IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ユーシンの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-28
(45)【発行日】2023-01-12
(54)【発明の名称】ドア開閉装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/73 20150101AFI20230104BHJP
   B60J 5/10 20060101ALI20230104BHJP
   E05F 15/77 20150101ALN20230104BHJP
【FI】
E05F15/73
B60J5/10 K
E05F15/77
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019085868
(22)【出願日】2019-04-26
(65)【公開番号】P2020180523
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000138462
【氏名又は名称】株式会社ユーシン
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】徳留 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 悦朗
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-034793(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0190314(US,A1)
【文献】特開2017-082394(JP,A)
【文献】特開2016-166463(JP,A)
【文献】特開2017-082390(JP,A)
【文献】特開2018-090985(JP,A)
【文献】特開2014-009470(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/00-15/79
B60J 5/10
E05B 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に対してドアを開閉する駆動部と、
水平方向に間隔をあけて前記車体に配置され、前記ドア周辺の移動物及び静止物を含む被検出物までの距離をそれぞれ繰り返し検出する第1検出部及び第2検出部と、
前記第1検出部の検出結果及び前記第2検出部の検出結果に基づいて、前記移動物による複数の段階を有する所定の動作を検出すると、前記駆動部によって前記ドアを開閉する制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記第1検出部の検出結果に基づいて前記第1検出部が検出した前記被検出物である第1被検出物が前記移動物及び前記静止物のいずれであるかを判定するとともに、前記第2検出部の検出結果に基づいて前記第2検出部が検出した前記被検出物である第2被検出物が前記移動物及び前記静止物のいずれであるかを判定し、
前記第1被検出物及び前記第2被検出物のうち、一方が前記移動物で他方が前記静止物であり、前記静止物までの距離が第1判断値よりも短い場合、前記複数の段階のうち、最後の段階の検出には前記第1検出部の検出結果及び前記第2検出部の検出結果の両方を用い、それ以外の段階の検出には前記第1検出部及び前記第2検出部のうちの前記移動物を検出した前記一方の検出結果だけを用いる、ドア開閉装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1検出部が検出した所定期間の距離の変化によって、前記第1検出部が検出した前記第1被検出物が前記移動物及び前記静止物のいずれであるのかを判定し、前記第2検出部が検出した所定期間の距離の変化によって、前記第2検出部が検出した前記第2被検出物が前記移動物及び前記静止物のいずれであるのかを判定する、請求項1に記載のドア開閉装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1検出部が検出した前記第1被検出物が前記移動物であり、前記第2検出部が検出した前記第2被検出物が前記静止物である場合、前記最後の段階以外の段階の検出に前記第1検出部が検出した距離だけを用い、前記第1検出部が検出した前記第1被検出物が前記静止物であり、前記第2検出部が検出した前記第2被検出物が前記移動物である場合、前記最後の段階以外の段階の検出に前記第2検出部が検出した距離だけを用いる、請求項1又は2に記載のドア開閉装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1検出部が検出した前記第1被検出物が前記移動物であり、前記第2検出部が検出した前記第2被検出物が前記静止物である場合、前記第2検出部が検出した距離を前記第1検出部が検出した距離と同一値に置き換え、前記第1検出部が検出した前記第1被検出物が前記静止物であり、前記第2検出部が検出した前記第2被検出物が前記移動物である場合、前記第1検出部が検出した距離を前記第2検出部が検出した距離と同一値に置き換える、請求項1から3のいずれか1項に記載のドア開閉装置。
【請求項5】
前記第1検出部が有する第1検出範囲及び前記第2検出部が有する第2検出範囲のうちのいずれかを、前記所定の動作を検出する検出区画に設定する設定部を備え、
前記設定部は、前記第1検出部が検出した前記第1被検出物が前記移動物であり、前記第2検出部が検出した前記第2被検出物が前記静止物である場合、前記第1検出範囲を前記検出区画に設定し、前記第1検出部が検出した前記第1被検出物が前記静止物であり、前記第2検出部が検出した前記第2被検出物が前記移動物である場合、前記第2検出範囲を前記検出区画に設定する、請求項1から4のいずれか1項に記載のドア開閉装置。
【請求項6】
前記第1検出部が検出した距離及び前記第2検出部が検出した距離から前記移動物の座標を算出する算出部を備え、
前記制御部による前記所定の動作の成立判断には、前記最後の段階の前の段階の前記座標である第1座標と、前記最後の段階を行ったときの前記座標である第2座標とが用いられ、
前記制御部は、前記第1座標と前記第2座標の差が第2判断値未満の場合、前記所定の動作が成立したと判断し、前記第1座標と前記第2座標の差が前記第2判断値以上の場合、前記所定の動作が不成立であると判断する、請求項1から5のいずれか1項に記載のドア開閉装置。
【請求項7】
前記設定部が設定した前記検出区画を記憶する記憶部を備え、
前記制御部による前記所定の動作の成立判断には、前記最後の段階の前の段階で前記設定部が設定した前記検出区画である第1検出区画の記憶情報と、前記最後の段階を行ったときに前記設定部が設定した前記検出区画である第2検出区画の記憶情報とが用いられ、
前記制御部は、前記第1検出区画と前記第2検出区画が同じ場合には前記所定の動作が成立したと判断し、前記第1検出区画と前記第2検出区画が異なる場合には前記所定の動作が不成立であると判断する、請求項5に記載のドア開閉装置。
【請求項8】
前記第1検出部が有する第1検出範囲及び前記第2検出部が有する第2検出範囲にはそれぞれ、スタート区域と、前記スタート区域よりも前記ドア側に位置するトリガ区域とが設定されており、
前記所定の動作には、前記スタート区域から前記トリガ区域へ移動する段階と、前記トリガ区域から前記スタート区域へ移動する段階とが含まれている、請求項1から7のいずれか1項に記載のドア開閉装置。
【請求項9】
前記スタート区域と前記トリガ区域を区画する境界線は、第1境界線と、前記第1境界線よりも前記ドアから離れて位置する第2境界線とを含み、
前記制御部は、前記静止物までの距離が前記第1判断値よりも短い場合には前記第1境界線を基準として前記所定の動作を検出し、それ以外の場合には前記第2境界線を基準として前記所定の動作を検出する、請求項8に記載のドア開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドア開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
使用者がドアハンドルに触れることなく、ドアの開放と閉鎖を自動的に行うことが可能なドア開閉装置が知られている。特許文献1に開示されたドア開閉装置は、一対の測距センサがそれぞれ有する検出範囲の重複部分によって構成された検出区画で、使用者が所定の動作を行うと、駆動部によってドアの開閉を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-82390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の周辺に壁又は他の車両等の障害物(静止物)が存在する場合、検出区画の全長を確保できないことがある。この場合、使用者による所定の動作を検出できないため、特許文献1のドア開閉装置には改良の余地がある。
【0005】
本発明は、車両の周辺に静止物が存在する場合でもドアの開閉が可能なドア開閉装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、車体に対してドアを開閉する駆動部と、水平方向に間隔をあけて前記車体に配置され、前記ドア周辺の移動物及び静止物を含む被検出物までの距離をそれぞれ繰り返し検出する第1検出部及び第2検出部と、前記第1検出部の検出結果及び前記第2検出部の検出結果に基づいて、前記移動物による複数の段階を有する所定の動作を検出すると、前記駆動部によって前記ドアを開閉する制御部とを備え、前記制御部は、前記第1検出部の検出結果に基づいて前記第1検出部が検出した前記被検出物である第1被検出物が前記移動物及び前記静止物のいずれであるかを判定するとともに、前記第2検出部の検出結果に基づいて前記第2検出部が検出した前記被検出物である第2被検出物が前記移動物及び前記静止物のいずれであるかを判定し、前記第1被検出物及び前記第2被検出物のうち、一方が前記移動物で他方が前記静止物であり、前記静止物までの距離が第1判断値よりも短い場合、前記複数の段階のうち、最後の段階の検出には前記第1検出部の検出結果及び前記第2検出部の検出結果の両方を用い、それ以外の段階の検出には前記第1検出部及び前記第2検出部のうちの前記移動物を検出した前記一方の検出結果だけを用いる、ドア開閉装置を提供する。
【0007】
本発明のドア開閉装置では、静止物までの距離が第1判断値よりも短い場合、所定の動作に含まれる複数の段階のうちの最後の段階以外の段階の検出に、第1検出部及び第2検出部のうち、移動物を検出した一方の検出結果だけが用いられる。よって、静止物の存在によって車両周辺の空き領域が狭い場合でも、使用者(移動物)が所定の動作を行うためのスペース(距離)を確保できるため、使用者による動作を検出してドアを開閉できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、車両の周辺に静止物が存在する場合でも、使用者の所定の動作を検出してドアを開閉できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係るドア開閉装置を示すブロック図。
図2A】第1実施形態の検出範囲を示す平面図。
図2B】ドア周辺に壁が有り、第1検出範囲を検出区画に設定した状態を示す平面図。
図2C】ドア周辺に壁が有り、第2検出範囲を検出区画に設定した状態を示す平面図。
図2D】ドア周辺に壁が無い場合の検出範囲及び検出区画を示す平面図。
図3A】ドアの閉状態を示す斜視図。
図3B】ドアの開状態を示す斜視図。
図4】制御部によるメインの制御を示すフローチャート。
図5図4の静止物判定処理を示すフローチャート。
図6図4の検出区画設定処理を示すフローチャート。
図7図4の距離補正処理を示すフローチャート。
図8図4のアプローチ判定処理を示すフローチャート。
図9図4の認証処理を示すフローチャート。
図10図4のスタート判定処理を示すフローチャート。
図11図4のトリガ判定処理を示すフローチャート。
図12図4の戻り判定処理を示すフローチャート。
図13図4の信号出力処理を示すフローチャート。
図14】第2実施形態に係るドア開閉装置を示すブロック図。
図15A】第2実施形態の検出範囲を示す平面図。
図15B】ドア周辺に壁が有り、第1検出範囲を検出区画に設定した状態を示す平面図。
図15C】ドア周辺に壁が有り、第2検出範囲を検出区画に設定した状態を示す平面図。
図15D】ドア周辺に壁が無い場合の検出範囲及び検出区画を示す平面図。
図16】第2実施形態の制御部によるメインの制御を示すフローチャート。
図17図16のトリガ判定処理を示すフローチャート。
図18図16の戻り判定処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る車両用のドア開閉装置10を示す。このドア開閉装置10は、図2Bから図2Dに示すように、車両1の後方で使用者が所定の動作Ma,Mbを行うことで、図3A及び図3Bに示すように、使用者に手を使わせることなくハッチバックドア(以下、単にドアと記載する。)4を自動開閉する。
【0012】
図1に示すように、ドア開閉装置10は、検出ユニット(検出手段)12、ドア4の駆動部24、表示部25、認証部26、及び制御部28を備える。図1中、一点鎖線で囲まれた部分が今回追加した構成であり、検出ユニット12、及び認証部26には、車両1に搭載された既存の部品を利用する。また、キー(携帯機)によってドア4を自動開閉可能なリモコン式オートドアを搭載した車両1では、駆動部24も既存の部品を利用する。
【0013】
使用者及び使用者以外の第三者を含む移動物を検出ユニット12が検出すると、制御部28は、認証部26によって使用者であるか否かの判断(認証処理)を行う。認証不成立の場合、制御部28は第三者であると判断し、ドア4の開閉は行わない。認証成立により使用者であると判断すると、制御部28は、検出ユニット12が検出した距離の変化によって、使用者による所定の動作を検出する。この際、制御部28は、表示部25による表示状態を変更することで、検出状態と次の動きを行うタイミングとを使用者に認識させる。そして、所定の動作が成立したと判断すると、制御部28は、図3Aに示すようにドア4が閉状態の場合には駆動部24を開駆動させ、図3Bに示すようにドア4が開状態の場合には駆動部24を閉駆動させる。
【0014】
図2Bから図2Dを参照すると、所定の動作Ma,Mbは、車両1の背後(リアバンパー3周辺)に障害物である壁(静止物)6が存在する場合と存在しない場合とで異なる。図2B及び図2Cに示すように、壁6が有り、ドア4周辺の空き領域が狭い場合の動作Maは、概ねドア4(リアバンパー3)に沿って水平方向(つまり車両1の幅方向)へ進退する一連の動き(複数の段階)に設定されている(Ma1→Ma2→Ma3)。図2Dに示すように、壁6が無く、ドア4(リアバンパー3)周辺の空き領域が広い場合の動作Mbは、ドア4(リアバンパー3)に対して交差する方向(つまり車両1の長手方向)へ進退する一連の動き(複数の段階)に設定されている(Mb1→Mb2→Mb3)。
【0015】
検出ユニット12は、定められた検出範囲内に位置する移動物及び静止物を含む被検出物を、設定時間(例えば80msec)毎に繰り返し検出する。静止物には、壁6の他に隣接して駐車された他の車両等が含まれる。検出ユニット12は、ドア4に沿って車幅方向(水平方向)に間隔をあけて位置するように、リアバンパー3(車体2)に取り付けられた一対の検出部13A,13Bを備える。これらの検出部13A,13Bには、バックソナーセンサとして使用される4個の超音波センサのうち、中央に位置する2個が兼用されている。バックソナーを構成する4個の超音波センサは、走行時に車両1の後方を監視するために搭載されている。これらのうちの2個を利用することで、ドア開閉装置10を車両1に搭載することによるコストの増加を抑えている。なお、以下の説明では、図2Aにおいて左側に位置する方を第1検出部13Aと言い、図2Aにおいて右側に位置する方を第2検出部13Bと言うことがある。
【0016】
図1を参照すると、検出部13A,13Bは、通信ケーブルによって制御部28と通信可能に接続され、この制御部28が図示しないECU(Electronic Control Unit)と通信可能に接続されている。但し、検出部13A,13BをECUと通信可能に接続し、検出部13A,13Bの検出結果をECUから制御部28が受信してもよい。検出部13A,13Bは、送波器14及び受波器15をそれぞれ備える。送波器14から発せられる超音波によって、車両1の後方に向かって概ね円錐状に広がった検出範囲16A,16Bがそれぞれ形成される。図2Aに示すように、地面では、扇型(例えば中心角度が約110度)に広がった検出範囲16A,16Bとなる。検出範囲16A,16Bは部分的に重複している。送波器14から送波された超音波の反射波は受波器15で受波される。この検出結果は、検出範囲16A,16B内での被検出物の有無の判断と、被検出物までの距離の演算とに利用される。
【0017】
図2Aを参照して検出部13A,13Bの検出範囲16A,16Bについて、より具体的に説明する。
【0018】
まず、検出範囲16A,16Bはそれぞれ、検出部13A,13Bから設定距離D1(例えば120cm)までの領域に設定されている。両者を合わせた検出範囲16A,16B全体が、移動物の進入により認証部26によって認証を行うためのアプローチ領域17である。前述のように、ドア4の周辺に壁6が有る場合(図2B及び図2C参照)、使用者の所定の動作Maは車幅方向に沿った進退であり、壁6が無い場合(図2D参照)、使用者の所定の動作Mbは車長方向に沿った進退である。これらの動作Ma,Mbをアプローチ領域17内で検出するために、検出範囲16A,16Bはそれぞれ、検出部13A,13Bからの距離によって、スタート区域18とトリガ区域19に区画されている。
【0019】
スタート区域18とトリガ区域19の境界は、設定距離D1よりも短い第1の判断値J1(例えば90cm)内に壁6が存在するか否かによって異なる。壁6が有る場合の第1境界線20Aは、判断値J1(判断線21)よりも短い設定距離D2A(例えば45cm)の位置に設定される。壁6が無い場合の第2境界線20Bは、判断値J1よりも短く設定距離D2Aよりも長い設定距離D2B(例えば60cm)の位置に設定されている。
【0020】
第1境界線20Aを用いた場合、スタート区域18は、設定距離D1から設定距離D2Aまでの領域によって構成され、トリガ区域19は、スタート区域18よりもドア4側に位置する設定距離D2Aから内側の領域によって構成される。第2境界線20Bを用いた場合、スタート区域18は、設定距離D1から設定距離D2Bまでの領域によって構成され、トリガ区域19は、スタート区域18よりもドア4側に位置する設定距離D2Bから内側の領域によって構成される。
【0021】
ドア4の周辺に壁6が有る場合、第1境界線20Aの位置を第2境界線20Bの位置よりもドア4側に配置することで、車幅方向の動作Maを行うためのスタート区域18の面積を確保している。壁6が無い場合、第2境界線20Bの位置を第1境界線20Aの位置よりもドア4から離して配置することで、車長方向の動作Mbを行うための領域(距離)を確保している。
【0022】
図2Bから図2Dを参照すると、壁6の有無に拘わらず、ドア4を開閉するための動作Ma,Mbは、スタート区域18(Ma1,Mb1)からトリガ区域19(Ma2,Mb2)へ移動する第1の動き(第1の段階)と、トリガ区域19(Ma2,Mb2)から再びスタート区域18(Ma3,Mb3)へ戻る第2の動き(最後の段階)とを備える。つまり、所定の動作Ma,Mbは、複数(本実施形態では2つ)の段階によって構成されている。なお、本実施形態の所定の動作Ma,Mbは、2段階であるが、3段階以上としてもよい。
【0023】
図1図3A及び図3Bに示すように、駆動部24は、車体2に対してドア4を開閉する。この駆動部24は、図示しないが、ドア4を開方向及び閉方向に回転可能なモータ、ギア機構、ダンパー等で構成されている。駆動部24は、通信ケーブルによって制御部28と通信可能に接続されている。但し、駆動部24をECUと電気的に接続し、制御部28による駆動部24の駆動信号を、制御部28がECUへ送信し、ECUが駆動部24に送信してもよい。
【0024】
表示部25は、LEDによって構成され、使用者を誘導するための光学的な表示を行う。詳細については図示しないが、表示部25は、リアバンパー3の幅方向の中央に取り付けたケーシング内の基板に実装され、通信ケーブルによって制御部28と通信可能に接続されている。表示部25の光はレンズで集光され、車両1の周辺が暗いときは勿論、明るいときにも使用者が視認できるような照度で地面(一対のトリガ区域19の重複部分)を照射する。
【0025】
認証部26は、キーとLF(Low Frequency)信号による通信を行い、車外のキーの認証を行う車外LF送受信アンテナを有する送受信機を備える。送受信機は、通信ケーブルによって制御部28と通信可能に接続されているが、ECUと通信可能に接続されてもよい。送受信機は、ECUからの命令に応じて起動し、認証処理に関する通信を行う。認証処理で認証部26は、キーに対して認証コードの送信要求を行い、キーから受信した認証コードを登録された正規コードと比較し、これらが合致(成立)すれば使用者であると判断する。
【0026】
制御部28は、車両1が駐車され、エンジンが停止されることで、ドア4を開閉するための制御を開始する。このドア開閉制御で制御部28は、キー認証が成立し、検出部13A,13Bの検出結果に基づく距離の変化によって、使用者による所定の動作Ma,Mbを検出(成立)すると、駆動部24によってドア4を開閉する。具体的には、図1に示すように、制御部28は、記憶部29、測定部30、判定部31、設定部32、及び算出部33を備え、単一又は複数のマイクロコンピュータ、及びその他の電子デバイスにより構成され、ECUに通信可能に接続されている。
【0027】
記憶部29には、制御プログラム、制御プログラムで使用する閾値や判定値等の設定データ、及び検出部13A,13Bの検出結果から距離を演算するためのデータテーブル等が記憶されている。また、記憶部29には、検出部13A,13Bの検出結果(測定部30が測定した距離情報)が記憶される。さらに、記憶部29には、設定部32が設定した検出区画22A~22Cのうちのいずれかという設定情報、及び算出部33が算出した移動物の座標情報が記憶される。
【0028】
測定部30は、送波器14が超音波を送波してから、受波器15が反射波を受波するまでの時間(検出結果)に基づいて、検出部13A,13Bから被検出物までの距離を測定する。即ち、測定部30と検出部13A,13Bとにより、検出部13A,13Bから被検出物までの距離を測定する測距センサが構成される。測定結果は、距離情報として記憶部29に記憶される。2以上の被検出物が検出範囲16A,16B内の異なる位置に存在する場合、検出部13A,13Bによる測定結果の数は、被検出物の数と同じになる。
【0029】
判定部31は、検出部13A,13Bと測定部30で測定(検出)した所定期間の距離の変化によって、被検出物が移動物及び静止物のいずれであるのかを個別に判定する。つまり、測定部30を含む第1検出部13Aの検出結果に基づいて、第1検出部13Aが検出した第1被検出物が移動物及び静止物のいずれであるのかを判定する。また、測定部30を含む第2検出部13Bの検出結果に基づいて、第2検出部13Bが検出した第2被検出物が移動物及び静止物のいずれであるのかを判定する。
【0030】
より詳しくは、今回の検出結果と前回の検出結果との差(変化量)が大きければ被検出物の移動距離は長く、移動速度は速い。逆に変化量が小さければ、被検出物の移動距離は短く、移動速度は遅い。個々の検出部13A,13Bの検出結果に基づく移動速度Va,Vbが、予め設定された判定値J3(例えば20mm/sec)未満であれば、被検出物が静止物(静止している)と判定部31は判定する。また、移動速度Va,Vbが判定値J3以上であれば、被検出物が移動物(移動している)と判定部31は判定する。この判定は、1回の比較のみで成立させてもよいし、所定回数(例えば8回=640msec)連続して同じ比較結果を示した場合に成立させてもよい。なお、所定回数分の検出結果の平均の傾き(距離の変化率)を移動速度Va,Vbとして算出してもよい。
【0031】
図2Bから図2Dに示すように、設定部32は、アプローチ領域17の一部を、使用者の動作Ma,Mbを検出するための検出区画に設定する。また、設定部32は、スタート区域18とトリガ区域19の境界を、第1境界線20Aと第2境界線20Bのいずれかに設定する。
【0032】
具体的には、設定部32は、第1検出範囲16A及び第2検出範囲16Bのいずれに移動物が存在するかによって検出区画を設定する。具体的には、図2BにMa1で示すように、第1検出部13Aが検出した被検出物が移動物であり、第2検出部13Bが検出した被検出物が静止物(壁6)である場合、設定部32は第1検出範囲16Aを検出区画22Aに設定する。また、図2CにMa1で示すように、第1検出部13Aが検出した被検出物が静止物であり、第2検出部13Bが検出した被検出物が移動物である場合、設定部32は第2検出範囲16Bを検出区画22Bに設定する。一方、図2DにMb1で示すように、壁6が無く、検出部13A,13Bの両方が検出した被検出物が移動物である場合、設定部32は、隣接した検出範囲16A,16Bの重複部分、より具体的には2つのスタート区域18の重複部分と2つのトリガ区域19の重複部分とを、検出区画22Cに設定する。この設定は、1回の判断のみで成立させてもよいし、所定回数(例えば4回=320msec)連続して同じ判断結果を示した場合に成立させてもよい。
【0033】
また、図2B及び図2Cのように壁6が有る場合、設定部32は、ドア4(リアバンパー3)に近い方の第1境界線20Aを用いるように設定する。これにより制御部28は、第1境界線20Aを基準として、スタート区域18とトリガ区域19との間の移動物の移動を判断する。一方、図2Dのように壁6が無い場合、設定部32は、ドア4から離れた方の第2境界線20Bを用いるように設定する。これにより制御部28は、第2境界線20Bを基準として移動物の移動を判断する。この設定は、1回の判断のみで成立させてもよいし、所定回数(例えば4回=320msec)連続して同じ判断結果を示した場合に成立させてもよい。
【0034】
算出部33は、第1検出部13Aが検出した距離及び第2検出部13Bが検出した距離に基づいて、移動物の座標(車幅方向であるX座標)を算出する。ここで、前述のように、受波器15には、検出範囲16A,16B内に存在する被検出物の数に応じて複数の信号が入力される。そのうち、算出部33は、最も早く返ってきた信号(移動物までの距離Da,Db)を用いて、X座標を算出する。X座標は、検出部13A,13B間の中央を原点として、以下の式によって算出される。
【0035】
【数1】
【0036】
但し、図2Bのように、第1検出範囲16Aを現在の検出区画22Aに設定し、第2検出部13Bが移動物を検出しない場合、X座標を-Xmaxとする。また、図2Cのように、第2検出範囲16Bを現在の検出区画22Bに設定し、第1検出部13Aが移動物を検出しない場合、X座標を+Xmaxとする。例えば、第1検出範囲16Aにおける第2検出範囲16Bが重複しない部分に移動物が存在する場合、第1検出範囲16A内において、スタート区域18からトリガ区域19に移動することで、Xinが設定される。しかし、第2検出部13Bが移動物を検出できない場合、X座標を算出できない。よって、このような場合、現在の検出区画22A,22Bの設定に応じてX座標を固定値である-Xmax又は+Xmaxに設定する。
【0037】
第1検出部13Aが検出した第1被検出物及び第2検出部13Bが検出した第2被検出物のうち、一方が移動物で他方が静止物であり、静止物までの距離が判断値J1よりも短い場合、所定の動作Ma,Mbの検出に用いる検出結果が段階によって異なる。具体的には、スタート区域18からトリガ区域19への第1の動き(第1段階)の検出には、2個の検出部13A,13Bのうち、移動物を検出した方の検出結果(距離Da又はDb)だけを用いる。また、トリガ区域19からスタート区域18への第2の動き(最後の段階)の検出には、2個の検出部13A,13Bの検出結果の両方(距離Da及びDb)を用いる。
【0038】
具体的には、図2Bに示すように、第1検出部13Aが検出した第1被検出物が移動物であり、第2検出部13Bが検出した第2被検出物が静止物である場合、制御部28は、移動物による第1の動きの検出に第1検出部13Aが検出した距離Daだけを用いる。図2Cに示すように、第1検出部13Aが検出した第1被検出物が静止物であり、第2検出部13Bが検出した第2被検出物が移動物である場合、制御部28は、移動物による第1の動きの検出に第2検出部13Bが検出した距離Dbだけを用いる。そして、いずれの場合でも制御部28は、移動物による第2の動きの検出に、検出部13A,13Bが検出した両方の距離Da,Dbを用いる。
【0039】
一方、図2Dに示すように、第1検出部13Aが検出した第1被検出物及び第2検出部13Bが検出した第2被検出物がいずれも移動物である場合、制御部28は、所定の動作Mbを構成する一連の動きの判断に、検出部13A,13Bが検出した両方の距離Da,Dbを用いる。
【0040】
ドア4の周辺に壁6が有る場合、第1の動きの検出には検出部13A,13Bのうちの一方の距離だけを用いるが、静止物を含む被検出物の検出には検出部13A,13Bが検出した両方の距離Da,Dbが常に用いられる。そして、制御部28は、移動物を検出した検出部13A又は13Bが検出した距離Da又はDbと同一値になるように、静止物を検出した検出部13B又は13Aが検出した距離Db又はDaを置き換える。つまり、第1検出部13Aの距離Daだけを移動物の検出に用いる場合、制御部28は、第2検出部13Bが検出した距離Dbを、第1検出部13Aが検出した距離Daと同一値に置き換える。また、第2検出部13Bの距離Dbだけを移動物の検出に用いる場合、制御部28は、第1検出部13Aが検出した距離Daを、第2検出部13Bが検出した距離Dbと同一値に置き換える。
【0041】
ドア4の周辺に壁6が無い場合、検出部13A,13Bが検出した両方の距離Da,Dbが、移動物の検出にそれぞれ用いられる。一方、壁6が有る場合、検出部13A,13Bが検出した個々の距離のうち、一方は実測値が用いられ、他方は補正値が用いられる。つまり、壁6の有無に拘わらず、ドア4の開閉制御には2つの距離Da,Dbが用いられるため、同一のプログラムを用いることができる。
【0042】
ドア4の周辺に壁6が有る場合、第1の動きの検出には検出部13A,13Bのうちの一方の距離だけを用いるが、第2の動き(所定の動作Maの成立及び不成立の判断)には、両方の検出部13A,13Bが検出した距離Da,Dbが用いられる。勿論、壁6が無い場合も、所定の動作Mbの成立及び不成立の判断には、両方の検出部13A,13Bが検出した距離Da,Dbが用いられる。
【0043】
具体的には、制御部28は、算出部33が算出したX座標の変化量に基づいて所定の動作Ma,Mbの成立及び不成立の判断を行う。より具体的には、制御部28は、スタート区域18からトリガ区域19へ進むという第1の動きを行ったときの第1座標(つまりMa2又はMb2の座標)と、トリガ区域19から離れたときの第2座標との差の絶対値を、第2の判断値J2(例えば30cm)と比較する。そして、制御部28は、第1座標Xinと第2座標Xoutの差の絶対値が判断値J2よりも小さい場合、つまりトリガ区域19からスタート区域18に戻るという第2の動きを行った場合(つまりMa3又はMb3の座標)、所定の動作Ma,Mbが成立したと判断する。また、第1座標Xinと第2座標Xoutの差の絶対値が判断値J2以上の場合、つまりトリガ区域19から隣の検出範囲16A又は16Bのスタート区域18に進むという動きを行った場合(つまりMa4又はMb4の座標)、所定の動作Ma,Mbが不成立であると判断する。
【0044】
図2B及び図2Cに示すように、車両1の背後を通り抜ける場合の使用者の動きはMa1、Ma2及びMa4である。一方、所定の動作はMa1、Ma2及びMa3である。よって、第1の動きを行ったときの第1座標Xin(Ma2の座標)と、その後の第2座標Xout(Ma3又はMa4の座標)との差の絶対値を判断値J2と比較することで、通り抜けであるか否かを判断できる。よって、使用者が通り抜けすることによるドア開閉装置10の誤動作を防止できる。
【0045】
図2Dに示すように、ドア4の周辺に壁6が無い場合、所定の動作Mbはドア4に対して直交する方向への進退であるため、使用者による車幅方向の移動は殆ど無い。よって、この場合でも、第1の動きを行ったとき第1座標Xin(Mb2の座標)と、第2の動きを行ったときの第2座標Xout(Mb3の座標)との差の絶対値は、判断値J2未満になる。一方、使用者が後方から接近して横向きに移動した場合、第1座標Xinと第2座標Xoutとの差の絶対値は判断値J2以上になる。そのため、重複部分を検出区画22Cとした場合でも、第1座標Xinと第2座標Xoutとの差の絶対値を判断値J2と比較することで、通り抜けであるか否かを判断でき、ドア開閉装置10の誤動作を防止できる。
【0046】
次に、制御部28によるドア開閉制御について、図4から図13に示すフローチャートに従って説明する。
【0047】
(メインフロー)
制御部28によるドア開閉制御は、車両1が駐車され、エンジンが停止されると開始される。図4に示すように、ドア開閉制御で制御部28は、使用者の動作Ma,Mbを検出し(ステップS6~S13)、所定の動作Ma,Mbの成立又は不成立の判断が確定するまで(ステップS14)、検出部13A,13Bによって被検出物を繰り返し検出する(ステップS2,S3)。そして、所定の動作Ma,Mbが成立した場合のみ、ドア4の開閉(ステップS15)を行う。
【0048】
具体的には、制御部28は、まずステップS1で記憶部29を初期化し、前回のドア開閉制御で行った情報を消去する。続いて、ステップS2で個々の検出部13A,13Bの送波器14から超音波を送波し、ステップS3で個々の検出部13A,13Bの受波器15で超音波の反射波を受波する。具体的には、第1検出部13Aによって超音波の送波と受波を行い、第1検出部13Aの残響を完全に消滅させるために一定時間待機させた後、第2検出部13Bによって超音波の送波と受波を行い、検出部13A,13B間の誤検出を防止する。
【0049】
続いて、ステップS4で、検出部13A,13Bの検出結果(送波から受波までの時間)に基づいて、個々の検出部13A,13Bから被検出物までの距離Da,Dbを算出する。この際、制御部28には被検出物の数に応じた同数の検出結果が入力されるが、測定部30は、そのうちの最も早く返ってきた検出結果を用いて、被検出物までの距離Da,Dbを算出する。
【0050】
続いて、ステップS5で、距離Da,Dbを使用して被検出物のX座標を算出部33が算出した後、ステップS6で、今回の距離Da,Dbと記憶部29に記憶された前回の距離Da,Dbとを用い、これらの変化量から被検出物の移動速度Va,Vbを算出する。その後、ステップS7で、算出した移動速度Va,Vbの絶対値を用いて静止物判定処理を行い、続いてステップS8で、移動物及び静止物の判定結果を用いて検出区画設定処理を行った後、ステップS9で、算出した距離Da,Dbの補正処理を行う。
【0051】
続いて、ステップS10で、アプローチ領域17内の移動物を検出するアプローチ判定処理を実行した後、ステップS11で、使用者であるか否かの認証処理を実行する。その後、使用者の動作Ma,Mbを検出するために、ステップS12でスタート判定処理を実行し、ステップS13でトリガ判定処理を実行した後、ステップS14で戻り判定処理を実行する。そして、所定の動作Ma,Mbの成立判断が確定すると、ステップS15で、ドア4を開駆動又は閉駆動するための信号出力処理を実行する。
【0052】
(ステップS7:静止物判定処理)
図5に示すように、静止物判定処理では、ステップS6で算出した被検出物の移動速度Va,Vbの絶対値をそれぞれ判定値J3と比較し、検出した被検出物が移動物及び静止物のいずれであるのかを判定する。そして、静止物であると判定した被検出物を、距離情報と一緒に記憶部29に記憶する。
【0053】
具体的には、判定部31は、ステップS7-1で、第1検出部13Aの検出結果から得られた移動速度Vaの絶対値と判定値J3とを比較する。そして、移動速度Vaの絶対値が判定値J3未満である場合、ステップS7-2で、第1被検出物が静止物であるとの判定を下し、移動速度Vaの絶対値が判定値J3以上である場合、ステップS7-3で、第1被検出物が移動物であるとの判定を下す。続いて、判定部31は、ステップS7-4で、第2検出部13Bの検出結果から得られた移動速度Vbの絶対値と判定値J3とを比較する。そして、移動速度Vbの絶対値が判定値J3未満である場合、ステップS7-5で、第2被検出物が静止物であるとの判定を下し、移動速度Vbの絶対値が判定値J3以上である場合、ステップS7-6で、第2被検出物が移動物であるとの判定を下す。
【0054】
(ステップS8:検出区画設定処理)
図6に示すように、検出区画設定処理では、判定部31による被検出物が移動物であるか静止物であるかの判定結果に基づいて、検出区画22A~22Cをいずれかに1つに設定するとともに、境界線20A,20Bをいずれかに設定する。
【0055】
具体的には、制御部28は、ステップS8-1で、前回設定した検出区画22A~22Cを記憶部29に記憶する。続いて、ステップS8-2で、第1検出部13Aが検出した第1被検出物が移動物であることを示し、第2検出部13Bが検出した第2被検出物が静止物であることを示しているかを判断する。そして、この条件が一致する場合、ステップS8-3で、第1検出範囲16Aを検出区画22Aに設定した後、ステップS8-4で、スタート区域18とトリガ区域19の境界を設定距離D2A(45cm)の境界線20Aに設定する。
【0056】
ステップS8-2で条件が一致しない場合、制御部28は、ステップS8-5で、第1検出部13Aが検出した第1被検出物が静止物であることを示し、第2検出部13Bが検出した第2被検出物が移動物であることを示しているかを判断する。そして、この条件が一致する場合、ステップS8-6で、第2検出範囲16Bを検出区画22Bに設定した後、ステップS8-4で、スタート区域18とトリガ区域19の境界を境界線20Aに設定する。
【0057】
ステップS8-5で条件が一致しない場合、制御部28は、ステップS8-7で、第1検出部13Aが検出した第1被検出物が移動物であることを示し、第2検出部13Bが検出した第2被検出物も移動物であることを示しているかを判断する。そして、この条件が一致する場合、ステップS8-8で、両者の検出範囲16A,16Bの重複部分を検出区画22Cに設定した後、ステップS8-9で、スタート区域18とトリガ区域19の境界を設定距離D2B(60cm)の境界線20Bに設定する。
【0058】
ステップS8-7で条件が一致しない場合、つまり、第1検出部13Aが検出した第1被検出物が静止物であることを示し、第2検出部13Bが検出した第2被検出物も静止物であることを示す場合、制御部28は、検出区画22A~22Cの設定変更及び境界線20A,20Bの設定変更を行わない。これにより、前回の設定が維持される。但し、検出区画22A~22Cのうちのいずれにも設定しない「設定無し」としてもよい。
【0059】
(ステップS9:距離補正処理)
図7に示すように、距離補正処理では、制御部28は、ドア4の周辺に壁6が有る場合に、壁6を検出した検出部13A又は13Bの検出結果(距離Da,Db)を、移動物を検出した検出部13B又は13Aの検出結果(距離Db,Da)と同一値に置き換える。これにより、検出した壁6までの距離を、移動物の検出に用いないようにする。
【0060】
具体的には、制御部28は、ステップS9-1で、第2検出範囲16Bが検出区画22Bとして設定され、第1検出部13Aによって検出した距離Daが判断値J1(90cm)未満であるかを判断する。そして、この条件が一致する場合、ステップS9-2で、第1検出部13Aが検出した距離Daを第2検出部13Bが検出した距離Dbと同一値に置き換える。
【0061】
ステップS9-1で条件が一致しない場合、制御部28は、ステップS9-3で、第1検出範囲16Aが検出区画22Aとして設定され、第2検出部13Bによって検出した距離Dbが判断値J1(90cm)未満であるかを判断する。そして、この条件が一致する場合、ステップS9-4で、第2検出部13Bが検出した距離Dbを第1検出部13Aが検出した距離Daと同一値に置き換える。
【0062】
ステップS9-3で条件が一致しない場合、つまり、ドア4の周辺に壁6が無い場合、又は検出部13A,13Bが検出した被検出物がいずれも移動物である場合、制御部28は、第1検出部13Aが検出した距離Da、及び第2検出部13Bが検出した距離Dbのいずれも補正(置き換え)しない。
【0063】
(ステップS10:アプローチ判定処理)
図8に示すように、アプローチ判定処理では、制御部28は、使用者及び第三者を含む移動物がアプローチ領域17内に存在するか否かを検出する。
【0064】
具体的には、制御部28は、ステップS10-1で、ドア開閉制御のモードが初期状態であるか否かを判断する。初期状態である場合、ステップS10-2で、第1検出部13Aが検出した移動物までの距離Da又は第2検出部13Bが検出した移動物までの距離Dbが、設定距離D1(例えば120cm)未満であるか否かを判断する。距離Da又はDbが設定距離D1未満である場合、ステップS10-3で、ドア開閉制御のモードをアプローチ状態に設定してリターンする。
【0065】
一方、ステップS10-1でドア開閉制御のモードが初期状態でない場合、及びステップS10-2で距離Da,Dbがいずれも設定距離D1以上である場合、制御部28は、ドア開閉制御のモードを変更することなくリターンする。
【0066】
(ステップS11:認証処理)
図9に示すように、認証処理では、アプローチ領域17内に存在する移動物が、使用者であるのか使用者以外の第三者であるのかを判断する。そして、使用者であると判断した場合には所定の動作Ma,Mbを検出するモードに移行し、使用者以外であると判断した場合には初期状態にモードを戻す。
【0067】
具体的には、制御部28は、ステップS11-1で、ドア開閉制御のモードがアプローチ状態であるか否かを判断する。アプローチ状態である場合、ステップS11-2で、認証部26に対してキー認証を要求する。その後、ステップS11-3で、キー認証が成立(コードが合致)したとの判断が下されると、ステップS11-4で、ドア開閉制御のモードを認証完了状態に設定し、ステップS11-5で、表示部25を消灯状態から点灯状態に切り換えてリターンする。
【0068】
一方、ステップS11-1でドア開閉制御のモードがアプローチ状態でない場合、制御部28は、以後のステップを行うことなく、そのままリターンする。また、ステップS11-3で、キー認証が成立しない(コードが不一致)との判断が下された場合、ステップS11-6で、ドア開閉制御のモードを初期状態に設定してリターンする。
【0069】
(ステップS12:スタート判定処理)
図10に示すように、スタート判定処理では、設定部32が設定した検出区画22A~22Cのスタート区域18に使用者が移動するまで待機する。
【0070】
具体的には、制御部28は、ステップS12-1で、ドア開閉制御のモードが認証完了状態であるか否かを判断する。認証完了状態である場合、ステップS12-2で、検出部13A,13Bが検出した使用者までの距離Da,Dbが、いずれも設定距離D2(D2A,D2B)以上設定距離D3(例えば100cm)未満であるか否かを判断する。この条件が成立した場合、つまり使用者がスタート区域18に移動した場合、ステップS12-3で、ドア開閉制御のモードをスタート状態に設定し、ステップS12-4で、表示部25を点灯状態から遅い点滅状態に切り換えてリターンする。
【0071】
一方、ステップS12-1でドア開閉制御のモードが認証完了状態でない場合、及びステップS12-2で条件が成立しない場合、制御部28は、以後のステップを行うことなく、そのままリターンする。なお、使用者が定められた検出区画22A~22Cのスタート区域18以外の場所に位置する場合、ステップS12-2の条件は成立しない。
【0072】
ここで、図2Dのように検出範囲16A,16Bの重複部分が検出区画22Cに設定されている場合、使用者がスタート区域18に移動することで(Mb1)、検出部13A,13Bの実際の検出結果(距離Da,Db)はいずれもステップS12-2の条件を満たす。一方、図2Bのように第1検出範囲16Aが検出区画22Aに設定されている場合、使用者がスタート区域18に移動しても(Ma1)、第2検出部13Bによる実際の検出結果(距離Db)はステップS12-2の条件を満たさない。また、図2Cのように第2検出範囲16Bが検出区画22Bに設定されている場合、使用者がスタート区域18に移動しても(Ma1)、第1検出部13Aによる実際の検出結果(距離Da)はステップS12-2の条件を満たさない。しかし、本実施形態では、図2B及び図2Cの場合、ステップS9の距離補正処理で検出結果(距離Db,Da)が補正されているため、補正後の検出部13A,13Bの検出結果(距離Da,Db)はいずれもステップS12-2の条件を満たす。
【0073】
(ステップS13:トリガ判定処理)
図11に示すように、トリガ判定処理では、第1の動きを検出するまで、つまり設定部32が設定した検出区画22A~22Cのトリガ区域19に使用者が移動するまで待機する。
【0074】
具体的には、制御部28は、ステップS13-1で、ドア開閉制御のモードがスタート状態であるか否かを判断する。スタート状態である場合、ステップS13-2で、検出部13A,13Bが検出した使用者までの距離Da,Dbが、いずれも設定距離D4(例えば25cm)以上設定距離D2(D2A,D2B)未満であるか否かを判断する。この条件が成立した場合、つまり使用者がトリガ区域19に移動した場合、ステップS13-3で、ステップS5で算出したX座標を第1座標Xinとして記憶部29に記憶する。その後、ステップS13-4で、ドア開閉制御のモードをトリガ状態に設定し、ステップS13-5で、表示部25を遅い点滅状態から速い点滅状態に切り換えてリターンする。
【0075】
一方、ステップS13-1でドア開閉制御のモードがスタート状態でない場合、及びステップS13-2で条件が成立しない場合、制御部28は、以後のステップを行うことなく、そのままリターンする。なお、使用者が定められた検出区画22A~22Cのトリガ区域19以外の場所に位置する場合、ステップS13-2の条件は成立しない。
【0076】
前述のスタート判定処理の場合と同様に、図2Dのように検出範囲16A,16Bの重複部分が検出区画22Cに設定されている場合、使用者がトリガ区域19に移動することで(Mb2)、検出部13A,13Bの実際の検出結果(距離Da,Db)はいずれもステップS13-2の条件を満たす。一方、図2Bのように第1検出範囲16Aが検出区画22Aに設定されている場合、又は図2Cのように第2検出範囲16Bが検出区画22Bに設定されている場合、使用者がトリガ区域19に移動しても(Ma2)、検出部13A,13Bの実際の検出結果はステップS13-2の条件を満たさない。しかし、本実施形態では、ステップS9の距離補正処理で検出結果(距離Db,Da)が補正されているため、補正後の検出部13A,13Bの検出結果(距離Da,Db)はいずれもステップS13-2の条件を満たす。
【0077】
(ステップS14:戻り判定処理)
図12に示すように、戻り判定処理では、第2の動きを検出するまで、つまり使用者がトリガ区域19から離れるまで待機し、トリガ区域19から離れたときの使用者の位置に基づいて、所定の動作Ma,Mbの成立又は不成立の判断を下す。
【0078】
具体的には、制御部28は、ステップS14-1で、ドア開閉制御のモードがトリガ状態であるか否かを判断する。トリガ状態である場合、ステップS14-2で、検出部13A,13Bが検出した使用者までの距離Da,Dbが、いずれも設定距離D2(D2A,D2B)以上設定距離D3(例えば100cm)未満であるか否かを判断する。この条件が成立した場合、つまり使用者がトリガ区域19から離れた場合、ステップS14-3で、ステップS5で算出したX座標を第2座標Xoutとして記憶部29に記憶する。
【0079】
続いて、ステップS14-4で、第1座標Xinから第2座標Xoutを減算した距離の絶対値が判断値J2(例えば30cm)未満であるか否かを判断する。この条件が成立した場合、つまり使用者がスタート区域18に移動した場合、ステップS14-5で、ドア開閉制御のモードを戻り終了状態に設定し、ステップS14-6で、表示部25を速い点滅状態から消灯状態に切り換えてリターンする。また、ステップS14-4で条件が成立しない場合、ステップS14-7で、ドア開閉制御のモードを初期状態に設定してリターンする。
【0080】
一方、ステップS14-1でドア開閉制御のモードがトリガ状態でない場合、及びステップS14-2で条件が成立しない場合、制御部28は、以後のステップを行うことなく、そのままリターンする。なお、使用者が定められた検出区画22A~22Cのトリガ区域19から離れない限り、ステップS14-2の条件は成立しない。
【0081】
ここで、図2Dのように検出範囲16A,16Bの重複部分が検出区画22Cに設定されている場合、使用者がスタート区域18に移動することで(Mb3)、検出部13A,13Bの実際の検出結果(距離Da,Db)はいずれもステップS14-2の条件を満たす。また、ドア4の周辺に壁6が無い場合、所定の動作Mbはドア4に対して直交する方向に進退する一連の行動であるため、使用者による車幅方向の移動は殆ど無い。よって、検出部13A,13Bの実際の検出結果(距離Da,Db)はいずれもステップS14-4の条件を満たす。
【0082】
一方、図2Bのように第1検出範囲16Aが検出区画22Aに設定されている場合、又は図2Cのように第2検出範囲16Bが検出区画22Bに設定されている場合、使用者がスタート区域18に移動しても(Ma3)、検出部13A,13Bの実際の検出結果(距離Da,Db)はステップS14-2の条件を満たさない。しかし、本実施形態では、ステップS9の距離補正処理で検出結果(距離Db,Da)が補正されているため、補正後の検出部13A,13Bの検出結果はいずれもステップS14-2の条件を満たす。
【0083】
また、ドア4の周辺に壁6が有る場合、所定の動作Maはドア4に沿って進退する一連の行動である。スタート区域18からトリガ区域19に使用者が移動(Ma2)した後、スタート区域18へ使用者が戻るとき(Ma3)の移動量は、使用者が通り抜けするとき(Ma4)の移動量と比較して少ない。よって、前者の場合、補正後の検出部13A,13Bの検出結果(距離Da,Db)はいずれもステップS14-4の条件を満たす。これに対して、後者の場合、補正後の検出部13A,13Bの検出結果(距離Da,Db)はステップS14-4の条件を満たさない。よって、定められた検出区画22A又は22Bのスタート区域18に戻る動きと、通り抜けした場合の動きとを、確実に判断できる。
【0084】
(ステップS15:信号出力処理)
図13に示すように、信号出力処理では、ドア4が閉状態の場合には駆動部24を開作動させ、ドア4が開状態の場合には駆動部24を閉作動させる。
【0085】
具体的には、制御部28は、ステップS15-1で、ドア開閉制御のモードが戻り終了状態であるか否かを判断する。戻り終了状態である場合、ステップS15-2で、図示しない検出スイッチ等の信号によって、ドア4が閉鎖状態であるか否かを判断する。ドア4が閉鎖状態(図3A参照)の場合、ステップS15-3でドア開信号を駆動部24に出力し、ドア4が開放状態(図3B参照)の場合、ステップS15-4でドア閉信号を駆動部24に出力する。その後、ステップS15-5で、ドア開閉制御のモードを初期状態に設定してリターンする。
【0086】
一方、ステップS15-1でドア開閉制御のモードが戻り終了状態でない場合、制御部28は、以後のステップを行うことなく、そのままリターンする。
【0087】
以上のように構成された本実施形態のドア開閉装置10は、以下の特徴を有する。
【0088】
所定の動作Maには、スタート区域18からトリガ区域19への第1の動き(第1段階)と、トリガ区域19からスタート区域18への第2の動き(最後の段階)とが含まれている。よって、使用者の所定の動作Maを確実に検出できる。また、スタート区域18とトリガ区域19の境界線20A,20Bは、ドア4の周辺に壁6が有る場合と無い場合とで区別されている。よって、壁6によってドア4周辺の空き領域が狭い状態であっても、使用者の移動を確実に検出できる。また、検出部13A,13Bが検出した所定期間の距離Da,Dbの変化によって、移動物及び静止物のいずれであるのかを個別に判定するため、移動物と静止物を確実に判定できる。
【0089】
静止物までの距離が第1判断値J1よりも短い場合、第1検出部13A及び第2検出部13Bのうち、移動物を検出した方の距離Da又はDbだけを用いて、所定の動作Maのうちの第1の動きを検出する。具体的には、第1検出部13Aが移動物を検出し、第2検出部13Bが静止物を検出した場合、第1の動きの検出には第1検出部13Aが検出した距離Daだけを用い、第1検出部13Aが静止物を検出し、第2検出部13Bが移動物を検出した場合、第1の動きの検出には第2検出部13Bが検出した距離Dbだけを用いる。よって、壁6の存在によってドア4周辺の空き領域が狭い場合でも、使用者が所定の動作Maを行うためのスペース(距離)を確保できるため、ドア4を開閉できる。また、第1検出部13A及び第2検出部13Bとは別の検出部を増設する場合と比較して、ドア開閉装置10のコストダウンを図ることができる。
【0090】
第1検出部13Aが検出した第1被検出物が移動物であり、第2検出部13Bが検出した第2被検出物が静止物である場合、第2検出部13Bが検出した距離Dbを第1検出部13Aが検出した距離Daと同一値に置き換える。また、第1検出部13Aが検出した第1被検出物が静止物であり、第2検出部13Bが検出した第2被検出物が移動物である場合、第1検出部13Aが検出した距離Daを第2検出部13Bが検出した距離Dbと同一値に置き換える。よって、2個の検出部13A,13Bのうち、一方が検出した距離だけを用いる場合と、両方が検出した距離を用いる場合とで、異なる制御を行う必要がなく、同じプログラムでドア4を開閉できる。その結果、ドア開閉制御に関するプログラムを簡素化でき、コストを低減できる。
【0091】
第1検出部13Aが検出した第1被検出物が移動物であり、第2検出部13Bが検出した第2被検出物が静止物である場合、第1検出範囲16Aを検出区画22Aに設定し、第1検出部13Aが検出した第1被検出物が静止物であり、第2検出部13Bが検出した第2被検出物が移動物である場合、第2検出範囲16Bを検出区画22Bに設定する設定部32を備えるため、使用者の動作Maを確実に検出できる。
【0092】
第1検出部13Aが検出した距離Daと、第2検出部13Bが検出した距離Dbとを用い、移動物の座標を算出する算出部33を備える。そして、制御部28は、所定の動作Maのうち、最後の段階の前の段階(第1の動き)を行ったときの第1座標Xinと、最後の段階(第2の動き)を行ったときの第2座標Xoutとの差の絶対値を第2判断値J2と比較し、所定の動作Maの成立又は不成立の判断を行う。よって、使用者が車幅方向に通り抜けることによって、ドア4が開閉されるという誤動作を効果的に防止できる。
【0093】
(第2実施形態)
図14及び図15Aは第2実施形態のドア開閉装置10を示す。この第2実施形態では、図14に示すように制御部28が算出部を備えていない点、及び図15Aに示すように第1検出部13Aと第2検出部13Bの間隔Lが第1実施形態よりも広い点で、第1実施形態と相違する。その他の構成は第1実施形態の構成と同様である。
【0094】
第1検出範囲16Aと第2検出範囲16Bの重複部分は、第1検出部13Aと第2検出部13Bの間隔Lが広くなるに従って少なく(狭く)なり、間隔Lが狭くなるに従って多く(広く)なる。また、第2実施形態の間隔Lは第1実施形態の間隔Lよりも広いため、両方の検出部13A,13Bで被検出物を検出可能な領域は、第1実施形態よりも少なくなる。よって、所定の動作Ma,Mbのうち、第1の動き(第1の段階)を行ったとき(Ma2,Mb2)の座標と、第2の動き(最後の段階)を行ったとき(Ma3,Mb3)の座標を算出できる領域が狭くなり、座標の差として表れ難くなる。そのため、所定の動作Ma,Mbの成立及び不成立を座標の差によって判断することは困難である。
【0095】
そこで、第2実施形態のドア開閉制御では、所定の動作Ma,Mbの成立及び不成立の判断を、検出区画22A~22Cの比較によって行う。具体的には、制御部28は、第1の動きを行ったとき(Ma2,Mb2)の検出区画(第1検出区画)22A~22Cと、第2の動きを行ったときの検出区画(第2検出区画)22A~22Cとを比較する。そして、第1検出区画22A~22Cと第2検出区画22A~22Cが同じ場合には所定の動作Ma,Mbが成立したと判断し、第1検出区画22A~22Cと第2検出区画22A~22Cが異なる場合には所定の動作Ma,Mbが不成立であると判断する。これにより、使用者の通り抜けによってドア4が開閉されるという誤動作を防止する。
【0096】
図15B及び図15Cに示すように、車両1の背後を通り抜ける場合の使用者の動きは直線的(Ma1、Ma2及びMa4)であり、その速度は進退する動きMa1、Ma2及びMa3よりも速い。よって、使用者が通り抜けする場合、両者の検出範囲16A,16Bのうちの一方から他方へ移動することになる。よって、第1の動きを行ったときのMa2の検出区画22A,22Bと、第2の動きを行ったときのMa3又はMa4の検出区画22A,22Bとを比較することで、通り抜けであるか否かを判断できる。
【0097】
図15Dに示すように、ドア4の周辺に壁6が無い場合、所定の動作Mbはドア4に対して直交する方向への進退であるため、使用者による車幅方向の移動は殆ど無い。一方、使用者が後方から接近して横向きに移動した場合、設定部32による設定は、検出区画22Cから検出区画22A又は22Bに変わる。そのため、重複部分を検出区画22Cとした場合でも、第1の動きを行った後の第2検出区画22A~22Cと比較することで、通り抜けであるか否かを判断でき、ドア開閉装置10の誤動作を防止できる。
【0098】
次に、制御部28による第2実施形態のドア開閉制御について、図16から図18に示すフローチャートに従って説明する。
【0099】
図4を併せて図16を参照すると、第2実施形態のメインフローは、ステップS5の被検出物のX座標の算出を無くした点、ステップS13のトリガ判定処理の一部を変更した点、及びステップS14の戻り判定処理の一部を変更した点で、第1実施形態と相違する。その他の点は第1実施形態と同様である。
【0100】
つまり、ステップS4で、検出部13A,13Bの検出結果に基づいて、個々の検出部13A,13Bから被検出物までの距離Da,Dbを算出した後、ステップS6で、今回の距離Da,Dbと記憶部29に記憶された前回の距離Da,Dbとを用い、これらの変化量から被検出物の移動速度Va,Vbを算出する。なお、第1実施形態と同様に、所定回数分の検出結果の平均の傾き(距離の変化率)を移動速度Va,Vbとして算出してもよい。
【0101】
図11を併せて図17を参照すると、第2実施形態のトリガ判定処理(ステップS13’)は、第1座標Xinを記憶部29に記憶するステップS13-3を無くした点で第1実施形態と相違する。その他の点は第1実施形態と同様である。つまり、ステップS13-2で条件が成立した場合、第1座標Xinを記憶することなく、ステップS13-4でドア開閉制御のモードをトリガ状態に設定する。
【0102】
図12を併せて図18を参照すると、第2実施形態の戻り判定処理(ステップS14’)は、第2座標Xoutを記憶部29に記憶するステップS14-3を無くした点、ステップS14-4’で、座標ではなく検出区画22A~22Cを比較する点で、第1実施形態と相違する。その他の点は第1実施形態と同様である。
【0103】
つまり、ステップS14-2で条件が成立した場合、第2座標Xoutを記憶せず、ステップS14-4’で、第1の動きを行ったとき(Ma2又はMb2)の第1検出区画22A~22Cと、そこから離れたとき(Ma3,Mb3又はMa4,Mb4)の第2検出区画22A~22Cとを比較する。そして、第1検出区画22A~22Cと第2検出区画22A~22Cが同じ場合、ステップS14-5でドア開閉制御のモードを戻り終了状態に設定し、第1検出区画22A~22Cと第2検出区画22A~22Cが異なる場合、ステップS14-7でドア開閉制御のモードを初期状態に設定する。
【0104】
このようにした第2実施形態のドア開閉装置10では、第1実施形態と同様に、ドア4の周辺の壁6の有無に拘わらず、使用者の移動を確実に検出できる。そして、第1の動き(最後の段階の前の段階)を行ったときの第1検出区画22A~22Cと、第2の動き(最後の段階)を行ったときの第2検出区画22A~22Cとが一致するか否かによって、所定の動作Ma,Mbの成立又は不成立を判断できる。よって、車幅方向に通り抜けた使用者の動きによって、ドア4が開閉されることを防止できる。
【0105】
なお、本発明のドア開閉装置10は、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0106】
例えば、被検出物を検出する検出ユニット12の検出部13A,13Bには、既設のバックソナーセンサの一部を利用したが、専用の超音波センサを配置してもよい。また、検出部13A,13Bは超音波センサに限られず、被検出物までの距離を測定できるセンサであれば、必要に応じて変更が可能である。
【0107】
ドア開閉装置10によって制御するドア4は、車体2の側面に配置された乗降用のヒンジ式ドアやスライド式ドアであってもよい。
【符号の説明】
【0108】
1…車両
2…車体
3…リアバンパー
4…ドア
6…壁
10…ドア開閉装置
12…検出ユニット(検出手段)
13A,13B…検出部
14…送波器
15…受波器
16A,16B…検出範囲
17…アプローチ領域
18…スタート区域
19…トリガ区域
20A…第1境界線
20B…第2境界線
21…判断線(第1判断値)
22A~22C…検出区画
24…駆動部
25…表示部
26…認証部
28…制御部
29…記憶部
30…測定部
31…判定部
32…設定部
33…算出部
L…間隔
Ma,Mb…所定の動作
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図15C
図15D
図16
図17
図18