IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ レーザーテック株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-検査装置及び検査方法 図1
  • 特許-検査装置及び検査方法 図2
  • 特許-検査装置及び検査方法 図3
  • 特許-検査装置及び検査方法 図4
  • 特許-検査装置及び検査方法 図5
  • 特許-検査装置及び検査方法 図6
  • 特許-検査装置及び検査方法 図7
  • 特許-検査装置及び検査方法 図8
  • 特許-検査装置及び検査方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-28
(45)【発行日】2023-01-12
(54)【発明の名称】検査装置及び検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/956 20060101AFI20230104BHJP
   G01N 21/88 20060101ALI20230104BHJP
【FI】
G01N21/956 A
G01N21/88 J
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019077542
(22)【出願日】2019-04-16
(65)【公開番号】P2020176858
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000115902
【氏名又は名称】レーザーテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(74)【代理人】
【識別番号】100129953
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 康弘
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 弘修
(72)【発明者】
【氏名】杉山 淳
(72)【発明者】
【氏名】真継 至
(72)【発明者】
【氏名】加藤 芳裕
【審査官】越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-008029(JP,A)
【文献】特表2002-544555(JP,A)
【文献】特表2015-508513(JP,A)
【文献】特開2011-247957(JP,A)
【文献】特開2015-130074(JP,A)
【文献】特開2003-270171(JP,A)
【文献】特開2008-180696(JP,A)
【文献】特開2002-323457(JP,A)
【文献】米国特許第7558419(US,B1)
【文献】米国特許第4928313(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
G06T 7/00 - G06T 7/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を照明する照明光学系と、
照明された前記試料の画像を撮像する撮像素子と、
撮像された前記画像をリファレンス画像及び検査画像に分岐させて出力する画像分岐部と、
前記リファレンス画像を圧縮する画像圧縮部と、
圧縮された前記リファレンス画像を記憶する記憶媒体と、
前記記憶媒体に記憶された前記リファレンス画像を復号する画像復号部と、
前記検査画像と、復号された前記リファレンス画像とを比較して、欠陥候補を出力する画像比較部と、
前記欠陥候補が欠陥か判定する欠陥判定部と、
を備え、
前記画像圧縮部は、
前記リファレンス画像に含まれた複数の画素のうち、前記試料に形成されたパターンのエッジを撮像したエッジ画素を抽出するエッジ抽出部と、
抽出された前記エッジ画素から前記エッジ画素の近傍の画素まで含むように拡げた興味領域を規定する膨張部と、
前記リファレンス画像における前記興味領域で区切られた複数の非興味領域に含まれる前記画素の輝度を、各前記非興味領域に設定された所定の一定値に置き換える置換部と、
前記興味領域及び前記所定の一定値に置き換えた前記非興味領域を有する前記リファレンス画像を圧縮して前記記憶媒体に記憶させる圧縮部と、
を有する検査装置。
【請求項2】
前記エッジ抽出部は、前記リファレンス画像における一方向及び前記一方向に直交する他方向に延びた前記エッジを撮像した前記エッジ画素を抽出する、
請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記膨張部は、前記エッジ画素から、前記エッジ画素の周囲における所定の画素数の画素を含むように拡げた興味領域を規定する、
請求項1または2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記膨張部は、前記一方向に延びた前記エッジを撮像した前記エッジ画素から前記他方向及び前記一方向に所定の画素数の前記画素を含むように拡げ、前記他方向に延びた前記エッジを撮像した前記エッジ画素から前記一方向及び前記他方向に所定の画素数の前記画素を含むように拡げた前記興味領域を規定する、
請求項2に記載の検査装置。
【請求項5】
前記所定の画素数は、0~3画素である、
請求項3または4に記載の検査装置。
【請求項6】
前記置換部は、前記所定の一定値を、各前記非興味領域に含まれる前記画素の平均の輝度とする、
請求項1~5のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項7】
前記撮像素子により撮像された前記画像のシェーディング補正を行うシェーディング補正部をさらに備え、
前記置換部は、前記所定の一定値を、シェーディング補正したブライト及びダークの2つの値のいずれかの値とする、
請求項1~5のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項8】
前記画像復号部は、前記興味領域及び前記所定の一定値に置き換えられた前記非興味領域を有する前記リファレンス画像に復号する、
請求項1~7のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項9】
試料を照明するステップと、
照明された前記試料の画像を撮像するステップと、
撮像された前記画像をリファレンス画像及び検査画像に分岐させて出力するステップと、
前記リファレンス画像を圧縮するステップと、
圧縮された前記リファレンス画像を記憶媒体に記憶させるステップと、
前記記憶媒体に記憶された前記リファレンス画像を復号するステップと、
前記検査画像と、復号された前記リファレンス画像とを比較して、欠陥候補を出力するステップと、
前記欠陥候補が欠陥か判定するステップと、
を備え、
前記リファレンス画像を圧縮するステップは、
前記リファレンス画像に含まれた複数の画素のうち、前記試料に形成されたパターンのエッジを撮像したエッジ画素を抽出するステップと、
抽出された前記エッジ画素から前記エッジ画素の近傍の画素まで含むように拡げた興味領域を規定するステップと、
前記リファレンス画像における前記興味領域で区切られた複数の非興味領域に含まれる前記画素の輝度を、各前記非興味領域に設定された所定の一定値に置き換えるステップと、
前記興味領域及び前記所定の一定値に置き換えた前記非興味領域を有する前記リファレンス画像を圧縮するステップと、
を有する検査方法。
【請求項10】
前記エッジ画素を抽出するステップにおいて、前記リファレンス画像における一方向及び前記一方向に直交する他方向に延びた前記エッジを撮像した前記エッジ画素を抽出する、
請求項9に記載の検査方法。
【請求項11】
前記興味領域を規定するステップにおいて、前記エッジ画素から、前記エッジ画素の周囲における所定の画素数の画素を含むように拡げた前記興味領域を規定する、
請求項9または10に記載の検査方法。
【請求項12】
前記興味領域を規定するステップにおいて、前記一方向に延びた前記エッジを撮像した前記エッジ画素から前記他方向及び前記一方向に所定の画素数の前記画素を含むように拡げ、前記他方向に延びた前記エッジを撮像した前記エッジ画素から前記一方向及び前記他方向に所定の画素数の前記画素を含むように拡げた前記興味領域を規定する、
請求項10に記載の検査方法。
【請求項13】
前記所定の画素数は、0~3画素である、
請求項11または12に記載の検査方法。
【請求項14】
前記一定値に置き換えるステップにおいて、前記所定の一定値を、各前記非興味領域に含まれる前記画素の平均の輝度とする、
請求項9~13のいずれか1項に記載の検査方法。
【請求項15】
撮像された前記画像のシェーディング補正を行うステップをさらに備え、
前記一定値に置き換えるステップにおいて、前記所定の一定値を、シェーディング補正したブライト及びダークの2つの値のいずれかの値とする、
請求項9~13のいずれか1項に記載の検査方法。
【請求項16】
前記リファレンス画像を復号するステップにおいて、前記興味領域及び前記所定の一定値に置き換えた前記非興味領域を有する前記リファレンス画像に復号する、
請求項9~15のいずれか1項に記載の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置及び検査方法に関するものであり、例えば、半導体製造工程で利用されるフォトマスクの欠陥を検査する検査装置及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、パターンが形成されたマスクの欠陥を検査する方法として、マスクパターンと設計データとを比較するDie-to-Database比較法、2つの同形状の回路パターンを比較するDie-to-Die比較法、及び、同じ設計パターンの異なるマスクを比較するMask-to-Mask比較法が広く知られている。
【0003】
一方、マスクの露光処理前後における同一のマスクの経時変化を検査する方法をMask-to-Mask比較法と呼ぶ場合もある。このようなMask-to-Mask比較法では、露光処理前のマスクを撮像したリファレンス画像を圧縮して記憶媒体に記憶させ、露光処理後の所定の時間経過後のマスクを、復号したリファレンス画像と比較して検査する。
【0004】
いずれの方法においても、マスクパターンを対物レンズによって拡大し、その拡大された光学像をCCD(Charge Coupled Device)、TDI(Time Delay Integration)等の撮像素子で撮像することにより検査を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-071629号公報
【文献】特開2014-519598号公報
【文献】特開2015-508513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
リファレンス画像を記憶媒体に記憶させる際に、自然静止画の画像圧縮を適応した場合には、圧縮率は50%程度が限度である。記憶媒体に記憶させる画像数を増やすため、画像の圧縮率の向上が望まれている。
【0007】
本発明の目的は、このような問題を解決するためになされたものであり、画像の圧縮率を向上させることができる検査装置及び検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る検査装置は、試料を照明する照明光学系と、照明された前記試料の画像を撮像する撮像素子と、撮像された前記画像をリファレンス画像及び検査画像に分岐させて出力する画像分岐部と、前記リファレンス画像を圧縮する画像圧縮部と、圧縮された前記リファレンス画像を記憶する記憶媒体と、前記記憶媒体に記憶された前記リファレンス画像を復号する画像復号部と、前記検査画像と、復号された前記リファレンス画像とを比較して、欠陥候補を出力する画像比較部と、前記欠陥候補が欠陥か判定する欠陥判定部と、を備え、前記画像圧縮部は、前記リファレンス画像に含まれた複数の画素のうち、前記試料に形成されたパターンのエッジを撮像したエッジ画素を抽出するエッジ抽出部と、抽出された前記エッジ画素から前記エッジ画素の近傍の画素まで含むように拡げた興味領域を規定する膨張部と、前記リファレンス画像における前記興味領域で区切られた複数の非興味領域に含まれる前記画素の輝度を、各前記非興味領域に設定された所定の一定値に置き換える置換部と、前記興味領域及び前記所定の一定値に置き換えた前記非興味領域を有する前記リファレンス画像を圧縮して前記記憶媒体に記憶させる圧縮部と、を有する。このような構成により、画像の圧縮率を向上させることができる。
【0009】
また、本発明に係る検査方法は、試料を照明するステップと、照明された前記試料の画像を撮像するステップと、撮像された前記画像をリファレンス画像及び検査画像に分岐させて出力するステップと、前記リファレンス画像を圧縮するステップと、圧縮された前記リファレンス画像を記憶媒体に記憶させるステップと、前記記憶媒体に記憶された前記リファレンス画像を復号するステップと、前記検査画像と、復号された前記リファレンス画像とを比較して、欠陥候補を出力するステップと、前記欠陥候補が欠陥か判定するステップと、を備え、前記リファレンス画像を圧縮するステップは、前記リファレンス画像に含まれた複数の画素のうち、前記試料に形成されたパターンのエッジを撮像したエッジ画素を抽出するステップと、抽出された前記エッジ画素から前記エッジ画素の近傍の画素まで含むように拡げた興味領域を規定するステップと、前記リファレンス画像における前記興味領域で区切られた複数の非興味領域に含まれる前記画素の輝度を、各前記非興味領域に設定された所定の一定値に置き換えるステップと、前記興味領域及び前記所定の一定値に置き換えた前記非興味領域を有する前記リファレンス画像を圧縮して前記記憶媒体に記憶させるステップと、を有する。このような構成により、画像の圧縮率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、画像の圧縮率を向上させることができる検査装置及び検査方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る検査装置の構成を例示した図である。
図2】実施形態に係る検査装置の検査部及び記憶媒体を例示したブロック図である
図3】実施形態に係る検査装置の撮像素子が取得した画像を例示した図である。
図4】実施形態に係る検査装置のエッジ抽出部が抽出したエッジを例示した図である。
図5】実施形態に係る検査装置の膨張部が規定した興味領域及び非興味領域を例示した図である。
図6】実施形態に係る検査装置の置換部が形成したリファレンス画像を例示した図である。
図7】実施形態に係る検査方法を例示したフローチャート図である。
図8】実施形態に係るリファレンス画像の圧縮及び記憶方法を例示したフローチャート図である。
図9】実施形態の別の例に係る検査装置の構成を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本実施形態の具体的構成について図面を参照して説明する。以下の説明は、本発明の好適な実施の形態を示すものであって、本発明の範囲が以下の実施の形態に限定されるものではない。以下の説明において、同一の符号が付されたものは実質的に同様の内容を示している。
【0013】
(実施形態)
実施形態に係る検査装置を説明する。本実施形態の検査装置は、例えば、半導体製造工程で用いられるマスクパターンが形成されたフォトマスクを検査する。なお、検査装置は、フォトマスクの検査に限らず、例えば、配線パターンが形成されたウェハ等、パターンが形成された他の試料の検査に適用可能である。図1は、実施形態に係る検査装置の構成を例示した図である。
【0014】
図1に示すように、検査装置1は、照明光学系10と、検査部20と、記憶媒体30と、を備えている。照明光学系10は、照明光L10で試料40を照明する。照明光学系10は、試料40に対して、反射照明を用いて照明しているが、後述するように、透過照明を用いて照明してもよい。照明光学系10は、光源11、ビームスプリッタ12、対物レンズ13、及び、投影レンズ14を有している。照明光学系10は、これ以外に図示しないミラー、レンズ等の光学部材を含んでもよい。
【0015】
光源11から生成された照明光L10は、ビームスプリッタ12によって一部が反射し、試料40のマスクへ向かう。試料40へ向かう照明光L10は、対物レンズ13によって集光され、パターン41が形成された試料40のパターン面42を照明する。
【0016】
照明光L10がパターン面42で反射された反射光R10は、対物レンズ13を透過し、再び、ビームスプリッタ12に入射する。ビームスプリッタ12に入射した反射光R10の一部は透過し、投影レンズ14で集光される。投影レンズ14で集光された反射光R10は、検査部20に入射する。
【0017】
図2は、実施形態に係る検査装置の検査部及び記憶媒体を例示したブロック図である。図2に示すように、検査部20は、撮像素子21、シェーディング補正部22、画像分岐部23、画像圧縮部24、画像復号部25、画像比較部26、欠陥判定部27を有している。
【0018】
撮像素子21は、照明光L10で照明された試料40の画像を撮像する。撮像された画像は、シェーディング補正部22に出力される。
【0019】
シェーディング補正部22は、撮像した画像のシェーディング補正を行う。具体的には、シェーディング補正部22は、撮像した画像における照明光L10の強度の分布ムラ等の補正を行う。また、シェーディング補正部22は、画像の各画素の輝度を、ブライト及びダーク等のグレースケールに変換する。シェーディング補正部22は、シェーディング補正した画像を画像分岐部23に出力する。
【0020】
画像分岐部23は、撮像された画像を、リファレンス画像とするか検査画像とするか分別する。画像分岐部23は、分別した画像をリファレンス画像及び検査画像に分岐させて出力する。リファレンス画像はリファレンスとなる画像である。検査画像は検査される画像である。例えば、検査装置1は、露光処理前の所定時のマスクを撮像した画像をリファレンス画像とし、露光処理後の所定の時間経過後のマスクを、検査画像とする。そして、検査装置1は、リファレンス画像と検査画像とを比較することにより、試料40を検査する。画像分岐部23は、リッファレンス画像とした画像を画像圧縮部24に出力する。一方、画像分岐部23は、検査画像とした画像を画像比較部26に出力する。
【0021】
画像圧縮部24は、リファレンス画像を圧縮する。画像圧縮部24は、圧縮したリファレンス画像を記憶媒体30に記憶させる。これにより、記憶媒体30は、圧縮されたリファレンス画像のデータを記憶する。記憶媒体30は、例えば、ディスクであるが、画像データを記憶できるものであればこれに限らない。画像圧縮部24は、エッジ抽出部24a、膨張部24b、置換部24c、圧縮部24dを有している。画像圧縮部24の各構成は後述する。
【0022】
画像復号部25は、記憶媒体30に記憶されたリファレンス画像を復号する。画像復号部25は、画像圧縮部24の圧縮部24dが圧縮する前の状態に復号する。画像比較部26は、検査画像と、復号されたリファレンス画像とを比較して、欠陥候補を欠陥判定部27に出力する。欠陥判定部27は、画像比較部26によって出力された欠陥候補が欠陥か判定する。
【0023】
次に、検査装置1における検査部20の動作を説明する。図3は、実施形態に係る検査装置の撮像素子が取得した画像を例示した図である。図3に示す画像には、パターン41の輪郭線、並びに、パターン41及びパターン間43の輝度(230/255、100/255)を表示している。また、図3には、画像のA-A線における輝度のプロファイルと、輝度プロファイルから抽出したエッジも示している。
【0024】
図3に示すように、撮像素子21は、試料40のパターン面42の画像を撮像する。パターン面42の画像には、パターン41が撮像されている。パターン41の部分における画素の代表的な輝度は、255段階のグレースケールで230となっている。代表的な輝度は、例えば、平均値である。一方、パターン41とパターン41との間のパターン間43における画素の代表的な輝度は、255段階のグレースケールで100になっている。なお、パターン間43とは、パターン41とパターン41との間だけでなく、パターン41の周囲も含む。A-A線における輝度のプロファイルは、おおまかに言えば、パターン間43における輝度と、パターン41における輝度を交互に示している。パターン41とパターン間43との間の境界部分は、パターン41のエッジ44である。
【0025】
撮像素子21で撮像された画像は、シェーディング補正部22でシェーディング補正された後に、画像分岐部23でリファレンス画像か検査画像か分別される。画像分岐部23は、例えば、あらかじめ設定された条件により、リファレンス画像及び検査画像を分別する。例えば、露光処理前はリファレンス画像に分別され、露光処理後は検査画像に分別される。また、画像分岐部23は、検査画像として検査後の画像をリファレンス画像に分別してもよい。画像分岐部23において、リファレンス画像に分別された画像は、画像圧縮部24で圧縮処理される。
【0026】
画像圧縮部24は、画像分岐部23から出力されたリファレンス画像を受け取る。画像圧縮部24におけるエッジ抽出部24aは、リファレンス画像に含まれた複数の画素のうち、試料40に形成されたパターン41のエッジ44を撮像した画素を抽出する。エッジ44を撮像した画素をエッジ画素と呼ぶ。エッジ抽出部24aは、輝度のプロファイルをもとに、エッジ画素を抽出する。
【0027】
図4は、実施形態に係る検査装置のエッジ抽出部が抽出したエッジを例示した図である。図4に示すように、エッジ抽出部24aは、例えば、垂直ソーベルフィルタを用いて、パターン面42の画像における垂直方向に延びたエッジ44を撮像したエッジ画素を抽出する。同様に、エッジ抽出部24aは、例えば、水平ソーベルフィルタを用いて、パターン面42の画像における水平方向に延びたエッジ44を撮像したエッジ画素を抽出する。なお、垂直及び水平は、図4に示すように、パターン面42に平行な面における一方向及び一方向に直交する他方向を意味する。このように、エッジ抽出部24aは、リファレンス画像における一方向及び一方向に直交する他方向に延びたエッジ44を撮像したエッジ画素を抽出する。なお、エッジ抽出部24aは、一方向及び他方向に延びたエッジ44に限らず、任意の形状をしたエッジ44のエッジ画素を抽出してもよい。例えば、垂直方向及び水平方向から傾いた方向に延びたエッジ44のエッジ画素を抽出してもよいし、点状または円形のエッジ44のエッジ画素を抽出してもよい。
【0028】
図5は、実施形態に係る検査装置の膨張部が規定した興味領域及び非興味領域を例示した図である。図5に示すように、膨張部24bは、エッジ抽出部24aにより抽出されたエッジ画素からエッジ画素の近傍の画素を含むように拡げた興味領域45を規定する。例えば、膨張部24bは、エッジ画素を中心にして近傍の周囲の画素を含むように拡げた興味領域45を規定する。具体的には、膨張部24bは、垂直方向に延びたエッジ44を撮像したエッジ画素から、エッジ画素の周囲の画素まで拡げた興味領域45を規定する。例えば、エッジ画素から水平方向及び垂直方向に所定の画素数の画素を含むように拡げた興味領域45を規定する。また、膨張部24bは、水平方向に延びたエッジ44を撮像したエッジ画素から、エッジ画素の周囲の画素まで拡げた興味領域45を規定する。例えば、エッジ画素から垂直方向及び垂直方向に所定の画素数の画素を含むように拡げた興味領域45を規定する。膨張部24bは、エッジ画素から周囲の所定の画素数の画素を含むように、一方向の両側及び他方向の両側に、例えば、0~3画素(ピクセル)拡げる。
【0029】
膨張部24bは、興味領域45以外の部分を非興味領域46及び47と規定する。非興味領域46及び47は、興味領域45で区分されている。例えば、興味領域45で区切られたパターン41の内部は、非興味領域46である。興味領域45で区切られたパターン間43は、非興味領域47である。このように、リファレンス画像における複数の非興味領域46及び47は、興味領域45で区切られている。
【0030】
置換部24cは、リファレンス画像における興味領域45で区切られた複数の非興味領域46及び47に含まれる画素の輝度を、各非興味領域46及び47に設定された所定の一定値に置き換える。例えば、置換部24cは、所定の一定値を、各非興味領域46及び47に含まれる画素の平均の輝度とする。置換部24cは、所定の一定値を、シェーディング補正したブライト及びダークの2つの値のいずれかの値としてもよい。
【0031】
図6は、実施形態に係る検査装置の置換部が形成したリファレンス画像を例示した図である。図6に示すように、置換部24cは、興味領域45及び所定の一定値に置き換えた非興味領域46、47を有するリファレンス画像を形成する。興味領域45は、撮像素子21が撮像したままの状態となっている。非興味領域46は、パターン41の代表値で一定のベタ値に置き換えられ、非興味領域47は、パターン間43の代表値で一定のベタ値に置き換えられている。例えば、非興味領域46は、255段階のグレースケールで230の一定のベタ値に置き換えられている。非興味領域47は、255段階のグレースケールで100の一定のベタ値に置き換えられている。
【0032】
圧縮部24dは、興味領域45及び所定の一定値に置き換えた非興味領域46、47を有するリファレンス画像を圧縮して記憶媒体30に記憶させる。例えば、圧縮部24dは、興味領域45を含むリファレンス画像をJPEG2000等の自然静止画の画像圧縮法により圧縮する。これにより、圧縮部24dは、興味領域45における撮像イメージの諧調を何も加工せず、そのままの画像情報として圧縮することができる。よって、興味領域45は、画像復号部25によって復号された場合に、撮像時の画像そのままの状態に復号される。一方、圧縮部24dは、非興味領域46及び47を一定のベタ値として圧縮する。よって、非興味領域46及び47は、ベタ値に自動的に置き換わるので、画像のエントロピーを低減させ、画像の圧縮率を向上させることができる。また、圧縮部24dは、置換部24cにおいて、非興味領域46及び47を2値化された場合には、2次元のMMR圧縮を適用してもよい。圧縮部24dは、圧縮したリファレンス画像を記憶媒体30に記憶させる。
【0033】
画像復号部25は、記憶媒体30からリファレンス画像を復号する際には、興味領域45及び所定の一定値に置き換えられた非興味領域46、47を有するリファレンス画像に復号する。画像復号部25で復号されたリファレンス画像は、画像分岐部23で検査画像に分別された画像と、画像比較部26において比較される。
【0034】
画像比較部26は、画像分岐部23から出力された検査画像と、画像復号部25によって復号されたリファレンス画像とを比較する。具体的には、画像比較部26は、検査画像におけるパターン41のエッジ44近傍と、リファレンス画像における興味領域45とを比較する。そして、画像比較部26は、検査画像とリファレンス画像との差異から、興味領域45における欠陥候補を出力する。また、画像比較部26は、検査画像におけるパターン41と、リファレンス画像における非興味領域46とを比較する。さらに、画像比較部26は、検査画像におけるパターン間43と、リファレンス画像における非興味領域47とを比較する。そして、画像比較部26は、検査画像とリファレンス画像との差異から、非興味領域46及び47における欠陥候補を出力する。
【0035】
画像比較部26は、非興味領域46及び47においても、検査画像の輝度と、リファレンス画像におけるベタ値との差異から、欠陥候補を出力することができる。すなわち、非興味領域46及び47に欠陥が存在する場合には、検査画像の輝度とリファレンス画像のベタ値との差異となって欠陥が検出される。画像比較部26は欠陥候補を欠陥判定部27に出力する。
【0036】
欠陥判定部27は、画像比較部26が出力した欠陥候補が欠陥か判定する。例えば、欠陥判定部27は、検査画像の輝度とリファレンス画像の輝度との差があらかじめ設定した閾値よりも大きい場合に欠陥と判定する。このようにして、検査装置1は、試料40のパターン面42を検査する。
【0037】
次に、実施形態に係る検査方法及びリファレンス画像の圧縮・記憶方法を説明する。図7は、実施形態に係る検査方法を例示したフローチャート図である。図7のステップS11に示すように、まず、試料40を照明する。具体的には、照明光学系10により、試料40のパターン面42を照明する。
【0038】
次に、ステップS12に示すように、試料40の画像を撮像する。具体的には、撮像素子21を用いて試料40のパターン面42を撮像する。次に、ステップS13に示すように、撮像された画像のシェーディング補正を行う。次に、ステップS14に示すように、撮像された画像をリファレンス画像及び検査画像に分岐させて出力する。次に、ステップS15に示すように、リファレンス画像を圧縮する。
【0039】
図8は、実施形態に係るリファレンス画像の圧縮及び記憶方法を例示したフローチャート図である。図8のステップS21に示すように、パターン41のエッジ44を撮像したエッジ画素を抽出する。具体的には、エッジ抽出部24aにより、リファレンス画像に含まれた複数の画素のうち、試料40に形成されたパターン41のエッジ44を撮像したエッジ画素を抽出する。エッジ画素を抽出する際に、リファレンス画像における垂直方向及び水平方向に延びたエッジ44を撮像したエッジ画素を抽出する。なお、エッジ画素は、垂直方向及び水平方向に延びたエッジ44に限らず、垂直方向及び水平方向から傾いた方向に延びたエッジ44でもよいし、点状または円形のエッジ44でもよい。
【0040】
次に、ステップS22に示すように、興味領域45及び非興味領域46、47を規定する。具体的には、エッジ抽出部24aにより抽出されたエッジ画素からエッジ画素の近傍の画素まで含むように拡げた興味領域45を膨張部24bによって規定する。それとともに、膨張部24bによって、リファレンス画像における興味領域45で区切られた複数の非興味領域46、47を規定する。興味領域45を規定する際には、垂直方向に延びたエッジ44を撮像したエッジ画素、エッジ画素の周囲の画素まで拡げた興味領域45を規定する。例えば、エッジ画素からから水平方向及び垂直方向に所定の画素数の画素を含むように拡げた興味領域45を規定する。また、水平方向に延びたエッジ44を撮像したエッジ画素から、エッジ画素の周囲の画素まで拡げた興味領域45を規定する。例えば、エッジ画素から垂直方向及び水平方向に所定の画素数の画素を含むように拡げた興味領域45を規定する。
【0041】
次に、ステップS23に示すように、非興味領域46、47に含まれる画素の輝度を一定値に置き換える。具体的には、置換部24cによって、複数の非興味領域46、47に含まれる画素の輝度を、各非興味領域46及び47に設定された所定の一定値に置き換える。一定値に置き換える際に、所定の一定値を、各非興味領域46、47に含まれる画素の平均の輝度としてもよいし、シェーディング補正したブライト及びダークの2つの値のいずれかの値としてもよい。
【0042】
次に、ステップS24に示すように、興味領域45及び非興味領域46、47を有するリファレンス画像を圧縮する。具体的には、圧縮部24dによって、興味領域45及び所定の一定値に置き換えた非興味領域46、47を有するリファレンス画像を圧縮する。
【0043】
このようにして、図7のステップS15に示すようにリファレンス画像を圧縮する。そして、ステップS16に示すように、圧縮されたリファレンス画像を記録媒体30に記憶させる。具体的には、圧縮部24dによって、圧縮されたリファレンス画像は、記録媒体30に記憶される。
【0044】
次に、図7のステップS17に示すように、画像復号部25によって、記憶媒体30に記憶されたリファレンス画像を復号する。具体的には、例えば、画像復号部25は、記憶媒体30に記憶されたリファレンス画像を、興味領域45及び所定の一定値に置き換えた非興味領域46、47を有するリファレンス画像に復号する。
【0045】
次に、ステップS18に示すように、画像比較部26によって、検査画像と、復号されたリファレンス画像とを比較して、欠陥候補を出力する。次に、図7のステップS19に示すように、欠陥判定部27によって、欠陥候補が欠陥か判定する。このようにして、試料40を検査する。
【0046】
次に、本実施形態の効果を説明する。本実施形態では、置換部24cは、非興味領域46及び47を一定のベタ値に置き換えるので、リファレンス画像のエントロピーを低減することができる。よって、リファレンス画像の圧縮率を向上させることができる。
【0047】
膨張部24bは、エッジ画素を中心にして膨張させた興味領域45を規定する。そして、興味領域45は、撮像時の画像そのままの状態で記憶及び復号される。よって、画像比較部26は、露光時に最も影響を受けるパターン41のエッジ44の欠陥候補を、撮影時の状態で検出することができる。
【0048】
画像比較部26は、非興味領域46及び47においても、検査画像の輝度と、リファレンス画像におけるベタ値との差異から、欠陥候補を出力することができる。例えば、所定の閾値を設定することにより、欠陥判定部27は、検査画像の輝度と、リファレンス画像におけるベタ値との差異が閾値を超えた場合に欠陥を検出することができる。
【0049】
画像圧縮部24におけるこのようなレファレンス画像の圧縮・記憶方法により、パターンの構造にもよるが、例えば、50%の圧縮率を、20~30%の圧縮率まで向上させることができる。
【0050】
上述した検査装置1の照明光学系10は、反射照明を用いていたが、透過照明を用いた照明光学系でもよい。図9は、実施形態の別の例に係る検査装置の構成を例示した図である。図9に示すように、検査装置1aは、透過照明を用いた照明光学系10aを備えている。照明光学系10aは、光源11、ミラー15、コンデンサレンズ16、対物レンズ13、投影レンズ14を備えている。
【0051】
光源11から取り出された照明光L10は、試料40のパターン面42と反対側に導かれ、ミラー15で反射して試料40に向かって進む。そして、照明光L10はコンデンサレンズ16を通った後、試料40の基板を透過し、パターン面42におけるパターン41を照明する。
【0052】
試料40を透過した光は、対物レンズ13を通り、投影レンズ14を透過する。投影レンズ14で集光された光は、検査部20に入射する。そして、撮像素子21において受光される。このようにして、検査装置1aの照明光学系10aは、試料40を照明する。検査部20の構成及び動作は反射照明を用いた検査装置1と同様である。
【0053】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に、上記の実施形態による限定は受けない。
【符号の説明】
【0054】
1、1a 検査装置
10、10a 照明光学系
11 光源
12 ビームスプリッタ
13 対物レンズ
14 投影レンズ
15 ミラー
16 コンデンサレンズ
20 検査部
21 撮像素子
22 シェーディング補正部
23 画像分岐部
24 画像圧縮部
24a エッジ抽出部
24b 膨張部
24c 置換部
24d 圧縮部
25 画像復号部
26 画像比較部
27 欠陥判定部
30 記憶媒体
40 試料
41 パターン
42 パターン面
43 パターン間
44 エッジ
45 興味領域
46、47 非興味領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9