(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-28
(45)【発行日】2023-01-12
(54)【発明の名称】タイヤ加硫金型
(51)【国際特許分類】
B29C 33/02 20060101AFI20230104BHJP
B29C 35/02 20060101ALI20230104BHJP
B29L 30/00 20060101ALN20230104BHJP
【FI】
B29C33/02
B29C35/02
B29L30:00
(21)【出願番号】P 2019002037
(22)【出願日】2019-01-09
【審査請求日】2021-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】古谷 弘幸
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-100381(JP,A)
【文献】特開2007-210569(JP,A)
【文献】特開2017-024714(JP,A)
【文献】実開平05-004471(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/02
B29C 35/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に分割した複数のセクタによって構成された環状のセクタモールドを備え、
前記複数のセクタはそれぞれ、空気入りタイヤのトレッド部に溝を形成するための骨部が突設された成形面を有し、
前記複数のセクタのうちの少なくとも1つは、前記成形面に形成されて、前記成形面の摩耗量を判断するため
に、前記成形面から突出した凸部によって構成され、前記セクタとは硬度が異なる材料からなる段部を少なくとも1つ有する、タイヤ加硫金型。
【請求項2】
前記成形面から前記凸部の先端面までの前記凸部の突出寸法は、
0.1mm以上で前記骨部の定められた高さ公差以下である、請求項1に記載のタイヤ加硫金型。
【請求項3】
前記段部は、前記骨部の頂面に形成されている、請求項1
又は2に記載のタイヤ加硫金型。
【請求項4】
前記段部は、前記骨部の側面に形成されている、請求項1
又は2に記載のタイヤ加硫金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ加硫金型に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されたタイヤ加硫金型は、周方向へ分割した複数のセクタを有し、空気入りタイヤのトレッド部を成形するための環状のセクタモールドを備える。これらのセクタは、トレッド部に溝を成形するための骨部を有する成形面を備え、骨部には溝底にサイプを成形するためのプレートが突設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タイヤ加硫金型はショットブラストによって定期的に洗浄されるため、洗浄材(例えば砂)の吹き付けによって成形面が摩耗する。そして、成形面の摩耗が進むと、トレッド部に定められた深さの溝を成形できないため、成形面を肉盛り等によって補修する必要がある。しかし、特許文献1のタイヤ加硫金型では、セクタの摩耗量の判断について何も考慮されていない。
【0005】
本発明は、セクタの摩耗量を容易に判断できるタイヤ加硫金型を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、周方向に分割した複数のセクタによって構成された環状のセクタモールドを備え、前記複数のセクタはそれぞれ、空気入りタイヤのトレッド部に溝を形成するための骨部が突設された成形面を有し、前記複数のセクタのうちの少なくとも1つは、前記成形面に形成されて、前記成形面の摩耗量を判断するために、前記成形面から突出した凸部によって構成され、前記セクタとは硬度が異なる材料からなる段部を少なくとも1つ有する、タイヤ加硫金型を提供する。
【0007】
このタイヤ加硫金型では、ショットブラストによってセクタを洗浄すると、インジケータとして機能する段部を含む成形面が摩耗する。この際、段部の摩耗量を確認することで、セクタの補修時期を容易に判断できる。そして、補修時期になったと判断すると、セクタの成形面を補修(肉盛り)することで、トレッド部に定められた溝パターンを確実に成形できる。
【0008】
前記成形面から前記凸部の先端面までの前記凸部の突出寸法は、0.1mm以上で前記骨部の定められた高さ公差以下である。この態様によれば、凸部の摩滅によってセクタの補修時期を容易に判断できる。
【0010】
前記段部は、前記骨部の頂面に形成されている。又は、前記段部は、前記骨部の側面に形成されている。前記凸部は、前記骨部の側面に形成されている。ここで、洗浄時には、成形面から突出した部分に洗浄材が強く吹き付けられるため、その突出部分の摩耗が他の部分の摩耗よりも進行する。そして、この態様によれば、成形面から突出した骨部に段部が設けられているため、この段部の摩耗の進行が最も早くなる。つまり、セクタの成形面が摩滅限界に達する前に、段部の摩耗によってセクタの補修時期を確実に判断できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のタイヤ加硫金型では、インジケータとして機能する段部の摩耗量を確認することで、セクタの補修時期を容易に判断できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】本発明の第1実施形態に係るタイヤ加硫金型を用いたタイヤ加硫成形機を示す断面図。
【
図1B】型開き状態のタイヤ加硫成形機を示す断面図。
【
図2C】セクタの骨部に形成した段部を示す拡大断面図。
【
図4】第2実施形態のセクタの骨部に形成した段部を示す拡大断面図。
【
図5】骨部に対する段部の形成部位の変形例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0014】
(第1実施形態)
図1A及び
図1Bは、本発明の第1実施形態に係るタイヤ加硫金型(以下「金型」という。)50を用いたタイヤ加硫成形機(以下「加硫成形機」という。)10を示す。金型50は、
図3に示す空気入りタイヤ1を成形するためのセクタモールド51、上モールド(サイドモールド)52、及び下モールド(サイドモールド)54を備え、これらのモールドが加硫成形機10のコンテナ30に取り付けられている。
【0015】
(加硫成形機の概要)
図1Aに示すように、加硫成形機10は、フレーム20、コンテナ30、ブラダユニット40、及び本発明の金型50を備える。ブラダユニット40と金型50によって、グリーンタイヤ1’を加硫するキャビティが画定される。図示しない駆動機構によってフレーム20が駆動されることで、金型50は、
図1Aに示す型締め状態及び
図1Bに示す型開き状態に切り換えられる。
【0016】
図1A及び
図1Bに示すように、フレーム20は、プレート21、上プラテン22、及び下プラテン23を備える。
【0017】
プレート21は昇降部材24の下端に固定されている。上プラテン22は昇降部材24の中心に配置された昇降部材25の下端に固定されている。下プラテン23は、上プラテン22の下方の所定位置に固定されている。昇降部材24,25は駆動機構をそれぞれ備え、プレート21と上プラテン22を独立して昇降する。上プラテン22は流路22aを備え、下プラテン23は流路23aを備える。これらの流路22a,23aを流動させる熱交換媒体(例えば、オイル)の温度を調整することで、上プラテン22及び下プラテン23を介して金型50を所望の加硫温度に調整できる。
【0018】
引き続いて
図1A及び
図1Bを参照すると、コンテナ30は、複数のセグメント31、ジャケット32、上プレート33、及び下プレート35を備える。
【0019】
セグメント31は、セクタモールド51を構成する複数のセクタ51Aと同じ数だけ設けられ、個々のセクタ51Aをそれぞれネジ止めする。セクタモールド51の径方向Xにおけるセグメント31の外面は、上方から下方に向けて次第に拡開(傾斜)する傾斜面31aで構成されている。複数のセグメント31は、上プレート33に固定された複数の上スライド34にそれぞれ取り付けられ、上スライド34に対してセクタモールド51の径方向Xに往復移動可能である。
【0020】
ジャケット32は、
図1Bに示す型開き状態の金型50の外周を覆うことが可能な円筒状であり、プレート21の下面に固定されている。ジャケット32は、昇降部材24の昇降動作に従ってプレート21を介して昇降する。プレート21が降下すると、ジャケット32は、径方向X内側に位置する傾斜面32aで傾斜面31aを押圧し、セグメント31を径方向Xの内側に移動させ、複数のセグメント31を環状に連なった状態に配置(並設)する。
【0021】
上プレート33は、上プラテン22の下面に固定され、昇降部材25の昇降動作に従って上プラテン22を介して昇降する。上プレート33には、外周部に上スライド34が固定され、その内側に上モールド52が固定されている。下プレート35は、下プラテン23の上面に固定されている。下プレート35には、外周部に下スライド36が固定され、その内側に下モールド54が固定されている。
【0022】
引き続いて
図1A及び
図1Bを参照すると、ブラダユニット40は、支軸41、上クランプ42、下クランプ43、及びブラダ44を備える。
【0023】
支軸41は、下プラテン23の中心に配置されており、図示しない駆動機構によってセクタモールド51の幅方向(軸方向)Yへ昇降可能なロッド41aを備える。上クランプ42はロッド41aに固定され、下クランプ43は支軸41の本体に固定されている。上クランプ42と下クランプ43の幅方向Yの間隔は、駆動機構の駆動によってロッド41aを昇降させることで調整される。ブラダ44は、上側内周縁が上クランプ42に取り付けられ、下側内周縁が下クランプ43に取り付けられている。上クランプ42、下クランプ43及びブラダ44によって囲まれた空間内には、図示しない給排気装置によって空気が供給及び排出される。ブラダ44は、空気が供給されることで膨らみ、グリーンタイヤ1’をタイヤ径方向の内側から支持する。
【0024】
(タイヤ加硫金型の概要)
図1A及び
図1Bを参照すると、金型50は、前述のように、セクタモールド51、上モールド52、及び下モールド54を備える。
【0025】
セクタモールド51は、環状体を周方向Zに複数(例えば7個)分割することで形成された平面視扇形状のセクタ51Aを備える。個々のセクタ51Aは、セグメント31にそれぞれ取り付けられている。
図1Aに示す型締め状態では、複数のセクタ51Aは、成形するタイヤの外径に応じた内径の円環状に連なる。セクタモールド51の径方向Xにおいて、セクタ51Aの内面は空気入りタイヤ1のトレッド部2(
図3参照)を成形するための成形面51aを構成し、セクタ51Aの外面はセグメント31に取り付けるための取付面51bを構成する。
【0026】
上モールド52は、円環状であり、グリーンタイヤ1’の上方に位置するように上プレート33の下面に固定されている。上モールド52は、昇降部材25の昇降動作に従って上プレート33を介して昇降する。上モールド52の内周部には上ビードリング53が固定されている。
図1A及び
図1Bにおいて下側に位置する上モールド52の内面は、タイヤ1の一対のサイド部(図示せず)のうちの一方を成形するための成形面52aを構成し、上ビードリング53の内面は、タイヤ1の一対のビード部(図示せず)のうちの一方を成形するための成形面53aを構成する。
図1A及び
図1Bにおいて上側に位置する上モールド52の外面は、上プレート33に取り付けるための取付面52bを構成し、上ビードリング53の外面は、上モールド52に取り付けるための取付面53bを構成する。
【0027】
下モールド54は、上モールド52と同様の円環状であり、グリーンタイヤ1’の下部に位置するように下プレート35の上面に固定されている。下モールド54の内周部には、下ビードリング55が固定されている。
図1A及び
図1Bにおいて上側に位置する下モールド54の内面は、タイヤ1の一対のサイド部のうちの他方を成形するための成形面54aを構成し、下ビードリング55の内側面は、タイヤ1の一対のビード部のうちの他方を成形するための成形面55aを構成する。
図1A及び
図1Bにおいて下側に位置する下モールド54の外面は、下プレート35に取り付けるための取付面54bを構成し、下ビードリング55の外面は、下モールド54に取り付けるための取付面55bを構成する。
【0028】
このように構成された金型50には、
図1Bに示す型開き状態で、タイヤ幅方向が上下に延びる姿勢としたグリーンタイヤ1’が下モールド54上に載置される。この状態で、空気を供給してブラダ44を膨張させ、その外面でグリーンタイヤ1’の内側面を保持した状態で、駆動機構の駆動によって昇降部材24,25が降下されることで、
図1Aに示すように金型50が型締めされる。
【0029】
グリーンタイヤ1’のゴムは、金型50からの押圧によって成形面51a~55aに密着する。上プラテン22及び下プラテン23には、所定温度に調整された熱交換媒体が常に流動されている。これにより、グリーンタイヤ1’のゴムが加硫され、
図3に示す定められた外表面形状を有する空気入りタイヤ1が完成する。
【0030】
図2A及び
図2Bに示すように、セクタ51Aの成形面51aには、セクタモールド51の径方向Xの内側へ突出した骨部56,57が形成されている。
図3を併せて参照すると、骨部56によってタイヤ1のトレッド部2の外面には、タイヤ周方向に延びる主溝4が成形される。骨部57によってトレッド部2のタイヤ幅方向両側に位置するショルダ部3には、タイヤ幅方向Yに延びる横溝5が成形される。
【0031】
セクタモールド51を構成するセクタ51A、上モールド52、上ビードリング53、下モールド54、及び下ビードリング55は、定期的(例えば定められた加硫回数)に洗浄される。その洗浄機を
図2Bに示す。
図2Bに示すように、洗浄機は砂等の洗浄材66を噴射するノズル65を備える。セクタ51Aを洗浄する場合、セクタモールド51の幅方向Yと周方向Zへノズル65を揺動しながら、洗浄材66を成形面51aの全面に吹き付ける(ショットブラスト)。
【0032】
洗浄によって成形面51a~55aが過度に摩耗すると、定められた形状のタイヤ1を成形できない。特に、セクタ51Aの骨部56,57は、他の部分よりも突出しており、洗浄時に洗浄材66が強く吹き付けられるため、他の部分よりも摩耗が進行し易い。そして、骨部56,57の摩耗が過度に進行すると、定められた深さの溝4,5を形成できない。このような不都合を防ぐために、本実施形態では以下のようにしている。
【0033】
(セクタの詳細)
図2A及び
図2Bに示すように、セクタ51Aの成形面51aには、成形面51aの補修時期を判断可能とするための凸部60が設けられている。これにより、成形面51aと凸部61との間には、成形面51aの摩耗量を判断するための段部が形成される。凸部60は、全てのセクタ51Aに形成してもよいし、複数のセクタ51Aのうちの1つに形成してもよい。1つのセクタ51Aだけに凸部60を設ける場合、その凸部(段部)60の摩耗量に基づく補修時期判断を、全てのセクタ51Aに適用する。
【0034】
具体的には、セクタ51Aは、セクタモールド51の周方向Zに延びる4本の骨部56と、幅方向Yに延びる複数の骨部57とを備える。4本の骨部56は幅方向Yに間隔をあけて設けられている。複数の骨部57は周方向Zに間隔をあけて設けられている。幅方向Yに隣接した骨部56の側面56a間はタイヤ1のリブ6(
図3参照)を成形するための凹部58である。周方向Zに隣接した骨部57の側面57b間と骨部56の側面56aとで囲まれた内部は、タイヤ1のブロック7(
図3参照)を成形するための凹部59である。骨部56,57及び凹部58,59の全ての内表面によって、セクタ51Aの成形面51aが構成されている。
【0035】
インジケータとして機能する凸部60は、アルミニウム製のセクタ51Aによりも高硬度の材料(例えばステンレス)によって成形されている。例えば凸部60は、セクタ51Aよりも高硬度の板材を溶接したり、硬化によってセクタ51Aよりも高硬度になる材料を溶接によって肉盛りしたりすることで、成形される。また、アルミニウム製の凸部60の表面に、セクタ51Aよりも高硬度の被膜を施してもよい。このように、セクタ51Aと凸部60の材質を異ならせることで摩耗の進行度合いに差を設けることができるため、両者が均等に摩耗することで変化量が不明になることを防止している。
【0036】
凸部60は、洗浄によって他の部分よりも摩耗が進行し易い全ての骨部56,57の頂面56a,57aにそれぞれ形成されている。
図2Aに最も明瞭に示すように、凸部60は、セクタモールド51の径方向X内側からセクタ51Aを見て円形状(円柱状)に形成されている。但し、凸部60は四角形状や三角形状であってもよく、その形状は必要に応じて変更される。また、凸部60は突出した線条による模様であってもよい。
【0037】
図2Cに示すように、凸部60は、骨部56,57の頂面56a,57aから一様の厚み(突出寸法T1)で突出している。つまり、凸部60の先端面60aは、頂面56a,57aが平坦面の場合には頂面56a,57aと平行な平坦面に形成され、頂面56a,57aが湾曲面の場合には頂面56a,57aと同心円状の湾曲面に形成される。
【0038】
頂面56a,57a(成形面51a)から先端面60aまでの凸部60の突出寸法T1は、凹部58,59の底面58a,59aから頂面56a,57aまでの骨部56,57の突出寸法T2よりも小さく、骨部56,57の定められた高さ公差以下に設定されている。より具体的には、骨部56,57の突出寸法T2は1mm~15mmであり、その高さ公差の寸法値は0.3mmである。この骨部56,57の高さ公差の値は、定められた深さの溝4,5を成形するために必要な骨部56の摩滅限界値に相当する。これに対して、凸部60の突出寸法T1は、0.1mm以上0.3mm以下に設定されている。
【0039】
凸部60の突出寸法T1を過度に小さくした場合、凸部60が摩滅しても成形面51aは摩滅限界に達していない可能性が高いうえ、セクタ51Aの補修回数が無駄に多くなる。凸部60の突出寸法T2を骨部56,57の高さ公差よりも大きくした場合、凸部60が摩滅していなくても成形面51aが摩滅限界に達している可能性があるため、定められた深さの溝4,5をタイヤ1に成形できない虞がある。これらの不都合を防止するために、凸部60の突出寸法T1は、上記定められた範囲に設定することが好ましい。このようにすれば、凸部60が摩滅していない場合には補修時期に至っていないと判断でき、凸部60が摩滅した場合には補修時期に至ったと判断できる。
【0040】
以上のように、成形面51aにはインジケータとして機能する凸部60が設けられているため、セクタ51Aの洗浄による凸部60の摩耗量(成形面51aとの差)を確認することで、セクタ51Aの補修時期を容易に判断できる。そして、補修時期になったと判断すると、凸部60を含む成形面51aを補修(肉盛り)することで、トレッド部2に定められた溝パターンを確実に成形できる。なお、凸部60を備えるセクタ51Aによって成形されたタイヤ1は、
図3に示すように、溝4,5の底に凸部60と対応する形状の凹部8を備える。
【0041】
凸部60の突出寸法T1を骨部56,57の高さ公差(摩滅限界値)以下としているため、凸部60が摩滅しているか否かを確認することで、セクタ51Aの補修時期を容易に判断できる。洗浄により摩耗の進行が最も早い骨部56,57の頂面56a,57aに凸部60が形成されているため、セクタ51Aの成形面51aが摩滅限界に達する前に、セクタ51Aの補修時期を確実に判断できる。
【0042】
(第2実施形態)
図4は、インジケータとしての段部を形成した第2実施形態のセクタ51Aの骨部56,57(成形面51a)を示す。この第2実施形態では、第1実施形態の凸部60の代わりに、凹部62によって成形面51aとの間に段部が形成されている。
【0043】
凹部62は、成形面51aから骨部56,57の基部に向けて窪んでいる。セクタモールドの径方向から見た凹部62の形状は、第1実施形態と同様に、円形状に形成されているが、四角形状や三角形状であってもよいし、線条(スリット)による模様であってもよい。
【0044】
凹部62は、骨部56,57の頂面56a,57aから一様の深さ(寸法T1)で窪んでいる。底面62aから頂面56a,57a(成形面51a)までの凹部62の寸法T1は、第1実施形態と同様に、骨部56,57の突出寸法T2よりも小さく、骨部56,57の定められた高さ公差以下(0.1mm以上0.3mm以下)に設定されている。
【0045】
この第2実施形態のセクタ51Aでは、摩耗によって成形面51aが凹部62の底面62aと面一になることで、補修時期を容易に判断できる。よって、第1実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。なお、このセクタ51Aを用いて成形されたタイヤ1には、凹部62に対応する凸部がリブ6及びブロック7に成形される。この凸部は走行によって一番に摩滅する。
【0046】
(変形例)
図5はセクタ51Aの骨部56,57に対する段部の形成部位の変形例を示す。この変形例では、骨部56,57の側面56b,57bに、第1実施形態と同様の凸部60が設けられている。但し、第2実施形態のように、凸部60の代わりに凹部62を設けてもよい。
【0047】
側面56b,57bから先端面60aまでの凸部60の突出寸法は、
図2Cに示す第1実施形態と同様である。また、凸部60の形状も第1実施形態と同様であり、骨部56,57の側面56b,57bの一部だけに設けられている。なお、このセクタ51Aによって成形されたタイヤ1には、サイレントウォールとは異なり、リブ6の側面の一部だけに凸部60に対応する凹部が成形される。サイレントウォールとは、リブ6の側面にタイヤ周方向に交互に連続してタイヤ径方向に延びる複数の凹条及び凸条を設けた構成である。
【0048】
この金型50では、第1実施形態と同様に、凸部(段部)60の摩耗量に基づいてセクタ51Aの補修時期を容易に判断できる。また、タイヤ1には溝4,5の側面に凹部が形成されるため、凸部60の形成によってタイヤ1の外観に影響を及ぼすこともない。
【0049】
なお、本発明のタイヤ加硫金型50は、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0050】
例えば、凸部60又は凹部62による段部は、全ての骨部56,57のうち、1つだけに設けてもよいし、2以上に設けてもよい。凸部60又は凹部62を1つだけに設ける場合、4本の骨部56のうちの1つに形成することが好ましい。1つの骨部56,57に形成する凸部60又は凹部62の数は、1つだけでもよいし、2以上であってもよい。骨部56,57に対する凸部60又は凹部62の形成位置は必要に応じて変更が可能である。
【0051】
また、凸部60又は凹部62による段部は、成形面51aを構成する凹部58,59の底に設けてもよい。凸部60又は凹部62における摩滅限界に対応する位置に印(目盛り)を設ければ、凸部60又は凹部62の寸法T1は骨部56,57の高さ公差よりも大きくしてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1’ グリーンタイヤ
1 空気入りタイヤ
2 トレッド部
3 ショルダ部
4 主溝
5 横溝
6 リブ
7 ブロック
8 凹部
10 タイヤ加硫成形機
20 フレーム
21 プレート
22 上プラテン
22a 流路
23 下プラテン
23a 流路
24 昇降部材
25 昇降部材
30 コンテナ
31 セグメント
31a 傾斜面
32 ジャケット
32a 傾斜面
33 上プレート
34 上スライド
35 下プレート
36 下スライド
40 ブラダユニット
41 支軸
41a ロッド
42 上クランプ
43 下クランプ
44 ブラダ
50 タイヤ加硫金型
51 セクタモールド
51A セクタ
51a 成形面
51b 取付面
52 上モールド
52a 成形面
52b 取付面
53 上ビードリング
53a 成形面
53b 取付面
54 下モールド
54a 成形面
54b 取付面
55 下ビードリング
55a 成形面
55b 取付面
56 骨部
56a 頂面
56b 側面
57 骨部
57a 頂面
57b 側面
58 凹部
58a 底面
59 凹部
59a 底面
60 凸部(段部)
60a 先端面
62 凹部(段部)
62a 底面
65 ノズル
66 洗浄材
X セクタモールドの径方向
Y セクタモールドの幅方向
Z セクタモールドの周方向