(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-28
(45)【発行日】2023-01-12
(54)【発明の名称】光学式変位計
(51)【国際特許分類】
G01B 11/24 20060101AFI20230104BHJP
【FI】
G01B11/24 K
(21)【出願番号】P 2019085199
(22)【出願日】2019-04-26
【審査請求日】2022-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000129253
【氏名又は名称】株式会社キーエンス
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100131886
【氏名又は名称】坂本 隆志
(72)【発明者】
【氏名】土田 佳孝
(72)【発明者】
【氏名】跡路 隆
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-127887(JP,A)
【文献】特開2010-219624(JP,A)
【文献】特開2007-151069(JP,A)
【文献】特開平07-139930(JP,A)
【文献】特開2001-280951(JP,A)
【文献】特表2014-532858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00 -11/30
H04N 5/222- 5/257
H04N 5/30 - 5/378
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Y方向に搬送される測定対象物のX-Z断面のプロファイルを三角測距の原理に基づき測定する光切断方式の光学式変位計であって、
X方向に幅を有するスリット光を前記測定対象物に照射する光源と、
前記測定対象物からの反射光を受光する画像センサであって、前記X方向に対応するU方向とZ方向に対応するV方向とに二次元配列された複数の画素を有し、前記複数の画素による前記反射光の受光量を出力する画像センサと、
前記U方向に並んだ複数の画素列のそれぞれについて受光量のピークとなる前記V方向における画素の位置をピーク位置として検出する検出手段と、
前記U方向における前記複数の画素列のそれぞれの位置と、前記V方向における前記ピーク位置とからX-Z断面のプロファイルを生成する生成手段と、
前記画像センサを制御する制御手段と
を有し、
前記画像センサは予め設定された露光時間ごとに前記反射光の受光量を出力するように構成されており、
前記露光時間は、第一期間と、前記第一期間の後に続く第二期間とを有し、
前記制御手段は、前記複数の画素のそれぞれについて、
前記第一期間において画素に蓄積された電荷に基づく電圧がハーフリセット電圧を超えた場合、
当該画素の電圧が前記ハーフリセット電圧となるようにハーフリセットを実行し、前記第二期間において電荷の蓄積を再開し、
前記第一期間において画素に蓄積された電荷に基づく電圧がハーフリセット電圧を超えていない場合、
当該画素について前記第一期間および前記第二期間にわたって継続的に電荷の蓄積を実行する
ように前記画像センサを制御し、
前記制御手段は、さらに、前記第一期間において前記光源を継続的に点灯させ、前記第二期間において前記第二期間よりも短い第三期間が経過すると前記光源を消灯するように構成されていることを特徴とする光学式変位計。
【請求項2】
前記画像センサの動作クロックの周期は前記第二期間に等しく、
前記制御手段の動作クロックの周期は、前記画像センサの動作クロックの周期よりも短いことを特徴とする請求項1に記載の光学式変位計。
【請求項3】
前記第三期間は、前記制御手段の動作クロックの周期のn(nは1以上の整数)倍であることを特徴とする請求項2に記載の光学式変位計。
【請求項4】
前記第一期間と前記第二期間との比率を前記制御手段に設定する設定手段をさらに有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の光学式変位計。
【請求項5】
感度と、前記比率と、前記光源の発光量とを関連付けた複数の組を記憶した記憶手段と、
前記感度を指定する指定手段と、をさらに有し、
前記設定手段は、前記指定手段により設定された感度に対応する比率と発光量を前記記憶手段から読み出して前記制御手段に設定することを特徴とする請求項4に記載の光学式変位計。
【請求項6】
前記記憶手段は、前記感度と、前記比率と、前記光源の発光量と、一画素あたりの輝度の目標範囲とを関連付けた前記複数の組を記憶しており、
前記設定手段は、前記指定手段により設定された感度に対応する比率、発光量および輝度の目標範囲を前記記憶手段から読み出して前記制御手段に設定し、
前記制御手段は、
前記画像センサを構成する前記複数の画素の輝度値のうちで相対的に高い輝度値が前記目標範囲を超えていれば前記露光時間を削減し、
前記相対的に高い輝度値が前記目標範囲よりも小さければ前記露光時間を増加することを特徴とする請求項5に記載の光学式変位計。
【請求項7】
前記相対的に高い輝度値は、前記複数の画素の輝度値のうちでの最大値であることを特徴とする請求項6に記載の光学式変位計。
【請求項8】
前記相対的に高い輝度値は、前記複数の画素の輝度値のうちで上位に位置する複数の輝度値の平均値であることを特徴とする請求項6に記載の光学式変位計。
【請求項9】
前記相対的に高い輝度値は、前記複数の画素の輝度値のうちでn番目に大きな輝度値であることを特徴とする請求項6に記載の光学式変位計。
【請求項10】
前記相対的に高い輝度値は、前記複数の画素列ごとに輝度値の最大値を求め、当該求められた前記複数の画素列ごとの最大値のグループのうちで上位に位置する複数の最大値の平均値であることを特徴とする請求項6に記載の光学式変位計。
【請求項11】
前記相対的に高い輝度値は、前記複数の画素列ごとに輝度値の最大値を求め、当該求められた前記複数の画素列ごとの最大値のグループのうちでn番目に大きな最大値であることを特徴とする請求項6に記載の光学式変位計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学式変位計に関する。
【背景技術】
【0002】
コンベイヤによってY方向に搬送される測定対象物(ワーク)についてZ方向における高さを測定するために、光切断方式の光学式変位計が提案されている(特許文献1、2)。Y方向とZ方向とに直交する方向がX方向であり、XY平面にワークが載置されている。光学式変位計は、X方向に幅を有するスリット光をワークに照射し、ワークからの反射光を二次元配列の画像センサで受光する。スリット光の投光方向と画像センサの受光方向とは傾いており、三角測距の原理に基づき、ワークの高さが算出される。このような、光切断方式の光学式変位計はワークのX-Z断面の輪郭(プロファイル)を一度に取得できる。Y方向にワークを搬送しながら繰り返し撮像を実行することで、Y方向における異なる位置でのプロファイルが取得される。また、複数のプロファイルからワークの三次元形状を示すデータが取得される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-096125号公報
【文献】特開2012-103266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
画像センサを構成する複数の画素はUV平面に並んでいる。画像センサのU方向はワークのX方向に対応している。画像センサのV方向はワークのZ方向に対応している。つまり、V方向において反射光が入射する画素の位置は、Z方向におけるワークの高さを示している。
【0005】
U方向に並んだ複数の画素列のそれぞれについて、V方向における受光量のピーク位置が、ワークの高さを示すものとして求められる。ここで、反射光が強すぎると、画素が出力する受光量が飽和してしまう。反射光が弱すぎると、画素が出力する受光量が少なくなりすぎてしまう。いずれの場合も正しいピークの位置を求めることが不可能となる。画素列ごとに露光時間または光源の発光量を調整すれば、受光量の飽和や不足はなくなるものの、正しいワークの高さが得られなくなってしまう。そこで、本発明は光切断方式の光学式変位計において測定対象物の測定精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、たとえば、
Y方向に搬送される測定対象物のX-Z断面のプロファイルを三角測距の原理に基づき測定する光切断方式の光学式変位計であって、
X方向に幅を有するスリット光を前記測定対象物に照射する光源と、
前記測定対象物からの反射光を受光する画像センサであって、前記X方向に対応するU方向とZ方向に対応するV方向とに二次元配列された複数の画素を有し、前記複数の画素による前記反射光の受光量を出力する画像センサと、
前記U方向に並んだ複数の画素列のそれぞれについて受光量のピークとなる前記V方向における画素の位置をピーク位置として検出する検出手段と、
前記U方向における前記複数の画素列のそれぞれの位置と、前記V方向における前記ピーク位置とからX-Z断面のプロファイルを生成する生成手段と、
前記画像センサを制御する制御手段と
を有し、
前記画像センサは予め設定された露光時間ごとに前記反射光の受光量を出力するように構成されており、
前記露光時間は、第一期間と、前記第一期間の後に続く第二期間とを有し、
前記制御手段は、前記複数の画素のそれぞれについて、
前記第一期間において画素に蓄積された電荷に基づく電圧がハーフリセット電圧を超えた場合、
当該画素の電圧が前記ハーフリセット電圧となるようにハーフリセットを実行し、前記第二期間において電荷の蓄積を再開し、
前記第一期間において画素に蓄積された電荷に基づく電圧がハーフリセット電圧を超えていない場合、
当該画素について前記第一期間および前記第二期間にわたって継続的に電荷の蓄積を実行する
ように前記画像センサを制御し、
前記制御手段は、さらに、前記第一期間において前記光源を継続的に点灯させ、前記第二期間において前記第二期間よりも短い第三期間が経過すると前記光源を消灯するように構成されていることを特徴とする光学式変位計を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、光切断方式の光学式変位計において測定対象物の測定精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図6】光学式変位計を構成する機能を説明するブロック図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態が詳しく説明される。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一または同様の構成には同一の参照番号が付され、重複した説明は省略される。
【0010】
<光学式変位計>
図1は光学式変位計100を示す図である。光学式変位計100はベルトコンベイヤ4によりY方向に搬送されるワークWのプロファイルおよび三次元形状を測定する装置である。この例では、Z方向はワークWの高さ方向に対応している。ヘッド部1はXZ平面と平行なスリット光L1を出力し、ワークWからの反射光L2を受光することで、受光結果を制御部2に出力する。制御部2は、ヘッド部1が出力する受光結果に基づきワークWのプロファイルを演算する。なお、制御部2はヘッド部1に統合されてもよい。プロファイルとはXZ平面と平行なワークWの切断面の外縁を示すデータである。たとえば、プロファイルは(xi,zi)の集合体である(iはインデックス)。xiはX方向における位置を示す。ziはZ方向における高さを示す。なお、3次元形状は、(xi,yi,zi)の集合体である。yiは、Y方向における位置を示す。制御部2は、一定周期ごとに、ヘッド部1に撮像を実行させることで、yiが異なるワークWのプロファイル(xi,zi)を求める。表示装置3は、光学式変位計100によるワークWの測定結果を表示したり、光学式変位計100の設定を行うためのUI(ユーザインタフェース)を表示したりする。操作部5は、光学式変位計100に対するユーザ入力を受け付けるための入力装置である。
【0011】
<三次元測距の原理>
図2は光切断方式(三角測距)の原理を説明する図である。ヘッド部1の筐体15の内部には、光源6、投光レンズ7、受光レンズ12および画像センサ13が内蔵されている。光源6から出力された光は投光レンズ7を通過することでスリット光L1に変換される。筐体15には、スリット光L1が通過するための透光窓8が設けられている。透光窓8には、防塵のための透光ガラス9aが設けられている。同様に、筐体15には反射光L2を筐体15の内部に導くための受光窓10が設けられている。受光窓10には、防塵のための透光ガラス9bが設けられている。受光レンズ12は反射光L2を画像センサ13に結像させるためのレンズである。画像センサ13は二次元配列された複数の画素(受光素子や光電変換素子と呼ばれてもよい)を有するセンサである。
図2が示すように、光源6の投光軸に対して、画像センサ13の受光軸は角度θだけ傾いている。つまり、高さZ0からの反射光L2は画像センサ13のV方向におけるV0の位置に結像する。高さZ1からの反射光L2は画像センサ13のV方向におけるV1の位置に結像する。高さZ2からの反射光L2は画像センサ13のV方向におけるV2の位置に結像する。このように画像センサ13のV方向は、ワークWのZ方向に対応している。画像センサ13のU方向は図示されていないが、U方向はワークWのX方向に対応している。つまり、画像センサ13が出力する受光結果である画像の縦方向はV方向であり、横方向はU方向である。
【0012】
図2においてはスリット光L1がZ軸方向に出力されるように光源6が配置されているが、光源6および投光レンズ7のペアと、画像センサ13および結像レンズ12とのペアとの位置関係は逆であってもよい。
【0013】
図3は画像センサ13が出力する画像I1と、ワークWの断面との関係を説明する図である。この例では、ワークWのXZ断面において高さが三段階に変化している。より具体的には、X方向における位置X0から位置X1までの高さはZ0である。位置X1からX2までの高さはZ2である。位置X2からX3までの高さはZ1である。画像I1は、このようなワークWをヘッド部1により撮像して得られる画像である。なお、画像I1のU方向(横方向)はワークWのX方向に対応している。つまり、画像I1の位置U0、U1、U2、U3はそれぞれ位置X0、X1、X2、X3に対応している。同様に、画像I1のV方向における位置V0、V1、V2はそれぞれ高さZ0、Z1、Z2に対応している。スリット光L1がXY平面に入射することで形成される光スポット(反射位置の集合)は直線状である。つまり、ベルトコンベイヤ4上にワークWが存在しないときにヘッド部1が出力する画像には、ほぼ一直線状の光スポットが並ぶことになる。その一方で、一般的なワークWの切断面のエッジの高さは一定でないことが多い。この場合、
図3が示すように、複数の高さのそれぞれに対応したV方向の位置に光スポットが並ぶことになる。高さに応じてV方向の位置が変わることは、
図2が示す通りである。このように制御部2は、あるY方向の位置で取得された画像IMから各U方向の位置ごとにV方向の位置を演算することでプロファイルを生成する。なお、なお、XZ座標系とUV座標系との間には一定の縮尺関係があるため、制御部2は、簡単な演算により、UV座標系におけるプロファイルをXZ座標系におけるプロファイルに変換できる。
【0014】
<位置(高さの演算)>
図4は画像I1からプロファイルを構成する高さを演算する方法を説明する図である。スリット光L1はY方向において、ある程度の幅を持っている。そのため、反射光L2が画像センサ13にもたらす光スポットの幅も複数画素にまたがるような幅となる。そこで、制御部2は各画素の輝度値から輝度値の変化を示す近似曲線P1を求め、近似曲線P1においてピーク値をもたらすV方向における位置を演算する。
図4では一番左の列が注目列であり、注目列の輝度値の分布(近似曲線P1)が例示されている。近似曲線P1は、複数のサンプル値をカーブフィッティングするなどして求められる。検出閾値未満のサンプル値は考慮されない。このピーク値をもたらすV方向における位置がワークWの高さを示している。制御部2は、U方向における各位置(各画素列)ごとに近似曲線P1を求め、近似曲線P1からピーク値をもたらすV方向の位置(高さ)を演算する。この演算処理をU方向における各位置で実行することで、一つのプロファイルが得られる。このような演算処理はサブピクセル処理と呼ばれてもよい。
【0015】
<HDR>
すでに説明されたように画像センサ13の画素に入射する光が強すぎると画素が出力する輝度値が飽和してしまい、制御部2は、正しいピーク位置を求めることができなくなる。画素に入射する光が弱すぎると画素が出力する輝度値がピーク検出閾値を下回ってしまうため、やはり、制御部2は、正しいピーク位置を求めることができなくなる。より精度よくプロファイルを求めるには、ハイダイナミックレンジ(HDR)が有効である。一般的なHDRでは露光時間を変えながら複数の画像が取得され、複数の画像からダイナミックレンジが拡張された一つの画像が合成される。しかし、この手法では、複数の画像が必要となることから、単位時間あたりに測定可能なワークWの数が減少してしまう。そこで、本実施例の制御部2は一度の露光でHDR処理された画像を取得する。
【0016】
図5は本実施例のHDR処理を説明する図である。画像センサ13の各画素は、光を電荷に変換する光電変換素子と、当該電荷を蓄積するキャパシタ(ポテンシャルウェル)とを有している。各画素は、ある露光時間内に発生した電荷をキャパシタに蓄積することでキャパシタに生じる電圧を受光結果として出力する。これは受光結果の読み出し処理と呼ばれる。
図5において横軸は時間を示し、縦軸は画素の電圧を示している。この例では露光時間は第一期間D1と第二期間D2とから構成されている。ここで、露光時間は時刻t0から時刻t2までの期間である。時刻t0は露光(点灯)の開始時刻である。第一期間D1は時刻t0から時刻t1までの期間である。第二期間D2は時刻t1から時刻t2までの期間である。
【0017】
この例では第一画素の電圧Vaと第二画素の電圧Vbが例示されている。第一画素には強く光が入射しているため、第一期間D1の途中で電圧Vaは電圧Vmaxに飽和してしまう。電圧Vmaxは、画素のキャパシタにおける電荷の蓄積率が100%であるときの画素の出力電圧である。
【0018】
第一期間D1において第一画素に蓄積された電荷により第一画素の電圧Vaがハーフリセット電圧Vhalfを超えることがある。この場合、画像センサ13は、第一画素の電圧Vaがハーフリセット電圧Vhalfとなるように時刻t1にハーフリセットを実行する。その後、画像センサ13は、第二期間D2において第一画素について電荷の蓄積を再開し、露光時間の終了とともに第一画素の電圧を読み出す。一方、第一期間D1において第二画素に蓄積された電荷により第二画素の電圧Vbがハーフリセット電圧VHalfを超えない場合もある。この場合、画像センサ13は、第二画素について第一期間D1および第二期間D2にわたって継続的に電荷の蓄積を実行する。画像センサ13は、露光時間(D1+D2)の終了とともに第二画素の電圧を読み出す。なお、(D1+D2)/D2はHDR倍率と呼ばれる。HDR倍率が大きいほど、ダイナミックレンジが拡張される。つまり、露光時間が長くなるほど、HDR倍率が増加する。また、第二期間D2が短くなればなるほど、HDR倍率が増加する。ただし、露光時間は撮影条件に応じて決定されるため、無限に大きくできるわけではない。制御部2は、時刻t2に読み出された電圧Vaに対してHDR倍率を乗算することで実際の測定電圧を求める。
【0019】
ところで、画像センサ13は所定の動作クロックにしたがって動作する。したがって、第二期間D2をこの動作クロックの周期よりも短くすることができない。つまり、HDR倍率は画像センサ13の動作クロックに制約されてしまう。
【0020】
さらに、各画素は寄生感度(PLS)を有している。寄生感度とは、露光時間後に入射した光によって各画素の出力電圧が増加してしまう現象である。これもダイナミックレンジを低下させてしまう。
【0021】
一方で、制御部2の動作クロックの周期は画像センサ13の動作クロックの周期よりも短いため、より細かい時間を単位として光源6の点灯と消灯とを制御できる。たとえば、第二期間D2において画素が電荷を蓄積している途中で、光源6を消灯すればPLSの影響が低減される。そこで、制御部2は、第一期間D1において光源6を継続的に点灯させるが、第二期間D2において第二期間D2よりも短い第三期間D3が経過すると光源6を消灯する。つまり、制御部2は、時刻t1'が到来すると、光源6を消灯する。時刻t1'は消灯時刻と呼ばれてもよい。第三期間D3は時刻t1から時刻t1'までの期間である。これにより、HDR倍率を(D1+D3)/D3に改善することが可能となる。さらに、寄生感度の影響が低減される。
【0022】
<内部機能>
図6は光学式変位計100の内部機能を示している。ヘッド部1の通信部21aは、制御部2と通信するための通信回路である。駆動部22は、通信部21aを介して受信される制御部2からの指示にしたがって駆動電流を光源6に流すことで光源6を点灯させる駆動回路である。センサ制御部23は、通信部21aを介して受信される制御部2からの指示にしたがった所定の露光時間により画像センサ13に撮像を実行させる制御回路である。なお、本実施形態では、センサ制御部23は、通信部21aを介して受信される制御部2からの指示にしたがって所定のビニングを画像センサ13に実行させる。
【0023】
制御部2の通信部21bはヘッド部1と通信するための通信回路である。CPU25は記憶部30に記憶されている制御プログラムを実行することでヘッド部1を制御し、ヘッド部1から出力される受光結果に基づきワークWのプロファイルおよび三次元形状を測定する。ピーク検出部26は、画像センサ13が出力する受光結果に基づき輝度値のピークをもたらすV方向の位置(ピーク位置)を検出する。ピーク位置はワークWの高さに対応している。つまり、ピーク検出部26は、X方向における各位置ごとのワークWの高さを演算により求める。プロファイル生成部27は、ピーク検出部26により求められたX方向における各位置(xi)ごとのワークWの高さ(zi)をまとめることで、一つのプロファイルデータを生成する。つまり、一つのプロファイルデータは、複数の高さ(zi)の集合体である。プロファイル生成部27は、Y方向における異なる位置(yi)ごとにプロファイルデータを求め、求められた複数のプロファイルデータからワークWの三次元形状を示すデータを生成する。なお、ワークWの三次元形状のデータは、求められた複数のプロファイルデータの集合体である。HDR部28は各画素の出力電圧にHDR倍率を乗算することで輝度値を求める。UI部29は、プロファイル生成部27により求められたプロファイルデータまたは画像I1を表示装置3に表示したり、画像測定を設定するためのUIを表示装置3に表示したりする。UIはユーザインタフェースの略称である。
【0024】
測定制御部31は、設定部35により設定された制御パラメータにしたがって光源6や画像センサ13を制御する。たとえば、測定制御部31は、センサ制御部23に撮像指示であるトリガ信号を出力したり、センサ制御部23に露光時間を設定したり、駆動部22に光源の発光量を設定したりする。設定部35は、プロファイルおよび三次元形状の測定に関する各種の制御パラメータを設定する。たとえば、感度指定部32は、ユーザ指示に基づく感度の指定を受け付け、指定された感度を決定部33に設定する。ここでの感度は、ユーザにとっての感覚的な尺度にすぎず、別の名称が採用されてもよい。決定部33は、指定された感度に基づきHDR倍率および発光量を決定する。記憶部30には、感度を、HDR倍率および発光量に変換する感度テーブルが記憶されていてもよい。決定部33は、感度テーブルを参照することで、指定された感度に基づきHDR倍率および発光量を決定してもよい。統計部34は、各列を構成する複数の画素の画素値(輝度値)を比較し、各列ごとの統計値(例:最大値(最大受光量))を求める。さらに、統計部34は、N枚の画像を取得し、N枚の画像にわたる別の統計値を求めてもよい。制御部2は、設定モードと測定モードとを有しており、設定部35は設定モードにおいて動作する。設定モードにおいてワークWは静止しているが、測定モードにおいてはワークWが搬送される。
【0025】
<ユーザインタフェース>
図7はUI部29が表示装置3に表示するUI70を示している。UI70は、画像センサ13により取得された画像I1を表示する表示領域71を有している。スライドバー72は感度を指定するためのコントロールオブジェクトである。ユーザは操作部5を通じてポインタ73を操作することでスライドバー72を左右に動かすことで、好みの感度を指定する。感度指定部32はUI部29からスライドバー72の位置を示す情報を受け取り、当該情報に基づきユーザにより指定された感度を認識する。なお、感度は、HDR倍率や光源6の発光量(駆動電流)を決定するために使用される制御パラメータである。数値ボックス74はサンプリング周期が入力されるコントロールオブジェクトである。
【0026】
<HDR倍率の決定を含む制御パラメータの設定方法>
図8はCPU25により実行される制御パラメータの設定方法を示すフローチャートである。操作部5を通じて制御パラメータの設定方法(設定モード)が起動されると、CPU25は以下の処理を実行する。CPU25は、記憶部30のROM領域に記憶されている制御プログラムにしたがって以下の処理を実行する。
【0027】
S1でCPU25(感度指定部32)はUI70を通じて感度の指定を受け付ける。
【0028】
S2でCPU25(決定部33)はユーザにより指定された感度に基づきHDR倍率と光源6の発光量を決定する。
【0029】
図9は記憶部30に記憶されている感度テーブル90の一例を示している。感度テーブル90は、感度、HDR倍率、発光量および制御目標(下限値および上限値)についての複数の組を有している。決定部33は、ユーザにより指定された感度に関連付けられているHDR倍率、発光量および制御目標(下限値および上限値)を感度テーブル90から取得する。
図9において感度"1"の制御目標は"300~700"と記述されているが、"300"は下限値を示し、"700"は上限値を示している。
【0030】
S3でCPU25(測定制御部31)は画像センサ13を制御してN枚の画像を取得する(Nは2以上の整数)。たとえば、測定制御部31は、決定部33により決定された発光量を駆動部22に設定し、露光時間の初期値をセンサ制御部23に設定する。露光時間の初期値も予め記憶部30に記憶されているものとする。さらに、測定制御部31は、駆動部22に点灯を指示するとともに、センサ制御部23にトリガ信号を送信する。また、測定制御部31は、時刻t1から第三期間が経過すると、駆動部22に点灯を指示する。測定制御部31は、時刻を管理するためのタイマーまたはカウンタを有している。センサ制御部23は時刻t2に画像センサ13から輝度値(出力電圧)を読み出してCPU25に出力する。HDR部28は、画像センサ13から出力される各画素の輝度値にHDR倍率を乗算することで一枚の画像データを作成し、記憶部30のRAM領域に記憶する。測定制御部31は、ノイズを低減するために、N枚の画像を取得する。
【0031】
S4でCPU25(統計部34)は、N枚の画像のそれぞれについて、各画像を形成している各画素列ごとに輝度値の最大値(最大光量)を求める。これにより、列ごとにN個の最大光量が得られる。たとえば、i枚目の画像におけるj列目の最大値はQijと表記されてもよい。
【0032】
S5でCPU25(統計部34)は、各列ごとに得られたN個の最大光量Qijの統計値Rj(例:平均値)を求める。たとえば、N枚の画像における1列目の平均値R1は、(Q11+Q21+Q31+・・・+QN1)/Nにより算出される。N枚の画像におけるK列目の平均値RKは、(Q1K+Q2K+Q3K+・・・+QNK)/Nにより算出される。
【0033】
S6でCPU25(統計部34)は、統計値Sが制御目標の上限値Shi以下であるかどうかを判定する。制御目標の上限値Shiは、指定感度に基づき感度テーブル90を参照することで決定される。ここで、制御目標と比較される統計値Sは、たとえば、一枚の画像を形成するK個の画像列の全体から得られたK個の統計値R1~RKのうちの最大値であってもよい。あるいは、統計値Sは、統計値R1~RKのうちで上位10%に相当する複数の統計値の平均値であってもよい。あるいは、統計値Sは、統計値R1~RKのうちで10番目に大きな統計値であってもよい。統計値Sが制御目標の上限値Shi以下であれば、CPU25はS7に進む。統計値Sが制御目標の上限値Shiを超えていれば、CPU25はS10に進む。
【0034】
S7でCPU25(統計部34)は、統計値Sが制御目標の下限値Slo未満であるかどうかを判定する。制御目標の下限値Sloは、指定感度に基づき感度テーブル90を参照することで決定される。統計値Sが制御目標の下限値Slo以上であれば、各種の制御パラメータが適切に調整されているため、CPU25は設定方法を終了する。つまり、CPU25は設定モードを終了し、測定モードに復帰する。一方、統計値Sが制御目標の下限値Slo未満であれば、CPU25はS20に進む。S20でCPU25(決定部33)は、露光時間を所定値だけ増加させる。ただし、露光時間がサンプリング周期を超えている場合、決定部33は露光時間を増加させない。つまり、露光時間がサンプリング周期を超えていない場合に限り、決定部33は露光時間を増加させる。その後、CPU25はS3に戻る。サンプリング周期とは、Y方向においてプロファイルを測定する周期のことである。
【0035】
S10でCPU25(決定部33)は、現在において画像センサ13に設定されている露光時間が設定可能な最小値(例:15マイクロ秒)であるかどうかを判定する。露光時間が設定可能な最小値でなければ、CPU25はS11に進む。S11でCPU25(決定部33)は、露光時間を所定値だけ削減し、S3に戻る。一方で、S10において露光時間が設定可能な最小値であれば、CPU25はS12に進む。S12でCPU25(決定部33)は、発光量を所定値だけ削減し、S3に戻る。このようにS3ないしS20を繰り返すことで、適切な制御パラメータが決定される。なお、露光時間や発光量の増減幅は一定値であってもよいし、一定値でなくてもよい。たとえば、発光量は離散的に変化してもよい(例:80→60→40→20→5)。
【0036】
<まとめ>
[観点1]
図1が示すように、光学式変位計100はY方向に搬送される測定対象物のX-Z断面のプロファイルを三角測距の原理に基づき測定する光切断方式の光学式変位計の一例である。光源6はX方向とZ方向との両方に平行なスリット光を測定対象物に照射する光源の一例である。また、光源6はX方向に幅を有するスリット光を測定対象物に照射する光源の一例である。画像センサ13は測定対象物からの反射光を受光する画像センサであって、X方向に対応するU方向とZ方向に対応するV方向とに二次元配列された複数の画素を有し、複数の画素による反射光の受光量を出力する画像センサの一例である。ピーク検出部26はU方向に並んだ複数の画素列のそれぞれについて受光量のピークとなるV方向における画素の位置をピーク位置として検出する検出手段として機能する。プロファイル生成部27は、U方向における複数の画素列のそれぞれの位置と、V方向におけるピーク位置とからX-Z断面のプロファイルを生成する生成手段として機能する。CPU25およびセンサ制御部23は画像センサ13を制御する制御手段として機能する。画像センサ13は予め設定された露光時間ごとに反射光L2の受光量(輝度値)を出力するように構成されていてもよい。
図5が示すように、露光時間は、第一期間D1と、第一期間の後に続く第二期間D2とを有していてもよい。CPU25およびセンサ制御部23は、複数の画素のそれぞれについて、次のように画像センサ13を制御する。第一期間において画素に蓄積された電荷に基づく電圧がハーフリセット電圧を超えた場合、CPU25およびセンサ制御部23は、当該画素の電圧がハーフリセット電圧となるようにハーフリセットを実行し、第二期間において電荷の蓄積を再開するように画像センサ13を制御する。一方で、第一期間において画素に蓄積された電荷に基づく電圧がハーフリセット電圧を超えていない場合、CPU25およびセンサ制御部23は、当該画素について第一期間および第二期間にわたって継続的に電荷の蓄積を実行するように画像センサ13を制御する。CPU25およびセンサ制御部23は、さらに、第一期間D1において光源6を継続的に点灯させ、第二期間D2において第二期間よりも短い第三期間D3が経過すると光源6を消灯する。これにより、光切断方式の光学式変位計において測定対象物の測定精度が向上する。
【0037】
[観点2]
画像センサ13の動作クロックの周期は第二期間に等しくてもよい。制御手段であるCPU25の動作クロックの周期は、画像センサ13の動作クロックの周期よりも短い。これは、HDR倍率の拡大やPLSの削減に貢献するであろう。
【0038】
[観点3]
第三期間D3は、制御手段であるCPU25の動作クロックの周期のn(nは1以上の整数)倍であってもよい。
【0039】
[観点4]
設定部35は第一期間D1と第二期間D2との比率(HDR倍率)を制御手段に設定する設定手段として機能する。
【0040】
[観点5]
図9が示すように、記憶部30は、感度と、比率(HDR倍率)と、光源の発光量とを関連付けた複数の組を記憶した記憶手段として機能してもよい。感度指定部32やスライドバー72は感度を指定する指定手段として機能してもよい。設定部35は、指定手段により設定された感度に対応する比率と発光量を記憶手段から読み出して制御手段(例:測定制御部31、センサ制御部23、駆動部22)に設定してもよい。
【0041】
[観点6]
記憶部30および感度テーブル90は、感度と、比率と、光源の発光量と、一画素あたりの輝度の目標範囲(制御目標)とを関連付けた複数の組を記憶していてもよい。設定部35は、指定手段により設定された感度に対応する比率、発光量および輝度の目標範囲を記憶手段から読み出して制御手段に設定してもよい。決定部33は、画像センサ13を構成する複数の画素の輝度値のうちで相対的に高い輝度値が目標範囲を超えていれば露光時間を削減してもよい。決定部33は、相対的に高い輝度値が目標範囲よりも小さければ露光時間を増加してもよい。これにより適切に制御パラメータが調整されよう。
【0042】
[観点7]
図8に関連して説明されたように、相対的に高い輝度値は、複数の画素の輝度値のうちでの最大値であってもよい。
【0043】
[観点8]
図8に関連して説明されたように、相対的に高い輝度値は、複数の画素の輝度値のうちで上位に位置する複数の輝度値の平均値であってもよい。
【0044】
[観点9]
図8に関連して説明されたように、相対的に高い輝度値は、複数の画素の輝度値のうちでn番目に大きな輝度値であってもよい。
【0045】
[観点10]
図8に関連して説明されたように、相対的に高い輝度値は、複数の画素列ごとに輝度値の最大値を求め、当該求められた複数の画素列ごとの最大値のグループのうちで上位に位置する複数の最大値の平均値であってもよい。
【0046】
[観点11]
図8に関連して説明されたように、相対的に高い輝度値は、複数の画素列ごとに輝度値の最大値を求め、当該求められた複数の画素列ごとの最大値のグループのうちでn番目に大きな最大値であってもよい。
【0047】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。