(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-28
(45)【発行日】2023-01-12
(54)【発明の名称】微小孔構造の絶縁体によって強化された真空絶縁物品
(51)【国際特許分類】
F16L 59/075 20060101AFI20230104BHJP
F16L 59/06 20060101ALI20230104BHJP
F16L 9/18 20060101ALI20230104BHJP
【FI】
F16L59/075
F16L59/06
F16L9/18
(21)【出願番号】P 2019547221
(86)(22)【出願日】2017-11-14
(86)【国際出願番号】 US2017061558
(87)【国際公開番号】W WO2018093781
(87)【国際公開日】2018-05-24
【審査請求日】2020-10-31
(32)【優先日】2016-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519173440
【氏名又は名称】コンセプト グループ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】リード、アールネ エイチ.
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0211711(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0121642(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103896621(CN,A)
【文献】特開2011-162756(JP,A)
【文献】特開平11-153290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 59/075
F16L 59/06
F16L 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁物品であって、
内部容積の境界を画定する第1の壁と、
前記第1の壁から所定の距離だけ離間して配置され、前記第1の壁との間に絶縁空間を画定する第2の壁と、
前記絶縁空間と連通して前記絶縁空間からの気体分子のための出口経路を形成する通気孔と、
前記第1の壁と前記第2の壁との間の前記絶縁空間内に配置された所定量の絶縁材料と
を有し、
前記通気孔は、当該通気孔を通して気体分子を排気した後、前記絶縁空間内で真空を維持するために密閉可能であり、
前記第1の壁と前記第2の壁との間の距離は前記通気孔に隣接する前記絶縁空間の一部分において可変であり、それにより、前記絶縁空間内の気体分子が前記絶縁空間の排気中に前記第1および第2の壁の可変距離部分によって前記通気孔に向かって導かれるものであり、
前記第1および第2の壁の前記可変距離部分によって前記気体分子が導かれることにより、前記気体分子が前記絶縁空間に侵入するよりも前記絶縁空間から排気される確率がより大きくなるものであり、
前記所定量の絶縁材料は、約70%~約90%容量の空隙を有し、その内部に複数の孔が画成されているものであり、
前記複数の孔の寸法は、前記複数の孔の大部分が標準大気圧における空気分子の平均自由行程と同等または当該平均自由行程より小さい寸法を有するように構成されており、
前記
所定量の絶縁材料は、約5nm~約25nmの範囲の断面寸法を有す
る凝縮シリカ繊維若しくは粒子、または凝縮アルミナ繊維若しくは粒子、または凝縮シリカ繊維および粒子、または凝縮アルミナ繊維および粒子を有するものである、
絶縁物品。
【請求項2】
請求項1記載の絶縁物品において、前記第1および第2の壁の一方は、前記通気孔に隣接してもう一方の壁に向かって収束する部分を含み、前記壁同士の前記距離は、前記通気孔が前記絶縁空間と連通する位置に隣接して最小である、絶縁物品。
【請求項3】
請求項1または2記載の絶縁物品において、前記一方の壁の前記収束する部分は、関連する管の一端部に隣接して配置される、絶縁物品。
【請求項4】
請求項1記載の絶縁物品において、前記収束する部分を含む前記壁は、前記管のうちの外側の管によって提供されるものである、絶縁物品。
【請求項5】
請求項1記載の絶縁物品において、さらに、
前記壁のうち前記一方の壁の表面に設けられたコーティングを有し、前記コーティングは、当該コーティングが設けられた前記一方の壁の放射率より低い放射率を有する材料によって形成されるものである、絶縁物品。
【請求項6】
請求項1記載の絶縁物品において、前記所定量の絶縁材料は多孔質材料を有し、当該多孔質材料は複数の孔を有するものであり、当該孔の大部分は約70nmまたは約70nmよりも小さい寸法を有するものである、絶縁物品。
【請求項7】
請求項1記載の絶縁物品において、前記所定量の絶縁材料は、約0.002W/m
*K~約0.01W/m
*Kの熱伝導率を有するものである、絶縁物品。
【請求項8】
絶縁物品であって、
内部容積の境界を画定する第1の
管と、
前記第1の
管から所定の距離だけ離間して配置され、前記第1の
管との間に絶縁空間を画定する第2の
管と、
前記絶縁空間と連通して前記絶縁空間からの気体分子のための出口経路を形成する通気孔と、
を有し、
前記通気孔は、当該通気孔を通して気体分子を排気した後、前記絶縁空間内で真空を維持するために密閉可能であり、
前記第1の
管と前記第2の
管との間の距離は前記通気孔に隣接する前記絶縁空間の一部において可変であり、それにより、前記絶縁空間内の気体分子が前記絶縁空間の排気中に前記第1および第2の
管の可変距離部分によって前記通気孔に向かって導かれるものであり、
前記第1および第2の
管の前記可変距離部分によって前記気体分子が導かれることにより、前記気体分子が前記絶縁空間に侵入するよりも前記絶縁空間から排気される確率がより大きくなるものであり、
当該絶縁物品は、さらに、
前記第1の管と
前記第2の管との間の前記絶縁空間内に配置された所定量の絶縁材料を有し、
前記所定量の絶縁材料は、約70%~約90%容量の空隙を有し、その内部に複数の孔が画成されているものであり、
前記複数の孔の寸法は、前記複数の孔の大部分が標準大気圧における空気分子の平均自由行程と同等または当該平均自由行程より小さい寸法を有するように構成されており、
前記
所定量の絶縁材料は、約5nm~約25nmの範囲の断面寸法を有す
る凝縮シリカ繊維若しくは粒子、または凝縮アルミナ繊維若しくは粒子、または凝縮シリカ繊維および粒子、または凝縮アルミナ繊維および粒子を有するものである、
絶縁物品。
【請求項9】
請求項
8記載の絶縁物品において、前記所定量の絶縁材料は多孔質材料を含むものである、絶縁物品。
【請求項10】
請求項
8記載の絶縁物品において、前記所定量の絶縁材料は、約0.002W/m
*K~約0.1W/m
*Kの熱伝導率を有するものである、絶縁物品。
【請求項11】
請求項1記載の絶縁物品において、前記絶縁空間の圧力は約10
-4トルより低いものである、絶縁物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、(2016年11月15日に出願された)米国仮特許出願第62/422,196号「Enhanced Vacuum-Insulated Articles With Microporous Insulation」の利益および優先権を主張しており、この出願の全体は、任意のおよび全ての目的のために本明細書において参照によりここに組み込まれている。
【0002】
本発明は、加えられた真空によって排気され、密閉される絶縁空間を有する構造体に関する。
【背景技術】
【0003】
真空は、優れた断熱材を提供することはよく知られている。真空密閉された空間は、医療用プローブなどの極低温装置および熱交換器などの高温装置を含めた広範な種類の構造体に取り入れられてきた。絶縁空間が排気されるチャンバの真空よりも真空度が高い密閉された真空を実現するために、ガス吸収材、最も一般的には「非蒸発性のゲッタ材」を真空密閉された空間内に含むことも知られている。ゲッタ材は、ジルコニウム、チタニウム、ニオビウム、タンタルおよびバナジウムなどの金属、ならびにそのような金属の合金を有してよく、真空空間内に遊離した状態で含まれてよい、あるいは真空空間を画定する面の1つまたは複数の内側に塗布される場合もある。
【0004】
遊離した状態で含まれようと、コーティングとして含まれようと、真空空間にゲッタ材が存在することは真空空間の可能な最小の幅を制限することになる。例えば多くの医療デバイスにおいて遭遇する真空空間の幅が小さい用途では、空間の制約が真空空間内でのゲッタ材の利用を禁じる。ゲッタ材を必要とせずに、そのような用途において真空度の高い真空を形成する能力がそれ故、強く望まれている。
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、以下のものがある(国際出願日以降国際段階で引用された文献及び他国に国内移行した際に引用された文献を含む)。
(先行技術文献)
(特許文献)
(特許文献1) 米国特許出願公開第2005/0211711号明細書
(特許文献2) 米国特許出願公開第2013/0105496号明細書
(特許文献3) 米国特許出願公開第2012/0175007号明細書
(特許文献4) 米国特許第6,145,547号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によると、物品は、絶縁空間を間に画定するために所定の距離だけ離間して配置された第1および第2の壁と、絶縁空間からの気体分子のための出口経路を形成するために絶縁空間と連通する通気孔とを備える。通気孔は、通気孔を通して気体分子を排気した後、絶縁空間内で真空を維持するために密閉可能である。第1の壁と第2の壁との間の距離は、絶縁空間内の気体分子が絶縁空間の排気中に通気孔の方に導かれるように通気孔に隣接する絶縁空間の一部において可変である。通気孔に向かう気体分子の方向により、気体分子が絶縁空間に対して侵入するよりも排気される確率がより大きくなり、これにより絶縁空間内でゲッタ材を必要とすることなく、より真空度の高い真空を実現する。ゲッタ材が存在する場合もあるが、ゲッタ材は選択性であることを理解されたい。
【0006】
一実施形態によると、通気孔が絶縁空間と連通する場所に隣接して壁同士の距離が最小になるように、物品の壁の一方は、通気孔に隣接して他方の壁に向かって収束する部分を含む。第1および第2の壁は、それらの間に環状空間を画定するためにほぼ同軸に配置された第1および第2の管によって形成されてよい。あるいは、壁の一方は、容器用の実質的に矩形の絶縁空間を画定する場合もある。しかしながら壁が互いと同軸であることは必要条件ではない。
【0007】
別の実施形態によると、通気孔は、物品の壁の一方にある開口によって画定され、他方の壁は、その部分内の任意の場所における垂線が概ね通気孔の方に向けられるように配置された、通気孔と向かい合わせの部分を含む。物品は、実質的に円筒形の上方部分と、実質的に球形の下方部分とを含むデュアー瓶であってよい。下方部分内の外壁に開口が設けられ、内壁は、通気孔と向かい合わせのくぼんだ部分を含む。
【0008】
本発明を例示する目的のために、現在好まれている形態が図面に示されているが、本発明は、示される正確な配置および手段に限定されないことが理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明による絶縁空間を取り入れる構造体の部分断面図である。
【
図3】絶縁空間の表面にスペーサ材の層を含む、
図2の構造体の代替の構造体の断面図である。
【
図5】本発明による代替の冷却装置の断面における部分斜視図である。
【
図6】膨張チャンバを含む、
図5の冷却装置の端部の、断面における部分斜視図である。
【
図7】
図4から
図6を通しての冷却装置からの代替の気体入口構造を有する冷却装置の部分断面図である。
【
図8】本発明による容器の、断面における部分斜視図である。
【
図9】本発明によるデュアー瓶の、断面における斜視図である。
【
図10】開示される技術の一実施形態の切り欠き図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、本開示の一部を形成する、添付の図面および実施例と併せて利用される以下の詳細な説明を参照することによってより容易に理解され得る。本発明は、本明細書に記載される、および/または示される特有の装置、方法、用途、条件またはパラメータに限定されるものではないこと、また本明細書で使用される技術用語は、単なる一例として特定の実施形態を説明する目的のためであり、主張される発明を限定することは意図されてはいないことを理解されたい。また添付の特許請求の範囲を含めた明細書で使用される際、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、複数形も含んでおり、特定の数値への言及は、文脈がそうでないことを明らかに指示しない限り、少なくともその特定の値を含んでいる。用語「複数の」は、本明細書で使用される際、2つ以上を意味する。特定の範囲の値が表現される場合、別の実施形態は、1つの特定の値からおよび/または他の特定の値までを含める。
【0011】
明細書および特許請求の範囲中で使用される際、用語「有する(comprising)」は、「~からなる」および「~から基本的になる」実施形態を含んでよい。用語「有する(comprise)」、「含む(include)」、「有している(having)」、「有する(has)」、「できる(can)」、「包含する(contain)」およびその変形形態は、本明細書で使用される際、挙げられた成分/工程の存在を必要とし、他の成分/工程の存在を認めるオープンエンドの移行句、用語または単語であることが意図されている。しかしながらそのような記載は、挙げられた成分/工程の存在のみを、そこから生じる可能性のあるあらゆる不純物と共に認め、他の成分/工程を排除するように、列挙された成分/工程「からなる」または「から基本的になる」ものとして、組成またはプロセスを記載するものとしても解釈されるべきである。
【0012】
同様に、値が、先行する「約」の使用によって近似値として表されている場合、特定の値は別の実施形態を形成することが理解されるであろう。
【0013】
本明細書で使用される際、用語「約」および「~の、または約」は、問題となる量または値が、おおよそ、またはほとんど同一の指定された任意の他の値である場合もあることを意味している。本明細書で使用される際、そうでないことが指示されない、または暗示されない限り、それは±10%の変動が示唆される基準値であることが一般的に理解される。このような用語は、同様の値も、特許請求の範囲において列記される等価な結果または作用を促進することを伝えることが意図されている。すなわち、量、サイズ、配合、パラメータ、ならびに他の数量および特徴は正確なものではなく、正確である必要もなく、近似値であり得る、および/または所望によりそれより大きい、または小さい場合もあり、公差、変換係数、端数計算、測定誤差など、および当業者に知られる他の要因を反映することができる。一般に、量、サイズ、配合、パラメータおよび他の数量または特徴は、そのようなものであることがはっきりと述べられるにしろ、そうでないにしろ、「約」または「おおよそ」のものである。「約」が定量的な値の前で使用される場合、パラメータもまた、とりわけそうでないことが述べられていなければ、その特有の定量的な値それ自体を含めることを理解されたい。
【0014】
本出願の明細書および特許請求の範囲における数値は、異なる特徴の個々のポリマーを含み得る特定の配合物に関する平均値を反映している。さらに、反対のことが指摘されなければ、数値は、同じ数の意味を成す数値に変えられたとき同一である数値、およびその値を求めるための本出願に記載されるタイプの慣例的測定技術の実験誤差に満たない分しか提示される値と異ならない数値を含めるように理解すべきである。
【0015】
本明細書に開示される全ての範囲は、列記される終点を含めたものであり、単独で組み合わせ可能である(例えば「2グラムから10グラムまで」の範囲は、終点、すなわち2グラムおよび10グラムと、全ての中間の値とを含める)。本明細書に開示される範囲の終点および任意の値は、厳密な範囲または値に限定されるものではなく、このような範囲および/または値に近い値を含めるのに十分あいまいなものである。
【0016】
本明細書で使用される際、近似的な言い回しは、それが関連する基本機能に変化を生じさせずに、変動し得る任意の定量的な表現を修飾するために適用されてよい。したがって、「約」および「実質的に」などの1つまたは複数の用語によって修飾された値は、一部のケースでは、指定された厳密な値に限定されない場合がある。少なくとも一部の例では、近似的な言い回しは、値を測定するための器具の精度に対応する場合がある。
【0017】
修飾後「約」はまた、2つの終点の絶対値によって定義される範囲を開示するように考察されるべきである。例えば、表現「約2~約4まで」は、「2から4まで」の範囲も開示する。用語「約」は、指示される数字のプラスマイナス10%を指してよい。例えば「約10%」は、9%から11%の範囲を指示してよく、「約1」は、0.9~1.1を意味してよい。「約」の他の意味は、例えば端数計算などの文脈から明らかになる場合もあり、例えば「約1」は、0.5から1.4を意味する場合もある。
【0018】
全ての範囲は、包括的で組み合わせ可能であり、工程は任意の順序で実行されてよいことを理解されたい。
【0019】
明確にするために、別個の実施形態の文脈で本明細書に記載される本発明の特定の機構はまた、単一の実施形態において組み合わせて提供される場合もあることを認識されたい。反対に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈で本明細書に記載される本発明の種々の機構は、別々に、または下位の組み合わせで提供される場合もある。さらに、範囲の中で提示される値に対する言及は、その範囲内の値の各々およびその全てを含んでいる。
【0020】
本発明は、排気プロセス中に気体分子に対して誘導作用を有する出口に隣接して幾何学形状を設けることによって絶縁空間内に密閉することができる真空の真空度を高める。より詳細に説明されるように、本発明による幾何学形状は、それ以外の方法でゲッタ材を使用せずに達成することができるものよりも、空間からのより多数の気体分子の除去を可能にする。真空度の高い真空を達成するために排気された空間内でのゲッタ材の必要性をなくすことは、本発明の有意な利点である。ゲッタ材の必要性をなくすことによって、本発明は、空間の制約が理由でこれまでは不可能であった絶縁空間内での真空度の高い真空を実現する。このような絶縁空間は、小規模の装置または極めて狭い幅の絶縁空間を有する装置のためのものを含める。
【0021】
米国特許第7,681,299号明細書および米国特許第7,374,063号明細書(任意のおよび全ての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれている)に説明されるように、絶縁空間の幾何学形状は、空間内の気体分子を通気孔に向けて、または空間からの他の出口に向けて誘導するようなものであってよい。真空絶縁空間の幅は、空間の長さにわたって均一である必要はない。空間を画定する一方の面が、空間を画定する別の面に向かって収束するように角度を成す部分を含んでよい。結果として、面同士を隔てる距離は、その距離が、通気孔が真空空間と連通する場所に隣接して最小になるように通気孔に隣接して変動してよい。低分子濃度の条件における気体分子と可変距離部分との相互作用は、気体分子を通気孔に向けて導くような役目をする。
【0022】
空間の分子を誘導する幾何学形状は、空間を排気するために構造体の外側に課されるものより真空度の高い真空が空間内に密閉されることを可能にする。本発明の幾何学形状は、気体分子が空間に進入するよりも空間を出て行く確率を有意に高めるため、空間内でのより真空度の高い真空のこのような幾分反直観的な結果が達成される。実際、絶縁空間の幾何学形状は、チェック弁のように機能して、気体分子の一方向(通気孔によって画定される出口経路を介して)の自由な通行を促進する一方で、反対方向の通行は阻止する。
【0023】
絶縁空間の幾何学形状によって実現されるより真空度の高い真空に関連する別の利点は、排気された空間内でゲッタ材を必要とせずにそれが達成可能である点である。ゲッタ材なしでそのような真空度の高い真空を創り出す能力は、空間の制約がゲッタ材の使用を制限する小規模の装置または狭い幅の絶縁空間を有する装置内でより真空度の高い真空を実現する。
【0024】
例えば真空空間を画定する表面上の低放射率コーティングなどの他の真空強化機構が含まれる場合もある。そのようなコーティングの反射面は、当分野で一般的に知られており、放射エネルギーの伝熱光線を反射する傾向にある。コーティングされた表面を通り抜ける放射エネルギーの通過を制限することは、真空空間の絶縁作用を高める。
【0025】
いくつかの実施形態において、物品は、絶縁空間を間に画定するために特定の距離ところに離間された第1および第2の壁と、絶縁空間からの気体分子のための出口経路を形成するために絶縁空間と連通する通気孔とを備える。通気孔は、通気孔を通して気体分子を排気した後、絶縁空間内で真空を維持するために密閉可能である。第1の壁と第2の壁との間の距離は、絶縁空間内の気体分子が絶縁空間の排気中、通気孔の方に導かれるように通気孔に隣接する絶縁空間の一部において可変である。通気孔に向かう気体分子の方向は、気体分子に対して、絶縁空間に対して進入するよりも出て行く方により高い確率を与え、これにより絶縁空間内でゲッタ材を必要とすることなく、より真空度の高い真空を実現する。
【0026】
本発明による気体分子を誘導する幾何学形状を有する構造体の構築は、任意の特定のカテゴリの材料に限定されるものではない。本発明による絶縁空間を取り入れる構造体を形成するのに適した材料は、例えば金属、セラミック、半金属またはそれらの混合物を含める。
【0027】
空間の収束(convergence of the space)は、以下のやり方で分子の誘導を実現する。空間の排気中に気体分子の濃度が十分低くなり、構造体の幾何学形状が一次作用になったとき、空間の可変距離部分の収束する壁が空間内の気体分子を通気孔に向けて運ぶ。真空空間の収束する壁の一部の幾何学形状は、チェック弁またはダイオードのような働きをするが、これは気体分子が空間に進入するよりも、空間から出て行く確率が大幅に拡大されるためである。
【0028】
構造体の分子を誘導する幾何学形状が、分子の流出と進入の相対的な確率に対して有する作用は、真空空間の収束する壁の一部を粒子の流れに対抗する漏斗になぞらえることによって理解され得る。粒子の流れに対する漏斗の配向に応じて、漏斗を通過する粒子の数は大きく変動することになる。粒子の流れが、漏斗の出口ではなく、漏斗の入口の収束する面に最初に接するように漏斗が配向された場合、より多くの数の粒子が漏斗を通過することは明白である。
【0029】
漏斗のように空間から気体粒子を誘導するために、絶縁空間のために収束する壁の出口の幾何学形状を取り入れる装置の様々な例が本明細書に提供されている。本発明の気体を誘導する幾何学形状は、収束する壁の漏斗状になっている構造に限定されるものではなく、代わりに他の形態の気体分子を誘導する幾何学形状も利用し得ることを理解されたい。一部の例示の真空絶縁空間(およびそのような空間を形成し利用するための関連技術)は、全てA.Reidによる米国公開特許出願第2017/0253416号、2017/0225276号、2017/0120362号、2017/0062774号、2017/0043938号、2016/0084425号、2015/0260332号、2015/0110548号、2014/0090737号、2012/0090817号、2011/0264084号、2008/0121642号および2005/0211711号に見いだされてよく、これらは全て、任意のおよび全ての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0030】
同様の数字が同様の要素を特定する図面を参照すると、気体分子を誘導する幾何学形状を有する本発明による構造体10の端部部分が
図1に示されている。構造体10は、本発明の気体分子を誘導する幾何学形状をはっきりと示すために選択された特定の縮尺で
図1に見られる。しかしながら本発明は、示される縮尺に限定されるものではなく、小型化された装置から、極めて大きな寸法の絶縁空間を有する装置まで任意の縮尺の装置に対して適用する。構造体10は、環状空間16を間に画定するようにサイズが決められ配置された内側管12と、外側管14とをそれぞれ含む。管12、14は、一端において互いに係合することで真空空間16および外部と連通する通気孔18を形成する。通気孔18は、例えば構造体10が真空チャンバ内に置かれたときなど、外側に真空が加えられる際、空間16から気体分子が出て行くための排気路を提供する。例示的な通気孔が、本開示の他の場所および本明細書で引用される文献において説明される。
【0031】
いくつかの実施形態において、内側管は外側管に向かって外向きに広がり、これにより2つの管の間に通気孔を形成し得ることを理解されたい。そのような一実施形態では、内側管は、外側管に向かって収束する(またはさらには外側管に向かってそれる)と言うことができる。
【0032】
空間16は空の状態であってよい、すなわち真空のみを中に含んでよいことを理解されたい。いくつかの実施形態において、空間16は、追加の絶縁材料、例えば多孔質発泡体、エーロゲルまたは他のそのような絶縁材料を選択的に含む場合がある。絶縁材料は、物品の処理の間、すなわち、ろう付け、真空炉処理などの間、少なくともある程度その多孔質構造を維持する好適なものである。絶縁材料は、空間16内の真空によって与えられる絶縁性能を超えて構造体10に対して追加の絶縁性能を与えることができる。
【0033】
微小孔構造の絶縁体は、例えばシリカまたはアルミナ粒子/繊維を凝縮することによって作成されてよい。そのような絶縁体における粒子/繊維は、約5nm~約25nmの範囲内の横断面寸法(直径、長さなど)を有してよい。微小孔構造の絶縁体は、約70%~約90%容量の空気を有してよく、この空気は通常、粒子間の微小な孔の中に含まれる。微小孔構造の絶縁体における孔のサイズは、孔の大半が、標準的な大気圧における空気分子の平均自由行程に匹敵する、またはそれを下回るサイズを有するようなものであってよく、このサイズは約70nmである。開示される技術で使用される微小孔構造の(または他の)絶縁体は、約0.002~約0.010まで、またはさらには約0.1までのW/m*K値(約200度Cで測定された)を有してよい。
【0034】
以下は、例示的な非限定的な微小孔構造の絶縁体に関する熱伝導率(温度に応じた)の表である。
【0035】
【0036】
特定の理論に拘泥されることなく、一部の絶縁体(微小孔構造絶縁体を含めた)は、排気された空間内に置かれたとき、さらに改善された性能を示す場合がある。
【0037】
本開示による構造体は選択的に、内壁(例えば
図1における内側管12)と外壁(例えば
図1における外側管14)を熱連通状態にする熱経路(これは「熱短路」と呼ばれる場合もある)を含んでよい。熱経路は、熱経路が、装置の内側空間(例えば
図1における内壁12によって囲まれる空間)と装置の外側(例えば
図1における外壁14)を熱連通状態にするように配置されてよい。これは、例えばユーザが、装置内の特定の領域(例えば
図1の内壁12の内部に囲まれた領域)からの低温を特定の場所(
図1の外壁14上の規定された領域)に伝達しようとする場合の用途において有用であり得る。一例としてではあるが、
図1による装置は、内壁12の内部に液体窒素を含む場合があり、この液体窒素は約77Kの温度で維持される。伝導性の部分22aは次いで、外壁14上に低温の領域を生じさせ、その一方で外壁14の残りの部分は本来の周辺温度のままである(低温の領域を識別するために外壁14上に印が置かれてよい)。
【0038】
熱経路は、いくつかの方法で形成されてよい。一実施形態において、熱経路は、絶縁空間を画定する壁同士の橋渡しをする所定量の伝導材料を含む。一例として、
図1における伝導性の部分22aは、空間16にまたがっており、内壁12と外壁14を熱連通状態にする。好適な伝導性の部分は、金属、例えば銅、金、鉄などを有する。金属合金もまた伝導性の部分として使用するのに適している。温度に依存する可変の伝導特性を有する材料を伝導性の部分で使用するために選択してもよい。一例として、銅の伝導特性は低温においてとりわけ優れているため、ユーザは、装置の作動が比較的低温である用途では銅を伝導性の部分に対する材料として選択してよい。熱経路は選択的であり、伝導性の部分22aはしたがって選択的であり、必ずしも存在する必要はないことを理解されたい。存在する場合、熱経路は好適には、内壁と外壁との間の絶縁空間の熱伝導率を下回る熱伝導率を有する、例えば内壁と外壁との間に配置され得る真空、絶縁またはその両方の熱伝導率を超える熱伝導率を有する。
【0039】
図1に示されるように伝導性の部分によって熱短路が形成されてよい。熱短路は、内壁12と外壁14とを接触させる(例えばピンチング、折り曲げまたは他の機械的プロセスを介して)ことによって形成されてよい。このような方法では、ユーザは、本明細書に記載されるような真空絶縁物品を形成し、その後、ピンチングプロセスの適用を介して1つまたは複数の選択した場所に熱短路を形成してよい。
【0040】
熱経路はまた、内壁12と外壁14との間に伝導性の部分を配置することによって形成されてもよく(ここでもまた
図1を参照されたい)、この場合、伝導性の部分(図示せず)は、内壁および外壁を互いと熱連通状態にするほど長くはない。例えば伝導性の部分は、内壁12に接触し、内壁12から外壁14に向かって延在するが、外壁14には同様に接触しない。外壁14は次いで、外壁14を伝導性の部分と接触させ、これと熱連通状態にするためにピンチングされる、伝導性の部分に向かってまたは曲げられてよい。一方または両方の壁は、伝導性の部分との接点を形成するように曲げられてよい、またはそれ以外の方法で形成されてよい。
【0041】
通気孔(vent)18は、真空密閉プロセスにおける気体分子の除去の後に絶縁空間内で真空を維持するために密閉可能である。その現在好ましい形態において、構造体10の空間16は、管12、14を合わせてろう付けすることによって密閉される。真空密閉構造体の排気用の通気孔を密閉するのにろう付けを使用することは当分野では一般的に知られている。通気孔18を密閉するために、ろう付けプロセスの前に、通気孔18によって画定された排気路がこの材料によって塞がれないやり方で、管12と、管14との間にそれぞれの端部に隣接するようにろう付け材(図示せず)が位置決めされる。しかしながら排気プロセス中、ろう付け材を溶かすのに十分な熱が構造体10に加えられることで、ろう付け材は毛管作用によって、通気孔18によって画定された排気路へと流れ込む。流動するろう付け材が通気孔18を密閉し、排気路を閉鎖する。しかしながら、通気孔18を密閉するためのろう付けプロセスは本発明の必要条件ではない。冶金術プロセスまたは化学プロセスなど、通気孔18を密閉する代替の方法が使用される場合もある。
【0042】
構造体10の幾何学形状は、以下のやり方で絶縁空間16内の気体分子の運動をもたらす。分子の運動学的な挙動に関するマクスウェルの気体法則の有力な仮定は、気体分子の濃度が高いほど、気体分子と気体分子のための容器との相互作用の数と比べて、気体分子間で生じる相互作用の数が大きくなることである。このような条件下では気体分子の運動は不規則であり、故に容器の特定の形状によって影響を受けない。しかしながら例えば絶縁空間の排気中に起こるように気体分子の濃度が低くなった場合、分子と分子の相互作用はもはや優勢ではなく、不規則な分子運動の上記の仮定はもはや有効ではない。本発明に対する関連として、真空空間の幾何学形状は、排気中に気体分子の濃度が低下する際、気体分子と容器との相互作用が相対的に増大することが理由で二次システム作用ではなく一次システム作用となる。
【0043】
絶縁空間16の幾何学形状は、空間16内の気体分子を通気孔18に向けて誘導する。
図1に示されるように、環状空間16の幅は、構造体10の長さ全体にわたって均一ではない。代わりに、外側管14は角度を成す部分20を含んでおり、そのため外側管は、管の端部に隣接して内側の管12に向かって収束する。結果として、管12、14を隔てている半径方向の距離が、通気孔18が空間16と連通する場所に隣接して最小になるように、この距離は、通気孔18に隣接して変動する。より詳細に説明するように、低分子濃度の条件における、気体分子と、管12、14の可変距離部分との相互作用は気体分子を通気孔18に向けて導くような働きをする。
【0044】
空間の16の分子を誘導する幾何学形状は、空間を排気するために構造体10の外部に課されるものより真空度の高い真空が空間16内に密閉されることを可能にする。本発明の幾何学形状は、気体分子が空間に進入するよりも空間を出て行く確率を有意に高めるため、空間16内のより真空度の高い真空のこのような幾分反直観的な結果が達成される。実際、絶縁空間16の幾何学形状は、チェック弁のように機能して、気体分子の一方向(通気孔18によって画定される出口経路を介する)の自由な通行を促進する一方で、反対方向での通行は阻止する。
【0045】
絶縁空間16の幾何学形状によって提供されるより真空度の高い真空に関連付けられた重要な利点は、それが排気された空間16内でゲッタ材を必要とせずに達成可能である点である。ゲッタ材なしでそのような真空度の高い真空を創り出す能力は、空間の制約がゲッタ材の使用を制限する小規模の装置または狭い幅の絶縁空間を有する装置内でより真空度の高い真空を実現する。
【0046】
必須ではないが、本発明による気体分子を誘導する構造を有する排気された空間内でゲッタ材が使用される場合がある。例えば真空空間を画定する表面上の低放射率コーティングなど、他の真空強化機構が含まれる場合もある。そのようなコーティングの反射面は当分野で一般的に知られており、放射エネルギーの伝熱光線を反射する傾向にある。コーティングされた表面を通り抜ける放射エネルギーの通過を制限することは、真空空間の絶縁作用を高める。
【0047】
本発明による気体分子を誘導する幾何学形状を有する構造体の構築は、任意の特定のカテゴリの材料に限定されるものではない。本発明による絶縁空間を取り入れる構造体を形成するのに適した材料は、例えば金属、セラミック、半金属またはそれらの混合物を含める。
【0048】
図1に示される構造体10を再度参照すると、空間16の可変距離部分における内側管12に向かう外側管14の収束は、以下のやり方で分子の誘導を実現する。空間16の排気中に気体分子の濃度が十分低くなり、構造体の幾何学形状が一次作用になったとき、空間16の可変距離部分の収束する壁が空間16内の気体分子を通気孔18に向けて運ぶ。真空空間16の収束する壁の一部の幾何学形状はチェック弁またはダイオードのような働きをするが、これは気体分子が空間16に進入するのではなく、空間から出て行く確率が大幅に拡大されるためである。
【0049】
構造体10の分子を誘導する幾何学形状が、分子の流出と進入の相対的な確率に対して有する作用は、真空空間16の収束する壁の一部を粒子の流れに対抗する漏斗になぞらえることによって理解され得る。粒子の流れに対する漏斗の配向に応じて、漏斗を通過する粒子の数は大きく変動することになる。粒子の流れが、漏斗の出口ではなく、漏斗の入口の収束する面に最初に接触するように漏斗が配向された場合、より多くの数の粒子が漏斗を通過することは明白である。
【0050】
漏斗のように空間から気体粒子を誘導するために絶縁空間のために収束する壁の出口の幾何学形状を取り入れる装置の様々な例が
図2~
図7に示される。しかしながら本発明による気体を誘導する幾何学形状は、収束する壁の漏斗状になる構造に限定されるものではなく、代わりに他の形態の気体分子を誘導する幾何学形状を利用する場合もある。例えば、
図8に示され、以下でより詳細に説明されるデュワー瓶は、本発明による代替の形態の可変距離の空間幾何学形状を取り入れている。
【0051】
絶縁プローブ
図2を参照すると、本発明による気体分子を誘導する幾何学形状を取り入れる構造体22が示されている。構造体10と同様に、構造体22は、環状の真空空間28を間に画定する内側管24および外側管26を含む。構造体22は、
図1の構造体10の通気孔18と、角度を成す部分20の構造と同様の、対向する端部における通気孔30、32と、外側管26の角度を成す部分34、36とを含む。
【0052】
構造体22は、例えば絶縁外科用プローブにおいて有用であり得る。そのような用途では、構造体22は、特定の標的箇所へのプローブの端部の侵入を容易にするために、示されるように曲げられることが望ましい場合がある。好ましくは、構造体22の同軸に配置された管24、26は可撓性材料を含み、曲げられることで、構造体の対向する端部の中心軸の間に結果として生じる角度は、おおよそ45度である。1つまたは複数の壁が可撓性材料で形成されることは必要条件ではない。
【0053】
密閉された真空の層の絶縁特性を高めるために、低放射率特性を有する光学コーティング38が、内側管24の外側面に塗布されてよい。光学コーティングの反射面は、コーティングされた面を通る伝熱放射の通過を制限する。光学コーティングは、銅、すなわち研磨されたとき望ましい低放射率を有する材料を含んでよい。しかしながら銅は急速な酸化を受けやすく、このことは、その放射率を増大させるために不利益となる。例えば高度に研磨された銅は、おおよそ0.02ほどの低さの放射率を有することができるのに対して、激しく酸化した銅は、おおよそ0.78ほどの高さの放射率を有する場合がある。
【0054】
酸化しやすいコーティングの塗布、清浄および保護を促進するために、光学コーティングは、排気および密閉プロセスの前に放射結合真空炉を利用して内側管24に塗布されるのが好ましい。そのような炉の上昇した温度、低圧環境において塗布された場合、存在するいかなる酸化層も消失し、高度に清浄された低放射率の面が残され、この面は、排気路が密閉される際、真空空間28内のその後の酸化に対して保護されることになる。
【0055】
図3を参照すると、本発明による気体分子を誘導する幾何学形状を取り入れる別の構造体40が示されている。
図1の構造体10と同様に、構造体40も環状の真空空間46を間に画定する内側管42および外側管44を含む。構造体40は、
図1の構造体10の通気孔18と、角度を成す部分20に対して同様の構造で、対向する端部に通気孔48、50と、外側管44の角度を成す部分52、54とを含む。好ましくは、構造体40の同軸に配置された管42、44は可撓性材料を含み、曲げられることで、構造体の対向する端部の中心軸の間に結果として生じる角度は、おおよそ45度である。構造体40は、
図2の構造体22と同様に、内側管42の外面に塗布された光学コーティング56を含む。
【0056】
例えば
図2および
図3のプローブ構造体22および40の真空空間を形成するものなどの同軸に配置された管が屈曲加重を受ける際、加重が課される間、内側管と外側管との間に接触が生じてよい。屈曲加重が取り除かれた後、互いから離れるため、または「スプリングバック」するために同軸の管がこのようなやり方で屈曲する傾向は、管が互いから離れることを保証するのに十分であり得る。一部の用途では、存続している接触は、内側管と外側管との間に「熱短絡」を提供する場合がある。そのような熱短絡を緩和させる、またはさらにはなくすために、
図3の構造体40は、スペーサ材の層58を含んでおり、これは好ましくは、セラミックまたは他の低伝導率の材料のマイクロファイバを有する糸または紐を巻き付けることによって形成される。スペーサ層58は、構造体40の同軸に配置された管42、44の可撓性を不利益になるように制限することなく、管同士の直接の接触を制限する保護バリアを提供する。本明細書の他の場所に記載されるように、層58は、例えば微小孔構造の絶縁材料などの絶縁材料を含んでよい。本明細書の他の場所に記載されるように、開示される装置は、1つまたは複数の熱経路または熱短路を含んでよい。
【0057】
図1から
図3の構造体の各々は、スタンドアローン構造として構築することができる。あるいは、
図1から
図3の絶縁構造体は、別の装置または別のシステムの一体式の部品を形成する場合もある。また、
図1から
図3に示される絶縁構造体は、やや小規模の寸法から極めて長い直径まで変動する直径を有し、また変動する長さを有する絶縁配管を実現するようにサイズが決められ、そのように配置することができる。加えて、先に説明したように、本発明の気体分子を誘導する幾何学形状は、ゲッタ材を必要とせずに真空度の高い真空の形成を可能にする。空間内にゲッタ材をなくすことは、ひときわ小さい幅を有する真空絶縁空間を可能にする。
【0058】
ジュール=トムソン装置
図4を参照すると、装置60の外側の領域を絶縁するために、本発明による気体分子を誘導する幾何学形状を取り入れる冷却装置60が示されている。冷却装置60は、気体が膨張する際に温度が下がるジュール=トムソン効果を利用して冷却される。第1および第2の同軸に配置された管64および66は、それらの間に環状の気体入口68を画定する。管64は、管66に向かって収束する角度を成す部分70を含む。管64、66の収束する壁の一部は、管64の端部に隣接して流れ制御リストリクタまたはディフューザ72を形成する。
【0059】
冷却装置60は、実質的に球形の部分78によって端部で閉鎖された円筒形の部分76を有する外側ジャケット74を含む。外側ジャケット74の円筒形の部分76は、管66と同軸に配置されてそれらの間に環状の絶縁空間82を画定する。管66は、排気路86に隣接して外側ジャケット74に向かって収束する角度を成す部分84を含む。絶縁空間82の可変距離は、
図1~
図3に示される構造体のものとは異なっているが、その理由は、外側の要素に向かって、すなわち円筒形の部分76に向かって収束するのが内側要素、すなわち管64であるためである。しかしながら、気体分子を誘導する絶縁空間82の可変距離部分の機能は、
図1~
図3の構造体の絶縁空間に関して上記で説明したものと全く同じである。
【0060】
環状入口68は、相対的に高い圧力と、低い速度を有する気体をディフューザ72に導き、そこで気体は膨張チャンバ80内で膨張され冷却される。結果として、冷却装置60の端部は冷却される。膨張した低温/低圧は、内側管64の内部を通って排気される。このような方法での内側管64を経由する低温の気体の戻りは、気体入口68の内部の入口の気体を急冷させる。しかしながら真空絶縁空間82は急冷された高圧側による熱の吸収を遅らせ、これにより全体のシステムの効率に貢献している。
【0061】
このような熱の吸収の緩和は、管66の外面上に放射性の放射エネルギー遮蔽材のコーティングを塗布することによって高められてよい。本発明は、高圧/低速領域から低圧/低温領域への熱伝達を強化し、また高圧の気体の流れを効果的に冷却するのに必須である急冷領域の必要条件に起因してこれまでは不可能であったサイズの縮小も実現する。
【0062】
ディフューザ72を形成する管64の角度を成す部分70は、入口の気体によって加えられる圧力に応答して曲がるように適合されてよい。この方法において、ディフューザ72によって管64と管66との間に画定される開口のサイズは、入口68の内部の気体の圧力の変動に応答して変化してよい。管64の内面88は、膨張チャンバ80から相対的に低圧の気体を除去するために排気ポート(図示せず)を提供する。
【0063】
図5および
図6を参照すると、ジュール=トムソン冷却装置92を取り入れる極低温冷却器90が示されている。極低温冷却器90の冷却装置92は、
図4の装置の同様であり、高圧の気体入口98を間に画定する管94および96と、管94の内部の低圧排気ポート100とを含む。冷却装置90のための気体の供給は、入口パイプ102を介して冷却器90に送達される。外側ジャケット104は、冷却装置の外側部分を絶縁するために管96と共に絶縁空間106を形成する。外側ジャケット104は、排気路109に隣接して管96に向かって収束する角度を成す部分108を含む。排気路109に隣接する収束する壁は、先に記載した方法で真空空間106の排気および密閉を行う。
【0064】
図6を参照すると、極低温冷却器90の冷却装置92は、管94と管96との間に画定される流れ制御ディフューザ112を含む。外側ジャケット104の実質的に球形の端部部分114は膨張チャンバ116を形成し、その中で気体入口98からの膨張する気体が装置92の端部を冷却する。
【0065】
図7を参照すると、環状の気体入口97を間に画定する同軸に配置された管93、95を含む冷却装置91が示されている。外側ジャケット99は、管93、95を取り囲む実質的に円筒形の部分101と、管93、95の端部に隣接して膨張チャンバ105を画定する実質的に半球の端部部分103とを含む。示されるように、管95は、気体入口97と外側ジャケット99との間に絶縁空間109を形成するために、外側ジャケット99の内面に接続された角度を成す、または湾曲した端部部分105、107を含む。気体の供給源から入口空間97に気体を取り入れるために、供給管111が管95の端部部分107に隣接して外側ジャケットに接続される。
【0066】
膨張チャンバ105に隣接する冷却装置91の気体入口97の構造は、膨張チャンバ内に気体を送達するために気体入口から環状の脱出路が設けられた
図4から
図6に示される冷却装置のものとは異なる。代わりに冷却装置91の管93は、管93、95の端部に隣接して管95に固定されて気体入口の端部を閉鎖する。気体入口97から膨張チャンバ105内に気体を注入するために、通気孔113が膨張チャンバ105に隣接して管93の中に設けられる。好ましくは通気孔113は、管93の円周の周りに均一に離間される。装置91の構造は、製造を簡素化する一方で、気体入口97から膨張チャンバ105内への気体のより正確な流れを実現する。
【0067】
相対的に大きな熱伝導率を有する材料、好ましくは銅のコーティング115が、管93の内面の少なくとも一部に形成されて管93への熱エネルギーの効率的な伝達を促進する。
【0068】
環状装置以外の装置
図1~
図7の絶縁構造体の各々は環状の絶縁真空空間を含む。しかしながら環状の真空空間は、本発明の必要条件ではなく、これは幅広い種類の構造上の構成における潜在的な利用を有する。
図8を参照すると、例えば実質的に矩形の内部貯蔵仕切り122を有する真空絶縁貯蔵容器120が示されている。仕切り122は、例えば絶縁されるべき空間の境界を画定する壁124など実質的に平面の壁を含む。絶縁空間128は、壁124と、壁124から接近して離間される第2の壁126との間に画定される。接近して離間された壁(図示せず)は、仕切り122を画定する残りの壁に隣接して含まれることで容器の壁に隣接して絶縁空間を形成する。絶縁空間は、別々に密閉することができる、あるいは互いに接続される場合もある。
図1~
図7の絶縁構造体と同様のやり方で、気体分子を出口通気孔に向かって誘導するために、絶縁空間128の収束する壁の一部(連続する場合)、または複数の絶縁空間の複数の収束する壁の一部(別々に密閉される場合)が設けられる。しかしながら絶縁貯蔵容器120において、絶縁空間128の収束する壁の一部は環状ではない。
【0069】
図8の真空絶縁貯蔵容器120は、入力エネルギーとして周辺エネルギーと対流しか利用しない、無期限で再生式の/自己持続式の冷却/加熱能力を達成することが可能な容器を提供する。よって可動部品は必要とされない。貯蔵容器120は、先に記載したやり方で真空構造体の絶縁能力を高めるために真空の絶縁覆いの中に放射性の放射エネルギー遮蔽材を含んでもよい。
【0070】
貯蔵容器120はまた、熱電気(TE)冷却器または加熱器組立体を駆動するための電位貯蔵システム(バッテリ/コンデンサ)および比例積分導関数(PID)温度制御システムを含んでよい。貯蔵容器のTE発電機部分は好ましくは、TEシステムに関して必要な温度勾配を維持するために、必要な対流ポートならびに熱/光収集コーティングおよび/または材料を収容する衝撃および衝突に対して抵抗力のある外側スリーブの中に備わっている。TE冷却器または加熱器、およびその制御パッケージは好ましくは、貯蔵容器120のためのヒンジ式カバーの取り外し可能な区切られた部分に取り付けられる。吸熱性の化学反応装置(例えば「化学調理器具」)もまた、その反応速度が温度に関連することが理由で、高い度合いの成果を伴って使用することができ、その有効寿命は、絶縁バリアを横切る熱流束が例外的に低いことが理由で引き延ばされる。
【0071】
商業的に利用可能なTE発電機装置は、20度Kの勾配の装置の場合おおよそ1mW/in2を生成することが可能であり、40度Kの勾配の装置の場合おおよそ6mW/in2を生成することが可能である。非線形の効率曲線がこのような装置の場合一般的である。これは、この主のシステムに関する高い周辺温度の冷却用途の場合、非常に望ましいが、低温の加熱用途の場合は問題を生じさせる場合がある。
【0072】
ハイエンドの冷却器は、おおよそ60%の変換効率を有する。例えば10インチの直径で10インチの高さ、314in2の表面積および20度Kの勾配の対流を有する容器は、おおよそ30mWの総放散能力を有することになる。40度Kの勾配の対流を有する同一の機械設計を有するシステムは、おおよそ150mWの放散能力を有することになる。
【0073】
上記に記載した絶縁容器120に関する潜在的な使用の例には、生血清、ドナー器官の輸送、発熱製品の貯蔵および輸送、温度に影響を受けやすい電子機器の熱的な隔離が含まれる。
【0074】
分子を誘導する代替の幾何学形状
本発明は、
図1~
図8に示される絶縁構造体に取り入れられる収束する幾何学形状に限定されるものではない。
図9を参照すると、本発明による気体分子を誘導する幾何学形状の代替の形態を取り入れるデュアー瓶130が示されている。デュアー瓶130は、円筒形のネック134に接続された丸みがつけられた底部132を含む。デュアー瓶130は、デュアー瓶のための内部138を画定する内壁136を含む。外壁140は、特定の距離だけ内壁136から離間されて、底部132およびネック134を囲むように延在する絶縁空間142をそれらの間に画定する。通気孔144が底部132の外壁140の中に配置され、絶縁空間142と連通することで空間142の排気中に気体分子のための出口経路を提供する。
【0075】
通気孔144の反対側の内壁136の下方部分146は、内部138に向かって、かつ通気孔144から離れるようにくぼんでいる。くぼんだ部分146は、内壁136と外壁140との間の距離が可変である、絶縁空間142の対応する部分148を形成する。内壁136のくぼんだ部分146は、通気孔144と向かい合わせに絶縁空間142内に凹状の湾曲面150を提示する。好ましくは内壁136のくぼんだ部分146は、くぼんだ部分の任意の場所における凹状の湾曲面150に対する垂線が概ね通気孔144の方に向けられるように湾曲される。この方法において、内壁136の凹状の湾曲面150は、通気孔144に焦点が合わされている。焦点を合わせた面150によって実現される通気孔144に向かう気体分子の誘導は、リフレクタに向けられた別々の光線から集束させた光のビームを返すリフレクタに似ている。低気体分子濃度の条件では、構造体は一次システム作用になり、焦点を合わせた面150によって実現する誘導作用は、通気孔144に向けて的を絞るやり方で気体分子を導くような働きをする。このような方法での内壁136の焦点を合わせた面150による通気孔144の目標設定は、気体分子が、絶縁空間142に進入する代わりに、絶縁空間142を出て行く確率を高め、これによりデュアー瓶130の外部に加えられる真空よりもより真空度の高い真空を絶縁空間内に形成する。
【0076】
図10は、代替の一実施形態の図を提供する。その図面に示されるように、絶縁された物品は、内側管1002および外側管1004を含んでよく、これらの管はそれらの間に絶縁空間1008を画定する。内側管1002はまた、内部に内腔を画定し、この内腔は断面(例えば直径)1006を有してよい。絶縁空間1008は、密閉可能な通気孔1018によって密閉されてよい。
図10に示されるように、内側管1002は、外側管1004に向かって収束するように、外側管1004に向かって外向きに広がる部分1020を含んでよい。
【0077】
伝導性の部分1022が次いで、外側管1004上に低温の領域を生じさせ、外側管1004の残りの部分は本来の周辺温度のままである(低温の領域を識別するために外側管1004上に印が置かれてよい)。
【0078】
熱経路が、いくつかの方法で形成されてよい。一実施形態において、熱経路は、絶縁空間を画定する壁同士の橋渡しをする所定量の伝導材料を含む。一例として、
図10における伝導性の部分1022は、空間1008にまたがっており、内側管1002と外側管1004を熱連通状態にする。好適な伝導性の部分は、金属、例えば銅、金、鉄などを有する。金属合金もまた伝導性の部分として使用するのに適している。伝導性の部分で使用するために温度に依存する可変の伝導特性を有する材料を選択してもよい。
一例として、銅の伝導特性は低温においてとりわけ優れているため、ユーザは、装置の作動が比較的低温である用途において伝導性の部分に対する材料として銅を選択してよい。熱経路は選択的であり、伝導性の部分1022はしたがって選択的であり、必ずしも存在する必要はないことを理解されたい。存在する場合、熱経路は、内壁と外壁との間の絶縁空間の熱伝導率より小さい熱伝導率、例えば内壁と外壁との間に配置され得る真空、絶縁またはその両方のものを超える熱伝導率を有することが適切である。
【0079】
図10に示されるように、伝導性の部分によって熱短路が形成されてよい。熱短路はまた、内側管1002と外側管1004を接触させる(例えばピンチング、折り曲げまたは他の機械的プロセスを介して)ことによって形成されてもよい。この方法において、ユーザは、本明細書に記載されるように真空絶縁物品を形成し、その後、ピンチングプロセスの適用を介して1つまたは複数の選択した場所に熱短路を形成してよい。
【0080】
他の用途
本発明は、極低温で作動する装置から高温装置まで広範な範囲の熱に関する装置内に絶縁層を設けるための用途を有する。非制限的なリストの例には、熱交換器、流動するまたは静止状態の極低温材料、流動するまたは静止状態の適温材料、温度が維持された材料、流動する気体および温度が制御されたプロセスに関する絶縁体が含まれる。
【0081】
本発明によって、回路上の特有の微小回路構成要素の直接の冷却が可能になる。医療分野では、本発明は極低温または熱治療外科手術で使用され、極端な温度の作用から健康な組織を隔離する。容器120などの絶縁容器は、温度が重要である治療、および器官の長距離かつ長時間にわたる安全な輸送を可能にする。
【0082】
例示的な実施形態
以下の実施形態は、単なる一例であり、本開示または添付の特許請求の範囲の範囲を限定するものではない。
【0083】
実施形態1。絶縁物品であって、内部容積の境界を画定する第1の壁と、前記第1の壁から所定の距離だけ離間して配置され、前記第1の壁との間に絶縁空間を画定する第2の壁と、前記絶縁空間と連通して前記絶縁空間からの気体分子のための出口経路を形成する通気孔と、前記第1の壁と第2の壁との間の絶縁空間内に配置された所定量の絶縁材料とを有し、前記通気孔は、当該通気孔を通して気体分子を排気した後、前記絶縁空間内で真空を維持するために密閉可能であり、前記第1の壁と前記第2の壁との間の距離は前記通気孔に隣接する前記絶縁空間の一部分において可変であり、それにより、前記絶縁空間内の気体分子が前記絶縁空間の排気中に前記第1および第2の壁の可変距離部分によって前記通気孔に向かって導かれるものであり、前記第1および第2の壁の前記可変距離部分によって前記気体分子が導かれることにより、前記気体分子が前記絶縁空間に侵入するよりも前記絶縁空間から排気される確率がより大きくなるものである、絶縁物品。
【0084】
実施形態2。実施形態1記載の絶縁物品において、前記第1および第2の壁の一方は、前記通気孔に隣接してもう一方の壁に向かって収束する部分を含み、前記壁同士の前記距離は、前記通気孔が前記絶縁空間と連通する位置に隣接して最小である、絶縁物品。
【0085】
実施形態3。実施形態1または2記載の絶縁物品において、前記一方の壁の前記収束する部分は、関連する管の一端部に隣接して配置される、絶縁物品。
【0086】
実施形態4。実施形態1~3のいずれか1つに記載の絶縁物品において、前記収束する部分を含む前記壁は、前記管のうちの外側の管によって提供されるものである、絶縁物品。
【0087】
実施形態5。実施形態1~4のいずれか1つに記載の絶縁物品において、さらに、前記壁のうち前記一方の壁の表面に設けられたコーティングを有し、前記コーティングは、当該コーティングが設けられた前記一方の壁の放射率より低い放射率を有する材料によって形成されるものである、絶縁物品。
【0088】
実施形態6。実施形態1~5のいずれか1つに記載の絶縁物品において、前記所定量の絶縁材料は多孔質材料を含むものである、絶縁物品。
【0089】
実施形態7。実施形態1~6のいずれか1つに記載の絶縁物品において、前記所定量の絶縁材料は、約0.002W/m*K~約0.1W/m*Kの熱伝導率を有するものである、絶縁物品。
【0090】
実施形態8。実施形態1~7のいずれか1つに記載の絶縁物品において、前記所定量の絶縁材料は、アルミナ、シリカまたはその両方を含むものである、絶縁物品。
【0091】
実施形態9。実施形態1~8のいずれか1つに記載の絶縁物品において、前記所定量の絶縁材料は、繊維、粒子またはその両方を含むものである、絶縁物品。
【0092】
実施形態10。実施形態1~9のいずれか1つに記載の絶縁物品において、前記所定量の絶縁材料は、約70%~約90%容量の空隙を有するものである、絶縁物品。
【0093】
実施形態11。絶縁物品であって、内部容積の境界を画定する第1の壁と、前記第1の壁から所定の距離だけ離間して配置され、前記第1の壁との間に絶縁空間を画定する第2の壁と、前記絶縁空間と連通して前記絶縁空間からの気体分子のための出口経路を形成する通気孔と、を有し、前記通気孔は、当該通気孔を通して気体分子を排気した後、前記絶縁空間内で真空を維持するために密閉可能であり、前記第1の壁と前記第2の壁との間の距離は前記通気孔に隣接する前記絶縁空間の一部において可変であり、それにより、前記絶縁空間内の気体分子が前記絶縁空間の排気中に前記第1および第2の壁の可変距離部分によって前記通気孔に向かって導かれるものであり、前記第1および第2の壁の前記可変距離部分によって前記気体分子が導かれることにより、前記気体分子が前記絶縁空間に侵入するよりも前記絶縁空間から排気される確率がより大きくなるものであり、当該絶縁物品は、さらに、第1の管と第2の管との間の前記絶縁空間内に配置された所定量の絶縁材料を有する、絶縁物品。
【0094】
実施形態12。実施形態11記載の絶縁物品において、前記層は、前記第1の壁と前記第2の壁との間の前記絶縁空間内に配置された所定量の絶縁材料を含むものである、絶縁物品。
【0095】
実施形態13。実施形態11または12記載の絶縁物品において、前記所定量の絶縁材料は多孔質材料を含むものである、絶縁物品。
【0096】
実施形態14。実施形態11~13のいずれか1つに記載の絶縁物品において、前記所定量の絶縁材料は、約0.002W/m*K~約0.1W/m*Kの熱伝導率を有するものである、絶縁物品。
【0097】
実施形態15。実施形態11~14のいずれか1つに記載の絶縁物品において、前記所定量の絶縁材料は、アルミナ、シリカまたはその両方を含むものである、絶縁物品。
【0098】
実施形態16。実施形態11~15のいずれか1つに記載の絶縁物品において、前記所定量の絶縁材料は、繊維、粒子またはその両方を含むものである、絶縁物品。
【0099】
実施形態17。実施形態11~16のいずれか1つに記載の絶縁物品において、前記所定量の絶縁材料は、容量で約70%~約90%の空隙を有するものである、絶縁物品。
【0100】
上記では、発明者らによって予見された実施形態の観点において本発明を説明しており、また、本発明の実施を可能とする記載が利用可能である。ただし、本明細書において予見されていない、実質的ではない本発明の変更形態が本発明の均等物を表す場合がある。