(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-28
(45)【発行日】2023-01-12
(54)【発明の名称】超音波検査装置及び超音波検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 29/32 20060101AFI20230104BHJP
G01N 29/04 20060101ALI20230104BHJP
G01N 29/28 20060101ALI20230104BHJP
【FI】
G01N29/32
G01N29/04
G01N29/28
(21)【出願番号】P 2018160481
(22)【出願日】2018-08-29
【審査請求日】2021-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100136504
【氏名又は名称】山田 毅彦
(72)【発明者】
【氏名】橋本 幸記
【審査官】越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】特公昭46-008391(JP,B1)
【文献】特開2000-206095(JP,A)
【文献】特開2001-147221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00 - G01N 29/52
G01B 17/00 - G01B 17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物体に向けて水を噴出することによって前記被検査物体との間に水柱を形成するためのノズルと、
前記水柱を媒体として前記被検査物体に向けて超音波を送信し、前記被検査物体からの超音波反射波を受信する超音波振動子と、
前記ノズル及び前記超音波振動子と前記被検査物体との間における相対位置を変える移動機構とを備え、
前記被検査物体に当たって飛散する水が前記水柱に当たることを防止するためのカバー
であって、水の吸収を防止する材料で表面がコーティングされたスポンジで構成されたカバーを前記ノズルに設けた超音波検査装置。
【請求項2】
被検査物体に向けて水を噴出することによって前記被検査物体との間に水柱を形成するためのノズルと、
前記水柱を媒体として前記被検査物体に向けて超音波を送信し、前記被検査物体からの超音波反射波を受信する超音波振動子と、
前記ノズル及び前記超音波振動子と前記被検査物体との間における相対位置を変える移動機構とを備え、
前記被検査物体に当たって飛散する水が前記水柱に当たることを防止するためのカバーを前記ノズルに設けた超音波検査装置において、
長さが異なる複数のカバーを交換可能に備え、前記カバーと前記被検査物体との間における隙間を調節できるように
した超音波検査装置。
【請求項3】
前記カバーを
、鉛直下方に落下する水を受ける板状の構造体で構成した請求項1
又は2記載の超音波検査装置。
【請求項4】
ノズルから被検査物体に向けて水を噴出することによって前記被検査物体との間に水柱を形成するステップと、
超音波振動子を用いて前記水柱を媒体として前記被検査物体に向けて超音波を送信し、前記被検査物体からの超音波反射波を受信するステップと、
前記ノズル及び前記超音波振動子と前記被検査物体との間における相対位置を移動機構で変えるステップとを有し、
水の吸収を防止する材料で表面がコーティングされたスポンジで構成されたカバーを
前記ノズルに設けることによって前記被検査物体に当たって飛散する水が前記水柱に当たることを防止する超音波検査方法。
【請求項5】
ノズルから被検査物体に向けて水を噴出することによって前記被検査物体との間に水柱を形成するステップと、
超音波振動子を用いて前記水柱を媒体として前記被検査物体に向けて超音波を送信し、前記被検査物体からの超音波反射波を受信するステップと、
前記ノズル及び前記超音波振動子と前記被検査物体との間における相対位置を移動機構で変えるステップとを有し、
前記ノズルにカバーを設けることによって前記被検査物体に当たって飛散する水が前記水柱に当たることを防止する超音波検査方法において、
長さが異なる複数のカバーを交換可能に備え、前記カバーと前記被検査物体との間における隙間を調節できるようにする超音波検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、超音波検査装置及び超音波検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波探傷法として水柱を形成し、形性した水柱に超音波を伝播させて被検査対象物の探傷を行う手法が知られている(例えば特許文献1、特許文献2及び特許文献3参照)。また、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP: Glass fiber reinforced plastics)や炭素繊維強化プラスチック(CFRP: Carbon Fiber Reinforced Plastics)等の複合材の曲面を対象として高速で非破壊検査を行うことができるようにした噴流式超音波探傷法が知られている(例えば特許文献4参照)。
【0003】
噴流式超音波探傷法は、被検査対象物と超音波探触子との間においてウォータージェット噴流により形成した水柱内に超音波を伝播させることによって被検査対象物の内部における損傷等の欠陥を検知する超音波探傷法である。噴流式超音波探傷法によれば、水柱内を伝播する超音波の減衰を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-077196号公報
【文献】特開2001-147221号公報
【文献】特開2001-153851号公報
【文献】特開平08-075715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の噴流式超音波探傷法では、被検査対象物に衝突して飛散した水が超音波を伝播させるための水柱に当たることがある。飛散した水が水柱に当たると超音波の乱れが生じ、十分な精度で探傷データを得ることができない場合がある。その場合、探傷検査を再度実施して探傷データを取り直すことが必要となる。
【0006】
また、被検査対象物に衝突して飛散した水が水柱に当たらないようにするためには、水流の流速を増加させることによって水滴の落下を回避することが必要となる。しかしながら、水流の流速を増加させると水柱内における超音波の減衰量が増加し、欠陥の検出感度が低下する。欠陥の検出感度が低下すると、被検査対象物の品質を向上させることが困難となる。
【0007】
そこで本発明は、噴流により形成した水柱内に超音波を伝播させる噴流式超音波探傷法において、被検査対象物に衝突して飛散した水が水柱に当たらないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態に係る超音波検査装置は、被検査物体に向けて水を噴出することによって前記被検査物体との間に水柱を形成するためのノズルと、前記水柱を媒体として前記被検査物体に向けて超音波を送信し、前記被検査物体からの超音波反射波を受信する超音波振動子と、前記ノズル及び前記超音波振動子と前記被検査物体との間における相対位置を変える移動機構とを備え、前記被検査物体に当たって飛散する水が前記水柱に当たることを防止するためのカバーであって、水の吸収を防止する材料で表面がコーティングされたスポンジで構成されたカバーを前記ノズルに設けたものである。
また、本発明の実施形態に係る超音波検査装置は、被検査物体に向けて水を噴出することによって前記被検査物体との間に水柱を形成するためのノズルと、前記水柱を媒体として前記被検査物体に向けて超音波を送信し、前記被検査物体からの超音波反射波を受信する超音波振動子と、前記ノズル及び前記超音波振動子と前記被検査物体との間における相対位置を変える移動機構とを備え、前記被検査物体に当たって飛散する水が前記水柱に当たることを防止するためのカバーを前記ノズルに設けた超音波検査装置において、長さが異なる複数のカバーを交換可能に備え、前記カバーと前記被検査物体との間における隙間を調節できるようにしたものである。
【0010】
また、本発明の実施形態に係る超音波検査方法は、ノズルから被検査物体に向けて水を噴出することによって前記被検査物体との間に水柱を形成するステップと、超音波振動子を用いて前記水柱を媒体として前記被検査物体に向けて超音波を送信し、前記被検査物体からの超音波反射波を受信するステップと、前記ノズル及び前記超音波振動子と前記被検査物体との間における相対位置を移動機構で変えるステップとを有し、水の吸収を防止する材料で表面がコーティングされたスポンジで構成されたカバーを前記ノズルに設けることによって前記被検査物体に当たって飛散する水が前記水柱に当たることを防止するものである。
また、本発明の実施形態に係る超音波検査方法は、ノズルから被検査物体に向けて水を噴出することによって前記被検査物体との間に水柱を形成するステップと、超音波振動子を用いて前記水柱を媒体として前記被検査物体に向けて超音波を送信し、前記被検査物体からの超音波反射波を受信するステップと、前記ノズル及び前記超音波振動子と前記被検査物体との間における相対位置を移動機構で変えるステップとを有し、前記ノズルにカバーを設けることによって前記被検査物体に当たって飛散する水が前記水柱に当たることを防止する超音波検査方法において、長さが異なる複数のカバーを交換可能に備え、前記カバーと前記被検査物体との間における隙間を調節できるようにするものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る超音波検査装置の構成を示す正面図。
【
図3】本発明の第2の実施形態に係る超音波検査装置の構成を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態に係る超音波検査装置及び超音波検査方法について添付図面を参照して説明する。
【0013】
(第1の実施形態)
(超音波検査装置の構成及び機能)
図1は本発明の第1の実施形態に係る超音波検査装置の構成を示す正面図であり、
図2は
図1に示すノズルの側面図である。
【0014】
超音波検査装置1は、水柱Wを媒体として超音波を送受することによって非破壊で被検査物体Oの探傷検査を行う装置である。このため、超音波検査装置1を用いれば、繊維強化複合材でハニカムを挟んだ複合材ハニカムサンドイッチ構造部品のように、水に沈めることが困難な被検査物体Oを対象として超音波探傷検査を行うことができる。もちろん、複合材ハニカムサンドイッチ構造部品に限らず、所望の構造を有する被検査物体Oを対象として超音波探傷検査を行うことができる。
【0015】
超音波検査装置1は、被検査物体Oに向けて水を噴出するためのノズル2、水供給系3、超音波探触子4、移動機構5、信号処理装置6及びディスプレイ7で構成することができる。
【0016】
ノズル2は水供給系3と水の供給管8で連結される。すなわち、供給管8の先端にノズル2が取付けられ、供給管8の他端が水供給系3と接続される。水供給系3は水を貯留する水槽9と水槽9に貯留された水を吐出するポンプ10で構成することができる。そして、ポンプ10で吐き出された水を被検査物体Oに向けてノズル2から噴射することができる。尚、水供給系3の一部又は全部を超音波検査装置1の構成要素とせずに、超音波検査装置1が据え付けられる工場等に備えられる既存の設備としても良い。
【0017】
ノズル2から被検査物体Oに向けて水を噴出すると、ノズル2と被検査物体Oとの間に水柱Wが形成される。ノズル2と被検査物体Oとの間に形成される水柱Wの長さ方向はノズル2からの水の噴射方向となり、超音波探触子4には超音波を水柱Wの長さ方向に送信できるように超音波振動子が配置される。このため、ノズル2と被検査物体Oとの間に形成される水柱Wを媒体として超音波探触子4に備えられる超音波振動子から被検査物体Oに向けて超音波を送信し、被検査物体Oからの超音波反射波を受信することができる。
【0018】
尚、典型的な超音波探触子4には被検査物体Oの複数の位置で反射した超音波を受信できるように複数の超音波振動子が備えられるが、単一の超音波振動子で超音波探触子4を構成してもよい。
【0019】
図1に示す例では被検査物体Oが板状の物体となっている。そして、板状の被検査物体Oを挟んで2つのノズル2が対向配置されている。また、2つのノズル2には、それぞれ超音波探触子4が組合わせられている。このため、2つのノズル2にそれぞれ対応する2つの超音波探触子4に備えられる超音波振動子で被検査物体Oの両面で反射した超音波反射波を受信することができる。つまり、板状の被検査物体Oの両側から超音波探傷検査を行うことができる。
【0020】
移動機構5は、ノズル2及び超音波探触子4と被検査物体Oとの間における相対位置を変えるための装置である。従って、移動機構5は、ノズル2及び超音波探触子4と、被検査物体Oの少なくとも一方を移動できるように構成される。ノズル2及び超音波探触子4と被検査物体Oとの間における相対位置を移動機構5で変えながら超音波を送受すれば、被検査物体Oの探傷検査を2次元的に行うことができる。すなわち、被検査物体Oの異なる位置で超音波を反射させることによって被検査物体Oの検査エリアについて損傷やボイド等の欠陥の有無を検出することが可能となる。
【0021】
また、被検査物体Oで反射した超音波反射波ができるだけ散乱せずに水柱Wを伝播して超音波探触子4に到達するようにすることが必要である。そこで、移動機構5は水柱Wの長さ方向が被検査物体Oの表面に垂直となるように、ノズル2及び超音波探触子4と被検査物体Oとの間における相対位置を変えるように構成される。これにより、被検査物体Oに向けて送信される超音波及び被検査物体Oの表面で反射した超音波反射波の進行方向を水柱Wの長さ方向とし、被検査物体Oに向けて送信される超音波及び被検査物体Oの表面で反射した超音波反射波の減衰量を低減することができる。
【0022】
移動機構5は、レール等の軌道に沿って車輪が走行する走行機構、ボールねじ、ラック・アンド・ピニオン、シリンダ機構等の所望の機構で構成することができる。また、特開平08-075715号公報に例示されているように、ノズル2及び超音波探触子4と、被検査物体Oの少なくとも一方を直線的に移動させる機構に限らず、回転機構を用いて移動機構5を構成することもできる。
【0023】
回転機構を用いて移動機構5を構成すれば、ノズル2及び超音波探触子4と、被検査物体Oとの間における相対的な角度を変えることができる。このため、被検査物体Oが凹凸を有する場合、厚さが変化する場合、厚さ方向が変化する場合或いは湾曲する場合のように表面が平面でない場合であっても被検査物体Oの表面に垂直となるように水柱W及び超音波の伝播経路を形成することが可能となる。
【0024】
但し、被検査物体Oが凹凸を有する場合等のように複雑な形状を有する場合には、ノズル2と被検査物体Oが干渉しないようにすることが重要である。すなわち、ノズル2の先端が被検査物体Oに接触しないようにすることが重要である。
【0025】
そこで、ノズル2の先端と被検査物体Oとの間に、例えば10mm以上20mm以下の所定の間隔が生じるようにノズル2及び超音波探触子4と被検査物体Oとの間における相対位置を変える機能が移動機構5の制御装置に備えられる。この場合、ノズル2の先端と被検査物体Oとの間に形成される空間に水柱Wが形成されることになる。
【0026】
このため、被検査物体Oに向けて水流を噴射すると、被検査物体Oに当たって飛散する水が水柱Wに当たる場合がある。特に被検査物体Oに当たって上方に飛散した水滴は重力で落下するため水柱Wに当たる可能性が高い。水滴が水柱Wに衝突すると、水柱Wを伝播する被検査物体Oからの超音波反射波はもちろん、被検査物体Oに向けて送信される超音波が減衰する要因となる。
【0027】
そこで、ノズル2には、被検査物体Oに当たって飛散する水が水柱Wに当たることを防止するためのカバー11が設けられる。
図1及び
図2に示す例では、鉛直下方に落下する水を受ける板状の構造体でカバー11が構成されている。換言すれば、水柱Wの上方側が板状のカバー11で覆われている。これにより、被検査物体Oに当たって飛散した水滴が水柱Wに当たることを回避し、超音波の減衰を防止することができる。
【0028】
カバー11についても被検査物体Oと接触して被検査物体Oに損傷が生じないようにすること並びに被検査物体Oと接触して変形し、水柱Wを遮らないようにすることが重要である。そこで、カバー11と被検査物体Oとの間における隙間が1mm以上5mm以下となるようにカバー11をノズル2に設けることが、カバー11と被検査物体Oとの間における接触を回避しつつ水滴が水柱Wに当たることを回避する観点から好ましい。換言すれば、ノズル2にカバー11を取付けることによって、被検査物体Oと超音波検査装置1との間における隙間を1mm以上5mm以下にすることができる。
【0029】
また、カバー11が被検査物体Oに衝突する不具合が発生したとしても、被検査物体Oに傷がつかないように、カバー11を柔軟なプラスチック又はスポンジで構成することが好ましい。但し、スポンジは内部に細かな孔が無数に空いた多孔質の柔らかい物質であるため、スポンジのみでカバー11を構成すると被検査物体Oに当たって飛散した水がスポンジに吸収されてカバー11が過剰に重くなる恐れがある。カバー11が過剰に重くなれば変形して水柱Wと接触する恐れがある。
【0030】
そこで、カバー11をスポンジで構成する場合には、水の吸収を防止する材料でスポンジの表面をコーティングすることが望ましい。すなわち、水の吸収を防止する材料で表面がコーティングされたスポンジでカバー11を構成することができる。水の吸収を防止するコーティング材としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が挙げられるが、水の吸収防止効果が得られれば他の材料を用いても良い。
【0031】
形状が異なる複数の被検査物体Oが超音波検査装置1による探傷検査の対象となる場合には、カバー11の先端と被検査物体Oの表面との間における適切な距離が変化する場合がある。そのような場合には、長さが異なる複数のカバー11をアタッチメントとして着脱及び交換可能にノズル2に取付けることができる。これにより、カバー11と被検査物体Oとの間における隙間を調節することができる。
【0032】
信号処理装置6は、電気信号として超音波送信信号を生成し、生成した超音波送信信号を超音波探触子4に備えられる超音波振動子に印加する一方、超音波振動子で受信された超音波反射信号を取得して探傷検査に必要な信号処理を行う装置である。このため、信号処理装置6は、パルサー、A/D(analog-to-digital)変換器、プログラムを読込ませたコンピュータ等の電気回路で構成することができる。
【0033】
探傷検査に必要な信号処理は、検査法に応じて決定することができる。例えば、ノズル2及び超音波探触子4と被検査物体Oとの間における相対位置を移動機構5で2次元的又は3次元的に変えることによって2次元又は3次元のスキャンを行う場合であれば、超音波反射信号が2次元又は3次元の座標別に取得される。このため、超音波反射信号の強度をカラースケール又はグレースケールで表す超音波強度画像を生成し、生成した超音波強度画像をディスプレイ7に表示させることができる。これにより、超音波探傷検査を行う検査員が目視で探傷検査を行うことができる。
【0034】
或いは、信号処理装置6において探傷検査を自動的に行うようにしてもよい。特に、ノズル2に取付けられたカバー11によって、被検査物体Oに当たって飛散する水が水柱Wに当たることが防止される。このため、水柱Wを伝播する超音波反射波の減衰量が低減され、減衰量が減少した超音波反射波の検出信号を信号処理装置6において取得することができる。その結果、欠陥が存在する部位で反射した超音波反射波の検出信号を高感度に検出することができる。尚、必要に応じてノイズを除去するためのフィルタ処理、アベレージング処理、周波数解析処理等を超音波反射波の検出信号に対して実行するようにしても良い。
【0035】
欠陥が存在する部位で反射した超音波反射波の波形は、欠陥が存在しない部位で反射した超音波反射波の波形と異なる。このため、超音波反射波を表す検出信号の振幅等の波形の代表値に、欠陥が存在しない場合における代表値に相当する閾値を設定し、設定した閾値を用いた閾値処理によって被検査物体Oに生じた損傷等の欠陥を信号処理装置6で自動的に検出できるようにすることもできる。
【0036】
(超音波検査方法)
上述した超音波検査装置1を用いて被検査物体Oの探傷検査を行う場合には、被検査物体Oが超音波検査装置1にセットされ、移動機構5によって被検査物体Oと、ノズル2及び超音波探触子4との間における相対位置の位置決めが行われる。すなわち、ノズル2及び超音波探触子4の先に被検査物体Oの検査対象となる表面が配置されるように被検査物体Oと、ノズル2及び超音波探触子4との間における相対位置の位置決めが行われる。この時、ノズル2の先端が被検査物体Oに干渉しないように、安全のため所定の間隔を空けて被検査物体Oと、ノズル2の先端との間における相対位置の位置決めが行われる。
【0037】
そして、水供給系3のポンプ10が駆動し、水槽9の水が供給管8を経由してノズル2に導かれる。このため、ノズル2から被検査物体Oに向けて水が噴出される。その結果、ノズル2と被検査物体Oとの間に水柱Wが形成される。すなわち、被検査物体Oの表面と、ノズル2の先端との間における距離に相当する長さの水柱Wが形成される。
【0038】
一方、信号処理装置6において送信信号が電気信号として生成され、生成された送信信号が超音波探触子4に備えられる超音波振動子に印加される。このため、超音波振動子において送信信号が電気信号から超音波信号に変換される。そして、超音波探触子4に備えられる超音波振動子から超音波が発信される。超音波振動子は被検査物体Oに向けて配置されているため、超音波振動子から発信された超音波は、水柱Wを媒体として被検査物体Oに向けて送信される。すなわち、超音波振動子から発信された超音波は、被検査物体Oに向かって水柱Wを伝播する。
【0039】
被検査物体Oに向けて超音波が送信されると、被検査物体Oの表面において超音波が反射する。これにより生じた超音波反射波は水柱Wを伝播して超音波振動子に到達する。そして、被検査物体Oからの超音波反射波は超音波振動子により受信される。尚、ノズル2にはカバー11が設けられているため、被検査物体Oに当たって飛散する水が水柱Wに当たることを防止することができる。その結果、水柱Wを伝播する超音波及び超音波反射波の減衰を低減することができる。
【0040】
超音波振動子において受信された超音波反射波は、超音波反射波の波形を表す電気信号に変換される。超音波反射波の波形を表す電気信号は、超音波反射波の検出信号として信号処理装置6に出力される。
【0041】
そして、ノズル2及び超音波探触子4と被検査物体Oとの間における相対位置を移動機構5で変えながら、同様な超音波反射波の検出信号の収集が繰返される。その結果、信号処理装置6では、被検査物体Oの検査対象エリアで反射した2次元の超音波反射波の検出信号が得られる。
【0042】
このため、超音波反射波の検出信号に基づいて超音波反射波の振幅分布を表す強度画像等の検査画像を信号処理によって生成することができる。生成された検査画像は、ディスプレイ7に表示させることができる。このため、検査員は、ディスプレイ7に表示された検査画像を観察して被検査物体Oの探傷検査を行うことができる。或いは、信号処理装置6における信号処理によって被検査物体Oの探傷検査を自動的に行うようにしても良い。
【0043】
(効果)
以上のような超音波検査装置1及び超音波検査方法は、水柱Wを形成して超音波探傷を行う噴流式超音波探傷検査において、水を噴射するためのノズル2の先端に水柱Wを保護するためのカバー11を取付けたものである。
【0044】
このため、超音波検査装置1及び超音波検査方法によれば、送信超音波及び超音波反射波を伝播させるための水柱Wに、被検査物体Oで跳ね返った水滴が当たることを防止することができる。このため、従来のように水柱Wを形成するための水流の流速を上げなくでも、水柱Wの乱れを防止することができる。その結果、送信超音波及び超音波反射波の減衰量を低減させ、探傷検査の感度を向上させることができる。探傷検査の感度が向上すれば、被検査物体Oの品質も向上させることができる。
【0045】
また、従来は被検査物体Oに当たって飛散した水が水柱Wに当たった場合には、超音波探傷検査のデータを取り直すことが必要となる場合があった。これに対して、超音波検査装置1及び超音波検査方法によれば、被検査物体Oに当たって飛散した水が水柱Wに当たることは無い。このため、超音波探傷検査のフロータイムの削減を図ることができる。
【0046】
(第2の実施形態)
図3は本発明の第2の実施形態に係る超音波検査装置の構成を示す正面図であり、
図4は
図3に示すノズルの側面図である。
【0047】
図3及び
図4に示された第2の実施形態における超音波検査装置1Aでは、カバー11をパイプ状の構造体で構成した点が第1の実施形態における超音波検査装置1と相違する。第2の実施形態における超音波検査装置1Aの他の構成及び作用については第1の実施形態における超音波検査装置1と実質的に異ならないため同一の構成又は対応する構成については同符号を付して説明を省略する。
【0048】
図3及び
図4に示すようにカバー11を柔軟なパイプ状の構造体で構成しても良い。第2の実施形態のようにカバー11を柔軟なパイプ状の構造体で構成しても第1の実施形態と同様な効果を得ることができる。加えて、第2の実施形態によれば、様々な方向から飛散してくる水滴が水柱Wに当たることを防止することができる。
【0049】
(他の実施形態)
以上、特定の実施形態について記載したが、記載された実施形態は一例に過ぎず、発明の範囲を限定するものではない。ここに記載された新規な方法及び装置は、様々な他の様式で具現化することができる。また、ここに記載された方法及び装置の様式において、発明の要旨から逸脱しない範囲で、種々の省略、置換及び変更を行うことができる。添付された請求の範囲及びその均等物は、発明の範囲及び要旨に包含されているものとして、そのような種々の様式及び変形例を含んでいる。
【符号の説明】
【0050】
1、1A 超音波検査装置
2 ノズル
3 水供給系
4 超音波探触子
5 移動機構
6 信号処理装置
7 ディスプレイ
8 供給管
9 水槽
10 ポンプ
11 カバー
O 被検査物体
W 水柱