IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日建リース工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-テールプーリ装置 図1
  • 特許-テールプーリ装置 図2
  • 特許-テールプーリ装置 図3
  • 特許-テールプーリ装置 図4
  • 特許-テールプーリ装置 図5
  • 特許-テールプーリ装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-28
(45)【発行日】2023-01-12
(54)【発明の名称】テールプーリ装置
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/12 20060101AFI20230104BHJP
   E21F 13/02 20060101ALI20230104BHJP
   E21F 13/06 20060101ALI20230104BHJP
   B65G 15/26 20060101ALI20230104BHJP
   B65G 21/14 20060101ALI20230104BHJP
   B65G 23/44 20060101ALI20230104BHJP
【FI】
E21D9/12 B
E21F13/02
E21F13/06
B65G15/26
B65G21/14 A
B65G23/44
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018095650
(22)【出願日】2018-05-17
(65)【公開番号】P2019199768
(43)【公開日】2019-11-21
【審査請求日】2021-04-16
(73)【特許権者】
【識別番号】592192907
【氏名又は名称】日建リース工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100155608
【弁理士】
【氏名又は名称】大日方 崇
(72)【発明者】
【氏名】添田 良介
(72)【発明者】
【氏名】布村 進
(72)【発明者】
【氏名】駒田 弘明
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-138796(JP,A)
【文献】特開2001-241295(JP,A)
【文献】特開2016-169554(JP,A)
【文献】特開2018-043829(JP,A)
【文献】特開2014-028670(JP,A)
【文献】特開2017-190663(JP,A)
【文献】特開2016-223114(JP,A)
【文献】特開2000-213288(JP,A)
【文献】特開平9-100011(JP,A)
【文献】中国実用新案第206871855(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/12
E21F 13/02
E21F 13/06
B65G 15/26
B65G 21/14
B65G 23/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル掘削時の掘削ズリを搬送するための延伸ベルトコンベヤのテールプーリ装置であって、
ヘッドプーリ装置が備えるヘッドプーリとの間でコンベヤベルトが巻回されたテールプーリを有するコンベヤテール部と、
掘削ズリを受け入れて、前記コンベヤテール部に対する掘削ズリの供給量を平滑化する前処理設備と、
前記コンベヤテール部と前記前処理設備との両方が搭載された台車部と、を備え、
前記前処理設備は、塊状の掘削ズリを破砕する破砕機を少なくとも含み、
前記コンベヤテール部は、前記破砕機の出口部の直下に配置され、前記出口部から落下した掘削ズリを受け入れるように構成され
前記台車部は、前記コンベヤテール部の傾斜角度を調整する角度調整機構を含む、テールプーリ装置。
【請求項2】
前記前処理設備は、掘削ズリを送り出すフィーダコンベヤをさらに含む、請求項1に記載のテールプーリ装置。
【請求項3】
前記前処理設備は、掘削ズリを受け入れるホッパと、前記ホッパに収容された掘削ズリを前記破砕機に送り出すフィーダコンベヤとをさらに含む、請求項1に記載のテールプーリ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テールプーリ装置に関し、特に、トンネル掘削時の掘削ズリを搬送するための延伸ベルトコンベヤ用の可動式のテールプーリ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネル掘削時の掘削ズリ(地山から掘削された岩塊、土砂など)を搬送するための延伸ベルトコンベヤの可動式のテールプーリ装置が知られている(たとえば、特許文献1および2参照)。
【0003】
上記特許文献1には、掘進中のトンネルの切羽付近に配置されるテールプーリと、トンネル坑口付近に配置されるヘッドプーリと、テールプーリおよびヘッドプーリに巻き掛けられるコンベヤベルトと、コンベヤベルトを駆動するドライブプーリと、延伸用ベルト格納装置とを備えた連続ベルトコンベヤ(延伸ベルトコンベヤ)が開示されている。テールプーリは、移動可能な台車上に設置されている。掘削に伴って発生した掘削ズリは、テールプーリの手前に配置された自走式フィーダに供給され、自走式フィーダによって、テールプーリのコンベヤベルト上まで搬送される。コンベヤベルトが駆動されることによって、掘削ズリが坑口側のヘッドプーリまで搬送される。
【0004】
上記特許文献2では、発破によって崩された切羽の掘削ズリを、ホイールローダーによってかき集めてクラッシャー(破砕機)に投入し、クラッシャーが破砕したズリをテールピース台車(テールプーリ装置)のコンベヤベルト上まで搬送する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-213288号公報
【文献】特開2016-223114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
掘削ズリは、上記特許文献2のようにホイールローダーなどによりバケット方式で積み込むことが一般的であるため、テールプーリのコンベヤベルト上に直接積み込むことは困難である。掘削ズリの性状に応じて、上記特許文献1では自走式フィーダが用いられ、上記特許文献2ではクラッシャーが用いられることによって、掘削ズリをテールプーリのコンベヤベルト上へ積み込み可能にするとともに、掘削ズリの供給量(単位時間当たりの供給量)が平滑化されている。掘削に伴って切羽位置は前進するため、これらの自走式フィーダやクラッシャーのような掘削ズリの前処理を行う装置およびテールプーリ装置も、それぞれ掘進に伴って移動される。
【0007】
このように、従来では、延伸ベルトコンベヤによって掘削ズリを搬送するために、テールプーリ装置と、テールプーリ装置に掘削ズリを積み込むための自走式の前処理設備(自走式フィーダやクラッシャー)とを設けて、それぞれ移動させる必要があったため、設備数が多くなり、各設備を配置した場合の設置スペース(各設備の配列方向の距離)が大きくなるという課題がある。なお、各設備の設置スペースが大きくなることは、特に掘削開始時に各設備を初期配置するためのスペースを確保するのを困難にするため、設置スペースの抑制が望まれる。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、延伸ベルトコンベヤによって掘削ズリを搬送するために必要となる設備数、および各設備の設置スペースを抑制することが可能なテールプーリ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、この発明によるテールプーリ装置は、トンネル掘削時の掘削ズリを搬送するための延伸ベルトコンベヤのテールプーリ装置であって、ヘッドプーリ装置が備えるヘッドプーリとの間でコンベヤベルトが巻回されたテールプーリを有するコンベヤテール部と、掘削ズリを受け入れて、コンベヤテール部に対する掘削ズリの供給量を平滑化する前処理設備と、コンベヤテール部と前処理設備との両方が搭載された台車部と、を備え、前処理設備は、塊状の掘削ズリを破砕する破砕機を少なくとも含み、コンベヤテール部は、破砕機の出口部の直下に配置され、出口部から落下した掘削ズリを受け入れるように構成され、台車部は、コンベヤテール部の傾斜角度を調整する角度調整機構を含む
【0010】
なお、本明細書において、コンベヤテール部は、テールプーリ装置とは別個に設けられた坑口側のヘッドプーリ装置(ヘッドプーリ)との間でコンベヤベルトが巻き掛けられることにより、延伸ベルトコンベヤの一端部(切羽側端部)を構成するものであり、延伸ベルトコンベヤに掘削ズリを積み込むために設けられる他のベルトコンベヤを含まない概念である。
【0011】
この発明によるテールプーリ装置では、上記のコンベヤテール部と前処理設備との両方を、共通の台車部に搭載することによって、従来別個に設けられていた破砕機や自走式フィーダなどの前処理設備と、延伸ベルトコンベヤの切羽側端部を構成するテールプーリとを、共通の台車部に集約することができる。その結果、前処理設備とテールプーリ装置とを別々に配置する場合と比べて、掘削ズリを搬送するために必要となる設備数を抑制することができる。また、前処理設備を搭載した装置とテールプーリ装置とを別々に並べて配置する場合と比べて、装置の設置スペースを抑制(短縮)することができる。その結果、本発明によれば、延伸ベルトコンベヤによって掘削ズリを搬送するために必要となる設備数、および各設備の設置スペースを抑制することができる。さらに、前処理設備とテールプーリ装置とが単一の装置として構成されるので、前処理設備とテールプーリ装置とを別々に運用する場合と比べて、設備コストを抑制することができる。
また、掘削ズリが比較的大きな岩塊を含んでいても、破砕機によって搬送可能なサイズまで細かく砕けるので、掘削ズリの性状に依らずに掘削ズリの円滑な搬送が可能となる。また、必ずしも掘削ズリが岩塊を含まない場合でも、破砕機に投入することによって、コンベヤテール部への掘削ズリの供給量(単位時間当たりの供給量)の平滑化が行える。さらに、前処理設備から排出された前処理済みの掘削ズリを、直接、コンベヤテール部に積み込むことができる。その結果、テールプーリ装置の装置構成を簡素化および小型化を図ることができる。
【0012】
上記発明によるテールプーリ装置において、好ましくは、前処理設備は、掘削ズリを送り出すフィーダコンベヤをさらに含む。このように構成すれば、掘削ズリの性状に応じて適切な前処理を行った処理済みの掘削ズリを延伸ベルトコンベヤ(コンベヤテール部)に積み込むことができる。ま、フィーダコンベヤによって供給量を平滑化した上でコンベヤテール部に積み込むことができる。
【0014】
上記発明によるテールプーリ装置において、好ましくは、前処理設備は、掘削ズリを受け入れるホッパと、ホッパに収容された掘削ズリを破砕機に送り出すフィーダコンベヤとをさらに含む。このように構成すれば、破砕機に投入する掘削ズリの供給量を、フィーダコンベヤによって調整することができる。その結果、ホイールローダーなどのバケット方式で掘削ズリが投入される場合でも、前処理設備およびコンベヤテール部のそれぞれへの掘削ズリの供給量を平滑化して、掘削ズリの搬送動作を円滑に行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、上記のように、延伸ベルトコンベヤによって掘削ズリを搬送するために必要となる設備数、および各設備の設置スペースを抑制することが可能なテールプーリ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態によるテールプーリ装置を備えた延伸ベルトコンベヤの概要を示した模式図である。
図2】第1実施形態によるテールプーリ装置を示した模式的な側面図である。
図3】第1実施形態によるテールプーリ装置の構造を示した模式的な断面図である。
図4】テールプーリ装置の模式的な正面図である。
図5参考例によるテールプーリ装置を示した模式的な側面図である。
図6参考例によるテールプーリ装置の構造を示した模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
[第1実施形態]
図1図4を参照して、第1実施形態によるテールプーリ装置100の構成について説明する。テールプーリ装置100は、トンネル掘削時の掘削ズリEMを搬送するための延伸ベルトコンベヤ1のテールプーリを保持する装置である。掘削ズリEMは、トンネルの掘削時に地山から掘削された岩塊、土砂などである。
【0022】
(延伸ベルトコンベヤの概要)
まず、テールプーリ装置100が設けられる延伸ベルトコンベヤ1の概要を説明する。延伸ベルトコンベヤ1は、切羽(掘削面)側のテールプーリ装置100のテールプーリ21と、坑口側のヘッドプーリ装置2のヘッドプーリ2aとの間で、掘削ズリEMの運搬用のコンベヤベルト3を巻回した運搬システムである。ヘッドプーリ装置2が坑口付近に固定設置されるのに対して、テールプーリ装置100が移動可能に設けられ、切羽の前進に伴って移動する。コンベヤベルト3は、環状の無端ベルトである。
【0023】
延伸ベルトコンベヤ1は、コンベヤ機長(テールプーリ21とヘッドプーリ2aとの間の距離)が拡大するのに伴ってコンベヤベルト3を延伸させるベルト格納装置4を備える。ベルト格納装置4は、コンベヤベルト3に予め確保された延伸しろ(余剰長さ)の部分を、複数対のプーリ4a、4bに巻回させて保持している。ベルト格納装置4は、対になるプーリ4a、4b間の距離を縮小することにより、コンベヤベルト3を延伸させる。
【0024】
延伸ベルトコンベヤ1は、テールプーリ装置100(テールプーリ21)、ヘッドプーリ装置2(ヘッドプーリ2a)、ベルト格納装置4の各対のプーリ(4a、4b)にそれぞれ巻回された1本のコンベヤベルト3を駆動するためのベルト駆動装置5を備える。ベルト駆動装置5は、たとえば油圧モータなどを備え、コンベヤベルト3が巻回されたドライブプーリ5aを回転駆動することにより、コンベヤベルト3を循環させる。コンベヤベルト3は、図示しないテンション装置のテンションプーリにも巻回されており、テンションプーリを介して張力が付与される。
【0025】
このように、延伸ベルトコンベヤ1は、主要構成として、テールプーリ装置100およびヘッドプーリ装置2と、ベルト格納装置4と、ベルト駆動装置5と、コンベヤベルト3とを備える。各装置の間では、ローラを備えたコンベヤフレーム6によってコンベヤベルト3が支持される。延伸ベルトコンベヤ1のコンベヤ機長が大きい場合、ヘッドプーリ2aとテールプーリ21との間の中間位置で駆動力を付与する中間駆動装置(図示せず)が設けられる場合がある。
【0026】
図1では、一例として、山岳トンネルの施工などに用いられる発破工法による施工例を示している。発破工法は、切羽面にドリル孔を複数形成し、ドリル孔内に設置した火薬を爆発させることによって、切羽を砕いて掘削する工法である。発生した掘削ズリEMは、ホイールローダーなどの運搬車両7によってかき集められて、テールプーリ装置100に積み込まれる。
【0027】
テールプーリ装置100のコンベヤベルト3上に積み込まれた掘削ズリEMは、ベルト駆動装置5がコンベヤベルト3を循環駆動することによって、トンネル外部の坑口付近に設置されたヘッドプーリ装置2までコンベヤベルト3の移動に伴って連続的に搬送される。
【0028】
ここで、発破工法により発生する掘削ズリEMは、ドリル孔の間隔に応じた比較的大型の岩塊(ズリ塊)となる。通常、発生した掘削ズリEMの塊をそのままコンベヤベルト3上に積載することはできず、自走式の破砕装置(クラッシャー)によってコンベヤベルト3が搬送可能なサイズまで細かく破砕される。
【0029】
これに対して、第1実施形態のテールプーリ装置100は、前処理設備10としての破砕機11を備えており、発生した掘削ズリEMの塊をそのままテールプーリ装置100に投入することが可能なように構成されている。以下、第1実施形態のテールプーリ装置100の構成について説明する。
【0030】
(テールプーリ装置の構成)
図2に示すように、第1実施形態のテールプーリ装置100は、主要構成として、前処理設備10と、コンベヤテール部20と、台車部30と、を備えている。図2において、上下方向(鉛直方向)をZ方向、延伸ベルトコンベヤ1の延びる方向をX方向とする。X方向のうち、切羽側の掘進方向がX1方向であり、テールプーリ装置100の前面側である。X方向のうち、坑口側がX2方向であり、テールプーリ装置100の後面側である。水平面内でX方向と直交するテールプーリ装置100の幅方向をY方向(図4参照)とする。
【0031】
〈前処理設備〉
前処理設備10は、掘削ズリEM(図1参照)を受け入れて、コンベヤテール部20に対する掘削ズリEMの供給量を平滑化するように構成されている。前処理設備10は、塊状の掘削ズリEMを破砕する破砕機、および、掘削ズリEMを送り出すフィーダコンベヤの少なくとも一方を含むように構成されている。第1実施形態では、前処理設備10は、破砕機11およびフィーダコンベヤ12の両方を含んでいる。具体的には、前処理設備10は、ホッパ13と、フィーダコンベヤ12と、破砕機11とを含んでいる。
【0032】
ホッパ13は、掘削ズリEMを受け入れる収容部であり、テールプーリ装置100の前側端部(X1方向端部)において、フィーダコンベヤ12の上側に設けられている。ホッパ13は、フィーダコンベヤ12の上面の周囲(四方)を囲むように設けられた側壁13aを備え、上端部および下端部に開口(図示せず)を有する。ホッパ13は、図1に示した運搬車両7によって運ばれた掘削ズリEMを上端部の開口から受け入れる。受け入れられた掘削ズリEMは、下端部の開口からフィーダコンベヤ12に供給される。
【0033】
フィーダコンベヤ12は、ホッパ13に収容された掘削ズリEMを破砕機11に送り出すように構成されたコンベヤである。フィーダコンベヤ12は、ホッパ13の下部に設けられている。具体的には、フィーダコンベヤ12は、ホッパ13の下端部の開口直下の位置から、破砕機11の受入口11a(上部開口、図3参照)まで延びるように設けられている。
【0034】
フィーダコンベヤ12の構成は、掘削ズリEMを搬送可能であれば特に限定されない。フィーダコンベヤ12は、たとえば、コンベヤの両側面とエプロンパンとによって区画された複数の収容部分を循環移動させるエプロンコンベヤ(図3参照)である。この場合、フィーダコンベヤ12は、ホッパ13内から所定容積の収容部分内に掘削ズリEMを取り込んで搬送する。このため、フィーダコンベヤ12は、単位時間当たりの掘削ズリEMの供給量を平滑化する(一定に維持する)ことが可能な定量性を有する。フィーダコンベヤ12は、運搬車両7によってバケット方式でまとめて投入された掘削ズリEMを、単位時間当たり略一定の所定量ずつ破砕機11へ送り出す。フィーダコンベヤ12としては、たとえばスクリューコンベヤやベルトコンベヤなどであってもよい。
【0035】
破砕機11は、受入口11a(図3参照)に投入された掘削ズリEMを、コンベヤテール部20(コンベヤベルト3)によって搬送可能な所定サイズ以下になるように破砕する機能を有する。第1実施形態では、破砕機11は、固定ジョーと、揺動する可動ジョーとの間で破砕物を圧砕するジョータイプ(ジョークラッシャー)の破砕機である。図3に示すように、破砕機11には、破砕機本体41の内部に固定歯42と可動歯43とが傾斜角度を持って配置されている。固定歯42と可動歯43とは、上端部において間隔が大きく、下端部において間隔が小さくなるように傾斜している。破砕機本体41には、固定歯42および可動歯43と両側の側板とによって囲まれた破砕空間が形成されている。破砕機11は、間隔の大きい上端部の開口である受入口11aから掘削ズリEMを受け入れ、下端部の開口である出口部11bから掘削ズリEMを排出する。
【0036】
可動歯43は、上端部において偏心軸44を介して支持されている。偏心軸44は、破砕機本体41に回転可能に設けられ、ベルトプーリ方式で連結された破砕機駆動部45によって回転駆動される。詳細は省略するが、可動歯43の下端部は反力支持用のリンク機構によって揺動可能に支持されている。破砕機駆動部45によって偏心軸44を回転駆動することによって、固定歯42と可動歯43との間隔を変化させるように可動歯43が揺動する。これにより、受入口11aから投入された掘削ズリEMに含まれる大塊のズリ(大塊ズリ)が、破砕空間内で出口部11bを通過可能なサイズまで破砕される。破砕されて小塊となった掘削ズリEM(小塊ズリ)が、出口部11bから落下することによって排出される。排出された掘削ズリEMは、コンベヤテール部20のコンベヤホッパ23内に受け入れられる。
【0037】
破砕機11では、大塊ズリを所望サイズの小塊ズリに破砕する過程で、処理済み(破砕済み)の掘削ズリEMの排出量が平滑化される。たとえば処理可能な上限量の掘削ズリEMが破砕機11にまとめて投入されたとしても、処理済みの掘削ズリEMは所望サイズまで破砕された順番で徐々に排出されるため、単位時間当たりの掘削ズリEMの供給量を平滑化する作用が得られる。そのため、破砕機11は、掘削ズリEMをコンベヤテール部20によって搬送可能なサイズまで破砕する機能に加えて、破砕処理を行うことによって、コンベヤテール部20に対する掘削ズリEMの供給量を平滑化する機能を有する。なお、破砕機11は、掘削ズリEMを所望のサイズまで破砕できれば、どのような方式であってもよく、たとえば破砕用の突起が設けられたロータを回転させるロータリタイプ等の他のタイプの破砕機であってもよい。
【0038】
〈コンベヤテール部〉
図2および図3に示すように、コンベヤテール部20は、延伸ベルトコンベヤ1のヘッドプーリ装置2が備えるヘッドプーリ2a(図1参照)との間でコンベヤベルト3が巻回されたテールプーリ21を有する。すなわち、コンベヤテール部20は、延伸ベルトコンベヤ1の切羽側端部のリターン部を構成する。コンベヤベルト3は、上記の通り、テールプーリ21、ヘッドプーリ2a、ドライブプーリ5a、ベルト格納装置4およびテンションプーリなどに巻回されて、テールプーリ装置100の外部のベルト駆動装置5によって駆動される。
【0039】
コンベヤテール部20は、テールプーリ21が組み付けられたプーリフレーム22を備えている。プーリフレーム22は、前側端部(X1方向端部)において、テールプーリ21を回転可能に支持している。テールプーリ21は、テールプーリ装置100の幅方向(Y方向、図4参照)に沿った回転軸回りに回転可能に支持されている。
【0040】
コンベヤテール部20は、前処理設備10としての破砕機11の出口部11bの直下に配置され、出口部11bから落下した掘削ズリEMを受け入れるように構成されている。具体的には、プーリフレーム22が、テールプーリ21に巻き掛けられたコンベヤベルト3とともに、破砕機11(前処理設備10)の出口部11bの直下を通ってテールプーリ装置100の後方に延びるように設けられている。プーリフレーム22は、コンベヤベルト3を露出させるように上部が開放されており、破砕機11の直下の受け入れ位置において、コンベヤホッパ23を備えている。これにより、コンベヤテール部20は、前処理設備10(破砕機11)の出口部11bから落下した前処理済みの掘削ズリEMを、他の搬送装置等を介さずに直接受け入れるように構成されている。コンベヤホッパ23は、上部および下部が開口した枠状形状を有し、コンベヤホッパ23内に投入された掘削ズリEMがコンベヤホッパ23の下部開口からコンベヤベルト3上に積み込まれる。
【0041】
また、コンベヤテール部20には、コンベヤベルト3を支持するコンベヤフレーム6の一部が配置されている。具体的には、プーリフレーム22のテールプーリ21から後方に延びる支持フレーム24に、コンベヤフレーム6が配置されている。コンベヤフレーム6は、テールプーリ21からヘッドプーリ2aまで巻き掛けられた2枚のベルト部分をそれぞれ支持するためのローラ(6a、6b、6c)が組み付けられたコンベヤベルト支持用のフレームである。なお、ここで言うコンベヤベルト3の2枚のベルト部分とは、掘削ズリEMを載せてテールプーリ21からヘッドプーリ2aへ向かうキャリア部分3aと、ヘッドプーリ2aからテールプーリ21へ戻るリターン部分3bとを意味する。コンベヤベルト3のうちキャリア部分3aは、幅方向中央の水平ローラ6aと、幅方向両側の傾斜ローラ6bとの3つのローラによって、幅方向中央が深くなるように凹状に撓むように支持される。コンベヤベルト3のうちリターン部分3bは、1つのローラ6cによって支持される。
【0042】
なお、図1に示したテールプーリ装置100やヘッドプーリ装置2等の各装置の間の区間には、コンベヤフレーム6が設けられてコンベヤベルト3を循環移動可能に支持している。これらの装置間に配置されるコンベヤフレーム6は、所定長さに形成され、端部同士が連結されるとともにトンネル内で支持部材を介して固定設置されている。そのため、掘削に伴ってテールプーリ装置100が前進すると、コンベヤテール部20がコンベヤフレーム6に対して前進して、テールプーリ21とコンベヤフレーム6との間に隙間ができる。テールプーリ装置100では、所定距離前進する度に、追加のコンベヤフレーム6が組み立てられて、既設のコンベヤフレーム6を延長するように連結される。支持フレーム24は、複数のコンベヤフレーム6を支持可能に構成されており、テールプーリ装置100においてコンベヤフレーム6の連結作業を行うためのスペースを提供する。
【0043】
〈台車部〉
台車部30には、テールプーリ装置100を構成する各種の構成が組み付けられている。台車部30は、テールプーリ装置100の全体を移動可能に支持する。テールプーリ装置100は、コンベヤテール部20と前処理設備10との両方が搭載された単一の(1つの)台車部30を備えている。なお、本明細書において、「台車部」は、移動可能に構成された支持構造を意味し、車輪を備えている構造には限られない。
【0044】
図2に示すように、台車部30は、テールプーリ装置100を構成する各種の構成が組み付けられる台車フレーム31と、台車フレーム31を移動可能に支持する移動機構35とを含んでいる。台車フレーム31は、コンベヤテール部20および前処理設備10を含む各部を支持する骨格部分である。
【0045】
台車フレーム31は、破砕機11およびコンベヤテール部20を支持する第1フレーム部31aと、第1フレーム部31aの前側で、ホッパ13およびフィーダコンベヤ12を支持する第2フレーム部31bとを含む。第1フレーム部31aと第2フレーム部31bとは一体的に設けられている。
【0046】
第1フレーム部31a(台車フレーム31)は、傾斜角度が変更可能なようにコンベヤテール部20を支持している。第1フレーム部31aは、コンベヤテール部20を上下方向に回動(傾斜角度変更)可能に支持する回動支持部32と、コンベヤテール部20の後端側を昇降可能に支持する昇降支持部33とを含む。回動支持部32は、一端部が第1フレーム部31aに固定され、回動軸を介して、他端部でコンベヤテール部20の下面を支持している。昇降支持部33は、油圧シリンダなどにより構成され、伸縮によってコンベヤテール部20の回動支持部32よりも後端側を上下させる。これにより、コンベヤテール部20は、略水平方向(傾斜角度約0度)から上方へ所定の角度範囲内で、回動支持部32を中心に傾斜(回動)可能に支持されている。
【0047】
また、第1フレーム部31aは、コンベヤテール部20の上方に重なる(上下にオーバラップする)位置で、破砕機11および油圧機器34(油圧ユニットおよび油圧制御機器)を支持している。
【0048】
第2フレーム部31bは、第1フレーム部31aの前端部(X1方向端部)から上方に立ち上がるように設けられ、第2フレーム部31bの上端部においてホッパ13およびフィーダコンベヤ12を支持している。
【0049】
第2フレーム部31bは、コンベヤテール部20における掘削ズリEMの受け入れ位置(コンベヤホッパ23、図3参照)よりも上方の位置まで立ち上がるように設けられている。図3では、第2フレーム部31bは、第1フレーム部31aに支持された破砕機11の受入口11a(上部開口)よりも上方の位置でホッパ13およびフィーダコンベヤ12を支持している。第2フレーム部31bは、ホッパ13を配置高さH1(図2参照)の位置に保持している。図2および図3の例では、第2フレーム部31bの上端部において、ホッパ13およびフィーダコンベヤ12は概ね水平に設けられている。
【0050】
移動機構35は、台車フレーム31の下部に設けられている。移動機構35は、第1フレーム部31aの下部に設けられ、台車フレーム31を支持している。移動機構35は、クローラ方式(無限軌道方式)の移動機構であり、クローラ35aと、クローラ35aを駆動する油圧モータ(図示せず)などを含んで構成されている。テールプーリ装置100は、台車部30が備えるクローラ方式の移動機構35によって、自力走行(外部動力に依らずに走行)可能に構成されている。
【0051】
図4に示すように、移動機構35を構成するクローラ35aは、台車フレーム31のY方向の両側(テールプーリ装置100の幅方向の両側)にそれぞれ(一対)設けられている。台車フレーム31(第1フレーム部31aおよび第2フレーム部31b)は、両側のクローラ35aの間に挟まれる位置に配置されている。テールプーリ装置100の幅方向(Y方向)において、前処理設備10としてのフィーダコンベヤ12および破砕機11と、コンベヤテール部20とは、両側のクローラ35aの間の位置に配置されている。破砕機11と、コンベヤテール部20とは、Y方向において一対のクローラ35aの間の位置で上下方向(Z方向)に重なるように設けられている。
【0052】
なお、移動機構35は、たとえばタイヤ方式、レール&車輪方式により自力走行する構成であってもよい。また、移動機構35は、外部装置によって牽引または推進されることにより走行する構成であってもよい。外部装置によって走行する場合の移動機構35としては、上記のクローラ方式、タイヤ方式、レール&車輪方式の他に、たとえばスキッド方式(そり)であってもよい。
【0053】
図2および図3に示したように、テールプーリ装置100には、上記の主要機器の他、アウトリガー51、制御盤52(図3参照)、操作盤(図示せず)、ケーブルリール(図示せず)、油圧機器34(油圧ユニットおよび油圧制御機器)等も搭載されている。油圧機器34は、フィーダコンベヤ12、移動機構35、アウトリガー51および昇降支持部33などを油圧により作動させる。破砕機駆動部45は、たとえば電動モータであるが、油圧機器34によって作動される油圧モータであってもよい。
【0054】
(テールプーリ装置の動作)
次に、図3を参照して、テールプーリ装置100の動作を説明する。掘削ズリEMの搬送時には、テールプーリ装置100はアウトリガー51によって固定された状態で動作する。
【0055】
まず、発破により掘削された掘削ズリEMが、運搬車両7(図1参照)によって後方に配置されたテールプーリ装置100のホッパ13へ積み込まれる。掘削ズリEMは、バケット方式でまとめてホッパ13に投入される。ホッパ13へ積み込まれた掘削ズリEMは、ホッパ13の下部のフィーダコンベヤ12によって所定量ずつ搬送され、フィーダコンベヤ12の後端から破砕機11の受入口11aに投入される。フィーダコンベヤ12によって、掘削ズリEMの供給量が平滑化される。
【0056】
破砕機11は、固定歯42に対する可動歯43の揺動運動によって、掘削ズリEMを所定サイズまで破砕する。掘削ズリEMは、破砕処理により小塊ズリとなって、破砕機11の下部の出口部11bから落下する。掘削ズリEMは、破砕機11の直下の受け入れ位置に配置されたコンベヤテール部20のコンベヤホッパ23内に受け入れられ、コンベヤベルト3上に積み込まれる。破砕処理の過程で、処理済みの掘削ズリEMの供給量(排出量)が平滑化される。
【0057】
この結果、コンベヤテール部20のコンベヤベルト3には、掘削ズリEMが、搬送可能なサイズで、かつ、搬送可能な供給量で積載される。コンベヤベルト3は、延伸ベルトコンベヤ1のベルト駆動装置5によって、切羽側のテールプーリ21と坑口側のヘッドプーリ2aとの間で循環駆動される。その結果、コンベヤベルト3上に積み込まれた掘削ズリEMが、ヘッドプーリ装置2まで坑口へ(X2方向へ)向けて搬送される。
【0058】
所定距離分のトンネル掘削が完了すると、テールプーリ装置100を前進させて、コンベヤベルト3を延伸させる。前進する場合(コンベヤベルト3を延伸させる場合)、テールプーリ装置100は、延伸ベルトコンベヤ1のベルト駆動装置5によるコンベヤベルト3の駆動を停止させた状態で、アウトリガー51の固定を解除して移動機構35により前進する。この際、ベルト格納装置4において、テールプーリ装置100の前進距離分だけコンベヤベルト3が繰り出される。さらに、テールプーリ装置100の前進距離分だけ、追加のコンベヤフレーム6が組み立てられて、既設のコンベヤフレーム6に連結される。第1実施形態では、破砕機11およびフィーダコンベヤ12を含む前処理設備10がコンベヤテール部20と同じ台車部30に搭載され、一体で移動することができるので、テールプーリ装置と前処理設備とを別々の複数台の装置で運用する場合の連結解除作業、各装置の前進移動、再連結作業などの作業が不要となる。
【0059】
コンベヤベルト3の延伸作業が完了すると、再びアウトリガー51によってテールプーリ装置100が固定され、掘削ズリEMの搬送作業が再開される。このように、トンネルの掘進が行われている間、掘削ズリEMの搬送作業と、コンベヤベルト3の延伸作業とが繰り返されることになる。
【0060】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0061】
第1実施形態では、上記のように、コンベヤテール部20と前処理設備10との両方を、共通の台車部30に搭載することによって、従来別個に設けられていた破砕機や自走式フィーダなどの前処理設備10と、延伸ベルトコンベヤ1の切羽側端部を構成するテールプーリ21とを、共通の台車部30に集約することができる。その結果、前処理設備10とテールプーリ装置100とを別々に配置する場合と比べて、掘削ズリEMを搬送するために必要となる設備数を抑制することができる。また、前処理設備10を搭載した装置とテールプーリ装置100とを別々に並べて配置する場合と比べて、装置の設置スペースを抑制(短縮)することができる。その結果、第1実施形態のテールプーリ装置100では、延伸ベルトコンベヤ1によって掘削ズリEMを搬送するために必要となる設備数、および各設備の設置スペースを抑制することができる。さらに、前処理設備10とテールプーリ装置100とが単一の装置として構成されるので、前処理設備10とテールプーリ装置100とを別々に運用する場合と比べて、設備コストを抑制することができる。
【0062】
また、第1実施形態では、上記のように、前処理設備10に、塊状の掘削ズリEMを破砕する破砕機11、および、掘削ズリEMを送り出すフィーダコンベヤ12を設ける。これにより、掘削ズリEMの性状に応じて適切な前処理を行った処理済みの掘削ズリEMを延伸ベルトコンベヤ1(コンベヤテール部20)に積み込むことができる。すなわち、延伸ベルトコンベヤ1により搬送するのが困難なズリ塊(岩塊)を含む掘削ズリEMについては、破砕機11によって搬送可能なサイズまで細かく砕いた上で、コンベヤテール部20に積み込むことができる。この際、破砕処理によって、コンベヤテール部20への掘削ズリEMの供給量(単位時間当たりの供給量)の平滑化も行える。また、フィーダコンベヤ12によっても供給量を平滑化できる。
【0063】
また、第1実施形態では、上記のように、前処理設備10に、少なくとも破砕機11を設ける。これにより、掘削ズリEMが岩塊を含んでいても、破砕機11によって搬送可能なサイズまで細かく砕けるので、掘削ズリEMの性状に依らずに掘削ズリEMの円滑な搬送が可能となる。また、必ずしも掘削ズリEMが岩塊を含まない場合でも、破砕機11に投入することによって、破砕処理によりコンベヤテール部20への掘削ズリEMの供給量(単位時間当たりの供給量)の平滑化が行える。
【0064】
また、第1実施形態では、上記のように、前処理設備10に、破砕機11に加えて、掘削ズリEMを受け入れるホッパ13と、ホッパ13に収容された掘削ズリEMを破砕機11に送り出すフィーダコンベヤ12とを設ける。これにより、破砕機11に投入する掘削ズリEMの供給量を、フィーダコンベヤ12によって調整することができる。その結果、ホイールローダーなどのバケット方式で掘削ズリEMが投入される場合でも、前処理設備およびコンベヤテール部20のそれぞれへの掘削ズリEMの供給量を平滑化して、掘削ズリEMの搬送動作を円滑に行うことができる。
【0065】
また、第1実施形態では、上記のように、コンベヤテール部20を、前処理設備10(破砕機11)の出口部11bの直下に配置し、出口部11bから落下した掘削ズリEMを受け入れるように構成する。これにより、前処理設備10から排出された前処理済みの掘削ズリEMを、直接、コンベヤテール部20に積み込むことができる。その結果、テールプーリ装置100の装置構成を簡素化および小型化を図ることができる。
【0066】
参考例
次に、図5および図6を参照して、参考例について説明する。この参考例では、コンベヤテール部20は、前処理設備10(破砕機11)の出口部11bの直下に配置して、前処理設備10から排出された掘削ズリEMを直接コンベヤテール部20のコンベヤベルト3上に積み込むように構成した上記第1実施形態とは異なり、前処理設備10とコンベヤテール部20との間に中間搬送部110を設けた例について説明する。なお、上記第1実施形態と同様の構成は、第1実施形態と同じ符号を付して図示するとともに説明を省略する。
【0067】
図5および図6に示すように、参考例のテールプーリ装置200は、前処理設備10と、コンベヤテール部20と、台車部30とを備えている。そして、参考例のテールプーリ装置200は、前処理設備10とコンベヤテール部20との間に配置された中間搬送部110をさらに備えている。
【0068】
前処理設備10は、上記第1実施形態と同様に、掘削ズリEMを受け入れるホッパ13と、ホッパ13に収容された掘削ズリEMを破砕機11に送り出すフィーダコンベヤ12と、塊状の掘削ズリEMを破砕する破砕機11と、を含んで構成されている。
【0069】
中間搬送部110は、前処理設備10の出口部11b(図6参照)から排出された掘削ズリEMを受け入れてコンベヤテール部20に供給するように構成されている。
【0070】
中間搬送部110は、前処理設備10としての破砕機11と、コンベヤテール部20の受け入れ位置との間に掛け渡されるように設けられている。すなわち、中間搬送部110は、一方端部(X1方向端部)側が破砕機11の出口部11bの直下の位置に配置されている。中間搬送部110は、他方端部(X2方向端部)側がコンベヤテール部20の受け入れ位置(コンベヤホッパ23)の直上の位置に配置されている。これにより、中間搬送部110は、出口部11bから落下した(排出された)掘削ズリEMをホッパ111に受け入れて、コンベヤテール部20の受け入れ位置まで搬送するように構成されている。
【0071】
具体的には、図6に示すように、中間搬送部110は、両端にそれぞれ設けられたプーリ112と、各プーリ112に巻回された搬送ベルト113とを含むベルトコンベヤにより構成されている。すなわち、一方端部側のプーリ112aが、破砕機11の出口部11bの直下で出口部11bよりも前側(X1方向側)に配置されている。他方端部側(X2方向側)のプーリ112bが、コンベヤテール部20の受け入れ位置(コンベヤホッパ23)の直上の位置に配置されている。中間搬送部110としては、ベルトコンベヤ以外のスクリューコンベヤ、エプロンコンベヤなどでもよい。参考例では、中間搬送部110は、単一の(1つの)ベルトコンベヤにより構成されている。中間搬送部110は、複数のコンベヤを組み合わせて構成してもよい。
【0072】
中間搬送部110は、一方端部(前処理設備10側)から他方端部(コンベヤテール部20側)に向けて上り傾斜となるように傾斜している。そのため、中間搬送部110は、一方端部(プーリ112a)がテールプーリ21と略同じ高さ位置で水平方向(X方向)に並ぶように配置され、他方端部(プーリ112b)がテールプーリ21よりも上方の位置に配置されている。これにより、たとえば中間搬送部110が傾斜せずに水平に設けられて、前処理設備10(破砕機11)と中間搬送部110とコンベヤテール部20とが上下に積み上げられるように配置される構成と比べて、前処理設備10(破砕機11)の配置高さを抑制する(低い位置に配置する)ことが可能である。破砕機11の配置高さが低くなるので、これに伴ってホッパ13の配置高さH2(図5参照)も抑制される。前処理設備10の配置高さは、図1に示した運搬車両7が掘削ズリEMを投入可能な高さによって制限される。そのため、前処理設備10の配置高さを抑制することは、不必要に大型の運搬車両7を使用しないで済む点、および、運搬車両7による掘削ズリEMの投入作業を容易にすることができる点において有用である。
【0073】
また、参考例では、コンベヤテール部20の延びるX方向(テールプーリ装置200の前後方向)において、前処理設備10とコンベヤテール部20とが離れて配置されている。すなわち、コンベヤテール部20が、破砕機11よりも後方(X2方向)へずれた位置に配置されている。図5では、コンベヤテール部20のテールプーリ21が、破砕機11の後方端部BEよりも距離Dだけ後方で、上下に重ならない位置に配置されている。テールプーリ21が、破砕機11の後方端部BEと部分的に重なっていてもよい。なお、図5の構成では、コンベヤテール部20が破砕機11側(X1方向側)に近付く程、中間搬送部110の傾斜角度(水平方向からの仰角)を大きくする必要があるため、破砕機11を含む前処理設備10の配置高さが高くなり易い。コンベヤテール部20と破砕機11とが離れて配置されることによって、前処理設備10の配置高さが抑制されている。
【0074】
参考例では、中間搬送部110は、前処理設備10およびコンベヤテール部20とともに、共通の台車部30に搭載されている。中間搬送部110は、コンベヤテール部20と同じく、台車フレーム31のうちの第1フレーム部31aに設置されている。中間搬送部110は、第1フレーム部31a上でコンベヤテール部20の前方側に配置された設置台120上に固定的に設けられている。
【0075】
なお、コンベヤテール部20は、上記第1実施形態と同様に、回動支持部32と、昇降支持部33とを介して第1フレーム部31aに設置されている。第1実施形態とは異なり、昇降支持部33がコンベヤテール部20の回動支持部32よりも前端側(テールプーリ21)側に設けられている。この構成では、昇降支持部33の引き動作(油圧シリンダの収縮動作)によって、コンベヤテール部20の前端側(テールプーリ21)側を下方に回動させることによって、コンベヤテール部20の後端側を上方へ傾斜させることが可能である。
【0076】
図6に示すように、参考例のテールプーリ装置200では、発破により掘削された掘削ズリEMが運搬車両7によってホッパ13に積み込まれると、フィーダコンベヤ12によって所定量ずつ破砕機11へ投入される。掘削ズリEMは、破砕機11によって小塊ズリとなって、破砕機11の下部の出口部11bから落下する。破砕された掘削ズリEMは、破砕機11の直下に配置された中間搬送部110に受け入れられ、後方へ搬送される。そして、掘削ズリEMは、中間搬送部110の後端部(X2方向端部)から落下して、中間搬送部110の後端部の直下である受け入れ位置に配置されたコンベヤホッパ23に投入される。これにより、コンベヤホッパ23内でコンベヤベルト3上に積み込まれた掘削ズリEMが、ヘッドプーリ装置2まで坑口へ向けてX2方向に搬送される。
【0077】
参考例のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0078】
参考例の効果)
参考例では、以下のような効果を得ることができる。
【0079】
参考例では、上記第1実施形態と同様に、コンベヤテール部20と前処理設備10との両方を、共通の台車部30に搭載するので、延伸ベルトコンベヤ1によって掘削ズリEMを搬送するために必要となる設備数、および各設備の設置スペースを抑制することができる。さらに、前処理設備10とテールプーリ装置200とが単一の装置として構成されるので、前処理設備10とテールプーリ装置200とを別々に運用する場合と比べて、設備コストを抑制することができる。
【0080】
また、参考例では、上記のように、前処理設備10とコンベヤテール部20との間に、前処理設備10の出口部11bから排出された掘削ズリEMを受け入れてコンベヤテール部20に供給する中間搬送部110を設ける。これにより、前処理設備10とコンベヤテール部20との間を中間搬送部110によって接続することができるので、前処理設備10とコンベヤテール部20との両方を台車部30に搭載する際の構造上の制約を緩和することができる。たとえば、コンベヤテール部20は、テールプーリ装置200とは別個に設けられたヘッドプーリ装置2や、トンネル内でコンベヤベルト3を支持するための構造とコンベヤベルト3を介して連結されるため、構造上の制約が大きい。このため、中間搬送部110を設ける事によって、前処理設備10については、テールプーリ装置200内でコンベヤテール部20と切り離して配置することが可能となり、装置内のレイアウトの自由度が向上する。
【0081】
また、参考例では、上記のように、コンベヤテール部20の延びる方向(X方向)において、前処理設備10とコンベヤテール部20とを離れて配置する。これにより、同一の台車部30において前処理設備10とコンベヤテール部20とを離して配置できるので、テールプーリ装置200内のレイアウトの自由度を確保し設計の容易性を向上させることができる。その場合でも、中間搬送部110によって、前処理設備10から排出された掘削ズリEMを、コンベヤテール部20の所望の位置へ容易に積み込むことができる。
【0082】
参考例のその他の効果は、上記第実施形態と同様である。
【0083】
[変形例]
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であり制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更(変形例)が含まれる。
【0084】
たとえば、上記第1実施形態では、前処理設備10が、ホッパ13、フィーダコンベヤ12および破砕機11を含む構成例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、前処理設備10が、フィーダコンベヤ12および破砕機11の一方のみを含んでいてもよい。
【0085】
たとえば掘削する地山の地質(岩種)によっては、発破を行うだけでコンベヤベルト3でも搬送可能なサイズの小塊の掘削ズリEMになる場合がある。その場合には、破砕機11を設けなくてもよい。その場合、フィーダコンベヤ12から直接、または中間搬送部110を介して間接的に、コンベヤテール部20のコンベヤベルト3上へ掘削ズリEMを搬送する構成としてよい。これにより、そのまま搬送可能な細かい掘削ズリEMを、フィーダコンベヤ12によって供給量を平滑化した上でコンベヤテール部20に積み込むことができる。
【0086】
また、たとえば発破により発生した掘削ズリEMの1回当たりの投入量に対して破砕機11が十分な処理能力(処理容量)を有する場合には、フィーダコンベヤ12を設けなくてもよい。その場合、たとえば破砕機11をホッパ13の直下に配置して、ホッパ13に投入された掘削ズリEMを、破砕機11の受入口11aに直接送り込む構成としてよい。
【0087】
この他、前処理設備10としては、掘削ズリEMを受け入れて、コンベヤテール部20に対する掘削ズリEMの供給量を平滑化することが可能であればよく、フィーダコンベヤ12および破砕機11以外の他の装置を備えていてもよい。
【0088】
また、上記第1実施形態では、前処理設備10のホッパ13およびフィーダコンベヤ12が第2フレーム部31bの上端部において概ね水平に設けられる例を示したが、本発明はこれに限られない。ホッパ13およびフィーダコンベヤ12が、テールプーリ装置100の前側(X1方向)に向かって下り傾斜となるように傾斜して配置されていてもよい。この場合、傾斜する分だけホッパ13の前側端部の配置高さ(図2のH1、図5のH2を参照)を低くすることができるので、運搬車両7による掘削ズリEMの積み込みを容易にすることができる。
【0089】
また、上記第1実施形態では、回動支持部32と、昇降支持部33とによって、コンベヤテール部20が台車フレーム31に傾斜角度を変更可能なように支持される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、コンベヤテール部20が、台車フレーム31に対して、所定の傾斜角度で固定的に設けられていてもよい。所定の傾斜角度は、0度(水平)を含む。
【符号の説明】
【0090】
1 延伸ベルトコンベヤ
2 ヘッドプーリ装置
2a ヘッドプーリ
3 コンベヤベルト
10 前処理設備
11 破砕機
11b 出口部
12 フィーダコンベヤ
13 ホッパ
20 コンベヤテール部
21 テールプーリ
30 台車部
100、200 テールプーリ装置
110 中間搬送部
EM 掘削ズリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6