(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-28
(45)【発行日】2023-01-12
(54)【発明の名称】免疫原性組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 39/145 20060101AFI20230104BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20230104BHJP
A61P 31/16 20060101ALI20230104BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20230104BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230104BHJP
【FI】
A61K39/145 ZNA
A61K39/39
A61P31/16
A61P37/04
A61P43/00 107
(21)【出願番号】P 2019511574
(86)(22)【出願日】2017-08-25
(86)【国際出願番号】 GB2017052510
(87)【国際公開番号】W WO2018037246
(87)【国際公開日】2018-03-01
【審査請求日】2020-08-20
(32)【優先日】2016-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516245900
【氏名又は名称】オックスフォード ユニバーシティ イノベーション リミテッド
【氏名又は名称原語表記】OXFORD UNIVERSITY INNOVATION LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トンプソン, クレイグ
(72)【発明者】
【氏名】グプタ, スネトラ
【審査官】吉川 阿佳里
(56)【参考文献】
【文献】Journal of Virology,2014年,Vol. 88, No. 13,p. 7130-7144
【文献】Journal of Virology,2012年,Vol. 86, No. 21,p. 11686-11697
【文献】Journal of Virology,2014年,Vol. 88, No. 12,p. 6743-6750
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00-39/44
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意に1種以上の薬学的に許容される担体、アジュバント、賦形剤又は希釈剤と共に、少なくとも5個の異なるウイルス様粒子(VLP)を
含み、各VLPが独立に配列番号13~17のポリペプチドで構成される1個以上のホモ三量体を含む、
A型インフルエンザ感染症を処置又は防止するための免疫原性組成物。
【請求項2】
下記を満たす、請求項1に記載の免疫原性組成物。
前記ポリペプチドの1個以上が赤血球凝集素N末端stalk領域に由来する一連の隣接アミノ酸を更に含む
【請求項3】
任意に1種以上の薬学的に許容される担体、アジュバント、賦形剤又は希釈剤と共に、少なくとも5個の異なるウイルス様粒子(VLP)を含み、各VLPが独立に配列番号13~17のポリペプチドで構成される1個以上のホモ三量体を含む、A型インフルエンザ感染症を処置又は防止するためのキット。
【請求項4】
請求項1
または2に記載の免疫原性組成物及びアジュバントを含む、ワクチン組成物。
【請求項5】
治療に使用される、又は医薬品として使用される、請求項1
または2に記載の免疫原性組成物
、請求項3に記載のキット、又は請求項4に記載のワクチン組成物。
【請求項6】
(i)対象におけるインフルエンザ感染症の防止用若しくは処置用、又は
(ii)対象におけるインフルエンザ抗原に対するT細胞若しくはB細胞応答の誘導用の、請求項1
または2に記載の免疫原性組成物
、請求項3に記載のキット、又は請求項4に記載のワクチン組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2個以上のポリペプチドを含む免疫原性組成物に関する。本発明は、ポリペプチドをコードする核酸分子及びベクター、並びにインフルエンザの防止又は処置のために組成物、核酸分子及びベクターを使用する方法も提供する。
【背景技術】
【0002】
季節性インフルエンザは、重篤な疾病及び死を引き起こす重大な公衆衛生問題である。世界的に季節性インフルエンザは、3~5百万の重篤な疾病及び250,000~500,000人の死を引き起こすと推定される(非特許文献1)。人口統計学的に合併症リスクが最も高いのは、2歳未満の小児、65歳を超える成人、妊婦、及び糖尿病、又は弱い免疫系などのある種の医学的症状を有するあらゆる年齢の人々である(非特許文献2)。発展途上国における子供の死の大部分がインフルエンザに関連すると推定される。季節性インフルエンザは、労働者の長期欠勤及び生産性の低下も高いレベルで引き起こす。
【0003】
インフルエンザパンデミックは、保菌動物由来の独特なインフルエンザ株が人間集団において広範に流布し始めると散発的に発生する。最近のインフルエンザパンデミックは2009年に起こり、35歳未満の個体における重篤なインフルエンザ疾病及び入院が増加した(非特許文献3、4)。1918年のインフルエンザパンデミックは、史上最も重大なパンデミックであり、5000万~1億人の死を引き起こした。新しいパンデミック性インフルエンザ株の発生が懸念されている。
【0004】
インフルエンザ感染由来の疾病を防止する最も有効な方法はワクチン接種である。現在、インフルエンザに対するワクチン接種は、A型インフルエンザのH1N1及びH3N2亜型の最近の流行株からなる三価又は四価(quatrivalent)ワクチンを必要とし、1又は2種のB型インフルエンザ株も含む(非特許文献5)。インフルエンザの抗原進化が急速であるため、ワクチンを常に更新しなければならず、しばしば時間的制約のために、次のインフルエンザ流行期に対して誤ったワクチン株が選択される。これらの理由のため、通常の(convention)三価ワクチンは、有効性10~60%と推定され、リスク群の予防接種が毎年行われている(非特許文献6、7)。
【0005】
その結果、現在のインフルエンザワクチンを改良する明確な社会的及び経済的利点が存在する。これは、自社の新しいインフルエンザワクチンを開発しているGSK、Pfizerなどの製薬会社によって認識されている。こうした手法は、一般に、免疫選択が弱く、したがって「免疫劣性」であるエピトープを標的にする。
【0006】
インフルエンザウイルスは、現在、(i)高可変性の高免疫原性(及び防御性)エピトープ、及び(ii)低免疫原性の不変エピトープを含むと概念化されている。これらは、同時に、絶えず更新されるこれらの部位に対するワクチンを必要とする高度可変エピトープ領域の変化を、ウイルス集団が徐々に増やしながら獲得する「antigenic drift」の理論の骨格を形成する。唯一の別の選択肢は、自然効力の低い不変エピトープに対する人工的追加免疫と見られている。
【0007】
本発明者らは、それに対して、インフルエンザウイルスが可変性の低い高免疫原性エピトープも含み、これらの防御エピトープを同定することによって汎用ワクチンを構築することを提案する。この考えは、「antigenic thrift」として知られるインフルエンザ進化の代替理論によって支持され、ウイルス動態は、共通エピトープに対する既存の免疫によって推進されるが、こうしたエピトープの存在は、依然疑わしく、ワクチン接種におけるそれらの使用はこれまで議論されなかった。
【0008】
バイオインフォマティクス、構造分析及び血清学的分析を併用して、主要なインフルエンザ抗原において強力な免疫選択下にある限定された可変性の1種のエピトープである赤血球凝集素(HA)が今回同定され、特徴づけられた。
【0009】
HAは、インフルエンザウイルスにおける主要な表面抗原である。それは、シアル酸に結合し、膜融合を惹起し、エンドサイトーシスを引き起こす。それは、一般に565/566アミノ酸長の三量体タンパク質である。各モノマーは、headドメイン及びstemドメインからなる。
【0010】
今回同定されたエピトープは、強力な免疫選択下にあり、したがって「免疫優性」である。これは、可変性が限定されたこのエピトープを標的にすることによってH1N1インフルエンザ株の大部分に対して防御する新しい「汎用」インフルエンザワクチンの設計を可能にした。
【0011】
その結果、本発明のワクチンは、従来の三価ワクチン及び開発中の他のインフルエンザワクチンを上回る幾つかの利点を有する。
【0012】
これらの利点としては、以下が挙げられる。
(i)流行インフルエンザ株による感染は、ワクチン防御を潜在的に損なう代わりに強化する。
(ii)本ワクチンは、開発中の他の「汎用」ワクチンよりも免疫原性が高く、防御の閾値がより低く、防御の寿命がより長いはずである。
(iii)それは、1~3回しか投与する必要がないはずである(すなわち、初回免疫と追加免疫1回、又は初回免疫と追加免疫2回)。
(iv)本ワクチンの由来となる理論的及び実験的枠組みの示唆するところによれば、H1N1インフルエンザは、提案するワクチンによって付与される防御を免れる可能性が低い。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【文献】Lozano, R. et al., 2012. Global and regional mortality from 235 causes of death for 20 age groups in 1990 and 2010 : a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2010. Lancet, 380, pp. 2095-2128.
【文献】Mertz, D., Hyong, T. & Johnstone, J., 2013. Populations at risk for severe or complicated influenza illness : systematic review and meta-analysis. British Medical Journal, 5061(August), pp.1-15.
【文献】Presanis, A.M. et al., 2011. Changes in severity of 2009 pandemic A / H1N1 influenza in England : a Bayesian evidence synthesis. British Medical Journal, (343), pp.1-14.
【文献】Manicassamy, B. et al., 2010. Protection of mice against lethal challenge with 2009 H1N1 influenza A virus by 1918-like and classical swine H1N1 based vaccines. PLoS Pathogens, 6(1).
【文献】WHO 2016. Recommended composition of influenza virus vaccines for use in the 2016-2017 northern hemisphere influenza season.
【文献】Treanor, J.J. et al., 2012. Effectiveness of Seasonal Influenza Vaccines in the United States During a Season With Circulation of All Three Vaccine Strains., pp.1-9.
【文献】Belongia, E.A. et al., 2009. Effectiveness of Inactivated Influenza Vaccines Varied Substantially with Antigenic Match from the 2004-2005 Season to the 2006-2007 Season Linked references are available on JSTOR for this article : Effectiveness of Inactivated Influenza Vaccines Varied. The Journal of Infectious Disease, 199(2), pp.159-167.
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
したがって、本発明の一目的は、1つ以上のA型インフルエンザ亜型に対して、好ましくはH1N1亜型に対して、防御を付与することができるインフルエンザワクチン組成物を提供することである。
【0015】
一実施形態においては、したがって、本発明は、任意に1種以上の薬学的に許容される担体、アジュバント、賦形剤又は希釈剤と共に、2個以上のポリペプチドを含む免疫原性組成物であって、各ポリペプチドが独立に隣接アミノ酸の第1の領域を含み、
(a)第1の領域のアミノ酸配列がA型インフルエンザ赤血球凝集素headドメインに対して少なくとも80%の配列相同性を有し、
(b)第1の領域が配列番号9の以下の位置に対応する位置に1つ以上のアミノ酸置換を有し、
位置83がEである
位置85が負電荷アミノ酸である
位置146がT、N、I又はAである
位置147が正電荷アミノ酸若しくはIである、又は存在しない
位置148がGである
位置149がVである
位置151がAである
位置154がS又はPである
位置155がHである
位置156が正電荷アミノ酸又はA又はG又はN又はEである
位置157が正電荷アミノ酸又はA又はGである
位置158が正電荷アミノ酸又はA又はS又はN又はC又はEである
位置159がK又はA又はS又はN又はCである
位置163が正電荷アミノ酸である、
2個以上のポリペプチドのアミノ酸配列が異なり、組成物がA型インフルエンザウイルスに対する対象において抗体を誘導することができる、
免疫原性組成物を提供する。
【0016】
本発明は、ポリペプチドのアミノ酸配列が第1の領域を含み、
(a)第1の領域のアミノ酸配列が、A型インフルエンザ亜型H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、H17又はH18の赤血球凝集素headドメイン、好ましくはA型インフルエンザ亜型H1、H5、H6、H9又はH11の赤血球凝集素headドメインに対して少なくとも80%の配列相同性を有し、
(b)第1の領域が配列番号9の以下の位置に対応する位置に1つ以上のアミノ酸置換を有し、
位置83がEである
位置85が負電荷アミノ酸である
位置146がT、N、I又はAである
位置147が正電荷アミノ酸若しくはIである、又は存在しない
位置148がGである
位置149がVである
位置151がAである
位置154がS又はPである
位置155がHである
位置156が正電荷アミノ酸又はA又はG又はN又はEである
位置157が正電荷アミノ酸又はA又はGである
位置158が正電荷アミノ酸又はA又はS又はN又はC又はEである
位置159がK又はA又はS又はN又はCである
位置163が正電荷アミノ酸である、
ポリペプチドも提供する。
【0017】
本発明は、任意に1種以上の薬学的に許容される担体、アジュバント、賦形剤又は希釈剤と共に、こうしたポリペプチドを含む組成物(好ましくは、組成物がA型インフルエンザウイルスに対する対象において抗体を誘導することができる免疫原性組成物)も提供する。
【0018】
本発明は、こうしたポリペプチドをコードする核酸分子(好ましくはDNA分子)も提供し、好ましくはDNA分子はベクター又はプラスミドである。
【0019】
好ましい一実施形態においては、(b)第1の領域が配列番号9の以下の位置に対応する位置に1つ以上のアミノ酸置換を有し、
位置83がEである
位置85がE又はDである
位置146がT又はNである
位置147がR若しくはK若しくはIである、又は存在しない
位置148がGである
位置149がVである
位置151がAである
位置154がS又はPである
位置155がHである
位置156がA又はG又はK又はN又はEである
位置157がA又はGである
位置158がA又はKである
位置159がA、K、C、N又はSである
位置163がK又はRである。
【0020】
別の好ましい一実施形態においては、(b)第1の領域が配列番号9の以下の位置に対応する位置に1つ以上のアミノ酸置換を有し、
位置83がEである
位置85が負電荷アミノ酸である
位置146がT、N、I又はAである
位置147が正電荷アミノ酸である、
位置148がGである
位置149がVである
位置151がAである
位置154がS又はPである
位置155がHである
位置156がAである
位置157がGである
位置158がK又はA又はS又はN又はCである
位置159がK又はA又はS又はN又はCである
位置163が正電荷アミノ酸である。
【0021】
別の好ましい一実施形態においては、(b)第1の領域が配列番号9の以下の位置に対応する位置に1つ以上のアミノ酸置換を有し、
位置83がEである
位置85がEである
位置146がNである
位置147がRである
位置148がGである
位置149がVである
位置151がAである
位置154がPである
位置155がHである
位置156がAである
位置157がGである
位置158がAである
位置159がKである
位置163がKである。
【0022】
好ましくは、1個のポリペプチドの第1の領域は、配列番号13で与えられるアミノ酸配列を含む、又はからなる。
【0023】
別の好ましい一実施形態においては、(b)第1の領域が配列番号9の以下の位置に対応する位置に1つ以上のアミノ酸置換を有し、
位置83がEである
位置85が負電荷アミノ酸である
位置146がNである
位置147がIである
位置148がGである
位置149がVである
位置151がAである
位置154がSである
位置155がHである
位置156がK又はAである
位置157がGである
位置158がA又はKである
位置159がK又はSである
位置163が正電荷アミノ酸である。
【0024】
別の好ましい一実施形態においては、(b)第1の領域が配列番号9の以下の位置に対応する位置に1つ以上のアミノ酸置換を有し、
位置83がEである
位置85がEである
位置146がNである
位置147がIである
位置148がGである
位置149がVである
位置151がAである
位置154がSである
位置155がHである
位置156がAである
位置157がGである
位置158がKである
位置159がSである
位置163がKである。
【0025】
好ましくは、1個のポリペプチドの第1の領域は、配列番号14で与えられるアミノ酸配列を含む、又はからなる。
【0026】
別の好ましい一実施形態においては、(b)第1の領域が配列番号9の以下の位置に対応する位置に1つ以上のアミノ酸置換を有し、
位置83がEである
位置85が負電荷アミノ酸である
位置146がTである
位置147が正電荷アミノ酸である
位置148がGである
位置149がVである
位置151がAである
位置154がSである
位置155がHである
位置156が正電荷アミノ酸又はA又はGである
位置157が正電荷アミノ酸又はA又はGである
位置158がKである
位置159がS又はCである
位置163が正電荷アミノ酸である。
【0027】
別の好ましい一実施形態においては、(b)第1の領域が配列番号9の以下の位置に対応する位置に1つ以上のアミノ酸置換を有し、
位置83がEである
位置85がEである
位置146がTである
位置147がRである
位置148がGである
位置149がVである
位置151がAである
位置154がSである
位置155がHである
位置156がKである
位置157がGである
位置158がKである
位置159がSである
位置163がKである。
【0028】
好ましくは、1個のポリペプチドの第1の領域は、配列番号15で与えられるアミノ酸配列を含む、又はからなる。
【0029】
別の好ましい一実施形態においては、(b)第1の領域が配列番号9の以下の位置に対応する位置に1つ以上のアミノ酸置換を有し、
位置83がEである
位置85が負電荷アミノ酸である
位置146がTである
位置147が正電荷アミノ酸である
位置148がGである
位置149がVである
位置151がAである
位置154がSである
位置155がHである
位置156がNである
位置157がGである
位置158が正電荷アミノ酸である
位置159がSである
位置163が正電荷アミノ酸である。
【0030】
別の好ましい一実施形態においては、(b)第1の領域が配列番号9の以下の位置に対応する位置に1つ以上のアミノ酸置換を有し、
位置83がEである
位置85がEである
位置146がTである
位置147がKである
位置148がGである
位置149がVである
位置151がAである
位置154がSである
位置155がHである
位置156がNである
位置157がGである
位置158がKである
位置159がSである
位置163がRである。
【0031】
好ましくは、1個のポリペプチドの第1の領域は、配列番号16で与えられるアミノ酸配列を含む、又はからなる。
【0032】
別の好ましい一実施形態においては、(b)第1の領域が配列番号9の以下の位置に対応する位置に1つ以上のアミノ酸置換を有し、
位置83がEである
位置85が負電荷アミノ酸である
位置146がT又はNである
位置147が存在しない
位置148がGである
位置149がVである
位置151がAである
位置154がS又はPである
位置155がHである
位置156がN又はEである
位置157がGである
位置158がK又はEである
位置159がSである
位置163が正電荷アミノ酸である。
【0033】
別の好ましい一実施形態においては、(b)第1の領域が配列番号9の以下の位置に対応する位置に1つ以上のアミノ酸置換を有し、
位置83がEである
位置85がEである
位置146がTである
位置147が存在しない
位置148がGである
位置149がVである
位置151がAである
位置154がSである
位置155がHである
位置156がNである
位置157がGである
位置158がKである
位置159がSである
位置163がRである。
【0034】
好ましくは、1個のポリペプチドの第1の領域は、配列番号17で与えられるアミノ酸配列を含む、又はからなる。
【0035】
一実施形態においては、本発明は、免疫原性組成物に関する。
【0036】
本明細書では「免疫原性」という用語は、A型インフルエンザ亜型に対して特異的免疫応答を誘発する能力を指すものとする。この応答は、例えば、本発明の一組成物が適切な用量で、かつ適切なアジュバントを含む/必要とする可能性がある適切な処方で、投与されたときのものであり得る。最初の用量と類似した又はそれ未満の用量を含む追加免疫が、必要な免疫原性応答を得るのに必要となる可能性がある。
【0037】
特に、本発明の免疫原性組成物は、A型インフルエンザウイルスに対する対象において抗体(好ましくは中和抗体)を誘導することができる。
【0038】
好ましくは、本発明の免疫原性組成物は、A型インフルエンザウイルスに対する対象における防御を提供することができる。
【0039】
より好ましくは、本発明の免疫原性組成物は、H1N1 A型インフルエンザ亜型に対する対象における抗体(好ましくは中和抗体)を誘導することができる。
【0040】
対象(例えば、ヒト対象)において中和抗体を誘導する本発明の一組成物の能力は、組成物が投与された対象の血液から血清を精製することによって分析されうる。
【0041】
抗体は、ELISA又はpseudotype micro-neutralisation assay(pMN)によって測定することができる。ELISAは、これら2つのアッセイのうち最も感度が高く、すべての抗体を定量化する。それに対して、pMNは感度が低いが、中和抗体を定量化する。
【0042】
本明細書では「インフルエンザ」という表現は、インフルエンザウイルス、好ましくはA型インフルエンザウイルス、より好ましくはA型インフルエンザウイルスH1亜型、最も好ましくはA型インフルエンザウイルスH1N1亜型に関する。
【0043】
免疫原性組成物は、1個、2個又はそれ以上のポリペプチドを含む。これら2個以上のポリペプチドのアミノ酸配列は、好ましくは異なる。
【0044】
組成物は、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の異なるポリペプチドを含むことができる。
【0045】
好ましくは、組成物は、2、3、4又は5個の異なるポリペプチド、より好ましくは3個の異なるポリペプチドを含む。
【0046】
本発明の配列は、A型インフルエンザ赤血球凝集素タンパク質のheadドメインに由来する、又は基づく。
【0047】
天然に存在する赤血球凝集素タンパク質は、3個のポリペプチドのホモ三量体である。
【0048】
本発明の好ましい一組成物においては、組成物は、ホモ三量体を形成する本明細書に定義した3個のポリペプチドを含む。組成物は、本明細書に定義したポリペプチドの1個を超える(例えば、2、3、4、又は5個の)異なるホモ三量体を含むことができる。
【0049】
別の好ましい一実施形態においては、本発明の3個のポリペプチドは、組成物中でヘテロ三量体を形成する。組成物は、本明細書に定義したポリペプチドの1個を超える(例えば、2、3、4、又は5個の)異なるヘテロ三量体を含むことができる。
【0050】
各ポリペプチドは独立に、隣接アミノ酸の第1の領域を含む。この領域は、隣接する一連の共有結合したアミノ酸である。
【0051】
一実施形態においては、第1の領域のアミノ酸配列は、A型インフルエンザ赤血球凝集素(HA)headドメインに対して少なくとも80%の配列相同性を有する。
【0052】
その意図は、この第1の領域がA型インフルエンザ赤血球凝集素headドメインのコンフォーメーションをとることである。
【0053】
赤血球凝集素headドメインは、例えば、任意のA型インフルエンザ亜型、例えば、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、H17又はH18に由来することができる。
【0054】
好ましくは、赤血球凝集素headドメインは、インフルエンザA H1、H5、H6、H9又はH11亜型に由来する。
【0055】
一実施形態においては、赤血球凝集素headドメインは、インフルエンザA H1亜型に由来する。
【0056】
一実施形態においては、赤血球凝集素headドメインは、インフルエンザA H5亜型に由来する。
【0057】
一実施形態においては、赤血球凝集素headドメインは、インフルエンザA H6亜型に由来する。
【0058】
一実施形態においては、赤血球凝集素headドメインは、インフルエンザA H9亜型に由来する。
【0059】
一実施形態においては、赤血球凝集素headドメインは、インフルエンザA H11亜型に由来する。
【0060】
好ましくは、インフルエンザA N亜型は、N1である。
【0061】
H1、H5、H6及びH11赤血球凝集素ポリペプチドのコンセンサスアミノ酸配列を本明細書ではそれぞれ配列番号9~12として示す。H9赤血球凝集素ポリペプチドのコンセンサスアミノ酸配列を本明細書では配列番号23として示す。
【0062】
H9配列は、必要な変更を加えて、本明細書に開示されるH1、H5、H6又はH9の実施形態の代わりに本明細書で使用することができる。
【0063】
本明細書で使用するアミノ酸配列番号は、配列番号9で示されるA H1型インフルエンザ赤血球凝集素headドメインに付与される番号に基づく。
【0064】
なお、A H1型インフルエンザ赤血球凝集素ポリペプチドに付番する方法は3つあり、本明細書を通して線形の付番が用いられ、Met=1である。
【0065】
HAポリペプチドは、2つの領域、HA1領域及びHA2領域を含む。これらの領域は、潜在的切断部位によって分離される。
【0066】
H1切断部位コンセンサス配列はPSIQSR/GLF(配列番号24)であり、H5切断部位コンセンサス配列はPQRKKR/GLF(配列番号25)であり、H6切断部位コンセンサス配列はPQIETR/GLF(配列番号26)であり、H9切断コンセンサス配列はPSRSSR/GLF(配列番号27)であり、H11切断部位コンセンサス配列はPAIATR/GLF(配列番号28)である。
【0067】
HA1とHA2へのHA0の切断は、R/GLF間で生じ、プロテアーゼによって行われる。上記切断部位は、すべて一塩基として記述される。一部のH5ウイルスにおいては、多塩基切断部位が存在し、これは、重要な位置の塩基位置に複数のアルギニン残基(R)及び/又はリジン残基(K)を有することによって、一塩基部位とは異なる。
【0068】
切断部位の更なる詳細は、Sunら、Journal of Virology、2010年9月、Vol.84、No.17、p.8683~8690に見つけることができる。
【0069】
HA1領域は、stalkの1~60個のアミノ酸、続いてheadドメイン、次いで追加のstalkのアミノ酸を含む。HA2領域は、stalkのアミノ酸のみを含む。
【0070】
赤血球凝集素のheadドメインは、HA1領域内の2個のシステインの間に存在すると定義される。第1のシステインは一般に位置58、59又は60であり、第2のシステインは一般に290、291又は292である。
【0071】
A H1型インフルエンザ赤血球凝集素においては、これらのシステインは、一部のH1赤血球凝集素において位置147のアミノ酸の欠如のために位置59及び291/292にある。
【0072】
H6赤血球凝集素では、headドメインは、位置58と292の間の配列に対応する。
【0073】
しかし、H5及びH11赤血球凝集素では、headドメインはそれぞれ位置58~290の間の領域に対応する。
【0074】
H9赤血球凝集素では、headドメインは位置60~290の間の領域に対応する。
【0075】
H1、H5、H6及びH11赤血球凝集素headドメインのコンセンサスアミノ酸配列を本明細書ではそれぞれ配列番号1~4として示す。
【0076】
一部の実施形態においては、第1の領域のアミノ酸配列は、配列番号1に対して少なくとも80%、85%、90%又は95%の配列相同性を有する。
【0077】
一部の実施形態においては、第1の領域のアミノ酸配列は、配列番号2に対して少なくとも80%、85%、90%又は95%の配列相同性を有する。
【0078】
一部の実施形態においては、第1の領域のアミノ酸配列は、配列番号3に対して少なくとも80%、85%、90%又は95%の配列相同性を有する。
【0079】
一部の実施形態においては、第1の領域のアミノ酸配列は、配列番号4に対して少なくとも80%、85%、90%又は95%の配列相同性を有する。
【0080】
一部の実施形態においては、第1の領域のアミノ酸配列は、配列番号9の位置83、85、146~149、151、154~159及び163に対応する位置以外の位置におけるA型インフルエンザ赤血球凝集素headドメインに対して少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列相同性を有する。
【0081】
一部の実施形態においては、第1の領域のアミノ酸配列は、配列番号9の位置83、85、146~149、151、154~159及び163に対応する位置以外の位置における(好ましくは配列番号1の)A H1型インフルエンザ赤血球凝集素headドメインに対して少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列相同性を有する。
【0082】
一部の実施形態においては、第1の領域のアミノ酸配列は、配列番号9の位置83、85、146~149、151、154~159及び163に対応する位置以外の位置における(好ましくは配列番号2の)A H6型インフルエンザ赤血球凝集素headドメインに対して少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列相同性を有する。
【0083】
一部の実施形態においては、第1の領域のアミノ酸配列は、配列番号9の位置83、85、146~149、151、154~159及び163に対応する位置以外の位置における(好ましくは配列番号3の)A H5型インフルエンザ赤血球凝集素headドメインに対して少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列相同性を有する。
【0084】
一部の実施形態においては、第1の領域のアミノ酸配列は、配列番号9の位置83、85、146~149、151、154~159及び163に対応する位置以外の位置における(好ましくは配列番号4の)A H11型インフルエンザ赤血球凝集素headドメインに対して少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列相同性を有する。
【0085】
一部の実施形態においては、各ポリペプチドは独立に、N及び/又はC末端において第1の領域に隣接結合する1個以上のアミノ酸を更に含む。
【0086】
追加のN末端アミノ酸は、好ましくは、赤血球凝集素N末端stalk領域に由来する、好ましくはインフルエンザA H亜型、最も好ましくはH1、H5、H6、H9又はH11亜型の赤血球凝集素N末端stalk領域に由来する、一連の隣接アミノ酸である。
【0087】
好ましくは、A型インフルエンザ亜型の赤血球凝集素N末端柄領域の58~60個のアミノ酸は、ポリペプチドの1個以上における第1の領域のN末端に隣接結合する。
【0088】
一部の実施形態においては、このstalk領域のアミノ酸配列は、
(i)配列番号9のアミノ酸1~59、
(ii)配列番号10のアミノ酸1~58、
(iii)配列番号11のアミノ酸1~58、又は
(iv)配列番号12のアミノ酸1~58
に対して少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%の配列相同性を有する。
【0089】
追加のC末端アミノ酸は、存在する場合、好ましくは、A型インフルエンザ亜型、好ましくはH1、H5、H6、H9又はH11の赤血球凝集素C末端stalk領域に由来する一連の隣接アミノ酸(例えば、1~300、1~200、1~100、1~50又は1~10アミノ酸)である。
【0090】
好ましくは、一連の隣接アミノ酸は、head領域が由来する同じA型インフルエンザ亜型の赤血球凝集素stalk領域に由来する。
【0091】
一部の実施形態においては、ポリペプチドは、A型インフルエンザ亜型HA2領域を含まない。
【0092】
一部の実施形態においては、ポリペプチドは、配列番号9~12のHA2領域を含まない。
【0093】
一部の好ましい実施形態においては、1個、2個又はそれ以上のポリペプチドの1個以上又はすべては独立に、本明細書に定義した第1の領域を含むインフルエンザA HA1ドメイン、最も好ましくは本明細書に定義した第1の領域を含むインフルエンザA H1、H5、H6又はH11亜型HA1ドメインを含む。
【0094】
好ましくは、ポリペプチドは独立に600未満、より好ましくは400未満、最も好ましくは300未満のアミノ酸長である。
【0095】
好ましくは、ポリペプチドは独立に250~350、より好ましくは280~300アミノ酸長、最も好ましくは290~292アミノ酸長である。
【0096】
ポリペプチドの第1の領域は、配列番号1における位置に対応する指定位置に1つ以上のアミノ酸置換を有する。
【0097】
例えば、ポリペプチドの第1の領域は、指定アミノ酸置換の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13又は14個を有し得る。
【0098】
好ましくは、ポリペプチドの第1の領域は、指定の14個のアミノ酸置換のすべてを有する。
【0099】
本明細書では「正電荷アミノ酸」という用語は、リジン、アルギニン及びヒスチジンを含む。本明細書では「負電荷アミノ酸」という用語は、アスパラギン酸及びグルタミン酸を含む。
【0100】
一部の好ましい実施形態においては、ポリペプチドのアミノ酸配列は独立に配列番号13~17のアミノ酸配列を含む、又はからなる。
【0101】
本発明のポリペプチドは、組換え法によって生成させることができる。例えば、こうした技術は、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」(第4版)Michael R.Green及びJoseph Sambrookに記載されている。
【0102】
あるいは、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を化学合成によって生成させることもできる。次いで、こうしたヌクレオチド配列を適切な宿主細胞形質転換又は導入用ベクターに連結することができる。次いで、ポリペプチドをこうした宿主細胞中で発現させることができる。
【0103】
既存のHA遺伝子の改変の場合、「CRISPR-Cas:A Laboratory Manual」(2016)、Jennifer Doudna(カリフォルニア大学、バークレー)及びPrashant Mali(カリフォルニア大学、サンディエゴ)編に記載のものなどのCRISPRに基づく技術を使用することもできる。TALENに基づく技術を使用することもできる。
【0104】
あるいは、本発明のポリペプチドを標準的な化学的ペプチド合成技術によって合成することができる。配列のC末端アミノ酸を不溶性担体に結合させ、続いて残りのアミノ酸を連続付加するペプチドの固相合成を例えば使用することができる。
【0105】
更なる一実施形態においては、本発明は、本発明の1個以上のポリペプチドをコードする核酸分子を提供する。好ましくは、核酸分子は、本発明のポリペプチドの1個、2個又はそれ以上、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個をコードする。
【0106】
好ましいヌクレオチド配列としては、A型インフルエンザウイルスに対する対象において抗体を誘導することができるポリペプチドをコードする、配列番号18~22を含むもの、及びそれらに対して少なくとも80%、85%、90%又は95%の配列相同性を有するヌクレオチド配列が挙げられる。
【0107】
配列番号13~17のポリペプチドをコードする核酸分子も好ましい。
【0108】
本明細書では「核酸配列」、「核酸分子」及び「ポリヌクレオチド」という用語は、区別なく使用され、いかなる長さ制限を伴わない。これらは、DNA(cDNAを含む)及びRNA配列を含む。
【0109】
本発明の核酸分子としては、それらの自然環境から取り出された単離された核酸分子、組換え若しくはクローン化したDNA単離物、及び化学的に合成されたアナログ、又は異種系によって生物学的に合成されたアナログが挙げられる。
【0110】
本発明の核酸分子は、当該技術分野で公知の任意の手段によって調製することができる。例えば、多量のポリヌクレオチドを適切な宿主細胞における複製によって生成させることができる。原核又は真核細胞に導入し、その中で複製することができる、組換え核酸コンストラクト、一般にDNAコンストラクトに、所望の断片をコードする天然又は合成DNA断片を組み入れることができる。通常、DNAコンストラクトは、酵母若しくは細菌などの単細胞宿主における自己複製に適しているが、培養された昆虫、哺乳動物、植物又は他の真核細胞系のゲノムへの導入及び組み込みに意図されてもよい。
【0111】
本発明の核酸分子は、化学合成によって、例えば、ホスホルアミダイト法又はトリエステル法によって、生成させることもでき、市販の自動オリゴヌクレオチド合成装置上で行うことができる。二本鎖断片は、相補鎖を合成し、鎖を適切な条件下で一緒にアニーリングすることによって、又はDNAポリメラーゼを用いて相補鎖に適切なプライマー配列を付加することによって、化学合成の一本鎖生成物から得ることができる。
【0112】
核酸分子中の最初の(例えば、野生型)コドンは、例えば、http://genomes.urv.es/OPTIMIZER/で入手可能なものなどのオンラインツールを用いて、所望の細胞系における発現に対して最適化することができる。
【0113】
本発明の一実施形態においては、したがって、核酸分子は、宿主細胞、好ましくはヒト細胞における発現に対してコドンが最適化される。
【0114】
本明細書では「本発明の生成物」という用語は、とりわけ、本発明のポリペプチド、本発明の核酸、本発明のベクター、本発明の粒子、及び本発明の組成物を指す。
【0115】
本発明は、本発明の核酸分子を含むベクター又はプラスミドも提供する。好ましくは、ベクターは発現ベクターである。
【0116】
ベクター及び/又はプラスミドは、ポリペプチドをコードする配列に使用可能に結合した1個以上の制御配列、例えば、1個以上のエンハンサー、プロモーター及び/又は転写終結配列を含むことができる。
【0117】
特に好ましい一実施形態においては、任意に1種以上の薬学的に許容される担体、アジュバント、賦形剤又は希釈剤と共に、A型インフルエンザ感染症を処置又は防止するための同時使用、分離使用又は逐次使用に適した形の組合せ製剤として、配列番号13~17のポリペプチドをコードする1個、2個又はそれ以上のベクターを含む免疫原性組成物が提供される。
【0118】
好ましくは、初回免疫は、配列番号14及び15をコードするベクター(単数又は複数)を用いて対象に投与され、次いで第1の追加免疫は、配列番号13及び16をコードするベクター(単数又は複数)を用いて投与され、次いで最終追加免疫は、配列番号17をコードするベクターを用いて投与される。
【0119】
一部の実施形態においては、ベクターはウイルスベクター、例えばポックスウイルスベクターである。
【0120】
別の実施形態においては、ベクターは、アデノウイルスベクター又は改変ワクシニアアンカラ(MVA:Modified Vaccinia Ankara)ウイルスベクターである。
【0121】
好ましくは、ベクターは非複製ベクターである。
【0122】
非複製ポックスウイルス及びアデノウイルスは、遺伝物質を標的細胞に送達するベクターとして使用することができるウイルス群である。ウイルスベクターは、抗原送達ビヒクルとして働き、ウイルスエレメントを細胞表面分子との結合を介して自然免疫系を活性化する力も有する。所与の抗原をコードする核酸を運ぶ組換えウイルスベクターを生成することができる。次いで、ウイルスベクターを使用して核酸を標的細胞に送達することができ、コードされた抗原が標的細胞自体の分子機構によって産生される。「非自己」として、産生された抗原は、標的対象において免疫応答を発生する。
【0123】
任意の1つの特別な理論に拘泥するものではないが、本発明者らは、本発明のベクターを用いた抗原送達が、対象における応答の中でもT細胞応答を刺激すると考える。したがって、本発明者らは、本発明がインフルエンザ感染症に対する防御を与える1つの方法が、T細胞応答及び細胞性免疫系を刺激することによると考える。さらに、体液性(抗体)防御を得ることもできる。
【0124】
本発明のベクターは、非複製ポックスウイルスベクターとすることができる。本明細書では、非複製(又は複製欠損型)ウイルスベクターは、標的細胞の感染後に増殖的に複製する能力を欠くウイルスベクターである。したがって、非複製ウイルスベクターは、標的細胞の感染後にそれ自体のコピーを生成することができない。したがって、非複製ウイルスベクターは、有利なことに、複製能力のあるウイルスベクターに比べて改善された安全性プロファイルを有することができる。
【0125】
一実施形態においては、非複製ポックスウイルスベクターは、改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)ベクター、NYVACワクシニアウイルスベクター、カナリアポックス(ALVAC)ベクター及び鶏痘(FPV)ベクターから選択される。MVAとNYVACはどちらもワクシニアウイルスの弱毒化誘導体である。ワクシニアウイルスに比べて、MVAは、約200個のオープンリーディングフレームのうち約26個が欠損している。
【0126】
一実施形態においては、非複製ポックスウイルスベクターはMVAベクターである。
【0127】
本発明のベクターはアデノウイルスベクターとすることができる。一実施形態においては、アデノウイルスベクターは非複製アデノウイルスベクターである(非複製については上で定義した)。アデノウイルスは、El又はElとE3の両方の遺伝子領域の欠損によって非複製にすることができる。あるいは、アデノウイルスは、El又はEl及びE3遺伝子領域を非機能的にするような前記遺伝子領域の変更によって非複製にすることができる。例えば、非複製アデノウイルスは、機能的El領域を欠くことができ、又は機能的El及びE3遺伝子領域を欠くことができる。このようにして、アデノウイルスは、大部分の哺乳動物細胞系において複製不能になり、免疫哺乳動物において複製しない。最も好ましくは、ElとE3の両方の遺伝子領域の欠損がアデノウイルス中に存在し、したがってより大きい導入遺伝子を挿入することができる。これは、より大きい抗原を発現させるのに、又は複数の抗原が単一のベクター中で発現されるとき、又はCMVプロモーターなどの大きいプロモーター配列を使用するときに特に重要である。El領域と同様にE3の欠損は、特に組換えAd5ベクターで好ましい。任意に、E4領域を操作することもできる。
【0128】
一実施形態においては、アデノウイルスベクターは、ヒトアデノウイルスベクター、サルアデノウイルスベクター、B群アデノウイルスベクター、C群アデノウイルスベクター、E群アデノウイルスベクター、アデノウイルス6ベクター、PanAd3ベクター、アデノウイルスC3ベクター、ChAdY25ベクター、AdC68ベクター及びAd5ベクターから選択される。
【0129】
本発明のウイルスベクターは、上述したように、単一の抗原を標的細胞に送達するのに使用することができる。有利なことに、本発明のウイルスベクターは、複数の(異なる)抗原を標的細胞に送達するのに使用することもできる。
【0130】
一実施形態においては、本発明のベクターは、更に、アジュバント(例えば、コレラ毒素、大腸菌(E.coli)致死毒素、又はフラゲリン)をコードする核酸配列を含む。
【0131】
(上述したように)ベクターをコードする核酸配列は、当該技術分野で公知の組換え核酸を操作及び生成する任意の技術を使用して生成させることができる。一態様においては、本発明は、本発明のベクターをコードする核酸分子を含む核酸を供給すること、宿主細胞に核酸分子を導入すること、ベクターの増殖に適した条件下で宿主細胞を培養すること、及びベクターを宿主細胞から得ることを含む、(上述したように)ベクターを作製する方法を提供する。
【0132】
本明細書では「導入」は、核酸分子を細胞中に導入する任意の非ウイルス方法を意味することがある。核酸分子は、宿主細胞に導入するのに適切な任意の核酸分子とすることができる。したがって、一実施形態においては、核酸分子はプラスミドである。宿主細胞は、ベクター(すなわち、上述したように、非複製ポックスウイルスベクター又はアデノウイルスベクター)が増殖し得る任意の細胞とすることができる。本明細書では「ベクターの増殖に適した条件下で宿主細胞を培養すること」は、選択された宿主細胞に適切であり、ベクターを宿主細胞中で生成することができる、当該技術分野で公知の任意の細胞培養条件及び技術の使用を意味する。本明細書では「ベクターを得ること」は、ベクターを宿主細胞から分離するのに適切である当該技術分野で公知の任意の技術の使用を意味する。したがって、宿主細胞を溶解させて、ベクターを放出させることができる。続いて、当該技術分野で公知の任意の適切な方法又は複数の方法を用いてベクターを単離し、精製することができる。
【0133】
本発明は、本発明の核酸分子、ベクター又はプラスミドを含む宿主細胞も提供する。好ましくは、宿主細胞は、真核生物宿主細胞である。真核生物宿主細胞の例としては、酵母及び哺乳動物細胞が挙げられる。
【0134】
宿主細胞は、好ましくは、ベクター(例えば、上述したように、非複製ポックスウイルスベクター又はアデノウイルスベクター)が成長又は増殖し得る細胞である。宿主細胞は、293細胞(HEK、すなわちヒト胎児由来腎細胞としても知られる)、CHO細胞(チャイニーズハムスター卵巣)、CCL81.1細胞、Vero細胞、HeLa細胞、Per.C6細胞、BHK細胞(ベビーハムスター腎)、プライマリーCEF細胞(ニワトリ胚線維芽細胞)、アヒル胚線維芽細胞、又はDF-1細胞から選択することができる。
【0135】
別の実施形態においては、宿主細胞はヒト細胞(例えば、単離ヒト細胞)である。
【0136】
更なる一実施形態においては、本発明の1個、2個又はそれ以上(例えば、3、4、5、6、7、8、9又は10個)のポリペプチドを含むウイルス様粒子(VLP:virus-like particle)が提供される。粒子は、好ましくは免疫原性である。
【0137】
ウイルス様粒子は、ウイルスに似ているが、ウイルス性遺伝物質を含まないので非感染性である。粒子は、多量体リポタンパク質粒子として記述することもできる。
【0138】
適切な系で発現されると、これらのVLPは、前記ポリペプチドの1個以上のモノマーで構成されるリポタンパク質構造/粒子を自発的に構築することができる。
【0139】
本発明は、本発明の1個、2個又はそれ以上(例えば、3、4、5、6、7、8、9又は10個)のポリペプチド(好ましくは、異なるポリペプチド)がVLPに共有結合した、VLPも提供する。例えば、本発明のポリペプチドは、化学架橋剤、反応性非天然アミノ酸又はSpyTag/SpyCatcher反応を用いて、VLPに共有結合することができる。
【0140】
特に好ましい一実施形態においては、任意に1種以上の薬学的に許容される担体、アジュバント、賦形剤又は希釈剤と共に、A型インフルエンザ感染症を処置又は防止するための同時使用、分離使用又は逐次使用に適した形の組合せ製剤として、少なくとも5個の異なるウイルス様粒子(VLP)を含む免疫原性組成物であって、各VLPが独立に配列番号13~17のポリペプチドからなる又は構成される1個以上のホモ三量体を含む、免疫原性組成物が提供される。
【0141】
好ましくは、初回免疫は、配列番号14及び15のホモ三量体を用いて対象に投与され、第1の追加免疫は、配列番号13及び16のホモ三量体を用いて投与され、最終追加免疫は、配列番号17のホモ三量体を用いて投与される。
【0142】
本発明は、任意に1種以上の薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤と共に、本発明の1個、2個若しくはそれ以上のポリペプチド、本発明の1個以上の核酸分子、本発明の1個以上のベクター、又は本発明のVLPを含む組成物も提供する。
【0143】
組成物は、好ましくは免疫原性組成物である。
【0144】
薬学的に許容される担体として使用するのに適切な物質は、当該技術分野で公知である。薬学的に許容される担体の非限定的例としては、水、食塩水及びリン酸緩衝食塩水が挙げられる。しかし、一部の実施形態においては、組成物は、凍結乾燥形態であり、その場合、ウシ血清アルブミン(BSA:bovine serum albumin)などの安定剤を含むことができる。一部の実施形態においては、チオメルサール又はアジ化ナトリウムなどの防腐剤と一緒に組成物を処方して、長期貯蔵を容易にすることが望ましい場合もある。緩衝剤の例としては、コハク酸ナトリウム(pH6.5)及びリン酸緩衝食塩水(PBS:pH7.4)が挙げられるが、それらに限定されない。
【0145】
薬学的に許容される担体に加えて、本発明の組成物は、更に、塩、賦形剤、希釈剤、アジュバント、免疫調節剤及び/又は抗菌化合物の1つ以上と組み合わせることができる。
【0146】
一実施形態においては、本発明の生成物は、活性成分少なくとも10%若しくは25%、又は活性成分少なくとも40%、又は活性成分少なくとも50%、55%、60%、70%若しくは75%などの活性成分(すなわち、ポリペプチド、核酸、ベクター又はVLP)5%~95%を含むことができる。
【0147】
本発明の生成物は、投与処方に適合した様式で、かつ予防及び/又は治療上有効であるような量で、投与することができる。
【0148】
本発明の生成物の投与は、一般に、従来の経路、例えば、静脈内、皮下、腹腔内又は粘膜経路による。投与は、非経口投与、例えば、皮下又は筋肉内注射によることができる。
【0149】
したがって、本発明の生成物は、注射用として、溶液又は懸濁液として、調製することができる。あるいは、注射前の液体の溶液又は懸濁液に適切な固体剤形を調製することができる。製剤を乳化することもでき、又はペプチドをリポソーム若しくはマイクロカプセルに封入することもできる。活性成分は、薬学的に許容され該活性成分と適合性である賦形剤と混合される場合がある。適切な賦形剤は、例えば、水、食塩水、デキストロース、グリセリン、エタノールなど及びこれらの組合せである。さらに、必要に応じて、本発明の生成物は、湿潤剤、乳化剤及び/又はpH緩衝剤などの少量の補助物質を含むこともできる。
【0150】
別の投与方法に適切な追加の処方としては、経口処方、又はエアロゾルとして散布するのに適切な処方が挙げられる。経口処方は、通常採用される賦形剤、例えば、医薬品等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどを含む。これらの組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、丸剤、カプセル、徐放性製剤又は粉末の形をとる。
【0151】
(上述したように)本発明の生成物を対象の呼吸器系に向けることが望ましい場合もある。治療上の/予防上の組成物又は医薬品を肺の感染部位に効率的に送るには、経口又は鼻腔内投与によることができる。
【0152】
鼻腔内投与処方は、点鼻薬又は鼻腔噴霧剤の形とすることができる。鼻腔内処方は、500~4000μm、1000~3000μm、100~1000μmなどの100~5000μmの範囲の近似直径を有する液滴を含むことができる。あるいは、体積に関して、液滴は、0.1~50μl若しくは1.0~25μl、又は0.001~1μlなどの約0.001~100μlの範囲とすることができる。
【0153】
あるいは、治療上の/予防上の処方又は医薬品はエアロゾル処方とすることができる。エアロゾル処方は、粉末、懸濁液又は溶液の形をとることができる。エアロゾル粒子のサイズは、エアロゾルの送達能力に関連する。より小さい粒子は、より大きい粒子よりも呼吸気道を肺胞に向かって更に下方に進むことができる。一実施形態においては、エアロゾル粒子は、気管支、細気管支及び肺胞の全長に沿った送達を促進するような直径分布を有する。あるいは、粒径分布は、呼吸気道の特定の部分、例えば肺胞を標的にするように選択することができる。医薬品のエアロゾル送達の場合、粒子は直径がおよそ0.1~50μm、好ましくは1~25μm、より好ましくは1~5μmの範囲とすることができる。
【0154】
エアロゾル粒子は、噴霧器(例えば、経口)又は鼻腔噴霧剤による送達用とすることができる。エアロゾル処方は、任意に噴霧剤及び/又は界面活性剤を含むことができる。
【0155】
好ましくは、本発明の組成物は、任意に1種以上のアジュバントとの、例えば非経口投与に適切なワクチン組成物である。
【0156】
本明細書では、ワクチンは、哺乳動物(例えば、ヒト、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、シカ、イヌ又はネコ対象、特にヒト対象)などの動物対象に投与したときに、感染症に対して防御免疫応答を刺激する処方である。免疫応答は、体液性及び/又は細胞性免疫応答であり得る。したがって、ワクチンは、B細胞及び/又はT細胞を刺激することができる。
【0157】
適切なアジュバントの例としては、以下からなる群から選択されるものが挙げられる。
-水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウムなどの金属塩、
-水中油型乳濁液、
-トール様受容体作動物質(トール様受容体2作動物質、トール様受容体3作動物質、トール様受容体4作動物質、トール様受容体7作動物質、トール様受容体8作動物質、トール様受容体9作動物質など)、
-サポニン、例えば、Quil A並びにQS7及び/又はQS21などのその誘導体、
-CpG含有オリゴヌクレオチド、
-3D-MPL、
-(2-デオキシ-6-o-[2-デオキシ-2-[(R)-3-ドデカノイルオキシテトラ-デカノイルアミノ]-4-o-ホスホノ-β-D-グルコピラノシ]]-2-[(R)-3-ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]-α-D-グルコピラノシル二水素ホスファート)、
-DP(3S,9R)-3-[(R)-ドデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]-4-オキソ-5-アザ-9(R)-[(R)-3-ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]デカン-1,10-ジオール,1,10-ビス(二水素ホスファート)、及び
-MP-AcDP(3S-,9R)-3-[(R)-ドデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]-4-オキソ-5-アザ-9-[(R)-3-ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]デカン-1,10-ジオール,1-二水素ホスファート10-(6-アミノヘキサノアート)、
又はそれらの組合せ。
【0158】
好ましくは、アジュバントは、以下を含む群から選択される。
-水酸化アルミニウム又はリン酸アルミニウムなどの金属塩と会合したサポニン、
-例えば水中油型処方としての、3D-MPL、QS21及びCpGオリゴヌクレオチド、
-リポソームの形のサポニンは、例えば、QS21、ステロールなどのステロールを更に含む、及び
-ISCOM。
【0159】
幾つかの特に好ましい実施形態においては、アジュバントはサポニンを含む。サポニンは、多数の植物種に存在するステロイド又はトリテルペノイドグリコシドである。
【0160】
サポニン系アジュバントは、部分的に、注射部位に抗原提示細胞が入るのを刺激し、局所リンパ節において抗原提示を増強することによって作用する。
【0161】
好ましくは、アジュバントは、サポニン、コレステロール及びリン脂質、例えば、ISCOM Matrix-M(商標)(Isconova、Novavax)を含む。
【0162】
Matrix-Mにおいては、精製サポニン画分は、合成コレステロール及びリン脂質と混合されて、種々のワクチン抗原を用いて容易に処方することができる安定な粒子を形成する。Matrix-M(商標)は、細胞性免疫応答と抗体性免疫応答の両方を誘導する。
【0163】
幾つかの別の好ましい実施形態においては、アジュバントは、水中スクアレン油型ナノエマルジョン乳濁液、例えば、AddaVax(商標)(InvivoGen)を含む。
【0164】
スクアレンは、フロイントアジュバントに使用されるパラフィン油よりも容易に代謝される油である。水中スクアレン油型乳濁液は、細胞性(Th1)免疫応答と体液性(Th2)免疫応答の両方を誘発することが知られている。このクラスのアジュバントは、APCの動員及び活性化並びにマクロファージ及び顆粒球によるサイトカイン及びケモカイン産生の刺激によって作用すると考えられる。
【0165】
組成物は、更に界面活性剤を含むことができる。適切な界面活性剤の例としては、Tween(Tween20など)、briji及びポリエチレングリコールが挙げられる。
【0166】
ワクチン製剤は、「New Trends and Developments in Vaccines」Vollerら編、University Park Press、ボルティモア、メリーランド、U.S.A.、1978に概説されている。リポソーム内の封入は、例えば、Fullerton、米国特許第4,235,877号に記述されている。
【0167】
各ワクチン用量中に存在する本発明のポリペプチド、核酸分子、ベクター又は粒子の量は、一般的なワクチンにおける重大な有害副作用なしに免疫防御反応を誘導する量として選択される。こうした量は、どの特異的免疫原が採用されるか、ワクチンがアジュバントを含むかどうかに応じて変わる。一般に、各用量は、タンパク質1~1000μg、例えば10~100μgなどの1~200μg、より具体的には10~40μgを含むと予想される。特定のワクチンの最適量は、抗体価及び対象における他の応答の観察を含む標準的な研究によって確認することができる。最初のワクチン接種後、対象は、好ましくは、約4週間で追加免疫を受け、続いて感染リスクが存在する限り、6か月ごとに繰り返し追加免疫を受ける。本発明の生成物に対する免疫応答は、アジュバント及び/又は免疫賦活薬の使用によって強化される。
【0168】
本発明のアジュバントに使用されるサポニンの量は、1~1000μg/回、一般に1~250μg/回などの1~500μg/回、より具体的には1~100μg/回(例えば、10、20、30、40、50、60、70、80又は90μg/回)とすることができる。
【0169】
本発明は、好ましくはA型インフルエンザ感染症を処置又は防止するための、同時使用、分離使用又は逐次使用に適した形の組合せ製剤として、本発明の2個以上のポリペプチド、本発明の2個以上の粒子、本発明の2個以上の核酸、本発明の2個以上のベクター及び本発明の2種以上の組成物から選択される2つ以上の成分を含む組合せ製剤も提供する。
【0170】
更に別の一態様においては、本発明は、本発明のポリペプチドに対する抗体を提供する。
【0171】
更なる実施形態においては、本発明は、治療に使用される、又は医薬品として使用される、本発明のポリペプチド、本発明の粒子、本発明の核酸、本発明のベクター、又は本発明の組成物を提供する。
【0172】
更なる一態様においては、本発明は、対象におけるインフルエンザ感染症を防止又は処置する方法に使用される、本発明のポリペプチド、本発明の粒子、本発明の核酸、本発明のベクター、又は本発明の組成物を提供する。
【0173】
更なる一態様においては、本発明は、対象におけるインフルエンザ抗原に対してT細胞又はB細胞応答を誘導する方法に使用される、本発明のポリペプチド、本発明の粒子、本発明の核酸、本発明のベクター、又は本発明の組成物を提供する。
【0174】
特に、本発明の非複製ポックスウイルスベクターは、細胞性免疫系を介して防御免疫応答を刺激するのに使用することができる。一実施形態においては、T細胞はヘルパーT細胞(Th細胞)である。一実施形態においては、T細胞はTh17細胞である。
【0175】
更なる実施形態においては、本発明は、対象におけるインフルエンザ感染症を防止又は処置する方法に使用される医薬品の製造における、本発明のポリペプチド、本発明の粒子、本発明の核酸、本発明のベクター、又は本発明の組成物の使用を提供する。
【0176】
更なる実施形態においては、本発明は、対象におけるインフルエンザ抗原に対してT細胞又はB細胞応答を誘導する方法に使用される医薬品の製造における、本発明のポリペプチド、本発明の粒子、本発明の核酸、本発明のベクター、又は本発明の組成物の使用を提供する。
【0177】
本発明は、有効量の本発明のポリペプチド、本発明の粒子、本発明の核酸、本発明のベクター、又は本発明の組成物を対象に投与することを含む、インフルエンザ感染しやすい対象を処置する方法も提供する。
【0178】
本発明は、有効量の本発明のポリペプチド、本発明の粒子、本発明の核酸、本発明のベクター、又は本発明の組成物を対象に投与することを含む、対象におけるインフルエンザ抗原に対してT細胞又はB細胞応答を誘導する方法も提供する。
【0179】
本発明のポリペプチド、本発明の粒子、本発明の核酸、本発明のベクター、又は本発明の組成物を類似の使用及び方法で使用して、インフルエンザ抗原に対して中和抗体を生体内で産生することもできる。
【0180】
好ましくは、インフルエンザ抗原は、赤血球凝集素タンパク質、より好ましくは赤血球凝集素タンパク質のHA1又はheadドメインである。
【0181】
好ましくは、インフルエンザはA型インフルエンザである。
【0182】
インフルエンザ感染症を処置/防止するための使用及び方法の有効性は、(例えば、ELISAによって)対象の血液中のインフルエンザウイルスに対する中和抗体の有無を証明することによって調べることができる。
【0183】
インフルエンザ、好ましくはA型インフルエンザの処置若しくは防止のための、又はインフルエンザウイルス、好ましくはA型インフルエンザウイルスに対する対象においてT細胞若しくはB細胞応答を誘導するための、同時使用、分離使用又は逐次使用に適した形の組合せ製剤として、本明細書に定義した2個以上のポリペプチド、2個以上の核酸分子、又は2個以上のベクター若しくはプラスミドを含む免疫原性組成物も提供される。
【0184】
対象は、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトである。
【0185】
本明細書では「防止」という用語は、インフルエンザ感染症の開始を防止すること、及び/又はインフルエンザ感染症の強さの重症度を低下させることを含む。したがって、「防止」は、ワクチン接種を包含する。
【0186】
本明細書では「処置」という用語は、治療及び防止/予防処置(暴露後予防を含む)を包含し、インフルエンザ感染症の感染後治療及び回復を含む。上記方法及び使用の各々は、治療有効量などの有効量の本発明のポリペプチド、本発明の粒子、本発明の核酸、本発明のベクター、又は本発明の組成物を対象に投与するステップを含むことができる。
【0187】
本明細書では、有効量は、所望の生物学的結果を得るのに十分な投与量又は量である。本明細書では、治療有効量は、対象(哺乳動物対象、特にヒト対象など)に単回又は複数回投与すると、障害又は再発性障害の少なくとも1つの症候を処置、防止、治癒、遅延、重症度軽減、改善するのに、又はこうした処置の非存在下で予想されるよりも対象を延命するのに、有効である量である。
【0188】
したがって、投与される活性成分の量は、処置対象、防御免疫応答を生じる対象の免疫系の能力、及び必要な防御の程度に依存する。投与に必要な活性成分の正確な量は、開業医の判断に依存し、各対象に特有であり得る。対象への投与は、本発明のポリペプチド、本発明の粒子、本発明の核酸、本発明のベクター、又は本発明の組成物(すなわち、本発明の生成物)を対象に投与することを含むことができ、本発明の生成物が複数回逐次投与される(例えば、組成物が2、3又は4回投与される)。したがって、一実施形態においては、本発明のポリペプチド、本発明の粒子、本発明の核酸、本発明のベクター、又は本発明の組成物が対象に投与され、次いで本発明の同じ生成物(又はほぼ同様の生成物)が再度異なる時間に投与される。
【0189】
一実施形態においては、対象への投与は、本発明のポリペプチド、本発明の粒子、本発明の核酸、本発明のベクター、又は本発明の組成物を対象に投与することを含み、本発明の前記生成物が別の免疫原性組成物の実質的に前に、それと同時に、又はそれに続いて投与される。
【0190】
本発明は、初回免疫-追加免疫の投薬計画にも及ぶ。
【0191】
例えば、初回免疫及び/又は追加免疫を本発明の1種以上の生成物を用いて行うことができる。生成物は、対象に逐次的に、同時に、又は別々に投与することができる。
【0192】
本発明の好ましい初回免疫-追加免疫戦略は、対象におけるインフルエンザ感染症を防止若しくは処置する方法、又は対象におけるインフルエンザ抗原に対してT細胞若しくはB細胞応答を誘導する方法を提供し、該方法は、
(i)有効量の1、2、3、4、5個又はそれ以上の異なるポリペプチドをそれを必要とする対象に同時に、別々に、又は逐次的に投与するステップ
を含み、
各ポリペプチドが独立に隣接アミノ酸の第1の領域を含み、
(a)第1の領域のアミノ酸配列がA型インフルエンザ赤血球凝集素headドメインに対して少なくとも80%の配列相同性を有し、
(b)第1の領域が配列番号9の以下の位置に対応する位置に1つ以上のアミノ酸置換を有し、
位置83がEである
位置85が負電荷アミノ酸である
位置146がT、N、I又はAである
位置147が正電荷アミノ酸若しくはIである、又は存在しない
位置148がGである
位置149がVである
位置151がAである
位置154がS又はPである
位置155がHである
位置156が正電荷アミノ酸又はA又はG又はN又はEである
位置157が正電荷アミノ酸又はA又はGである
位置158が正電荷アミノ酸又はA又はS又はN又はC又はEである
位置159がK又はA又はS又はN又はCである
位置163が正電荷アミノ酸である。
【0193】
好ましいA型インフルエンザ赤血球凝集素headドメイン配列及び第1の領域置換を、必要な変更を加えて、本明細書に開示する。
【0194】
ポリペプチドは、任意に1種以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤及びアジュバントと共に、医薬組成物、好ましくはワクチン組成物の形とすることができる。
【0195】
好ましくは、(上で定義した)ポリペプチドの1個以上は、1個以上の三量体の形である。一部の実施形態においては、三量体はホモ三量体である。別の実施形態においては、三量体はヘテロ三量体である。
【0196】
好ましくは、方法は、
(ii)第2のポリペプチドの追加免疫を前記対象に投与する追加のステップ、及び任意に、
(iii)第3のポリペプチドの追加免疫を前記対象に投与する追加のステップ
も含み、
(上で定義した)第2及び第3のポリペプチドが、好ましくは互いに異なり、好ましくは第1のポリペプチドと異なる。
【0197】
好ましくは、方法は、
(ii)第2の三量体の追加免疫を対象に投与する追加のステップ、及び任意に、
(iii)第3の三量体の追加免疫を対象に投与する追加のステップ
も含み、
第2及び第3の三量体が、好ましくは互いに異なり、好ましくは第1の三量体と異なる。
【0198】
好ましくは、第1、第2及び第3のポリペプチドは、配列番号13~17を含む、又はからなる、ポリペプチドからなる群から独立に選択される。
【0199】
好ましくは、第1、第2及び第3の三量体は独立に、配列番号13~17を含む、又はからなる、ポリペプチドからなる。
【0200】
好ましい一実施形態においては、配列番号14及び15のポリペプチド又はホモ三量体が最初に対象に投与され、配列番号13及び16のポリペプチド又はホモ三量体が次に対象に投与され、配列番号17のポリペプチド又はホモ三量体が次いで対象に投与される。
【0201】
別の好ましい一実施形態においては、ポリペプチド又は三量体がVLPの形で投与され、すなわち、ポリペプチド(単数又は複数)三量体(単数又は複数)を含むVLPが投与される。
【0202】
別の好ましい一実施形態においては、核酸分子(好ましくはベクター)が対象に投与され、核酸分子は、上で定義したポリペプチドの1個以上をコードする。好ましいベクターについては本明細書で述べる。
【0203】
一実施形態においては、第1及び第2の生成物が初回免疫-追加免疫投与手順の一部として投与される。したがって、第1の生成物を対象に「初回免疫」として投与することができ、続いて第2の生成物を同じ対象に「追加免疫」として投与することができる。
【0204】
一実施形態においては、第1の生成物は、本発明のアデノウイルスベクターの初回免疫であり、第2の生成物は、本発明の非複製ポックスウイルスベクターの追加免疫である。
【0205】
一実施形態においては、上記方法の各々は、更に、本発明の生成物の対象への投与のステップを含む。
【0206】
一実施形態においては、本発明のポリペプチドが本発明のウイルスベクターの投与とは別に投与される。好ましくは、ポリペプチド及びウイルスベクターが任意の順で逐次投与される。したがって、一実施形態においては、ウイルスベクター(「V」)及びポリペプチド(「P」)をV-P又はP-Vの順で投与することができる。
【0207】
ある実施形態においては、上記方法は、更に、対象へのアジュバントの投与を含む。アジュバントは、本発明の生成物のいずれかと共に投与することができる。
【0208】
本発明の生成物は、単回投与スケジュールで投与することができる(すなわち、全用量がほぼ1回で投与される)。あるいは、本発明の生成物は、複数回投与スケジュールで投与することができる。
【0209】
複数回投与スケジュールは、主要な処置コース(例えば、ワクチン接種)を1~6回の別々の用量とすることができ、続いて別の用量が免疫応答を維持する、及び/又は強化するのに必要な後続の時間間隔で、例えば(ヒト対象の場合)、第2の用量が1~4か月で、更に必要に応じて、後続の用量(単数又は複数)が更に1~4か月後に投与されるものである。
【0210】
投与計画は、少なくとも部分的に、個体の必要性によって決定され、開業医(例えば、医師又は獣医師)の判断に左右される。
【0211】
同時投与は、(ほぼ)同じ時間の投与を意味する。
【0212】
本発明の2種以上の生成物の逐次投与は、生成物が(ほぼ)異なる時間で順次投与されることを意味する。
【0213】
例えば、逐次投与は、異なる時間における本発明の2種以上の生成物の投与を包含し得るものであり、異なる時間は日数で分離される(例えば、1、2、5、10、15、20、30、60、90、100、150又は200日)。
【0214】
例えば、一実施形態においては、本発明のワクチンは、「初回免疫-追加免疫」ワクチン接種計画の一部として投与することができる。
【0215】
一実施形態においては、本発明の生成物は、例えば、免疫グロブリン、抗生物質、インターロイキン(例えば、IL-2、IL-12)及び/又はサイトカイン(例えば、IFN-γ)から選択される1種以上の免疫調節剤と併せて(同時に又は逐次的に)、哺乳動物(例えば、ヒト、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、シカ、イヌ又はネコ対象)などの対象に投与することができる。
【0216】
更なる実施形態においては、本発明は、本発明のポリペプチドの1個以上の製造プロセスを提供し、該プロセスは、前記ポリペプチドの1個、2個又はそれ以上をコードする1個以上の核酸分子を適切な宿主において発現すること、及びポリペプチド生成物(単数又は複数)を回収することを含む。
【0217】
好ましくは、宿主はヒト細胞である。
【0218】
2個のアミノ酸配列をアラインするのに利用可能なアルゴリズムが多数確立されている。一般に、1個の配列が参照配列として働き、それと被験配列を比較することができる。配列比較アルゴリズムは、参照配列に対する被験配列(単数又は複数)の配列相同性の割合を所定のプログラムパラメータに基づいて計算する。比較のためのアミノ酸配列のアラインメントは、例えば、コンピュータによって実行されるアルゴリズム(例えば、GAP、BESTFIT、FASTA又はTFASTA)、又はBLAST及びBLAST2.0アルゴリズムによって行うことができる。
【0219】
アミノ酸配列相同性及びヌクレオチド配列相同性の割合は、アラインメントのBLAST法によって得ることができる(Altschulら(1997)、「Gapped BLAST and PSI-BLAST:a new generation of protein database search programs」、Nucleic Acids Res.25:3389~3402及びhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST)。好ましくは、標準又はデフォルトのアラインメントパラメータを使用する。
【0220】
標準タンパク質-タンパク質BLAST(blastp)は、タンパク質データベースにおいて類似の配列を見つけるのに使用することができる。他のBLASTプログラムと同様に、blastpは、類似の局所領域を見つけるように設計されている。配列類似性が全配列に及ぶときには、blastpは、タンパク質同定目的に好ましい結果であるグローバルアラインメントについても報告する。好ましくは、標準又はデフォルトアラインメントパラメータを使用する。ある場合には、「低複雑度フィルター」を外すことができる。
【0221】
BLASTタンパク質検索をBLASTXプログラム、スコア=50、ワードの長さ=3で行うこともできる。比較のためのギャップアラインメントを得るために、(BLAST2.0中の)Gapped BLASTをAltschulら(1997)Nucleic Acids Res.25:3389に記載のように利用することができる。あるいは、(BLAST2.0中の)PSI-BLASTを使用して、分子間の距離関係を検出する反復検索を行うことができる。(Altschulら(1997)上掲参照)。BLAST、Gapped BLAST、PSI-BLASTを利用するときには、それぞれのプログラムのデフォルトパラメータを使用することができる。
【0222】
ヌクレオチド配列比較に関しては、MEGABLAST、不連続megablast及びblastnを使用して、この目的を達成することができる。好ましくは、標準又はデフォルトアラインメントパラメータを使用する。MEGABLASTは、極めて類似した配列間の長いアラインメントを効率的に見つけるように特別に設計されている。不連続MEGABLASTを使用して、本発明の核酸に類似しているが同一ではないヌクレオチド配列を見つけることができる。
【0223】
BLASTヌクレオチドアルゴリズムは、クエリーをワードと呼ばれる短いサブ配列に分解することによって類似配列を見つける。このプログラムは、クエリーワードとの完全一致(ワードヒット)を最初に特定する。次いで、BLASTプログラムは、これらのワードヒットを複数のステップで延長して、最終ギャップアラインメントを生成する。一部の実施形態においては、BLASTヌクレオチド検索をBLASTNプログラム、スコア=100、ワード長=12で行うことができる。
【0224】
BLAST検索の感度を支配する重要なパラメータの1つは、ワードサイズである。blastnがMEGABLASTよりも高感度である最も重要な理由は、それがより短いデフォルトワードサイズ(11)を使用することである。このため、blastnは、別の生物由来の関連ヌクレオチド配列とのアラインメントを見つけるのにMEGABLASTよりも優れている。ワードサイズは、blastnにおいて調節可能であり、検索感度を高めるためにデフォルト値から最小値7まで減少させることができる。
【0225】
新たに導入された不連続megablastページ(www.ncbi.nlm.nih.gov/Web/Newsltr/FallWinter02/blastlab.html)を用いて、より高感度の検索を行うことができる。このページは、Maら(Bioinformatics.2002 Mar;18(3):440~5)によって報告されたものに類似したアルゴリズムを使用する。不連続megablastは、アラインメント延長のシーズとしてワードの完全一致を必要とするのではなく、より長いテンプレートウィンドウ内の非連続的なワードを使用する。コーディングモードにおいては、第3の位置における不一致を無視しながら第1及び第2のコドン位置における一致を見つけることに焦点を合わせることによって、第3の塩基のゆらぎを考慮する。同じワードサイズを用いた不連続MEGABLASTにおける検索をすると、同じワードサイズを用いた標準blastnよりも感度及び効率が高い。不連続megablastに独特なパラメータは、ワードサイズ11又は12、テンプレート:16、18又は21、テンプレート種別:コーディング(0)、非コーディング(1)又は両方(2)である。
【0226】
一部の実施形態においては、BLASTP2.5.0+アルゴリズムは、(NCBIから入手可能なものなど)デフォルトパラメータを用いて使用することができる。
【0227】
別の実施形態においては、BLAST Global Alignmentプログラムを、(NCBIから入手可能なものなど)2個のタンパク質配列のNeedleman-Wunschアラインメントをギャップコスト:Existence 11及びExtension 1で用いて使用することができる。
【0228】
本明細書に開示される限定された可変性部位及びその後の限定された可変性エピトープを同定する方法を、すべてのA型インフルエンザ亜型に適用することができる。特に、H3亜型A型インフルエンザウイルスはH1亜型A型インフルエンザウイルスと同様に進化するので、エピトープを同定する本明細書に開示された手法をA型インフルエンザのH3亜型に特に適用することができる。
【0229】
したがって、更なる一実施形態においては、本発明は、規定亜型のインフルエンザウイルスの赤血球凝集素headドメイン上のエピトープを同定する方法を提供し、
該方法は、
(i)規定亜型のインフルエンザウイルスの赤血球凝集素headドメインポリペプチド上の可能な抗体結合部位を同定するステップ、
(ii)抗体結合可能部位内の1個以上の連続又は不連続な一連headドメインポリペプチドを同定するステップ、及び
(iii)これら一連のアミノ酸配列の限定された可変性領域を同定するために、これら一連のアミノ酸配列を規定亜型の複数のインフルエンザ株由来の赤血球凝集素headドメインのアミノ酸配列と比較するステップ
を含み、
それによって、規定亜型のインフルエンザウイルスの赤血球凝集素headドメイン内のそれらのアミノ酸組成物の限定された可変性を有し、エピトープを形成する、1セットの位置を特定する。
【0230】
このようにして同定されるエピトープは、強力な免疫選択下にあり、インフルエンザウイルスの進化を通して限られた数の形態で定期的に繰り返される。
【0231】
該方法及びプロセスを任意のインフルエンザウイルスに適用することができる。好ましくは、インフルエンザウイルスは、A型インフルエンザウイルスである。
【0232】
インフルエンザウイルスは、任意の亜型、例えば、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、H17又はH18であり得る。好ましくは、インフルエンザウイルスは、H1又はH3亜型である。
【0233】
ステップ(i)は、規定亜型のインフルエンザウイルスの赤血球凝集素headドメインポリペプチド上の抗体結合可能部位を特定する必要がある。
【0234】
これは、赤血球凝集素headドメインポリペプチドの結晶構造を分析することによって行うことができる。規定亜型のインフルエンザウイルス由来の2個以上のheadドメインの結晶構造を並べ、ポリペプチド表面に存在する残基及びそれらの残基の到達性を決定することができる。一般に、位置の到達性はすべての結晶構造において同じであるが、1つの結晶構造における位置が別の結晶構造よりも接近しやすいときには、その位置を限定された可変性部位の誤った特定を防ぐために、より接近しやすいものとする。
【0235】
in silico分析を使用して、到達性及び結合部位領域がどのようにして仮想抗体結合部位の可変性に寄与するかを決定することができる。600A2と1000A2の間の抗体結合部位を使用して、到達性が>30%~>1%のアミノ酸の到達性パラメータの可変性を決定することができる。
【0236】
ステップ(ii)は、抗体結合可能部位内の1個以上の連続又は不連続な一連のheadドメインポリペプチドを同定する必要がある。これらの範囲は、抗体によって接触することができる。
【0237】
抗体結合可能部位が同定されると、抗体結合可能部位内の1個以上の連続又は不連続な一連のheadドメインポリペプチドを、例えばSwiss-pdbビューアを用いて、同定することができる。
【0238】
ステップ(iii)は、これら一連のアミノ酸配列内の限定された可変性領域を同定するために、連続又は不連続な一連のアミノ酸配列を規定亜型の複数のインフルエンザ株由来の赤血球凝集素headドメインのアミノ酸配列と比較する必要がある。
【0239】
例えば、複数のインフルエンザ株配列を、年ごとの規定亜型のインフルエンザ株の赤血球凝集素headドメインのコンセンサス配列から得ることができる。年ごとのコンセンサス配列は、精選された赤血球凝集素配列を配列を収集した年に基づいて別々のデータセットに分割することによって生成することができる。次いで、Rパッケージ「seqinr」又は別のコンセンサス配列生成プログラムを用いて、コンセンサス配列を生成することができる。
【0240】
本明細書では「限定された配列の可変性」という用語は、それらが形成することができる異なるエピトープコンフォーメーションの数が制限されたアミノ酸又はアミノ酸の配列を指す。
【0241】
別の実施形態においては、「限定された配列の可変性」という用語は、0、1、2、3又は4(好ましくは0又は1)個の異なるアミノ酸がアミノ酸配列の比較中に見いだされたアミノ酸位置を指す。
【0242】
このようにして、エピトープを形成する、規定亜型のインフルエンザウイルスの赤血球凝集素headドメイン内の一連の保存アミノ酸を同定することができる。
【0243】
該エピトープは、抗体によって結合されるものとすることができる。好ましくは、エピトープは、可変性が限定されたエピトープである。
【0244】
本発明は、ポリペプチドを製造するプロセスであって、
(i)本明細書に定義したエピトープを同定する方法を用いて、規定亜型のインフルエンザウイルスの赤血球凝集素headドメイン内の可変性が限定された一連のアミノ酸を同定するステップ、
(ii)隣接アミノ酸の第1の領域を含むポリペプチドを生成するステップ
を含み、
(a)第1の領域のアミノ酸配列がA型インフルエンザ赤血球凝集素headドメインに対して少なくとも80%の配列相同性を有し、
(b)第1の領域が、可変性が限定されたアミノ酸位置に対応する位置に1つ以上のアミノ酸置換を有し、置換がその位置で保存されるアミノ酸を導入し、
ポリペプチドがA型インフルエンザウイルスに対する対象において抗体を誘導することができる、
プロセスも提供する。
【0245】
本発明は、免疫原性組成物を製造するプロセスであって、
(i)本明細書に定義したエピトープを同定する方法を用いて、規定亜型のインフルエンザウイルスの赤血球凝集素headドメイン内の可変性が限定された一連のアミノ酸位置を特定するステップ、
(ii)隣接アミノ酸の第1の領域を含むポリペプチドを生成するステップであって、
(a)第1の領域のアミノ酸配列がA型インフルエンザ赤血球凝集素headドメインに対して少なくとも80%の配列相同性を有し、
(b)第1の領域が、保存アミノ酸の位置に対応する位置に1つ以上のアミノ酸置換を有し、置換がその位置で保存されるアミノ酸を導入し、
ポリペプチドがA型インフルエンザウイルスに対する対象において抗体を誘導することができる、ステップ、及び
(iii)ポリペプチドの1個以上を免疫原性組成物中に処方するステップであって、組成物が、任意に1種以上の薬学的に許容される担体、アジュバント、賦形剤又は希釈剤を含む、ステップ
を含む、プロセスも提供する。
【0246】
該組成物は、A型インフルエンザウイルスに対する対象において抗体を誘導することができる。
【0247】
インフルエンザウイルスH3亜型のエピトープに関して、第1の領域のアミノ酸配列は、好ましくは、A型インフルエンザ亜型H4、H7、H10、H14又はH15赤血球凝集素headドメインに対してと少なくとも80%、90%、95%又は100%の配列相同性を有する。
【0248】
免疫原性組成物は、好ましくは、ワクチン組成物であり、それは、例えば、本明細書に記載の組成物及び投薬計画により、初回免疫-追加免疫-追加免疫として投与することができる。
【0249】
本明細書に記載の各参考文献の開示は、参照によってその全体が本明細書に具体的に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0250】
【
図1】赤血球凝集素(HA)のモノマー上のエピトープの多座図である。各インフルエンザ株は、可変性の高い特異的エピトープ及び他の株と共有される可変性の低いエピトープを含むと考えられる。
【
図2】主要抗原タイプの周期的置換を示す図である。示した変化パターンは3エピトープ系の場合であり、模式図で示した3種の可能な変異体を各々が含む。
【
図3】幾つかのインフルエンザ株と周期的交差反応性を示す小児の血漿の「ヒートマップ」である。ヒートマップの左側の年は、HA1ドメインが採取された株に関する。個々を12から17か月まで左から右に整列させた。反応性の割合をヒートマップの右側に示す。
【
図4】幾つかの歴史的インフルエンザ株と交差反応性を示す小児の血漿の「ヒートマップ」である。ヒートマップの左側の年は、HA1ドメインが採取された株に関する。個々を6から11か月まで左から右に整列させた。反応性の割合をヒートマップの右側に示す。
【
図5A】マイクロ中和アッセイを示す図である。x軸は、倍率変化を生じるシュードタイプウイルスのIC50の比を示す。野生型(WT:wild-type)及び-147K変異体A/ソロモン諸島/3/2006シュードタイプウイルスを用いたマイクロ中和アッセイ。
【
図5B】マイクロ中和アッセイを示す図である。x軸は、倍率変化を生じるシュードタイプウイルスのIC50の比を示す。野生型(WT)及び-147K変異体A/プエルトリコ/8/1934シュードタイプウイルスを用いたマイクロ中和アッセイ。
【
図5C】マイクロ中和アッセイを示す図である。x軸は、倍率変化を生じるシュードタイプウイルスのIC50の比を示す。野生型(WT)及び-147K変異体A/WSN/1933シュードタイプウイルスを用いたマイクロ中和アッセイ。
【
図6A】キメラHAのコンストラクトを用いた逐次ワクチン接種を示す図である。H6、H5及びH11 HA中に置換された(B)で概説された配列を5群のマウスに逐次的にワクチン接種した。その中に置換された配列がないH6、H5及びH11構築物を更なる2群に逐次的にワクチン接種し、2群を「グレー」及び「パープル」と命名した。更なる2群に偽のワクチン接種をし、「ホワイト」及び「ブラック」と命名した。最初の2回のワクチン接種をDNAの筋肉内注射100μgとして投与し、Alumアジュバントと一緒にキメラHA(すなわち、置換を含む又は含まないH11)を示すレンチウイルスの8個のHI単位の筋肉内注射として最終ワクチン接種を投与した。
【
図6B】21週における採血からの血清0.5μlを用いたシュードタイプマイクロ中和アッセイを示す図である。広範な中和活性が、2009年に流行したインフルエンザウイルス由来のH1 HAを示すレンチウイルスに対して発生する。
【
図6C】21週における採血からの血清0.5μlを用いたシュードタイプマイクロ中和アッセイを示す図である。広範な中和活性が、1933年に流行したインフルエンザウイルス由来のH1 HAを示すレンチウイルスに対して発生する。
【
図6D】21週における採血からの血清0.5μlを用いたシュードタイプマイクロ中和アッセイを示す図である。広範な中和活性が、1934年に流行したインフルエンザウイルス由来のH1 HAを示すレンチウイルスに対して発生する。
【
図6E】21週における採血からの血清0.5μlを用いたシュードタイプマイクロ中和アッセイを示す図である。広範な中和活性が、1977年に流行したインフルエンザウイルス由来のH1 HAを示すレンチウイルスに対して発生する。
【
図6F】21週における採血からの血清0.5μlを用いたシュードタイプマイクロ中和アッセイを示す図である。広範な中和活性が、2006年に流行したインフルエンザウイルス由来のH1 HAを示すレンチウイルスに対して発生する。
【
図6G】A/カリフォルニア/4/2009を用いたワクチン接種マウスのインフルエンザ感作を示す図である。グラフは、感作中のマウスの毎日の体重減少を表す。
【
図6H】A/カリフォルニア/4/2009を用いたワクチン接種マウスのインフルエンザ感作を示す図である。グラフは、感作中のマウスの毎日の生存率を表す。
【
図6I】A/PR/8/1934を用いたワクチン接種マウスのインフルエンザ感作を示す図である。グラフは、感作中のマウスの毎日の体重減少を表す。
【
図6J】A/PR/8/1934を用いたワクチン接種マウスのインフルエンザ感作を示す図である。グラフは、感作中のマウスの毎日の生存率を表す。
【
図7A】可変性が限定された部位がH1 HAのheadに存在することを示す図である。抗体結合部位をA/プエルトリコ/8/1934結晶構造に位置付け、それらの部位内の可変性を2,756個のH1配列のアラインメントを参照することによって決定した。抗体結合に利用可能なA/プエルトリコ/8/1934結晶構造の部分のみを考慮した。Aにおいては、800A
2の抗体結合部位を使用して、3つの到達性パラメータに対する可変性を決定した:到達性>30%、>10%又は>1%のアミノ酸。
【
図7B】可変性が限定された部位がH1 HAのheadに存在することを示す図である。到達性>10%のアミノ酸のデータセットを使用して、3つの結合部位サイズ600、800又は1000A
2に対する可変性を決定した。両方の手法で、H1 HAのhead内の可変性が限定された同じ領域を同定した。これらの領域の1つは、位置156/158の中央に可変性が限定された本発明者らのエピトープを含む。HAの線形の付番がx軸に対して使用される。
【
図7C】可変性が限定された部位がH1 HAのheadに存在することを示す図である。特定のインフルエンザ株由来のHAドメインの結晶構造上へ予測される抗体結合部位のマッピング。
【
図7D】可変性が限定された部位がH1 HAのheadに存在することを示す図である。特定のインフルエンザ株由来のHAドメインの結晶構造上へ予測される抗体結合部位のマッピング。
【
図7E】可変性が限定された部位がH1 HAのheadに存在することを示す図である。特定のインフルエンザ株由来のHAドメインの結晶構造上へ予測される抗体結合部位のマッピング。
【
図7F】可変性が限定された部位がH1 HAのheadに存在することを示す図である。特定のインフルエンザ株由来のHAドメインの結晶構造上へ予測される抗体結合部位のマッピング。
【
図7G】可変性が限定された部位がH1 HAのheadに存在することを示す図である。特定のインフルエンザ株由来のHAドメインの結晶構造上へ予測される抗体結合部位のマッピング。
【
図7H】可変性が限定された部位がH1 HAのheadに存在することを示す図である。特定のインフルエンザ株由来のHAドメインの結晶構造上へ予測される抗体結合部位のマッピング。
【
図7I】可変性が限定された部位がH1 HAのheadに存在することを示す図である。特定のインフルエンザ株由来のHAドメインの結晶構造上へ予測される抗体結合部位のマッピング。
【
図7J】可変性が限定された部位がH1 HAのheadに存在することを示す図である。特定のインフルエンザ株由来のHAドメインの結晶構造上へ予測される抗体結合部位のマッピング。
【
図8A】アミノ酸156/158周囲の部位に対応する乱れたペプチド配列を示す図である。横及び上からのA/ブレビグミッション/1/1918の結晶構造を示す。乱れたペプチド配列は、H1構造上に位置付けられる。アミノ酸位置147が(白及び矢印で)強調表示され、A/ブレビグミッション/1/1918中に存在するが、A/プエルトリコ/8/1934には存在しない。
【
図8B】アミノ酸156/158周囲の部位に対応する乱れたペプチド配列を示す図である。横及び上からのA/プエルトリコ/8/1934の結晶構造を示す。乱れたペプチド配列は、H1構造上に位置付けられる。アミノ酸位置147が(白及び矢印で)強調表示され、A/ブレビグミッション/1/1918中に存在するが、A/プエルトリコ/8/1934には存在しない。
【
図9A】限定された可変性部位の乱れたペプチド配列の周期的活性を示す図である。年ごとのコンセンサス配列から取られた乱れたペプチド配列をそれらの化学的性質に従う群とすることができる。時間で並べると、乱れたペプチド配列の周期的性質が明らかになる。それらの化学的性質に基づく配列の別の並べ方も可能であり、これは、単に、このエピトープ領域の周期的性質の1つの可能な具体化及び典型である。
【
図9B】限定された可変性部位の乱れたペプチド配列の周期的活性を示す図である。年ごとのコンセンサス配列から取られた乱れたペプチド配列をそれらの化学的性質に従う群とすることができる。時間で並べると、乱れたペプチド配列の周期的性質が明らかになる。それらの化学的性質に基づく配列の別の並べ方も可能であり、これは、単に、このエピトープ領域の周期的性質の1つの可能な具体化及び典型である。
【
図9C】限定された可変性部位の乱れたペプチド配列の周期的活性を示す図である。年ごとのコンセンサス配列から取られた乱れたペプチド配列をそれらの化学的性質に従う群とすることができる。時間で並べると、乱れたペプチド配列の周期的性質が明らかになる。それらの化学的性質に基づく配列の別の並べ方も可能であり、これは、単に、このエピトープ領域の周期的性質の1つの可能な具体化及び典型である。
【
図9D】限定された可変性部位の乱れたペプチド配列の周期的活性を示す図である。年ごとのコンセンサス配列から取られた乱れたペプチド配列をそれらの化学的性質に従う群とすることができる。時間で並べると、乱れたペプチド配列の周期的性質が明らかになる。それらの化学的性質に基づく配列の別の並べ方も可能であり、これは、単に、このエピトープ領域の周期的性質の1つの可能な具体化及び典型である。
【
図10】位置147におけるアミノ酸変化が4つの可能性の間で循環するのを示す図である。A.位置147におけるアミノ酸の相同性は、1918~1957及び1977~2015の5つの期間でリジン、アルギニン、イソロイシン及び非存在の間で循環する。
【実施例】
【0251】
本発明を以下の実施例によって更に説明する。別段の記載がない限り、部及び割合は重量であり、度はセルシウスである。これらの実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すものではあるが、単なる例として示されることを理解されたい。上記考察及びこれらの実施例から、当業者は、本発明の本質的特徴を確認することができ、その意図及び範囲から逸脱することなく、本発明を種々変更及び改変して多様な使用及び条件に適合させることができる。したがって、本明細書に示し、記載するものに加えて本発明の様々な改変が上記記述から当業者に明らかになるであろう。こうした改変も添付の特許請求の範囲内にあるものとする。
【0252】
実施例1:抗原変異モデル
可変性の低い防御エピトープの存在は、「抗原変異モデル」下のA型インフルエンザの個体群動態と一致する。このモデルは、各座がエピトープ領域に対応するウイルスの多座図に基づき、可変性が限定された防御エピトープ及び可変性の高い防御エピトープを含む可能性を有する点で、より広く受け入れられた「抗原変異」モデルの代替を提供する。
図1は、これらが赤血球凝集素(HA)のモノマー上の公知の抗原性部位に位置し得る仕方を示す。インフルエンザの流行挙動は、大部分のインフルエンザ株が可変性の低い領域においてエピトープを共有するので互いに競合するとすれば、抗原変異フレームワーク内で容易に説明することができる(Reckerら、2007、Wikramaratnaら、2013)。したがって、新しい株が変異によって常に生成し得るものの、これらの大部分は、それらの可変性のより低いエピトープに対する既存の免疫応答のために、宿主集団において拡大することができない。これは、抗原タイプの周期的優位をもたらす(
図2)。「抗原変異」モデルとは対照的に、流行株間の抗原距離は、必ずしも時間とともに蓄積せず、代わりに、周期的に拡大及び収縮する。
【0253】
Carterら(2013)は、抗原変異モデルの証拠を提供している。フェレットを幾つかの歴史的インフルエンザウイルスの1つに感染させた。血清抗体を14及び81日目に赤血球凝集素阻害(HAI)アッセイによって測定した(
図5)。血清抗体は、抗原変異仮説によって予測されるように、歴史的株のウイルスに対する抗体の周期的交差反応性を示した。
【0254】
Carterら(2013)において観察された周期的交差反応性は、部分的に、現在の構造バイオインフォマティクス分析によって予測される。例えば、1957株によるフェレットの感染は、A/R/8/1934、A/Den/1/1957、A/NC/20/1999及びA/Bris/59/2007株に対して交差反応性抗体を誘導すると予測される。交差反応性は、感染によってA/R/8/1934、A/Den/1/1957及びA/NC/20/1999株の間で認められるが、A/Bris/59/2007株では認められない。
【0255】
実施例2:経時的に分散するH1インフルエンザ株に対する乳児血漿の周期的交差反応性
標準化酵素結合免疫吸着測定(ELISA:enzyme-linked immunosorbant assay)を2012年に収集された12~17か月齢の小児の血漿を用いて行った。インフルエンザ株A/カリフォルニア/4/2009、A/USSR/90/1977、A/ブレビグミッション/1/1918、A/ソロモン諸島/3/2006、A/ニューカレドニア/20/1999、A/プエルトリコ/8/34及びA/WSN/33由来のHA1ドメインをSino Biologicalから購入した。標準は、成体の血清をそれらの出生日に基づいて使用した。カゼイン(caesin)のみの対照及び非反応性ヒト血漿又はVI血清対照からなる2つの負の対照を各プレート上で実施した。
【0256】
結果を
図3に示す。2012年に収集された12~17か月齢の81名の小児の血漿は、インフルエンザ株A/カリフォルニア/4/2009、A/USSR/90/1977及びA/ブレビグミッション/1/1918由来のHA1ドメイン(HA H1のheadドメイン及び茎ドメインの一部)と交差反応したが、A/ソロモン諸島/3/2006、A/ニューカレドニア/20/1999、A/プエルトリコ/8/34又はA/WSN/33とは交差反応しなかった。すべてのELISA結果を3重で完了させ、非反応性ヒト血漿に対して標準化した。ELISA結果をMiuraら(2008)に記述された判定基準に基づいて許容又は却下した。
【0257】
この血漿が歴史的H1N1株のパネルと周期的に反応したという事実から、本発明者らは、可変性が限定されたエピトープがH1 HAのheadドメインに存在し、限られた数のコンフォーメーションを介して、宿主集団の免疫変化として循環すると推測する。
【0258】
実施例3:可変性が限定されたエピトープの同定
可変性が限定されたエピトープを同定するために、抗体結合部位をA/プエルトリコ/8/1934結晶構造に位置付け、それらの部位内の可変性を2,756個のH1配列のアラインメントを参照することによって決定した(
図7)。抗体結合に到達しやすいA/プエルトリコ/8/1934結晶構造の部分のみを考慮した。これを、A/プエルトリコ/8/1934、A/ブレビグミッション/1/1918及びA/カリフォルニア/04/2009の結晶構造を整列させて、タンパク質表面に存在する残基及びそれらの残基の到達性を測定した。一般に、位置の到達性はすべての結晶構造において同じであったが、1つの結晶構造における位置が別の結晶構造よりも到達しやすいときには、その位置を可変性が限定された部位の同定の誤りを防止するためにより到達しやすいとした。ビリオンに含まれるHAの部分も分析では考慮しなかった。
【0259】
in silico分析を使用して、到達性及び結合部位領域が仮想抗体結合部位の可変性に寄与する仕方を求めた。800A
2の抗体結合部位を使用して、3つの到達性パラメータに対する可変性を決定した:到達性>30%、>10%又は>1%のアミノ酸。到達性が>10%の位置のデータセットを使用して、3つの結合部位サイズ600A
2、800A
2又は1000A
2に対する可変性を決定した。両方の手法で、H1 HAのhead内の可変性が限定された同じ領域を同定した(
図7)。
【0260】
in silico分析から存在すると予測された可変性が限定された部位の分析を、予測エピトープをA/プエルトリコ/8/1934、A/ブレビグミッション/1/1918及びA/カリフォルニア/04/2009結晶構造にSwiss-pdbビューアを用いてマッピングすることによって行った。予測部位を結晶構造にマッピングすることによって、エピトープである可能性がある部位を同定することができた。受容体結合部位(RBS:receptor binding site)に近い1部位は、強力な免疫選択下にあることが知られているが可変性が高いと考えられる領域において、この位置156/158の周囲の800A
2領域上の中央にあった(
図8;Catonら、1982)。
【0261】
実施例4:エピトープの循環
12,480個の精選されたH1 HA配列を配列を収集した年に基づいて別々のfastaファイルに分割することによって年ごとのコンセンサス配列を生成した。次いで、Rパッケージ「seqinr」を用いて、コンセンサス配列を生成した。
【0262】
位置156/158の周囲の予測結合部位の分析によれば、非荷電残基を有する位置に加えて、保存された、又は類似の残基タイプ間で変化した、荷電残基を見いだすことができる幾つかの位置が存在した。抗体は荷電残基に優先的に結合することが一般に認められており、したがって可能なエピトープ順列を位置147、156、157、158及び159における荷電アミノ酸の循環に基づいて定義した(Kringelumら、2013)。
【0263】
位置147においては、アミノ酸は、正電荷アミノ酸、リジン又はアルギニン、中性アミノ酸、イソロイシン、及びアミノ酸なしの間で入れ代わった。その結果、部位をこのパターンに基づいて3群に分割した。
【0264】
位置147の系統発生解析によっても、1918~1957及び1977~2015の間のヒトにおけるH1インフルエンザの進化中にアミノ酸が位置147に存在しない株が5回同定された(
図10)。リジン、アルギニン、イソロイシン及びアミノ酸なしの間で循環することも見いだされた。その結果、アルギニンとリジンの両方を正電荷アミノ酸として含むワクチンを有する重要性が強調された。これは、部位が構造的に限定され、少数のコンフォーメーション間で循環することも示した。
【0265】
次いで、147個の陽性群を位置158又は159、158の正電荷アミノ酸、及び位置156又は157の正電荷アミノ酸の存在に基づいて更に分割した。
【0266】
次いで、アラニン又はアスパラギンが位置156に存在するかどうかに基づいて147陽性/158又は157陽性群から追加の群を生成可能にする非荷電アミノ酸の空間充填能力を考察した(
図9)。
【0267】
実施例5:部位特異的変異誘発による中和の減少
2006年後半/2007年前半に採取された6~11歳の小児の血清は、歴史的インフルエンザ株由来のHA1ドメインと広く交差反応した(
図4)。交差反応性は、A/ソロモン諸島/3/2006HA1ドメインと密接に関連したA/ニューカレドニア/20/1999HA1ドメインに加えて、A/WSN/33由来のHA1ドメインに対して最大になる。交差反応性は、A/カリフォルニア/4/2009、A/USSR/90/1977、A/オールバニー/12/1951、A/プエルトリコ/8/34及びA/ブレビグミッション/1/1918に対しても認められた。
【0268】
マイクロ中和アッセイ(
図5)を用いて、リジンが位置147に挿入されると、A/ソロモン諸島/3/2006シュードタイプレンチウイルスに対する最高32倍の中和の減少が認められた(p値0.0005)。位置147におけるリジンの挿入でA/WSN/1933シュードタイプレンチウイルスの最高18.75倍の中和の減少も認められた(p値0.0056)。UKコホートからは11個の血清試料しかA/PR/8/1934シュードタイプレンチウイルスと交差反応性を示さなかったが、リジンを位置147に挿入すると8個の試料で中和が完全に失われ、3個の試料で減少した。これは、これらの株の間の交差反応性の大部分が、位置147における欠損を含むエピトープによって媒介されることを示している。
【0269】
このデータは、アミノ酸位置147の重要性を強調するものである。A/ソロモン諸島/3/2006、A/PR/8/1934及びA/WSN/1933株においては、アミノ酸が位置147に含まれないことに注目されたい。その代わり、これらのウイルスのモノマーは、566個のアミノ酸の代わりに565個からなる。
【0270】
実施例6:ポリペプチドの合成
Invitrogen(登録商標)GeneArt Stringsを使用して、H5、H6又はH11のHA1ドメイン中に置換された可変性が限定されたエピトープからなるキメラHA分子を合成した。部位の3つのコンフォーメーションを最初に使用した。
【0271】
次いで、キメラHA1ドメイン配列をDNA発現コンストラクト及びレンチウイルス糖タンパク質発現ベクター中に挿入した。DNA発現を大腸菌(E.coli)中で行い、Qiagen Giga Prep Kitを用いて精製した。キメラHAを示すレンチウイルスをCarnellら(2015)に概説された手順によって作製した後、スクロースクッション遠心分離によって精製した。H6、H5及びH11 HA1ドメイン中に置換されたコンフォーメーションを以下に示す(アミノ酸位置を括弧内に示す):
ブルー:
N(146)、K(147)、G(148)、V(149)、A(151)、P(154)、H(155)、A(156)、G(157)、A(158)、K(159)、K(163)
AAC(146)AAG(147)GGC(148)GTG(149)GCC(151)CCC(154)CAC(155)GCC(156)GGC(157)GCC(158)AAG(159)AAG(163)
ヘイゼル:
N(146)、I(147)、G(148)、V(149)、A(151)、S(154)、H(155)、A(156)、G(157)、K(158)、S(159)、K(163)
AAC(146)ATC(147)GGC(148)GTG(149)GCC(151)AGC(154)CAC(155)GCC(156)GGC(157)AAG(158)AGC(159)AAG(163)
グリーン:
T(146)、R(147)、G(148)、V(149)、A(151)、S(154)、H(155)、K(156)、G(157)、K(158)、S(159)、R(163)
ACC(146)AGG(147)GGC(148)GTG(149)GCC(151)AGC(154)CAC(155)AAG(156)GGC(157)AAG(158)AGC(159)AGG(163)
オレンジ:
T(146)、K(147)、G(148)、V(149)、A(151)、S(154)、H(155)、N(156)、G(157)、K(158)、S(159)、R(163)
ACC(146)AAG(147)GGC(148)GTG(149)GCC(151)AGC(154)CAC(155)AAC(156)GGC(157)AAG(158)AGC(159)AGG(163)
レッド:
T(146)、なし(147)、)、G(148)、V(149)、A(151)、S(154)、H(155)、N(156)、G(157)、K(158)、S(159)、R(163)
ACC(146)なし(147)GGC(148)GTG(149)GCC(151)AGC(154)CAC(155)AAC(156)GGC(157)AAG(158)AGC(159)AGG(163)
【0272】
これらの配列はワクチンコンストラクト中に挿入されたものに対応し、したがって、任意の交差反応性がそれらに直接起因し得る。
【0273】
実施例7:マウス感作
マウスインフルエンザ感作を以下のインフルエンザ株を用いて行った。
(i)濃度1×105PfuのA/カリフォルニア/4/2009及び(ii)濃度1×103PfuのA/PR/8/1934。体重変化を毎日監視した。感作実験の最適化によって、マウスにおいてワクチンによって誘導される防御をワクチン接種研究において定量化することができる。
【0274】
【0275】
マウスに以下に概説する配列を逐次的にワクチン接種した。
【0276】
【0277】
(ブルー、レッド、ヘイゼル、オレンジ及びグリーンと命名された)6匹のマウスの5群に各々H6 HA中に置換されたエピトープの異なるコンフォーメーションを有するDNA100μgの筋肉内注射によって10週目にワクチン接種した。13週齢において、同じ群に、H5 HA中に置換された同じコンフォーメーションを有するDNA100μgの筋肉内注射によってワクチン接種した。18週齢において、同じ群に、レンチウイルス上にディスプレイされたH11 HA中に置換され、Alumアジュバント(Alhydrogel、Invivogen)と混合された同じコンフォーメーションで筋肉内にワクチン接種した。2つの対照群(パープル及びグレー)に、HAをそれらに置換されたエピトープコンフォーメーションなしで上記マウスと同様にワクチン接種した。最後に、2つの更なる対照群(ブラック及びホワイト)に18週においてPBS及びAlum(Alhydrogel、Invivogen)の偽ワクチンを接種した。11週、14週、20週及び21週において全群から採血した。22週において、ブルー、オレンジ、ヘイゼル及びパープル群をマウス用に改変したA/カリフォルニア/4/2009ウイルスに感作させ、毎日計量した。22週において、レッド、グリーン、グレー及びホワイト群をマウス用に改変したA/PR/8/1934ウイルスに感作させ、毎日計量した。結果を
図6に示す。
【0278】
実施例8:H3インフルエンザ亜型に対するワクチン接種
可変性が限定された部位及び後続の可変性が限定されたエピトープを同定する方法をA型インフルエンザのH3亜型に適用する。H3亜型A型インフルエンザウイルスはH1亜型A型インフルエンザウイルスと同様に進化するので、エピトープを同定するこの手法をH3亜型A型インフルエンザに同様に適用可能である。その結果、エピトープは、H3株の可変性をH3インフルエンザのheadにマッピングし、可変性が限定された領域を同定し、前記領域をH3構造にマッピングして、潜在的エピトープを同定し、次いでコンセンサス配列データを分析して、抗原変異モデルによって予測される周期的に挙動するエピトープを同定することによって、同定することができる。
【0279】
このタイプのエピトープコンフォーメーションは、H4、H7、H10、H14及びH15のHAheadドメインに位置し、VLP又はウイルスベクターを用いて発現される。ワクチンの組合せを初回免疫-追加免疫-追加免疫として投与する。
【0280】
実施例9:ワクチンによって生じる交差反応性
ELISAアッセイをA/PR/8/1934、A/Bel/1942、A/オールバニー/14/1951及びA/メンフィス/3/1987のHA1ドメインに対して行った。相対ELISA単位(REU:Relative ELISA units)を各アッセイにおいてOD1.0に達した公知の陽性試料に基づいて計算した。
【0281】
【0282】
参考文献
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【配列表フリーテキスト】
【0283】
配列番号1:H1headドメイン-アミノ酸
配列番号2:H6headドメイン-アミノ酸
配列番号3:H5headドメイン-アミノ酸
配列番号4:H11headドメイン-アミノ酸
配列番号5:H1headドメイン-ヌクレオチド
配列番号6:H6headドメイン-ヌクレオチド
配列番号7:H5headドメイン-ヌクレオチド
配列番号8:H11headドメイン-ヌクレオチド
配列番号9:H1赤血球凝集素-アミノ酸
配列番号10:H6赤血球凝集素-アミノ酸
配列番号11:H5赤血球凝集素-アミノ酸
配列番号12:H11赤血球凝集素-アミノ酸
配列番号13:headドメイン(ブルー)-H11headに配置されたアミノ酸ブルー配列
配列番号14:headドメイン(ヘイゼル)-H6headドメインに配置されたアミノ酸ヘイゼル配列
配列番号15:headドメイン(グリーン)-H6headドメインに配置されたアミノ酸グリーン配列
配列番号16:headドメイン(オレンジ)-アミノ酸
配列番号17:headドメイン(レッド)-アミノ酸
配列番号18:headドメイン(ブルー)-ヌクレオチド
配列番号19:headドメイン(ヘイゼル)-ヌクレオチド
配列番号20:headドメイン(グリーン)-ヌクレオチド
配列番号21:headドメイン(オレンジ)-ヌクレオチド
配列番号22:headドメイン(レッド)-ヌクレオチド
配列番号23:H9赤血球凝集素-アミノ酸
配列番号24:H1切断部位コンセンサス配列
配列番号25:H5切断部位コンセンサス配列
配列番号26:H6切断部位コンセンサス配列
配列番号27:H9切断コンセンサス配列
配列番号28:H11切断部位コンセンサス配列
【配列表】