(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-28
(45)【発行日】2023-01-12
(54)【発明の名称】コアを含む複合部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 1/00 20060101AFI20230104BHJP
B32B 3/14 20060101ALI20230104BHJP
B32B 3/18 20060101ALI20230104BHJP
B32B 3/30 20060101ALI20230104BHJP
B29C 70/10 20060101ALI20230104BHJP
B29C 70/30 20060101ALI20230104BHJP
B29C 70/68 20060101ALI20230104BHJP
B64C 1/00 20060101ALI20230104BHJP
B64C 3/20 20060101ALI20230104BHJP
B64C 1/12 20060101ALN20230104BHJP
【FI】
B32B1/00 A
B32B3/14
B32B3/18
B32B3/30
B29C70/10
B29C70/30
B29C70/68
B64C1/00 B
B64C3/20
B64C1/12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017166523
(22)【出願日】2017-08-31
【審査請求日】2020-06-09
(32)【優先日】2016-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100161274
【氏名又は名称】土居 史明
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド ジェイ.サンドキスト
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン ジェイ.バーポ
(72)【発明者】
【氏名】トレバー ハワード
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0247838(US,A1)
【文献】特開2002-011813(JP,A)
【文献】特開2009-286817(JP,A)
【文献】特開2016-088090(JP,A)
【文献】特開2008-207544(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0028593(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101600550(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C08J 5/04-5/10、5/24
B29B 11/16、15/08-15/14
B29C 41/00-41/36、41/46-41/52、
B29C 44/00-44/60、67/20、
70/00-70/88
B64B 1/00-1/70
B64C 1/00-99/00
B64D 1/00-47/08
B64F 1/00-5/60
B64G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎構造体と、
前記基礎構造体上に配置されており、前記基礎構造体に対して非均一な輪郭を有するコアと、
前記基礎構造体上に配置されて前記コアを覆っており、前記コアの前記非均一な輪郭に沿う積層カバー材と、を含む複合構造体であって、前記積層カバー材は、
少なくとも1つのオーバーレイ層であって、其々が、前記オーバーレイ層の繊維を横切る少なくとも1つのスリットを有するオーバーレイ層と、
前記少なくとも1つのスリットに架橋する形状を有すると共に、前記少なくとも1つのスリットを超えて負荷を伝達するように構成された少なくとも1つのカバー層と、を含む
み、
前記少なくとも1つのオーバーレイ層は、少なくとも第1オーバーレイ層と第2オーバーレイ層とを含み、前記第1オーバーレイ層の前記少なくとも1つのスリットは、前記第2オーバーレイ層の対応するスリットから位置ずれしている、複合構造体。
【請求項2】
前記少なくとも1つのカバー層は、前記少なくとも1つのオーバーレイ層の各スリットに共通のものである、請求項
1に記載の複合構造体。
【請求項3】
前記少なくとも1つのスリットは、前記基礎構造体から離間している、請求項1
又は2に記載の複合構造体。
【請求項4】
前記少なくとも1つのオーバーレイ層の前記少なくとも1つのスリットは、スターバースト形状を有する2個以上のスリットを含むか、あるいは、コーナー・ダーツ形状を有する少なくとも1つのスリットを含む、請求項1~
3のいずれか1つに記載の複合構造体。
【請求項5】
前記少なくとも1つのオーバーレイ層の各スリットは、前記コアの各輪郭移行部に対応している、請求項1~
4のいずれか1つに記載の複合構造体。
【請求項6】
共通の輪郭移行部に対応するスリット同士は、互いに角度ずれしている、請求項
5に記
載の複合構造体。
【請求項7】
前記少なくとも1つのオーバーレイ層の少なくとも1つのスリットは、前記コアの各輪郭移行部と揃っている、請求項
5に記載の複合構造体。
【請求項8】
前記コアの前記非均一な輪郭は、前記基礎構造体に対する非均一な高さを含む、請求項1~
7のいずれか1つに記載の複合構造体。
【請求項9】
前記複合構造体は、航空機の翼、翼縁、又は翼端である、請求項1~
8のいずれか1つに記載の複合構造体。
【請求項10】
複合構造体をレイアップする方法であって、
積層カバー材の少なくとも1つのオーバーレイ層に、当該層の繊維を横切るように少なくとも1つのスリットを形成することと、
前記積層カバー材を、基礎構造体上に配置されたコアの非均一な輪郭に沿わせて成形することと、
第1オーバーレイ層のスリットを、第2オーバーレイ層の対応するスリットから位置ずれさせること、を含み、前記成形は、
前記基礎構造体及び前記基礎構造体上に配置された前記コアの上に、前記少なくとも1つのオーバーレイ層を、前記コアを覆うように載置すること、及び、
前記少なくとも1つのオーバーレイ層の上に、前記積層カバー材の少なくとも1つのカバー層を、当該少なくとも1つのカバー層が前記少なくとも1つのスリットに架橋することで、前記少なくとも1つのスリットを超えて負荷が伝達されるように載置すること、によって行う、方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つのオーバーレイ層の少なくとも1つのスリットを、前記コアの各輪郭移行部と揃えることをさらに含む、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記コアの共通の輪郭移行部に対応する、2個以上のオーバーレイ層のスリット同士を、互いに角度ずれさせることをさらに含む、請求項
10に記載の方法。
【請求項13】
オーバーレイ層同士の間に少なくとも1つのカバー層を載置することをさらに含む、請求項
10~
12のいずれか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
例示的な実施形態は、概して複合部品に関し、特にコアを含む複合部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コアを含む複合材を取り入れた複合部品の一例として、航空機の翼がある。航空機の翼は、一般的に、比較的平ら又はなだらかな輪郭の層を有しており、これらの層が、翼のアウターモールドライン(OML)を規定している。コアは、航空機の翼の構成部材(例えばリブ又はスパー)の間の、OMLを規定する層の上に配置されている。そして、これらのコアの上にインナーモールドライン(IML)層を形成して、コア及びOML規定層を覆うことにより、航空機の翼のIMLが規定される。コアの上にIML層を形成する従来の方法では、通常、IML層を手作業で取り付ける。IML層をコア上に形成する際には、技術者は、IML層を載置して、しわができないようにゆっくりとIML層をコアのベイに沿って加工し、注意深くIML層をコアの形状に合わせて造形しなければならない。IML層にしわを形成することなく、あるいはコアを損傷することなく、コア上にIML層を形成するプロセスは、時間がかかり、面倒であり、且つ実現が困難である。コアは、技術者がIML層の載置中に形成されたしわを取り除く際に付与される圧縮力によって、変形しやすい。従って、IML層を載置する技術者は、コアを押しつぶしたり変形させたりしないように注意しなければならない。コアが損傷すると、複合部品を再加工しなければならず、部品作製にかかる時間と費用が増大する。
【発明の概要】
【0003】
以下は、本開示の要旨についての実施例を非排他的に列挙したものであり、特許請求の範囲に記載したものも記載しなかったものも含まれうる。
【0004】
本開示による要旨の一実施例は、複合構造体に関し、当該複合構造体は、基礎構造体と、前記基礎構造体上に配置されており、前記基礎構造体に対して非均一な輪郭を有するコアと、前記基礎構造体上に配置されて前記コアを覆っており、前記コアの前記非均一な輪郭に沿う積層カバー材と、を含む。前記積層カバー材は、少なくとも1つのオーバーレイ層であって、其々が、前記オーバーレイ層の繊維を横切る少なくとも1つのスリットを有するオーバーレイ層と、前記少なくとも1つのスリットを張る形状を有すると共に、前記少なくとも1つのスリットをわたって負荷を伝達するように構成された少なくとも1つのカバー層と、を含む。
【0005】
本開示による要旨の別の実施例は、複合構造体をレイアップする方法に関し、当該方法は、積層カバー材の少なくとも1つのオーバーレイ層に、当該層の繊維を横切るように少なくとも1つのスリットを形成することと、前記積層カバー材を、基礎構造体上に配置されたコアの非均一な輪郭に沿わせて成形することと、を含む。前記成形は、前記基礎構造体及び基礎構造体上に配置された前記コアの上に、前記少なくとも1つのオーバーレイ層を前記コアを覆うように載置すること、及び、前記少なくとも1つのオーバーレイ層の上に、前記積層カバー材の少なくとも1つのカバー層を、前記少なくとも1つのカバー層が前記少なくとも1つのスリットを張ることで、前記少なくとも1つのスリットをわたって負荷が伝達されるように載置すること、によって行う。
【0006】
本開示による要旨のさらに別の実施例は、複合構造体に関し、当該複合構造体は、基礎構造体と、前記基礎構造体上に配置されており、前記基礎構造体に対して非均一な輪郭を有するコアと、前記基礎構造体上に配置されて前記コアを覆っており、前記コアの前記非均一な輪郭に沿う積層カバー材と、を含む。前記積層カバー材は、オーバーレイ層の積層体であって、前記積層体内の各オーバーレイ層が、前記オーバーレイ層の繊維を横切る少なくとも1つのスリットを有する積層体と、前記オーバーレイ層の前記積層体内の少なくとも1つのカバー層であって、其々が、前記少なくとも1つのスリットを張ることで、前記少なくとも1つのスリットをわたって負荷が伝達されるように構成されたカバー層と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本開示の実施例を概括的に説明したが、以下では、添付図面を参照しつつ説明する。これらの図面は、必ずしも正確な縮尺にしたがっておらず、また、いくつかの図面において、同一又は同様の部品を同じ参照符号で示している。
【0008】
【
図1】本開示の1つ又は複数の態様による複合構造体の概略図である。
【
図2A】本開示の1つ又は複数の態様による複合構造体の一部の概略図である。
【
図2B】本開示の1つ又は複数の態様による複合構造体の一部の概略図である。
【
図2C】本開示の1つ又は複数の態様による複合構造体の一部の概略図である。
【
図3A】本開示の1つ又は複数の態様による複合構造体の製造に用いられる材料の概略図である。
【
図3B】本開示の1つ又は複数の態様による複合構造体の製造に用いられる材料の概略図である。
【
図3C】本開示の1つ又は複数の態様による複合構造体の製造に用いられる材料の概略図である。
【
図4A】本開示の1つ又は複数の態様による複合構造体の一部の概略図である。
【
図4B】本開示の1つ又は複数の態様による複合構造体の一部の概略図である。
【
図5A】本開示の1つ又は複数の態様による複合構造体の一部の概略図である。
【
図5B】本開示の1つ又は複数の態様による複合構造体の一部の概略図である。
【
図6】本開示の1つ又は複数の態様による複合構造体の一部の概略図である。
【
図7】本開示の1つ又は複数の態様による複合構造体の一部の概略図である。
【
図8】本開示の1つ又は複数の態様による複合構造体の一部の概略図である。
【
図9】本開示の1つ又は複数の態様による、複合構造体をレイアップする方法の概略図である。
【
図10】本開示の1つ又は複数の態様による、複合構造体をレイアップする方法のフローチャートである。
【
図11】本開示の1つ又は複数の態様による航空機の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書に記載の本開示の態様は、複合部品を提供するとともに、複合部品に複合コア及び複合層を用いるための改良された方法を提供する。本開示の態様によって、複合部品の形成に費やされる労力を実質的に軽減すること、コアが損傷する事態及び再加工の必要性を低減すること、これにより複合部品の製造に要する時間及びコストを減らすことが可能である。
【0010】
本開示による要旨の例示的且つ非限定的な例を、特許請求の範囲に記載のものも記載していないものも含め、以下に述べる。
【0011】
図1を参照すると、スリット形成を行うことにより、複合層にスリットが設けられる。スリットによって複合層内の張力を解放することができ、これにより、コアに実質的に力がかからない状態で、複合層をコアの輪郭に沿わせ、複合層をコアに合わせて造形することができる。スリット形成によって、しわの原因となる応力も解放することができ、これにより、手動又は自動によりコアに対し複合層を形成することが可能となり、しわを取り除くための手作業時間を減らすこともできる。
【0012】
一態様において、本明細書に記載のように、スリット形成によって、手作業の軽減及びコア損傷の低減を実現することができ、その結果、再加工を減らすことができる。スリット形成によって、例えば、作業時間を約80%減らすことができ、コア損傷又は再加工を約25%減らすことができる。他の態様において、例えば、80%以上又は以下の作業時間の低減、あるいは、25%以上又は以下のコア損傷又は再加工の低減を達成することができる。
【0013】
一態様において、本開示に係る複合構造体100を、航空機1100(
図11に示す)に使用する例で説明するが、これに代えて、例えば自動車、海事産業、航空宇宙などの任意の適当な産業において、複合構造体100を使用することもできる。複合構造体100は、例えば、翼1101、胴体1102、尾部1103、艇体などの製造に用いることができる。
【0014】
図1には、本開示の態様を組み込んだ例示的な複合構造体100が示されている。複合構造体100は、基礎構造体101と、基礎構造体101上に配置されるとともに基礎構造体101に対して非均一な輪郭を有するコア102と、基礎構造体上に配置されてコア102を覆う積層カバー材104とを含み、積層カバー材104は、コア102の非均一な輪郭に沿っている。
【0015】
図1、
図2A、
図2C、及び
図11を参照すると、基礎構造体101は、例えば、航空機1100の任意の部分を構成することができる。その例としては、翼1101(ウィングレット1108を含む)、胴体1102、尾部1103(水平及び/又は垂直安定板1109、1113を含む)、及び、スラット1104、フラップ1105、スポイラー1106、エルロン1107、エレベーター1110、ラダー1112などの操縦翼面、及び/又はこれらの任意の一部がある。一態様において、基礎構造体101は、任意の適当な面積(長さL1×幅W1)を有する。基礎構造体101の長さL1及び幅W1は、任意の適当な長さ又は幅とすることができる。一態様において、基礎構造体101の長さL1と幅W1とは等しい。あるいは、一態様において、基礎構造体101の長さL1と幅W1は異なる。一態様において、基礎構造体101は、係合面101eを含む。係合面101eは、コア102及び/又は積層カバー材104と係合するように構成されている。
【0016】
図1、
図2B~2C、及び
図3Aを参照すると、一態様において、コア102は、第1面102b、第2面102t、及び、側面102sを含む。一態様において、コア102は、ハニカム構造200を有しており、剛性を与えつつ、複合構造体100を軽量化することができる。これに代えて、コア102は、発泡材料、金属、又は繊維材料(
図3Aに示す)のうちの1つで形成されてもよい。例えば、コア102は、アルミニウム、ガラス繊維フェノール(fiberglass phenolic)、ガラス繊維ポリイミド(fiberglass polyimide)、NOMEX(登録商標)、ポリウレタン、ポリイソシアネート、ROHACELL(登録商標)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエチレン、スタイロフォーム、シリコーンフォーム、ポリ塩化ビニル、又は他の適当な材料を用いて構成される。
【0017】
コア102の第1面102bは、基礎構造体101の係合面101eに取付け可能に構成されている。一態様において、コア102の第1面102bは、任意の適当な面積(長さL2×幅W2)を有する。第1面102bの長さL2及び幅W2は、基礎構造体101の長さL1及び幅W1より小さい。一態様において、第1面102bの長さL2及び幅W2は、任意の適当な長さ又は幅であってよい。一態様において、第1面102bの長さL2と幅W2とは等しい。一態様において、第1面102bの長さL2と幅W2は異なる。一態様において、コア102の第1面102bが係合面101eに取付けられた状態において、コア102の方がサイズが小さいため、コア102は、係合面101eの全体を覆わず、基礎構造体101の一部Yが露出した状態となる。
【0018】
一態様において、コア102の第2面102tは、任意の適当な面積(長さL3×幅W3)を有する。第2面102tの長さL3及び幅W3は、第1面102bの長さL2及び幅W2より小さい。一態様において、第2面102tの長さL3及び幅W3は、任意の適当な長さ又は幅であってよい。一態様において、第2面102tの長さL3と幅W3とは等しい。一態様において、第2面102tの長さL3と幅W3は異なる。
【0019】
第1面102bと第2面102tとは、少なくとも側面102sを介してつながっている。一態様において、側面102sは、第2面102t及び/又は第1面102bに対して、任意の適当な傾斜角度αで傾斜している。第1面102bと第2面102tとは、任意の適当な距離Hだけ離間しており、傾斜側面102sとあわさって、全体として非均一な高さの複合構造体100を構成している。
【0020】
ある特定の態様では、第1面102bと第2面102tとの面積が異なり、かつ側面102sを有することで、コア102の断面が台形となっている。これに代えて、コア102は、他の適当な断面輪郭を呈する面を備えた、任意の形状とすることも可能であり、そのような面に積層カバー材104を載置してもよい。例えば、コア102は、立方形、ドーム型、丸みを帯びた形、ピラミッド型、多面体型、又はこれらの任意の組み合わせであってもよい。
【0021】
図1、
図3A~3C、及び
図4A~4Bを参照すると、一態様において、基礎構造体101とコア102とで、輪郭構造103が形成されている。積層カバー材104は、輪郭構造103上に配置されており、輪郭構造103に沿っている。積層カバー材104は、少なくとも1つのオーバーレイ層105を含んでおり、各オーバーレイ層105は、当該オーバーレイ層105の繊維を切断する少なくとも1つのスリット106を有している。積層カバー材104は、スリット106を張る(span)形状を有する少なくとも1つのカバー層107を含んでいる。当該カバー層は、スリットを横切って負荷を伝達するように構成されている。一態様において、カバー層107を省略してもよい。その場合は、十分な数のオーバーレイ層を設けるとともに、複数のオーバーレイ層其々のスリット同士が、十分に角度ずれ/位置ずれするように配置する。
【0022】
一般に、上記のオーバーレイ層105は、高い引張り強度及び高い剛性を輪郭構造103に付与しうるが、これは、オーバーレイ層105に対する負荷が、当該オーバーレイ層105に含まれた一連の繊維を介して伝達されることによる。オーバーレイ層105は、任意の適当な材料であってよい。一例として、オーバーレイ層105は、例えば炭素繊維又はガラス繊維の一方あるいは双方を含有する素材であって、繊維材料300(
図3A)、多方向織物301(
図3B)又は単方向材料302(
図3C)のいずれか1つの素材又はこれらの組み合わせから成る。
【0023】
一態様において、オーバーレイ層105は、任意の適当な面積(長さL4及び幅W4)を有する。一態様において、オーバーレイ層105の長さL4及び幅W4は、任意の適当な長さ又は幅であってよい。一態様において、オーバーレイ層105の長さL4と幅W4とは、等しい。一態様において、オーバーレイ層105の長さL4と幅W4は、異なる。一態様において、オーバーレイ層105の面積は、複数の要素に依存し、これらの要素には、例えば、基礎構造体101の面積、コア102の第1面102b及び第2面102tの面積、コア102の高さHなどが含まれる。
【0024】
一態様において、オーバーレイ層105は、輪郭構造103上に配置されており、例えば、基礎構造体101の端縁101a又はコア102に対して、所定の公差内となるように揃えられている。所定の公差は、基礎構造体101上の参照線101rによって規定することができる。当該参照線は、コア102及び基礎構造体101上への積層カバー材104の載置の許容領域を、視覚的に示すように構成されている。一態様において、参照線101rは、基礎構造体101の端縁101a又はコア102から所定距離Xの位置にある。一態様において、参照線101rは、基礎構造体101上にコア102を載置するための載置/公差領域を規定しうる。
【0025】
オーバーレイ層105には、少なくとも1つのスリット106が切られており、例えば、オーバーレイ層105における各スリット106の位置及び構成は、コア102の輪郭に依存する。一態様において、スリット106は、オーバーレイ層105が所定の最終形態に切断される際に、カッターで切り込みを入れることにより形成される。一態様において、スリット106をオーバーレイ層105の所定箇所に切り込み形成する際に、スリット106の配置及び構成を、当該オーバーレイ層105内の張力が解放されるような設定とする。これにより、オーバーレイ層105をコア102に配置する際に、コア102に加わる力を最小に抑えつつ、オーバーレイ層105がコア102に合わせて造形又は輪郭形成されるようにすることができる。一態様において、スリット106により、しわの原因となる応力を解放することができ、これにより、コア102に対してオーバーレイ層105を手動又は自動により形成することが可能となり、しわを取り除くための手作業時間を減らすことができる。
【0026】
一態様において、オーバーレイ層105における各スリット106は、コア102における各輪郭移行部CT(
図2B、
図2C、
図7)と揃っている。他の態様において、オーバーレイ層105のスリット106が、輪郭移行部CTから位置ずれしており、輪郭移行部CTとは揃わずに所定距離だけ離間していてもよい。一例として、輪郭移行部CTは、複合構造体100における面間の任意の移行部であり、これには、コア102の第2面102tから側面102sへの移行部、コア102の側面102s同士の移行部、又は、複合構造体100における面間の任意の他の移行部が含まれる。
【0027】
スリット106は、コア102の任意の部分にわたって延びるように構成しうる。一態様において、スリット106は、第2面102t及び側面102sの一部のみにわたって延びる。従って、当該スリット106は、第1面102bと基礎構造体101との境から、所定距離DSだけ離間している(すなわち、スリット106は、基礎構造体101に到るまでは延びていない)。コア102から基礎構造体101への移行部は、荷重点CP(
図2C)となりうる。スリット106が、コア102の側面102sの一部のみを延び、荷重点CPから離れた構成とすることで、荷重点CP(
図2C)に負荷がかかることによって発生する応力を低減しうる。
【0028】
図5A~5Bを参照すると、一態様において、オーバーレイ層105を形成することは、真空成形などの任意の適当な方法で実現することができる。真空成形の例としては、一般的な真空テーブル又は真空源500及び真空バッグ501を用いた真空デバルク(vacuum debulking)があり、これによれば、コア102に対して一定した圧力を付与することができ、部品の再加工を減らすことが可能である。一態様において、オーバーレイ層105は、エア・ブラダ(air bladder)502などによる正圧によって、輪郭構造103の非均一な輪郭に沿わせることができ、この手法によれば、一定した圧力を付与することができ、部品の再加工を減らすことが可能である。一態様において、エア・ブラダ502及び/又は真空バッグ501は、オーバーレイ層105に対するエア・ブラダ502及び/又は真空バッグ501のワイピング作用(wiping action)503によって、オーバーレイ層105を、輪郭構造103に対して、ならすことができる。
【0029】
図4Bも参照すると、ある特定の態様において、オーバーレイ層105は、複数のオーバーレイ層105Lを積み重ねた積層体である。オーバーレイ層105Lの積層体は、任意の適当な数のオーバーレイ層105a~105bを含んでおり、これらの其々は、各オーバーレイ層105a~105bの繊維を横切る少なくとも1つのスリット106a~106bを有するものである。例示を目的として、2個のオーバーレイ層105a~105b及び2個のスリット106a~106bを図示しているが、他の態様において、2個より多い又は少ない数のオーバーレイ層又はスリットを設けてもよい。
【0030】
一態様において、オーバーレイ層105Lの積層体は、少なくとも第1オーバーレイ層105a及び第2オーバーレイ層105bを含み、第1オーバーレイ層105aのスリット106aは、第2オーバーレイ層105bの対応するスリット106bに対して、距離O(
図4B参照)だけ位置ずれしている(すなわち揃っていないもしくは例えば一方が他方の上に配置されていない)か、あるいは、所定角度S(
図4A参照)だけ角度ずれしている(すなわち回転している)。一態様において、上述したように、オーバーレイ層105Lの積層体における各スリット106a~bは、コア102の各輪郭移行部CT(
図2C及び
図7)に対応している。
【0031】
図7に示すように、ある特定の態様において、例えば、オーバーレイ層105には3個のスリット106S1~106S3が形成されており、これらの3個のスリット106S1~106S3は、スターバースト(starburst)状のスリットパターンを有している。この特定の態様において、スターバースト状のパターンとは、3個のスリット106S1~106S3が共通の発生点OPから分岐し、互いに対して所定角度SSだけ角度ずれ又は回転している状態を表している。また、各スリットが互いに位置ずれした発生点から分岐するように、3個のスリット106S1~106S3が互いに対して位置ずれしていてもよい。3個のスリット106S1~106S3の其々の間の所定角度SSは、等しくてもよいし、異なっていてもよい。
図8に示すように、ある特定の態様において、例えば、4個のスリット106D1~106D4がオーバーレイ層105に形成されている。各スリット106D1~106D4は、3個のスリットを含んでおり、これら3個のスリットは、互いに対して角度を成してダーツ状のスリットパターンを形成している。この特定の態様において、其々がダーツ形状を有する4個のスリット106D1~106D4は、コア102の第2面102tにおけるコーナー輪郭移行部に設けられており、互いに距離Doだけ位置ずれしている。スターバースト状パターン及びダーツ状パターンを、其々、3個及び4個のスリットを有するものとして説明したが、他の態様において、スターバースト状パターン及びダーツ状パターンは、任意の適当な数のスリットを有することができる。また、他の態様において、スリット106a~106bを、任意の適当なパターン又は任意の適当なパターンの組み合わせで形成することができる。一態様において、当該パターン又はパターンの組み合わせは、部品のサイズ、複合部品にかかる応力、複合部品の重量、複合部品の成形性などに依存する。
【0032】
図1、
図3A~3C及び
図6を参照すると、スリット106によって、オーバーレイ層105における、繊維に沿った負荷伝達に切れ目が生じる。そこで、スリット106の上及び/又は下にカバー層107を配置する(すなわち、オーバーレイ層105の上、及び/又は、2つ以上のオーバーレイ層105の間に、カバー層107を配置する)ことによって、スリット106をわたって負荷が伝達されるようにする。一態様において、カバー層107を、スリット106上に載置することによって、オーバーレイ層105におけるスリット106をわたる負荷伝達力を、維持又は向上させる。一態様において、積層カバー材104におけるカバー層107は、繊維材料300(
図3A)、多方向織物301(
図3B)、又は、単方向材料302(
図3C)のうちの1つ又は複数を含め、オーバーレイ層105と同じ材料から形成される。他の態様において、カバー層107とオーバーレイ層105とは、異なる材料から形成される。
【0033】
カバー層107は、輪郭構造103上に載置される前に、カッターでの切断により成形される。一態様において、カバー層107及びスリット106は、複合構造体100の輪郭に適した任意の形状である。一態様において、オーバーレイ層105は、スリット106を全体的に包含する領域を有しており、カバー層107は、この領域よりも大きい構成とされている。このように、カバー層107は、オーバーレイ層105においてスリットが設けられた領域を完全に覆うことにより、スリット106が位置する領域をわたって負荷を伝達させる役割を担うことができる。一態様において、カバー層107は、オーバーレイ層105の各スリット106に対し共通に用いられる。これに代えて、複数ある移行部CTの其々に対応するスリット106又はスリットの組に対し、少なくとも1つのカバー層107A~107Dを個別に付与することにより、他の移行部CTに対応するスリット106又はスリットの組のカバー層107とは異なるカバー層が用いられるようにしてもよい(例えば
図8参照)。この場合にも、各カバー層により、スリット106をわたって負荷を伝達することができる。複合構造体を製造する際にスリット106及びカバー層107をいくつ使用するかは、スリットのパターンについて上述したのと同様に、製造される複合部品(例えばサイズ、応力、重量、成形性)に応じて決定される。
【0034】
カバー層107は、オーバーレイ層105について上述したのと実質的に類似の方法で(例えば真空デバルク又は正圧を用いて)、輪郭構造103に合わせて成形される。
【0035】
次に
図1、
図9、及び
図10を参照すると、一態様において、複合構造体100をレイアップする方法1000は、積層カバー材104のオーバーレイ層105に、当該層の繊維を横切るスリット106を切り込み形成すること(
図10、ブロック1001)を含む。このオーバーレイ層105は、基礎構造体101及び基礎構造体101に配置されたコア102の上に、コア102を覆うように載置される(
図10、ブロック1002)。オーバーレイ層105の上には、積層カバー材104のカバー層107が載置されるが、その際、カバー層107でスリット106を張り、スリット106を横切って負荷が伝達されるようにする(
図10、ブロック1003)。積層カバー材104は、本明細書に記載した方法を含め、任意の適当な方法によって、基礎構造体101上のコア102の非均一な輪郭に沿うように成形される(
図10、ブロック1004)。
【0036】
概略的には、
図9に示すように、コア102が、基礎構造体101に取付けられる。第1オーバーレイ層105aには、コア102上への載置の前に、スリット106aが形成される。第1オーバーレイ層105aは、次に、上述したのと類似の方法(例えば真空デバルク、正圧摺動、又は手作業による配置)によって、基礎構造体101及びコア102に合わせて成形される。次に、コア102及び基礎構造体101に対する第1オーバーレイ層105aの成形と同様に、第1カバー層107aが、スリット106aの上に載置されて成形される。そして、スリット106bを有する第2オーバーレイ層105bが、第1カバー層107a、第1オーバーレイ層105a、及びコア102の上に載置される。第2オーバーレイ層105bは、次に、上述したのと類似の方法によって、第1オーバーレイ層105aと第1カバー層107aとが形成された基礎構造体101及びコア102に合わせて成形される。最後に、第2カバー層107bが、スリット106bの上に接合され、複合構造体100が形成される。
【0037】
一態様において、第2オーバーレイ層105bの繊維を横切るスリット106bは、スターバースト状パターン、ダーツ状スリットパターン、又は任意の適当なパターンについて上述したのと類似の態様で、第1オーバーレイ層105aにおける対応するスリット106aから位置ずれしている。代替の実施形態において、第1オーバーレイ層105aを載置する前に第1カバー層107aをコア102の上に載置してもよいし、あるいは、第1及び第2オーバーレイ層105a、105bの第1及び第2スリット106a、106bの両方に対して、1つの共通のカバー層107を載置してもよい。
【0038】
上述の例は、2つのオーバーレイ層、2つのスリット、及び、2つのカバー層のみを有する複合構造体100について説明したが、複合構造体100は、例えば、其々が複数のスリットを有する3個のオーバーレイ層と、その上に載置された1つのカバー層のように、各部材を、任意の適当な数だけ、任意の適当な構成で用いることができる。
【0039】
本開示の態様によれば、以下が提供される。
【0040】
A. 基礎構造体と、
前記基礎構造体上に配置されており、前記基礎構造体に対して非均一な輪郭を有するコアと、
前記基礎構造体上に配置されて前記コアを覆っており、前記コアの前記非均一な輪郭に沿う積層カバー材と、を含む複合構造体であって、前記積層カバー材は、
少なくとも1つのオーバーレイ層であって、其々が、前記オーバーレイ層の繊維を横切る少なくとも1つのスリットを有するオーバーレイ層と、
前記少なくとも1つのスリットを張る形状を有すると共に、前記少なくとも1つのスリットをわたって負荷を伝達するように構成された少なくとも1つのカバー層と、を含む、複合構造体。
【0041】
A1. 前記少なくとも1つのオーバーレイ層は、多方向織物を含む、付記Aに記載の複合構造体。
【0042】
A2. 前記少なくとも1つのオーバーレイ層は、単方向材料を含む、付記Aに記載の複合構造体。
【0043】
A3. 前記少なくとも1つのカバー層は、多方向織物を含む、付記A~A2に記載の複合構造体。
【0044】
A4. 前記少なくとも1つのオーバーレイ層及び前記少なくとも1つのカバー層は、炭素繊維及びガラス繊維のうちの1つ又は複数を含む、付記A~A3に記載の複合構造体。
【0045】
A5. 前記少なくとも1つのオーバーレイ層は、少なくとも第1オーバーレイ層と第2オーバーレイ層とを含み、前記第1オーバーレイ層の前記少なくとも1つのスリットは、前記第2オーバーレイ層の対応するスリットから位置ずれしている、付記A~A4に記載の複合構造体。
【0046】
A6. 前記少なくとも1つのカバー層は、前記少なくとも1つのオーバーレイ層の各スリットに共通のものである、付記A~A5に記載の複合構造体。
【0047】
A7. 前記少なくとも1つのオーバーレイ層の各スリットは、前記コアの輪郭移行部に対応している、付記A~A6に記載の複合構造体。
【0048】
A8. 共通の輪郭移行部に対応するスリット同士は、互いに角度ずれしている、付記A7に記載の複合構造体。
【0049】
A9. 前記少なくとも1つのオーバーレイ層の少なくとも1つのスリットは、前記コアの輪郭移行部と揃っている、付記A7~A8に記載の複合構造体。
【0050】
A10. 前記コアの前記非均一な輪郭は、前記基礎構造体に対する非均一な高さを含む、付記A~A9に記載の複合構造体。
【0051】
A11. 前記少なくとも1つのカバー層は、オーバーレイ層同士の間に配置されている、付記A~A10に記載の複合構造体。
【0052】
A12. 前記コアは、ハニカム構造を含む、付記A~A11に記載の複合構造体。
【0053】
A13. 前記コアは、繊維材料を含む、付記A~A12に記載の複合構造体。
【0054】
A14. 前記コアは、金属を含む、付記A~A13に記載の複合構造体。
【0055】
A15. 前記コアは、発泡材料を含む、付記A~A14に記載の複合構造体。
【0056】
A16. 前記コアは、前記基礎構造体を強化するように構成されている、付記A~A15に記載の複合構造体。
【0057】
A17. 前記積層カバー材は、前記複合構造体のインナーモールドラインを形成している、付記A~A16に記載の複合構造体。
【0058】
A18. 前記少なくとも1つのスリットは、前記基礎構造体から離間している、付記A~A17に記載の複合構造体。
【0059】
A19. 前記少なくとも1つのオーバーレイ層の前記少なくとも1つのスリットは、スターバースト形状を有する2個以上のスリットを含む、付記A~A18に記載の複合構造体。
【0060】
A20. 前記少なくとも1つのスリットは、コーナー・ダーツ形状を有している、付記A~A18に記載の複合構造体。
【0061】
A21. 前記複合構造体は、航空機の翼、翼縁、又は翼端である、付記A~A20に記載の複合構造体。
【0062】
A22. 前記基礎構造体は、前記航空機の翼、前記翼縁、又は前記翼端の外板を形成している、付記A21に記載の複合構造体。
【0063】
A23. 前記基礎構造体は、前記複合構造体のアウターモールドラインを形成している、付記A~A22に記載の複合構造体。
【0064】
B. 複合構造体をレイアップする方法であって、
積層カバー材の少なくとも1つのオーバーレイ層に、当該層の繊維を横切るように少なくとも1つのスリットを形成することと、
前記積層カバー材を、基礎構造体上に配置されたコアの非均一な輪郭に沿わせて成形することと、を含み、前記成形は、
前記基礎構造体及び基礎構造体上に配置された前記コアの上に、前記少なくとも1つのオーバーレイ層を、前記コアを覆うように載置すること、及び、
前記少なくとも1つのオーバーレイ層の上に、前記積層カバー材の少なくとも1つのカバー層を、当該少なくとも1つのカバー層が前記少なくとも1つのスリットを張ることで、前記少なくとも1つのスリットをわたって負荷が伝達されるように載置すること、によって行う、方法。
【0065】
B1. 第1オーバーレイ層のスリットを、第2オーバーレイ層の対応するスリットから位置ずれさせることをさらに含む、付記Bに記載の方法。
【0066】
B2. 前記少なくとも1つのオーバーレイ層の各スリットの上に、共通のカバー層を載置する、付記B~B1に記載の方法。
【0067】
B3. 前記少なくとも1つのオーバーレイ層の少なくとも1つのスリットを、前記コアの各輪郭移行部と揃えることをさらに含む、付記B~B2に記載の方法。
【0068】
B4. 前記コアの共通の輪郭移行部に対応する、2個以上のオーバーレイ層のスリット同士を、互いに角度ずれさせることをさらに含む、付記B~B2に記載の方法。
【0069】
B5. オーバーレイ層同士の間に前記少なくとも1つのカバー層を配置することをさらに含む、付記B~B4に記載の方法。
【0070】
B6. 真空圧を用いて、前記積層カバー材を、前記基礎構造体上に配置された前記コアの前記非均一な輪郭に沿わせることをさらに含む、付記B~B5に記載の方法。
【0071】
B7. 正圧を用いて、前記積層カバー材を、前記基礎構造体上に配置された前記コアの前記非均一な輪郭に沿わせることをさらに含む、付記B~B5に記載の方法。
【0072】
B8. エア・ブラダを用いて前記正圧を生成すること、及び、前記エア・ブラダのワイピング作用によって前記積層カバー材の表面をならすこと、をさらに含む、付記B7に記載の方法。
【0073】
C. 基礎構造体と、
前記基礎構造体上に配置されており、前記基礎構造体に対して非均一な輪郭を有するコアと、
前記基礎構造体上に配置されて前記コアを覆っており、前記コアの前記非均一な輪郭に沿う積層カバー材と、を含む複合構造体であって、前記積層カバー材は、
オーバーレイ層の積層体であって、前記積層体内の各オーバーレイ層が、前記オーバーレイ層の繊維を横切る少なくとも1つのスリットを有する積層体と、
前記オーバーレイ層の前記積層体内の少なくとも1つのカバー層であって、其々が、前記少なくとも1つのスリットを張る形状を有すると共に、前記少なくとも1つのスリットをわたって負荷を伝達するように構成されたカバー層と、を含む、複合構造体。
【0074】
C1. 各オーバーレイ層は、多方向織物を含む、付記Cに記載の複合構造体。
【0075】
C2. 各オーバーレイ層は、単方向材料を含む、付記Cに記載の複合構造体。
【0076】
C3. 前記少なくとも1つのカバー層は、多方向織物を含む、付記C~C2に記載の複合構造体。
【0077】
C4. 各オーバーレイ層及び前記少なくとも1つのカバー層は、炭素繊維及びガラス繊維のうちの1つ又は複数を含む、付記C~C3に記載の複合構造体。
【0078】
C5. オーバーレイ層の前記積層体は、少なくとも第1オーバーレイ層と第2オーバーレイ層とを含み、前記第1オーバーレイ層の前記少なくとも1つのスリットは、前記第2オーバーレイ層の対応するスリットから位置ずれしている、付記C~C4に記載の複合構造体。
【0079】
C6. 前記少なくとも1つのカバー層は、オーバーレイ層の前記積層体における各スリットに共通のものである、付記C~C5に記載の複合構造体。
【0080】
C7. オーバーレイ層の前記積層体における各スリットは、前記コアの各輪郭移行部に対応している、付記C~C6に記載の複合構造体。
【0081】
C8. 共通の輪郭移行部に対応するスリット同士は、互いに角度ずれしている、付記C7に記載の複合構造体。
【0082】
C9. オーバーレイ層の前記積層体における少なくとも1つのスリットは、前記コアの各輪郭移行部と揃っている、付記C7に記載の複合構造体。
【0083】
C10. 前記コアの前記非均一な輪郭は、前記基礎構造体に対する非均一な高さを含む、付記C~C9に記載の複合構造体。
【0084】
C11. 前記少なくとも1つのカバー層は、オーバーレイ層同士の間に配置されている、付記C~C10に記載の複合構造体。
【0085】
C12. 前記コアは、ハニカム構造を含む、付記C~C11に記載の複合構造体。
【0086】
C13. 前記コアは、繊維材料を含む、付記C~C12に記載の複合構造体。
【0087】
C14. 前記コアは、金属を含む、付記C~C13に記載の複合構造体。
【0088】
C15. 前記コアは、発泡材料を含む、付記C~C14に記載の複合構造体。
【0089】
C16. 前記コアは、前記基礎構造体を強化するように構成されている、付記C~C15に記載の複合構造体。
【0090】
C17. 前記積層カバー材は、前記複合構造体のインナーモールドラインを形成している、付記C~C16に記載の複合構造体。
【0091】
C18. 前記少なくとも1つのスリットは、前記基礎構造体から離間している、付記C~C17に記載の複合構造体。
【0092】
C19. 前記少なくとも1つのオーバーレイ層の前記少なくとも1つのスリットは、スターバースト形状を有する2個以上のスリットを含む、付記C~C18に記載の複合構造体。
【0093】
C20. 前記少なくとも1つのスリットは、コーナー・ダーツ形状を有している、付記C~C18に記載の複合構造体。
【0094】
C21. 前記複合構造体は、航空機の翼、翼縁、又は翼端である、付記C~C20に記載の複合構造体。
【0095】
C22. 前記基礎構造体は、前記航空機の翼、前記翼縁、又は前記翼端の外板を形成している、付記C21に記載の複合構造体。
【0096】
C23. 前記基礎構造体は、前記複合構造体のアウターモールドラインを形成している、付記C~C22に記載の複合構造体。
【0097】
上記の図において、様々な要素及び/又は部品を繋ぐ実線がある場合、それらは、例えば、機械的接続、電気的接続、流体的接続、光学的接続、電磁気的接続、無線接続、その他の接続、及び/又はこれらの組み合わせを表す。本明細書において、「接続されている」とは、直接的または間接的に関連付けられていることを意味する。例えば、部材Aは、部材Bと、直接的に関連付けられていてもよいし、例えば別の部材Cを介して間接的に関連付けられていてもよい。なお、開示した様々な要素間の関係が必ずしもすべて示してあるとは限らない。従って、図面に示した接続以外の接続も存在しうる。様々な要素及び/又は部品を繋ぐ破線がある場合、これらは、機能および目的の面で、実線で表したものに類似する接続を表す場合がある。ただし、破線で表した接続は、選択的に設けられるもの、あるいは、本開示の代替的な実施例に関するものである場合がある。同様に、破線で示した要素及び/又は部品がある場合、これらは、本開示における代替的な実施例を表す場合がある。実線及び/又は破線で示した1つ又は複数の要素を、本開示の範囲から逸脱することなく、ある特定の実施例から省くこともできる。外部要素がある場合は、点線で表している。仮想上(想像上)の要素も、明確にするために図示している場合もある。当業者であればわかるように、図面に示した構成要素のいくつかは、これらの図面、その他の図面、及び/又は、付随する開示に記載された他の構成要素を含むことなく様々な方法で組み合わせることが可能であり、この際に、そのような組み合わせが本開示に明示されている必要はない。同様に、提示の実施例に限定されない追加の構成要素を、本明細書で図示及び説明した構成要素のいくつか又はすべてと組み合わせることもできる。
【0098】
上述の
図9及び
図10において、ブロックは、工程やその一部を示す場合があり、様々なブロックを繋ぐ線は、それらの工程やその一部について特定の順序や従属関係を暗示するものではない。破線で示したブロックは、代替の工程及び/又はその一部を示す。様々なブロックを繋ぐ破線がある場合、これらは、工程やその一部の代替的な従属関係を示す。なお、開示されている様々な工程間の従属関係が、必ずしもすべて示されているとは限らない。
図9及び
図10ならびに本明細書に記載の方法の工程を説明する付随の開示は、これらの工程が行われる順序を決定する絶対的なものであると解釈されるべきではない。むしろ、1つの例示的な順序を示してはいるが、工程の順序は適宜変更可能であると理解すべきである。従って、いくつかの工程を、異なる順序で、あるいは同時に行うこともできる。また、当業者であればわかるように、記載した工程を必ずしもすべて行う必要はない。
【0099】
以上の説明においては、開示の概念が十分に理解されるように、多くの具体的な詳細事項を提示しているが、本開示は、これらの詳細事項のいくつか又はすべてが無くても実施可能である。他の例では、既知の装置及び/又は処理についての詳細を省いているが、これは本開示が不必要に曖昧になることを避けるためである。特定の実施例に関連させて説明している概念もあるが、これらの実施例は、本開示を限定することを意図するものではないことは理解されよう。
【0100】
本明細書で用いられる場合、特に明記しない限り、「第1」、「第2」等の語句は、単に標識として用いられており、これらの用語で言及しているアイテムに対し、順序、位置、又は階層的な要件を課すものではない。また、例えば「第2の」アイテムについて言及することによって、例えば、「第1の」アイテムやより小さい序数のアイテム、及び/又は、「第3の」アイテムテムやより大きい序数のアイテムの存在を要件としたり排除したりするものではない。
【0101】
本明細書において、「一実施例」という時は、当該例に関連させて述べる1つ又は複数の構成要素、構造、特徴が、少なくとも1つの実施態様に含まれるということを意味する。本明細書の様々な箇所で用いられる「一実施例」という用語は、同一の実施例を指す場合もあるし、そうでない場合もある。
【0102】
本明細書において、特定の機能を実行するように「構成された(configured to)」システム、装置、構造、物品(article)、要素、部品、又はハードウェアは、一切の変更を要することなくその特定の機能を実行できるものを指し、その特定の機能を実行するのに何らかの変更を要するものを指すのではない。換言すれば、特定の機能を実行するように「構成された」システム、装置、構造、物品、要素、部品、又はハードウェアは、その特定の機能を実行することを目的として、具体的に、選択、作製、実施、利用、プログラム、及び/又は設計されたものを指す。本明細書において、「構成されている」ということは、システム、装置、構造、物品、要素、部品、又はハードウェアが既に備えている特性に言及するものであり、この特性により、当該システム、装置、構造、物品、要素、部品、又はハードウェアは、一切の変更を要することなくその特定の機能を実行することができる。本開示において、特定の機能を実行するように「構成されている」システム、装置、構造、物品、要素、部品、又はハードウェアは、この記載に加えて、あるいは、この記載に代えて、当該機能を行うように「適合化された(adapted to)」、及び/又は「動作可能な(operative to)」ものとして記載される場合もある。
【0103】
本明細書に開示の装置及び方法の様々な実施例は、様々な部品、特徴、及び機能を有する。なお、本開示の装置及び方法の様々な実施例は、本開示の装置及び方法の他の任意の実施例の部品、構成要素、及び機能のいずれでも任意に組み合わせて含むことができ、そのすべての可能性は、本開示の範囲内に含まれることを意図している。
【0104】
本開示に関連する分野の当業者であれば、上述の説明及び関連図面に示された教示を受けて、本開示に記載された実施例に対する様々な改変を思いつくであろう。
【0105】
従って、本開示は、例示した特定の実施例に限定されるものではなく、改変及び他の実施例も添付の特許請求の範囲に含まれることが意図されている。また、上述の記載及び関連図面は、要素及び/又は機能のある特定の例示的な組み合わせに関連させて本開示の実施例を説明しているが、代替の実施態様によって、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、要素及び/又は機能の別の組み合わせを提供することもできる。