%以下、15重量%以下、20重量%以下、25重量%以下、30重量%以下、40重量%以下、50重量%以下、60重量%以下または70重量%以下含む。アルコールの有用な範囲は、約0.05~約70重量%の間およびそれらを含む任意の値から選択することができる。そのようなアルコールの範囲の非限定的な例として、約0.05~約70重量%、約0.1~約70重量%、約1~約70重量%、約5~約70重量%、約10~約70重量%、約15~約75重量%、約20~約70重量%、約25~約70重量%、約30~約70重量%、約40~約70重量%、約50~約70重量%、約60~約70重量%、約1~約25重量%、または約10~約20重量%を挙げることができる。いくつかの態様において、アルコールを有する水性組成物は、約15重量%のアルコールを含むことができる。
【0091】
水性組成物に存在するアルコールは、単一のアルコール、または複数のアルコールの組み合わせとすることができる。アルコールは、炭素数1~24の脂肪族アルコールおよび他の炭素含有アルコールを含むことができる。アルコールは直鎖または完全に飽和したアルコールまたは他の炭素含有アルコール(分岐脂肪族アルコール、脂環式、芳香族および不飽和アルコールを含む)から選択することができる。また、多価アルコールは、単独で、または他のアルコールと組み合わせて使用することもできる。本開示で用いることができる多価アルコールの非限定的な例には、エチレングリコール(エタン-1,2-ジオール)グリセリン(またはグリセロール、プロパン-1,2,3-トリオール)、プロパン-1,2-ジオール、ポリビニルアルコール、ソルビトール、他のポリオールなどが挙げられる。また、他の非脂肪族アルコールを用いることができ、例えばフェノールおよび置換フェノール、エルシルアルコール、リシノリルアルコール、アラキジルアルコール、カプリルアルコール、カプリンアルコール、ベヘニルアルコール、ラウリルアルコール(1-ドデカノール)、ミリスチルアルコール(1-テトラデカノール)、セチル(またはパルミチル)アルコール(1-ヘキサデカノール)、ステアリルアルコール(1-オクタデカノール)、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール(シス-9-オクタデセン-1-オール)、パルミトレイルアルコール、リノレイルアルコール(9Z,12Z-オクタデカジエン-1-オール)、エレジルアルコール(9E-オクタデセン-1-オール)、エライドリノレイルアルコール(9E,12E-オクタデカジエン-1-オール)、リノレニルアルコール(9Z,12Z,15Z-オクタデカトリエン-1-オール)、エレイドリノレニルアルコール(9E,12E,15-E-オクタデカトリエン-1-オール)、およびそれらの組み合わせを挙げることができるがこれらに限定されない。
【0092】
いくつかの態様において、実際的な考慮として、その特性およびコストから、メタノール、エタノール、イソプロパノール、t-ブタノール、および変性アルコールを用いることができる。アルコールは、食品グレードおよび食品安全システムの要件を満たすように選択することができる。しかし、多くのアルコール、特に第一級アルコール、例えば、メタノールや、エタノールは、有機酸化合物との副反応でエステルを形成することができる。非限定的な例として、エタノールおよび酢酸は、室温、特に酸性pH条件下で酢酸エチルを形成することができる。その結果、好ましい態様において、イソプロパノールおよびt-ブタノールを選択することができる。なぜなら、イソプロパノールおよびt-ブタノールが、それぞれ第二級および第三級アルコールであるため、有機酸化合物と副反応することが好都合ではないからである。
【0093】
他の態様において、消毒される表面でin situで生成された過酸の有効性を増強または補足するために、水性組成物のいずれかにさらなる化合物を含めることができる。このような化合物として、マヌカハニーや精油などの1種以上の天然の殺生物剤、および/またはメチルグリオキサール、カルバクロール、オイゲノール、リナロール、チモール、p-シメン、ミルセン、ボルネオール、カンフル、カリオフィリン、シンナムアルデヒド、ゲラニオール、ネロール、シトロネロール、およびメントール、それらの組み合わせなどのマヌカハニーや精油に通常見出される天然の殺生物剤を挙げることができる。ハチミツ、特にマヌカハニーは、長い間、殺生物性を有することが知られている。マヌカハニーの主成分であるメチルグリオキサールの抗細菌特性は以前に記載されている(Hayashi,K., et al., (April 2014) Frontiers in Microbiology, 5(180): 1-6、その全体は参照により本明細書に組み込まれる)。メチルグリオキサールは、0.005重量%の低さの最小阻害濃度(MIC)のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、多剤耐性緑膿菌、病原性大腸菌を含む多剤耐性細菌に対して有効であることが示されている。
【0094】
他の態様において、精油をいずれかの水性組成物に含めることができる。精油は、ヒトの歴史を通じて医薬品に広く使用されており、特にEffect of Essential Oils on Pathogenic Bacteria, Pharmaceuticals, pg.1451-1474, Volume 6, 2013およびAntimicrobial Activity of Some Essential Oils Against Microorganisms Deteriorating Fruit Juices, Mycobiology, pg.219-229, Volume 34, 2006に記載されているように、0.001重量%の低濃度で抗菌活性を有することが知られている。いずれの文献もその全体が参照により本明細書に組み込まれる。消毒剤の成分として精油を使用することは、米国特許第6,436,342号に記載されており、その開示は、その全体が参照により組み込まれる。水性組成物の1つ以上に含めることができる精油の非限定的な例として、オレガノ、タイム、レモングラス、レモン、オレンジ、アニス、クローブ、アニスの実、シナモン、ゼラニウム、バラ、ミント、ペパーミント、ラベンダー、シトロネラ、ユーカリ、サンダルウッド、ヒマラヤスギ、ロスマリン、マツ、ヴァーヴェインフリーグラス、およびラタニアの精油が挙げられる。
【0095】
それらの抗菌特性に加えて、いくつかの精油は、方法が完了した後の消毒された部屋または容積空間のその後の使用者に快をもたらす臭気を生じる。したがって、1種以上の天然殺生物剤または天然殺生物性化合物、特に精油および/またはそれらの化学成分は、MIC未満の濃度で水性組成物中に含まれ得る。したがって、いくつかの態様において、水性組成物は、1つ以上の天然殺生物剤または天然殺生物性化合物を少なくとも0.001重量%、少なくとも0.005重量%、少なくとも0.01重量%、少なくとも0.05重量%、少なくとも0.1重量%、少なくとも0.25重量%、少なくとも0.5重量%または少なくとも1重量%の少なくとも1つの濃度で含むことができる。他の態様において、水性組成物は、1種以上の天然殺生物剤または天然殺生物性化合物を0.001重量%以下、0.005重量%以下、0.01重量%以下、0.05重量%以下、0.1重量%以下、0.25重量%以下、0.5重量%以下または1重量%以下の濃度で含み得る。有用な範囲は、天然殺生物剤または天然殺生物性化合物を約0.001~約1重量%の間およびそれらを含む任意の値から選択することができる。そのような範囲の非限定的な例として、天然殺生物剤または天然殺生物性化合物を約0.001~約1重量%、約0.005~約1重量%、約0.01~約1重量%、約0.05~約1重量%、約0.1~約1重量%、約0.25~約1重量%、約0.5~約1重量%、約0.01~約0.5重量%、または約0.06~約0.3重量%を挙げることができる。
【0096】
特定の理論に縛られることなく、合体した液体層または反応層の有効な均一な厚さは、過酸反応体化合物または水性組成物の任意の他の成分の所望の濃度に従って最適化することができる。他の態様において、過酸反応体化合物または他の成分の濃度は、所望の有効な均一な厚さに従って最適化することができる。例えば、過酸反応体化合物または他の反応成分の濃度が比較的希薄であることが望ましいいくつかの態様において、適宜、分散させる水性組成物の体積は、反応層の有効な均一な厚さを増加させるために(したがって、存在する過酸反応体化合物の総量)、及び所望の微生物死滅を達成するために調整することができる。そのような態様は、水性組成物の1つ以上を形成するために使用される原液が、その地域の食料品店または薬局で消費者が購入することができる酢酸または過酸化水素の場合のように、低めの濃度である状況で有用であり得る。逆に、工業グレードの原液が利用可能な他の態様において、比較的高い過酸反応物濃度が望ましく、または容積空間が比較的大きい場合、比較的薄い反応層を形成するために分散させた水性組成物の体積を調節することができる。当業者は、原液の濃度、所望の微生物の死滅、および容積空間内の体積などの要因に基づき、過酸反応体化合物または他の成分の濃度を判定して、所望の有効な均一な厚さを有する反応層を形成するために分散させる水性組成物の体積を判定するために必要な知識を有している。
【0097】
過酸反応体化合物、アルコールおよび天然殺生物性化合物を含む上記の成分の利点は、それらが滅菌が完了した後に容易に揮発することである。そのような態様は、滅菌方法が完了した後にできるだけ迅速に人々が容積空間に戻ることを可能にするために速い入れ替えが必要とされる状況を含む。消毒される表面の合体層が約1~約20ミクロンの有効な均一な厚さを有する態様において、水性組成物は処理される表面から迅速に蒸発して、望ましくない成分および廃棄物を除去するためのさらなる処理の必要性をなくし、表面が位置する領域のより速い入れ替えを容易にすることができる。したがって、このような態様において、消毒される表面を含む容積空間の速い入れ替えを促進するために、不揮発性の塩および高分子材料を慎重に使用するか完全に省く必要がある。いくつかの態様において、水性組成物は、反応層の少なくとも約90重量%、例えば少なくとも約95重量%、少なくとも約99重量%、少なくとも約99.5重量%、少なくとも約99.7重量%、または少なくとも約99.9重量%が形成されてから30分以内に蒸発することができる揮発性を有する。
【0098】
水性組成物が1つ以上の表面上に堆積された後、水性組成物の揮発性を高めるために、各水性組成物の個々の成分は、それらが消毒された後も表面に長く残存する比較的不安定な成分と比べて、比較的高い標準蒸気圧を有するように選択することができる。水性組成物のいくつかの典型的な成分の標準蒸気圧を以下の表1に示す。有機酸化合物と反応していない表面の過酸化水素は、続いて各々が過酸化水素それ自体よりも揮発性の高い水および酸素ガスに分解されることに留意されたい。
【0099】
【表1】
【0100】
したがって、いくつかの態様において、水性組成物の一方または両方は、水性組成物の少なくとも約99.0重量%、または少なくとも約99.5重量%、または少なくとも約99.9重量%の成分が、20℃で少なくとも1.0mmHgの標準蒸気圧を有するように配合できる。さらなる態様において、水性組成物の1つまたは両方は、水性組成物の実質的に100重量%の成分が、20℃で少なくとも約1.0mmHgの蒸気圧を有するように配合できる。
【0101】
しかし、他の態様において、特に水性組成物が表面に付着した後の揮発性が懸念されない状況で、容積空間内の表面の殺菌を補充または増強するために、水性組成物の少なくとも1つに追加の成分を含めることが、有利な場合がある。このような追加の成分として、界面活性剤、ポリマー、キレート化剤、金属コロイドおよび/またはナノ粒子、酸化剤、および他の化学的添加剤、例えばそれらの組み合わせを挙げることができるがこれらに限定されない。その使用は、米国特許第6,692,694号、第7,351,684号、第7,473,675号、第7,534,756号、第8,110,538号、第8,679,527号、第8,716,339号、第8,772,218号、第8,789,716号、第8,987,331号、第9,044,403号、第9,192,909号、第9,241,483号、および第9,540,248号、ならびに米国特許出願公開第2008/0000931号;第2013/0199539号;第2014/0178249号;第2014/0238445号;第2014/0275267号;および第2014/0328949号に記載されており、これらの開示は、その全体が参照により組み込まれる。
【0102】
いくつかの態様において、上記の界面活性剤、ポリマー、キレート化剤、金属コロイドおよび/または金属ナノ粒子、酸化剤、および他の化学的添加剤などの補助成分は、上記の過酸反応体化合物を含む第1または第2の水性組成物に加えて、1種以上の水性組成物の中に送達または分散させることができる。1回の処理の間に、本発明の方法に従って、3つ以上の水性組成物を利用して分散させることができる。したがって、そのような態様において、過酸反応体化合物は、方法の間に分散された任意の2つの別個の水性組成物によって送達され得、過酸化化合物および有機酸化合物が2つの別個の組成物の一部として分散され、過酸が消毒される表面でin situで形成される限り、必ずしも分散される「第1の」または「第2の」水性化合物を含まなければならないわけではない。
【0103】
さらなる態様において、1つ以上の追加の水性組成物は、水から本質的になる少なくとも1つの水性組成物を有することができる。水から本質的になる分散組成物は、本明細書に提示される方法と組み合わせて実施することができる前処理工程、中間工程および仕上げ工程に関して、いくつかの任意の可能性を開く。例えば、いくつかの態様において、方法は、容積空間内の湿度を増加させて、過酸反応体化合物を含有する水性組成物の液滴を維持し、過酸反応体化合物が消毒される表面に到達する前にそれらが失われたり環境内に蒸発したりすることを抑制または防止するために、水から本質的になる前処理組成物を容積空間内に分散させる工程をさらに含むことができる。いくつかの態様において、容積空間の相対湿度を少なくとも約50%、例えば少なくとも約60%、または70%、または80%、または90%、または95%、または99%に上昇させるために、水から本質的になる十分な体積の前処理組成物を容積空間に分散させることができる。さらなる態様において、容積空間の相対湿度を少なくとも約90%に上昇させるために、水から本質的になる十分な体積または質量の前処理組成物を容積空間に分散させることができる。当業者であれば、容積空間内部の大気の条件ならびに容積空間のデカルト寸法に基づいて、所望の相対湿度に達するために、分散させる水から本質的になる前処理組成物の必要量を判定することができる。
【0104】
他の態様において、本方法は、第1の過酸反応体化合物を含む第1の水性組成物の分散後、水から本質的になる中間組成物を容積空間内に分散させる工程を含むことができ、空気から第1の水性組成物のいずれかの過剰な液滴または滞留する液滴の堆積を合体させ、さらに堆積させるようにする。別の態様において、本方法は、第2の過酸反応体化合物を含む水性組成物を分散および堆積させて、第2の水性組成物のいずれかの過剰な液滴または滞留する液滴の堆積を合体させ、さらに堆積させた後に、水から本質的になる最終組成物を容積空間内に分散させる工程を含み得る。過酸反応体化合物を含有する任意の水性組成物の過剰または滞留した懸濁液滴を除去することにより、容積空間は、消毒中に分散された化学成分のいずれもから実質的にフリーであるようにすることができる。
【0105】
前処理組成物、中間組成物、または最終組成物のいずれかの液滴の大きさは、過酸反応体化合物を含有する滞留または懸濁した液滴の除去を促進するとともに、下方の表面への迅速な堆積を促進するように制御することができる。いくつかの態様において、水から本質的になる水性組成物の液滴の大半の有効直径は、少なくとも約1ミクロンまたは少なくとも約10ミクロン、または少なくとも約20ミクロン、または少なくとも約30ミクロン、または少なくとも約40ミクロン、または少なくとも約50ミクロン、または少なくとも約100ミクロンである。好ましくは、第3の水性組成物の液滴の大半の有効直径は、約20~約30ミクロンである。他の態様において、複数の液滴の大半は、その有効直径が約1ミクロン以下または約10ミクロン以下、または約20ミクロン以下、または約30ミクロン以下、または約40ミクロン以下、または約50ミクロン以下、または約100ミクロン以下である。複数の液滴の大半の有効直径の有用な範囲は、約1~約100ミクロンの間およびそれらを含む任意の値から選択することができる。そのような範囲の非限定的な例として、約1~約100ミクロン、約10~約100ミクロン、約20~約100ミクロン、約30~約100ミクロン、約40~約100ミクロン、約50~約100ミクロン、または約20~約30ミクロンを挙げることができる。
【0106】
非限定的な例として、容積空間内で消毒が必要な表面を消毒する方法は、容積空間に、水から本質的になる第1の水性組成物の複数の液滴を分散させ、第1の水性組成物が容積空間全体に分散するのに十分な時間を与え、表面上に堆積させて層へと合体する工程;過酸化化合物および有機酸化合物からなる群から選択される第1の過酸反応体化合物を含む第2の水性組成物の複数の液滴を容積空間内に分散させる工程;第2の水性組成物の液滴が第1の水性組成物の合体層に堆積させるのに十分な第2の時間を与える工程;第1の過酸反応体化合物の他方である第2の過酸反応体化合物を含む第3の水性組成物の複数の液滴を容積空間内に分散させる工程;および第3の水性組成物の液滴が第1および第2の水性組成物の合体層上に堆積させて反応層を形成するのに十分な第3の時間を与え、それによって反応層にin situで過酸を形成し、表面を消毒する工程を有することができる。
【0107】
本発明の別の態様において、いずれかの水性組成物の複数の液滴を静電的に帯電させることができる。静電スプレーの例は、米国特許第6,692,694号に記載されており、その開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。図1は、従来技術による市販の静電スプレー装置10の例を示す。静電スプレー装置10は、ハウジング12;ハウジング12に伴う液体を貯蔵するための容器14;液体のエアロゾル化液滴を分配するために、容器14と液体連通する複数のノズル16;及び分散後の液滴に静電荷を付与することができる高容量帯電システム18;を含む。当業者は、正電荷のみを有する液滴をスプレーする装置や、負電荷のみを有する液滴をスプレーする装置や、任意の所望の電荷を有する液滴を選択的にスプレーすべく調整可能な装置などの任意の静電スプレー装置を、静電帯電した液滴を分散させるために利用できることを理解するであろう。いくつかの態様において、正、負または中性の電荷を有する液滴を選択的にスプレーするように調節可能な静電スプレー装置を利用することができる。
【0108】
静電気を用いて液滴を分散させることによって利用することができるいくつかの利点があり、それには、消毒される表面へのより効果的で標的化された分散、視線に入らない垂直面および下側の面への適用、および表面への過酸の形成に先立って、過酸反応体化合物の活性化が促進されることを挙げることができるがこれらに限定されない。理論に限定されるものではないが、複数の同様に帯電した液滴は、クーロンの法則に従って互いに反発するので、静電荷を加えることにより、水性組成物のより効果的な分散がもたらされると考えられる。図2に示すように、静電スプレー装置116のノズルから分配された、負に帯電した粒子120は、正または中性に帯電した表面130の全面に堆積する。液滴は、液滴から液滴までの距離を最大にするために、領域または容積空間にわたって均一に分布し、対象の裏面および下面を含む多様な表面に堆積する。
【0109】
容積空間に分散させた水性組成物の体積のために、同様に荷電した粒子は自発的に表面の層に合体する。いくつかの態様において、第1の水性組成物を静電帯電させて、消毒される表面に液滴を均一に分布させ、続いて第2の水性組成物を容積空間に分散させる。他の態様において、クーロンの法則は、第1の水性組成物の複数の液滴と反対の極性を有する第2の水性組成物の複数の液滴を静電的に帯電させ、第1の水性組成物と第2の水性組成物との間に引力を生み出して、過酸反応体化合物が消毒される表面の合体層において互いに接触することを確実にすることによって、さらに利用することができる。
【0110】
さらに、水性組成物に配置された静電荷は、過酸反応体化合物の反応性を高めるように選択することができる。いくつかの態様において、過酸化化合物を含む水性組成物を負電荷で静電スプレーすることができるが、一方で有機酸化合物を含む水性組成物を正電荷で静電スプレーすることができる。他の態様において、過酸化化合物を含む水性組成物を正電荷で静電スプレーすることができ、有機酸化合物を含む水性組成物を負電荷でスプレーすることができる反対の状況が起こり得る。最終的には、いずれかの水性組成物に存在する成分の同一性とは無関係に、任意の水性組成物に静電荷(正、負または中性)の任意の組み合わせを適用することができる。
【0111】
消毒される表面の水性組成物の堆積を増強し、過酸形成反応を増強することに加えて、静電スプレーを利用することは、本明細書に記載の方法にさらなる補足的利益をもたらす。静電帯電した液滴が表面に対して有している引力は、消毒される表面での反応を促進するのに有益であるが、それはまた領域または容積空間に存在する可能性のあるいずれかの人物に対するさらなる安全対策を提供する。そうでなければいずれかの者の深い肺に浸透するより小さな液滴は、代わりにその人物の鼻腔または口の表面に引き付けられ、その効果があれば、身体によって容易に中和することができる。さらに、同一に荷電した粒子が経験する反発は、重力によって地面に押し込まれることなく、液滴が空気中に長く滞留する原因となり得る。したがって、より大きな液滴の大きさを使用することができ、より大きな容積空間内の表面の消毒を促進できる。
【0112】
いくつかの態様において、容積空間内の表面は、静電スプレーによって第1の水性組成物を分散させる前に接地することもできる。電気的引力は、接地表面と容積空間の荷電した液滴との間に生成されるので、液滴は接地表面に優先的に、またはそれだけに引き寄せられるようにすることができる。非限定的な例として、ドアの取っ手、蛇口、病院のベッドレールおよびバーのような病院内の人がよく通る表面または特に汚染されている表面は、消毒する前にそれらを接地することによって標的とすることができ、患者間での部屋のより迅速な入れ替えを促進する。他の態様において、容積空間内のすべての表面のより良いブランケット被覆率をもたらすために、静電帯電した第1の水性組成物を分散させる前に、ある領域または容積空間内で既に接地されている表面を接地源から除去することができる。さらなる態様において、選択された接地表面を第1の水性組成物で静電スプレーすることは、第2の水性組成物を静電荷なしで分散させることと組み合わせて、容積空間全体にわたって一般的な表面被覆率をもたらすことができる。
【0113】
同様に、容積空間全体にわたる水性組成物の分散を促すために、または他の方法工程で分散された静電帯電した液滴間の引力または反発を促進するために、過酸反応体化合物を含有しない追加の水性組成物の分散した液滴に、静電的な帯電を適用することができる。例えば、いくつかの態様において、本方法は、容積空間に、過酸化化合物または有機酸化合物のいずれかである第1の過酸反応体化合物を含む第1の水性組成物の正に帯電した複数の液滴を分散させる工程;第1の水性組成物が容積空間全体に分散するのに十分な時間を与え、表面上に堆積して層の中へと合体する工程;第1の過酸反応体化合物の他方である第2の過酸反応体化合物を含む第2の水性組成物の負に帯電した複数の液滴を容積空間内に分散させる工程;第2の水性組成物の液滴が第1の水性組成物の合体層に堆積して反応層を形成するのに十分な第2の時間を与え、それによって反応層にin situで過酸を形成し、表面を消毒する工程;容積空間に、水から本質的になる最終組成物の正に帯電した液滴を分散させる工程;および第3の水性組成物が容積空間全体に分散するのに十分な時間を与える工程を含むことができる。負に荷電した第2の水性組成物の分散および堆積後に最終組成物を正電荷で分散させることにより、消毒が完了した後の容積空間に残っている第2の水性組成物の任意の過剰なまたは滞留する液滴の除去を容易にすることができる。
【0114】
いくつかの態様において、水性組成物のエアロゾル化の前に、または組成物を分散させた後に、静電荷を適用することができる。静電スプレーのノズルに印加される電圧の大きさ、ノズルの大きさまたは種類、およびノズルを通る水性組成物の流量を調整することによって、複数の静電帯電した液滴の分散を調整することができる。
【0115】
表面の性質および汚染、それらの表面が位置する容積空間の大きさ、各水性組成物について選択される化合物次第では、人が存在しなくても本明細書に記載の方法を実施することが有利であり得る。結果として、本発明の一態様で、消毒システムであって、a)ハウジング;b)ハウジングに伴う第1の液体用の第1の容器;c)ハウジングに伴う第2の液体用の第2の容器;d)第1の液体および第2の液体の少なくとも1つの液滴の流れを分配するために、ハウジングに取り付けられ、第1の容器および第2の容器の少なくとも1つと液体連通するノズル;e)ノズルからの分配の際、少なくとも第1の液体に静電荷を付与する手段;f)予め選択された量の第1の液体および予め選択された量の第2の液体を分配するように構成されるメモリおよびプログラミングを含むマイクロプロセッサ;及び任意のg)第1の液体の分配と第2の液体の分配との間の時間を制御するタイミング機構;を有するシステムが提供される。
【0116】
別の態様において、消毒システムは、ハウジングに伴う第3の液体のために、ノズルと液体連通する第3の容器をさらに含むことができる。消毒システムに第3の容器を含めることに関連して、マイクロプロセッサは予め選択された量の第3の液体を分配するように構成でき、タイミング機構は第1、第2および第3の液体を分配する間の時間を制御することができる。いくつかの態様において、第3の液体は、水から本質的になり、過酸反応体化合物を含む水性組成物のいずれかを分配する前または後のいずれかに、上記の前処理工程、中間工程および最終工程のいずれかで適用することができる。
【0117】
水性組成物での過酸反応体化合物の送達は、特に表面が空気ダクトの内部、閉じ込められた空間、または非常に大きな容積空間である場合に、消毒される表面を静電スプレーすることに加えて、本方法によって行うことができる。これらの状況では、水性組成物を周囲空気中で蒸発させるか、それらを高温のガスの流れに導入することが非常に有効であり得る。これらの方法を使用する滅菌は、米国特許第8,696,986号および第9,050,384号に記載されており、これらの開示は、その全体が参照により組み込まれる。上述の他の特許文献と同様に、これらの特許に記載された方法は、過酸を形成し、次いで容積空間に分配することを必要とする。対照的に、過酸反応体化合物は別々の適用工程で分散され、それにより消毒される表面に過酸をin situで形成する。
【0118】
いくつかの態様において、周囲空気を含む容積空間内で消毒を必要とする表面は、a)過酸化化合物を含む第1の水性組成物を加熱して、過酸化化合物を含む蒸気を周囲空気で生成する工程;b)過酸化化合物を含む蒸気が容積空間全体に分散するのに十分な第1の時間を与え、冷却し、凝縮させて表面において過酸化化合物を含む液体層に堆積させる工程;c)有機酸化合物を含む第2の水性組成物を加熱して有機酸化合物を含む蒸気を生成する工程;およびd)有機酸化合物を含む蒸気が、容積空間全体に分散し、また冷却、凝縮、および過酸化化合物を含む液体層に有機酸化合物を堆積させて反応層を形成するのに十分な第2の時間を与えて、それによって反応層にin situで過酸を形成し、表面を消毒する工程を含む方法を用いて消毒できる。
【0119】
いくつかの態様において、蒸気を形成するために、水性組成物を霧化装置に圧送して、組成物を高圧ミストとして周囲温度の大気中に機械で導入してミストまたはスプレーを形成することができる。次いで、霧化装置に一体化された1つ以上の加熱要素に近接してミストまたはスプレーを繰り返し通過させることによって、ミストまたはスプレーが加熱されて気化される。水性組成物が繰り返し循環するにつれて、それは、任意の使用者が選択可能な温度、例えば約250℃超で、分子的な水、過酸反応体化合物およびいずれかの追加の任意選択に添加された殺生物剤(上記のようなもの)を含有する過熱蒸気にさらに分散する。あるいは、ある質量の第1の水性組成物および第2の水性組成物をそれぞれ約30分未満、例えば約25分未満、または20分未満、または15分未満、10分未満、または5分未満で蒸発させるのに十分な温度で、第1の水性組成物および第2の組成物を加熱する。さらなる態様において、第1の水性組成物および第2の組成物は、ある質量の第1の水性組成物および第2の水性組成物を各々約2分間で気化させるのに十分な温度で加熱する。
【0120】
霧化装置を出た後、過熱された蒸気は、それが空気中に分散して沈降するときに冷却する。使用時には、霧化装置を消毒される表面から十分距離をおいて配置して、蒸気が表面に堆積するときの蒸気の温度が約55℃以下になるようにすることができる。いくつかの態様において、蒸気は、保管施設の周囲温度に近い温度、最適には約10~約25℃の範囲の温度で適用される。蒸気をこの温度まで冷却することにより、使用者は不活性固体表面および農産物の非不活性表面の両方に蒸気を安全に適用することができる。全体の方法が40分から8時間にわたる期間にわたって適用される態様において、実質的にすべての表面が容積空間内で消毒され、保管された農産物、および農産物が保管されている保管施設の表面にいる事実上すべての細菌、細菌胞子、菌類、原虫、藻類およびウイルスを死滅させることができる。
【0121】
水性組成物の液状の液滴が空気中に分散される上記の本発明の他の態様と同様に、気化を伴う本発明による消毒方法は、乾燥した環境での有効性の低下も示す。したがって、いくつかの態様において、気化方法は、領域の湿度を増加させるために水から本質的になる気化組成物を分散させることによって、領域または容積空間を前処理する工程をさらに含むことができる。
【0122】
本発明の別の態様において、第1の水性組成物および第2の水性組成物は、それらを容積空間内に分散させる前に、高温のガスの流れをそれらに導入することによって気化させることができる。いくつかの態様において、加熱されたガスの流れは滅菌の空気であるが、窒素、CO、または不活性希ガスキャリアなどの他のガスを使用することもできる。ガスの流れは、約250℃以上の任意の使用者制御温度に加熱することができる。水性組成物は、当業者に周知の任意の手段によって空気の流れの中に導入することができる。好ましい態様において、水性組成物は流れに直接分散される。上述の態様と同様に、水性組成物を含有する蒸気が容積空間内に分散されると、蒸気が冷却され、凝縮し、表面上の液体層に堆積するのに十分な時間は、限定されないが水性組成物中の成分の同一性および濃度、および消毒される表面の材料の性質を含む要因に依存して変動する。
【0123】
本発明のさらなる態様において、上述の方法のいずれかは、紫外(UV)光から本質的になる波長で消毒される表面を照らす工程をさらに含むことができる。UV光は、空気中、表面上、および液体中の病原体を死滅させることが知られている。病原体を死滅させるためにUV光を用いる方法は、米国特許第6,692,694号および第8,110,538号に記載されており、これらの開示は、その全体が参照により組み込まれる。UV光は、それ自体の殺生物活性を有することに加えて、過酸化化合物を活性化して、有機酸化合物との反応においてそれらを遥かに反応性にして過酸を形成することができる。例えば、過酸化水素は、強力なUV光によって衝突されて2つのヒドロキシルラジカルを形成するときに活性化され得る。好ましい態様において、過酸化化合物を含む水性組成物が消毒される表面に堆積して合体すると、その後表面はUV光から本質的になる波長で照射される。あるいは、過酸化化合物を含む組成物は、分散されるときにUV光から本質的になる波長で照射されてもよい。UV光は、当業者に周知の任意の手段を用いて生成することができる。
【0124】
本発明のいくつかの態様において、消毒される表面で過酸を生成するための上記の消毒方法は、抗微生物、漂白または消毒用途を含む様々な使用者が特定する殺菌目的に使用することができる。他の態様において、生成される過酸は、サルモネラ・チフィリウム(Salmonella typhimurium)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、および大腸菌O157:H7(Escherichia coli O157:H7)、酵母、およびカビを含むがこれらに限定されない食品に付随する食物媒介性病原菌の1つ以上を死滅させるために使用され得る。
【0125】
いくつかの態様において、本発明の方法およびシステムに従って生成された過酸は、ヘルスケア面および器具に関連する病原性細菌の1つ以上を死滅させるのに有効であり、サルモネラ・チフィリウム、黄色ブドウ球菌(Salmonella aureus)、サルモネラ・コレラスルス(Salmonella choleraesurus)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、大腸菌(Escherichia coli)、マイコバクテリア(Mycobacteria)、酵母およびカビが非限定的に挙げられる。他の態様において、生成される過酸は、家庭用または工業用の用途においても有効であり、公共輸送機関の乗員室(図3)、金属輸送コンテナの内面および外面、手術室、病院の患者室、キッチン、バスルーム、工場、病院、歯科診療室、レストラン、洗濯または繊維サービス、および食品加工工場を非限定的に含む様々な領域または容積空間において適用できる。
【0126】
さらに、過酸反応体化合物を含有する組成物は、滑らかな、不規則な、または多孔質のトポグラフィを有する様々な硬質または軟質の表面に適用することができる。好適な硬質の表面は、例えば、建築用表面(例えば、床、壁、窓、流し台、テーブル、カウンターおよび看板);食器;硬質の表面の医療用または外科用器具および装置;および硬質の表面の包装を含む。このような硬質の表面は、例えば、セラミック、金属、ガラス、木材または硬質プラスチックを含む様々な材料から作ることができる。適切な軟質の表面は、例えば、紙;ろ過材、病院および外科用リネンおよび衣料品;軟質の表面の医療用または外科用器具および装置;および軟質の表面の包装を含む。このような軟質の表面は、例えば、紙、繊維、織布または不織布、軟質プラスチックおよびエラストマーを含む様々な材料から作ることができる。壁、床、ベッドフレーム、患者ケア設備、ベッドサイドテーブル、および寝具を含む病院の患者室の様々な表面を消毒および滅菌することができる。
【0127】
さらに、本発明の方法およびシステムに従って生成された過酸は、グラム陽性生物(リステリア・モノサイトゲネスまたは黄色ブドウ球菌)、グラム陰性生物(大腸菌または緑膿菌)、カタラーゼ陽性生物(ルテウス菌(Micrococcus luteus)または表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis))、または芽胞形成(sporulent)生物(枯草菌(Bacillus subtilis))などの多種多様な微生物に対して有効である。
【0128】
本発明のいくつかの態様において、方法は、食品グレードの成分のみを使用して実施することができる。例えば、必須ではないが、本発明の消毒方法は、多くの市販の表面洗浄剤に一般的に存在する成分から実質的にフリーとして実施することができる。省くことが可能な非食品グレードの成分の例には、グルタルアルデヒド、塩素および臭素含有成分、ヨードフォア含有成分、フェノール含有成分、第四級アンモニウム含有成分などのアルデヒドが含まれるが、これらに限定されない。さらに、過酸は消毒される表面にin situで形成されるので、標的表面を消毒する前に過酸の加水分解を防止するために使用することができる重遷移金属や、界面活性剤、また他の安定化化合物は必要でなく、食品調製表面または食品自体と接触する水性組成物から省くことができる。
【0129】
したがって、消毒される表面に直接過酸を生成する方法は、食品および植物種に使用して、表面の微生物個体群、またはそのような食品および植物種を扱う製造、加工、冷蔵および非冷蔵の輸送場を減らすことができる。例えば、組成物は、食品輸送ライン(例えば、ベルトスプレーとして);ブーツおよび手の洗浄用ディップパン;食品貯蔵施設;出荷コンテナ;鉄道;抗腐敗空気循環システム;冷蔵および冷却装置;飲料冷却機および加温機;漂白器;まな板;第3のシンク領域;および肉用冷却または加熱装置で使用することができる。
【0130】
本発明の特定の態様を説明したが、本発明は、本開示の精神および範囲内でさらに変更することができる。当業者は、本明細書に記載された特定の手順、態様、特許請求の範囲および実施例に対する複数の均等物を認識する、または定型的な実験を用いて確認することができる。したがって、そのような均等物は、本発明の範囲内にあると見なされ、したがって、本願は、その一般的な原則を使用する本発明のあらゆる変形、使用または適合を包含することが意図される。さらに、本発明は、本発明が関連し、添付の特許請求の範囲に含まれる当技術分野における既知のまたは慣習的な習慣に含まれる本開示からのそのような逸脱を網羅することが意図されている。
【0131】
明確にするために、別個の態様の文脈で説明される本発明の特定の特徴は、単一の態様において組み合わせて提供されてもよいことが理解される。逆に、簡潔にするために、単一の態様の文脈で記載されている本発明の様々な特徴はまた、別個に、または任意の適切なサブコンビネーションで、または本発明の任意の他の記載された態様に適しているものとして提供できる。様々な態様の文脈で説明される特定の特徴は、態様がそれらの要素なしで動作不能でない限り、それらの態様の本質的な特徴と見なすべきではない。
【0132】
本明細書において言及されるすべての参考文献、特許および特許出願の内容は、参照により本明細書に組み込まれ、そのような参考文献が本発明の先行技術として利用可能であることを認めるものと解釈されるべきではない。本明細書の組み込まれた刊行物および特許出願のすべては、本発明が関係する当業者のレベルを示し、個々の刊行物または特許出願が具体的に示されているかの如く組み込まれ、個々に参照により示されている。
【0133】
本発明は、以下の実施例および予言的な実施例によってさらに説明され、これらの実施例はいずれも本発明を限定するものと解釈すべきではない。さらに、セクションの見出しを使用している場合、それらは必ずしも限定的であると解釈するべきではない。建設的または予言的と示されている例を記述するために過去の時制を使用しても、建設的または予言的な例が実際に実行されたことを反映させている意図はない。
【実施例
【0134】
以下の例は、現在ベストと知られている本発明の態様を例示している。しかし、以下は、本発明の原理の適用の例示または例証に過ぎないことを理解されたい。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、複数の改変および代替の組成物、方法およびシステムを当業者が考案することができる。したがって、本発明を詳細に上述してきたが、以下の実施例で、本発明の最も実用的で好ましい態様であると現在考えられるものに関連して、さらに詳細を提供する。
【0135】
実施例1:閉鎖系エレクトロスプレー分散研究
静電スプレー装置を用いて、5重量%の酢酸を含む水性組成物の複数の標的表面への分散を評価するために、本開示の態様に従って研究を行った。1立方メートルの透明グローブボックス(「Cube」)内に2つの分析用の天秤を置き、時間の関数として質量測定値を収集して記録するように構成されたコンピュータステーションに接続した。各天秤は0.005グラムの標準的な読み取り誤差を有していた。各天秤には、1000平方センチメートルのプラスチック製シートを計量皿の中に入れた。各天秤の位置は、Cubeの一端に置かれた静電スプレーに対してx軸、y軸、z軸に沿って異なる位置になるようにずらした。
【0136】
Cubeは、透明なビニールで内側に覆われた木製の外部フレームワークで構築した。Cubeの床は白いFormicaであった。副室を、立方体の壁のうちの1つの下部の上に配置した。副室には排気ファンがあった。Cubeの別の壁には、Cubeの壁全体を扉のように開けることができた扉があった。Cubeが排出し尽したときの補給用空気は、Cubeの天井の上隅にあり、副室の反対側の壁に隣接するポータルを通して供給した。このポータルは、高効率炉フィルターをプレフィルターとして使用したHEPAフィルターで覆った。Cubeが外部環境に対して閉じられている間にCube内の材料を操作するために、1つのグローブを副室の反対側の壁に設置し、2つのグローブをそれ自体副室に隣接して設置した。上記のように、各グローブステーションの近くに棚を設置して、天秤をx、y、zの位置をずらして配置できるようにした。デジタルの温度計と湿度計もCubeの内部に設置した。
【0137】
使用された静電スプレー装置は、Hurricane ES(商標)ポータブル静電エアロゾルアプリケータ(Portable Electrostatic Aerosol Applicator)であり、Cubeの副室の内部に置かれた。スプレー用の補給空気は、Cubeから来て、スプレーの裏側に入ることができるように、スプレーの下を通過した。この空気をスプレーに通し、そこで試験溶液を収容し、3つの電極の経路にある3つのノズルを通過させた。次いで、スプレーを高強度のUVC光を含む短い室に通してからCubeに通した。試験溶液供給ラインは、副室から出て、分析用天秤に置かれたビーカー内に延在していた。約24.5グラムの各試験溶液をCubeに通し、約3ミクロンの理論上有効なフィルムの厚さが得られた。試験対象物はスプレーの直接的なラインの外側に配置したので、間接的なスプレーしかかけられておらず、実際に消毒される表面の潜在的な条件を模倣した。各実験の間、Cube用のすべての開口部は、外部環境から密封された。
【0138】
次いで、酢酸組成物を設定粒子サイズ約15ミクロンで30秒間Cube全体に静電スプレーした。適用時間は、天秤によって測定されるように、処理空間内に2ミクロンの厚さのコーティングを付与するように選択された。適用中、2つの天秤からの質量測定値を収集し、コンピュータによって記録した。試験の結果を次に示す。
【0139】
【表2】
【0140】
天秤Aおよび天秤Bに付着した第1の水性組成物の質量は、0.015+/-0.010グラムの差を示した。Cubeの内面が酢酸溶液で等しく被覆されているように見えるという定性的観察と組み合わせて、静電スプレー法は第1の水性組成物をCube内に均一に分散させたと考えられる。
【0141】
実施例2:第1および第2の水性組成物の調製
酢酸を含むものと過酸化水素を含むものという、過酸反応体化合物を含有する2つの別個の水性組成物を、以下の成分をおおよその量で含む本開示の態様に従って調製した。
第1の水性組成物:
8%(w/w)酢酸
15%(w/w)エタノール
0.003%(w/w)シナモン油
76.997%(w/w)蒸留水
第2の水性組成物:
5%(w/w)過酸化水素
15%(w/w)エタノール
80%(w/w)蒸留水
【0142】
第1の水性組成物および第2の水性組成物を、容積空間内で消毒を必要とする表面上に分散され得るまで、別々の容器に入れた。
【0143】
実施例3:実施例2の水性組成物の順次追加による閉鎖系でのログ死滅研究
実施例2の2種の水性組成物を順次適用して、閉鎖系内で消毒される表面に直接in situで過酸を形成することによって、細菌の一般的な菌株に対する抗菌活性を判定するため、本開示の態様に従って、研究を実施した。閉鎖系は、実施例1で使用したCubeであった。4つの細菌の種-枯草菌、ルテウス菌、ロドスピリラム・ラブラム、およびスタフィロコッカス・エピデルミス-の市販されている菌株から得た培養物を、一般的な殺生物剤に対するいくつかの既知の防御機構を有しており、同時に互いに異なる物理的特性を有していることから、ログ死滅研究で選択した。各細菌のコロニーを生成するために、滅菌済みの予め注入した寒天プレートを増殖培地として使用した。各々の種について8枚のプレートを接種した。これらの8枚のプレートのうち、4枚のプレートを実施例2の2種の水性組成物の順次の適用に曝し、4枚のプレートを対照として取り出した。ログ死滅試験のための標準的なTストリーク法を用いてプレートに接種した。それにおいて、プレートの第4象限の細菌の濃度が第1象限に対して約1,000,000倍に希釈されている。次いで、各々の種の試験プレートを、蓋を開いた状態でCubeの内側に置いた。対照プレートをテープで密封した。
【0144】
Cubeを閉じると、Hurricane ES(商標)ポータブル静電エアロゾルアプリケータを使用して、第1の水性組成物の複数の液滴を静電的にCube全体に適用した。Hurricane ES(商標)アプリケータの製造業者の指示に従って、液滴サイズ10~20ミクロンと相関する6オンス/分の流速を用いて、液滴を30秒間スプレーした。第1の水性組成物の適用のタイミングは、溶液の質量によって判定されるときに、処理空間内のプレートに計算された2ミクロンの厚さを有するコーティングを施すように選択された。第1の水性組成物のスプレーが完了した約1分後、第2の水性組成物をハンドスプレーを用いて約6~8インチの距離で3秒間スプレーし、システム全体にはさらに5分間触れずにいた。残留スプレーの空気を排気した後、試験プレートを周囲環境に持ち出す前に、それらの蓋をCubeの内側で閉じ、テープで密封した。Cubeから外部環境へ移動させる間、枯草菌の試験プレート1および2の蓋が不注意にも開いた。これらのプレートを直ちに閉じ、テープで密封した。次いで、密封した試験プレートおよび対照プレートをすべて約28℃でインキュベートし、1日、2日および4日後に検査した。
試験の結果を、次に示す。
【0145】
【表3】
【0146】
【表4】
【0147】
【表5】
【0148】
すべての対照が、予想した結果を生じた。過酸反応体化合物を含有する順次適用された水性組成物で処理されなかった陽性の対照プレートは、開放環境内で増殖した特徴である、各生物の増殖を示した。16個の対照プレートにわたって、プレートの第4象限に平均4個のコロニーがあり、これは最初の接種で400万個のコロニーが存在したことを示している。
【0149】
コロニーは1日後に2つの枯草菌の試験プレートで認められた。しかし、これらの試験プレートは、方法が完了した後、蓋が密封される前に、不注意にも周囲環境に曝されたものであった。これらのコロニーは、枯草菌の対照プレートのコロニーとは異なる形態を有していた。結果として、これらのコロニーは、蓋が不注意に開いたときにプレートに導入された細菌に基づいて、偽陽性を示していると考えられる。以前に過酸に曝されていたプレート上にコロニーが見出されたので、これらの結果はまた、細菌が増殖したことを試験プレート自体が支持できること、および残りの試験プレート上に観察可能なコロニーがないことが、実験で用いた消毒方法の直接的な結果であることを示唆している。したがって、対照プレートにおいて認められた約400万個のコロニーと結合した、残りの試験プレート上のコロニーの欠如は、この方法がプレート上に最初に存在した細菌の少なくとも99.9999%の死滅を表す、少なくともログ6の死滅率に有効であることを示している。
【0150】
実施例4:中規模の容積空間でのエレクトロスプレー分散研究
静電スプレー装置を用いて、1重量%の酢酸を含有する水性組成物の複数の標的表面への分散を評価するために、本開示の態様に従って研究を行った。使用された静電スプレー装置は、Hurricane ES(商標)ポータブル静電エアロゾルアプリケータであった。試験表面が配置された実験室空間は、周囲の環境に対して閉鎖され、約30立方メートルの体積を有し、これはおよそ小さな病室の大きさであった。静電スプレー装置は、約2フィートの高さで実験室の隅の1つから約5フィートのプラットフォームに配置し、反対側の角に向くように向け、y軸に沿った静電スプレー装置の背後の分散の試験ができるようにした(以下に定義する)。いくつかのpH検査用ストリップを、露出した表面および露出していない表面を含め、実験室全体、特に、壁、床、天井、および設備にわたって、固定した。pHストリップは、酢酸組成物に曝露されたことに応じた色の変化のために、酢酸組成物を静電スプレーする前と後の両方で評価した。酢酸組成物のそれぞれの適用には、負の電荷をスプレーした。
【0151】
各適用について、酢酸組成物を、Hurricane ES(商標)アプリケータの製造業者の指示に従って、液滴サイズ10~20ミクロンと相関する6オンス/分の流速を用いて、約45秒間スプレーした。スプレーが完了した後、研究者らはpHストリップを評価するために室内に入った。3回の試行で、すべてのpHストリップは各試行中に色の変化を示し、隠れているか露出されていないpHストリップであっても、各ストリップに酢酸組成物が接触したことを示した。
【0152】
各々のpHストリップの位置でのpHを定量し、静電スプレー装置のノズルからのx、y、z方向の変化の関数としてのpHの分布を図3に示す。各々の線は、その区域内の各pHストリップから収集されたデータで最もよく適合している線を表す。pH値がより低いことは、pH値のさらに高い場所と比べて、当該の場所でより多くの酢酸がpHストリップに接触していることを示している。すべての距離はインチで計算された。x軸は、静電スプレー装置の外側方向に垂直な水平軸として定義した。y軸は、静電スプレー装置の外側方向に平行な水平軸として定義された。静電スプレー装置のノズルは、x軸とy軸の両方に対して45°の角度でスプレーするように配向された。z軸は、スプレーのノズルから直接上方または下方に延びる垂直方向の高さである。x軸およびz軸の両方において、酢酸スプレーによる接触は、概して、それらの位置で測定されたpHの低下が証明しているように、スプレーからの距離が増加するにつれて増加した。しかし、その効果は、双曲線状であり、ある時間の後に平坦になった。しかし、静電スプレーの前方(距離の正の値)および後方(距離の負の値)の両方で概ね同じ減少が認められたが、y軸に沿って、適用範囲はスプレーからさらに離れたところで全体的に減少した。それにもかかわらず、すべての場合において、測定された位置における最大の適用範囲のpHと最小の適用範囲におけるpHとの差は狭かった。ただし、効果はz軸に沿ってより顕著であった。
【0153】
実施例5:反応パラメータの多次元分析および細菌の死滅パーセントに対するそれらの効果
微生物の死滅パーセントに対するいくつかの反応パラメータの効果を評価するために、本開示の態様に従って研究を行った。試験された反応パラメータには、水性組成物における過酸反応体化合物の濃度、過酸反応体化合物を含有する水性組成物を添加するオーダー、過酸反応体化合物を分散する際に適用される電荷、各水性組成物に含まれるアルコールの濃度、各組成物に含まれる天然殺生物剤または殺生物性化合物の濃度、および紫外光から本質的になる波長で表面を照らす効果が含まれている。アルコールが水性組成物に含まれているすべての実験において、アルコールはエタノールであった。天然の殺生物剤が含まれたすべての実験において、天然の殺生物剤はシナモン油であった。各実験につき水性組成物の処方に使用した典型的な原液は、蒸留水、35%の食品グレードの過酸化水素、99%の氷酢酸、95%のエタノール、およびシナモン油をエタノールで20%濃度に希釈したものを含んでいた。
【0154】
すべての実験は、実施例1で利用したCubeで行った。使用した静電スプレー装置は、負電荷、正電荷および中性電荷を有する液滴を分散させる能力を有するように改変された、Hurricane ES(商標)ポータブル静電エアロゾルアプリケータであった。各実験において、3つの異なる細菌を、実施例3の手順に従って、枯草菌、ルテウス菌および表皮ブドウ球菌で試験した。1つ以上の反応成分が含まれていない実験を評価するために、殺菌量をログ死滅というよりも死滅パーセントとして評価し、全実験にわたる結果を比較する分析を促した。細菌を含有するペトリ皿を、各実験の24時間後、3日後、および5日後に等級分けした。実施例3の手順に従って、各実験と並行して細菌対照反応を行った。一定の湿度を確保し、各水性組成物の液滴の堆積を容易にするために、各実験において前処理工程を利用した。それにおいて、Cube内の相対的な湿度が湿度計で90%を記録するまで、Cube内の中性電荷を用いて蒸留水をスプレーした。
【0155】
各実験のデータはSASインスティチュート・インク(SAS Institute, Inc)から同様に入手可能な統計分析ソフトウェアであるJMPにコンパイルしたが、これはいくつかの次元にわたる変数間の相関を判定するために、いくつかの変数についてデータを分析、モデル化および視覚化することができる。特に、各反応パラメータについて収集された複数のデータ点の関数として、2次元で死滅パーセントを判定した。次いで、コンパイルしたデータすべてを使用して、JMPソフトウェアは、単一の反応パラメータに関して試験されていない濃度または値の両方での細菌の死滅パーセントに対する影響、ならびに細菌に影響を及ぼすシステム内の他の反応パラメータの能力に対して1つの反応パラメータが及ぼす影響を判定するために使用できるモデルを計算することができる。
【0156】
第1の実験のセットでは、過酸化水素、酢酸、エタノール、シナモン油の存在、ならびに紫外光の照射および電荷の存在下での水性組成物の分散の影響を測定した。13の別個の反応条件を試験した。以下の表6によるものである。死滅パーセントの列で報告されている値は、細菌の3つの種すべての平均の死滅パーセントを表しており、各実験は3回繰り返した。
【0157】
【表6】
【0158】
表6に示すように、「x」は、成分が実験条件に存在することを示す;「HP」=5重量%の過酸化水素;「AA」=8重量%の酢酸;「EtOH」=16重量%のエタノール;「UV」=反応条件の間に表面が紫外光により照射されている;「Charge」=少なくとも1つの水性組成物が静電荷で分散される;および「Cinn」=0.1重量%のシナモン油。「Comp1」は第1に分散させた水性組成物を示し、「Comp2」は第2に分散させた水性組成物を示す。カッコ内には、水性組成物の分散時の静電荷が、適用可能であれば示されている。エタノールが反応条件下で存在する実験では、両方の水性組成物にエタノールが含まれていた。シナモン油が反応条件下で存在する実験では、シナモン油を酢酸と共に組成物に添加した。表面をUV光に曝した実験では、実施例1による手順を利用した。実験2~7は、分散させた水性組成物のそれぞれに過酸反応体化合物が含まれる反応条件を示し、一方で実験8~13は、過酸反応体化合物の一方または両方を省いた対照の反応を示している。
【0159】
表6の結果は、両方の過酸反応体化合物が含まれる実験(実験2~7)において、1つまたはゼロの過酸反応体化合物が含まれる実験8~13のいずれよりも明らかに死滅パーセントが大きいことを示している。さらに、過酸化水素または酢酸のみが含まれる実験8と実験9を一緒にした死滅パーセントは、両方の化合物が含まれる実験2~7のいずれよりも顕著に少ない。この結果は、過酸が表面に形成されていること、および細菌の殺滅が増加したことが過酸を形成した結果であることを実証している。各水性組成物に関連する分散および電荷の順序を変えている実験4~7は、それぞれ互いに類似の死滅パーセントの結果を示す。実験4~7、特に実験4~6の反応条件は、エタノール、UVまたはシナモン油の少なくとも1種が、これらの成分が存在しない反応(実験2と実験3)と比較して、死滅パーセントの増加効果があることを示している。
【0160】
第2の実験のセットでは、過酸反応体化合物、エタノールおよびシナモン油の濃度の影響を、174回の別々の実験の間にわたる添加のオーダーおよび静電荷の関数として調べた。いくつかの反応において、他の反応条件の影響を判定するために、いくつかの反応成分の濃度を意図的に低く保った。試験した酢酸濃度は、水性組成物の0~15重量%の範囲であった。試験した過酸化水素の濃度は、水性組成物の0~10重量%の範囲であった。試験したエタノールの濃度は水性組成物の0~16重量%の範囲であった。また、シナモン油の試験濃度は、水性組成物の0重量%~0.16重量%の範囲であった。
【0161】
反応変数の1つ以上を変化させる関数として各実験から得た死滅パーセントのデータをJMPプログラムにコンパイルした。すべての174回の実験から得たデータを用いて、すべての反応条件にわたる平均死滅、および各反応成分についての試験した濃度範囲を予測するためのモデルを計算した。計算されたモデルは、酢酸濃度、第2の分散した水性組成物の電荷の極性、シナモン油の濃度、過酸化水素を含む組成物の添加の存在およびオーダー、過酸化水素の濃度、ならびに表面に紫外光を照射したかどうかを含む、死滅パーセントに影響を及ぼす統計的に有意な9つの独立変数があること(R=97%)を判定した。追加の項は、過酸化水素を含む組成物の添加のオーダーの二乗、過酸化水素濃度の二乗、および表面に過酸化水素の添加と併せて紫外光を照射したかどうかを含み、また統計的に関連性があった。
【0162】
図4および図5は、別々に検討された(図4)および一緒に分析された場合(図5)の、各成分の死滅パーセントに対する効果を示す。図4において、実際の酢酸(AA-a)、シナモン油(EO-a)、および過酸化水素(HP-a)の濃度がすべて0である場合、細菌の死滅パーセントは0であるとモデルが予測する。この結果は、反応成分がまったく添加されていない対照の反応と同等である。第2の組成物の電荷(Chrg2)および添加のオーダー(HPのオーダー)は連続している線を示しているが、これらのプロットはJMPプログラムのアーチファクトである。第2の組成物の電荷については、-1という値は負の電荷を示し、0という値は中性の電荷を示し、+1という値は正の電荷を示す。添加のオーダーについては、0というHPのオーダーの値は過酸化水素が存在しないことを示し、1というHPのオーダーの値は過酸化水素が第1の水性組成物に分散したことを示し、2というHPのオーダーの値は過酸化水素が第2の水性組成物に分散したことを示す。驚くことではないが、過酸化水素の添加は、等量の酢酸を添加する場合よりも、死滅パーセントに対して顕著な効果を有する。しかし、HPを添加する効果は、より高い濃度では水平に見えるが、より多くの酢酸を添加するときの相関は、線形であるように見える。この現象は、過酸化水素の影響を最大にし、そうした関係が存在している場合に過酸化水素濃度と死滅パーセントとの関係をより線形にするためには、これらの実験で試験した濃度よりも高い濃度で酢酸が存在しなければならないことを示している可能性がある。一方、より高い濃度の過酸化水素で平衡化することは、細菌の死滅パーセントに対する抑制効果を示し得る。
【0163】
他方で、図5は、各反応パラメータが死滅パーセントに対して有する最大効果を示す。それぞれの場合で、特定の反応パラメータのプロットが100%に達しており、試験したすべての濃度および反応条件にわたって、各変数の最適値を示している。各x軸ラベルの上の値は、各変数の最適値を示している。興味深いことに、酢酸およびシナモン油の濃度の最適値は、試験での最大値(15重量%の酢酸、0.16重量%のシナモン油)であり、細菌の死滅に遥かに大きな影響を与えるには、より高い濃度の酢酸およびシナモン油を使用する可能性が高いことを示している。驚くべきことに、各変数のプロットは概して図8と同じプロファイルを有するが、第2の水性組成物の電荷のプロットは、負の電荷で分散されることに対する強い優先性を示す。これは、過酸化水素を含む水性組成物が第1または第2のいずれで分散していても、死滅パーセントがほぼ同一であろうと当てはまる。その結果、第2の水性組成物を負電荷で分散させることに伴う電子の豊富さは、形成される過酸の反応性を高めるように見える。
【0164】
最後の実験のセットでは、シナモン油が細菌の死滅パーセントに対する統計的に有意な存在であったことを考慮し、シナモン油の濃度の効果および他の天然殺生物剤の効果を上記と同様の手順で試験した。天然の殺生物剤を、第1の水性組成物の一部として酢酸と共に分散させ、過酸化水素を第2の水性組成物に分散させた。両方の水性組成物に16重量%のイソプロピルアルコール(i-PrOH)が存在した。4つの異なる濃度のシナモン油を試験した:0.065重量%;0.13重量%;0.20重量%;0.26重量%であった。さらに、タイム油(Thym)、クローブ油(Clov)、およびメチルグリオキサール(MGly)も別々の実験で0.026重量%で試験した。4種の天然殺生物剤の各々を第1の水性組成物に0.065重量%の濃度で含む1つの実験を行った。存在する場合、過酸化水素および酢酸は、典型的には10重量%で添加したが、3回の実験では、それらはそれぞれの水性組成物のわずか5重量%を構成した。反応パラメータおよび結果を以下の表7に示す。
【0165】
【表7】
【0166】
表7に示すように、10重量%の過酸化水素および酢酸を、最高濃度の天然殺生物剤と共に含む反応が、死滅パーセントに最も強い影響を与えた。実験3~6を見ると、シナモン油は0.26重量%で試験した4種類の天然殺生物剤の中で最も弱く、同じ濃度のタイム油、クローブ油およびメチルグリオキサールは、すべてシナモン油よりも有効であった。しかし、シナモン油がわずか0.13重量%で存在する実験8は、シナモン油が0.26重量%で含まれる場合よりも有効であり、他の天然の殺生物剤では提示されていないシナモン油のより高い濃度での可能な反応抑制の問題を示している。それにもかかわらず、天然殺生物剤を含む組成物の有効性が高いことは、本発明の方法による水性組成物の少なくとも1つにこのような化合物を含めることが有効であることを示している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9