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特許7203020ベーカリー製品、デニッシュペストリー、及び類似の製品のオーブン調理用モジュール、並びに、当該モジュールを少なくとも1つ備える直線型トンネルオーブン
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  • 特許-ベーカリー製品、デニッシュペストリー、及び類似の製品のオーブン調理用モジュール、並びに、当該モジュールを少なくとも1つ備える直線型トンネルオーブン 図1
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  • 特許-ベーカリー製品、デニッシュペストリー、及び類似の製品のオーブン調理用モジュール、並びに、当該モジュールを少なくとも1つ備える直線型トンネルオーブン 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-28
(45)【発行日】2023-01-12
(54)【発明の名称】ベーカリー製品、デニッシュペストリー、及び類似の製品のオーブン調理用モジュール、並びに、当該モジュールを少なくとも1つ備える直線型トンネルオーブン
(51)【国際特許分類】
   A21B 1/36 20060101AFI20230104BHJP
【FI】
A21B1/36
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019517388
(86)(22)【出願日】2017-09-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-12-05
(86)【国際出願番号】 FR2017052637
(87)【国際公開番号】W WO2018060628
(87)【国際公開日】2018-04-05
【審査請求日】2020-09-11
(31)【優先権主張番号】1659431
(32)【優先日】2016-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516006493
【氏名又は名称】メカサーム
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】セルジャン オリヴィエ
【審査官】杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第02/073093(WO,A1)
【文献】米国特許第04626661(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21B 1/00-1/52
A47J 37/00-37/12
F24C 1/00-15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品(2)用の調理用モジュール(1)であって、前記調理用モジュール(1)は、
ルーフ(5)と可動式又は非可動式のソール(4)とを備える、調理用エンクロージャ(3)を備え、
前記ソール(4)には、前記製品(2)が、直接的に、又は、調理補助具(6)を介して非直接的に載せられ、
前記調理用モジュール(1)は、また、少なくとも1つの加熱手段(7)を前記ルーフ(5)に備え、
前記ルーフ(5)はプレナム(8)を備え、
前記プレナム(8)では、伝熱流体(9)が、インレット(15)及び少なくとも1つのアウトレット(16a,16b)から循環し、
前記プレナム(8)は、前記伝熱流体(9)を前記調理用エンクロージャ(3)に吹き込むための複数の吹込みオリフィス(10)を備え、
前記調理用モジュール(1)は、少なくとも、
-前記吹込みオリフィス(10)を遮蔽する遮蔽手段(12)であって、少なくとも2つの位置(13,14)の間を移動可能であり、1つは前記吹込みオリフィス(10)を遮蔽する遮蔽位置(13)であり、もう1つは前記吹込みオリフィス(10)を開放する開放位置(14)である、遮蔽手段(12)と、
-前記プレナム(8)を介して流れる、及び/又は、前記調理用エンクロージャ(3)に吹き込まれる前記伝熱流体(9)を吸い上げる、吸上げ手段(22a,22b)とをさらに備え、
前記遮蔽手段(12)は、プレート(18)状の閉鎖手段からなり、前記プレート(18)には、前記吹込みオリフィス(10)に対応する配置に従ってオリフィス(19)が設けられ、それにより、前記開放位置(14)では、前記オリフィス(19)が前記製品(2)の対流式加熱用の前記吹込みオリフィス(10)の正面に位置され、前記遮蔽位置(13)では、前記プレート(18)の前記オリフィス(19)は前記吹込みオリフィス(10)に対してずれた位置に設けられ、前記プレート(18)は、前記吹込みオリフィス(10)を閉鎖し、前記製品(2)の放射式加熱へと導き、
前記プレナム(8)は、一方で、前記吹込みオリフィス(10)によって形成される前記伝熱流体(9)用の第1アウトレット(16a)と、吸上げダクト(22b)に連通する第2アウトレット(16b)とを備え、
前記調理用モジュールは、また、前記調理用エンクロージャ(3)に連通する少なくとも1つの吸上げダクト(22a)を備え、
前記吸上げダクト(22a,22b)は、それぞれ、少なくとも開放位置から閉鎖位置へと通過可能な閉鎖手段(24、21)を備え、
前記遮蔽手段(12)が前記開放位置(14)又は前記遮蔽位置(13)にあるとき、前記吸上げダクト(22a)の前記閉鎖手段(24)は、それぞれ開放又は閉鎖位置にあり、一方で、前記遮蔽手段(12)が前記遮蔽位置(13)又は前記開放位置(14)にあるとき、前記吸上げダクト(22b)の前記閉鎖手段(21)は、それぞれ開放又は閉鎖位置にある、調理用モジュール(1)。
【請求項2】
前記調理用モジュール(1)は、さらに、前記伝熱流体(9)の吸上げ用の管理手段(23)を備え、
前記管理手段(23)は、前記吸上げダクト(22a、22b)の前記閉鎖手段(24、21)の開放又は閉鎖を必要に応じて管理することが可能な、請求項1に記載の調理用モジュール(1)。
【請求項3】
製品(2)用の調理用モジュール(1)であって、前記調理用モジュール(1)は、
ルーフ(5)と可動式又は非可動式のソール(4)とを備える、調理用エンクロージャ(3)を備え、
前記ソール(4)には、前記製品(2)が、直接的に、又は、調理補助具(6)を介して非直接的に載せられ、
前記調理用モジュール(1)は、また、少なくとも1つの加熱手段(7)を前記ルーフ(5)に備え、
前記ルーフ(5)はプレナム(8)を備え、
前記プレナム(8)では、伝熱流体(9)が、インレット(15)及びアウトレット(16)から循環し、
前記プレナム(8)は、前記伝熱流体(9)を前記調理用エンクロージャ(3)に吹き込むための複数の吹込みオリフィス(10)を備え、
前記調理用モジュール(1)は、少なくとも、
-前記吹込みオリフィス(10)を遮蔽する遮蔽手段(12)であって、少なくとも2つの位置(13,14)の間を移動可能であり、1つは前記吹込みオリフィス(10)を遮蔽する遮蔽位置(13)であり、もう1つは前記吹込みオリフィス(10)を開放する開放位置(14)である、遮蔽手段(12)と、
-前記プレナム(8)を介して流れる、及び/又は、前記調理用エンクロージャ(3)に吹き込まれる前記伝熱流体(9)を吸い上げる、吸上げ手段(22a,22b)とをさらに備え、
前記遮蔽手段(12)は、前記伝熱流体(9)を偏向する偏向スクリーン(12a)の形状で前記遮蔽位置(13)に位置し、
前記プレナム(8)は、前記吹込みオリフィス(10)によって形成される前記アウトレット(16)を備え、
前記偏向スクリーン(12a)の形状である前記遮蔽手段は、前記プレナム(8)の下方に空間(25)を形成し、
前記空間(25)は、前記吹込みオリフィス(10)から吹き込まれ、前記遮蔽位置(13)に位置する前記遮蔽手段(12)によって遮られた前記伝熱流体(9)の再循環のために、1つの吸上げダクト(22)と連通し、
前記吸上げダクト(22)は、前記調理用エンクロージャ(3)と連通すると共にその全体が前記プレナム(8)の外側に位置する、調理用モジュール(1)。
【請求項4】
前記偏向スクリーン(12a)を形成する前記遮蔽手段は、前記吹込みオリフィス(10)に対応する配置に一致するオリフィス(19a)を有するプレート(18a)状であり、それにより、
前記開放位置(14)において、前記オリフィス(19a)は、前記製品(2)の対流式加熱のために、前記吹込みオリフィス(10)の正面に位置し、
前記遮蔽位置(13)において、前記オリフィス(19a)は、前記吹込みオリフィス(10)とずらして設けられ、前記プレート(18)は、前記吹込みオリフィス(10)を閉鎖し、前記製品(2)の放射式加熱へと導く、請求項3に記載の調理用モジュール(1)。
【請求項5】
前記遮蔽位置(13)において、前記プレート(18a)に吹付けられた前記伝熱流体(9)を、前記伝熱流体(9)が前記調理用エンクロージャ(3)に達しないように、また、前記開放位置(14)において、前記伝熱流体(9)を、前記オリフィス(19a)同士の間から前記プレナム(8)に向けて放出するため、前記オリフィス(19a)の開口は、円錐台状の形状を有する、請求項4に記載の調理用モジュール(1)。
【請求項6】
前記プレナム(8)の高さで、前記吹込みオリフィス(10)の配列は横断方向又は長手方向に採られ、前記偏向スクリーン(12a)を形成する前記遮蔽手段はブレードであり、前記ブレードの寸法及び間隔は、前記遮蔽位置(13)において前記吹込みオリフィス(10)の列の下方に延在するように、かつ、前記開放位置(14)において前記吹込みオリフィス(10)の列同士の間に挟まるように定義される、請求項3から5のいずれか1項に記載の調理用モジュール(1)。
【請求項7】
前記吹込みオリフィス(10)は、前記ルーフ(5)から前記製品(2)へと向かう対流の誘導を容易にする、前記伝熱流体(9)用のガイド(17)を備え、
前記ガイド(17)は、チューブ長手の形状を有し、前記プレナム(8)内へと延在するか、又は、全体的に或いは部分的に前記プレナム(8)の下方に延在する、請求項1から6のいずれか1項に記載の調理用モジュール(1)。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載のモジュール(1)を少なくとも1つ備えるオーブン。
【請求項9】
並列に配置されたいくつかの請求項1から7のいずれか1項に記載のモジュール(1)を備える、直線型調理用トンネルオーブン。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明分野]
本発明は、アーチ型ルーフと可動又は非可動ソールとを備える調理用エンクロージャが設けられた、ベーカリー製品やペストリー製品等用の調理用モジュールに関するものであり、ソールには、当該製品が直接的に、又は、皿、網、或いは製パン型等の適切な調理補助具を介して非直接的に載せられ、当該モジュールは、ルーフに加熱手段を有し、当該ルーフはプレナムを備え、プレナム内では、インレットから少なくとも1つのアウトレットへと伝熱流体が循環する。
【0002】
本発明はまた、上述のモジュールを少なくとも1つ備える、ベーカリー製品やペストリー製品等用のベーキングオーブンに関する。
【0003】
本発明は、ベーカリー製品やペストリー製品等用の、可動又は非可動ソールを備えるタイプのベーキングオーブンの分野に関するものであり、ソールには、調理される製品又は予備調理される製品が直接的に、又は製品を支持或いは収容する皿、網、或いは製パン型を介して同一平面に載せられる。
【0004】
[先行技術の説明]
上述の説明に該当するベーカリー製品、ウィーン風パン、ペストリー等用のベーキングオーブンには種々のタイプがあり、その中でも、固定ソール付きオーブンと、可動ソール付きオーブンとで本質的に区別できる。
【0005】
略言すれば、固定ソール付きオーブンには、本質的に搬入用インレットと搬出用インレットとの両方を備える調理用エンクロージャが設けられており、インレットを介して製品をソールに載せ、調理又は予備調理した状態でソールから取り出すことができる。
【0006】
上述したようなオーブンが、1つ又はそれ以上のフロアを有するように設計されてもよいことは、明記されるべきである。可動ソール付きオーブンは、いくつかの調理用エンクロージャを連ねた形状であり、各調理用エンクロージャはソールとルーフとによってその範囲が定められ、搬入用及び搬出用の少なくとも1つのインレットを含む。
【0007】
可動ソール付きオーブンのうち、ドロワーソール付きオーブンは区別される。ドロワーソール付きオーブンは、上述の説明に合致するとともに、さらに、調理される製品の載置又は調理終了時の取り出しができるように、調理用エンクロージャから取り外し可能なソールを備える。
【0008】
さらに、搬入のために製品を当該ベルトに連続的に載置するのか、当該ベルトから降ろして搬出するために、製品を調理用エンクロージャから取り出すのかによって運搬方向が逆転する、可動ベルトコンベヤの形状をしたソールを有するオーブンが知られている。
【0009】
同様に知られているオーブンとしては、特に、製品の連続調理に用いられる直線型トンネルオーブンがある。直線型トンネルオーブンは、製品用インレットとアウトレットとの間に水平に延在する少なくとも1つの調理用エンクロージャを備え、当該調理用エンクロージャはルーフとソールとによってその範囲が定められ、ソールは可動ベルトの形状を有する。
【0010】
可動ベルトそのものは、水平方向に連続した堅い石製ソール又は金属ソールを形成するべく、互いに関節で繋がれた、連続した石製ブレード又は金属プレートから成る「中実」ベルトから、その対極の可動ベルト、特に、製パン型又は皿による重い調理ラインの運搬用に使用され、強力なソール側の熱対流によって良好な調理性能が確保される、非常に目の粗い網目を含む可動ベルトまで多岐に亘る。
【0011】
ベルトは、ソールを形成するように連続した皿の形状であってもよく、ソールには調理される製品が載置される。
【0012】
このような直線型トンネルオーブンが、多段式であってもよく、また、上述のような、それぞれがソールとルーフとによってその範囲を定められた複数のトンネル状の調理用エンクロージャを連ねたものを含んでもよいことは、明記されるべきである。
【0013】
いずれにしても、上述した現状技術に係るこのオーブンは、ソールの加熱手段に加えてルーフの加熱手段を有する。
こうした加熱手段には、対流式加熱手段、又は放射式加熱手段の2種類が存在し得る。放射式加熱手段において、調理用エンクロージャの循環手段を協働させることは周知の事項である。
【0014】
ソールの材料が中実材料であっても、その逆に、対流式加熱が望まれるときに伝熱流体が当該ソールを通過し易くするために、非常に多くの孔を有する材料であっても、ソールの加熱器の種類は、放射式又は対流式のどちらの場合でも、当該ソールの構成に影響する。
【0015】
通常、ルーフの加熱手段は放射式加熱である。したがって、このルーフの高さに電気抵抗、又はプレナムが設けられ、プレナムを介して伝熱流体がインレットからアウトレットへと流れ、このプレナムから調理される製品又は予備調理される製品への放射を可能にする。
【0016】
上述したとおり、ソールとルーフの加熱手段が本質的に放射式であるとき、循環手段は、調理用エンクロージャの高さに設置され得る。
【0017】
対流式加熱の場合、伝熱流体を循環させる手段により、特に、透過性ソールを介して、伝熱流体が確実に調理用エンクロージャ内に吹き込まれるようにし、また、採用された吸引手段を使って、伝熱流体が確実に調理用エンクロージャから除去されるようにする。
【0018】
また、米国特許第4626661号明細書によって、プレナムに接続された複数のエアチャネルと、プレナムを介してエアダクトへ熱風を供給するためのファンとを有する食品調理用オーブンが知られている。
【0019】
ルーフに設けられたエアダクトは、ベルトコンベヤーによってエンクロージャ内を移動する製品へと下向きに吹込む、複数の吹込みオリフィスを有する。
【0020】
ルーフに設けられた吹込みオリフィスは、該複数のオリフィスが設けられたプレートと一体に作られたカバープレートによって閉鎖され得る。この一体化は、複数のオリフィスが設けられたプレートに対するカバープレートの動きを抑制する、取り外し可能なロックピンの使用や、ナットとボルトとの組み合わせの使用によって生じる。
【0021】
オリフィスを再度開放したい場合は、上述のロック手段をそれぞれ開放する必要があり、これが時間がかかり面倒であることは当然明らかである。
【0022】
これは、米国特許4,591,333号明細書に記載のシステムの欠点でもあり、当該特許明細書には、空気がオーブン内のいくつかの場所から抜けるのを防ぎながら、放射熱による製品の調理を行うために、プレートで通気道開口部を覆うことができることが記載されている。
【0023】
これに加え、欧州特許第1368595号明細書によると、対流式加熱手段を備えたソールと、対流式あるいは放射式の選択的加熱手段を備えたルーフとを有する、ベーカリー製品やペストリー製品等用のトンネルオーブン式ベーキングオーブンが知られていることにも言及するべきである。
【0024】
より正確には、プレナムはルーフに延在し、調理用エンクロージャ内でルーフから放射熱を提供できるように、プレナムではインレット及びアウトレットから伝熱流体を循環できる。
【0025】
また、調理用エンクロージャ内に延在するパイプまたはスリーブは、該ルーフを垂直方向に貫通する。対流加熱を確実にするために、伝熱流体は、上述のスリーブをいくつか介して該エンクロージャ内に吹き込まれる。
【0026】
ファンの形状をした伝熱流体の循環手段を含む加熱回路、例えば、ガスボイラ等の該伝熱流体の加熱手段や、制御バルブを備える伝熱流体循環回路は、必要に応じて以下を許容する。
【0027】
-伝熱流体を透過性ソールの下に導くこと、及び/又は、
-ルーフにおける放射式加熱のために、該伝熱流体をプレナム内で循環させること、及び/又は、
-伝熱流体を、プレナムを通るチューブを介して調理用エンクロージャ内に吹き込むために、エンクロージャ内に導くこと。
【0028】
伝熱流体の再循環のために、スリーブの第2の部分と連通しているリサイクルダクトが、調理用エンクロージャ及び/又はプレナムからファンを介して該伝熱流体を吸い上げることを可能にすることは、明記されるべきである。
【0029】
このようなオーブンによって、ルーフにおける放射による加熱又は熱対流による加熱、さらには両方の加熱を同時に行うことが可能ではあるが、扱い難い高さを有する複雑な設計による欠点があることは、よく理解されている。
【0030】
実に、熱対流による加熱、及びルーフにてプレナムを貫通するパイプへの伝熱流体の供給を確実にするために、エンクロージャは該プレナムの上方に延在しなければならない。
【0031】
さらに、一方では、放射式加熱に備えて、プレナム内に、プレナムを流れる伝熱流体の循環に対する抵抗を作ることにより負荷が大きくなるので、ルーフからの対流加熱を多かれ少なかれ確実に効率よくするために、多数のパイプをプレナムに通過させなければならない。これをさらに強調するのが、チューブの半数が空気の排出を可能にするために設けられており、最終的にルーフによる不均衡な製品加熱及び不均衡な製品調理という結果を招いているという事実である。
【発明の概要】
【0032】
本発明は、使用者がルーフにおける対流式加熱モードと放射式加熱モードとのいずれかを選択する可能性、及び、調理される製品又は予備調理される製品にかかる調理上の制約に、選択した加熱モードを採用する可能性を維持しつつ、上述した全ての欠点に対処することを目的とする。
【0033】
この目的で、本発明は、ルーフと、可動式又は非可動式ソールとを備える調理用エンクロージャを備えた、ベーカリー製品やペストリー製品等用の調理用モジュールに関するものであって、ソールには、当該製品が直接的に、又は、皿、網、或いは製パン型等の適切な調理補助具を介して非直接的に載せられ、当該モジュールは、ルーフに加熱手段を有し、当該ルーフはプレナムを備え、プレナム内では、インレットから少なくとも1つのアウトレットへと伝熱流体が循環し、プレナムは、伝熱流体を調理用エンクロージャに吹き込むための複数のオリフィスを備え、当該モジュールはさらに以下を備える。
【0034】
-少なくとも2つの位置の間で該可動式吹込みオリフィスを遮蔽する手段であって、1つは該吹込みオリフィスを遮蔽する位置であり、もう1つは該吹込みオリフィスを開放する位置である、手段。
-プレナムを介して流れる、及び/又は、調理用エンクロージャに吹き込まれる伝熱流体を吸い上げる手段。
-最後に、伝熱流体の吸い上げを管理する手段。
【0035】
特に、遮蔽手段は板状の閉鎖手段からなり、該板状の閉鎖手段において、該吹込みオリフィスに対応する配置に従ってオリフィスが設けられ、それにより、、開放位置では、製品の対流式加熱用に、オリフィスが吹込みオリフィスの正面に位置し、遮蔽位置では、オリフィスが吹き込みオリフィスに対してずれた位置に設けられ、該板状の閉鎖手段が吹き込みオリフィスを閉鎖し、製品の放射式加熱へと導く。
【0036】
本発明から得られる利点は、本発明に係るオーブン又はオーブンモジュールのルーフにおけるプレナムによって、該プレナムに備えられた吹込みオリフィスを遮蔽する単純な手段を採ることで、又は、以下の詳細な記載によって明らかになる実施形態の選択によっては、伝熱流体を吸い上げる手段を採ることで、放射式及び/又は対流式加熱モードを選択することが可能である点に存在する。
【0037】
本質的には、本発明はプレナムの上方に延在するエンクロージャを省略することを可能にする。この延在するエンクロージャは、欧州特許第1368595号明細書の開示に対応する技術による問題の解決には必要不可欠なものである。
【0038】
高さと設計の単純化とによる利得は、相当なものである。この高さの利得は、多段式オーブンの設計においては特に興味深い。
【0039】
本発明のさらなる目的及び利点は、限定を目的としない、例示の目的で供される、特定の例示的実施形態に関する以下の詳細な記載によって明らかにされる。
【0040】
以下の詳細な記載は、添付の図面を参照するとより容易に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1図1は、本発明に係る、開放位置に遮蔽手段を備える調理用モジュールの、特定の一実施形態の概略断面図である。
図2図2は、閉鎖位置に遮蔽手段を備える、図1に類似する図である。
図3図3は、図1に類似する、つまり開放位置に遮蔽手段を備える、本発明の別の実施形態に係る図である。
図4図4は、閉鎖位置に遮蔽手段を備える、図3に類似する図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
[実施形態の詳細な説明]
添付の図面に示すとおり、本発明は、下部をソール4、上部をルーフ5によってその範囲を定められた調理用エンクロージャ3を備える、ベーカリー製品2やペストリー製品等用の調理用モジュール1に関するものである。
【0043】
ソール4は固定式でも可動式でもよく、可動式の場合は、該ソール4は、例えば、調理用モジュール1のインレットとアウトレットとの間の、図示しないループ回路内を移動する可動ベルトの形状でもよい。
【0044】
該ソール4には、製品2が直接的に又は、皿、網、或いは製パン型等の適切な支持具6を介して非直接的に載せられる。
【0045】
このような調理用モジュール1によれば、ソール4は放射又は熱対流による加熱手段を有利に備え得るが、いずれにしても、本発明によれば、調理用モジュール1は、プレナム8を備えるルーフ5に加熱手段7を有する。プレナム8は、好ましくは、ルーフ5の表面を全て覆うように延在する。
【0046】
該プレナム8の内部では、灰色の矢印によって図示される伝熱流体9が循環する。
本発明によれば、プレナム8は、伝熱流体9を調理用エンクロージャ3内に吹き込むための、複数の吹き込みオリフィス10を有する。
【0047】
したがって、上述の複数の吹込みオリフィス10は、プレナム8の下部壁11の高さに、調理用エンクロージャ3に向かって形成される。
【0048】
さらに、本発明に係る調理用モジュール1は、上述の吹込みオリフィス10を遮蔽するための遮蔽手段12を備え、遮蔽手段12は少なくとも2つの位置間を移動でき、1つは上述の吹込みオリフィス10を遮蔽する遮蔽用位置13であり、もう1つは上述のオリフィス10を開放する開放用位置14である。
【0049】
遮蔽手段12の開放位置14は、添付の図1にその概略を示す。同じく遮蔽手段12の遮蔽位置13は、図2で確認できる。
【0050】
簡潔に言うと、プレナム8が、調理用エンクロージャ3のルーフ5における、原則的には放射式加熱を確実に行うように、遮蔽手段12が遮蔽位置13にあるとき、伝熱流体9はプレナム8を介してインレット15から少なくとも1つのアウトレット16b又は16へと流れる(引き続き本明細書にて明らかになるが、実施形態による)。
【0051】
その一方で、調理される、又は予備調理される製品2が確実にルーフ5から対流加熱されるように、遮蔽手段12が開放位置14にあるとき、伝熱流体9はプレナム8を介してインレット15から、吹込みオリフィス10によって形成されるアウトレット16a又は16へと流れる。
【0052】
ところで、放射式加熱及び対流式加熱を組み合わせる場合は、遮蔽手段12が、遮蔽位置13と開放位置14との間の中間地点に存在してもよいことは、明記されるべきである。
【0053】
また、対流式加熱では、吹込みオリフィス10の高さにおいて、ルーフ5から製品2へと向かう熱対流の誘導を容易にする伝熱フローガイド17が設けられてもよいことも、明記されるべきである。
【0054】
以下の説明では、先ず、本発明の第1実施形態に対応する、添付の図面の図1,2を参照する。
【0055】
本発明に係るこの典型的な実施形態の枠組みにおいては、遮蔽手段12は、より具体的には、吹込みオリフィス10を閉鎖する手段として定義される。
【0056】
有利な実施形態によれば、遮蔽手段12はプレート18として設けられ、プレート18には、吹込みオリフィス10と対応する配置に従ってオリフィス19が形成され、それにより、図1に示すように、遮蔽手段12が開放位置14にあるとき、ルーフ5からの対流加熱を確実にするため、プレート18のオリフィス19は吹込みオリフィス10の正面に位置する。
【0057】
その一方で、図2に概略的に示すように、遮蔽手段12の遮蔽位置13ではプレート18のオリフィス19は、吹込みオリフィス10とずれるように設けられ、プレート18が吹き込みオリフィス10を閉鎖し、製品2の放射式加熱が行われる。
【0058】
このような、遮蔽手段12を閉める手段としての実施形態では、プレナム8が、伝熱流体9がインレット15からプレナム8に流入するための、吸上げ口22bとして定義される流体アウトレット16b、又は吸上げダクト22bを備えることは、明記されるべきである。
【0059】
図1によれば、対流式加熱モードにおいて、遮蔽手段12が開放位置14にあるとき、伝熱流体9に強制的に吹込みオリフィス10を通過させるために、調理用モジュール1は、アウトレット16bを閉鎖する閉鎖手段21を備える。
【0060】
反対に、図2に示すように、放射式加熱モードで、遮蔽手段12が遮蔽位置13にあるとき、アウトレット16bを閉鎖する上述の閉鎖手段21は、開放位置へと移動させられる。
【0061】
本実施形態では、調理用モジュール1は、さらに、対流式加熱モードにてルーフ5から調理用エンクロージャ3へと吹き込まれた伝熱流体9が、吹込みオリフィス10によって形成されたアウトレット16aを介して吸引及び再循環できるように、調理用エンクロージャ3に少なくとも1つの吸上げダクト22aを備える。
【0062】
吸上げダクト22bのように、この吸上げダクト22aもまた閉鎖手段24を備える。
採用された管理手段23は、調理用モジュール1に設けられ、調理エンクロージャ3と連通する吸上げダクト22aの閉鎖手段24及び、プレナム8の吸上げダクト22bの閉鎖手段21の開放又は閉鎖を、必要に応じて管理する。
【0063】
上述の管理手段23によって、遮蔽手段12が遮蔽位置13に位置する放射モードにおいては、伝熱流体9が単純にプレナム8を通過する再循環、又は、遮蔽手段12が開放位置14に位置する対流モードにおいては、プレナム8に設けられた吹込みオリフィス10を介して、伝熱流体9が調理用エンクロージャ3へ吹き込まれる再循環が、確実に行われる。
【0064】
この点で、調理用モジュール1は、プレナム8及び/又は調理用エンクロージャ3から流れてくる伝熱流体9を、バーナー、又は抵抗器等の適切な加熱手段へ送り込むために同時に吸い上げ、プレナム8内へ押し戻すために、ファン等の形状の伝熱流体9の再循環手段を備えてもよい。
【0065】
このような再循環手段は当業者の知るところである。
しかしながら、放射式及び対流式を組み合わせた加熱の場合、閉鎖手段24,21がそれぞれ閉鎖位置と開放位置との間の中間地点に配置された状態で、管理手段23が、上述の吸上げダクト22a,22bそれぞれを介して吸上げられる伝熱流体9を調節することができる、ということは覚えておくべきである。
【0066】
図3,4に示す実施形態は、上述した実施形態とは異なる。つまり、遮蔽位置13において、遮蔽手段12は、吹込みオリフィス10を介して調理用エンクロージャ3へ吹き込まれた伝熱流体9を偏向する偏向スクリーン12aの形状である点で異なる。偏向スクリーン12aは、図3においては開放位置14に、図4においては遮蔽位置13に記載されている。
【0067】
本実施形態においては、プレナム8の伝熱流体アウトレット16は、オリフィス10によって形成される。
スクリーンの形状である遮蔽手段12aは、上述のオリフィス10の下方に、オリフィス10からある程度離れて設けられる。
【0068】
最後に、遮蔽位置13に位置する上述の遮蔽手段12aは、プレナム8の下方にスクリーンを形成することによって、プレナム8とともに、吸上げダクト22が連通する空間25の範囲を定め、吹込みオリフィス10から吹き込まれスクリーンを形成する遮蔽手段12aに遮られた伝熱流体9の再循環を可能にする。
【0069】
図3により具体的に示すように、有利には、上述の吸上げダクト22は調理用エンクロージャ3とも連通することから、遮蔽手段12aが開放位置14に位置するときに、吹込みオリフィス10を介して調理用エンクロージャ3へと吹き込まれる伝熱流体9の再循環に一層貢献する。
【0070】
上述のスクリーン12aを形成する遮蔽手段の説明に戻る。スクリーン12aを形成する遮蔽手段は、本実施形態においてもプレート18aの形状であってよく、プレート18aは、前述の実施形態と同様に、プレナム8の吹き込みオリフィス10と適当に対応するオリフィス19aを備える。
【0071】
有利には、遮蔽位置13において、オリフィス19a同士の間からプレート18aに吹付けられた伝熱流体9を、伝熱流体9が調理用エンクロージャ3に達しないように、プレナム8に向けて放出するため、上述したプレート18aのオリフィス19aの開口は、円錐台状の形状を有する。
【0072】
図4に示すように、この位置では、スクリーン状の遮蔽手段12aのプレート18aを加熱する伝熱流体9は、プレート18aを介した放射によって調理用エンクロージャ3の加熱に貢献する。
【0073】
図3では、開放位置14に設けられたプレート18aを特に具体的に説明しており、プレート8のオリフィス19aは、プレナム8の吹込みオリフィス10と対応する。
あるいは、プレナム8の高さで、吹込みオリフィス10の配列を横断方向又は長手方向に採ったとき、スクリーンを形成する遮蔽手段12aは、特に長手方向にせり上がったエッジを有する溝の形状をしたブレードによって形成され得る。
【0074】
上述のブレードの寸法及び間隔は、必要に応じて、図4に示す遮蔽位置13にて、プレナム8の吹込みオリフィス10の列の下方に延在するように形成されるか、又は逆に、図3において確認できる開放位置14にて、吹込みオリフィス10の列の下方に伝熱流体9を調理用エンクロージャ3に吹き込むことができる穴を確保しつつ、吹込みオリフィス10の列同士の間に挟まるように形成される。
【0075】
上述した円錐台状の開口のように、ブレードのせり上がったエッジは、スクリーン12aを形成する遮蔽手段の遮蔽位置13において、空間25に伝熱流体9を放出することを意図して設けられる。
【0076】
ここでの目的は、本質的に、調理用エンクロージャ3内の遮蔽位置13における上述のブレードの熱放射により、ルーフ5に加熱手段を設けることである。
有利には、上述したとおり、吹込みオリフィス10は伝熱流体フローガイド17を備えてもよい。
【0077】
添付の図1,2を参照して説明した第1実施形態によれば、遮蔽手段12が吹込みオリフィス10を閉鎖する手段を形成する場合、上述のガイド17は、チューブ長手の形状を有し、プレナム8内へと延在してよい。
【0078】
反対に、スクリーン12aを形成する遮蔽手段である場合、伝熱流体ガイド17を形成するこれらチューブ長手が、全体的に、又は部分的に、プレナム8の下方に延在してもよい。
【0079】
図3,4に、チューブ長手の形状を有し、部分的にプレナム8内に延在し、部分的にプレナム8下方に延在する伝熱流体ガイド17を概略的に示す。
この2つ目の解決策は、プレナム8を通過する伝熱流体9の圧力低下が減少するという利点を有する。
【0080】
上述したような伝熱流体ガイド17が、放射式加熱の性能をより良くするためにプレナム8に設けられた下部壁11との熱交換を促進することは、明記されるべきである。
【0081】
図3,4を参照して、モジュールの調理用エンクロージャ3と連通し、伝熱流体を吸上げる、吸上げダクト22を1つのみ有するモジュール1の実施形態を記載したが、吸上げダクト22は、プレナム8とスクリーン12aを形成する遮蔽手段との間の空間25とも連通する。
【0082】
しかしながら、上述したような実施形態は限定的なものではなく、図1,2を参照して記載した実施形態と同様に、各々が閉鎖手段を備え、導管の1つが調理用エンクロージャ3と連通し、もう1つがプレナム8とスクリーン12aを形成する遮蔽手段との間の空間25と連通する、2つの吸上げダクトを有する可能性も考えられる。
【0083】
上記の場合、モジュール1は、必要に応じて以下を行うために、上記吸上げダクトを閉鎖する手段に働きかける伝熱流体9の吸上げを管理する手段をも備える。
-遮蔽手段12aが開放位置14にあるとき、スクリーン18aを形成するプレートとプレナム8との間の空間25に連通する吸上げダクトを閉鎖し、ルーフ5から対流加熱が行われている場合は、調理用エンクロージャ3に連通する吸上げダクトを開放すること。
-その一方で、遮蔽手段12aが遮蔽位置13にあるとき、スクリーン18aを形成するプレートとプレナム8との間の空間25に連通する吸上げダクトを開放し、ルーフ5から放射式加熱が行われている場合は、調理用エンクロージャ3に連通する吸上げダクトを閉鎖すること。
【0084】
しかしながら、上述した第1実施形態のように、放射式及び対流式を組み合わせた加熱の場合、閉鎖手段が閉鎖位置と開放位置との間の中間地点に配置された状態で、管理手段が、各吸上げダクトを介して吸上げられる伝熱流体を調節することができる、ということは覚えておくべきである。
【0085】
本発明は、また、本発明に係る少なくとも1つのモジュール1を備えるオーブンに関する。
【0086】
好ましくは、該オーブンは、可動ベルトの形状を有するソール4が通過するいくつかの並列モジュール1を含む、直線型トンネルオーブンである。
したがって、製品2の必要調理条件に合わせて、製品2がオーブンを通過する間、加熱手 段を最適に調節するため、各モジュール1の高さ毎に、必要に応じて、放射式、対流式、又は放射式/対流式の組み合わせから加熱手段を選択できる。
図1
図2
図3
図4