IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 沢井製薬株式会社の特許一覧

特許7202898フィルムコーティングされた口腔内崩壊錠
<>
  • 特許-フィルムコーティングされた口腔内崩壊錠 図1
  • 特許-フィルムコーティングされた口腔内崩壊錠 図2
  • 特許-フィルムコーティングされた口腔内崩壊錠 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-28
(45)【発行日】2023-01-12
(54)【発明の名称】フィルムコーティングされた口腔内崩壊錠
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/38 20060101AFI20230104BHJP
   A61K 9/36 20060101ALI20230104BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20230104BHJP
【FI】
A61K47/38
A61K9/36
A61K47/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019002896
(22)【出願日】2019-01-10
(65)【公開番号】P2019123707
(43)【公開日】2019-07-25
【審査請求日】2021-10-13
(31)【優先権主張番号】P 2018002490
(32)【優先日】2018-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000209049
【氏名又は名称】沢井製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩之
(72)【発明者】
【氏名】夏目 文音
(72)【発明者】
【氏名】西川 雄樹
(72)【発明者】
【氏名】及川 倫徳
(72)【発明者】
【氏名】菊岡 広晃
【審査官】長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/157264(WO,A1)
【文献】特表2015-514786(JP,A)
【文献】特開2004-217652(JP,A)
【文献】特開2000-044464(JP,A)
【文献】特開2006-111601(JP,A)
【文献】特開2018-111668(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0202636(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/00-47/69
A61K 9/00- 9/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒプロメロースとヒドロキシプロピルセルロースとを、前記ヒプロメロースを1とした重量比で前記ヒドロキシプロピルセルロースを1:20未満の割合で含み、
クエン酸トリエチル、グリセリン脂肪酸エステル、トリアセチン、プロピレングリコール、マクロゴール及びモノステアリン酸グリセリンからなる群から選択される可塑剤を含まないフィルムコーティング用組成物でコーティングされたことを特徴とするフィルムコーティングされた口腔内崩壊錠。
【請求項2】
前記ヒドロキシプロピルセルロースが、前記ヒプロメロースを1とした重量比で1:4以下の割合で含まれることを特徴とする請求項1に記載のフィルムコーティングされた口腔内崩壊錠。
【請求項3】
前記フィルムコーティング用組成物における、前記ヒプロメロースと前記ヒドロキシプロピルセルロースとの配合割合が重量比で4:1から1:4であることを特徴とする請求項1に記載のフィルムコーティングされた口腔内崩壊錠。
【請求項4】
前記ヒプロメロースと前記ヒドロキシプロピルセルロースとの合計重量に対して、酸化チタンを23.4重量%以下の割合で含むことを特徴とする請求項に記載のフィルムコーティングされた口腔内崩壊錠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムコーティングされた口腔内崩壊錠に関する。本発明は、特に、溶解時間が短く、展延性に優れ、かつ汎用性に優れたフィルムをコーティングされた口腔内崩壊錠に関する。
【0002】
口腔内崩壊錠は、口腔内において口腔内の唾液のみ又は少量の水で約30秒前後、もしくはそれ以下の時間で速やかに崩壊する経口固形製剤である。口腔内で速やかに崩壊することから、口腔内崩壊錠は患者にとって服用しやすい製剤であり、特に嚥下力の弱い高齢者や小児にそのニーズが高まっている。
【0003】
一般に、錠剤や顆粒剤等の経口固形製剤において、硬度の維持や吸湿性の抑制を目的として、フィルムコーティングを施すことが広く行われている。また、フィルムコーティングは、例えば湿度や光といった環境因子から有効成分を保護ないし安定化する目的で適用される。
【0004】
さらに、有効成分が抗がん剤やホルモン作用剤などの高活性成分である場合は、流通過程はもちろんのこと、医療現場における医療従事者への高活性成分の曝露は避けられるべきであり、患者本人についても不必要な曝露は望ましくない。このような曝露に対する安全対策面でもフィルムコーティングは有用と考えられている。
【0005】
一方、口腔内崩壊錠にコーティングするフィルムは、患者の口腔内で素早く溶解することが必要である。また、口腔内崩壊錠は、錠剤の硬度が低く、吸湿性を有するものが多いため、錠剤の膨潤に耐えられる展延性を備えたフィルムであることが必要である。
【0006】
さらに、一般に、フィルム部の処方はフィルム基剤と可塑剤とからなるところ、可塑剤はフィルムの展延性、均一性に寄与し、フィルム処方ではよく用いられる。
【0007】
例えば、特許文献1には、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)等のフィルム基剤とプロピレングリコール(PG)とを含む被膜層のコーティング、特許文献2には、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のフィルムコーティング基剤と可塑剤とを含むフィルムコーティング用組成物、特許文献3には、セルロース系樹脂とポリエチレングリコール(PEG)とを含むフィルム処方、特許文献4には、水溶性高分子とPEGとを含むフィルム処方が、それぞれ開示されている。
【0008】
PEG等の可塑剤を含むことでフィルムは展延性、可塑性を有するが、一方で、可塑剤を含むフィルム処方は、可塑剤と接触することによって安定性が損なわれる有効成分を含む錠剤には使用できない。そのため、展延性に優れ、かつ汎用性に優れたフィルム処方の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第4972563号公報
【文献】国際公開2015/122477号公報
【文献】国際公開2014/157264号公報
【文献】特開2010-248106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、フィルムコーティングされた口腔内崩壊錠を提供することを目的の一つとする。本発明は、特に、溶解時間が短く、展延性に優れ、かつ汎用性に優れたフィルムコーティングされた口腔内崩壊錠を提供することを目的の一つとする。
【0011】
また、可塑剤と接触することによって保存安定性が損なわれる有効成分を含む錠剤にも用いることができるフィルムコーティングされた口腔内崩壊錠を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施形態によると、ヒプロメロースとヒドロキシプロピルセルロースとを含み、可塑剤を含まないフィルムコーティング用組成物でコーティングされたことを特徴とするフィルムコーティングされた口腔内崩壊錠が提供される。
【0013】
ヒドロキシプロピルセルロースは、ヒプロメロースを1とした重量比で1:20未満の割合で含まれてもよい。
【0014】
ヒドロキシプロピルセルロースは、ヒプロメロースを1とした重量比で1:4以下の割合で含まれてもよい。
【0015】
フィルムコーティング用組成物における、ヒプロメロースとヒドロキシプロピルセルロースとの配合割合が重量比で4:1から1:4でもよい。
【0016】
ヒプロメロースとヒドロキシプロピルセルロースとの合計重量に対して、酸化チタンを23.4重量%以下の割合で含んでもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、フィルムコーティングされた口腔内崩壊錠が提供される。本発明によると、特に、溶解時間が短く、展延性に優れ、かつ汎用性に優れたフィルムコーティングされた口腔内崩壊錠が提供される。
【0018】
また、本発明で提供されるフィルムコーティングには可塑剤が入っていないので、可塑剤と接触することによって保存安定性が損なわれる有効成分を含む錠剤にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】フィルムコーティング用組成物の処方と比較例に係るフィルムコーティングされた口腔内崩壊錠の製剤物性等とを示す図である。
図2】フィルムコーティング用組成物の処方と本発明の実施例に係るフィルムコーティングされた口腔内崩壊錠の製剤物性等とを示す図である。
図3】本発明の実施例に係るフィルムコーティングされた口腔内崩壊錠の製剤物性等を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るフィルムコーティングされた口腔内崩壊錠について説明する。但し、本発明のフィルムコーティングされた口腔内崩壊錠は、以下に示す実施の形態及び実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0021】
本発明者らは、ヒプロメロースとヒドロキシプロピルセルロースとを混合することによって、可塑剤を添加せずとも、速溶性、均一性、展延性に優れた口腔内崩壊錠用のフィルムとなることを見出した。
【0022】
また、本発明者らは、ヒプロメロースとヒドロキシプロピルセルロースとを混合したフィルムは、可塑剤を添加したフィルムより優れた展延性を有することを見出した。
【0023】
本発明に係るフィルムコーティングされた口腔内崩壊錠は、ヒプロメロースとヒドロキシプロピルセルロースとを含み、可塑剤を含まないフィルムコーティング用組成物でコーティングされた口腔内崩壊錠を含む。
【0024】
本実施形態において、フィルムコーティング用組成物は可塑剤を含まない。一般的な可塑剤としては、例えば、クエン酸トリエチル、グリセリン脂肪酸エステル、トリアセチン、プロピレングリコール、マクロゴール(ポリエチレングリコール)、モノステアリン酸グリセリン等を例示することができ、これらを含まない。
【0025】
本実施形態において、フィルムコーティング用組成物は、ヒプロメロースとヒドロキシプロピルセルロースとのいずれも含む。後述する比較例においても示すように、ヒプロメロースとヒドロキシプロピルセルロースとのどちらか一方のみを含むフィルムコーティング用組成物には問題がある。
【0026】
例えば、ヒプロメロースのみを含むフィルムコーティング用組成物でコーティングされた口腔内崩壊錠は、フィルムに割れが生じる。一方、ヒドロキシプロピルセルロースのみを含むフィルムコーティング用組成物でコーティングされた口腔内崩壊錠は、フィルムコーティング後の錠剤同士の貼り付きが生じてしまう。又、加湿保存後の錠剤は、フィルムが吸湿し、べたつくため、好ましくない。
【0027】
本実施形態に係るフィルムコーティング用組成物において、ヒドロキシプロピルセルロースは、ヒプロメロースを1とした重量比で1:20未満での範囲で含まれることが好ましい。また、ヒドロキシプロピルセルロースは、ヒプロメロースを1とした重量比で1:4以下での範囲で含まれることがより好ましい。また、ヒプロメロースは、ヒドロキシプロピルセルロースを1とした重量比で20:1未満の範囲で含まれることが好ましい。さらに、もっとも好ましくは、フィルムコーティング用組成物に含まれるヒプロメロースとヒドロキシプロピルセルロースとの配合割合は、重量比で4:1から1:4の範囲であることが好ましい。
【0028】
本発明に係るフィルムコーティングされた口腔内崩壊錠は、フィルムコーティング用組成物に酸化チタンを含んでもよい。
【0029】
本実施形態において、フィルムコーティング用組成物に酸化チタンを含む場合の配合割合は、ヒプロメロースとヒドロキシプロピルセルロースとの合計重量に対して、23.4重量%以下であることが好ましい。酸化チタンを46.9重量%以上の割合で含むと、フィルムが割れやすくなるため、好ましくない。
【0030】
本発明に係るフィルムコーティング用組成物においては、一般に用いられる賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味剤、甘味剤及び着色剤の少なくとも1種の薬学的に許容可能な添加剤をさらに含有することができる。
【0031】
賦形剤としては水溶性の糖類が好ましく、例えば、エリスリトール、D-マンニトール、乳糖水和物、キシリトール、イソマルト及びマルトース等を用いることができるが、賦形剤はこれらに限定されるものではない。また、本発明に係るフィルムコーティング用組成物には、2種以上の賦形剤を組合せて添加してもよい。
【0032】
本発明に係るフィルムコーティング用組成物に添加する崩壊剤は、薬学的に許容可能なものであればよい。本発明に係るフィルムコーティング用組成物に添加する崩壊剤として
、例えば、クロスポビドン、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナ
トリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPCとも称す)等を用いることが
できるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
本発明に係るフィルムコーティング用組成物に添加する滑沢剤は、薬学的に許容可能なものであればよい。本発明に係るフィルムコーティング用組成物に添加する滑沢剤として、例えば、タルク、軽質無水ケイ酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
本発明に係るフィルムコーティング用組成物に添加する矯味剤は、薬学的に許容可能なものであればよい。本発明に係るフィルムコーティング用組成物に添加する矯味剤として、エリスリトール、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、ステビア、タウマチン、クエン酸等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
本発明に係るフィルムコーティング用組成物に添加する甘味剤は、薬学的に許容可能なものであればよい。本発明に係るフィルムコーティング用組成物に添加する甘味剤として、例えば、ショ糖、乳糖、ブドウ糖などの糖、マンニトール、キシリトール、ソルビトールなどの糖アルコール、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、タウマチン等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
本発明に係るフィルムコーティング用組成物に添加する着色剤は、薬学的に許容可能なものであればよい。本発明に係るフィルムコーティング用組成物に添加する着色剤として、例えば、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、アナターゼ型又はルチル型の酸化チタン、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄等の金属酸化物、食用黄色5号、食用青色2号等の水溶性食用タール色素等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
フィルムコーティング用組成物に用いる溶媒には、一般的に錠剤のフィルムコーティング用として用いられる溶媒が使用できる。例えば、精製水、エタノールといった通常フィルムコーティング用組成物に用いる溶媒を使用することができ、適宜、溶媒同士を混合し使用することができる。
【0038】
フィルムコーティング用組成物は、口腔内崩壊錠に用いる一般的な量で、未被覆の口腔内崩壊錠のまわりにコーティングする。好ましくは、錠剤の口腔内崩壊性を妨げない量である、錠剤全体に対して5重量%以下でコーティングすることが好ましい。より好ましくは、錠剤全体に対して3重量%以下でコーティングすることが好ましい。さらに、より好ましくは、錠剤全体に対して2.5重量%以下でコーティングすることが好ましい。
【0039】
本実施形態のフィルムがコーティングされる口腔内崩壊錠とは、口腔内において口腔内の唾液のみ又は少量の水で約30秒前後、もしくはそれ以下の時間で速やかに崩壊する経口固形製剤である。
【0040】
本実施形態のフィルムをコーティングされる口腔内崩壊錠は、特に限定されるものではなく、一般的な口腔内崩壊錠である。また、その製造方法も公知の技術を用いることができ、特に限定されない。
【0041】
本実施形態のフィルムをコーティングされる口腔内崩壊錠の素錠には、必要に応じて薬学的に許容される添加剤を加えることが可能である。当該添加剤としては、例えば、抗酸化剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、矯味矯臭剤、滑沢剤等の添加剤を添加することができる。
【0042】
抗酸化剤は、例えば、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、トコフェロール、没食子酸プロピル、グアヤク脂、ノルジヒドログアヤレチック酸、ピロ亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ロンガリット等が挙げられる。これらの抗酸化剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0043】
賦形剤は、例えば、糖誘導体、澱粉誘導体、セルロース誘導体、アラビアゴム、デキストラン、プルラン、ケイ酸塩誘導体、燐酸塩、炭酸塩及び硫酸塩等から選択することができる。糖誘導体としては、例えば、乳糖、白糖、葡萄糖、マンニトール、エリスリトール、トレハロース、マルトース、キシリトール及びソルビトール等を例示することができる。また、澱粉誘導体としては、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、α-澱粉、デキストリン等を例示することができる。セルロース誘導体としては、結晶セルロース等を例示することができる。ケイ酸塩誘導体としては、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等を例示することができる。燐酸塩としては、燐酸水素カルシウム等を例示することができる。炭酸塩としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム等を例示することができる。硫酸塩としては、硫酸カルシウム等を例示することができる。これらの賦形剤は、単独又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0044】
結合剤は、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール及び上記に賦形剤として示した化合物等から選択することができる。これらの結合剤は、単独又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0045】
崩壊剤は、例えば、クロスポビドン、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、カルメロース、架橋化ポリビニルピロリドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、各種デンプン類等から選択することができる。これらの崩壊剤は、単独又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0046】
矯味矯臭剤は、例えば、甘味料、酸味料及び香料等から選択することができる。甘味料としては、サッカリンナトリウム、スクラロース、タウマチン、アセスルファムカリウム、ステビア抽出物、白糖、アスパルテーム等を例示することができる。酸味料としては、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸等を例示することができる。香料としては、メントール、レモンエキス、オレンジエキス等を例示することができる。これらの矯味矯臭剤は、単独又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0047】
滑沢剤は、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸金属塩(ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等)、タルク、コロイドシリカ、ワックス類(ビーズワックス、ゲイ蝋等)、硼酸、アジピン酸、硫酸塩(硫酸ナトリウム等)、グリコール、フマル酸、フマル酸ステアリルナトリウム、安息香酸ナトリウム、D、L-ロイシン、ラウリル硫酸塩(ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム等)、酸類(無水ケイ酸、ケイ酸水和物等)及び上記に賦形剤として示した化合物等から選択することができる。これらの滑沢剤は、単独又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0048】
本発明は、以上のように、可塑剤を添加せずとも、ヒプロメロースとヒドロキシプロピルセルロースとを含有することにより、速溶性、均一性、展延性に優れたフィルムによりコーティングされた口腔内崩壊錠を提供することができる。
【0049】
また、本発明は、フィルムコーティング用組成物におけるヒプロメロースとヒドロキシプロピルセルロースの合計重量に対して、酸化チタンを23.4重量%以下の割合で配合することにより、展延性に優れたフィルムによりコーティングされた口腔内崩壊錠を提供することができる。
【0050】
(製造方法)
フィルムコーティング基剤を、特に限定されないが、水、エタノール混合溶媒に溶解してフィルムコーティング用組成物を調製する。この時、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味剤又は着色剤の少なくとも1種の薬学的に許容可能な添加剤をさらに添加してもよい。
【0051】
未被覆の口腔内崩壊錠(素錠)に、フィルムコーティングを施す方法は、特に限定されず、汎用されるコーティング機や糖衣パンに未被覆の口腔内崩壊錠を投入し、本発明に係るフィルムコーティング用組成物を添加して行うことができる。
【0052】
(高湿度下における口腔内崩壊錠の厚みの増加率)
高湿度下における口腔内崩壊錠の厚みの増加率は、フィルムコーティングした口腔内崩壊錠を高湿度下で保存し、保存前と保存後との錠剤の厚さを測定し算出する。25℃、75%RHでの保存には、環境試験器(THG062FA、ADVANTEC社)を用いることができる。25℃、90%RHでの保存には、環境試験器(卓上型恒温恒湿槽LH21-11M、ナガノサイエンス社)を用いることができる。保存前と保存後との錠剤の厚さの測定には、厚さ測定器(シックネスゲージ、ミツトヨ社)を用いることができる。
【0053】
(フィルムの割れ)
フィルムコーティングした口腔内崩壊錠のフィルムの割れを目視で確認する。
【0054】
(フィルムの口腔内溶解時間)
フィルムの口腔内溶解時間は、健常成人が、水を服用せずに錠剤を口に含んだ時、噛まずに唾液によりフィルム層が溶解し、素錠が露出したことを感じるまでの時間(秒)を測定する。
【実施例
【0055】
上述した本発明に係るフィルムコーティングした口腔内崩壊錠の具体的な実施例及び試験結果を示して、より詳細に説明する。
【0056】
(未被覆の口腔内崩壊錠の製造例)
D-マンニトール・カルメロース・結晶セルロース・クロスポビドン混合物(グランフィラーD(登録商標) GNF-D211、ニチリン化学工業/五徳薬品)990.0g、ステアリン酸マグネシウム(植物性、太平化学産業)10.0gを混合し、打錠用混合品とした。打錠機(VELA5、菊水製作所)を用い、重量158mg及び硬度3.5kgとなるよう打錠用混合品を打錠し未被覆の口腔内崩壊錠を得た。
【0057】
(実施例1)
水:エタノール=3:7の割合で混合された溶媒に、図2の配合比率で8.0重量%の濃度となるよう、ヒプロメロース(TC-5M、信越化学工業)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-L、日本曹達)、タルク(富士タルク)、酸化チタン(KA-10M、チタン工業)、エリスリトール(日研化成)、スクラロース(P、三栄原エフエフアイ)を溶解・分散し、フィルムコーティング用組成物を得た。未被覆の口腔内崩壊錠を製造例に従って準備し、コーティング機(HC-LABO20、フロイント産業)を用いて、所定の重量になるよう未被覆の口腔内崩壊錠にフィルムコーティング用組成物をコーティングして実施例1のフィルムコーティングされた口腔内崩壊錠161.4mgを得た。
【0058】
(実施例2)
実施例1においては、フィルムコーティング用組成物に、ヒプロメロースとヒドロキシプロピルセルロースとの配合割合を重量比で4:1として混合したが、実施例2においては、フィルムコーティング用組成物に、ヒプロメロースとヒドロキシプロピルセルロースとの配合割合が重量比で1:1になるように、ヒプロメロースとヒドロキシプロピルセルロースとを混合した。水:エタノール=3:7の割合で混合された溶媒に、図2の配合比率で8.0重量%の濃度となるよう各添加剤を混合し、実施例1と同様に製造して実施例2のフィルムコーティングされた口腔内崩壊錠161.4mgを得た。
【0059】
(実施例3)
実施例1においては、フィルムコーティング用組成物に、ヒプロメロースとヒドロキシプロピルセルロースとの配合割合を重量比で4:1として混合したが、実施例3においては、フィルムコーティング用組成物に、ヒプロメロースとヒドロキシプロピルセルロースとの配合割合が重量比で1:4になるように、ヒプロメロースとヒドロキシプロピルセルロースとを混合した。水:エタノール=3:7の割合で混合された溶媒に、図2の配合比率で8.0重量%の濃度となるよう各添加剤を混合し、実施例1と同様に製造して実施例3のフィルムコーティングされた口腔内崩壊錠161.4mgを得た。
【0060】
(実施例4)
実施例1においては、フィルムコーティング用組成物に、ヒプロメロースとヒドロキシプロピルセルロースとの配合割合を重量比で4:1として混合したが、実施例4においては、フィルムコーティング用組成物に、ヒプロメロースとヒドロキシプロピルセルロースとの配合割合が重量比で20:1になるように、ヒプロメロースとヒドロキシプロピルセルロースとを混合した。水:エタノール=3:7の割合で混合された溶媒に、図2の配合比率で8.0重量%の濃度となるよう各添加剤を混合し、実施例1と同様に製造して実施例4のフィルムコーティングされた口腔内崩壊錠161.4mgを得た。
【0061】
(実施例5)
実施例1においては、フィルムコーティング用組成物に、ヒプロメロースとヒドロキシプロピルセルロースとの配合割合を重量比で4:1として混合したが、実施例5においては、フィルムコーティング用組成物に、ヒプロメロースとヒドロキシプロピルセルロースとの配合割合が重量比で1:20になるように、ヒプロメロースとヒドロキシプロピルセルロースとを混合した。水:エタノール=3:7の割合で混合された溶媒に、図2の配合比率で8.0重量%の濃度となるよう各添加剤を混合し、実施例1と同様に製造して実施例5のフィルムコーティングされた口腔内崩壊錠161.4mgを得た。
【0062】
(実施例6)
実施例1においては、フィルムコーティング用組成物に、ヒプロメロースとヒドロキシプロピルセルロースとの合計重量に対して、酸化チタンを1.3重量%の割合で配合したが、実施例6においては、フィルムコーティング用組成物に、ヒプロメロースとヒドロキシプロピルセルロースとの合計重量に対して、酸化チタンを5.9重量%の割合になるように配合した。水:エタノール=3:7の割合で混合された溶媒に、図2の配合比率で8.3重量%の濃度となるよう各添加剤を混合し、実施例1と同様に製造して実施例6のフィルムコーティングされた口腔内崩壊錠161.53mgを得た。
【0063】
(実施例7)
実施例1においては、フィルムコーティング用組成物に、ヒプロメロースとヒドロキシプロピルセルロースとの合計重量に対して、酸化チタンを1.3重量%の割合で配合したが、実施例7においては、フィルムコーティング用組成物に、ヒプロメロースとヒドロキシプロピルセルロースとの合計重量に対して、酸化チタンを11.7重量%の割合になるように配合した。水:エタノール=3:7の割合で混合された溶媒に、図2の配合比率で8.7重量%の濃度となるよう各添加剤を混合し、実施例1と同様に製造して実施例7のフィルムコーティングされた口腔内崩壊錠161.7mgを得た。
【0064】
(実施例8)
実施例1においては、フィルムコーティング用組成物に、ヒプロメロースとヒドロキシプロピルセルロースとの合計重量に対して、酸化チタンを1.3重量%の割合で配合したが、実施例8においては、フィルムコーティング用組成物に、ヒプロメロースとヒドロキシプロピルセルロースとの合計重量に対して、酸化チタンを23.4重量%の割合になるように配合した。水:エタノール=3:7の割合で混合された溶媒に、図2の配合比率で9.5重量%の濃度となるよう各添加剤を混合し、実施例1と同様に製造して実施例8のフィルムコーティングされた口腔内崩壊錠162.04mgを得た。
【0065】
(比較例1)
実施例1においては、フィルムコーティング用組成物に、ヒプロメロースとヒドロキシプロピルセルロースとの配合割合を重量比で4:1として混合したが、比較例1においては、フィルムコーティング用組成物にヒドロキシプロピルセルロースを添加せず、プロピレングリコールを添加し、ヒプロメロースとプロピレングリコールとの配合割合が重量比で10:3になるように、ヒプロメロースとプロピレングリコールとを混合した。水:エタノール=3:7の割合で混合された溶媒に、図1の配合比率で8.0重量%の濃度となるよう各添加剤を混合し、実施例1と同様に製造して比較例1のフィルムコーティングされた口腔内崩壊錠161.4mgを得た。
【0066】
(比較例2)
実施例1においては、フィルムコーティング用組成物に、ヒプロメロースとヒドロキシプロピルセルロースとの配合割合を重量比で4:1として混合したが、比較例2においては、フィルムコーティング用組成物に、さらにプロピレングリコールを添加し、ヒプロメロースとヒドロキシプロピルセルロースとプロピレングリコールとの配合割合が重量比で10:3:2になるようにヒプロメロースとヒドロキシプロピルセルロースとプロピレングリコールとを混合した。水:エタノール=3:7の割合で混合された溶媒に、図1の配合比率で8.0重量%の濃度となるよう各添加剤を混合し、実施例1と同様に製造して比較例2のフィルムコーティングされた口腔内崩壊錠161.4mgを得た。
【0067】
(比較例3)
実施例1においては、フィルムコーティング用組成物に、ヒプロメロースとヒドロキシプロピルセルロースとの配合割合を重量比で4:1として混合したが、比較例3においては、フィルムコーティング用組成物にヒドロキシプロピルセルロースを添加せず、ヒプロメロースのみ混合した。水:エタノール=3:7の割合で混合された溶媒に、図1の配合比率で8.0重量%の濃度となるよう各添加剤を混合し、実施例1と同様に製造して比較例3のフィルムコーティングされた口腔内崩壊錠161.4mgを得た。
【0068】
(比較例4)
実施例1においては、フィルムコーティング用組成物に、ヒプロメロースとヒドロキシプロピルセルロースとの配合割合を重量比で4:1として混合したが、比較例4においては、フィルムコーティング用組成物にヒプロメロースを添加せず、ヒドロキシプロピルセルロースのみ混合した。水:エタノール=3:7の割合で混合された溶媒に、図1の配合比率で8.0重量%の濃度となるよう各添加剤を混合し、実施例1と同様に製造して比較例4のフィルムコーティングされた口腔内崩壊錠161.4mgを得た。
【0069】
(比較例5)
実施例1においては、フィルムコーティング用組成物に、ヒプロメロースとヒドロキシプロピルセルロースとの合計重量に対して、酸化チタンを1.3重量%の割合で配合したが、比較例5においては、フィルムコーティング用組成物に、ヒプロメロースとヒドロキシプロピルセルロースとの合計重量に対して、酸化チタンを46.9重量%の割合になるように配合した。水:エタノール=3:7の割合で混合された溶媒に、図2の配合比率で11.1重量%となるよう各添加剤を混合し、実施例1と同様に製造して比較例5のフィルムコーティングされた口腔内崩壊錠162.72mgを得た。
【0070】
(比較例6)
実施例1においては、フィルムコーティング用組成物に、ヒプロメロースとヒドロキシプロピルセルロースとの合計重量に対して、酸化チタンを1.3重量%の割合で配合したが、比較例6においては、フィルムコーティング用組成物に、ヒプロメロースとヒドロキシプロピルセルロースとの合計重量に対して、酸化チタンを58.6重量%の割合になるように配合した。水:エタノール=3:7の割合で混合された溶媒に、図2の配合比率で12.0重量%となるよう各添加剤を混合し、実施例1と同様に製造して比較例6のフィルムコーティングされた口腔内崩壊錠163.06mgを得た。
【0071】
図1は、フィルムコーティング用組成物の処方と比較例に係るフィルムコーティングされた口腔内崩壊錠の製剤物性等とを示す図である。図2は、フィルムコーティング用組成物の処方と本発明の実施例に係るフィルムコーティングされた口腔内崩壊錠の製剤物性等とを示す図である。
【0072】
(高湿度下における口腔内崩壊錠の厚みの増加率)
高湿度下における口腔内崩壊錠の厚みの増加率は、フィルムコーティングした口腔内崩壊錠を、25℃、相対湿度75%のもと、16時間保存したのち、保存前と保存後との錠剤の厚さを厚さ測定器(シックネスゲージ、ミツトヨ社)により測定し増加率(%)を算出した。
【0073】
(フィルムの割れ)
フィルムの割れは、フィルムコーティングした口腔内崩壊錠を、25℃、相対湿度75%のもと、16時間保存したのち、目視により、フィルムコーティングした口腔内崩壊錠のフィルムの割れを確認した。
【0074】
(フィルムの口腔内溶解時間)
フィルムの口腔内溶解時間は、健常成人が、水を服用せずに錠剤を口に含んだ時、噛まずに唾液によりフィルム層が溶解し、素錠が露出したことを感じるまでの時間(秒)を測定した。
【0075】
比較例1及び比較例2は、フィルムコーティング用組成物に可塑剤としてプロピレングリコールを含むフィルムコーティングした口腔内崩壊錠である。いずれの口腔内溶解時間も口腔内崩壊錠として適切であるものの、高湿度下における口腔内崩壊錠の厚みの増加によりフィルムの割れが確認された。
【0076】
比較例3は、フィルムコーティング用組成物に可塑剤としてプロピレングリコールを含まず、フィルム基材としてヒプロメロースのみを含む製剤である。口腔内溶解時間は口腔内崩壊錠として適切であるものの、高湿度下における口腔内崩壊錠の厚みの増加によりフィルムの割れが確認された。
【0077】
比較例4は、フィルムコーティング用組成物に可塑剤としてプロピレングリコールを含まず、フィルム基材としてヒドロキシプロピルセルロースのみを含む製剤である。口腔内溶解時間は口腔内崩壊錠として適切であるものの、製造後の錠剤同士のペアリング(貼り付き)が生じた。また、加湿下での保存後の錠剤は、フィルムが吸湿しフィルムとしての機能を有しない状態であることが確認された。
【0078】
一方、実施例1から実施例5は、フィルムコーティング用組成物にヒプロメロースとヒドロキシプロピルセルロースとの配合割合を重量比4:1、1:1、1:4、20:1、1:20でそれぞれ含み、可塑剤としてプロピレングリコールを含まない製剤である。いずれの口腔内崩壊錠フィルムの口腔内溶解時間も口腔内崩壊錠として適切であり、かつ、高湿度保存によって口腔内崩壊錠の厚みが増加しているにもかかわらず、フィルムの割れが確認されなかった。実施例4の口腔内崩壊錠フィルムの口腔内溶解時間は8~10秒であって、実施例1から実施例3、実施例5の口腔内崩壊錠フィルムの口腔内溶解時間が5~8秒であるのと比較すると若干遅かった。また、実施例5の製剤は、フィルムコーティング用組成物がべたつくため、製造後のごく一部の錠剤で、ペアリングが生じた。
【0079】
このように、ヒプロメロースとヒドロキシプロピルセルロースとを含み、可塑剤を含まないフィルムは、口の中で素早く溶解し、口腔内崩壊錠の崩壊性を抑制しない。また、吸湿に基づく錠剤の膨潤に耐えられる優れた展延性を有するため、コーティングした後、過酷な環境下に置いてもフィルムが割れにくい。
【0080】
さらに、可塑剤を含有しないため、可塑剤に対して不安定な原薬を含む口腔内崩壊錠にも使用することが可能であり、溶解時間が短く、展延性に優れ、かつ汎用性に優れたフィルムコーティングされた口腔内崩壊錠を提供することができる。
【0081】
図3は、本発明の実施例に係るフィルムコーティングされた口腔内崩壊錠の製剤物性等を示す図である。
【0082】
(高湿度下における口腔内崩壊錠の厚みの増加率)
高湿度下における口腔内崩壊錠の厚みの増加率は、フィルムコーティングした口腔内崩壊錠を、25℃、相対湿度90%のもと、5時間保存したのち、保存前と保存後との錠剤の厚さを厚さ測定器(シックネスゲージ、ミツトヨ社)により測定し増加率(%)を算出した。
【0083】
(フィルムの割れ)
フィルムコーティングした口腔内崩壊錠を、25℃、相対湿度90%のもと、5時間保存したのち、目視により、フィルムコーティングした口腔内崩壊錠のフィルムの割れを確認した。
【0084】
(フィルムの口腔内溶解時間)
フィルムの口腔内溶解時間の測定方法は上述した測定方法と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0085】
実施例4から実施例6は、フィルムコーティング用組成物に、ヒプロメロースとヒドロキシプロピルセルロースとの合計重量に対して、酸化チタンを5.9重量%、11.7重量%、23.4重量%の割合でそれぞれ含む製剤であるが、いずれも口腔内溶解時間は口腔内崩壊錠として適切であり、かつ、高湿度保存によって口腔内崩壊錠の厚みが増加しているにもかかわらずフィルムの割れが確認されなかった。
【0086】
一方、酸化チタンの配合割合をさらに増加させた比較例5及び比較例6は、フィルムコーティング用組成物に、ヒプロメロースとヒドロキシプロピルセルロースとの合計重量に対して、酸化チタンを46.9重量%、58.6重量%の割合でそれぞれ含む製剤であるが、いずれも口腔内溶解時間は口腔内崩壊錠として適切であるものの、高湿度下における口腔内崩壊錠の厚みの増加によりフィルムの割れが確認された。
【0087】
このように、一般に、着色剤として添加される酸化チタンを配合すると、フィルムの展延性が悪くなるが、ヒプロメロースとヒドロキシプロピルセルロースとの合計重量に対して、酸化チタンを23.4重量%以下の割合で含む製剤であれば、吸湿に基づく錠剤の膨潤に耐えられる優れた展延性を有するため、コーティングした後、過酷な環境下に置いてもフィルムが割れにくく、溶解時間が短く、展延性に優れ、かつ汎用性に優れたフィルムコーティングされた口腔内崩壊錠を提供することができる。
【0088】
以上説明したように、本発明に係るフィルムコーティングされた口腔内崩壊錠は、ヒプロメロースとヒドロキシプロピルセルロースとを含み、可塑剤を含まないフィルムコーティング用組成物でコーティングすることにより、溶解時間が短く、展延性に優れ、かつ汎用性に優れたフィルムコーティングされた口腔内崩壊錠を提供することができる。
図1
図2
図3