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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-28
(45)【発行日】2023-01-12
(54)【発明の名称】表示用部材及び時計
(51)【国際特許分類】
   G04B 19/10 20060101AFI20230104BHJP
   C25D 1/00 20060101ALI20230104BHJP
【FI】
G04B19/10 Z
C25D1/00 341
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019059962
(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2020159882
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593220236
【氏名又は名称】テフコインターナショナル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真司
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 元喜
(72)【発明者】
【氏名】中山 元
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-124682(JP,U)
【文献】特開2003-247093(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00 - 99/00
C25D 1/00 - 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部同士が互いに所定の間隔を以て離間し、前記基部よりも上方の、前記基部よりも幅の広い広幅部同士が互いに接合された複数の部材が一体に形成され、前記広幅部は、頂部と、互いに接合されている部分の上面に形成されている溝部とを備え、前記頂部と前記溝部との高低差を有する時計の文字板に配置される表示用部材であって、
前記所定の間隔が60[μm]以上70[μm]以下であり、
前記基部と前記広幅部との総厚さが65[μm]以上70[μm]以下であり、
前記高低差が4[μm]以上9[μm]以下であり、
前記表示部材の高さ方向に沿った、前記広幅部の、前記接合されている厚さが60[μm]以上であり、
前記部材同士が接合されたものの外周の全周に沿った外枠が無い、時計の文字板に配置される表示用部材。
【請求項2】
前記高低差が7[μm]以上9[μm]以下である請求項1に記載の時計の文字板に配置される表示用部材。
【請求項3】
前記部材は、電気メッキの工程で生成されたものである請求項1又は2に記載の時計の文字板に配置される表示用部材。
【請求項4】
前記部材の少なくとも一部に、透光性を有する着色層が形成された請求項1から3のうちいずれか1項に記載の時計の文字板に配置される表示用部材。
【請求項5】
前記着色層は、透光性の塗料である請求項4に記載の時計の文字板に配置される表示用部材。
【請求項6】
請求項1から5のうちいずれか1項の時計の文字板に配置される表示用部材を文字板に配置した時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示用部材及び時計に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば時計の文字板に時字(インデックスバー)などを表示する場合、文字板に印刷したり、立体的に形成した部材を文字板に固定したりすることが行われている。
【0003】
また、近年は、電鋳(電気メッキ)の工程で形成した表示用部材が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
電鋳の工程では、それぞれが例えば線状に形成された電鋳部材を微小な間隔で配置したような図柄パターンを形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-247093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、図柄パターンは、外周の全周に沿って形成された電鋳部材の外枠を有し、この外枠に、囲まれた電鋳部材を接合することで、図柄パターンとして一体化されている強度を確保している。このため、表示部材は、外枠を有する図柄パターンで形成され、図柄パターンのデザイン上の制約がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、外周の全周に沿った外枠が無くてもよい表示用部材及び時計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1は、基部同士が互いに所定の間隔を以て離間し、前記基部よりも上方の、前記基部よりも幅の広い広幅部同士が互いに接合された複数の部材が一体に形成され、前記広幅部は、頂部と、互いに接合されている部分の上面に形成されている溝部とを備え、前記頂部と前記溝部との高低差を有する表示用部材であって、前記表示部材の高さ方向に沿った、前記広幅部の、前記接合されている厚さが60[μm]以上である表示用部材である。
【0009】
本発明の第2は、本発明に係る表示用部材を文字板に配置した時計である。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る表示用部材及び時計によれば、外周の全周に沿った外枠が無くてもよいため、デザイン面での制約のない図柄パターンで形成することできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態である表示用部材が固定された時計の文字板の一部を示す平面図である。
図2図1におけるA部を拡大した拡大図である。
図3図1,2に示した表示用部材の一部を模式的に示した平面図である。
図4A図3におけるB-B線に沿った断面を示す断面図である。
図4B】表示用部材の全体に着色層を形成した図4A相当の断面図である。
図4C】表示用部材の一部にのみ着色層を形成した図4A相当の断面図である。
図5】表示用部材の製造工程を示す図4A相当の断面図であり、基材への感光乳剤膜の形成を示す。
図6】表示用部材の製造工程を示す図4A相当の断面図であり、露光用マスクの設置を示す。
図7】表示用部材の製造工程を示す図4A相当の断面図であり、露光用マスクを介在させての露光を示す。
図8】表示用部材の製造工程を示す図4A相当の断面図であり、露光用マスクの除去を示す。
図9】表示用部材の製造工程を示す図4A相当の断面図であり、不要な感光乳剤膜の除去(現像)を示す。
図10】表示用部材の製造工程を示す図4A相当の断面図であり、メッキの形成を示す。
図11】表示用部材の製造工程を示す図4A相当の断面図であり、メッキの成長によるメッキの接合を示す。
図12】は表示用部材の製造工程を示す図4A相当の断面図であり、不要となった露光済み感光乳剤膜の除去を示す。
図13】表示用部材の製造工程を示す図4A相当の断面図であり、必要に応じた着色等を示す。
図14】表示用部材の製造工程を示す図4A相当の断面図であり、保護フィルムの貼り付けを示す。
図15】表示用部材の製造工程を示す図4A相当の断面図であり、基材の除去を示す。
図16】表示用部材の製造工程を示す図4A相当の断面図であり、粘着部材の付加を示す。
図17】表示用部材の製造工程を示す図4A相当の断面図であり、不要なメッキの除去を示す。
図18】表示用部材の製造工程を示す図4A相当の断面図であり、離型シートの貼り付けを示す。
図19図4Aに示した隣接する部材の隙間の寸法W2、部材の総厚さt1(接合されている厚さt3)及び頂部と溝部との高低差t4を変えたときの、溝部と頂部とにより形成された凹凸を装飾として感じさせるか否かの官能評価(凹凸評価)、部材同士が接合された部分の接合強度の評価(強度評価)を示す実施例を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る表示用部材及び時計の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0013】
図1は本発明の一実施形態である表示用部材100が固定された時計の文字板200の一部を示す平面図、図2図1におけるA部を拡大した拡大図、図3図1,2に示した表示用部材100の一部を模式的に示した平面図、図4A図3におけるB-B線に沿った断面を示す断面図である。図1に示した表示用部材100が固定された文字板200を有する時計は、本発明に係る時計の一実施形態である。
【0014】
<表示用部材の構成>
本実施形態の表示用部材100は、例えば図1に示すように、時計の文字板200に固定されて、時計が指針(時針及び分針)によって時刻を指示するためのインデックスバーやインデックスバーの外側に配置された飾り環を形成している。表示用部材100は、母材が導電性材料で形成され、付加的に塗装やメッキなどで加飾されている。
【0015】
この表示用部材100は、図2に示すように、文字板200の中心回りに仮想される円の接線方向に延びた線状の部材10が、その部材10の長手方向に直交する方向に複数配置されている。そして、その直交する方向に沿って互いに隣接した部材10同士が接合されている。
【0016】
すなわち、表示用部材100は、図3に示す左右方向に長手方向を有して形成されていて、長手方向に沿ったB-B線による断面においては、図4Aに示すように、隣接した部材10同士が接合されている。
【0017】
個々の部材10は、図4Aに示すように、文字板200に固定された底面から厚さt2の範囲においては上記直交方向の幅W1が略一定に形成された基部10aと、厚さt2よりも上方の範囲においては幅W1よりも幅方向Wの寸法が長い(幅が広い)と共に、高さ方向Hにも伸びてドーム状(断面輪郭が弧状)に形成された広幅部10bとを有している。
【0018】
したがって、表示用部材100は、文字板200に固定された基部10aにおいては、隣接する部材10同士は離れているが、厚さt2よりも上方の広幅部10bおいては、隣接する部材10の一部同士が互いに接合されて、これにより複数の部材10は一体の表示用部材100を形成している。
【0019】
なお、個々の部材10は、前述したように広幅部10bがドーム状に形成されているため、幅方向Wの中心付近が、高さ方向Hについて最も高い頂部13を形成している。個々の部材10は、頂部13から幅方向Wに遠ざかるにしたがって、高さが低くなり、隣接する部材10同士が互いに接合された部分の上面に、高さ方向Hについて最も低い溝部14を形成している。
【0020】
頂部13と溝部14とは、高さ方向Hに沿って高低差t4を有している。そして、部材10同士は、広幅部10bのうち厚さt3の範囲において接合されている。
【0021】
なお、部材10は、高さ方向Hの、基部10aの底面から頂部13までの総厚さt1で形成されている。総厚さt1は例えば70[μm]、基部10aの厚さt2は例えば1[μm]、頂部13と溝部14との高低差t4は例えば4[μm]以上9[μm]以下で、部材10同士が接合されている厚さt3は例えば60[μm]である。
【0022】
ここで、高低差t4が4[μm]以上であることにより、観者は、表示用部材100における溝部14を凹みとして視認することができ、これにより、表示用部材100を、線状の部材10が並んだ集合体として視認することができる。つまり、表示用部材100を、平らな一体物として認識させるのではなく、線状の部材10同士が接合された部分を溝部14、個々の線状の部材10を頂部13とする凹凸の装飾として、観者に感じさせることができる。
【0023】
一方、高低差t4が4[μm]よりも小さいと、観者は溝部14を凹みとして視認することができないため、溝部14と頂部13とにより形成された凹凸を装飾として感じさせることができない。
【0024】
また、高低差t4が9[μm]を超えたものでは、観者は、溝部14を凹みとして視認することはできるが、総厚さt1を例えば70[μm]一定に固定した場合、高低差t4が大きくなるにしたがって、部材10同士が接合されている厚さt3を小さくする必要がある。後述する実施例の結果によると、接合されている厚さt3が60[μm]よりも小さい場合は、表示用部材100として一体に保持するための強度が低くなり好ましくない。
【0025】
したがって、総厚さt1を例えば70[μm]一定に固定した場合、高低差t4は9[μm]以下であることが必要である。ここで、例えば時計の文字板200に固定するものとして表示用部材100を適用した場合には、総厚さt1を70[μm]程度に設定するのが好ましい。
【0026】
基部10aの厚さt2が1[μm]、頂部13と溝部14との高低差t4が4[μm]以上9[μm]以下で、部材10同士が接合されている厚さt3が60[μm]である場合、総厚さt1は、65[μm]~70[μm]程度の範囲となる。
【0027】
なお、高低差t4は、7[μm]以上であることがより好ましい。
【0028】
部材10が接合して連結した表示用部材100に対して、必要に応じて、着色や仕上げの表面処理(塗装や仕上げのメッキ等)を施して着色層(図示せず)を形成してもよい。
【0029】
図4Bは表示用部材100の全体に着色層20を形成した図4A相当の断面図、図4Cは表示用部材100の一部にのみ着色層20を形成した図4A相当の断面図である。
【0030】
上述した着色層20は、図4Bに示すように、表示用部材100の全体に形成してもよいし、又は部材10の連結によって形成された立体的な凹凸の図柄に応じて、図4Cに示すように、表示用部材100を文字板200に配置した際に視認できる領域(例えば、溝部14を含む部分)にのみ着色層20を形成してもよい。この場合、着色層20は、透光性を有するものであることが好ましい。
【0031】
<表示用部材の製造方法>
図5~18は、本実施形態の表示用部材100の製造工程を示す図4A相当の断面図であり、図5は基材150への感光乳剤膜151の形成、図6は露光用マスク152の設置、図7は露光用マスク152を介在させての露光、図8は露光用マスク152の除去、図9は不要な感光乳剤膜の除去(現像)、図10はメッキ部材154の形成、図11はメッキ部材154の成長によるメッキ部材154の接合、図12は不要となった露光済み感光乳剤膜153の除去、図13は必要に応じた着色等、図14は保護フィルム155の貼り付け、図15は基材150の除去、図16は粘着部材156の付加、図17は不要なメッキ部材154の除去、図18は離型シート157の貼り付け、をそれぞれ示す。
【0032】
本実施形態の表示用部材100は、例えば、以下の製造工程で製造される。すなわち、図5に示すように、導電性の基材150(例えば、ステンレス製の基板)の表面に感光性樹脂である感光乳剤膜151を形成する。感光乳剤膜151の膜厚は、例えば、1[μm]であり、基部10aの厚さt2に相当する。
【0033】
なお、後述の工程で、基材150の表面に形成された電鋳部材であるメッキ部材154(部材10に相当)と基材150とを分離し易くするために、基材150の表面に、剥離し易い、結合力の弱いメッキを予め施しておいてもよい。
【0034】
次いで、図6に示すように、感光乳剤膜151に露光用マスク152を重ね、図7に示すように光を照射して、感光乳剤膜151を露光する。露光用マスク152には、光を遮光しない開口152aが形成されている。開口152aは、図6において、例えば、紙面の奥行き方向に長手方向を有する矩形線状に形成されていて、この開口152aが、製造される表示用部材100における線状の部材10に対応する。
【0035】
この露光により、感光乳剤膜151のうち、露光用マスク152の開口152aに対応した部分は露光されて、露光済み感光乳剤膜153となる。
【0036】
露光後、図8に示すように、露光用マスク152を除去し、図9に示すように、未露光の感光乳剤膜151を除去すると、基材150上には、開口152aに対応した平面視の形状に形成された露光済み感光乳剤膜153が残る。
【0037】
次いで、図10に示すように、基材150に電鋳(電気メッキ)の工程により、基材150の、露光済み感光乳剤膜153で非導通とされた部分(レジスト)以外の部分から、メッキ部材154が、表示用部材100を構成する個々の部材10の基部10aとして、厚さ方向に成長する。
【0038】
ここで、レジストの厚さを超えて成長したメッキ部材154は、厚さ方向以外にも全ての方向に向けて同等に成長(等方成長)する。したがって、図10に示すように、レジストの厚さを超えたメッキ部材154は、面内方向にも成長して、隣接する他のメッキ部材154(他の部材10)に近接する。この面内方向に成長したメッキ部材154の部分は、部材10の広幅部10bに相当する。
【0039】
そして、メッキ部材154の成長がさらに進むと、図11に示すように、面内方向に成長したメッキ部材154同士が接合される。メッキ部材154の成長がさらに進むと、メッキ部材154の厚さが厚くなるとともに、メッキ部材154同士が接合された部分の厚さも厚くなる。
【0040】
次いで、図12に示すように、基材150上に残ったレジストである露光済み感光乳剤膜153を除去し、図13に示すように、メッキ部材154に対して必要に応じて着色や仕上げの表面処理(塗装や仕上げのメッキ等)を施す。
【0041】
なお、透光性を有する塗料で着色した場合、例えば、図4B図4Cに示すように、溝部14には塗料が溜まり易いため、溝部14は他の部分よりも塗料の厚さ(着色層20)が厚くなる。この結果、溝部14での反射光は他の部分での反射光よりも塗料を通過する光路長が長くなる。
【0042】
そして、光路長が長いほど反射光量が低下するため、溝部14での反射光量は、他の部分での反射光量よりも少なくなって暗く見える。これにより、塗料で着色されたものは、塗料がない場合に比べて、見かけ上、溝部14がより深く見え、観者が凹凸感をさらに感じることができ、官能評価(凹凸評価)を高めることができる。
【0043】
次いで、図14に示すように、メッキ部材154の、基材150とは反対側の面である上面に透明な保護フィルム155を貼り、図15に示すように、メッキ部材154を保護フィルム155に保持させた状態で、メッキ部材154から基材150を剥離する。このとき、基材150の表面に、剥離し易い、結合力の弱いメッキが施されているものでは、メッキ部材154から基材150を剥離し易い。
【0044】
次に、図16に示すように、メッキ部材154の主に下面154aに、表示用部材100として対象物(例えば、文字板200)に固定するための、粘着部材156を付加する。粘着部材156としては、接着剤、粘着剤又は両面テープなどを適用することができる。
【0045】
次に、図17に示すように、表示用部材100として複数の線状の部材10が一体されたメッキ部材154以外の、不要となるメッキ部材154を除去する。そして、残った表示用部材100の、粘着部材156が付加された下面に、図18に示すように、離型シート157を貼付する。
【0046】
以上のような製造工程で製造された表示用部材100は、保護フィルム155と離型シート157とで挟まれて、粘着部材156により離型シート157に保持されたシート体に形成されている。そして、表示用部材100は、対象物に固定される以前は、一体のシート体として取り扱われる。
【0047】
一体のシート体として取り扱われた表示用部材100は、文字板200に固定される際に、離型シート157が剥がされて、粘着部材156によって表示用部材100が文字板200の所定位置に固定され、その後、保護フィルム155が剥がされる。
【0048】
このように、表示用部材100は、対象物に固定される以前は、保護フィルム155と離型シート157とで挟まれた一体のシート体として取り扱われるため、保護フィルム155と離型シート157とで挟まれていないものに比べて、各部材10に過度の荷重が作用して部材10間の接合部分が破断するのを防止又は抑制することができる。
【0049】
<実施例>
図19に示した表は、図4Aに示した隣接する部材10,10が、所定の間隔を以て離間しており、その間隔の寸法(図8に示した露光済み感光乳剤膜153(レジスト)の幅)W2、部材10の総厚さt1(接合されている厚さt3)及び頂部13と溝部14との高低差t4を変えたときの、溝部14と頂部13とにより形成された凹凸を装飾として感じさせるか否かの官能評価(凹凸評価)、部材10同士が接合された部分の接合強度の評価(強度評価)を示す実施例である。なお、t2=1[μm]としている。
【0050】
表1に示した実施例は、総厚さt1として50[μm]一定又は70[μm]一定とし、それぞれの総厚さt1において、レジストの幅W2を50,60,65,70,80,100[μm]としたときの、部材10同士の接合された厚さt3[μm]の実測値と高低差t4[μm]の実測値を示し、接合された厚さt3に応じた強度評価と、高低差t4に応じた凹凸評価とを示した。なお、表中の高低差t4については、記号「~」の左側の数値以上で記号「~」の右側の数値未満であることを表す。
【0051】
実施例によると、高低差t4が4[μm]以上で、溝部14と頂部13とにより形成された凹凸を装飾として感じさせることができた(凹凸評価において〇印)。一方、高低差t4が4[μm]未満で、溝部14と頂部13とにより形成された凹凸を装飾として感じさせることができなかった(凹凸評価において×印)。したがって、線状の部材10同士が接合して凹凸感のある表示用部材100は、高低差t4が4[μm]以上であることを要する。
【0052】
また、実施例によると、接合された厚さt3が60[μm]以上で、隣接する線状の部材10同士の接合だけで十分な強度を有すると評価された(強度評価において〇印)。この場合、線状の部材10が接合して得られた表示用部材100の外周の全周に沿った外枠(各部材10と接合されたもの)が無くても、十分な強度を得ることができる。
【0053】
これにより、表示用部材100は、外周の全周に沿った外枠が無い図柄パターンを形成することができるため、図柄パターンのデザイン面において、外枠を有する図柄パターンに限定されないデザインを行うことができる。
【0054】
一方、接合された厚さt3が59[μm]以下では、表示用部材100の外周の全周に沿った外枠が無いと、一体の表示用部材100として取り扱い上、強度が十分でないと評価された(強度評価において×印)。したがって、表示用部材100の外周の全周に沿った外枠が無い場合、線状の部材10同士が接合して取り扱い上、十分な強度を有する表示用部材100は、接合された厚さt3が60[μm]以上であることを要する。
【0055】
したがって、実施例の表示用部材100は、総厚さt1を70[μm]、レジストの厚さt2を1[μm]とした場合、接合された厚さt3を60[μm]以上、かつ高低差t4を5[μm]以上とする範囲であることを要する。
【0056】
なお、この場合、接合された厚さt3を60[μm]に固定した場合、高低差t4を4[μm]以上9[μm]以下の範囲で選択することができる。ただし、凹凸評価の面からは、高低差t4が7[μm]以上であることが好ましく、したがって、高低差t4は7[μm]以上9[μm]以下であることが好ましい。
【0057】
なお、実施例において、総厚さt1、レジストの厚さt2、接合された厚さt3及び高低差t4は、表面粗さ計(ミツトヨ製、サーフテストSV-400)により測定した。
【0058】
本実施形態の表示用部材100は、線状の部材10が接合したものであるが、本発明に係る表示用部材は、線状の部材10が接合されたものに限定されず、円弧状や波状等の曲線状の部材が接合されたものや、点状や円形又は矩形の部材が接合されたものや、星形その他の形状の部材が接合されたものであってもよい。
【0059】
また、本実施形態の表示用部材100は、線状の部材10の外周の全周を囲むように形成された外枠を有しないものであるが、外枠を有するものであってもよい。
【0060】
本実施形態の表示用部材100は、時計の文字板200に固定するものとして説明したが、本発明に係る表示用部材は、時計の文字板に固定するものに限定されず、他の対象物に固定するものであってもよい。
【符号の説明】
【0061】
10 部材
10a 基部
10b 広幅部
13 頂部
14 溝部
100 表示用部材
H 高さ方向
W 幅方向
t1 総厚さ
t2 基部の厚さ(レジストの厚さ)
t3 接合されている厚さ
t4 高低差
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19