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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-28
(45)【発行日】2023-01-12
(54)【発明の名称】光変調素子、及びそれを含む電子機器
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/01 20060101AFI20230104BHJP
   G02F 1/29 20060101ALI20230104BHJP
   G01N 21/49 20060101ALI20230104BHJP
   G01S 7/481 20060101ALI20230104BHJP
【FI】
G02F1/01 A
G02F1/29
G01N21/49 C
G01S7/481 A
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2018160465
(22)【出願日】2018-08-29
(65)【公開番号】P2019045860
(43)【公開日】2019-03-22
【審査請求日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】10-2017-0113350
(32)【優先日】2017-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】李 昌 範
(72)【発明者】
【氏名】朴 晶 鉉
(72)【発明者】
【氏名】崔 秉 龍
【審査官】坂上 大貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-081154(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0176651(US,A1)
【文献】特開2012-028765(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0090221(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0302625(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0153528(US,A1)
【文献】特開2012-069612(JP,A)
【文献】特開2010-145521(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105739211(CN,A)
【文献】国際公開第2017/135430(WO,A1)
【文献】L. Kang et al.,"A vanadium dioxide integrated hybird metamaterial with electrically driven multifunctional control",2017 IEEE International Symposium on Antennas and Propagation & USNC/URSI National Radio Science Meeting,米国,IEEE,2017年,pp. 871-872
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00-1/125
1/21-7/00
G01S 7/48-7/51
17/00-17/95
G01N 21/00-21/01
21/17-21/61
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属層と、
前記金属層上に配置され、印加電圧に依存する複数の抵抗状態を有する可変抵抗物質層と、
前記可変抵抗物質層上に配置され、サブ波長の形状寸法を有するナノ構造、及び伝導性物質を含むメタ表面層と、を含み、
前記可変抵抗物質層は、MOx(0<x)(Mは、Ni、Ta、Ni、Hf、Fe、W、MnまたはCoである)を含む、光変調素子。
【請求項2】
金属層と、
前記金属層上に配置され、印加電圧に依存する複数の抵抗状態を有する可変抵抗物質層と、
前記可変抵抗物質層上に配置され、サブ波長の形状寸法を有するナノ構造、及び伝導性物質を含むメタ表面層と、を含み、
前記可変抵抗物質層は、
印加電圧により、伝導性のナノフィラメントが形成されるTiOxを含む物質である、光変調素子。
【請求項3】
前記可変抵抗物質層は、
印加電圧により、前記伝導性のナノフィラメントの個数が調節される物質であることを特徴とする請求項2に記載の光変調素子。
【請求項4】
印加電圧により、前記可変抵抗物質層内に、前記Mからなる低抵抗領域と、前記MOx(0<x)からなる高抵抗領域とが形成されることを特徴とする請求項に記載の光変調素子。
【請求項5】
印加電圧により、前記低抵抗領域の面積が調節されることを特徴とする請求項に記載の光変調素子。
【請求項6】
前記可変抵抗物質層は、前記金属層に直接接触するように配置されることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の光変調素子。
【請求項7】
前記メタ表面層は、
サブ波長の形状寸法を有する複数の伝導性ナノアンテナを含むことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の光変調素子。
【請求項8】
前記複数の伝導性ナノアンテナは、前記可変抵抗物質層に直接接触するように配置されることを特徴とする請求項に記載の光変調素子。
【請求項9】
前記金属層は、
長手方向が第1方向であり、前記第1方向と交差する第2方向が反復配列され、互いに離隔されるように配置された複数の金属ラインを含むことを特徴とする請求項またはに記載の光変調素子。
【請求項10】
前記複数の伝導性ナノアンテナは、前記第1方向及び前記第2方向に沿って、二次元的に配列され、
前記複数の伝導性ナノアンテナのうち、前記第2方向に隣接した伝導性ナノアンテナは、互いに連結され、前記第1方向に沿って反復配列されて互いに離隔されるように配置される複数の伝導性ナノアンテナラインを形成することを特徴とする請求項に記載の光変調素子。
【請求項11】
前記可変抵抗物質層は、
前記第1方向及び第2方向に沿って、二次元的に離隔配列される複数の画素に区画され、
前記複数の画素は、前記複数の金属ラインと、前記複数の伝導性ナノアンテナラインとが交差する位置に配置されることを特徴とする請求項10に記載の光変調素子。
【請求項12】
前記複数の金属ラインそれぞれに印加される電気信号を制御する第1信号制御部と、
前記複数の伝導性ナノアンテナラインそれぞれに印加される電気信号を制御する第2信号制御部と、をさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の光変調素子。
【請求項13】
前記メタ表面層は、
伝導性物質層と、
前記伝導性物質層上に配置され、サブ波長の形状寸法を有する複数の誘電体ナノアンテナと、を含むことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の光変調素子。
【請求項14】
前記伝導性物質層は、前記可変抵抗物質層に直接接触するように配置されることを特徴とする請求項13に記載の光変調素子。
【請求項15】
前記金属層は、
長手方向が第1方向であり、前記第1方向と交差する第2方向に沿って反復配列され、互いに離隔されるように配置された複数の金属ラインを含むことを特徴とする請求項13または14に記載の光変調素子。
【請求項16】
前記伝導性物質層は、
長手方向が前記第2方向であり、前記第1方向に沿って反復配列され、互いに離隔されるように配置された複数の伝導性ラインを含むことを特徴とする請求項15に記載の光変調素子。
【請求項17】
前記可変抵抗物質層は、
前記第1方向及び第2方向に沿って、二次元的に離隔配列される複数の画素に区画され、
前記複数の画素は、前記複数の金属ラインと、前記複数の伝導性ラインとが交差する位置に配置されることを特徴とする請求項16に記載の光変調素子。
【請求項18】
前記複数の金属ラインそれぞれに印加される電気信号を制御する第1信号制御部と、
前記複数の伝導性ラインそれぞれに印加される電気信号を制御する第2信号制御部と、をさらに含むことを特徴とする請求項17に記載の光変調素子。
【請求項19】
光源と、
前記光源からの光が被写体に向かうようにステアリングする請求項1~18のいずれか1項に記載の光変調素子と、
前記光変調素子でステアリングされ、前記被写体に照射された後、前記被写体で反射される光を受信するセンサと、を含むライダー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射光を変調する光変調素子に関する。
【背景技術】
【0002】
入射光の透過/反射、偏光、位相、強度、経路などを変更する光学素子は、多様な光学装置で活用される。また、光学システム内において、所望の方式で前述の性質を制御するために、多様な構造の光変調器が提示されている。
【0003】
そのような例として、光学的異方性を有する液晶(liquid crystal)、光遮断/反射要素の微小機械的動きを利用するMEMS(micro electro mechanical system)構造などが、一般的な光変調器に汎用されている。そのような光変調器は、その駆動方式の特性上、動作応答時間が数μs以上と遅い。
【0004】
最近では、メタ構造(meta structure)を光変調器に適用する試みがある。該メタ構造は、入射光の波長より小さい数値が、厚み、パターンまたは周期などに適用された構造である。所望の多様な形態への光変調のためには、位相変調範囲の増大、調節容易性などの性能が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2012/0013962号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、所望の位相プロファイルを形成し、多様な形態に光を変調することができる光変調素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一類型によれば、金属層と、前記金属層上に配置され、印加電圧に依存する複数の抵抗状態を有する可変抵抗物質層と、前記可変抵抗物質層上に配置され、サブ波長の形状寸法を有するナノ構造、及び伝導性物質を含むメタ表面層と、を含む光変調素子が提供される。
【0008】
前記可変抵抗物質層は、印加電圧により、伝導性のナノフィラメント(nano-filament)が形成される物質でもある。
【0009】
前記可変抵抗物質層は、印加電圧により、前記伝導性のナノフィラメントの個数及び大きさのうち少なくとも一つが調節される物質でもある。
【0010】
前記可変抵抗物質層は、MO(0<x)(Mは、Ni、Ta、Ni、Hf、Fe、W、MnまたはCoである)を含んでもよい。
【0011】
印加電圧により、前記可変抵抗物質層内に、Mからなる低抵抗領域、及びMO(0<x)からなる高抵抗領域が形成される。
【0012】
印加電圧により、前記低抵抗領域の面積が調節される。
【0013】
前記可変抵抗物質層は、前記金属層に直接接触されるようにも配置される。
【0014】
前記メタ表面層は、サブ波長の形状寸法を有する複数の伝導性ナノアンテナを含んでもよい。
【0015】
前記複数の伝導性ナノアンテナは、前記可変抵抗物質層に直接接触するようにも配置される。
【0016】
前記金属層は、長手方向が第1方向であり、前記第1方向と交差する第2方向が反復配列され、互いに離隔されるように配置された複数の金属ラインを含んでもよい。
【0017】
前記複数の伝導性ナノアンテナは、前記第1方向及び前記第2方向に沿って、二次元的に配列され、前記複数の伝導性ナノアンテナのうち、前記第2方向に隣接した伝導性ナノアンテナは、互いに連結され、前記第1方向に沿って反復配列されて互いに離隔されるように配置される複数の伝導性ナノアンテナラインを形成することができる。
【0018】
前記可変抵抗物質層は、前記第1方向及び第2方向に沿って、二次元的に離隔配列される複数の画素に区画され、前記複数の画素は、前記複数の金属ラインと、前記複数の伝導性ナノアンテナラインとが交差する位置にも配置される。
【0019】
前記光変調素子は、前記複数の金属ラインそれぞれに印加される電気信号を制御する第1信号制御部と、前記複数の伝導性ナノアンテナラインそれぞれに印加される電気信号を制御する第2信号制御部と、をさらに含んでもよい。
【0020】
前記メタ表面層は、伝導性物質層と、前記伝導性物質層上に配置され、サブ波長の形状寸法を有する複数の誘電体ナノアンテナと、を含んでもよい。
【0021】
前記伝導性物質層は、前記可変抵抗物質層に直接接触するようにも配置される。
【0022】
前記金属層は、長手方向が第1方向であり、前記第1方向と交差する第2方向に沿って反復配列され、互いに離隔されるように配置された複数の金属ラインを含んでもよい。
【0023】
前記伝導性物質層は、長手方向が前記第2方向であり、前記第1方向に沿って反復配列され、互いに離隔されるように配置された複数の伝導性ラインを含んでもよい。
【0024】
前記可変抵抗物質層は、前記第1方向及び第2方向に沿って、二次元的に離隔配列される複数の画素に区画され、前記複数の画素は、前記複数の金属ラインと、前記複数の伝導性ラインとが交差する位置にも配置される。
【0025】
前記光変調素子は、前記複数の金属ラインそれぞれに印加される電気信号を制御する第1信号制御部と、前記複数の伝導性ラインそれぞれに印加される電気信号を制御する第2信号制御部と、をさらに含んでもよい。
【0026】
また、一類型によれば、光源と、前記光源からの光が被写体に向かうようにステアリング(steering)する前述のいずれか1つの光変調素子と、前記光変調素子でステアリングされ、前記被写体に照射された後、前記被写体で反射される光を受信するセンサと、を含むライダー(lidar)装置が提供される。
【発明の効果】
【0027】
本発明の光変調素子は、印加電圧に依存する複数の抵抗状態を有し、各抵抗状態によって屈折率が変わる可変抵抗物質層を採用し、迅速な応答速度で入射光の位相変化幅を多様化させることができる。
【0028】
本発明の光変調素子は、二次元アレイ構造を採用し、所望の位相プロファイルを形成することができ、多様な光学性能を示すことができる。
【0029】
本発明の光変調素子は、前述の光学能を活用する多様な電子機器にも採用される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】一実施形態による光変調素子の概略的な構成を示す断面図である。
図2A】光変調素子に具備される伝導性ナノアンテナの例示的な形状を示す図面である。
図2B】光変調素子に具備される伝導性ナノアンテナの例示的な形状を示す図面である。
図2C】光変調素子に具備される伝導性ナノアンテナの例示的な形状を示す図面である。
図3A図1の光変調素子に具備される可変抵抗物質層が、印加電圧により、伝導性ナノフィラメントが形成される物質からなることを例示的に示す図面である。
図3B図1の光変調素子に具備される可変抵抗物質層が、印加電圧により、伝導性ナノフィラメントが形成される物質からなることを例示的に示す図面である。
図3C図1の光変調素子に具備される可変抵抗物質層が、印加電圧により、伝導性ナノフィラメントが形成される物質からなることを例示的に示す図面である。
図4A図1の光変調素子に具備される可変抵抗物質層が、印加電圧により、低抵抗領域の面積が増大する物質からなることを例示的に示す図面である。
図4B図1の光変調素子に具備される可変抵抗物質層が、印加電圧により、低抵抗領域の面積が増大する物質からなることを例示的に示す図面である。
図4C図1の光変調素子に具備される可変抵抗物質層が、印加電圧により、低抵抗領域の面積が増大する物質からなることを例示的に示す図面である。
図5図1の光変調素子に具備される可変抵抗物質層が、印加電圧により、位相変調特性が調節されることを示す電算模写グラフである。
図6図1の光変調素子に具備される可変抵抗物質層が、印加電圧により、位相変調特性が調節されることを示す電算模写グラフである。
図7図1の光変調素子に具備される可変抵抗物質層が、印加電圧により、位相変調特性が調節されることを示す電算模写グラフである。
図8】他の実施形態による光変調素子の概略的な構成を示す斜視図である。
図9図8の光変調素子に電気信号を印加する回路構成を概略的に示す平面図である。
図10】さらに他の実施形態による光変調素子の概略的な構成を示す斜視図である。
図11】さらに他の実施形態による光変調素子の概略的な構成を示す斜視図である。
図12】さらに他の実施形態による光変調素子の概略的な構成を示す斜視図である。
図13図12の光変調素子に電気信号を印加する回路構成を概略的に示す平面図である。
図14】さらに他の実施形態による光変調素子の概略的な構成を示す斜視図である。
図15】一実施形態によるライダー装置の概略的な構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付された図面を参照し、本発明の望ましい実施形態について詳細に説明する。以下の図面において、同一参照符号は、同一構成要素を指し、図面上において、各構成要素の大きさは、説明の明瞭さ及び便宜さのために誇張されてもいる。一方、以下で説明される実施形態は、単に例示的なものに過ぎず、そのような実施形態から、多様な変形が可能である。
【0032】
以下において、「上部」あるいは「上」と記載されたところは、接触して真上にあるものだけではなく、非接触で上にあるものも含まれる。
【0033】
第1、第2のような用語は、多様な構成要素の説明に使用されるが、該構成要素は、用語によって限定されるものではない。該用語は、1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的のみに使用される。
【0034】
単数の表現は、文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。また、ある部分がある構成要素を「含む」というとき、それは、特別に反対となる記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいということを意味する。
【0035】
また、明細書に記載された「…部」、「モジュール」というような用語は、少なくとも1つの機能や動作を処理する単位を意味し、それらは、ハードウェアまたはソフトウェアによって具現されるか、あるいはハードウェアとソフトウェアとの結合によっても具現される。
【0036】
図1は、一実施形態による光変調素子100の概略的な構成を示す断面図である。図2A図2B及び図2Cは、図1の光変調素子100に具備される伝導性ナノアンテナ150の例示的な形状を示す。
【0037】
光変調素子100は、入射光Lを所定変調光Lに変調することにより、金属層110、金属層110上に配置される可変抵抗物質層130、及び可変抵抗物質層130上に配置されるメタ表面層MSを含む。
【0038】
メタ表面層MSは、サブ波長(sub-wave length)の形状寸法を有するナノ構造の複数の伝導性ナノアンテナ150を含む。図面においては、便宜上、1つの伝導性ナノアンテナ150を図示している。ここで、該サブ波長は、光変調素子100が変調しようとする入射光Lの波長より小さい寸法を意味する。伝導性ナノアンテナ150の形状を定義する寸法、例えば、幅w及び厚みhのうち少なくともいずれか一つは、入射光Lの波長より小さい。
【0039】
伝導性ナノアンテナ150は、サブ波長形状寸法を含む多様な形状を有することができる。円柱形状、楕円柱形状、多角柱形状を有することができ、非対称的な形状を有することできる。
【0040】
図2Aに図示されているように、断面が正方形である四角柱形状を有することができ、図2Bに図示されているように、断面が十字形である柱形状を有することができる。または、図2Cに図示されているように、円柱形状を有することができる。図示された形状は、例示的なものであり、それらに限定されるものではない。
【0041】
伝導性ナノアンテナ150を形成する伝導性物質としては、表面プラズモン励起(surface Plasmon excitation)が起こる導電性が高い金属物質が採用される。例えば、Cu、Al、Ni、Fe、Co、Zn、Ti、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、金(Au)のうちから選択された少なくともいずれか一つが採用され、それらのうちいずれか一つを含む合金からなってもよい。また、グラフェン(graphene)のように、伝導性にすぐれる二次元物質、または伝導性酸化物が採用されてもよい。
【0042】
伝導性ナノアンテナ150は、所定波長帯域の光の位相を変調することができる。そのような機能は、伝導性物質と誘電体物質との境界で起こる表面プラズモン共鳴(surface Plasmon resonance)によるものであると知られており、伝導性ナノアンテナ150の細部的な形状、可変抵抗物質層130が示す屈折率値により、共振波長、位相変調の程度が調節される。
【0043】
可変抵抗物質層130は、印加電圧に依存する複数の抵抗状態を有する物質からなる。可変抵抗物質層130は、複数の抵抗状態でそれぞれ示す屈折率が異なり、それは、伝導性ナノアンテナ150の挙動に影響を与える。すなわち、可変抵抗物質層130の抵抗状態により、光変調素子100が、入射光Lの位相を変調する程度が調節される。
【0044】
可変抵抗物質層130は、印加電圧により、伝導性ナノフィラメント(nano-filament)が形成される物質からなってもよい。そのような物質は、ナノフィラメンタリ(nano-filamentary)物質とも称される。該ナノフィラメンタリ物質は、物質に固有な特定値の電圧が印加されるとき、伝導性を有するナノフィラメントが形成される物質である。該ナノフィラメンタリ物質は、例えば、TiOを含んでもよい。金属層110と伝導性ナノアンテナ150とが伝導性ナノフィラメントで連結された状態を低抵抗状態と見て、伝導性ナノフィラメントで連結されていない状態を高抵抗状態と見ることができる。低抵抗状態の個数は、複数個にもなる。すなわち、印加電圧により、伝導性ナノフィラメントの個数や大きさが調節され、それにより、複数の抵抗状態を有することができる。
【0045】
可変抵抗物質層130は、また、印加電圧により、低抵抗領域が形成される物質からなってもよい。該印加電圧により、低抵抗領域の面積が増大し、互いに異なる複数の抵抗状態を有することができる。可変抵抗物質層130は、金属酸化物からもなり、例えば、複数の酸化状態を有することができる金属の酸化物からなってもよい。可変抵抗物質層130は、MO(0<x)を含んでもよく、Mは、Ni、Ta、Ni、Hf、Fe、W、MnまたはCoを含んでもよい。
【0046】
金属層110は、伝導性ナノアンテナ150との間に電圧を印加することができ、また、光を反射するミラー層として機能させることができる。金属層110の材質は、そのような機能を遂行することができる多様な金属材質、例えば、Cu、Al、Ni、Fe、Co、Zn、Ti、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、金(Au)のうちから選択された少なくともいずれか一つを含んでもよい。
【0047】
図3Aないし図3Cは、図1の光変調素子100に具備される可変抵抗物質層130が、印加電圧により、伝導性ナノフィラメントが形成される物質からなることを例示的に示す。
【0048】
図3Aを参照すれば、伝導性ナノアンテナ150と金属層110との間に、Vの電圧が印加されるとき、可変抵抗物質層130には、伝導性ナノフィラメントが形成されず、絶縁体のような高抵抗状態を有することができる。電圧Vは、0、または伝導性ナノフィラメント形成のための臨界電圧より低い値でもある。
【0049】
図3Bを参照すれば、伝導性ナノアンテナ150と金属層110との間に、Vより大きいVの電圧が印加されるとき、可変抵抗物質層130には、伝導性ナノフィラメント131が形成される。伝導性ナノフィラメント131は、伝導性ナノアンテナ150と金属層110との伝導経路を形成し、それにより、可変抵抗物質層130は、伝導性ナノフィラメント131が形成されていない場合より低抵抗状態になる。低抵抗状態において、可変抵抗物質層130の屈折率は、伝導性ナノフィラメント131が形成されていない場合の屈折率と異なる値を示す。
【0050】
図3Cを参照すれば、伝導性ナノアンテナ150と金属層110との間に、Vより大きいVの電圧が印加されるとき、可変抵抗物質層130には、伝導性ナノフィラメント131が形成され、その個数は、印加電圧がVである場合より多くなる。伝導性ナノフィラメント131は、伝導性ナノアンテナ150と金属層110との伝導経路を形成し、そのような伝導経路が、印加電圧がVである場合より多くなるために、可変抵抗物質層130は、印加電圧がVである場合より低抵抗状態になる。すなわち、印加電圧がVである場合と異なる低抵抗状態を示し、異なる屈折率値を有することになる。
【0051】
図3Aないし図3Cにおいて、印加電圧により、可変抵抗物質層130に形成される伝導性ナノフィラメント131の個数が変わることを例示したが、それらに限定されるものではなく、伝導性ナノフィラメント131の大きさ、例えば、その厚みは、印加電圧によって変わる。
【0052】
図4Aないし図4Cは、図1の光変調素子100に具備される可変抵抗物質層130が、印加電圧により、低抵抗領域の面積が増大する物質からなることを例示的に示す。
【0053】
可変抵抗物質層130は、金属酸化物からもなり、例えば、複数の酸化状態を有することができる金属の酸化物からなってもよい。可変抵抗物質層130は、MO(0<x)を含んでもよく、Mは、Ni、Ta、Ni、Hf、Fe、W、MnまたはCoを含んでいてもよい。
【0054】
可変抵抗物質層130がMO(0<x)からなるとき、印加電圧により、可変抵抗物質層130には、Mからなる低抵抗領域、及びMO(0<x)からなる高抵抗領域が形成される。低抵抗領域の面積は、印加電圧によっても調節される。
【0055】
図4Aを参照すれば、可変抵抗物質層130がMO(0<x)からなり、伝導性ナノアンテナ150と金属層110との間に、Vの電圧が印加されるとき、可変抵抗物質層130には、低抵抗領域が形成されず、絶縁体のような高抵抗状態にもなる。電圧Vは、0、またはMからなる高抵抗領域の形成のための臨界電圧より低い値でもある。
【0056】
図4Bを参照すれば、伝導性ナノアンテナ150と金属層110との間に、Vより大きいVの電圧が印加されるとき、可変抵抗物質層130には、低抵抗領域132が形成される。低抵抗領域132は、例えば、金属物質であるMを含むことができる。高抵抗領域134は、MO(0<x)を含むことができる。ただし、それに限定されるものではなく、低抵抗領域132は、高抵抗領域134とx値が異なり、相対的に低抵抗を示すMO(0<x)を含むことができる。
【0057】
低抵抗領域132は、伝導性ナノアンテナ150と金属層110との伝導経路を形成し、それにより、可変抵抗物質層130は、低抵抗領域132が形成されていない場合より抵抗値が低い低抵抗状態になる。低抵抗状態において、可変抵抗物質層130の屈折率は、低抵抗領域132が形成されていない場合の屈折率と異なる値を示す。
【0058】
図4Cを参照すれば、伝導性ナノアンテナ150と金属層110との間に、Vより大きいVの電圧が印加されるとき、可変抵抗物質層130には、低抵抗領域132が形成され、その大きさが、印加電圧がVである場合より大きくなる。低抵抗領域132は、伝導性ナノアンテナ150と金属層110との伝導経路を形成し、そのような伝導経路の幅が、印加電圧がVである場合より広くなるために、可変抵抗物質層130は、印加電圧がVである場合より低抵抗状態になる。すなわち、印加電圧がVである場合と異なる低抵抗状態を示し、異なる屈折率値を有することになる。
【0059】
前述のように、複数の抵抗状態を示すことができる可変抵抗物質層130は、複数の状態(multi-state)を示す物質であり、経時的にも、設定された状態が好ましく維持されると知られている。また、設定された状態は、他の信号の印加によって容易に反転される。すなわち、可変抵抗物質層130は、他の電圧が印加されるまで設定された抵抗状態が維持され、また、印加電圧により、抵抗状態が変化するスイッチング時間が迅速である。例えば、ナノフィラメンタリ物質は、抵抗状態が変化するスイッチング時間が、ナノ秒(nano-second)単位でもある。従って、光変調素子100に可変抵抗物質層130を採用することにより、入射光の位相変調を容易にすることができる。
【0060】
図5ないし図7は、図1の光変調素子100に具備される可変抵抗物質層130が、印加電圧により、位相変調特性が調節されるところを示す電算模写グラフである。
【0061】
電算模写において、可変抵抗物質層130が、印加電圧により、図4Aないし図4Cで例示されているような挙動を有すると仮定し、低抵抗領域132は、Tiに、高抵抗領域134は、TiOに設定した。伝導性ナノアンテナ150と金属層110は、Auに設定した。
【0062】
図5は、低抵抗領域の幅が、0nm、5nm、10nm、15nm、20nmである場合について、入射光の波長による反射率を示している。
【0063】
反射率が最小になる波長帯域が、共振波長帯域であり、すなわち、光変調素子100は、そのような波長帯域の光を変調することができる。該共振波長帯域は、伝導性ナノアンテナ150の形状に主に依存し、従って、印加電圧により、可変抵抗物質層130に形成される低抵抗領域132の幅が、0~20nm間の値を有するとき、共振波長帯域は、概して一定に示されている。
【0064】
図6は、低抵抗領域132の幅が、0nm、5nm、10nm、15nm、20nmである場合について、入射光の波長による反射位相を示す。図7は、低抵抗領域132の幅による位相変化範囲を示すグラフである。
【0065】
図6のグラフを参照すれば、図5に示された共振波長帯域、例えば、約1,270nmの波長の光について、低抵抗領域132の幅が、0nm、5nm、10nm、15nm、20nmと変わるにつれ、反射位相は、急激な変化を示している。それにより、所定波長帯域の光の位相を、印加電圧により、異なるように変調することができるということが分かる。
【0066】
図7は、共振波長帯域、例えば、約1,270nmの波長の光に対する位相変化範囲を示しており、約200゜ほどの位相変化幅を具現することができるということが分かる。
【0067】
前述の光変調素子100は、広い位相変化幅を具現することができ、そのような位相変化幅の具現において、可変抵抗物質層130の全領域が、印加電圧により、屈折率が変化する有効領域になる点において、光変調素子100の性能制御が容易である。
【0068】
図8は、他の実施形態による光変調素子200の概略的な構成を示す斜視図である。図9は、図8の光変調素子200に電気信号を印加する回路構成を概略的に示す平面図である。
【0069】
光変調素子200は、金属層210、金属層210上に配置された可変抵抗物質層230、可変抵抗物質層230上に配置され、複数の伝導性ナノアンテナ251を具備するメタ表面層MSを含む。
【0070】
金属層210は、複数の金属ライン211を含む。複数の金属ライン211は、長手方向が、第1方向A1であり、第1方向A1と交差する第2方向A2に沿って互いに離隔されるように反復配列される。第1方向A1、第2方向A2は、互いに直交する方向でもあるが、それに限定されるものではない。
【0071】
複数の伝導性ナノアンテナ251は、第1方向A1及び第2方向A2に沿って、二次元的に配列される。複数の伝導性ナノアンテナ251において、第2方向A2に隣接した伝導性ナノアンテナは、互いに連結され、伝導性ナノアンテナライン250を形成する。すなわち、複数の伝導性ナノアンテナライン250が、第1方向A1に沿って互いに離隔されるように、反復的に配置される。そのような配列により、同じ伝導性ナノアンテナライン250に含まれる複数の伝導性ナノアンテナ251には、同じ電気信号が印加される。
【0072】
複数の伝導性ナノアンテナ251は、図2Bに示された形状、すなわち、十字型の断面形状を有するように図示されているが、それは、例示的なものであり、それに限定されるものではない。図2A図2Cのような形状、または変形された他の形状が、複数の伝導性ナノアンテナ251にも適用される。
【0073】
可変抵抗物質層230は、第1方向A1及び第2方向A2に沿って、二次元的に離隔配列される複数の画素PXに区画される。複数の画素PXは、複数の金属ライン211と、複数の伝導性ナノアンテナライン250とが交差する位置に配置される。複数の金属ライン211と、複数の伝導性ナノアンテナライン250とに印加される電気信号により、各画素PXの抵抗状態が調節される。複数の画素PXは、互いに異なる屈折率を示すことができ、それに対応する各位置の伝導性ナノアンテナ251が入射光を変調させる程度が調節される。
【0074】
図9に図示されているように、第1信号制御部270により、複数の金属ライン211それぞれに印加される電気信号が制御される。また、第2信号制御部280により、複数の伝導性ナノアンテナライン250(金属ナノアンテナライン)それぞれに印加される電気信号が制御される。
【0075】
第1信号制御部270は、幅が△tであり、大きさがVであるパルス状の電圧信号を、複数の伝導性ナノアンテナライン250に、順次に印加することができる。
【0076】
第2信号制御部280は、幅が△tであり、大きさがVであるパルス状の電圧信号を、複数の伝導性ナノアンテナライン250に、順次に印加することができる。
【0077】
値、V値は、各画素PXで具現しようとする抵抗状態によって決まり、それは、光変調素子200で具現しようとする位相変調プロファイルを考慮した各画素PXでの屈折率変化などを考慮して決められる。
【0078】
可変抵抗物質層230は、マルチステート(multi-state)が維持される性質を有するので、パルス状の電気信号が印加された後、次の電気信号が印加されるまで、印加された電気信号によって形成された画素PXの抵抗状態は維持される。従って、複数の伝導性ナノアンテナ251と可変抵抗物質層230との間、または可変抵抗物質層230と金属ライン211との間に、各画素PXの抵抗状態維持のための別途のスイッチ素子、例えば、トランジスタまたはダイオードなどの構成が具備される必要がない。すなわち、可変抵抗物質層230と金属層210は、直接接触するように配置され、また、伝導性ナノアンテナ251と可変抵抗物質層230とが直接接触するようにも配置される。
【0079】
図10は、さらに他の実施形態による光変調素子201の概略的な構成を示す斜視図である。
【0080】
光変調素子201は、金属層210、金属層210上に配置された可変抵抗物質層231)、可変抵抗物質層231上に配置され、複数の伝導性ナノアンテナ251を具備するメタ表面層MSを含む。
【0081】
金属層210は、複数の金属ライン211を含む。複数の金属ライン211は、長手方向が、第1方向A1であり、第1方向A1と交差する第2方向A2に沿って互いに離隔されるように反復配列される。第1方向A1、第2方向A2は、互いに直交する方向でもあるし、ただし、それに限定されるものではない。
【0082】
複数の伝導性ナノアンテナ251は、第1方向A1及び第2方向A2に沿って、二次元的に配列される。複数の伝導性ナノアンテナ251において、第2方向A2に隣接した伝導性ナノアンテナは、互いに連結され、伝導性ナノアンテナライン250を形成する。すなわち、複数の伝導性ナノアンテナライン250が、第1方向A1に沿って互いに離隔されるように反復的に配置される。そのような配列により、同じ伝導性ナノアンテナライン250に含まれる複数の伝導性ナノアンテナ251には、同じ電気信号が印加される。
【0083】
本実施形態の可変抵抗物質層231は、複数の画素PXを形成する領域が、人為的に区画されていない点において、図8の光変調素子200と違いがある。
【0084】
可変抵抗物質層231は、図示されているように、複数の金属ライン211を全体的に覆う層によって形成され、複数の伝導性ナノアンテナライン250と、複数の金属ライン211とが交差する地点に対応する可変抵抗物質層231の領域に、画素PXが形成されるということが分かる。
【0085】
図10の光変調素子201にも、図9のような形態に、複数の伝導性ナノアンテナライン250と、複数の金属ライン211とに電気信号が印加される。可変抵抗物質層231の領域が、図8のような形態に区画されないとしても、互いに交差する伝導性ナノアンテナライン250と金属ライン211とに印加される電気信号により、所定領域の抵抗状態が互いに独立して制御され、所望の位相プロファイルが具現される。
【0086】
図11は、さらに他の実施形態による光変調素子300の概略的な構成を示す斜視図である。
【0087】
光変調素子300は、入射光Lを所定変調光Lに変調することにより、金属層310、金属層310上に配置される可変抵抗物質層330、及び可変抵抗物質層330上に配置されるメタ表面層MSを含む。
【0088】
メタ表面層MSは、伝導性物質層340、伝導性物質層340上に配置され、サブ波長の形状寸法を有する複数の誘電体ナノアンテナ350を含む。図面においては、便宜上、1つの誘電体kを図示している。ここで、該サブ波長は、光変調素子300が変調しようとする入射光Lの波長より小さい寸法を意味する。誘電体ナノアンテナ350の形状を定義する寸法、例えば、幅w及び厚みhのうち少なくともいずれか一つは、入射光Lの波長より小さい。
【0089】
誘電体ナノアンテナ350は、誘電体材質からなり、所定波長帯域の光の位相を変調することができる。そのような機能は、誘電体材質内に形成される変位電流(displacement current)によるMie resonanceによるのである。誘電体ナノアンテナ350の細部的な形状、可変抵抗物質層330が示す屈折率値により、共振波長、位相変調の程度が調節される。誘電体ナノアンテナ350は、可変抵抗物質層330の屈折率より大きい屈折率を有することができる。
【0090】
誘電体ナノアンテナ350は、サブ波長形状寸法を含む多様な形状を有することができる。円柱形状、楕円柱形状、多角柱形状を有することができ、非対称的な形状を有することもできる。図2Aないし図2Cで例示した伝導性ナノアンテナ150の形状が採用されてもよい。
【0091】
伝導性物質層340は、金属層310との間に電圧を印加し、可変抵抗物質層330の抵抗状態を制御するように設けられる。伝導性物質層340は、透明伝導性酸化物、例えば、ITO(indium tin oxide)、IZO(indium zinc oxide)、AZO(aluminum doped zinc oxide)またはGZO(gallium zinc oxide)を含んでもよい。伝導性物質層340は、可変抵抗物質層330に直接接触するようにも配置される。
本実施形態の光変調素子300は、メタ表面層MSが、伝導性物質層340と誘電体ナノアンテナ350とを含む点で、図1の光変調素子100と違いがあって、残りの構成は、実質的に同一である。
【0092】
すなわち、可変抵抗物質層330は、印加電圧に依存する複数の抵抗状態を有する物質である。可変抵抗物質層330は、図3Aないし図3Cで例示されているように、印加電圧により、伝導性ナノフィラメントが形成される物質からなってもよい。または、可変抵抗物質層330は、図4Aないし図4Cに例示されているように、MO(0<x)(Mは、Ni、Ta、Ni、Hf、Fe、W、MnまたはCoである)を含み、印加電圧により、可変抵抗物質層330に、Mからなる低抵抗領域、及びMO(0<x)からなる高抵抗領域が形成される物質を含んでいてもよい。
【0093】
金属層310は、伝導性物質層340との間に電圧を印加することができ、また、光を反射するミラー層としても機能することができる。金属層110の材質は、そのような機能を遂行することができる多様な金属材質を含んでもよい。
【0094】
図12は、さらに他の実施形態による光変調素子400の概略的な構成を示す斜視図であり、図13は、図12の光変調素子400に電気信号を印加する回路構成を概略的に示す平面図である。
【0095】
光変調素子400は、金属層410、金属層410上に配置された可変抵抗物質層430、可変抵抗物質層430上に配置され、伝導性物質層340と、複数の誘電体ナノアンテナ450と、を具備するメタ表面層MSを含む。
【0096】
金属層410は、複数の金属ライン411を含む。複数の金属ライン411は、長手方向が、第1方向A1であり、第1方向A1と交差する第2方向A2に沿って互いに離隔されるように反復配列される。第1方向A1、第2方向A2は、互いに直交する方向でもあるし、ただし、それに限定されるものではない。
【0097】
伝導性物質層440は、長手方向が、第2方向A2であり、第1方向A1に沿って反復配列され、互いに離隔されるように配置された複数の伝導性ライン441を含む。
【0098】
複数の誘電体ナノアンテナ450は、第1方向A1及び第2方向A2に沿って、二次元的に配列される。複数の誘電体ナノアンテナ450は、第2方向A2に隣接した誘電体ナノアンテナ450が互いに連結されているように図示されているが、それは、例示的なものであり、それに限定されるものではない。複数の誘電体ナノアンテナ450は、第1方向A1及び第2方向A2に沿って互いに離隔されるようにも配列される。
【0099】
可変抵抗物質層430は、第1方向A1及び第2方向A2に沿って、二次元的に離隔配列される複数の画素PXに区画される。複数の画素PXは、複数の金属ライン411と、複数の伝導性ライン441とが交差する位置に配置される。複数の金属ライン411と、複数の伝導性ライン441とに印加される電気信号により、各画素PXの抵抗状態が調節される。複数の画素PXは、互いに異なる屈折率を示すことができ、それに対応する各位置の誘電体ナノアンテナ450が入射光を変調させる程度が調節される。
【0100】
図13に図示されているように、第1信号制御部470により、複数の金属ライン411それぞれに印加される電気信号が制御される。また、第2信号制御部480により、複数の伝導性ライン441それぞれに印加される電気信号が制御される。
【0101】
第1信号制御部470は、幅が△tであり、大きさがVであるパルス状の電圧信号を複数の金属ライン411に順次に印加することができる。
【0102】
第2信号制御部480は、幅が△tであり、大きさがVであるパルス状の電圧信号を複数の伝導性ライン441に順次に印加することができる。
【0103】
、Vの値は、各画素PXで具現しようとする抵抗状態によって決まり、それは、光変調素子400で具現しようとする位相変調プロファイルを考慮した各画素PXでの屈折率変化程度を考慮して決められる。
【0104】
可変抵抗物質層430は、マルチステートが維持される性質を有するので、パルス状の電気信号が印加された後、次の電気信号が印加されるまで、印加された電気信号によって形成された画素PXの抵抗状態は、維持される。従って、伝導性ライン441と可変抵抗物質層430との間、または可変抵抗物質層430と金属ライン411との間に、各画素PXの抵抗状態維持のための別途のスイッチ素子、例えば、ダイオードなどの構成が具備される必要がない。すなわち、可変抵抗物質層430と金属層410は、直接接触するように配置され、また、伝導性物質層440と可変抵抗物質層430とが直接接触するようにも配置される。
【0105】
図14は、さらに他の実施形態による光変調素子401の概略的な構成を示す斜視図である。
【0106】
光変調素子401は、金属層410、金属層410上に配置された可変抵抗物質層431、可変抵抗物質層431上に配置され、伝導性物質層440と、複数の誘電体ナノアンテナ450と、を具備するメタ表面層MSを含む。
【0107】
金属層410は、複数の金属ライン411を含む。複数の金属ライン411は、長手方向が、第1方向A1であり、第1方向A1と交差する第2方向A2に沿って互いに離隔されるように反復配列される。第1方向A1、第2方向A2は、互いに直交する方向でもあるし、ただし、それに限定されるものではない。
【0108】
複数の誘電体ナノアンテナ450は、第1方向A1及び第2方向A2に沿って、二次元的に配列される。複数の誘電体ナノアンテナ450において、第2方向A2に隣接した誘電体ナノアンテナ450は、互いに連結されているように図示されているが、それは、例示的なものであり、それに限定されるものではない。複数の誘電体ナノアンテナ450は、第1方向A1及び第2方向A2に沿って互いに離隔されるように、反復的にも配置される。
【0109】
本実施形態の可変抵抗物質層431は、複数の画素PXのための領域が人為的に区画されていない点において、図12の光変調素子400と違いがある。
【0110】
可変抵抗物質層431は、図示されているように、複数の金属ライン411を全体的に覆う層によって形成され、複数の伝導性ライン441と複数の金属ライン411とが交差する地点に対応する可変抵抗物質層431の領域に、画素PXが形成されるということが分かる。
【0111】
図14の光変調素子401にも、図13のような形態で、複数の伝導性ライン441と、複数の金属ライン411とに電気信号が印加される。可変抵抗物質層431の領域が、図12のような形態に区画されないとしても、互いに交差する伝導性ライン441と、金属ライン411とに印加される電気信号により、所定領域の抵抗状態が互いに独立して制御され、それにより、所望の位相プロファイルが具現される。
【0112】
前述の光変調素子100,200,201,300,400,401は、所望の位相プロファイルを具現し、多様な光学能を示すことができるので、多様な光学装置に適用される。
【0113】
光変調素子100,200,201,300,400,401は、例えば、入射光を多様な方向に分岐するビームスプリッタとして適用され、またはビーム形状を整形するビーム整形器として適用され、光を所望の方向に照準するビームステアリング素子として適用される。それ以外にも、屈折力がある光学レンズ、可変焦点のような機能を遂行する可変素子としても適用される。
【0114】
また、光変調素子100,200,201,300,400,401に具備される可変抵抗物質層は、所定電気信号によって形成された抵抗状態が、次の電気信号が印加されるまで維持されるので、トランジスタのような追加構成なしにも、多様な方向のビームステアリング、例えば、二次元方向のビームステアリングのための素子として活用可能である。
【0115】
図15は、実施形態によるライダー装置1000の概略的な構成を示すブロック図である。
【0116】
ライダー装置1000は、光を照射する光源1200、光源1200から照射された光を被写体OBJに向けるように照準する光変調素子1300、及び被写体OBJから反射された光を受信(センシング)するセンサ1500を含む。
【0117】
ライダー装置1000は、また、光変調素子1300での位相プロファイルを調節する制御部1400、センサ1500でセンシングされた信号を処理する信号処理部1700をさらに含んでもよい。
【0118】
光源1200は、被写体OBJの位置、形状の分析に使用する光を照射する。光源1200は、所定波長の光を生成、照射する光源を含んでもよい。光源1200は、被写体OBJの位置、形状分析に適する波長帯域の光、例えば、赤外線帯域波長の光を生成照射するLD(laser diode)、LED(light emitting diode)、SLD(super luminescent diode)などの光源を含んでもよい。光源1200は、複数の互いに異なる波長帯域の光を生成照射することもできる。光源1200は、パルス光または連続光を生成照射することができる。
【0119】
光変調素子1300は、入射光Lを所定変調光Lに変調することにより、前述の光変調素子100,200,201,300,400,401のうちいずれか一つ、またはそれらから変形された形態の構成を有することができる。光変調素子1300は、複数の抵抗状態を有する可変抵抗物質層を活用するので、所望の位相プロファイルを迅速な速度で具現することができる。また、光変調素子1300に具備される可変抵抗物質層は、前述のように、所定電気信号によって形成された抵抗状態が、次の電気信号が印加されるまで維持されるので、トランジスタのような追加構成なしに、多様な方向のビームステアリング、例えば、二次元方向のビームステアリングが可能である。
【0120】
光源1200と光変調素子1300との間、及び/または光変調素子1300と被写体OBJとの間には、他の光学部材、例えば、光源1200から照射された光の経路調節や波長分割のため、または追加的な変調のための部材がさらに配置されてもよい。
【0121】
センサ1500は、被写体OBJから反射される光をセンシングする光検出のための複数の光検出要素のアレイを含んでもよい。センサ1500は、複数の互いに異なる波長の光をセンシングすることができる光検出要素のアレイを含んでもよい。
【0122】
制御部1400は、光変調素子1300がビームステアリング機能を遂行する位相プロファイルを有するように、光変調素子1300への入力信号を制御することができる。光変調素子1300は、例えば、図9図13で例示されたような第1信号制御部及び第2信号制御部を含んでもよく、制御部1400は、光変調素子1300のステアリング方向が時系列的に調節され、被写体OBJをスキャンするように、光変調素子1300の第1信号制御部及び第2信号制御部を制御することができる。
【0123】
制御部1400は、それ以外にも、光源1200、センサ1500の動作制御を含み、ライダー装置1000の全般的な動作を制御することができる。例えば、制御部1400は、光源1200に対して、電源供給制御、オン/オフ制御、パルス波(PW)や連続波(CW)の発生制御などを行うことができる。また、制御部1400は、センサ1500に含まれる光検出要素それぞれに対する制御信号を印加することができ、信号処理部1700での演算に必要な制御信号を印加することができる。
【0124】
光変調素子1300は、二次元方向へのビームステアリングが可能であり、従って、被写体OBJを二次元方向に沿ってスキャンすることができる。被写体OBJをスキャンする間、被写体OBJから反射された反射光Lが、センサ1500からセンシングされる。センシングされた光信号は、信号処理部1700に伝達され、被写体OBJの存在するか否か、そして被写体OBJが存在する場合の位置、形状などの分析に使用される。
【0125】
信号処理部1700は、センサ1500から検出された光信号から、所定演算、例えば、光飛行時間(time off light)測定のための演算と、それによる被写体OBJの三次元形状判別とを遂行することができる。信号処理部1700においては、多様な演算方法を使用することができる。例えば、直接時間測定方法は、被写体OBJにパルス光を照射し、被写体に反射されて光が戻ってくる時間をタイマで測定して距離を求める。相関法(correlation)は、パルス光を被写体OBJに照射し、被写体OBJに反射されて戻ってくる反射光の明るさから、距離を測定する。位相遅延測定方法は、正弦波のような連続波(continuous wave)光を被写体OBJに照射し、被写体OBJに反射されて戻って来る反射光の位相差を感知し、距離に換算する方法である。
【0126】
ライダー装置1000は、また、信号処理部1700の前記演算に必要なプログラム及びその他データが保存されるメモリを含んでもよい。
【0127】
信号処理部1700は、演算結果、すなわち、被写体OBJの形状、位置に係わる情報を他のユニットに伝送することができる。例えば、ライダー装置1000が採用された自律駆動機器の駆動制御部、または警告システムなどに前述の情報が伝送される。
【0128】
ライダー装置1000は、前方物体に対する三次元情報をリアルタイムで獲得するセンサに活用され、自律駆動機器、例えば、無人自動車、自律走行車、ロボット、ドローンにも適用される。ライダー装置1000は、また、自律駆動機器だけではなく、ブラックボックスなどに適用され、イメージセンサだけで物体識別が困難である夜間に私は、後方の障害物判断のためにも適用される。
【0129】
前述の光変調素子は、図面に図示された実施形態を参照して説明されたが、それらは、例示的なものに過ぎず、当該分野で当業者であるならば、それらから多様な変形、及び均等な他の実施形態が可能であるという点を理解するであろう。従って、開示された実施形態は、限定的な観点ではなく、説明的な観点から考慮されなければならない。本発明の範囲は、前述の説明ではなく、特許請求の範囲に示されており、それと同等な範囲内にある全ての差異は、本発明に含まれたものであると解釈されなければならないのである。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明の、光変調素子、及びそれを含む電子機器は、例えば、ビームステアリング関連の技術分野に効果的に適用可能である。
【符号の説明】
【0131】
100,200,201,300,400,401,1300 光変調素子、
110,210,310,410 金属層、
130,230,231,330,430,431 可変抵抗物質層、
131 ナノフィラメント、
132 低抵抗領域、
134 高抵抗領域、
211,411 金属ライン、
250 伝導性ナノアンテナライン、
340,440 伝導性物質層、
441 伝導性ライン、
150,251 伝導性ナノアンテナ、
350,450 誘電体ナノアンテナ、
1000 ライダー装置、
MS メタ表面層。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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図15