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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-28
(45)【発行日】2023-01-12
(54)【発明の名称】走行に適した靴
(51)【国際特許分類】
   A43B 23/02 20060101AFI20230104BHJP
   A43B 23/04 20060101ALI20230104BHJP
【FI】
A43B23/02 101A
A43B23/02 105
A43B23/04
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018233444
(22)【出願日】2018-12-13
(65)【公開番号】P2020092889
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000000310
【氏名又は名称】株式会社アシックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001265
【氏名又は名称】特許業務法人山村特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100102060
【弁理士】
【氏名又は名称】山村 喜信
(72)【発明者】
【氏名】福田 誠
(72)【発明者】
【氏名】宮本 幹也
(72)【発明者】
【氏名】中西 惠三
(72)【発明者】
【氏名】大冢 陽右
(72)【発明者】
【氏名】岡本 美紀
(72)【発明者】
【氏名】三ッ井 滋之
【審査官】木戸 優華
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-014801(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0198730(US,A1)
【文献】特開2018-019745(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 23/02
A43B 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソールとアッパーとを備え走行に適した靴であって、
前記アッパー1は脚が延び出る開口10を足関節よりも上方に有し、
前記アッパー1は足を覆う足部11と、足関節および脚を覆う脚部12とが連なり、
前記アッパー1は内側部13と外側部14とが締付具3により足および脚に沿うよう互いに引き寄せられ、
前記内側部13および外側部14における前記締付具3が係合する側縁部15が剛性部材で形成され、
前記足部11の後端部において踵を覆う踵部16が剛性部材で形成され、
前記側縁部15と前記踵部16との間に前記剛性部材よりも柔軟な素材で形成された柔軟部17が設けられていると共に、
前記柔軟部17の少なくとも一部に、前記側縁部15の上端部15Eと、前記踵部16の後端部16Eとの間の伸びを抑制する伸び抑制部18が配置され、
ここにおいて、前記伸び抑制部18は柔軟部17の素材よりも弾性率の大きい素材で形成され、
前記伸び抑制部18は前記側縁部15の上端部15Eから前記踵部16の後端部16Eまで斜め下方に向かって帯状に延びて配置された第1部18Aを包含する、靴。
【請求項2】
請求項において、前記伸び抑制部18は非伸性の素材で形成されている、靴。
【請求項3】
請求項において、
前記伸び抑制部18は前記側縁部15の上端部15Eと前記側縁部15の前端部15Fとの間の中間部15Mから前記踵部16の後端部16Eよりも前方の中間部16Mまで斜め下方の後方に向かって延びて配置された第2部18Bを更に包含する、靴。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項において、内外の前記各側縁部15が非伸縮材で形成されている、靴。
【請求項5】
請求項において、前記各側縁部15の少なくとも一部には袋状の収容部15Bが形成され、前記収容部15Bは少なくとも前記側縁部15の上端部15Eから踝よりも前方の中間部15Mまで斜め下方の前方に向かって延び、
前記収容部15Bの上端部15Eから前記中間部15Mまでにわたって第1剛性パーツ21が収容されている、靴。
【請求項6】
請求項において、前記第1剛性パーツ21の少なくとも一部を前記締付具3が覆うように、前記第1剛性パーツ21および締付具3が配置されている、靴。
【請求項7】
請求項において、前記袋状の収容部15Bは前記中間部15Mから更に前記踵部16よりも前方まで斜め前方の下方に向かって前記ソール4まで延びる延長部15Xを有し、
前記第1剛性パーツ21は前記上端部15Eから延長部15Xまで延びている、靴。
【請求項8】
請求項5~7のいずれか1項において、前記内外の側縁部15の間には脚前面から足甲に沿う第2剛性パーツ22が設けられ、
前記第2剛性パーツ22の弾性率が前記第1剛性パーツ21の弾性率よりも小さい、靴。
【請求項9】
ソールとアッパーとを備え走行に適した靴であって、
前記アッパー1は脚が延び出る開口10を足関節よりも上方に有し、
前記アッパー1は足を覆う足部11と、足関節および脚を覆う脚部12とが連なり、
前記アッパー1は内側部13と外側部14とが締付具3により足および脚に沿うよう互いに引き寄せられ、
前記内側部13および外側部14における前記締付具3が係合する側縁部15が剛性部材で形成され、
前記足部11の後端部において踵を覆う踵部16が剛性部材で形成され、
前記側縁部15は上端部15Eから踝よりも前方の中間部15Mまで斜め下方の前方に向かって延び、
前記側縁部15の上端部15Eから前記中間部15Mにわたって第1剛性パーツ21が配置されている、靴。
【請求項10】
請求項において、前記各側縁部15の少なくとも一部には袋状の収容部15Bが形成され、前記収容部15Bは少なくとも前記側縁部15の上端部15Eから踝よりも前方の中間部15Mまで斜め下方の前方に向かって延び、
前記収容部15Bの上端部15Eから前記中間部15Mまでにわたって第1剛性パーツ21が収容されている、靴。
【請求項11】
請求項10において、前記第1剛性パーツ21の少なくとも一部を前記締付具3が覆うように、前記第1剛性パーツ21および締付具3が配置されている、靴。
【請求項12】
請求項11において、前記袋状の収容部15Bは前記中間部15Mから更に前記踵部16よりも前方まで斜め前方の下方に向かって前記ソール4まで延びる延長部15Xを有し、
前記第1剛性パーツ21は前記上端部15Eから延長部15Xまで延びている、靴。
【請求項13】
請求項9~12のいずれか1項において、前記内外の側縁部15の間には脚前面から足甲に沿う第2剛性パーツ22が設けられている、靴。
【請求項14】
請求項13において、前記第2剛性パーツ22の弾性率が前記第1剛性パーツ21の弾性率よりも小さい、靴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は走行に適した靴に関する。
【背景技術】
【0002】
高速走行に適した靴は、内外の踝が露出したローカットシューズが一般的である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-317801
【発明の概要】
【0004】
ローカットシューズは軽量で、かつ、足関節の自由な底背屈を許容する。こうした観点からは、一般的に高速走行に適していると考えられる。
【0005】
しかし、走行時にスネと甲が接近しすぎる過度な背屈は、走行中の接地時間を長くすると共に、走行中の体重心の過度な上下動を招き易い。そのため、走行のパフォーマンスを低下させる要因となるだろう。
【0006】
一方、内外の踝を包むハイカットシューズは、ローカットシューズに比べ足関節の自由な底背屈を抑制するだろう。そのため、前記走行中の体重心の過度な上下動を抑制するかもしれない。
【0007】
しかし、かかるハイカットシューズは、アキレス腱を包むため、スネに対し甲が遠ざかる底屈動作中の抵抗が大きい。そのため、爪先で路面を蹴り出す推進力が低下し易いだろう。
【0008】
本発明の目的は、走行等のパフォーマンスを向上させることができるハイカットタイプの走行に適した靴を提供することである。
【0009】
第1の局面において、本発明はソールとアッパーとを備え走行に適した靴であって、
前記アッパー1は脚が延び出る開口10を足関節よりも上方に有し、
前記アッパー1は足を覆う足部11と、足関節および脚を覆う脚部12とが連なり、
前記アッパー1は内側部13と外側部14とが締付具3により足および脚に沿うよう互いに引き寄せられ、
前記内側部13および外側部14における前記締付具3が係合する側縁部15が剛性部材で形成され、
前記足部11の後端部において踵を覆う踵部16が剛性部材で形成され、
前記側縁部15と前記踵部16との間に前記剛性部材よりも柔軟な素材で形成された柔軟部17が設けられていると共に、
前記柔軟部17の少なくとも一部に、前記側縁部15の上端部15Eと、前記踵部16の後端部16Eとの間の伸びを抑制する伸び抑制部18が配置されている。
【0010】
足の前足部および/または中足部が接地した瞬間において接地と同時に踵は下方に変位し易く、かかる変位は接地姿勢の乱れや、接地時間の増加する要因となる。
【0011】
これに対し、足関節Jよりも上方の脚が接地直後に前方に倒れようとすると、前述のように、伸び抑制部18が配置されていることで、踵部16がアッパーの脚部12に引き上げられて、踵部16が下方に変位するのを抑制するだろう。そのため、接地姿勢の乱れや接地時間の増加を抑制する効果が期待できる。
【0012】
一方、足の爪先が離地する際に、足に対し脚が後方に倒れるように足関節は底屈する。この際、脚が後方に爪先から遠ざかるようにして、足関節が底屈する。前記底屈時、アッパーの脚部12は脚に押されて縮もうとするのであるが、前記側縁部15と踵部16との間には前記柔軟部17が設けられており、そのため、前記柔軟部が縮み前記底屈動作を妨げにくいだろう。
【0013】
このように、接地姿勢の乱れ抑制および接地時間の増加抑制と底屈動作を妨げにくいため、本靴は走行や跳躍のパフォーマンスを向上させることが期待できる。
【0014】
第2の局面において、本発明はソールとアッパーとを備え走行に適した靴であって、
前記アッパー1は脚が延び出る開口10を足関節よりも上方に有し、
前記アッパー1は足を覆う足部11と、足関節および脚を覆う脚部12とが連なり、
前記アッパー1は内側部13と外側部14とが締付具3により足および脚に沿うよう互いに引き寄せられ、
前記内側部13および外側部14における前記締付具3が係合する側縁部15が剛性部材で形成され、
前記足部11の後端部において踵を覆う踵部16が剛性部材で形成され、
前記側縁部15は上端部15Eから踝よりも前方の中間部15Mまで斜め下方の前方に向かって延び、
前記側縁部15の上端部15Eから前記中間部15Mにわたって第1剛性パーツ21が配置されている。
【0015】
足の前足部および/または中足部が接地した後、足の爪先への荷重が大きくなる間に、爪先に対し脚前面が近づく背屈姿勢となる。この背屈姿勢においては走速度の増大と共に脚の前方への傾きが大きくなり易く、これを何ら抑制しないと、推進力の減少を招く。
【0016】
これに対し、本第2局面では、側縁部15が剛性部材で形成され、更に側縁部15の上端部15Eから中間部15Mまでにわたって、第1剛性パーツ21が配置されている。この第1剛性パーツ21は前記脚の前方への倒れ、つまり背屈を抑制するだろう。そのため、走行の推進力が増大するであろう。また、跳躍力の増大が図られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施例を示す靴の内側面図である。
図2】同外側面図である。
図3】第1および第2剛性パーツの一例を示す斜視図である。
図4】足の内側面図である。
図5】ヒールライズ時を示す靴の内側面図である。
図6】ヒールライズ時を示す靴の外側面図である。
図7】第2実施例を示す靴の内側面図である。
図8】第2実施例を示す靴の外側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
前記第1局面において、好ましくは、前記伸び抑制部18は柔軟部17の素材よりも弾性率の大きい素材で形成されている。
【0019】
この場合、弾性率(ヤング率)の大きい伸び抑制部18は、前記伸び抑制の機能を発揮し易い。
【0020】
好ましくは、前記伸び抑制部18は非伸性の素材で形成されている。
【0021】
伸び抑制部18の素材の弾性率が十分に大きい場合、伸び抑制部18は走行動作中に実質的に伸びない非伸性を呈する。
【0022】
好ましくは、前記伸び抑制部18は前記側縁部15の上端部15Eから前記踵部16の後端部16Eまで斜め下方に向かって帯状に延びて配置された第1部18Aを包含する。
【0023】
この場合、帯状の第1部18Aは前記伸び抑制の機能を発揮し易いだろう。
【0024】
好ましくは、前記伸び抑制部18は前記側縁部15の上端部15Eと前記側縁部15の前端部15Fとの間の中間部15Mから前記踵部16の後端部16Eよりも前方の中間部16Mまで斜め下方の後方に向かって延びて配置された第2部18Bを更に包含する。
【0025】
第2部18Bは前記第1部18Aの伸び抑制の機能を補うと共に、柔軟部17の柔軟性を阻害しにくい。
【0026】
好ましくは、内外の前記各側縁部15が非伸縮材で形成されている。
【0027】
非伸縮材で形成された側縁部15は、前記背屈抑制に役立つ。
【0028】
好ましくは、前記各側縁部15の少なくとも一部には袋状の収容部15Bが形成され、前記収容部15Bは少なくとも前記側縁部15の上端部15Eから踝よりも前方の中間部15Mまで斜め下方の前方に向かって延び、
前記収容部15Bの上端部15Eから前記中間部15Mまでにわたって第1剛性パーツ21が収容されている。
【0029】
この場合、前記第1剛性パーツ21は前記背屈抑制の作用を呈するのであるが、第1剛性パーツ21が側縁部15に収納されていることで、背屈時に第1剛性パーツ21が座屈変形しにくくなる。
【0030】
好ましくは、前記第1剛性パーツ21の少なくとも一部を前記締付具3が覆うように、前記第1剛性パーツ21および締付具3が配置されている。
【0031】
かかる締付具3は第1剛性パーツ21が足の内外への変形を抑制し、そのため、前記座屈変形を呈しにくくなる。
【0032】
好ましくは、前記袋状の収容部15Bは前記中間部15Mから更に前記踵部16よりも前方まで斜め前方の下方に向かって前記ソール4まで延びる延長部15Xを有し、
前記第1剛性パーツ21は前記上端部15Eから延長部15Xまで延びている。
【0033】
ソール4まで延びた延長部15Xおよび第1剛性パーツ21は、前記背屈時に脚が前方に倒れにくいように支える。そのため、前記背屈抑制の機能が高まる。
【0034】
好ましくは、前記内外の側縁部15の間には脚前面から足甲に沿う第2剛性パーツ22が設けられ、更に好ましくは、
前記第2剛性パーツ22の弾性率が前記第1剛性パーツ21の弾性率よりも小さい。
【0035】
第2剛性パーツ22は前記第1剛性パーツ21と共に背屈抑制に役立つだけでなく、靴の脚前面の剛性を高め、第2剛性パーツ22の座屈抑制に役立つであろう。
また、第2剛性パーツ22の剛性が高いと第2剛性パーツ22の屈曲に伴い第2剛性パーツ22の損傷を招くことがあるが、第2剛性パーツ22の剛性が比較的小さい場合、第2剛性パーツ22に伸びが生じ、前記損傷を抑制し得る。
【0036】
1つの前記各実施態様または下記の実施例に関連して説明および/または図示した特徴は、1つまたはそれ以上の他の実施態様または他の実施例において同一または類似な形で、および/または他の実施態様または実施例の特徴と組み合わせて、または、その代わりに利用することができる。
【0037】
本発明は、添付の図面を参考にした以下の好適な実施例の説明からより明瞭に理解されるであろう。しかし、実施例および図面は単なる図示および説明のためのものであり、本発明の範囲を定めるために利用されるべきものではない。本発明の範囲は請求の範囲によってのみ定まる。添付図面において、複数の図面における同一の部品番号は、同一または相当部分を示す。
【実施例
【0038】
以下、本発明の実施例を図面にしたがって説明する。図1図6は実施例1に関する。
【0039】
図1および図2に示すように、靴はソール4、アッパー1およびシューレース(締付具)3に加え、第1および第2剛性パーツ21,22を備える。
【0040】
前記ソール4は、例えば前足部4Fにスパイク41を有する硬質樹脂製のスパイクソールであってもよいが、アウトソールとミッドソールを有するランニングシューズのソールであってもよい。
【0041】
前記アッパー1は脚Lが延び出る開口10を図4の足関節Jよりも上方に有するハイカットタイプである。したがって、図1のアッパー1は足F(図4)を覆う足部11と、足関節Jおよび脚Lを覆う脚部12とが連なっている。
【0042】
アッパー1は図1の内側部13と図2の外側部14とを備える。前記外側部14と図1の内側部13とはシューレース3により足および脚に沿うように互いに引き寄せられるように締め付けられる。本例の場合、外側部14と内側部13とは、互いに同様の構造で、同様の剛性を有する。
【0043】
本例において、シューレース3はワイヤ状で、図5および図6のラチェット式の操作部30を備えていてもよい。なお、締付具は通常の紐状であってもよいし、ベルトであってもよい。
【0044】
前記アッパー1は図5の前記内側部13および図6の外側部14において前記締付具3が係合する側縁部15と、前記足部11の後端部において踵を覆う踵部16とを備える。前記側縁部15および踵部16は剛性部材で形成されている。この剛性部材は非伸縮材が採用されてもよい。
【0045】
図5の前記各側縁部15の上半部には袋状の収容部15Bが形成されている。本例の場合、前記収容部15Bは前記側縁部15の上端部15Eから踝N(図4)よりも前方の中間部15Mまで斜め下方の前方に向かって延びている。
【0046】
前記袋状の収容部15Bは前記中間部15Mから更に前記踵部16よりも前方まで斜め前方の下方に向かって前記ソール4まで延びる延長部15Xを有する。前記延長部15Xもまた前記剛性部材で形成されている。図5Bにおいて、側縁部15および収容部15Bには大きなドット模様が付され、踵部16には小さく粗いドット模様が付されている。
【0047】
図1の前記収容部15Bには大きいドット模様を付した第1剛性パーツ21が収容されている。すなわち、本例において前記収容部15Bは、少なくとも外装材と内装材とで細長い袋状に形成され、図3Aのような細長い袋内に例えば帯状の第1剛性パーツ21を収容している。
なお、第1剛性パーツ21は収容部15Bに収容されていなくてもよい。例えば、縫合や接着等で剛性パーツ21が側縁部に固定されていてもよい。
【0048】
図3Aにおいて、第1剛性パーツ21は若干屈曲していてもよいが、一直線状であってもよく、また、スリットが設けられていてもよい。
【0049】
図2および図1に示すように、前記第1剛性パーツ21は内外において、前記収容部15Bの上端部15Eから前記延長部15Xまで斜め前方の下方に向かって延びるように配置されている。
【0050】
図1の前記上端部15Eから中間部15Mにおいて、前記第1剛性パーツ21を前記シューレース3が覆うように、前記第1剛性パーツ21およびシューレース3が配置されている。これにより、シューレース3は第1剛性パーツ21を脚や足に沿った状態に拘束し、そのため、第1剛性パーツ21が背屈方向にたわむのを抑制するだろう。
【0051】
図6および図5に示すように、前記収容部15Bと前記踵部16との間には、前記剛性部材よりも柔軟な素材で形成された柔軟部17が配置されている。この柔軟部17の一部には前記側縁部15の上端部15Eと、前記踵部16の後端部16Eとの間の伸びを抑制する伸び抑制部18が配置されている。
【0052】
図5において、前記伸び抑制部18には小さく、かつ、密なドット模様が付され、前記伸び抑制部18以外の柔軟部17には格子模様が付されている。
【0053】
前記伸び抑制部18は柔軟部17の素材よりも弾性率の大きい素材で形成されている。例えば、前記伸び抑制部18は非伸性の素材で形成されている。前記伸び抑制部18は破線で示す第1部18Aおよび第2部18Bを備える。
【0054】
図5において、前記第1部18Aは前記側縁部15の上端部15Eから前記踵部16の後端部16Eまで斜め下方に向かって帯状に延びて配置されている。
【0055】
一方、第2部18Bは前記側縁部15の上端部15Eと前記伸び抑制部18の前端部15Fとの間の中間部15Mから前記踵部16の後端部16Eよりも前方の中間部16Mまで斜め下方の後方に向かって延びて配置されている。
なお、第1部18Aおよび第2部18Bのうち、第1部18Aのみ又は第2部18Bのみを備えていてもよい。
【0056】
図2において大きいドット模様で示す前記第2剛性パーツ22は、前記内外の側縁部15の間において脚前面から足甲に沿うように設けられている。前記第2剛性パーツ22の弾性率は前記第1剛性パーツ21の弾性率よりも小さい。
前記第2剛性パーツ22は舌片5内に形成された袋状の収容部(図示せず)に収容されていてもよい。なお、両剛性パーツ21,22の弾性率は同じであってもよい。
更に、前記第2剛性パーツ22の弾性率が前記第1剛性パーツ21の弾性率よりも大きくてもよい。
【0057】
つぎに、各部位やパーツの素材について説明する。
【0058】
図5において、前記各側縁部15、収容部15B、延長部15Xおよび踵部16の外装材を構成する剛性部材としては、例えば人工皮革であってもよい。人工皮革は高強度で伸びにくく、かつ、厚肉で縮みにくい(皺が寄りにくい)非伸縮材を構成する。なお、図5において、側縁部15および収容部15Bの剛性部材には大きなドットの模様が付され、踵部16の剛性部材には小さく、かつ、粗いドット模様が付されている。
【0059】
前記柔軟部17は図5において、格子模様で示されており、前記剛性部材よりも柔軟で例えば薄いメッシュ材で形成される。かかるメッシュ材としては、フィット性の高いウェアなどに用いられる伸縮性のメッシュ材が用いられていてもよい。前記柔軟部17のうち前記伸び抑制部18以外の部位は、その一部または全部がアッパー内外を貫く貫通孔になっていてもよい。
【0060】
図5の破線で示す前記非伸性の伸び抑制部18としては、例えば、前記メッシュ材にテープ材が貼り付けられ、更に枠状の樹脂フィルムで覆われていてもよい。テープ材の両端は側縁部15または踵部16に連結されていてもよい。
【0061】
前記非伸性の伸び抑制部18の第1部18Aおよび第2部18Bは前記非伸縮性の剛性部材よりも薄肉で曲げ剛性が小さく、縮み易い。そのため、爪先が脚から遠ざかる底屈動作時には、伸び抑制部18を含む柔軟部17は屈曲し易い。
【0062】
図1において前記第1剛性パーツ21は、大きなドットの模様が付されており、例えば、合成樹脂(プラストマー)の非発泡体で形成されている。なお、第1剛性パーツ21は合成樹脂の発泡体や金属で形成されていてもよい。
【0063】
図2において前記第2剛性パーツ22は、大きなドットの模様が付されており、例えば、合成樹脂の発泡体で形成され、前記第1剛性パーツ21よりも弾性率(ヤング率)が小さく、伸び易く、かつ、屈曲し易い。図3Bに示すように、前記第2剛性パーツ22は足の内外の中央に切欠き22N及び/又は貫通孔22Hを有していてもよい。
【0064】
前記第1剛性パーツ21よりも弾性率の小さい第2剛性パーツ22は、足の屈曲に伴い伸び易く、そのため、繰り返し変形しても損傷しにくい。
なお、第2剛性パーツ22は樹脂の非発泡体などで形成されていてもよい。
【0065】
図2の前記第2剛性パーツ22は前記舌片5を形成する厚肉のメッシュ材に比べ剛性が大きく、図5の背屈時に背屈を抑制するだけでなく、図1の前記第1剛性パーツ21が座屈変形するのを抑制するだろう。
【0066】
つぎに、各部材やパーツの配置と機能について説明する。
【0067】
図1の第1剛性パーツ21および図5の側縁部15は、共に、剛性が大きく、かつ、足関節J(図4)の前方において斜め前方の下方に向かってソール4まで延びる。また、図2の第2剛性パーツ22は図4の脚Lから足Fの前面に沿って配置されている。
【0068】
ここで、図1の接地初期の状態から図5の背屈状態に至る際には、前記側縁部15、収容部15B、第1剛性パーツ21(図1)および第2剛性パーツ22(図2)は過大な背屈を抑制するだろう。そのため、背屈時の足関節J(図4)の屈曲角度が過大になり難く、走行や跳躍のパフォーマンスが安定し易いだろう。
【0069】
更に、踵部16の後端部16Eと側縁部15の上端部15Eとを連結する第1部18Aは伸び難く、そのため、図1の接地の瞬間に踵部16の後端部16Eが下方に変位するのを抑制できる。したがって、接地姿勢が安定し易く、接地時間の短縮や跳躍力の増大が期待できる。
【0070】
図5に示すように、前記側縁部15の収容部15Bと延び抑制部18の第1部18Aは、逆V字状に配置されている。また、前記側縁部15の延長部15Xと前記踵部16とはV字状に配置されている。こうして、側縁部15、踵部16および抑制部18の第1部18Aは三角形状の柔軟部17を囲う。
【0071】
前記三角形状の柔軟部17は図4の足関節Jを覆うように配置されている。また、図5の前記延び抑制部18の第1部18Aの斜め後方の上方にも、柔軟部17が配置されている。
本例の場合、柔軟部17は符号17a,17b,17cで示すように配置されている。中足部に配置された前記柔軟部17cは剛性部材や他の部材に置き換えられていてもよい。また、各柔軟部17a,17b,17cを設けずに、踵部16の上方のアッパー1の背面部のみに柔軟部が設けられていてもよい。
【0072】
ここで、足が離地する際には、つまり、図5の背屈状態から底屈状態に変化する際には延び抑制部18の第1部18Aの後方の柔軟部17が脚Lの背部に押されて伸びる。更に、前記底屈状態に至ると前記延び抑制部18を含む柔軟部17は殆ど抵抗なく縮む。そのため、足の蹴り出し動作や跳躍動作においてロスが小さく、走行や跳躍のパフォーマンスの向上を期待することができる。
【0073】
図7および図8は実施例2を示す。
本例については図1図6の実施例1と相違する部分について主に説明する。
【0074】
図8に示すように、側縁部15は脚部12および足部11に形成され、脚部12から足部11に連なるように、収容部15Bが形成されている。前記収容部15Bは脚部12と足部11との間において屈曲しており、この屈曲した収容部15Bに図7の屈曲した第1剛性パーツ21が配置されている。第1剛性パーツ21は複数本の棒状の樹脂ロッドを互いに平行な状態に接合したものであってもよい。
【0075】
以上のとおり、図面を参照しながら好適な実施例を説明したが、当業者であれば、本明細書を見て、自明な範囲で種々の変更および修正を容易に想定するであろう。
たとえば、各剛性パーツはFRPや金属の他、硬質のゴムで形成されてもよい。
シューレースに代え、あるいは、シューレースに加えて、締付部材としてベルトが採用されてもよい。また、スパイクを有していなくてもよい。
したがって、そのような変更および修正は請求の範囲から定まる本発明の範囲内のものと解釈される。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は各種の競技用の他ランニング用の靴にも適用できる。
【符号の説明】
【0077】
1:アッパー 11:足部 12:脚部 13:内側部 14:外側部
15:側縁部 15B:収容部 15E:上端部 15F:前端部 15M:中間部 15X:延長部
16:踵部 16E:後端部 16M:中間部
17、17a~17c:柔軟部
18:伸び抑制部 18A:第1部 18B:第2部
21:第1剛性パーツ 22:第2剛性パーツ 22h:貫通孔 22N:切欠き
3:締付具 30:操作部
4:ソール 4F:前足部 41:スパイク
5:舌片
F:足 H:踵 L:脚 J:足関節 N:踝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8