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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-28
(45)【発行日】2023-01-12
(54)【発明の名称】ソケット
(51)【国際特許分類】
   H01R 33/76 20060101AFI20230104BHJP
   H01R 13/64 20060101ALI20230104BHJP
【FI】
H01R33/76 Z
H01R13/64
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018222263
(22)【出願日】2018-11-28
(65)【公開番号】P2020087785
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000208765
【氏名又は名称】株式会社エンプラス
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】砂子田 智
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-104986(JP,U)
【文献】実開平03-061587(JP,U)
【文献】実開平06-079156(JP,U)
【文献】特開2003-346998(JP,A)
【文献】特開2000-340321(JP,A)
【文献】特開平10-255943(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 33/76
H01R 13/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査部材が収容されるソケット本体と、前記ソケット本体に対して回動軸を中心に回動自在に支持されるカバーと、
前記カバーに連結され、前記カバーとともに回動することで前記被検査部材に接触する押圧部材と、
前記カバーと前記押圧部材との間に設けられ、前記押圧部材を前記カバーから離間する方向に付勢する複数の弾性体と、を備え、
前記複数の弾性体は、前記押圧部材を付勢する力が互いに等しく、
前記押圧部材は、前記カバーの下面と前記押圧部材の下面とが傾いた状態で前記被検査部材に平衡に接触し、
前記複数の弾性体は、前記カバーと前記押圧部材とを連結する連結部材よりも前記回動軸側に設けられる第1コイルばねと、前記連結部材よりも前記回動軸とは反対側に設けられ、前記第1コイルばねの径よりも大きい径を有する第2コイルばねを含む、
ソケット。
【請求項2】
前記第2コイルばねの自然長は、前記第1コイルばねの自然長よりも長い、
請求項に記載のソケット。
【請求項3】
前記第2コイルばねの線径は、前記第1コイルばねの線径と等しい、
請求項またはに記載のソケット。
【請求項4】
前記押圧部材が前記被検査部材に接触していない状態において、
前記第2コイルばねの長さは、前記第1コイルばねの長さよりも長い、
請求項のいずれか一項に記載のソケット。
【請求項5】
前記カバー部材が閉じた状態において、
前記第2コイルばねの長さは、前記第1コイルばねの長さと等しい、
請求項のいずれか一項に記載のソケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被検査部材と配線基板とを電気的に接続するためのソケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ICパッケージなどの被検査部材の試験(例えば、バーンイン試験)を行う際、被検査部材と配線基板とを電気的に接続するために、ソケットが用いられている。
【0003】
特許文献1には、ICパッケージが載置されるソケット本体と、ソケット本体に回動自在に取り付けられたカバーと、カバー側に設けられ、かつ、ICパッケージを押圧するプレッシャー部材と、プレッシャー部材を誘導するガイド部材と、を備えたソケットが記載されている。
【0004】
このソケットでは、ガイド部材によって、プレッシャー部材の姿勢を、ICパッケージの各位置を平衡に押圧する姿勢に誘導した後に、カバーによりプレッシャー部材を押圧し、プレッシャー部材によってICパッケージを押圧するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-255943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のソケットでは、カバーとプレッシャー部材との間に配置されるコイルスプリングの姿勢が不安定となり、プレッシャー部材によってICパッケージを平衡に押圧できないという問題があった。
【0007】
本開示の目的は、押圧部材によって被検査部材を平衡に押圧することができるソケットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係るソケットは、被検査部材が収容されるソケット本体と、前記ソケット本体に対して回動軸を中心に回動自在に支持されるカバーと、前記カバーに連結され、前記カバーとともに回動することで前記被検査部材に接触する押圧部材と、前記カバーと前記押圧部材との間に設けられ、前記押圧部材を前記カバーから離間する方向に付勢する複数の弾性体と、を備え、前記複数の弾性体は、前記押圧部材を付勢する力が互いに等しく、前記押圧部材は、前記カバーの下面と前記押圧部材の下面とが傾いた状態で前記被検査部材に平衡に接触し、前記複数の弾性体は、前記カバーと前記押圧部材とを連結する連結部材よりも前記回動軸側に設けられる第1コイルばねと、前記連結部材よりも前記回動軸とは反対側に設けられ、前記第1コイルばねの径よりも大きい径を有する第2コイルばねを含む、ソケットである。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、押圧部材によって被検査部材を平衡に押圧することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、ソケットの斜視図である。
図2図2は、ソケットの平面図である。
図3A図3Aは、図2の3A-3A断面図である。
図3B図3Bは、図2の3B-3B断面図である。
図3C図3Cは、図2の3C-3C断面図である。
図4A図4Aは、ガイドの斜視図である。
図4B図4Bは、ガイドの斜視図である。
図5図5は、載置台の斜視図である。
図6A図6Aは、カバーの斜視図である。
図6B図6Bは、カバーの斜視図である。
図7A図7Aは、プッシャの斜視図である。
図7B図7Bは、プッシャの斜視図である。
図8A図8Aは、ヒートシンクの斜視図である。
図8B図8Bは、ヒートシンクの斜視図である。
図9A図9Aは、カバーを開いた状態を示す断面図である。
図9B図9Bは、カバーを開いた状態を示す断面図である。
図9C図9Cは、カバーを開いた状態を示す断面図である。
図10図10は、プッシャの当接部が被検査部材の端子に当接した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は一例であり、本開示はこの実施形態により限定されるものではない。以下で説明する実施形態の構成要素は適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0012】
なお、以下の説明において、同種の要素を区別して説明する場合には、数字からなる共通番号とアルファベットからなる追番号との組み合わせで構成される参照符号を用いて、例えば「軸受部12a」、「軸受部12b」と表現する。また、同種の要素を区別しないで包括的に説明する場合には、参照符号のうちの共通番号のみを用いて、例えば、「軸受部12」と表現する。
【0013】
各図には、説明の便宜上、X軸、Y軸およびZ軸からなる3次元直交座標系が描かれている。X軸の正方向を+X方向、Y軸の正方向を+Y方向、Z軸の正方向を+Z方向(上方向)とそれぞれ定義する。
【0014】
図1は、実施形態に係るソケット1を示す斜視図である。図2は、実施形態に係るソケット1を示す平面図である。なお、図2の上側半分では、カバー50(後述する)を取り外した状態を示している。図3Aは、図2の3A-3A断面図である。図3Bは、図2の3B-3B断面図である。図3Cは、図2の3C-3C断面図である。
【0015】
ソケット1は、被検査部材2を収容し、収容した被検査部材2と、ソケット1の下側に取り付けられた配線基板(不図示)とを電気的に接続するための装置である。被検査部材2は、例えば、ICパッケージなどの電子部品である。
【0016】
ソケット1に収容され、配線基板に電気的に接続された被検査部材2に対して、各種試験が行われる。例えば、被検査部材2の実際の使用環境と同じ環境、または、実際の環境よりも負荷のかかる環境において、被検査部材2が適正に動作するかが調べられる。ソケット1は、このような試験を行うために、被検査部材2と配線基板とを接続する装置である。
【0017】
ソケット1は、ソケット本体3と、カバー50と、プッシャ60と、ヒートシンク70と、を有する。ソケット本体3は、ガイド10と、載置台30と、を有する。
【0018】
(ガイド10)
図4Aおよび図4Bを参照して、ガイド10について説明する。図4Aは、ガイド10を上方向から見た斜視図である。図4Bは、ガイド10を下方向から見た斜視図である。ガイド10は、被検査部材2をガイドする部材である。ガイド10は、本体11と、軸受部12と、凹部13と、凹部14と、枠体15と、被係止部16と、を備える。
【0019】
本体11は、ガイド10の外形を画定する。本体11によって画定されるガイド10の外形形状は、平面視で概略矩形形状である。軸受部12は、本体11の+X方向の端部から+X方向に突出して設けられている。軸受部12は、ガイド10の+Y方向寄りに設けられた軸受部12aと、ガイド10の-Y方向寄りに設けられた軸受部12bとを含む。軸受部12には、シャフト40(後述する)が挿通される。
【0020】
凹部13は、本体11の上面11aの中央部に設けられている。凹部14は、本体11の下面の中央部に形成されている。凹部14の中央部には、枠体15が-Z方向に立設されている。枠体15の中央部には、Z方向に貫通する貫通孔が設けられている。被係止部16は、本体11の-X方向の端部に設けられている。被係止部16は、カバー50に設けられたストッパ81(後述する)と係合する。
【0021】
(載置台30)
図5を参照して、載置台30について説明する。図5は、載置台30を上方向から見た斜視図である。図5は、載置台30に被検査部材2が載置された状態を示している。載置台30は、被検査部材2が載置される部材である。載置台30は、載置部31と、ピン保持部32と、固定部33とを有する。載置部31には、被検査部材2の本体2aが載置される。
【0022】
ピン保持部32は、被検査部材2の端子2bと接触するコンタクトピン35を保持する。固定部33は、載置部31およびピン保持部32をガイド10に対して固定するための部材である。固定部33の中央部には、Z方向に貫通する貫通孔が設けられており、この貫通孔内に、被検査部材2が配置される。
【0023】
(カバー50)
図6Aおよび図6Bを参照して、カバー50について説明する。図6Aは、カバー50を上方向から見た斜視図である。図6Bは、カバー50を下方向から見た斜視図である。カバー50は、ガイド10の上側を覆う部材である。カバー50は、本体51と、第1軸受部52と、第2軸受部53と、凹部54と、凹部55と、を備える。
【0024】
本体51は、カバー50の外形を画定する。本体51によって画定されるカバー50の外形形状は、平面視で概略矩形形状である。本体51の中央部には、Z方向に貫通する貫通孔51aが設けられている。
【0025】
本体51の上面には、凹部54が設けられている。凹部54は、貫通孔51aよりも+Y方向側、かつ、本体51のX方向における中央部に設けられた凹部54aと、貫通孔51aよりも-Y方向側、かつ、本体51のX方向における中央部に設けられた凹部54bとを含む。凹部54の中央部には、Z方向に貫通する貫通孔57が設けられている。
【0026】
第1軸受部52は、本体51の+X方向の端部から+X方向に突出して設けられている。第1軸受部52は、カバー50の+Y方向寄りに設けられた第1軸受部52aと、カバー50の-Y方向寄りに設けられた第1軸受部52bとを含む。第1軸受部52には、シャフト40が挿通される。
【0027】
図2に示すように、シャフト40は、ガイド10の軸受部12と、カバー50の第1軸受部52とを貫通する。シャフト40を取り囲むように、コイルばね41が設けられている。コイルばね41の第1の端部は、ガイド10に固定されている。コイルばね41の第2の端部は、カバー50に固定されている。コイルばね41により、カバー50は開く方向に付勢される。
【0028】
図6Aおよび図6Bの説明に戻る。第2軸受部53は、本体51の-X方向の端部から-X方向に突出して設けられている。第2軸受部53は、カバー50の+Y方向寄りに設けられた第2軸受部53aと、カバー50の-Y方向寄りに設けられた第2軸受部53bとを含む。第2軸受部53には、シャフト80が挿通される(図1を参照)。
【0029】
図1に示すように、シャフト80は、第2軸受部53とストッパ81とを貫通する。すなわち、ストッパ81は、シャフト80に軸支されている。また、シャフト80を取り囲むように、コイルばね(不図示)が設けられている。コイルばねの第1の端部は、カバー50に固定されている。コイルばねの第2の端部は、ストッパ81に固定されている。コイルばねは、ストッパ81を、シャフト80を中心に、+X方向から+Z方向へ向かう向き(図3Aにおいて反時計回り)に回転するように付勢する。
【0030】
図3Aに示すように、ストッパ81は、ガイド10の被係止部16と係合する爪82を有する。爪82が被係止部16に係止されることにより、カバー50はガイド10に固定される。また、爪82が被係止部16から外れることにより、カバー50のガイド10への固定が解除される。
【0031】
図6Aおよび図6Bの説明に戻る。凹部55は、本体51の下面51bに設けられている。凹部55は、貫通孔51aを取り囲んでいる。凹部55における貫通孔51aよりも+Y方向側および-Y方向側には、それぞれ、複数の凹部56が設けられている。凹部56は、凹部56a、凹部56b、凹部56cおよび凹部56dを含む。凹部56a、凹部56b、上述の貫通孔57、凹部56cおよび凹部56dは、+X方向に並んで設けられている。
【0032】
本実施形態では、凹部56a、凹部56b、凹部56cおよび凹部56dの深さは等しい。凹部56aおよび凹部56bの径は等しい。凹部56cおよび凹部56dの径は等しい。凹部56aおよび凹部56bの径は、凹部56cおよび凹部56dの径よりも大きい。
【0033】
(プッシャ60)
図7Aおよび図7Bを参照して、プッシャ60について説明する。図7Aは、プッシャ60を上方向から見た斜視図である。図7Bは、プッシャ60を下方向から見た斜視図である。プッシャ60は、被検査部材2の端子2bを下方向に押圧して、コンタクトピン35に押し付ける部材である。プッシャ60は、本体61と、凹部62と、凸部63と、を備える。
【0034】
本体61は、プッシャ60の外形を画定する。本体61によって画定されるプッシャ60の外形形状は、平面視で概略矩形形状である。
【0035】
凹部62は、本体61の上面61aの中央部に形成されている。凹部62の中央部には、Z方向に貫通する貫通孔62aが設けられている。凹部62の四隅には、ねじ孔66がそれぞれ設けられている。ねじ孔66は、凹部62をZ方向に貫通している。
【0036】
本体61の上面61aにおける凹部62よりも+Y方向側および-Y方向側には、それぞれ、複数の凹部64が設けられている。凹部64は、凹部64a、凹部64b、凹部64cおよび凹部64dを含む。凹部64a、凹部64b、凹部64cおよび凹部64dは、+X方向に並んで設けられている。
【0037】
本実施形態において、凹部64a、凹部64b、凹部64cおよび凹部64dの深さは等しい。凹部64aおよび凹部64bの径は、凹部56aおよび凹部56bの径と等しい。凹部64cおよび凹部64dの径は、凹部56cおよび凹部56dの径と等しい。
【0038】
凸部63は、本体61の下面61bから-Z方向に突出して設けられている。凸部63は、貫通孔62aの+X方向側の縁に設けられた凸部63aと、貫通孔62aの-X方向側の縁に設けられた凸部63bとを含む。凸部63の下面から、さらに当接部68が-Z方向に突出して設けられている。具体的には、凸部63aから当接部68aが突出しており、凸部63bから当接部68bが突出している。
【0039】
本体61の下面61bには、凹部65が設けられている。凹部65は、貫通孔62aよりも+Y方向側、かつ、本体61のX方向における中央部に設けられた凹部65aと、貫通孔62aよりも-Y方向側、かつ、本体61のX方向における中央部に設けられた凹部65bとを含む。凹部65は、本体61の下面61bから上面61aに向けて、+X方向に傾斜している(図3Bを参照)。凹部65の中央部には、Z方向に貫通する貫通孔67が設けられている。
【0040】
(ヒートシンク70)
図8Aおよび図8Bを参照して、ヒートシンク70について説明する。図8Aは、ヒートシンク70を上方向から見た斜視図である。図8Bは、ヒートシンク70を下方向から見た斜視図である。ヒートシンク70は、被検査部材2の本体2aの上面を下方向に押圧して、被検査部材2の本体2aの下面をコンタクトピン34(図9Aを参照)に押し付ける部材である。ヒートシンク70は、本体71と、ボス部72と、押圧部73と、を備える。
【0041】
本体71には、+Z方向に突出する複数の凸部が設けられており、これら凸部により、ヒートシンク70の放熱性能が高められている。ボス部72は、本体71の四隅に設けられている。ボス部72には、Z方向に貫通する孔74が設けられている。押圧部73は、本体71の下面71aから-Z方向に突出して設けられている。押圧部73の-Z方向の端面73aは、被検査部材2の本体2aの上面と接触する。これにより、被検査部材2で発生した熱を、ヒートシンク70を介して放熱することができる。
【0042】
(カバー50を閉じた状態におけるカバー50、プッシャ60およびヒートシンク70の位置関係)
図3A図3Bおよび図3Cを参照して、カバー50を閉じた状態におけるカバー50、プッシャ60およびヒートシンク70の位置関係について説明する。
【0043】
図3Aに示すように、カバー50を閉じ、ストッパ81の爪82を、ガイド10の被係止部16に係止した状態で、カバー50の下面51bと、ガイド10の上面11aとの間には、僅かな隙間が形成される。また、カバー50の下面51bと、ガイド10の上面11aとは、平行である。
【0044】
プッシャ60の凸部63の下面は、載置台30の固定部33の上面に当接している。また、プッシャ60の当接部68は、被検査部材2の端子2bを下方向に押圧している。プッシャ60の下面61bと、ガイド10の上面11aとの間には、僅かな隙間が形成される。また、プッシャ60の下面61bと、ガイド10の上面11aとは、平行である。
【0045】
ヒートシンク70の端面73aは、被検査部材2の本体2aの上面を下方向に押圧している。ヒートシンク70の下面71aと、プッシャ60の凹部62の上面との間には、僅かな隙間が形成される。また、ヒートシンク70の下面71aと、プッシャ60の凹部62の上面とは、平行である。
【0046】
図3Bに示すように、プッシャ60は、カバー50の凹部55に配される。ガイドピン90が、プッシャ60の貫通孔67およびカバー50の貫通孔57を貫通している。
【0047】
ガイドピン90は、鍔部と、軸部と、軸部の先端に設けられたネジ部とを備える。ガイドピン90が凹部65に挿入され、ガイドピン90の軸部が貫通孔67および貫通孔57を貫通した状態で、ガイドピン90のネジ部が凹部54に配されたナット91と螺合されることで、カバー50とプッシャ60とが連結される。ガイドピン90の鍔部と、ナット91とにより、カバー50とプッシャ60とが上下方向に分離することが防止される。
【0048】
なお、ガイドピン90の軸部とカバー50の貫通孔57の内周壁との間、ガイドピン90の軸部とプッシャ60の貫通孔67の内周壁との間には、それぞれ径方向隙間が形成されている。これにより、プッシャ60はカバー50に対して揺動可能である。また、プッシャ60はカバー50に対して上下方向にも移動可能である。カバー50が閉じた状態では、図3Bに示すとおり、ガイドピン90の鍔部と、プッシャ60の凹部65の底面との間には、隙間が存在している。
【0049】
カバー50の凹部56と、プッシャ60の凹部64との間に、それぞれスプリング101が配されている。具体的には、カバー50の凹部56aと、プッシャ60の凹部64aとの間に、スプリング101aが配されている。カバー50の凹部56bと、プッシャ60の凹部64bとの間に、スプリング101bが配されている。カバー50の凹部56cと、プッシャ60の凹部64cとの間に、スプリング101cが配されている。カバー50の凹部56dと、プッシャ60の凹部64dとの間に、スプリング101dが配されている。
【0050】
スプリング101a、スプリング101b、スプリング101cおよびスプリング101dは、圧縮コイルばねであり、プッシャ60を下方向に付勢している。スプリング101aと、スプリング101bとは、同一の部品である。そのため、スプリング101aの諸元とスプリング101bの諸元とは同じである。また、スプリング101cと、スプリング101dとは、同一の部品である。そのため、スプリング101cの諸元とスプリング101dの諸元とは同じである。
【0051】
スプリング101aの線径、スプリング101bの線径、スプリング101cの線径、および、スプリング101dの線径は、互いに等しい。スプリング101aおよびスプリング101bのバネ径は、D1である。スプリング101cおよびスプリング101dのバネ径は、D2である。D1>D2である。スプリング101aおよびスプリング101bの自然長は、L1である。スプリング101cおよびスプリング101dの自然長は、L2である。L1>L2である。
【0052】
カバー50が閉じた状態で、プッシャ60の上面61aと、カバー50の底面55aとの間には、僅かな隙間が形成される。また、プッシャ60の上面61aと、カバー50の底面55aとは、平行である。
【0053】
また、この状態で、スプリング101aの長さは、L11である。スプリング101bの長さは、L12である。スプリング101cの長さは、L13である。スプリング101dの長さは、L14である。L11=L12=L13=L14である。
【0054】
長さがL11の状態で、スプリング101aの弾性力は、F11である。長さがL12の状態で、スプリング101bの弾性力は、F12である。長さがL13の状態で、スプリング101cの弾性力は、F13である。長さがL14の状態で、スプリング101dの弾性力は、F14である。F11≒F12≒F13≒F14である。すなわち、カバー50が閉じた状態で、スプリング101の長さは、互いに等しい。また、スプリング101の弾性力は、互いに等しい。換言すると、カバー50が閉じた状態で、スプリング101a、スプリング101b、スプリング101cおよびスプリング101dは、プッシャ60を付勢する力が互いに等しい。
【0055】
図3Cに示すとおり、ヒートシンク70は、プッシャ60の凹部62に配される。ネジ110が、ヒートシンク70の貫通孔74を貫通してプッシャ60のねじ孔66に螺入されている。ネジ110は、鍔部と、軸部と、軸部の先端に設けられたネジ部とを有する。
【0056】
ヒートシンク70のボス部72の上面と、ネジ110の鍔部との間に、コイルばね113が設けられる。コイルばね113は、ネジ110の軸部を取り囲んでいる。コイルばね113は、ヒートシンク70の本体71の下面71aが、プッシャ60の凹部62の底面62bに近付くように、ヒートシンク70を付勢している。
【0057】
図3Cに示すとおり、カバー50が閉じた状態では、ヒートシンク70の下面71aと、プッシャ60の凹部62の底面62bとの間には、僅かな隙間が形成される。また、ヒートシンク70の下面71aと、プッシャ60の凹部62の底面62bとは、平行である。
【0058】
(カバー50を開いた状態におけるカバー50、プッシャ60およびヒートシンク70の位置関係)
図9A図9Bおよび図9Cを参照して、カバー50を開いた状態におけるカバー50、プッシャ60およびヒートシンク70の位置関係について説明する。図9A図9Cは、それぞれ、カバー50を開いた状態を示す断面図である。図9Aに示す断面は、図3Aに示す断面に対応している。図9Bに示す断面は、図3Bに示す断面に対応している。図9Cに示す断面は、図3Cに示す断面に対応している。
【0059】
図9Aに示すように、カバー50を開いた状態で、カバー50の下面51bと、ガイド10の上面11aとのなす角は、θ1である。また、プッシャ60の下面61bと、ガイド10の本体11の上面11aとのなす角は、θ2である。θ1>θ2である。
【0060】
載置部31の上面から、被検査部材2の本体2aと接触するコンタクトピン34の端部が突出している。ピン保持部32の側方から、被検査部材2の端子2bと接触するコンタクトピン35の端部が突出している。
【0061】
図9Bに示すように、プッシャ60は、プッシャ60の上面61aが、カバー50の底面55aから離れるように、スプリング101によって付勢されている。プッシャ60の凹部65の底面と、ガイドピン90の鍔部とは、当接している。また、カバー50の凹部54の底面と、ナット91とは、当接している。これにより、プッシャ60がカバー50から分離することが防止されている。
【0062】
プッシャ60の本体61の上面61aと、カバー50の凹部55の底面55aとの距離は、カバー50の回動中心であるシャフト40から離れるにつれて徐々に長くなっている。この状態で、凹部56aおよび凹部64aに囲まれた空間に配されたスプリング101aの長さは、L21である。また、凹部56bおよび凹部64bに囲まれた空間に配されたスプリング101bの長さは、L22である。また、凹部56cおよび凹部64cに囲まれた空間に配されたスプリング101cの長さは、L23である。凹部56dおよび凹部64dに囲まれた空間に配されたスプリング101dの長さは、L24である。L21>L22>L23>L24である。
【0063】
長さがL21の状態で、スプリング101aの弾性力は、F21である。長さがL22の状態で、スプリング101bの弾性力は、F22である。長さがL23の状態で、スプリング101cの弾性力は、F23である。長さがL24の状態で、スプリング101dの弾性力は、F24である。F21≒F22≒F23≒F24である。
【0064】
すなわち、カバー50を開いた状態で、スプリング101の弾性力は、互いに等しい。換言すると、カバー50を開いた状態で、スプリング101a、スプリング101b、スプリング101cおよびスプリング101dは、プッシャ60を付勢する力が互いに等しい。そして、この状態で、プッシャ60の本体61の下面61bは、カバー50の本体51の下面51bに対して傾斜している。
【0065】
上述のとおり、ヒートシンク70は、ヒートシンク70の本体71の下面71aがプッシャ60の凹部62の底面62bに近付くように、コイルばね113によって付勢されている。そのため、カバー50を開いた状態では、図4Cに示すように、プッシャ60の凹部62の底面62bと、ヒートシンク70の本体71の下面71aとは、当接している。
【0066】
(プッシャ60の当接部68が被検査部材2の端子2bに当接した状態におけるカバー50、プッシャ60およびヒートシンク70の位置関係)
図10を参照して、プッシャ60の当接部68が被検査部材2の端子2bに当接した状態におけるカバー50、プッシャ60およびヒートシンク70の位置関係について説明する。図10は、プッシャ60の当接部68が被検査部材2の端子2bに当接した状態を示す断面図である。図10に示す断面は、図3Aに示す断面に対応している。
【0067】
カバー50が開いた状態から、プッシャ60の当接部68が被検査部材2の端子2bに当接するまで、カバー50とプッシャ60との位置関係、およびプッシャ60とヒートシンク70との位置関係は、変化しない。
【0068】
図10に示すように、カバー50の下面51bと、ガイド10の上面11aとのなす角がθ11となった状態で、プッシャ60の下面61bと、ガイド10の本体11の上面11aとは、平行となる。そして、この状態で、プッシャ60の当接部68aおよび当接部68bは、被検査部材2の端子2bに同時に当接する。さらに、ヒートシンク70の端面73aは、被検査部材2の本体2aの上面に当接する。
【0069】
図10に示す状態から、さらにカバー50を押し下げることで、被検査部材2の本体2aの下面は、コンタクトピン34を押し下げながら下方向へ移動する。また、被検査部材2の端子2bは、コンタクトピン35を押し下げながら下方向へ移動する。
【0070】
上述のとおり、プッシャ60の当接部68が被検査部材2の端子2bに当接した状態で、スプリング101aの弾性力は、F11であり、スプリング101bの弾性力は、F12であり、スプリング101cの弾性力は、F13であり、スプリング101dの弾性力は、F14である。
【0071】
また、カバー50が閉じた状態で、スプリング101aの弾性力は、F21であり、スプリング101bの弾性力は、F22であり、スプリング101cの弾性力は、F23であり、スプリング101dの弾性力は、F24である。
【0072】
図10に示す状態から、図3Aに示す状態に遷移する過程において、スプリング101aの弾性力F1、スプリング101bの弾性力F2、スプリング101cの弾性力F3およびスプリング101dの弾性力F4は、互いに等しい関係を保つ。
【0073】
すなわち、スプリング101a、スプリング101b、スプリング101cおよびスプリング101dは、プッシャ60を付勢する力が互いに等しい。
【0074】
そのため、図10に示す状態から、図3Aに示す状態に遷移する過程において、当接部68は、被検査部材2の端子2bを平衡に押圧し、かつ、押圧部73は、被検査部材2の本体2aの上面を平衡に押圧する。そのため、被検査部材2を上から押さえ付ける押圧力が偏ることを確実に防止することができる。
【0075】
以上説明したように、本実施形態では、被検査部材2が収容されるソケット本体3と、ソケット本体3に対してシャフト40を中心に回動自在に支持されるカバー50と、カバー50に連結され、カバー50とともに回動することで被検査部材2に接触するプッシャ60と、カバー50とプッシャ60との間に設けられ、プッシャ60をカバー50から離間する方向に付勢する複数のスプリング101と、を備え、複数のスプリング101は、プッシャ60を付勢する力が互いに等しく、プッシャ60は、カバー50の下面51bとプッシャ60の下面61bとが傾いた状態で被検査部材2に平衡に接触する、ソケット1である。
【0076】
本実施形態によれば、プッシャ60が被検査部材2に平衡に接触し、かつ、複数のスプリング101がプッシャ60を付勢する力が互いに等しいため、プッシャ60が被検査部材2に接触した状態から、カバー50が閉じた状態に遷移するまで、プッシャ60によって被検査部材2を平衡に押圧することができる。
【0077】
なお、上述の実施形態では、スプリング101が配置される凹部56および凹部64の深さが互いに等しいものを例に説明を行ったが、これに限定されない。凹部56の深さおよび凹部64の深さは、互いに異なっていてもよい。
【0078】
また、上述の実施形態では、スプリング101を8個用いたものを例に説明を行ったが、これに限定されない。カバー50に対してプッシャ60を傾けつつ、全てのスプリング101がプッシャ60を付勢する力が互いに等しいという関係を満足できれば、スプリング101は8個でなくてもよい。
【0079】
また、上述の実施形態では、プッシャ60の当接部68が端子2bに当接するのと同時にヒートシンク70の押圧部73が本体2aに当接するものを例に説明を行ったが、これに限定されない。当接部68が端子2bに先に当接しても良いし、押圧部73が本体2aに先に当接しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本開示は、被検査部材と配線基板とを電気的に接続するためのソケットに広く利用可能である。
【符号の説明】
【0081】
1 ソケット
2 被検査部材
2a 本体
2b 端子
3 ソケット本体
10 ガイド
11 本体
11a 上面
12、12a、12b 軸受部
13 凹部
14 凹部
15 枠体
16 被係止部
30 載置台
31 載置部
32 ピン保持部
33 固定部
34 コンタクトピン
35 コンタクトピン
40 シャフト
41 コイルばね
50 カバー
51 本体
51a 貫通孔
51b 下面
52、52a、52b 第1軸受部
53、53a、53b 第2軸受部
54、54a、54b 凹部
55 凹部
55a 底面
56、56a、56b、56c、56d 凹部
57 貫通孔
60 プッシャ
61 本体
61a 上面
61b 下面
62 凹部
62a 貫通孔
62b 底面
63、63a、63b 凸部
64、64a、64b、64c、64d 凹部
65、65a、65b 凹部
66 ねじ孔
67 貫通孔
68、68a、68b 当接部
70 ヒートシンク
71 本体
71a 下面
72 ボス部
73 押圧部
73a 端面
74 貫通孔
80 シャフト
81 ストッパ
82 爪
90 ガイドピン
91 ナット
101、101a、101b、101c、101d スプリング
110 ネジ
113 コイルばね
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図10