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特許7202890生理学的応答性マイクロニードル送達システムに関連する方法及び組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-28
(45)【発行日】2023-01-12
(54)【発明の名称】生理学的応答性マイクロニードル送達システムに関連する方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
   A61M 37/00 20060101AFI20230104BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20230104BHJP
   A61K 38/28 20060101ALI20230104BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230104BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20230104BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20230104BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20230104BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230104BHJP
   C12M 1/00 20060101ALN20230104BHJP
【FI】
A61M37/00 512
A61K9/70
A61K38/28
A61K45/00
A61K47/36
A61K47/42
A61K47/46
A61P3/10
C12M1/00 A
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2018544087
(86)(22)【出願日】2017-02-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-03-14
(86)【国際出願番号】 US2017018319
(87)【国際公開番号】W WO2017143153
(87)【国際公開日】2017-08-24
【審査請求日】2020-02-14
【審判番号】
【審判請求日】2021-12-28
(31)【優先権主張番号】62/297,346
(32)【優先日】2016-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518073480
【氏名又は名称】ノース カロライナ ステート ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】グー チェン
(72)【発明者】
【氏名】イェ ヤンチー
【合議体】
【審判長】村上 聡
【審判官】佐々木 一浩
【審判官】宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0083618(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0153900(US,A1)
【文献】米国特許第5773255(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の生物学的障壁をわたって材料を輸送するためのデバイスであって、
各々が基端部及び先端部を有し、少なくとも1つの経路が前記基端部及び前記先端部にまたは前記基端部と前記先端部との間に配設された複数のマイクロニードルと、
前記マイクロニードルの前記基端部が結合または統合される基板と、
前記マイクロニードルアレイの前記基端部と接続されている少なくとも1つのリザーバーであって、前記リザーバーが、インスリン送達システムを備え、前記インスリン送達システムが、膵臓β細胞を含み、前記膵臓β細胞が、前記生物学的障壁をわたって輸送されるインスリンを生成かつレシピエントからのグルコースシグナルを検出する、前記リザーバーと、
前記マイクロニードル内に統合されたグルコースシグナル増幅器システムであって、前記レシピエントからの前記グルコースシグナルを増幅することができる構成要素を備え、前記細胞が、前記グルコースシグナル増幅器システムからの増幅されたグルコースシグナルに基づいて、インスリンを生成するか、または生成されるインスリンの量を変更する、前記グルコースシグナル増幅器システムと、を備える、前記デバイス。
【請求項2】
前記生物学的障壁をわたって輸送される前記インスリンの体積または量が、前記グルコースシグナルに基づいて変更され得る、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記レシピエントからの前記グルコースシグナルが、前記グルコースシグナル増幅器システムからの増幅なしでは検出されるのに不十分である、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記リザーバーが、半透過性である、請求項1~のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記リザーバーが、アルギン酸マイクロゲルを含む、請求項1~のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記リザーバーが、治療的、予防的、または診断的薬剤を含む、請求項1~のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記グルコースシグナル増幅器システムが、自己組織化重合体ナノサイズ小胞を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記グルコースシグナル増幅器が、グルコースオキシダーゼ、α-アミラーゼ、及びグルコアミラーゼを含む、請求項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記グルコースシグナル増幅器システムが、前記マイクロニードルの前記先端部内にある、請求項1~のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項10】
治療を必要とする対象(ヒトを除く)における疾患を治療する方法であって、
a)マイクロニードルパッチを前記対象に提供することであって、前記マイクロニードルパッチが、請求項1に記載のデバイスである、前記提供することと、
b)前記マイクロニードルを前記生物学的障壁内に挿入することと、
c)前記インスリンを、前記マイクロニードルを通して前記生物学的障壁内に送達することであって、送達されるインスリンの量または体積が、前記グルコースシグナル増幅器システムから受容されるグルコースシグナルによって決定される、前記送達することと、を含む、前記方法。
【請求項11】
前記リザーバーが、細胞生成物を送達するのに使用され得る材料マトリックスで構成される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記リザーバーが、アルギン酸マイクロゲルを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記グルコースシグナル増幅器システムが、グルコースシグナルを拡大し、それにより前記対象において存在する前記グルコースシグナルの強度に基づいて輸送されるインスリンの前記体積または量を変更する、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記生物学的障壁をわたって輸送される前記インスリンの体積または量が、前記グルコースシグナルに基づいて変更され得る、請求項1013のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記レシピエントからの前記グルコースシグナルが、前記グルコースシグナル増幅器システムからの増幅なしでは検出されるのに不十分である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記グルコースシグナル増幅器システムが、自己組織化重合体ナノサイズ小胞を含む、請求項1015のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記グルコースシグナル増幅器が、グルコースオキシダーゼ、α-アミラーゼ、及びグルコアミラーゼを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記グルコースシグナル増幅器システムが、前記マイクロニードルの前記先端部内にある、請求項1017のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記対象が、糖尿病と診断されている、請求項1018のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
治療的、予防的、または診断的薬剤を生物学的障壁をわたって送達するための部品のキットであって、
a)各々が基端部及び先端部を有する複数のマイクロニードル、ならびに前記マイクロニードルの前記基端部が結合または統合される基板を備える、マイクロニードルパッチと、
b)前記マイクロニードルアレイの前記基端部と接続されている少なくとも1つのリザーバーであって、前記リザーバーが、インスリン送達システムを備え、前記インスリン送達システムが、膵臓β細胞を含み、前記膵臓β細胞が、前記生物学的障壁をわたって輸送されるインスリンを生成かつレシピエントからのグルコースシグナルを検出する、前記リザーバーと、
c)前記マイクロニードル内に統合されたグルコースシグナル増幅器システムであって、送達されるインスリンの体積または量が、前記グルコースシグナル増幅器システムから受容されるグルコースシグナルに基づいて変更され、前記細胞が、前記グルコースシグナル増幅器システムからの増幅されたグルコースシグナルに基づいて、インスリンを生成するか、または生成されるインスリンの量を変更する、前記グルコースシグナル増幅器システムと、を含む、前記キット。
【請求項21】
前記リザーバーが、細胞生成物を送達するのに使用される材料マトリックスで構成される、請求項20に記載のキット。
【請求項22】
前記リザーバーが、半透過性である、請求項20または21に記載のキット。
【請求項23】
前記リザーバーが、アルギン酸マイクロゲルを含む、請求項20に記載のキット。
【請求項24】
前記グルコースシグナル増幅器システムが、自己組織化重合体ナノサイズ小胞を含む、請求項20に記載のキット。
【請求項25】
前記グルコースシグナル増幅器が、グルコースオキシダーゼ、α-アミラーゼ、及びグルコアミラーゼを含む、請求項20に記載のキット。
【請求項26】
前記グルコースシグナル増幅器システムが、前記マイクロニードルの前記先端部内にある、請求項2025のいずれか1項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年2月19日出願の米国仮特許出願第62/297,346号の利益を主張し、これによりこの仮特許出願の全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
真性糖尿病は、最も困難な慢性疾患のうちの1つとして、現在世界中で3億8700万人を超える人々が発症しており、この数は2030年までに約5億人まで増加すると予想されている(J.E.Shaw et al.Diabetes Research and Clinical Practice 2010,87,4、B.Belgium,IDF Diabetes Atlas,6th edn,International Diabetes Federation 2013)。生涯にわたる外因性インスリンの提供は、1型糖尿病の治療にとって必須である(Matriano et al.Diabetes Care 2013,36Supply1,S 67、R.A.Hayward,Jama 1997,278,1663、D.R.Owens,B.Zinman,G.B.Bolli,The Lancet2001,358,739、R.A.Hayward,Jama 1997,278,1663、D.R.Owens et al.The Lancet 2001,358,739)。しかしながら、2014年には世界中で4900万人の糖尿病関連死の予想が存在した。従来のインスリン注射の重要な制約は不適切な血糖制御にあり、これは失明、肢切断、及び腎不全などの糖尿病合併症をもたらす。逆に、インスリンでの過剰治療は低血糖を引き起こし、これは行動及び認知障害、発作、脳損傷、または死をもたらし得る(Mo et al.Chemical Society Reviews 2014,43,3595、C.Ricordi et al.Nature Reviews Immunology 2004,4,259、G.Steil,Advanced Drug Delivery Reviews 2004,56,125、Z.Gu et al.Chemical Society Reviews 2011,40,3638)。
【0003】
1型糖尿病の治療のために、インスリン生成細胞の移植が集中的に探究されている(S.Schneider et al.Transplantation 2008,86,1762)。しかしながら、移植された細胞の宿主認識、ドナー細胞への依存、及び広範な免疫抑制療法の必要性のために、直接的な細胞の埋め込みは、糖尿病管理において限定された役割を有している(S.Merani et al.British Journal of Surgery 2008,95,1449、R.Nishimura et al.Transplantation Proceedings 2011,43,3239、A.R.Pepper et al.Nature Biotechnology 2015,33,518)。代替的な技術は、膵臓β細胞を半透過性の容器内に被包し、被包された細胞への栄養素及び酸素の拡散及び輸送を依然として可能にしながら、それらを免疫系から単離し、保護することである(H. Zimmermann et al.Current Diabetes Reports 2007,7,314、E.Pedraza et al.,Proceedings of the National Academy of Sciences 2012,109,4245、C.C.Lin et al.Proceedings of the National Academy of Sciences 2011,108,6380)。それにも関わらず、細胞カプセル埋め込みまたは撤去は通常、外科手順を必要とする。より重要なことに、細胞カプセルの生体適合性はしばしば損なわれ、持続的な炎症、異物巨細胞の形成、線維症、周囲組織への損傷、及びグルコースを制御するための埋め込みの失敗をもたらす(O.Veiseh,R.Langer,Nature 2015,524,39、Z.Gu,A.A.Aimetti,Q.Wang,T.T.Dang,Y.Zhang,O.Veiseh,H.Cheng,R.S.Langer,D.G.Anderson et al.ACS Nano 2013,7,4194、W.Tai et al.al.Biomacromolecules 2014,15,3495)。組成物を、それを必要とする対象に送達するためのデバイス及び方法であって、手術を必要としないデバイス及び方法が、当該技術分野において必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
対象の生物学的障壁をわたって材料を輸送するためのデバイスであって、各々が基端部及び先端部を有し、少なくとも1つの経路が基端部及び先端部にまたは基端部と先端部との間に配設された複数のマイクロニードルと、マイクロニードルの基端部が結合または統合される基板と、マイクロニードルアレイの基端部と接続されている少なくとも1つのリザーバーであって、リザーバーが、薬剤送達システムを備え、薬剤送達システムが、生物学的障壁をわたって輸送される薬剤、または生物学的障壁をわたって輸送される薬剤を生成するための手段、及びレシピエントからの生理学的シグナルを検出するための手段を含む、リザーバーと、シグナル増幅器システムであって、レシピエントからの生理学的シグナルを増幅することができる構成要素を備える、シグナル増幅器システムとを備える、デバイスが本明細書に開示される。
【0005】
対象の生物学的障壁をわたって材料を輸送するためのデバイスであって、各々が基端部及び先端部を有し、少なくとも1つの経路が基端部及び先端部にまたは基端部と先端部との間に配設された複数のマイクロニードルと、マイクロニードルの基端部が結合または統合される基板と、マイクロニードルアレイの基端部と接続されている少なくとも1つのリザーバーであって、リザーバーが、薬剤送達システムを備え、薬剤送達システムが、生物学的障壁をわたって輸送される薬剤、または生物学的障壁をわたって輸送される薬剤を生成するための手段、及び生理学的シグナルを検出するための手段を含み、生物学的障壁をわたって輸送される薬剤の体積または量が生理学的シグナルに基づいて変更され得るように、薬剤送達システムが、フィードバック構成要素を備える、リザーバーとを備える、デバイスもまた本明細書に開示される。
【0006】
治療を必要とする対象における疾患を治療する方法であって、a)マイクロニードルパッチを対象に提供することであって、マイクロニードルパッチが、i)各々が基端部及び先端部を有する複数のマイクロニードルと、ii)マイクロニードルの基端部が結合または統合される基板と、iii)マイクロニードルアレイの基端部と接続されている少なくとも1つのリザーバーであって、リザーバーが、薬剤送達システムを備え、薬剤送達システムが、生物学的障壁をわたって輸送される薬剤、または生物学的障壁をわたって輸送される薬剤を生成するための手段、及びレシピエントからの生理学的シグナルを検出するための手段を含む、リザーバーと、iv)シグナル増幅器システムであって、レシピエントからの生理学的シグナルを増幅することができる構成要素を備える、シグナル増幅器システムとを備える、提供することと、b)マイクロニードルを生物学的障壁内に挿入することと、c)薬剤を、マイクロニードルを通して生物学的障壁内に送達することであって、送達される薬剤の量または体積が、シグナル増幅器システムから受容されるシグナルによって決定される、送達することとを含む、方法も更に本明細書に開示される。
【0007】
治療を必要とする対象における疾患を治療する方法であって、a)マイクロニードルパッチを対象に提供することであって、マイクロニードルパッチが、i)各々が基端部及び先端部を有する複数のマイクロニードルと、ii)マイクロニードルの基端部が結合または統合される基板と、iii)マイクロニードルアレイの基端部と接続されている少なくとも1つのリザーバーであって、リザーバーが、薬剤送達システムを備え、薬剤送達システムが、生物学的障壁をわたって輸送される薬剤、または生物学的障壁をわたって輸送される薬剤を生成するための手段、及び生理学的シグナルを検出するための手段を含み、生物学的障壁をわたって輸送される薬剤の体積または量が生理学的シグナルに基づいて変更され得るように、薬剤送達システムが、フィードバック構成要素を備える、リザーバーとを備える、提供することと、b)マイクロニードルを生物学的障壁内に挿入することと、c)薬剤を、マイクロニードルを通して生物学的障壁内に送達することであって、送達される薬剤の量または体積が、生理学的シグナルに基づく、送達することとを含む、方法もまた本明細書に開示される。
【0008】
治療的、予防的、または診断的薬剤を生物学的障壁をわたって送達するための部品のキットであって、a)各々が基端部及び先端部を有する複数のマイクロニードル、ならびにマイクロニードルの基端部が結合または統合される基板を備える、マイクロニードルパッチと、b)マイクロニードルアレイの基端部と接続されている少なくとも1つのリザーバーであって、リザーバーが、薬剤送達システムを備え、薬剤送達システムが、生物学的障壁をわたって輸送される薬剤、または生物学的障壁をわたって輸送される薬剤を生成するための手段、及びレシピエントからの生理学的シグナルを検出するための手段を含む、リザーバーと、c)シグナル増幅器システムであって、送達される薬剤の体積または量が、シグナル増幅器システムから受容されるシグナルに基づいて変更される、シグナル増幅器システムとを含む、キットが本明細書に開示される。
【0009】
治療的、予防的、または診断的薬剤を生物学的障壁をわたって送達するための部品のキットであって、a)各々が基端部及び先端部を有する複数のマイクロニードル、ならびにマイクロニードルの基端部が結合または統合される基板を備える、マイクロニードルパッチと、b)マイクロニードルアレイの基端部と接続されている少なくとも1つのリザーバーであって、リザーバーが、薬剤送達システムを備え、薬剤送達システムが、生物学的障壁をわたって輸送される薬剤、または生物学的障壁をわたって輸送される薬剤を生成するための手段、及びレシピエントからの生理学的シグナルを検出するための手段を含む、リザーバーとを含む、キットもまた本明細書に開示される。
【0010】
対象の生物学的障壁をわたって材料を輸送するためのデバイスであって、
各々が基端部及び先端部を有し、少なくとも1つの経路が基端部及び先端部にまたは基端部と先端部との間に配設された複数のマイクロニードルと、
マイクロニードルの基端部が結合または統合される基板と、
マイクロニードルアレイの基端部と接続されている少なくとも1つのリザーバーであって、リザーバーが、薬剤送達システムを備え、薬剤送達システムが、生物学的障壁をわたって輸送される薬剤、または生物学的障壁をわたって輸送される薬剤を生成するための手段、及びレシピエントからの生理学的シグナルを検出するための手段を含む、リザーバーとを備える、デバイスが本明細書に開示される。
【0011】
薬剤送達システムは、生物学的障壁をわたって輸送される薬剤の体積または量が生理学的シグナルに基づいて変更され得るように、例えば、フィードバック構成要素を備え得る。フィードバック構成要素は、シグナルが検出されるときは薬剤送達システムが薬剤をレシピエントに送達し得るが、シグナルが検出されないときは薬剤が送達されないように、「オン及びオフ」スイッチを備え得る。逆に、シグナルの検出は逆の効果を有してもよく、シグナルが検出されない限り、薬剤送達システムが薬剤をレシピエントに送達せず、これは、薬剤送達システムにレシピエントへの送達のための薬剤を放出させない。説明として、フィードバック構成要素はレシピエントにおける病原体の存在(薬剤)を検出し得、薬剤が検出されるとき、フィードバック構成要素はリザーバーから抗体の放出を可能にし得る。
【0012】
別の例において、フィードバック構成要素は、pHまたは温度などの生理学的シグナルの変化を検出し得る。フィードバック構成要素は、「カットオフ値」を含み得ることで、pHもしくは温度が特定の値だけ変化するか、または特定の数値(例えば、6.5未満のpH、もしくは例えば、99.1超の温度)に到達したとき、フィードバック構成要素が、薬剤の放出、または放出され、その後レシピエントに投与される薬剤の量の変更を可能にする。
【0013】
フィードバック構成要素はまた、検出されるシグナルの量に基づいて放出される薬剤の量または体積も調節し得ることで、より多い量のシグナルの検出がより多い量の薬剤の放出をもたらし得るか、または逆に、より多い量のシグナルの検出がより少ない量の薬剤の放出をもたらし得る。
【0014】
任意で、デバイスは、シグナル増幅器システムを備えてもよく、シグナル増幅器システムは、レシピエントからの生理学的シグナルを増幅することができる構成要素を備える。シグナル増幅器システムは、シグナルを増加させることによって機能し、これは、薬剤送達システムによって検出されるシグナルを増加させる。これは、生理学的シグナルにおける非常に小さな変化を検出する必要性が存在する場合、または薬剤送達システムがシグナルの増幅なしでは変化を検出するのに十分に感受性ではない場合に行われ得る。シグナル増幅器システムの一例を、実施例1に見出すことができる。
【0015】
シグナル増幅器システムは、マイクロニードル内に統合され得る。例えば、シグナル増幅器システムは、マイクロニードルの外側のコーティングとして、またはマイクロニードルの先端部の内側のいずれかで、マイクロニードルの先端部内にあり得る。
【0016】
一態様において、検出される生理学的シグナルは、レシピエントにおいて存在する任意の物質であり得る。例えば、生理学的シグナルは、生物学的物質または薬物であり得る。物質は、レシピエントにおいて天然に存在し得るか、非内因性、つまり外来性物質であり得るかのいずれかである。別の態様において、対象における生理学的応答は、pH及び温度を含む生理学的環境因子を含み得る。生理学的シグナルの例としては、グルコース、コレステロール、ビリルビン、クレアチン、代謝酵素、ヘモグロビン、ヘパリン、凝固因子、尿酸、癌胎児抗原または他の腫瘍抗原、生殖ホルモン、酸素、pH、温度、アルコール、タバコ代謝物、ならびに違法薬物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
レシピエントに送達されるリザーバー内の薬剤は、治療的、予防的、または診断的薬剤であり得る。例えば、薬剤は、ペプチド、タンパク質、炭水化物、核酸分子、脂質、有機分子、生物活性無機分子、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。例えば、幅広い薬物が、本マイクロニードルデバイス及び方法による送達のために製剤化され得る。本明細書で使用される場合、「薬物」または「薬物製剤」という用語は、治療的、予防的、もしくは診断的薬剤、または刺青及び化粧品などのための薬学的賦形剤及び物質を含む、生体組織への導入に好適であり得る他の物質を指す。薬物は、生物学的活性を有する物質であり得る。薬物製剤は、液体溶液、ゲル、固体粒子(例えば、マイクロ粒子もしくはナノ粒子)、またはこれらの組み合わせなどの様々な形態を含み得る。薬物は、小分子、大(すなわち、巨大)分子、またはこれらの組み合わせを含み得る。代表的な非限定的ではない実施形態において、薬物は、アミノ酸、ワクチン、抗ウイルス剤、遺伝子送達ベクター、インターロイキン阻害剤、免疫調節剤、向神経因子、神経保護剤、抗悪性腫瘍剤、化学療法剤、多糖類、抗凝固剤、抗生物質、鎮痛剤、麻酔剤、抗ヒスタミン剤、抗炎症剤、及びウイルスの中から選択され得る。薬物は、天然に存在するか、合成されるか、または組み換えで生成される、好適なタンパク質、ペプチド、及びこれらの断片から選択され得る。一実施形態において、薬物製剤は、インスリンを含む。
【0018】
薬物製剤は、当該技術分野において既知である、pH修飾剤、粘度修飾剤、希釈剤などを含む1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を更に含み得る。具体的には、薬剤は、インスリンであり得る。
【0019】
本明細書に開示されるデバイスは、それ自体の放出用の薬剤、または生物学的障壁リザーバーをわたって輸送される薬剤を生成するための手段を含み得る。薬剤を生成するための手段の一例は、細胞である。細胞は、ヒト細胞などの哺乳動物細胞であっても、レシピエントに投与するための薬剤を生成することができる任意の他の供給源に由来する細胞あってもよい。例えば、細胞は、膵臓β細胞または幹細胞分化ヒト膵臓細胞であり得る。
【0020】
薬剤、または薬剤を生成するための手段は、例えば、半透過性であるリザーバー内に配設され得る。これは、レシピエントとの流体の交換を可能にし得ることで、フィードバック構成要素がレシピエントと流体連通の状態になり、それによりレシピエントの生理学的シグナルの変化を検出し得る。例えば、リザーバーは、レシピエントからの生理学的シグナルの変化に対して感受性である細胞を含み得る。レシピエントにおけるそのような生理学的変化は、フィードバック構成要素に関して上述したように、細胞を刺激して、薬剤を放出させるか、または薬剤の放出を停止させ得る。一例において、リザーバーは、アルギン酸マイクロゲルを含み得る。
【0021】
一例において、シグナル増幅器システムは、グルコースシグナル増幅器(本明細書において「GSA」と称する)を含む。シグナル増幅器システムは、自己組織化重合体ナノサイズ小胞を含み得る。具体的な例として、グルコースシグナル増幅器は、グルコースオキシダーゼ、α-アミラーゼ、及びグルコアミラーゼを含み得る。
【0022】
マイクロニードル自体に関して、それらは、金属、セラミックス、半導体、有機物、重合体、及び複合体を含む様々な材料から構築され得る。好ましい構築材料としては、薬学等級のステンレス鋼、金、チタン、ニッケル、鉄、スズ、クロム、銅、パラジウム、白金、これらの合金または他の金属、ケイ素、二酸化ケイ素、及び重合体が挙げられる。代表的な生物分解性重合体としては、乳酸及びグリコール酸のポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸-コ-グリコール酸などのヒドロキシ酸の重合体、ならびにPEG、ポリ無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリウレタン、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、ポリ(乳酸-コ-カプロラクトン)との共重合体が挙げられる。代表的な非生物分解性重合体としては、ポリカーボネート、ポリエステル、及びポリアクリルアミドが挙げられる。
【0023】
マイクロニードルは、生物学的障壁内に挿入される間、最大数日間にわたって定位置ある間、及び除去される間に無傷であるような機械的強度を有するべきである。マイクロニードルが生物分解性重合体で形成される実施形態において、マイクロニードルは、少なくともマイクロニードルがその意図される目的(例えば、薬物を送達するためのその導管機能)を果たすのに十分に長く無傷でなくてはならない。マイクロニードルは、エチレンオキシドまたはガンマ線照射などの標準的な方法を使用して滅菌されるべきである。
【0024】
マイクロニードルは、直線状または先細りの軸を有し得る。好ましい一実施形態において、マイクロニードルの直径は、マイクロニードルの基端部で最大となり、端遠位基部の点まで先細りとなる。マイクロニードルはまた、直線状(先細りではない)部分及び先細りの部分の両方を含む軸を有するように製作されてもよい。ニードルはまた、先細りの端部を全く有しなくてもよく、すなわち、それらは、単に鈍い先端部または平坦な先端部を有する円柱であってもよい。実質的に均一な直径を有するが、一点へと先細りしない中空マイクロニードルは、本明細書において、「マイクロチューブ」と称される。本明細書で使用される場合、「マイクロニードル」という用語は、別段示されない限り、マイクロチューブ及び先細りのニードルの両方を含む。
【0025】
マイクロニードルは、基板に対して垂直に、またはある角度で配向され得る。好ましくは、基板の単位面積当たりでより大きい密度のマイクロニードルが提供され得るように、マイクロニードルは、基板に対して垂直に配向される。マイクロニードルのアレイは、マイクロニードル配向、高さ、または他のパラメータの混合を含み得る。
【0026】
マイクロニードルは、垂直に円形の断面を有する軸で形成されてもよく、断面は、非円形であってもよい。例えば、マイクロニードルの断面は、多角形(例えば、星形、方形、三角形)、長方形、または別の形状であってもよい。基部が約200~600μmであり得、先端部が1~20μmであり得るように、断面寸法は、約1μm~1000μmであり得る。一実施形態において、マイクロニードルは、基部がおよそ400μm及び先端部がおよそ5μmであり得る。
【0027】
マイクロニードルの長さは典型的には、約10μm~1mm、好ましくは400μm~1mmである。例えば、マイクロニードルの長さは、およそ800μmであり得る。長さは、特定の用途に対して選択され、これは、挿入された部分及び挿入されていない部分を構成する。マイクロニードルのアレイは、例えば、様々な長さ、外径、内径、断面形状、及びマイクロニードル間の間隔を有する、マイクロニードルの混合を含み得る。
【0028】
リザーバー内に貯蔵された、またはリザーバー内で生成された薬剤が、リザーバーから出て、マイクロニードル先端部を通して標的組織内へと流動し得るように、リザーバーは、マイクロニードルの先端部に接続され得る。リザーバーは、薬剤が送達される前に、好適で漏れのない薬剤の貯蔵または薬剤を生成する手段を提供するためにある。
【0029】
単一のマイクロニードルデバイスのリザーバーは、互いから、かつ/またはアレイ内のマイクロニードルのある部分から単離される、複数のコンパートメントを含み得る。デバイスは、例えば、異なるニードルを通して異なる薬剤を送達するように、または異なる速度でもしくは異なる時間に同一の薬剤もしくは異なる薬剤を送達するように提供され得る。あるいは、異なるコンパートメントの内容物は、例えば、材料の混合を可能にするように、コンパートメント間の障壁を貫通させること、または別様に除去することによって互いに組み合わされてもよい。
【0030】
マイクロニードル及び基板は、当業者にとって既知の方法によって作製される。例としては、ケイ素、金属、重合体、及び他の材料内に小さな機械構造を作製することによる微細製作プロセスが挙げられる。中空マイクロニードルの三次元アレイは、例えば、ドライエッチングプロセス、リソグラフィー的に画定された重合体中の微細鋳型作製及び選択的側壁電気メッキ、またはエポキシ鋳型トランスファーを使用する直接的微細成形技術の組み合わせを使用して製作され得る。これらの方法は、例えば、1998年6月10日出願の米国第09/095,221号、1999年5月21日出願の米国第09/316,229号、Henry,et al.,“Micromachined Needles for the Transdermal Delivery of Drugs,”Micro Electro Mechanical Systems,Heidelberg,Germany,pp.494-98(Jan.26-29,1998)に記載される。
【0031】
治療を必要とする対象における疾患を治療する方法であって、
a)マイクロニードルパッチを対象に提供することであって、マイクロニードルパッチが、
i)各々が基端部及び先端部を有する複数のマイクロニードルと、
ii)マイクロニードルの基端部が結合または統合される基板と、
iii)マイクロニードルアレイの基端部と接続されている少なくとも1つのリザーバーであって、リザーバーが、薬剤送達システムを備え、薬剤送達システムが、生物学的障壁をわたって輸送される薬剤、または生物学的障壁をわたって輸送される薬剤を生成するための手段、及びレシピエントからの生理学的シグナルを検出するための手段を含む、リザーバーと、
b)マイクロニードルを生物学的障壁内に挿入することと、
c)薬剤を、マイクロニードルを通して生物学的障壁内に送達することであって、送達される薬剤の量または体積が、シグナル増幅器システムから受容されるシグナルによって決定される、送達することとを含む、方法もまた本明細書に開示される。
【0032】
上記に考察したように、薬剤送達システムは、生物学的障壁をわたって輸送される薬剤の体積または量が生理学的シグナルに基づいて変更され得るように、例えば、フィードバック構成要素を備え得る。フィードバック構成要素は、シグナルが検出されるときに薬剤送達システムが薬剤をレシピエントに送達し得るように、「オン及びオフ」スイッチを本質的に備え得る。逆に、シグナルの検出は逆の効果を有してもよく、それにより薬剤送達システムにレシピエントへの送達のための薬剤を放出させない。説明として、フィードバック構成要素はレシピエントにおける病原体の存在を検出し得、分析物が検出されるとき、フィードバック構成要素はリザーバーから抗体の放出を可能にし得る。
【0033】
上記に考察したように、デバイスは、シグナル増幅器システムを備えてもよく、シグナル増幅器システムは、レシピエントからの生理学的シグナルを増幅することができる構成要素を備える。シグナル増幅器システムは、シグナルを増加させることによって機能し、これは、薬剤送達システムによって検出されるシグナルを増加させる。これは、生理学的シグナルにおける非常に小さな変化を検出する必要性が存在する場合、または薬剤送達システムがシグナルの増幅なしでは変化を検出するのに十分に感受性ではない場合に行われ得る。シグナル増幅器システムの一例を、実施例1に見出すことができる。
【0034】
キットもまた本明細書に開示される。キットは、本明細書に開示される方法とともに使用するための部品を含み得る。例えば、キットは、本明細書に開示されるデバイスを形成するのに必要とされる部品を含み得る。治療的、予防的、または診断的薬剤を生物学的障壁をわたって送達するための部品のキットであって、a)各々が基端部及び先端部を有する複数のマイクロニードル、ならびにマイクロニードルの基端部が結合または統合される基板を備える、マイクロニードルパッチと、b)マイクロニードルアレイの基端部と接続されている少なくとも1つのリザーバーであって、リザーバーが、薬剤送達システムを備え、薬剤送達システムが、生物学的障壁をわたって輸送される薬剤、または生物学的障壁をわたって輸送される薬剤を生成するための手段、及びレシピエントからの生理学的シグナルを検出するための手段を含む、リザーバーとを含む、キットが開示される。薬剤送達システムは、フィードバック構成要素を更に備え得る。シグナル増幅器システムもまたキットの一部として開示され得、これは、本明細書で考察される。キットはまた、文書による使用説明書も含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1A】膵臓β細胞及びグルコースシグナル増幅器(GSA)と統合された、マイクロニードル-アレイパッチに基づくグルコース応答システム(GRS)の模式図を示す。GSAなしでは、正常血糖または高血糖状態のいずれにおいてもMNパッチからのわずかなインスリン放出が存在することを示す。MNパッチは、架橋ヒアルロン酸(灰色)で構成される。
図1B】膵臓β細胞及びグルコースシグナル増幅器(GSA)と統合された、マイクロニードル-アレイパッチに基づくグルコース応答システム(GRS)の模式図を示す。GSAありでは、高血糖状態によって引き起こされる有意に促進されたインスリン放出が存在することを示す。MNパッチは、(上から下へ)α-アミロース及びGSAの組織化した層を包埋する架橋ヒアルロン酸で構成される。
図2A】グルコースシグナル増幅器(GSA)の特性評価を示す。400mg/dLのグルコース溶液中、37℃で、それぞれ20分間、2時間、及び6時間のインキュベートした前後の、酵素被包GSAのTEM画像を示す。スケールバーは、200nmである。
図2B】グルコースシグナル増幅器(GSA)の特性評価を示す。(上)は、400mg/dLのグルコース溶液中、37℃で、2時間のインキュベートした前後の、FITC-GA充填GSA溶液の蛍光2.5D画像を示す。(下)は、示される白色破線に沿った蛍光強度の分布を示す。(a.u.は、「任意単位」を表す)。
図2C】グルコースシグナル増幅器(GSA)の特性評価を示す。400mg/dLのグルコース溶液中、6時間のインキュベートした前後の、GSAのサイズ分布を示す。
図2D】グルコースシグナル増幅器(GSA)の特性評価を示す。酸素濃度分子プローブを含有する異なるグルコースレベルの溶液中でインキュベートした、GSAのリン光寿命プロファイルを示す。
図2E】グルコースシグナル増幅器(GSA)の特性評価を示す。400mg/dLのグルコース溶液中のGOxの全用量または半用量を充填したGSAの、リン光寿命プロファイルを示す。
図2F】グルコースシグナル増幅器(GSA)の特性評価を示す。37℃での、異なるグルコース濃度を有する溶液中のGSAの、330nmでの紫外吸収の強度を示す。エラーバーは、標準偏差(s.d.)を示す(n=3)。
図3A】GSAのインビトロのグルコース応答研究ならびにMNパッチ及びL-S GRSの特性評価を示す。37℃での、異なるグルコース濃度を有する溶液中のGSAの、インビトロの蓄積酵素放出プロファイルを示す。*100または0mg/dLのグルコース濃度溶液中のものとの比較での、400mg/dLのグルコース溶液中のGSAのP<0.05。
図3B】GSAのインビトロのグルコース応答研究ならびにMNパッチ及びL-S GRSの特性評価を示す。放出された酵素によって触媒されたα-アミロース加水分解からのグルコース生成を示す。*100または0mg/dLのグルコース溶液中のものとの比較での、400mg/dLのグルコース溶液中のGSAのP<0.05。
図3C】GSAのインビトロのグルコース応答研究ならびにMNパッチ及びL-S GRSの特性評価を示す。マイクロ流体技術デバイスを通した異なるグルコース溶液の流入(100及び400mg/dL)によって刺激された、L-S GRSの分泌速度プロファイルを示す。(n=3)。
図3D】GSAのインビトロのグルコース応答研究ならびにMNパッチ及びL-S GRSの特性評価を示す。インスリン(緑色)及び核(青色)で染色した、膵臓β細胞カプセルの免疫蛍光画像を示す。スケールバーは、500μmである。
図3E】GSAのインビトロのグルコース応答研究ならびにMNパッチ及びL-S GRSの特性評価を示す。(a~c)は、被包後1日目~3日目の膵臓β細胞の蛍光画像を示す。カルシウム-AM(生、緑色)及びエチジウムホモ二量体(死、赤色)で細胞を染色した。スケールバーは、500μmである。(右下)被包後1日目~3日目の時間の関数としての、細胞カプセルのインスリン分泌インデックス。エラーバーは、標準偏差を示す。(n=3)。
図3F】GSAのインビトロのグルコース応答研究ならびにMNパッチ及びL-S GRSの特性評価を示す。マイクロ流体技術デバイスを使用する、L-S GRSからの刺激されたインスリン分泌の模式図を示す。マイクロ流体技術チャネルを通して流動した異なるグルコース濃度を有するKRB、及び膵臓β細胞カプセルによって分泌されたインスリンを、出口から回収した。
図3G】GSAのインビトロのグルコース応答研究ならびにMNパッチ及びL-S GRSの特性評価を示す。GSA充填MNパッチの写真を示す。スケールバーは、1cmである。
図3H】GSAのインビトロのグルコース応答研究ならびにMNパッチ及びL-S GRSの特性評価を示す。MNパッチのSEM画像を示す。スケールバーは、500μmである。
図3I】GSAのインビトロのグルコース応答研究ならびにMNパッチ及びL-S GRSの特性評価を示す。L-S GRSの蛍光顕微鏡画像を示す。MNパッチにローダミン標識GSAを充填し、カルシウムAM染色した膵臓β細胞カプセルをMNパッチの背部に位置付けた。スケールバーは、500μmである。
図4A】1型糖尿病治療のためのL-S GRSのインビボ研究を示す。マウスの背側皮膚がMNパッチで経皮治療されたことを示す。スケールバーは、1mmである(上)。H&E染色した治療した皮膚の断面を、黒色破線内の領域によって示す(下)。皮膚筋肉及び脂肪組織の領域をそれぞれ、M及びFと標識する。スケールバーは、200μmである。
図4B】1型糖尿病治療のためのL-S GRSのインビボ研究を示す。STZ誘導1型糖尿病マウス治療のためのMNパッチのインビボ研究を示す。マウスを、様々なMN試料、つまりGRSを有しない空MN(GRSなし)、L-GRSとのみ統合されたMN(L-GRS)、S-GRSとのみ統合されたMN(S-GRS)、L-S-GRSと統合されたMN(L-S GRS)、L-S-GRSと統合されているが、S-GRS中にGOxを有しないMN(L-S GRS(GOxなし))、及びL-S-GRSと統合されているが、S-GRS中にα-アミロースを有しないMN(L-S GRS(AMなし))での経皮投与に供した。*対照群との比較での、L-S GRSと統合されたMNの投与のP<0.05。
図4C】1型糖尿病治療のためのL-S GRSのインビボ研究を示す。投与の6時間後の、追加のMN(L-S GRS)で治療した糖尿病マウスのBGLの変化を示す。*追加の投与なしとの比較での、MNの追加の投与のP<0.05。黒色矢印は、投与点を示す。
図4D】1型糖尿病治療のためのL-S GRSのインビボ研究を示す。MN投与(MN L-S GRSまたは空MN(GRSを有しないMN))後の健康なマウスのBGLの変化を示す。エラーバーは、標準偏差を示す。(n=5)。
図4E】1型糖尿病治療のためのL-S GRSのインビボ研究を示す。健康な対照マウスとの比較での、L-S GRSを有するMNの投与の2時間後の糖尿病マウスに対する負荷試験を示す。投与時点を、黒色矢印によって指摘した。
図4F】1型糖尿病治療のためのL-S GRSのインビボ研究を示す。0分の血糖読み取りをベースラインに設定して、応答性を120分間以内に曲線下面積(AUC)に基づいて計算したことを示す。エラーバーは、標準偏差を示す。(n=5)。*健康なマウスとの比較での、MN L-S GRS投与で治療した糖尿病マウスのP<0.05。
図5】低酸素感受性ヒアルロン酸(HS-HA)のグルコース応答機構を示す。
図6】(左から右へ)4℃のPBS緩衝液、37℃のPBS緩衝液、及び37℃の対照レベルのグルコース濃度(100mg/dL)を含有するPBS緩衝液とともにそれぞれ6時間インキュベートした後の、GSAのDLS測定のTEM画像を示す。
図7】GAとAAとの異なる酵素重量比での正規化したグルコース生成率を示す。エラーバーは、標準偏差を示す。(n=3)。
図8】3mg/mLのAA及び6mg/mLのGAを有する10mg/mLのα-アミロース溶液中での、α-アミロースのグルコースへの変換を示す。エラーバーは、標準偏差を示す。(n=3)。
図9A】天然状態の(a)AA及び(b)GA、ならびに400mg/dLのグルコースを有する溶液中37℃で6時間インキュベートしたGSAから放出されたものの、CDスペクトルを示す。
図9B】天然状態の(a)AA及び(b)GA、ならびに400mg/dLのグルコースを有する溶液中37℃で6時間インキュベートしたGSAから放出されたものの、CDスペクトルを示す。
図10】2D組織培養プレート上で培養した細胞、及び被包の30時間後の3Dカプセル内に被包された細胞のグルコース刺激インスリン分泌を示す。400mg/dLのグルコースKRB中のインスリン分泌の量を、100mg/dLのグルコースKRB中のインスリン分泌に正規化した。エラーバーは、標準偏差を示す。(n=3)。
図11】GSA充填架橋MNの機械的挙動を示す。(n=5)。
図12】治療したSTZ誘導糖尿病マウスのBGLを示し、これは、GRSを有しないMN、MN L-GRS、MN S-GRS、MN L-S-GRS、MN L-S GRS(GOxなし)、及びMN L-S GRS(AMなし)の投与後の最初2時間、連続的に監視した。黒色矢印は、投与点を示す。エラーバーは、標準偏差を示す。(n=5)。*健康なマウスとの比較での、MN L-S GRS投与で治療した糖尿病マウスのP<0.05。
図13】MIN6細胞とともに24時間のインキュベートした後の、GSAの細胞毒性研究を示す。エラーバーは、標準偏差を示す。(n=6)。
図14A】治療の2日後の、PBS(a)またはMNパッチ(b)の投与を有する周囲組織のH&E染色した皮膚断面を示す。それらの皮膚試料は、MN注射部位から5mmの距離にあった。スケールバーは、200μmである。
図14B】治療の2日後の、PBS(a)またはMNパッチ(b)の投与を有する周囲組織のH&E染色した皮膚断面を示す。それらの皮膚試料は、MN注射部位から5mmの距離にあった。スケールバーは、200μmである。
図15A】紙やすり被覆平行プレート(25mm)を有するTA Instruments AR-2000応力制御レオメータを使用する、(a)25℃及び(b)37℃での、98%の完全細胞成長培地を含有する架橋m-HAハイドロゲルのレオロジー挙動を示す。実験は、2mmの間隙を有する0.5Paの幾何学での線形粘弾性体制内で実行した。測定は、少なくとも3回実行して、±10%以内の再現性を確実にした。
図15B】紙やすり被覆平行プレート(25mm)を有するTA Instruments AR-2000応力制御レオメータを使用する、(a)25℃及び(b)37℃での、98%の完全細胞成長培地を含有する架橋m-HAハイドロゲルのレオロジー挙動を示す。実験は、2mmの間隙を有する0.5Paの幾何学での線形粘弾性体制内で実行した。測定は、少なくとも3回実行して、±10%以内の再現性を確実にした。
【発明を実施するための形態】
【0036】
定義
本出願全体を通して使用される用語は、当業者にとって通常の典型的な意味で解釈されるべきである。しかしながら、本出願人は、以下の用語に、以下に定義される特定の定義が与えられることを要求する。
【0037】
本明細書及び特許請求の範囲において使用される場合、単数形の「a(1つの)」、「an(1つの)」及び「the(その)」は、別段文脈が明確に規定しない限り、複数の指示対象を含む。例えば、「1つの細胞」という用語は、それらの混合物を含む複数の細胞を含む。
【0038】
「約」及び「およそ」という用語は、当業者によって理解されるものと同程度「近く」にあるものと定義される。非限定的な一実施形態において、この用語は、10%以内にあるものと定義される。別の非限定的な実施形態において、この用語は、5%以内にあるものと定義される。更に別の非限定的な実施形態において、この用語は、1%以内にあるものと定義される。
【0039】
「生物活性」に関するものを含むタンパク質の「活性」としては、例えば、転写、翻訳、細胞内転位、分泌、キナーゼによるリン酸化、プロテアーゼによる切断、ならびに/または他のタンパク質へのホモ親和性及びヘテロ親和性結合が挙げられる。
【0040】
「生体適合性」は一般に、レシピエントに対して一般に非毒性であり、対象に対していかなる有意な有害作用も引き起こさない材料及びその任意の代謝物または分解生成物を指す。
【0041】
「組成物」は、活性剤と、不活性(例えば、検出可能な薬剤もしくは標識)または活性の別の化合物または組成物(アジュバントなど)との組み合わせを含むことが意図される。
【0042】
本明細書で使用される場合、「を含む」という用語は、組成物及び方法が引用される要素を含むが、他のものを除外しないことを意味することが意図される。組成物及び方法を定義するために使用される場合、「から本質的になる」は、その組み合わせに対して本質的に重要な他の要素を除外することを意味するものとする。したがって、本明細書に定義される要素から本質的になる組成物は、単離及び生成方法からの微量の混入物ならびに薬学的に許容される担体(リン酸緩衝食塩水及び保存剤など)を除外しない。「からなる」は、微量要素を超える他の成分及び本発明の組成物を投与するための実質的な方法ステップを除外することを意味するものとする。これらの転換用語の各々によって定義される実施形態は、本発明の範囲内にある。
【0043】
「対照」は、比較目的で実験において使用される代替的な対象または試料である。対照は、「陽性」または「陰性」であり得る。
【0044】
「有効量」は、有益な結果または所望される結果をもたらすのに十分な量である。有効量は、1回以上の投与、適用、または投薬で投与され得る。
【0045】
本明細書で使用される場合、「高グルコース条件」という用語は、200mg/dL以上のグルコース濃度を有する環境を指す。例えば、「高血糖値」は、200mg/dL以上の血流中のグルコースレベルを指す。いくつかの実施形態において、高グルコース条件は、200~400mg/dLである。他の実施形態において、高グルコース条件は、300~400mg/dLである。
【0046】
本明細書で使用される場合、「低グルコース条件」という用語は、0~200mg/dLのグルコース濃度を有する環境を指す。例えば、「低血糖値」は、200mg/dL未満の血流中のグルコースレベルを指す。
【0047】
「ペプチド」、「タンパク質」、及び「ポリペプチド」という用語は、互換的に使用されて、1つのアミノ酸のカルボキシル基によって別のアミノ酸のアルファアミノ基に結合された、2つ以上のアミノ酸を含む天然または合成分子を指す。
【0048】
「担体」または「薬学的に許容される担体」という用語は、一般に安全かつ非毒性である薬学的または治療的組成物を調製する上で有用である担体または賦形剤を意味し、獣医学及び/もしくはヒトの薬学的または治療的使用に許容される担体を含む。本明細書で使用される場合、「担体」または「薬学的に許容される担体」という用語は、リン酸緩衝食塩水溶液、水、エマルジョン(油/水もしくは水/油エマルジョンなど)、及び/または様々な種類の湿潤剤を包含する含み得る。本明細書で使用される場合、「担体」という用語は、任意の賦形剤、希釈剤、充填剤、塩、緩衝液、安定剤、可溶化剤、脂質、安定剤、または当該技術分野において薬学的製剤中での使用が周知であり、以下に詳細に記載される他の材料を包含する。
【0049】
本明細書で使用される場合、「重合体」という用語は、比較的高分子量の天然または合成の有機化合物を指し、その構造は、反復小単位、つまり単量体(例えば、ポリエチレン、ゴム、セルロース)によって表すことができる。合成重合体は典型的には、単量体の付加または縮合重合によって形成される。本明細書で使用される場合、「共重合体」という用語は、2つ以上の異なる反復単位(単量体残基)から形成された重合体を指す。例としてかつ非限定的に、共重合体は、交互共重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体、またはグラフト共重合体であり得る。特定の態様において、ブロック共重合体の様々なブロックセグメント自体が共重合体を含み得ることもまた企図される。
【0050】
本明細書において、範囲は、「約」1つの特定の値から及び/または「約」別の特定の値までと表現され得る。そのような範囲が表現される場合、別の実施形態は、その1つの特定の値から及び/または「約」他の特定の値までを含む。同様に、先行する「約」の使用によって、値が近似値として表現される場合、その特定の値が、別の実施形態を形成することが理解されるだろう。範囲の各々の終点が、他の終点と関連してだけではなく、他の終点とは無関係でも有意であることが、更に理解されるだろう。本明細書に開示されるいくつかの値が存在すること、及びその値自体に加えて、各値もまた「約」その特定の値として本明細書に開示されることもまた理解される。例えば、「10」という値が開示される場合、「約10」もまた開示される。
【0051】
「治療有効量」または「治療有効用量」という用語は、研究者、獣医師、医師、または他の臨床医によって一般化された期間にわたって探求されている組織、系、動物、またはヒトの生物学的または医学的応答を誘発する、グルコース結合構造に結合したグルコース修飾インスリンなどの組成物の量を指す。いくつかの実施形態において、所望される応答は、I型糖尿病の制御である。いくつかの例において、所望される生物学的または医学的応答は、複数の投薬量の組成物を、数日、数週間、または数年間の期間にわたって対象に投与した後に達成される。
【0052】
「対象」または「レシピエント」という用語は、本明細書において、霊長類(例えば、ヒト)、雌ウシ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、及びマウスなどを含むが、これらに限定されない、哺乳動物などの動物を含むものと定義される。いくつかの実施形態において、対象は、ヒトである。
【0053】
本明細書で使用される場合、「治療する」「治療すること」、「治療」という用語、及びこれらの文法的変化形は、障害もしくは病態の1つ以上の付随する症状の強度を部分的もしくは完全に遅延、軽減、緩和、もしくは低減すること、ならびに/または障害もしくは病態の1つ以上の原因を軽減、緩和、もしくは妨害することを含む。本発明に従う治療は、防止的、予防的、または治療的に適用され得る。
【0054】
いくつかの例において、「治療する」「治療すること」、「治療」という用語、及びこれらの文法的変化形は、血糖値を制御し、対象の治療前と比較して、または母集団もしくは研究集団におけるそのような症状の発生率と比較して、I型糖尿病の症状の重症度を低減することを含む。
【0055】
「I型糖尿病」という用語は、インスリン生成細胞の自己免疫破壊及び身体がインスリンを生成する能力の低減から生じる真性糖尿病の形態を指す。インスリンの喪失は、血糖の増加をもたらす。
【実施例
【0056】
実施例1:マイクロニードルパッチプラットフォーム
埋め込みなしでの血糖値(BGL)のグルコース応答制御のための、膵臓β細胞からのインスリン分泌を調節するための無痛マイクロニードル(MN)パッチプラットフォームが本明細書に開示される。図1Aおよび図1Bに示されるように、この戦略は、生(細胞に基づく)及び合成グルコース応答システム(L-S GRS)の両方を統合して、外部に位置付けられたβ細胞カプセルがグルコースシグナルを感知し、低侵襲的な様式でMNを通してインスリンを分泌することを可能にする。初期設計では、細胞カプセルを、架橋ヒアルロン酸(HA)から作製されたMNパッチと統合した(図1A)。高血糖状態下では、グルコースがMNを通して拡散し、アルギン酸マイクロゲル中に被包されたβ細胞と相互作用して、インスリン分泌を促進し得ることが予想された。しかしながら、グルコースの限定された拡散のために、パッチは高血糖状態に対して効果的に応答せず、インスリン分泌のわずかな増加が検出された。細胞応答を効果的に引き起こすために、本明細書に報告されるMNマトリックスは特に、合成「グルコースシグナル増幅器(GSA)」を含有する(図1B)。この革新的なGSAは、3つの酵素、つまりグルコースオキシダーゼ(GOx)、α-アミラーゼ(AM)、及びグルコアミラーゼ(GA)を捕捉する自己組織化重合体ナノサイズ小胞を備える。GOxは、酸素の存在下でグルコースをグルコン酸へと変換する。AMは、α-アミロースを二糖類及び三糖類へと加水分解し、これは、GAによってグルコースへと更に変換される(N.Gurung et al.Process Biochemistry 2003,38,1599、L.Kandra,Journal of Molecular Structure:THEOCHEM 2003,666-667,487)。
【0057】
BGLの上昇に供されると、低酸素感受性材料で構成されるGSAは急速に解離して、GOx及び酸素消費による急速なグルコース酸化に応答して被包された酵素を放出する(J.Yu et al.Proceedings of the National Academy of Sciences 2015,112,8260、O.Veiseh et al.Nature 2015,524,39):
【化1】
【0058】
放出された酵素はその後、MNマトリックス内に包埋されたα-アミロースを加水分解し(S.Peat,et al.Nature 1953,172,158、J.F.Robyt,D.French,Archives of Biochemistry and Biophysics 1967,122,8、W.J.Whelanet al.Nature 1952,170,748)、局所グルコース濃縮部位を生成する。「増幅された」グルコースは、外部に位置付けられたβ細胞カプセル内に効果的に拡散され、血管及び毛細リンパ管ネットワークへのインスリンの分泌及び拡散を促進する(A.J.Harvey et al.al.Pharmaceutical Research 2010,28,107)。ストレプトゾトシン(STZ)誘導1型糖尿病マウスを動物モデルとして使用して、約10個のβ細胞からなるGRSが高血糖状態に対して迅速に応答し、BGLを減少させ、低減したレベルで最大10時間それを維持することが実証された。生理学的シグナル増幅器様式を有する、この細胞-合成複合型グルコース応答デバイスは、BGLの厳格な制御のための膵臓β細胞埋め込みに対する有用な代替物となる。
【0059】
3つの酵素を被包するための溶媒透析法によって、GSAを調製した(J. E.Chung et al.Nature Nanotechnology 2014,9,907、H.Yu et al.Nature Communications2014,5)。簡潔には、アミン官能化2-ニトロイミダゾール(NI)基を、アミド結合を介してHAに共有結合的に共役させた。疎水性NI基で官能化した低酸素感受性HA(HS-HA)は、GOx、α-アミラーゼ、及びアミログルコシダーゼを含有する水溶液中でGSAへと容易に自己組織化した(図5)。低酸素状態下で、疎水性NI基を、ニトロレダクターゼによって触媒したNADPHとの単一電子反応を介して親水性2-アミノミダゾールへと還元した(Y.Seki et al.Journal of biochemistry 1970,67,389)。アミン基を有する還元された生成物は水溶性であり、これはGSAの解体を容易にした(J.Yu et al.Proceedings of the National Academy of Sciences 2015,112,8260、R.J.Hickey et al.Journal of the American Chemical Society 2011,133,1517)。透過型電子顕微鏡(TEM)画像(図2A)は、GSAが単分散サイズの球形状を有することを示した。動的光散乱(DLS)によって測定されるGSAの平均水力学的サイズは340nm(図2C)であり、これはTEM画像と一貫していた。HAの残渣カルボキシルのために、GSAのゼータ電位を-45.7±2.4mVと決定した。フルオレセインイソチオシアネート(FITC)標識GA及びAMによるGSAの蛍光画像は、酵素の同時被包の成功を更に確認した(図2B)。全ての酵素に基づくGSAの充填容量を7.4±0.5重量%と決定し、充填効率を16.1±1.0重量%と決定した。4℃でインキュベートしたとき、GSAは安定しており、2週間にわたって注目に値する濁度変化は観察されなかった。
【0060】
インビトロでのGSAのグルコース応答能力を評価するために、典型的な高血糖レベル(400mg/dL)、正常血糖レベル(100mg/dL)、及び対照レベル(0mg/dL)を含む、様々なグルコース濃度を有する1×PBS緩衝液溶液中で小胞を試験した。高血糖レベルは、他の2つの対照群と比較して、GSA内で比較的より低い酸素環境を生成し、これは、酸素感受性リン光分子プローブによって確認した(図2D)。GSAの内側の酸素レベルは、経時的に徐々に低減し、20分間以内に平衡に到達した。酸素消費動態は、小胞内に充填されるGOxの量を変更することによって更に調節することができ、これは、半用量のGOxで明確に遅延した低酸素効果を示した(図2E)。酸素レベルの減少とともに、NI基は、溶液に添加されたNADPHによって効果的に還元された。対応して、330nmの紫外可視スペクトルでのNIの特徴的ピークは急速に減少し、これは生体内還元反応を実証した(図2F)。HS-HA上の水溶性ペンダント基の生成のために、GSAは解離し始め、その後被包された酵素を放出した。TEM画像に示されるように、400mg/dLのグルコース溶液中のGSAは、20分間~6時間まで徐々の形態変化を経験し(図2A)、これは、DLSによって示される平均水力学的サイズの顕著な減少と一貫していた(図2C)。対照的に、グルコースなしで、または100mg/dLのグルコースとともにインキュベートしたGSAは、安定した水力学的サイズを呈し、注目に値する形態変化は呈さなかった(図6)。更に、解離した小胞からの被包されたFITC標識酵素の放出を、蛍光顕微鏡によって可視化した。蛍光シグナル強度は有意に減少し、2時間後に均一な分布となり、これは、酵素が解離したGSAから逃げ、溶液中に均等に分散することを示唆した(図2B)。
【0061】
グルコースレベル変化に応答する酵素放出動態を、次に試験した。正常グルコースレベル(100mg/dL)及び対照レベル(0mg/dL)では、24時間のインキュベーションのうちに、有意な量のGSAから放出された酵素は検出されなかった(図3A)。際立って対照的に、高血糖環境(400mg/dL)では、最初2時間以内に、GSAからの急速な酵素放出速度が達成された。これは、グルコース酸化時の低酸素条件によって誘導された、NI基のより速い還元に起因した。
【0062】
その後、GSAから放出された酵素によって触媒された、α-アミロースからグルコースへの変換を、更に調査した。グルコース生成率によって示される、それらのα-アミロースの酵素加水分解能力を分析することによって、AA対GAの被包比を1:2に事前最適化した(図7)。AA及びGAを利用して、10mg/mLのα-アミロース溶液を連続的に糖化した場合、グルコース生成は816±26mg/dLへと容易に増加し、81.6%のα-アミロースの変換率が得られた(図8)。循環二色性(CD)スペクトルは、放出された酵素GA及びAAがそれらの二次立体構造を維持すること確認した(図9Aおよび図9B)。一方で、様々なグルコース濃度を有するα-アミロース溶液中でGSAをインキュベートした場合、100mg/dLのグルコースを有するものと比較して、400mg/dLのグルコースとともにインキュベートしたときに有意により速いグルコース生成が達成された(図3B)。それは、GSAの解体に関連する酵素の徐々の放出によって、α-アミロースの酵素加水分解が活性化したことを示した。まとめると、グルコースレベルの上昇を「感知」すると、GSAは、酵素を放出するように活性化され得、これは、α-アミロースからグルコースへの変換を促進して、下流作用のためのグルコースシグナルを増幅した。
【0063】
膵臓β細胞カプセルからインスリンを送達するためのMNパッチの使用を、更に調査した。L-S GRSの「生」グルコース応答構成要素を作製するために、マウス島β細胞株をRGD(C.C.Lin et al.Proceedings of the National Academy of Sciences 2011,108,6380.)及びIV型コラーゲン(L. M.Weber et al.al.Biomaterials 2007,28,3004.)とともに、2×10個の細胞/mLの充填密度でアルギン酸マイクロゲル中に被包して、生物模倣型細胞-ECM接着相互作用を有する良性環境を提供した。濃縮された細胞、及びカプセルの周囲の分泌されたインスリンの均一な分布とともに、被包の成功を蛍光顕微鏡によって可視化した(図3D)。得られたカプセルのサイズは、735±27μmであった。グルコース刺激インスリン分泌(GSIS)分析及び生-死アッセイを、1日目後~3日目まで実行して、被包されたβ細胞がそれらの生存率及び機能性を維持することを検証した(図3E)(C.C.Lin et al.Proceedings of the National Academy of Sciences 2011,108,6380.)。結果は、被包されたβ細胞が比較的長期間生存し、それらのインスリン分泌インデックスを2D組織培養プレート上で培養した細胞と比較したとき、正常なグルコース応答インスリン分泌能力を維持し得ることを示した(図10)。
【0064】
一方で、微細成形アプローチを使用してMNパッチを製作した。結果として得られるMNデバイスは、10mmのパッチ内に400個の錐体ニードルを有し、各ニードルは、基部で400μmの側辺長さ、先端部で5μmの側辺長さ、及び800μmの高さを有した(図3G、3H)。ニードルは、交互の堆積を使用して、GSA、α-アミロース、及び架橋ヒアルロン酸マトリックスからなる3層構造を有するように設計した。MNの機械的強度を0.18N/ニードルと決定し、これは破損することなく皮膚を穿通するのに十分であった(図11)(S.P.Sullivan et al.Nature Medicine 2010,16,915)。蛍光図は、MNパッチの膵臓β細胞カプセルとの代表的な統合を示した(図3I)。GSAを、MNの先端部領域に良好に分布させ、細胞包埋カプセルを、MNパッチの背部に位置付けた。
【0065】
マイクロ流体技術を通して、L-S GRSのGSISを試験した(図3F)。高血糖レベル(400mg/dL)及び正常血糖レベル(100mg/dL)をそれぞれ有するクレブス・リンゲル緩衝液(KRB)を連続的に注入して、開いたマイクロ流体チャネル内で、パッチ上のニードルをインキュベートした。高グルコースレベルの注入を有するGSISは、低グルコースのものと比較して、3倍の増加を呈した(図3C)。これは、GSAの解離を急速に促進した高血糖流に起因し、その後のα-アミロースの加水分解は、β細胞カプセルからインスリンの分泌を引き起こすのに十分なグルコースレベルシグナルの増幅をもたらした。
【0066】
グルコース応答MNデバイスのインビボ有効性を調査するために、STZ誘導1型糖尿病マウスを、様々なMN試料、つまりGRSを有しない空MN(GRSなし)、L-GRSとのみ統合されたMN(L-GRS)、S-GRSとのみ統合されたMN(S-GRS)、L-S-GRSと統合されたMN(L-S GRS)、L-S-GRSと統合されているが、S-GRS中にGOxを有しないMN(L-S GRS(GOxなし))、及びL-S-GRSと統合されているが、S-GRS中にα-アミロースを有しないMN(L-S GRS(AMなし))の経皮投与に供した。各MNパッチを、自家製アプリケーターによって5N/パッチで投与して、均一な穿通を確実にし、局所皮膚接着剤によって皮膚上で不動化した。切除した皮膚組織は、ニードル挿入の可視部位を明確に示し(図4A、上)、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色した断面画像は、MNが表皮におよそ200μmの深さまで穿通し得ることを示し(図4A、下)、これは、GSAが実時間で間質液に曝露されることを可能にした(S.P.Sullivan et al.Nature Medicine 2010,16,915)。
【0067】
各群の治療したマウスのBGLを、経時的に監視した。図4Bに示されるように、L-S GRSと統合されたMNパッチで治療したマウスのBGLは、2時間以内にほぼ200mg/dLまで急速に減少し、高血糖または低血糖状態のピークなしで、有意に低減したレベルで6時間維持された。対照的に、完全なS-GRSなし(L-GRS群)、または単に応答要素GOxを欠いている(L-S GRS(GOxなし)群)、または単に増幅要素AMを欠いている(L-S GRS(AMなし)群)場合では、BGLは最初の1時間のみ減少し、これはハイドロゲル中に留置された残渣量のインスリンの拡散によって説明し得る。その後、β細胞のインスリン分泌は基礎レベルで維持され、マウスのBGLは高血糖状態に戻った。β細胞カプセルの不在下では、S-GRS(S-GRS)のみと統合されたMNで治療した群または空MN(GRSなし)群は、予想通り、注目に値するBGLの減少は呈さなかった。S-GRS群のBGLの一時的な上昇は、α-アミロースの誘導された加水分解及び宿主グルコースクリアランスに起因し得る(図12)。
【0068】
MNパッチが、低血糖の潜在的なリスクを引き起こすことなくBGLを調節し得るかどうかを評価するために、STZ誘導マウスの群を、MNパッチ交換投与に供した。第1の投与の6時間後の第2のMNパッチ治療は、高血糖トリガーの不在下で過剰なインスリンを分泌せず、これは、低血糖リスクを回避し得る。更に、追加のMNパッチは、対照と比較して、BGLの上昇に応答して治療効率を延長することができた(図4C)。対照としての、L-S GRSと統合されたMNパッチ及び空MNで治療した健康なマウスの研究は、デバイスが低血糖を引き起こさないことを実証した(図4D)。L-S GRSからのわずかなインスリン放出が、依然としてマウスのBGLを正常範囲内に維持した。グルコース負荷試験は、糖尿病マウスに対する厳格なグルコース制御能力を実証した(J.Yu et al.Proceedings of the National Academy of Sciences 2015,112,8260、D.H.-C.Chou et al.Proceedings of the National Academy of Sciences 2015,112,2401)。L-S GRSの投与の2時間後、糖尿病マウスを腹腔内(i.p.)グルコース注射で治療した。糖尿病マウスのBGLは、100mg/dLの増加及び60分間以内の初期BGLへの急速な減少を示した(図4E)。0~120分間の曲線下面積を計算して、グルコース恒常性のMN維持を示した。グルコース負荷の2時間後、MN群と対照群との間には有意な差が観察された(図4F)。
【0069】
GSA充填MNパッチの生体適合性を評価するために、β細胞に対する溶解したマイクロニードルの細胞毒性を、MTTアッセイによって評価した(図13)。MN及び対応する溶解した生成物は、研究濃度では細胞生存率の有意な減少を示さなかった。MNパッチで治療した皮膚は、MN除去後8時間以内に急速に回復し得、注射部位のH&Eで染色した皮膚片は明白な炎症を示さなかった(図14Aおよび図14B)(W.Yuan et al.Drug Design,Development and Therapy 2013,945)。
【0070】
現在、生体適合性及び安全性の問題が、膵島細胞移植の臨床用途を著しく妨害している(O.Veiseh et a.Nature Reviews Drug Discovery 2014,14,45、S.Mitragotri et al.ACS Nano 2015,9,6644、K.M.Bratlie et al.Advanced Healthcare Materials 2012,1,267)。従来の投与方法を利用し、侵襲的な手順に頼る代わりに、マイクロニードルパッチに基づく戦略は、内部高血糖状態によって引き起こされる、外部に位置付けられた膵臓β細胞からのインスリン分泌を制御するために開発された。重要なことに、初めて、生理学的シグナル(この場合「グルコースレベル」)を急速に増幅して、シグナルを効果的に輸送し、β細胞からのインスリン分泌を十分に刺激するために、合成増幅器が組み込まれた。インビボでの連続治療の結果は、延長した期間にわたる厳格なグルコース制御におけるMNパッチの効力を示した。この方法は、免疫応答及び長期間の有効性に関連する膵臓細胞療法の困難な問題を回避する。この有効投与期間は、細胞の密度及び生存率、ならびにグルコース及びインスリンを輸送するためのマトリックス材料の物理化学的特性を最適化することによって、更に延長され得る。一例において、ブタ島細胞または幹細胞分化ヒト膵臓細胞を有する新たに調製したパッチは、投与の容易さのため、1、2、3、4、5、6、7、またはそれ以上の日数毎に患者に送達され得る。元の生物シグナルが応答性を引き起こすのに不十分である場合に、生理学的シグナル応答薬物送達系の有効性を改良するための合成増幅器が開示される。
【0071】
実施例1において使用される方法
材料
言及されない限り、全ての化学物質は、Sigma-Aldrichから購入した。ヒアルロン酸ナトリウム(HA、300kDaの分子量)はFreda Biochem Co.,Ltd.(Shandong,China)から購入し、カスタム合成ペプチド(CGRGDS、MW594.31)はCeltek Bioscience,LLC.(Franklin,TN)から購入し、抗インスリン抗体(ab181547)及びヤギ抗ウサギIgG H&L(FITC)(ab6717)はAbcamから購入し、皮膚貼付外科接着剤はMedline Industries,Inc.から購入した。
【0072】
低酸素感受性ヒアルロン酸(HS-HA)の合成及び特性評価
アミド形成を通して6-(2-ニトロイミダゾール)ヘキシルアミンを化学的に共役させることによって、低酸素感受性ヒアルロン酸(HS-HA)を合成した。最初に、6-(2-ニトロイミダゾール)ヘキシルアミンを合成して、HAのカルボン酸基と反応させた。簡潔には、NI(0.15g、1.3mmol)をDMF中に溶解させ、これにKCO(0.28g、2.0mmol)を添加した。その後、6-(Boc-アミノ)ヘキシルブロミド(0.39g、1.4mmol)を溶液に滴加し、80℃で4時間撹拌した。濾過を通して固体不純物を反応混合物から分離し、メタノールで洗浄した。蒸発によって固体生成物を残渣溶媒から得、これを脱イオン(DI)水中に懸濁させ、その後、酢酸エチルで抽出した。有機層を回収し、硫酸ナトリウムで濃縮した。生成物を氷上でメタノール中に再溶解させた。メタノール中5mLの1.25M HClを溶液に添加し、室温(RT)で24時間撹拌した。その後、回転蒸発器を使用して溶媒を除去して、アミン官能化NIを得た。第2に、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)及びN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)の存在下で、6-(2-ニトロイミダゾール)ヘキシルアミンをHAに共役させた。簡潔には、0.24gのHA(分子量:約300kDa)を水中に溶解させ、これにEDC(0.56g、3.4mmol)及びNHS(0.39g、3.4mmol)を添加し、室温で15分間撹拌した。その後、DMF中6-(2-ニトロイミダゾール)ヘキシルアミン(0.18g、0.85mmol)を混合物に添加し、室温で24時間反応させた。DI水及びメタノールの1:1の混合物に対して24時間、DI水に対して48時間透析を完全に実行した。その後、凍結乾燥によってHS-HAを得、H NMR(Varian Gemini2300)によって特性評価した。紫外可視吸光度によって、グラフト度を20%と決定した。
【0073】
6-(2-ニトロイミダゾール)ヘキシルアミン:H NMR(DMSO-d,300MHz,δppm):1.30-1.78(m,8H,NHCH(CH),2.73(s,2H,NHCH),4.38(s,2H,NCH),7.19(s,1H),7.87(s,1H).
【0074】
HS-HA:H NMR(DO,300MHz,δppm):1.88-2.40(m,8H,NHCH(CH),2.87-3.19(m,4H,NHCH2,NCH),7.19(s,1H),7.48(s,1H).
【0075】
メタクリル化ヒアルロン酸(m-HA)の調製及び特性評価
メタクリル化無水物(MA)と反応させることによって、二重結合でヒアルロン酸(HA)を修飾した。2グラムのHAを100mLの蒸留(DI)水中に低温室内で一晩溶解させ、その後、1.6mLのメタクリル化無水物(MA)を滴加した。5N NaOHを添加し、4℃で24時間連続的に撹拌することによって、反応溶液をpH8~9に維持した。その後、m-HAをアセトン中に沈殿させ、エタノールで3回洗浄し、その後、DI水中に溶解させた。DI水に対する48時間の透析後、凍結乾燥によって精製されたm-HAを87.5%の収率で得、H NMR(Varian Gemini2300)によって特性評価した。標準的な逆重畳積分アルゴリズムを実行して、緊密な間隔のピークを分離した後、5.74及び6.17ppm(メタクリル酸プロトン)でのプロトンピーク下面積比を、1.99ppm(HAのN-アセチルグルコサミン)でのピークと比較することによって、修飾度(DM)を約15%であると計算した。
【0076】
m-HA:H NMR(DO,300MHz,δppm):1.85-1.96(m,3H,CH=C(CH)CO),1.99(s,3H,NHCOCH),5.74(s,1H,CH=C(CH)CO),6.17(s,1H,CH=C(CH)CO).
【0077】
紙やすり被覆平行プレート(25mm)を有するTA Instruments AR-2000応力制御レオメータを使用して、37℃で、m-HAハイドロゲルのレオロジー実験を実行した。紫外照射(波長:365nm、強度:9W/cm)を介して、N,N’-メチレンビスアクリルアミド(MBA2%、重量%)及び光開始剤(Irgacure2959、0.05%、重量%)と1分間インサイチュで光重合することによって、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中2重量%のm-HAハイドロゲルを架橋させた。実験は、2mmの間隙を有する0.5Paの幾何学での線形粘弾性体制内で実行した。測定は、少なくとも3回実行して、±10%以内の再現性を確実にした。
【0078】
GSAの調製及び特性評価 水溶液中での自己組織化によって、GSAを調製した。簡潔には、20mgの両親媒性HS-HAを水/メタノール(2:1の体積/体積)中に溶解させ、その後、aspergillus nigerに由来する1mgのGOx(200U/mg、160kDa/7nm)、bacillus licheniformisに由来する3mgのα-アミラーゼ(500~1,500U/mg、51kDa/2.43nm)、及びaspergillus nigerに由来する6mgのアミログルコシダーゼ(300U/mL以上、75kDa/3.35nm)を添加した。混合物を4℃で2時間撹拌した。その後、脱イオン水に対する1日間の透析によって、メタノールを除去した。結果として得られるGSA懸濁液を、pH7.4で遠心分離濾過(100kDaの分子質量カットオフ、Millipore)によって更に濾過して、14,000×gで10分間の遠心分離によって未充填の酵素を除去した。更なる研究のために、最終GSA懸濁液を4℃で貯蔵した。蛍光GSAについて、GSA調製中に0.01重量%のローダミンBを酵素溶液に添加した。BCA(ビシンコニン酸)タンパク質アッセイを通して非被包酵素の量を測定し、酵素を含まない小胞を基礎補正として使用することによって、酵素被包小胞の充填容量(LC)及び被包効率(EE)を決定した。LC及びEEを、LC=(A-B)/C、EE=(A-B)/Aとして計算し、式中、Aは予想される酵素の被包量であり、Bは回収溶液中の酵素の空き量であり、Cは小胞の総重量であった。ゼータ電位及びサイズ分布をZetasizer(Nano ZS、Malvern)で測定した。JEOL2000FX TEM機器で、GSAのTEM画像を得た。
【0079】
酸素消費速度アッセイ
MitoXpress(Cayman Chemical)を製造業者のプロトコルに従って使用することによって、酸素消費速度(OCR)を決定した。簡潔には、10μLのMitoXpressプローブを含有する、0、100、または400mg/dLのグルコースを有する200μLの5mg/mLのGSA溶液を、96ウェルプレート内に置き、380/650nmの励起/発光波長、37℃で、マイクロプレートリーダーでプレートを測定した。30μs及び70μsの遅延時間ならびに30μsのゲート時間で、2つの強度読み取りを取得することによって、各試料ウェルを5分間毎に反復して測定した。各試料ウェルの得られたTR-F強度シグナルを、以下、τ=(70-30)/ln(F1/F2)(式中、F1及びF2は70μs及び30μsの遅延時間でのTR-F強度シグナルである)の通りリン光寿命(μs)τ値に変換した。結果として得られる寿命τの増加は、各試料中の酸素濃度を反映する。
【0080】
インビトロでのGSAのグルコース応答研究
GSAのグルコース応答能力を評価するために、GSAを500μLのPBS緩衝液(NaCl、137mM;KCl、2.7mM;NaHPO、10mM;KHPO、2mM;pH7.4)中で100μmのNADPH及び5μg/mLのチトクロムcレダクターゼとともにインキュベートした。最初に、α-アミロースをエタノールで洗浄し、その後PBS溶液(10mg/mL)に添加した。様々な量の45%グルコース溶液(Corning)を添加して、様々なグルコース濃度(0mg/dL、100mg/dL、及び400mg/dL)の最終溶液に到達した。質量流量計の制御によって、21%の酸素濃度を有する容器内で、混合物を37℃でインキュベートした。所定の時間間隔で、14,000×gで10分間の遠心分離(10kDaの分子質量カットオフ、Millipore)によって、放出された酵素をGSA懸濁液から分離した。GSA内に被包された残渣酵素の濃度、及びGSAから分離した放出された酵素を、Coomassie Plusタンパク質アッセイを使用して試験した。Infinite200PRO多モードプレートリーダー(Tecan Group Ltd.)でA595を検出し、酵素含有量を酵素溶液の標準曲線で較正した。14,000×gで10分間の遠心分離によって、pH7.4で遠心分離濾過(10kDaの分子質量カットオフ、Millipore)によってグルコースを更に分離した。グルコース(GO)によって、グルコース濃度を決定した。簡潔には、試料を適切に希釈し、その後、37℃でアッセイ試薬を30分間添加した。2.0mLの12N HSOを各管に添加することによって、30~60秒間隔で反応を停止した。試薬ブランクに対して、540nmで吸光度を測定した。標準曲線からグルコース濃度を計算した。GSA溶液の紫外可視吸収をプロットするために、設定時間に330nmのAで強度を測定した。天然AA及びGAならびにGSA(1μm)から放出されたAA及びGAの遠紫外CDスペクトルをCD分光計(Aviv)によって分析した。
【0081】
GSA充填MNの製作
Blueacre Technology Ltd.からの10個の均一なシリコン鋳型を使用して、マイクロニードル製作を実行した。レーザーアブレーションによって機械加工された20×20個のマイクロニードル錐体空洞のアレイで、各鋳型を特性評価した。ニードル空洞は、基部で400μmの側辺長さ、800μmの高さ、及び先端部で5μmの側辺長さを有した。鋳型をプラズマ清浄した後、50μLのGSA溶液を鋳型表面上に堆積させた。その後、真空(600mmHg)処理を5分間続けて、GSA溶液がMN空洞内に流動し、望ましい粘度を達成することを可能にした。その後、鋳型を、2000rpmのHettich Universal32R遠心分離機に20分間移して、GSAを先端部領域に圧縮した。GSA層が完全に乾燥した後、0.5mLの10mg/mLのα-アミロース溶液の第2の層を鋳型に供給し、同じプロセスを使用して製作した。その後、MBA(2重量%)及び光開始剤(0.5重量%)と混合した300μLのm-HA溶液(4重量%)を鋳型表面にピペッティングし、その後、真空及び遠心分離の組み合わせを続けた。m-HA層が乾燥し、真空条件下で鋳型空洞から明白な気泡が生じなくなるまで、このプロセスを3~4回反復した。MNパッチの背部について、4cm×10cmの銀接着テープ片を2cm×2cmの鋳型基部プレートのまわりに適用し、準備した微細鋳型リザーバーに3mLのHA(5重量%)溶液を添加し、25℃で乾燥させた(真空乾燥器内で一晩)。乾燥が完了した後、30秒間の紫外照射(365nmの波長)下、インサイチュ重合を通してマイクロニードルパッチを架橋させた。結果として得られる生成物を慎重に鋳型から分離し、自家製アプリケーターに適合させた。最終MNは、密閉した6ウェル細胞培養プレート内、4℃で1週間貯蔵され得る。
【0082】
機械的強度試験
MTS30G引っ張り試験機でニードルをステンレス鋼プレートに押し付けることによって、応力-歪みゲージでMNの機械的強度を測定した。初期ゲージを、10.00Nを細胞充填容量として、MN先端部とステンレス鋼プレートとの間を2.00mmに設定した。MNに向かって移動する上ステンレス鋼プレートの速度を、0.1mm・s-1に設定した。ニードルが曲がり始めるときの、MNの破損力を記録した。
【0083】
細胞培養物
マウス膵島細胞腺腫細胞株6(MIN6)細胞は、Dr.Michael McManus(University of California,San Francisco)が快く提供した。使用した培養培地は、37℃及び5%のCO2の、500mLの培地当たりウシ胎仔血清(15%)、ペニシリン/ストレプトマイシン(1%)、及び2.5uLの島メルカプトエタノール(Biorad)を有するDMEM高グルコース培地であった。培地を3日毎に交換し、細胞を60%の培養密度で継代培養した。MIN6細胞株の第32~38の継代培養を使用した。
【0084】
膵臓β細胞の被包
2重量%のアルギン酸の水溶液を12000rpmで遠心分離して、いかなる不純物も除去した。アルギン酸(120mg)溶液を、pH5.0の酢酸緩衝液中1-エチル-3-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)カルボジイミド(EDC)/N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)(50mg/30mg)と30分間混合して、アルギン酸上のカルボニル基を活性化させ、その後、追加の1,6-ジアミノヘキサン(60mg)と4時間混合した。混合物を2-プロパノール(IPA)中に沈殿させて、未反応のジアミンを除去した。アルギン酸-アミン誘導体を、重炭酸ナトリウム溶液(50mM、pH=8.5)中、遊離チオールのCys残基を有するCGRGDSのペプチド配列(ペプチド対アルギン酸の重量比は0.02:1であった)と4℃で4時間反応させた。脱イオン水で5日間の広範な透析を介して、ペプチド修飾アルギン酸を精製(3500Daの分子質量カットオフ、Millipore)し、0.22μmのフィルターを通して滅菌し、凍結乾燥させた。MIN6細胞をトリプシン処理し、1%のIV型コラーゲンで補助した2%のアルギン酸-RGD培養培地中(2×10個の細胞/mL)で懸濁させた。鈍い先端部である22ゲージの金属ニードルが結合した1mLのシリンジ内に、混合物を移した。シリンジポンプを備えるエレクトロスプレーシステム内に、シリンジを置いた。エレクトロスプレーシステムの正電極をニードルに接続し、負電極を50mLの20mM BaClを有する金属受容容器に接続した。高電位(8kV)下、5cmの受容容器までの作動距離で、溶液を0.155mL/分の流量でスプレーした。液滴(50~65uL)を押し出した後、内相を滅菌BaCl(200mM)溶液中で5分間ゼラチン化した。その後、回収したカプセルを滅菌NaCl溶液(150mM)で3回濯いでから、12ウェル培養プレート内のDMEM培地に移した。均一な数の約100個のカプセルを回収し、各実験群のバルクハイドロゲルに更に導入して、処理間の比較を可能にした。1分間の紫外照射(波長:365nm)を介して、DMEM(2%、重量%、DMEM)中m-HAとN,N’-メチレンビスアクリルアミド(MBA2%、重量%)及び光開始剤(Irgacure2959、0.05%、重量%)とを光重合することによって、HAハイドロゲルを架橋させた(図15Aおよび図15B)。
【0085】
膵臓β細胞カプセルの特性評価
細胞クラスターの形態的特徴を分析するために、Olympus IX70多パラメータ顕微鏡下で膵臓β細胞カプセルを観察した。膵臓β細胞カプセルの平均直径を楕円に適合させ、ImageJソフトウェアの粒子分析法を使用して画像を調節することによって分析した。
【0086】
LIVE/DEAD生存率/細胞毒性キット(Invitrogen)によって、定性的な細胞生存率を可視化した。細胞カプセルをPBS(NaCl、137mM;KCl、2.7mM;NaHPO、10mM;KHPO、2mM;pH7.4)中で4μmのカルシウムAM及び8μmのエチジウムホモ二量体-1とともに1時間インキュベートした。その後、カプセルをPBS中で濯いで、過剰な染色溶液を除去し、2%のパラホルムアルデヒドで15分間固定した。カプセルをガラススライド上に置き、デジタルカメラ及び互換性LAS-AFソフトウェアを備えるLeica DM5500B蛍光顕微鏡を介して撮像した。生(緑色)(励起494nm、発光517nm)細胞及び死(赤色)(励起528nm、発光617nm)細胞の数を計数することによって、生存率を定量化した。
【0087】
グルコース応答システム(GRS)の特性評価
SEMを使用して、MNパッチの形態を特性評価した。両面粘着炭素タブを使用して、マイクロニードルをそれらの基部とともにSEM試料スタブに結合した。EmTech Turbo EMスパッタコーターを使用して、試料に7nmの厚さの金-パラジウム層をコーティングした。Analytical Instrumentation Facility,North Carolina State Universityで、FEI Verios460L電界放出走査電子顕微鏡(FESEM)で撮像を実行した。カルシウムAM染色した膵臓β細胞カプセルを、ローダミン標識GSAを充填したMNパッチの背部に位置付けた。Olympus IX70多パラメータ蛍光顕微鏡によって、L-S GRSの側面図から蛍光画像を取得した。
【0088】
グルコース刺激インスリン分泌
静的グルコース刺激インスリン分泌(GSIS)アッセイを介して、被包された細胞の機能性評価を試験した。実験の2~3日前、96ウェルプレート当たり2×10個のMIN6細胞を播種した(Corning Costar)。2D細胞培養と同様に、グルコース処理の1日前、3Dカプセル内の同じ量の細胞を96ウェルプレート内で培養した(10個/各ウェル)。0.1%のBSAで補助したクレブス・リンゲル(KRB)緩衝液(128mmのNaCl、4.8mmのKCl、1.2mmのKHPO、1.2mmのMgSO、2.5mmのCaCl、10mmのHEPES、0.1重量容量%)を事前に調製した。37℃及び5%のCOのKRB緩衝液BSA中で、細胞を2時間インキュベートし、その後、同じ条件で100mg/dLまたは400mg/dLのグルコースとともに45分間インキュベートした。マウスインスリンELISAキット(Alpco.)を使用して、細胞によって分泌されたインスリンの量を定量化した。KRBを含有する400mg/dLのグルコース中のインスリン分泌の量を、KRBを含有する100mg/dLのグルコース中で分泌されたインスリンに対して正規化し、インスリン分泌インデックスとして表現した。
【0089】
免疫蛍光撮像
被包の6時間後、細胞を4℃で4%のパラホルムアルデヒド中に固定し、その後、OCT化合物(Sakura Finetek)中に包埋させ、ドライアイス上、イソペンタン浴内で急速凍結させた。凍結した細胞カプセルを切片化(5μmの厚さ)し、顕微鏡スライド上に載せ、-80℃で貯蔵した。インスリンを免疫蛍光で染色するために、スライドを2回洗浄し、0.1%のTriton X100溶液を使用して30分間透過処理し、その後、1%のウシ血清アルブミン(BSA)溶液を使用して1時間遮断した。遮断後、1/200の希釈度のインスリン抗体に対してモノクローナルである一次ウサギ(abcam181547)を一晩4℃で適用し、その後、洗浄し、1/400の希釈度の抗体ヤギ抗ウサギIgG(Alexa Fluor(登録商標)488)(abcam150077)とともにインキュベートした(緑色)。スライドを3回洗浄し、細胞透過性染料DAPIを適用して細胞核を染色し、カバーガラスで被覆した。Olympus IX70多パラメータ蛍光顕微鏡を使用して試料を撮像し、ImageJソフトウェアを使用して加工した。
【0090】
インビトロでのGRSのグルコース応答研究
血液循環系のラボオンチップ模擬実験として、マイクロ流体技術デバイスを使用して、MNからのインスリンの放出を実行した。グルコース応答能力を動的に評価するために、放出培地がニードル先端部を通して流動する間(様々なグルコース濃度を有するpH7.4のKRB)、MNパッチをマイクロ流体チャネルの開いた中心部に置いた。2つの別個のシリンジポンプ(Harvard Apparatus PHD2000、Holliston,MA)で、注入及び撤去速度を50μL/分に設定した。マウスインスリンELISAキット(Alpco.)を使用して、インスリン放出速度を定量化した。Infinite200PRO多モードプレートリーダー(Tecan Group Ltd.,Switzerland)で、450nmでのインスリン含有量を測定し、インスリン標準曲線で較正した。
【0091】
STZ誘導糖尿病マウスを使用するインビボ研究
糖尿病治療のためのMNパッチのインビボ有効性を、STZ誘導成体糖尿病マウス(雄C57B6、Jackson Lab,U.S.A.)で評価した。動物研究プロトコルは、Institutional Animal Care and Use Committee at North Carolina State and University and University of North Carolina at Chapel Hillによって承認された。Clarity GL2Plusグルコースメータ(Clarity Diagnostics,Boca Raton,Florida)を使用して、血漿当量グルコースをマウスの尾静脈血液試料(約3μL)から測定した。それらのBGLを投与前の2日間監視し、投与前に全てのマウスを一晩絶食させた。各群の5匹のマウスを、GRSを有しない空MNを含有するMN(GRSなし)、L-GRSとのみ統合されたMN(L-GRS)、S-GRSとのみ統合されたMN(S-GRS)、L-S-GRSと統合されたMN(L-S GRS)、L-S-GRSと統合されているが、S-GRS中にGOxを有しないMN(L-S GRS(GOxなし))、及びL-S-GRSと統合されているが、S-GRS中にα-アミロースを有しないMN(L-S GRS(AMなし))で皮下治療するために選択した。自家製アプリケーターによって、5N/パッチで10分間、MNパッチを背側皮膚に適用した。皮膚貼付外科接着剤を使用して、持続した放出のためにパッチを皮膚に固定した。12mm×12mm×5mmのカスタマイズPDMS鋳型を、パッチの上に被覆した。PDMS鋳型の内側では、膵臓β細胞カプセルは、栄養素補給のために、DMEMから作製された架橋m-HAハイドロゲル中に包埋された。MN(S-GRS)群、MN(GRSなし)群について、細胞はデバイス内に組み込まれた。その後、各群の投与されたマウスのBGLを連続的に(5、15、30、及び60分間で、及びその後1時間に1回)監視した。グルコース負荷試験を実行して、MNの投与の2時間後のMNのインビボでのグルコース応答性を確認した。簡潔には、マウスを一晩絶食させ、L-S GRSを投与した。投与の2時間後、マウスのグルコースレベルが最低値に到達したとき、腹腔内注射を介して1.5gのグルコース/kg(45%の滅菌グルコース溶液、corning cellgro)をマウスに与えた。健康なマウスに対するグルコース負荷試験を、対照として実行した。グルコース投与の0、10、20、30、40、60、90、及び120分間後に、尾静脈から採血し、血糖計を使用してグルコースレベルを測定した。同様に、低血糖のリスクを評価するために、2つの群の健康なマウスにMN(L-S GRS)またはMN(GRSなし)を投与したが、グルコース負荷には供与しなかった。
【0092】
生体適合性研究
比色分析メチルチアゾリルテトラゾリウム(MTT)アッセイを使用して、細胞増殖分析を実行した。MIN6細胞を、1ウェル当たり5,000個の細胞の密度で96ウェルプレートに播種し、100μLのDMEM中で培養した。その後、プレートを5%のCO中37℃で12時間インキュベートして、70~80%の培養密度に到達してから、溶解したMN溶液の連続希釈を添加した。24時間のインキュベーション後、細胞をKRB溶液で洗浄し、100μLの新鮮なFBSを含まないDMEM及び新たに調製した20μLの3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド溶液(MTT溶液、5mg/mL)とともにインキュベートした。プレートを更に4時間インキュベートした。その後、培養培地を慎重に除去し、その後、150μLのジメチルスルホキシド(DMSO)を添加した。マイクロプレートリーダー(Infinite M200Pro、Tecan,Morrisville,NC,USA)を使用して、10分間以内に、590nm、及び620nmの参照波長でプレートの吸光度を読み取った。
【0093】
マウスモデルにおいてMNパッチの生体適合性を評価すること。投与後2日目、CO窒息によってマウスを安楽死させ、周囲の組織を切除した。PBS投与を有するマウスを陰性制御として使用した。組織を10%のホルマリン中に固定し、その後、パラフィン内に包埋し、50μmの切片に切断し、組織学的分析のためにH&Eを使用して染色した。
【0094】
統計学的分析
データは、平均±標準偏差として示される。スチューデントt検定またはANOVA検定を使用して、統計学的分析を実行した。P≦0.05で、実験群間と対照群との差は、統計学的に有意であると見なされた。


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図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図3I
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15A
図15B