(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-28
(45)【発行日】2023-01-12
(54)【発明の名称】ソイルリリース剤
(51)【国際特許分類】
D06M 15/09 20060101AFI20230104BHJP
【FI】
D06M15/09
(21)【出願番号】P 2019558249
(86)(22)【出願日】2018-12-05
(86)【国際出願番号】 JP2018044721
(87)【国際公開番号】W WO2019111948
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-09-15
(31)【優先権主張番号】P 2017234710
(32)【優先日】2017-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 隆儀
(72)【発明者】
【氏名】伊森 洋一郎
(72)【発明者】
【氏名】小山 皓大
(72)【発明者】
【氏名】山脇 有希子
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-178303(JP,A)
【文献】特開平10-195772(JP,A)
【文献】国際公開第2016/077207(WO,A1)
【文献】特開2007-045991(JP,A)
【文献】国際公開第2017/142869(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/094582(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M15-15/715
C11D1/00-19/00
D06L1/00-4/75
C09D1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシアルキルセルロースに、カチオン性基、及び炭素数4以上の炭化水素基を含む疎水
基が結合しており、アニオン性基の置換度が
0.001以下であ
り、
カチオン性基が、式(2-1)又は式(2-2)で表される、変性ヒドロキシアルキルセルロースからなるソイルリリース剤。
【化1】
(式(2-1)及び式(2-2)中、R
21
~R
23
はそれぞれ独立に、炭素数1以上3以下の炭化水素基を示し、X
1a-
はアニオンを示し、tは0以上3以下の整数を示し、*はヒドロキシアルキルセルロースの水酸基から水素原子を除いた基との結合位置を示す。)
【請求項2】
変性ヒドロキシアルキルセルロースにおける炭素数4以上の炭化水素基を含む疎水基の置換度が、0.0001以上1以下である、請求項1に記載のソイルリリース剤。
【請求項3】
変性ヒドロキシアルキルセルロースにおけるカチオン性基の置換度が、0.001以上1以下である、請求項1又は2に記載のソイルリリース剤。
【請求項4】
ヒドロキシアルキルセルロースの重量平均分子量が1,000以上3,000,000以下である、請求項1~3のいずれかに記載のソイルリリース剤。
【請求項5】
炭素数4以上の炭化水素基を含む疎水基が、下記式(1)で表される、請求項1~4のいずれかに記載のソイルリリース剤。
【化2】
(式(1)中、Zは単結合、又は酸素原子及び窒素原子から選ばれる少なくとも1つを有する炭化水素基を示し、R
1は炭素数4以上の炭化水素基を示し、*はヒドロキシアルキルセルロースの水酸基から水素原子を除いた基との結合位置を示す。)
【請求項6】
式(1)で表される疎水基が、下記式(1-1-1)で表される疎水基、式(1-1-2)で表される疎水基、式(1-2-1)で表される疎水基、式(1-2-2)で表される疎水基、式(1-3)で表される疎水基、及び式(1-4)で表される疎水基から選ばれる少なくとも1つを含む、請求項5に記載のソイルリリース剤。
【化3】
(式(1-1-1)~式(1-4)中、R
11及びR
12はそれぞれ独立に、炭素数2~4のアルキレン基を示し、R
1は式(1)におけるR
1と同義であり、*はヒドロキシアルキルセルロースの水酸基から水素原子を除いた基との結合位置を示し、n1は-R
11O-の付加モル数を示し、n2は-R
12-O-の付加モル数を示し、n1及びn2は0以上30以下の整数である。)
【請求項7】
疎水基が含有する炭化水素基の炭素数が6以上14以下である、請求項1~6のいずれかに記載のソイルリリース剤。
【請求項8】
変性ヒドロキシアルキルセルロースの疎水基の置換度(MS
R)とカチオン性基の置換度(MS
C)の比(MS
R/MS
C)が0.001以上10以下である、請求項
1~7のいずれかに記載のソイルリリース剤。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれかに記載のソイルリリース剤を含有する、ソイルリリース組成物。
【請求項10】
洗浄剤組成物の添加剤である、請求項1~
8のいずれかに記載のソイルリリース剤又は請求項
9に記載のソイルリリース組成物。
【請求項11】
洗浄剤組成物である、請求項1~
8のいずれかに記載のソイルリリース剤又は請求項
9に記載のソイルリリース組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はソイルリリース剤に関する。
【背景技術】
【0002】
多糖誘導体は、シャンプーやリンス、トリートメント、コンディショナー等の毛髪洗浄剤組成物や衣料の洗浄剤組成物の配合成分に用いられ、その用途は多岐にわたる。
特開2000-178303号公報(特許文献1)には、洗濯用仕上げ剤として、特定のアルキル基、カルボキシメチル基、及びカチオン基で置換されている多糖誘導体が記載されている。
特開2015-168666号公報(特許文献2)には、特定の界面活性剤、カチオン性基含有セルロースエーテル及びグリセリルエーテルを含有する、水性毛髪洗浄剤が記載されている。
特表2013-529644号公報(特許文献3)には、多糖類、及びカチオン性モノマーを含有する合成ポリマーからなる群から選択される特定の持続性ポリマーを含む、パーソナルケア組成物添加剤が開示されている。
【発明の概要】
【0003】
本発明は以下の<1>及び<2>に関する。
<1> ヒドロキシアルキルセルロースに、カチオン性基、及び炭素数4以上の炭化水素基を含む疎水基から選ばれる1種以上が結合している変性ヒドロキシアルキルセルロースからなるソイルリリース剤。
<2> <1>に記載のソイルリリース剤を含有する、ソイルリリース組成物。
【発明を実施するための形態】
【0004】
衣類等の洗浄時に汚れの洗浄性を向上させることができる、ソイルリリース剤が求められている。しかしながら、従来の剤では、充分な性能を発揮することができていない。
本発明は、対象物に処理することで、洗浄時の汚れの洗浄性を向上することができる、ソイルリリース剤、及び該ソイルリリース剤を含有するソイルリリース組成物に関する。
本発明者等は、特定の変性ヒドロキシアルキルセルロースにより、上記の課題が解決されることを見出した。
以下の説明において、「ソイルリリース性能」とは、対象物に処理することで、洗浄時の汚れの落ちやすさを向上させる性能を意味する。
【0005】
[ソイルリリース剤]
本発明のソイルリリース剤は、ヒドロキシアルキルセルロースに、カチオン性基、及び炭素数4以上の炭化水素基を含む疎水基(以下、単に「疎水基」ともいう。)から選ばれる1種以上が結合している変性ヒドロキシアルキルセルロースからなる。
【0006】
本発明者らは、特定の変性ヒドロキシアルキルセルロースからなるソイルリリース剤、又は該ソイルリリース剤を含有するソイルリリース組成物を、衣類等の対象物に処理することにより、洗浄時に汚れが落ちやすくなる性能が向上することを見出した。その詳細な作用機構は不明であるが、一部は以下のように推定される。
本発明のソイルリリース剤はカチオン性基及び疎水基から選ばれる1種以上を有することで、衣類等の対象物の表面に対する吸着能力が高まり、また、表面に付着したソイルリリース剤により、均質かつ適度な親水性が付与され、その結果、洗浄時に汚れが落ちやすくなる性能が向上したものと推定される。
衣類等の対象物への本発明のソイルリリース剤の処理は、汚れの付着前に行われることが好ましく、具体的には対象物の洗浄と同時、又は洗浄後から使用の前までの間に行われることがより好ましい。
本発明のソイルリリース剤が対象とする汚れ(ソイル)は、泥、汗、油脂等を含む、あらゆる種類の汚れである。本発明のソイルリリース剤は、これらの汚れの中でも、油性の汚れに対するソイルリリース性能により優れ、油性汚れのソイルリリース剤として、好適である。
【0007】
<変性ヒドロキシアルキルセルロース>
本発明のソイルリリース剤は、変性ヒドロキシアルキルセルロースからなり、該変性ヒドロキシアルキルセルロースは、ヒドロキシアルキルセルロースにカチオン性基、及び疎水基から選ばれる1種以上が結合している。変性ヒドロキシアルキルセルロースは、カチオン性基のみが結合していてもよく、疎水基のみが結合していてもよく、カチオン性基及び疎水基の双方が結合していることがより好ましい。
【0008】
ソイルリリース性能の観点から、前記ヒドロキシアルキルセルロースが有するヒドロキシアルキル基は、ヒドロキシエチル基及びヒドロキシプロピル基から選ばれる少なくとも1つが好ましく、ヒドロキシエチル基又はヒドロキシプロピル基のみであることがより好ましく、ヒドロキシエチル基のみであることが更に好ましい。前記ヒドロキシアルキルセルロースは、ヒドロキシエチル基及びヒドロキシプロピル基の双方を有していてもよく、いずれか一方のみを有することが好ましく、ヒドロキシエチル基のみを有することがより好ましい。
ヒドロキシアルキルセルロースは、ソイルリリース性能の観点から、好ましくはヒドロキシエチルセルロース(以下、「HEC」ともいう)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシブチルセルロース、より好ましくはHEC、ヒドロキシプロピルセルロース、更に好ましくはHECである。
本発明において、変性ヒドロキシアルキルセルロースは、ソイルリリース性能の観点から、好ましくは変性ヒドロキシエチルセルロース(以下、「変性HEC」ともいう)、変性ヒドロキシプロピルセルロース、変性ヒドロキシブチルセルロース、より好ましくは変性HEC、変性ヒドロキシプロピルセルロース、更に好ましくは変性HECである。
【0009】
ヒドロキシアルキルセルロースにおけるヒドロキシアルキル基の置換度は、溶解性の観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは1以上、より更に好ましくは1.5以上であり、そして、ソイルリリース性能の観点から、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは5以下、より更に好ましくは3以下である。
本発明において、X基の置換度とは、X基のモル平均置換度であり、セルロースの構成単糖単位あたりのX基の置換数を意味する。例えば、「ヒドロキシエチル基の置換度」は、アンヒドログルコース単位1モルに対して導入された(結合している)ヒドロキシエチル基の平均モル数を意味する。
前記ヒドロキシアルキルセルロースが、ヒドロキシエチル基及びヒドロキシプロピル基の双方を有する場合には、ヒドロキシアルキル基の置換度は、ヒドロキシエチル基の置換度と、ヒドロキシプロピル基の置換度の合計である。
【0010】
(重量平均分子量)
本発明において、ヒドロキシアルキルセルロースの重量平均分子量は、ソイルリース性能の観点から、好ましくは1,000以上、より好ましくは1万以上、更に好ましくは3万以上、より更に好ましくは5万以上、より更に好ましくは7万以上、より更に好ましくは10万以上、より更に好ましくは13万以上であり、そして、組成物中での溶解性の観点から、好ましくは300万以下、より好ましくは150万以下、更に好ましくは120万以下、より更に好ましくは79万以下、より更に好ましくは60万以下、より更に好ましくは50万以下、より更に好ましくは40万以下である。
ヒドロキシアルキルセルロースとして、製品を入手して使用する場合には、製造社の公表値を使用してもよい。
【0011】
(カチオン性基)
本発明において、変性ヒドロキシアルキルセルロースは、ヒドロキシアルキルセルロースの水酸基から水素原子を除いた基に、カチオン性基が結合していることが好ましい。前記水酸基は、セルロースに結合したヒドロキシアルキル基が有する水酸基と、セルロース骨格を形成するグルコースが有する水酸基(ヒドロキシアルキル基が結合していない水酸基)とを含む。
変性ヒドロキシアルキルセルロースが有するカチオン性基は、第4級アンモニウムカチオンを含むことが好ましく、全体として、以下の式(2-1)又は式(2-2)で表されることが好ましい。
【0012】
【化1】
(式(2-1)及び式(2-2)中、R
21~R
23はそれぞれ独立に、炭素数1以上3以下の炭化水素基を示し、X
1a-はアニオンを示し、tは0以上3以下の整数を示し、*はヒドロキシアルキルセルロースの水酸基から水素原子を除いた基との結合位置を示す。)
【0013】
R21~R23はそれぞれ独立に、炭素数1以上3以下の直鎖又は分岐の炭化水素基であることが好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましく、R21~R23の全てがメチル基又はエチル基であることが更に好ましく、R21~R23の全てがメチル基であることがより更に好ましい。
tは、好ましくは1以上3以下の整数、より好ましくは1又は2、更に好ましくは1である。
X1a-は、第4級アンモニウムカチオンの対イオンであり、炭素数1以上3以下のアルキル硫酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、炭素数1以上3以下のカルボン酸イオン(ギ酸イオン、酢酸イオン、プロピオン酸イオン)、及びハロゲン化物イオンが例示される。
これらの中でも、製造の容易性及び原料入手容易性の観点から、X1a-は、好ましくはメチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン、塩化物イオン、及び臭化物イオンから選択される1種以上であり、得られる変性ヒドロキシアルキルセルロースの水溶性及び化学的安定性の観点から、より好ましくは塩化物イオンである。
X1a-は1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
【0014】
式(2-1)又は式(2-2)で表される基は、カチオン性基の導入剤(以下、「カチオン化剤」ともいう)を使用することによって得ることができる。カチオン化剤としては、例えば、グリシジルトリアルキルアンモニウムクロリド、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルトリアルキルアンモニウムクロリドが挙げられ、原料の入手の容易性及び化学的安定性の観点から、グリシジルトリアルキルアンモニウムクロリドが好ましい。
これらのカチオン化剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0015】
本発明において、変性ヒドロキシアルキルセルロースにおけるカチオン性基の置換度(以下、「MSC」ともいう)は、ソイルリリース性能の観点から、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.005以上、更に好ましくは0.01以上、より更に好ましくは0.02以上、より更に好ましくは0.05以上、より更に好ましくは0.07以上であり、そして、好ましくは1以下、より好ましくは0.7以下、更に好ましくは0.4以下、より更に好ましくは0.35以下、より更に好ましくは0.3以下、より更に好ましくは0.25以下、より更に好ましくは0.2以下、より更に好ましくは0.15以下、より更に好ましくは0.1以下である。
カチオン性基の置換度は、実施例に記載の方法により測定される。
【0016】
(疎水基)
本発明において、変性ヒドロキシアルキルセルロースは、ヒドロキシアルキルセルロースに炭素数4以上の炭化水素基を含む疎水基が結合していることが好ましい。
疎水基が含有する炭化水素基は、ソイルリリース性能の観点から、好ましくはアルキル基又はアルケニル基、より好ましくはアルキル基、更に好ましくは直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、より更に好ましくは直鎖状のアルキル基である。
疎水基が含有する炭化水素基の炭素数は、ソイルリリース性能の観点から、4以上、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは10以上であり、そして、好ましくは24以下、より好ましくは22以下、更に好ましくは18以下、より更に好ましくは16以下、より更に好ましくは14以下である。
疎水基は、下記式(1)で表される基であることが好ましい。
【0017】
【化2】
(式(1)中、Zは単結合、又は酸素原子及び窒素原子から選ばれる少なくとも1つを有する炭化水素基を示し、R
1は炭素数4以上の炭化水素基を示し、*はヒドロキシアルキルセルロースの水酸基から水素原子を除いた基との結合位置を示す。)
【0018】
R1の好ましい態様は、前述の疎水基が含有する炭化水素基と同様である。
R1は、炭化水素基の炭素数が最大となるように定義される。従って、式(1)において、Z中のR1と結合する原子は、例えば酸素原子、窒素原子、カーボネート炭素、水酸基が結合している炭素原子、ヒドロキシアルキル基が結合している炭素原子等である。
【0019】
Zは、単結合又は酸素原子及び窒素原子から選ばれる少なくとも1つを有する炭化水素基を表す。Zは、単結合又は少なくとも酸素原子を有する炭化水素基であることが好ましく、単結合又は酸素原子を有する炭化水素基であることがより好ましい。前記炭化水素基は、アルキレン基であることが好ましく、アルキレン基の一部のメチレン基がエーテル結合で置換されていてもよく、メチレン基の一部がカルボニル基(-C(=O)-)で置換されていてもよく、メチレン基の一部がアミド結合で置換されていてもよく、アルキレン基の一部の水素原子が、水酸基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基で置換されていてもよい。
Zが酸素原子を有する炭化水素基(以下、炭化水素基(Z)ともいう。)である場合、炭化水素基(Z)は、エポキシ基由来の基、オキシグリシジル基由来の基、又はカルボン酸(若しくはその無水物)由来の基を含むことが好ましく、ソイルリリース性能の観点から、オキシグリシジル基由来の基を含むことがより好ましい。
式(1)で表される基は、下記式(1-1-1)~(1-4)のいずれかで表される基を含むことがより好ましい。
【0020】
【化3】
(式(1-1-1)~式(1-4)中、R
11及びR
12はそれぞれ独立に、炭素数2~4のアルキレン基を示し、R
1は式(1)におけるR
1と同義であり、*はヒドロキシアルキルセルロースの水酸基から水素原子を除いた基との結合位置を示し、n1は-R
11-O-の付加モル数を示し、n2は-R
12-O-の付加モル数を示し、n1及びn2は0以上30以下の整数である。)
【0021】
式(1-1-1)~式(1-4)におけるR1の好ましい態様は、式(1)中のR1と同じである。式(1-1-1)~式(1-4)からR1を除いた基は、炭化水素基Zの好ましい態様である。
R11及びR12はそれぞれ独立に、好ましくはエチレン基又はプロピレン基、より好ましくはエチレン基である。R11及びR12の炭素数は、好ましくは2以上3以下である。R11及びR12が複数存在する場合、それぞれ同一でも異なっていてもよい。n1及びn2は、好ましくは20以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは5以下、より更に好ましくは3以下、より更に好ましくは1以下であり、そして、0以上であってもよく、0であることがより更に好ましい。
【0022】
式(1)で表される基が、式(1-1-1)で表される基及び式(1-1-2)で表される基から選択される少なくとも1つの基を含有する場合、-R11-O-の平均付加モル数は、ソイルリリース性能の観点から、好ましくは20以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは5以下、より更に好ましくは3以下、より更に好ましくは1以下であり、そして、好ましくは0以上である。
式(1)で表される基が、式(1-4)で表される基を含有する場合、式(1-4)における-R12-O-の平均付加モル数は、ソイルリリース性能の観点から、好ましくは20以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは5以下、より更に好ましくは3以下、より更に好ましくは1以下であり、そして、好ましくは0以上である。
【0023】
式(1-1-1)及び式(1-1-2)は、グリシジル((ポリ)アルキレンオキシ)ヒドロカルビルエーテルに由来する基であり、Zがオキシグリシジル基又は(ポリ)アルキレンオキシグリシジル基由来の基である。式(1-1-1)又は式(1-1-2)で表される基は、疎水基の導入剤(以下、「疎水化剤」ともいう)として、グリシジル((ポリ)アルキレンオキシ)ヒドロカルビルエーテル、好ましくはグリシジル((ポリ)アルキレンオキシ)アルキルエーテル、より好ましくはグリシジルアルキルエーテルを使用することによって得られる。
式(1-2-1)及び式(1-2-2)は、Zがエポキシ基に由来する基である。式(1-2-1)及び式(1-2-2)で表される基は、疎水化剤として、末端エポキシ化炭化水素、好ましくは末端エポキシ化アルカンを使用することで得られる。
式(1-3)は、疎水基が直接にヒドロキシアルキルセルロースの水酸基から水素原子を除いた基と結合している場合である。式(1-3)で表される基は、疎水化剤として、ハロゲン化炭化水素を使用することで得られる。
式(1-4)は、Zがカルボニル基を含有する。式(1-4)で表される基は、疎水化剤として、R1-C(=O)-OH、R1-C(=O)-A(Aはハロゲン原子を示す。)、R1-C(=O)-O-C(=O)-R1等を使用することで得られる。
これらの中でも、変性ヒドロキシアルキルセルロースの製造時に塩の副生がなく、また、ソイルリリース性能の観点から、式(1-1-1)、式(1-1-2)、式(1-2-1)又は式(1-2-2)で表される基であることが好ましく、より好ましくは式(1-1-1)又は式(1-1-2)で表される基である。
式(1)で表される疎水基の中で、式(1-1-1)で表される疎水基、式(1-1-2)で表される疎水基、式(1-2-1)で表される疎水基、式(1-2-2)で表される疎水基、式(1-3)で表される疎水基、及び式(1-4)で表される疎水基の合計含有量は、好ましくは50mol%、より好ましくは80mol%以上、更に好ましくは90mol%以上であり、100mol%以下であり、100mol%であることがより更に好ましい。
【0024】
本発明において、変性ヒドロキシアルキルセルロースにおける疎水基の置換度(以下、「MSR」ともいう)は、ソイルリリース性能の観点から、好ましくは0.0001以上、より好ましくは0.001以上、更に好ましくは0.005以上、より更に好ましくは0.008以上、より更に好ましくは0.01以上、より更に好ましくは0.015以上であり、そして、溶解性の観点から、好ましくは1以下、より好ましくは0.4以下、更に好ましくは0.2以下、より更に好ましくは0.1以下、より更に好ましくは0.08以下、より更に好ましくは0.06以下、より更に好ましくは0.05以下、より更に好ましくは0.04以下、より更に好ましくは0.03以下である。
【0025】
本発明において、変性ヒドロキシアルキルセルロースの疎水基の置換度(MSR)とカチオン性基の置換度(MSC)の比(MSR/MSC)は、ソイルリリース性能の観点から、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.005以上、更に好ましくは0.01以上、より更に好ましくは0.05以上であり、そして、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは3以下、より更に好ましくは2以下、より更に好ましくは1.2以下、より更に好ましくは0.8以下、より更に好ましくは0.5以下、より更に好ましくは0.3以下である。
【0026】
本発明において、変性ヒドロキシアルキルセルロースが疎水基及びカチオン性基の双方を有する場合、疎水基とカチオン性基とが互いに異なる側鎖上に結合していてもよく、一つの側鎖上に疎水基及びカチオン性基を有してもよい。ソイルリリース性能の観点から、疎水基とカチオン性基とは、ヒドロキシアルキルセルロースの有する、異なる水酸基から水素原子を除いた基と結合していることが好ましい。すなわち、疎水基及びカチオン性基が、ヒドロキシアルキルセルロースの異なる側鎖上に結合していることが好ましい。
【0027】
変性ヒドロキシアルキルセルロースが一つの側鎖上にカチオン性基及び疎水基を有する場合、変性ヒドロキシアルキルセルロースは、下記式(3-1)又は(3-2)で表される基を有することが好ましい。
【0028】
【化4】
(式(3-1)及び式(3-2)中、R
31~R
33はそれぞれ独立に、炭素数1以上24以下の炭化水素基を示し、R
31~R
33のうち、少なくとも1つは炭素数4以上の炭化水素基を示し、X
2a-はアニオンを示し、sは0以上3以下の整数を示し、*はヒドロキシアルキルセルロースの水酸基から水素原子を除いた基との結合位置を示す。)
【0029】
R31~R33のうち、少なくとも1つは、炭素数4以上の炭化水素基を示し、好ましくはアルキル基又はアルケニル基、より好ましくはアルキル基、更に好ましくは直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、より更に好ましくは直鎖状のアルキル基である。
R31~R33の少なくとも1つは、ソイルリリース性能の観点から、炭素数が4以上、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは10以上、より更に好ましくは12以上であり、そして、好ましくは24以下、より好ましくは22以下、更に好ましくは18以下、より更に好ましくは16以下、より更に好ましくは14以下である。
R31~R33のうちの1つが炭素数4以上の炭化水素基であり、2つが炭素数1~3の炭化水素基であることが好ましい。炭素数1~3の炭化水素基としては、メチル基又はエチル基が好ましく、R31~R33の2つがメチル基又はエチル基であることがより好ましく、R31~R33の2つがメチル基であることが更に好ましい。
【0030】
sは、好ましくは1以上3以下の整数、より好ましくは1又は2、更に好ましくは1である。
X2a-は、第4級アンモニウムカチオンの対イオンである。具体的には、炭素数1以上3以下のアルキル硫酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、炭素数1以上3以下のカルボン酸イオン(ギ酸イオン、酢酸イオン、プロピオン酸イオン)、及びハロゲン化物イオンが例示される。
これらの中でも、製造の容易性及び原料入手容易性の観点から、X2a-は、好ましくはメチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン、塩化物イオン、及び臭化物イオンから選択される1種以上であり、得られる変性ヒドロキシアルキルセルロースの水溶性及び化学的安定性の観点から、より好ましくは塩化物イオンである。
X2a-は1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
【0031】
式(3-1)又は式(3-2)で表される基を有する変性ヒドロキシアルキルセルロースは、例えば、後述の変性ヒドロキシアルキルセルロースの製造工程において、カチオン性基及び疎水基の導入剤を作用させることによって得ることができる。前記導入剤としては、グリシジルジメチルラウリルアンモニウムクロリド、及びグリシジルジエチルラウリルアンモニウムクロリドが好ましく挙げられる。
前記導入剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
本発明において、変性ヒドロキシアルキルセルロースは、アニオン性基を有していてもよい。変性ヒドロキシアルキルセルロースにおけるアニオン性基の置換度(以下、「MSA」ともいう)とカチオン性基の置換度の比(MSA/MSC)は、ソイルリリース性能の観点から、好ましくは3以下、より好ましくは1.7以下、更に好ましくは1.5以下、より更に好ましくは1以下、より更に好ましくは0.5以下、より更に好ましくは0.1以下であり、そして、0以上であってもよく、0であることがより更に好ましい。
MSAは、ソイルリリース性能の観点から、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.1以下、更に好ましくは0.01未満、より更に好ましくは0.001以下である。
変性ヒドロキシアルキルセルロースがアニオン性基を有する場合、該アニオン性基としては、カルボキシメチル基等が例示される。
カルボキシメチル基の導入反応(カルボキシメチル化反応)は、ヒドロキシアルキルセルロースに塩基性化合物の存在下、モノハロゲン化酢酸及び/又はその金属塩を反応させることにより行われる。
モノハロゲン化酢酸及びモノハロゲン化酢酸の金属塩としては、具体的には、モノクロル酢酸、モノクロロ酢酸ナトリウム、モノクロロ酢酸カリウム、モノブロモ酢酸ナトリウム、モノブロモ酢酸カリウム等が例示される。これらモノハロゲン化酢酸及びその金属塩は単独あるいは2種以上を組み合せても使用することができる。
【0033】
本発明において、変性ヒドロキシアルキルセルロースは、置換基としてグリセロール基を有していてもよい。グリセロール基の置換度は、ソイルリリース性能の観点から、好ましくは0.5未満、より好ましくは0.1未満であり、そして、0以上であってもよく、0であることが更に好ましい。
グリセロール基を有する変性ヒドロキシアルキルセルロースは、例えば後述の変性ヒドロキシアルキルセルロースの製造工程において、グリセロール化剤を作用させることによって得られる。該グリセロール化剤としては、グリシドール、3-クロロ-1,2-プロパンジオール、3-ブロモ-1,2-プロパンジオール、グリセリン、グリセリンカーボネート等が挙げられ、塩が副生しないこと、及び反応性の観点から、グリシドールが好ましい。
【0034】
<変性ヒドロキシアルキルセルロースの製造方法>
本発明において、変性ヒドロキシアルキルセルロースは、ヒドロキシアルキルセルロースに対し、カチオン化剤及び疎水化剤から選ばれる1種以上と反応させて、カチオン性基及び疎水基を導入して得ることが好ましい。
ヒドロキシアルキルセルロースに対する、カチオン性基の導入反応(以下、「カチオン化反応」ともいう)及び疎水基の導入反応(以下、「疎水化反応」ともいう)は、いずれも塩基性化合物の共存下で行うことが好ましい。塩基性化合物としては、導入反応の反応速度の観点から、アルカリ金属水酸化物が好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムがより好ましい。
前記反応は、反応性の観点から、非水溶剤の存在下で行ってもよい。前記非水溶剤としては、2-プロパノール等の極性溶剤が挙げられる。
反応後は、酸を用いて塩基性化合物を中和することができる。酸としては、例えばリン酸等の無機酸、酢酸等の有機酸が挙げられる。
得られた変性ヒドロキシアルキルセルロースは、必要に応じて、濾過、洗浄等により精製してもよい。
【0035】
[ソイルリリース組成物]
本発明のソイルリリース組成物は、上述したソイルリリース剤を含有する。ソイルリリース組成物が含有するソイルリリース剤以外の成分としては、水、有機溶剤、界面活性剤、アルカリ剤、キレート剤、分散剤等が例示される。
【0036】
ソイルリリース組成物の使用時におけるソイルリリース剤の含有量は、ソイルリリース性能の観点から、好ましくは0.00001質量%以上、より好ましくは0.00005質量%以上、更に好ましくは0.0001質量%以上、より更に好ましくは0.0002質量%以上であり、そして、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。
【0037】
本発明のソイルリリース剤又はソイルリリース組成物を、衣料用等の種々の洗浄剤組成物に添加して、添加剤として使用してもよい。本発明のソイルリリース組成物は、それ自体を洗浄剤組成物として使用してもよい。
【0038】
本発明は、更に、以下の<1>~<84>を開示する。
<1> ヒドロキシアルキルセルロースに、カチオン性基、及び炭素数4以上の炭化水素基を含む疎水基から選ばれる1種以上が結合している変性ヒドロキシアルキルセルロースからなるソイルリリース剤。
<2> 変性ヒドロキシアルキルセルロースが、ヒドロキシアルキルセルロースに、カチオン性基、及び炭素数4以上の炭化水素基を含む疎水基が結合している変性ヒドロキシアルキルセルロースである、<1>に記載のソイルリリース剤。
<3> 変性ヒドロキシアルキルセルロースが、変性ヒドロキシエチルセルロースである、<1>又は<2>に記載のソイルリリース剤。
<4> ヒドロキシアルキルセルロースにおけるヒドロキシアルキル基の置換度が、1以上である、<1>~<3>のいずれかに記載のソイルリリース剤。
<5> ヒドロキシアルキルセルロースにおけるヒドロキシアルキル基の置換度が、1.5以上である、<1>~<4>のいずれかに記載のソイルリリース剤。
<6> ヒドロキシアルキルセルロースにおけるヒドロキシアルキル基の置換度が、3以下である、<1>~<5>のいずれかに記載のソイルリリース剤。
<7> ヒドロキシアルキルセルロースの重量平均分子量が、13万以上である、<1>~<6>のいずれかに記載のソイルリリース剤。
<8> ヒドロキシアルキルセルロースの重量平均分子量が、120万以下である、<1>~<7>のいずれかに記載のソイルリリース剤。
<9> ヒドロキシアルキルセルロースの重量平均分子量が、79万以下である、<1>~<7>のいずれかに記載のソイルリリース剤。
<10> ヒドロキシアルキルセルロースの重量平均分子量が、40万以下である、<1>~<7>のいずれかに記載のソイルリリース剤。
【0039】
<11> カチオン性基が、第4級アンモニウムカチオンを含む、<1>~<10>のいずれかに記載のソイルリリース剤。
<12> カチオン性基が、以下の式(2-1)又は式(2-2)で表される、<1>~<11>のいずれかに記載のソイルリリース剤。
【0040】
【化5】
(式(2-1)及び式(2-2)中、R
21~R
23はそれぞれ独立に、炭素数1以上3以下の炭化水素基を示し、X
1a-はアニオンを示し、tは0以上3以下の整数を示し、*はヒドロキシアルキルセルロースの水酸基から水素原子を除いた基との結合位置を示す。)
【0041】
<13> R21~R23の全てがメチル基又はエチル基である、<12>に記載のソイルリリース剤。
<14> R21~R23の全てがメチル基である、<12>又は<13>に記載のソイルリリース剤。
<15> tが1である、<12>~<14>のいずれかに記載のソイルリリース剤。
<16> X1a-が、メチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン、塩化物イオン、及び臭化物イオンから選択される1種以上である、<12>~<15>のいずれかに記載のソイルリリース剤。
<17> X1a-が、塩化物イオンである、<12>~<15>のいずれかに記載のソイルリリース剤。
【0042】
<18> 変性ヒドロキシアルキルセルロースにおけるカチオン性基の置換度(MSC)が0.01以上である、<1>~<17>のいずれかに記載のソイルリリース剤。
<19> MSCが0.02以上である、<1>~<17>のいずれかに記載のソイルリリース剤。
<20> MSCが0.05以上である、<1>~<17>のいずれかに記載のソイルリリース剤。
<21> MSCが0.07以上である、<1>~<17>のいずれかに記載のソイルリリース剤。
<22> MSCが0.2以下である、<1>~<21>のいずれかに記載のソイルリリース剤。
<23> MSCが0.15以下である、<1>~<21>のいずれかに記載のソイルリリース剤。
<24> MSCが0.1以下である、<1>~<21>のいずれかに記載のソイルリリース剤。
【0043】
<25> 疎水基が含有する炭化水素基がアルキル基である、<1>~<24>のいずれかに記載のソイルリリース剤。
<26> 疎水基が含有する炭化水素基の炭素数が6以上である、<1>~<25>のいずれかに記載のソイルリリース剤。
<27> 疎水基が含有する炭化水素基の炭素数が8以上である、<1>~<25>のいずれかに記載のソイルリリース剤。
<28> 疎水基が含有する炭化水素基の炭素数が10以上である、<1>~<25>のいずれかに記載のソイルリリース剤。
<29> 疎水基が含有する炭化水素基の炭素数が24以下である、<1>~<28>のいずれかに記載のソイルリリース剤。
<30> 疎水基が含有する炭化水素基の炭素数が18以下である、<1>~<28>のいずれかに記載のソイルリリース剤。
<31> 疎水基が含有する炭化水素基の炭素数が16以下である、<1>~<28>のいずれかに記載のソイルリリース剤。
<32> 疎水基が含有する炭化水素基の炭素数が14以下である、<1>~<28>のいずれかに記載のソイルリリース剤。
<33> 疎水基が、下記式(1)で表される基である、<1>~<32>のいずれかに記載のソイルリリース剤。
【0044】
【化6】
(式(1)中、Zは単結合、又は酸素原子及び窒素原子から選ばれる少なくとも1つを有する炭化水素基を示し、R
1は炭素数4以上の炭化水素基を示し、*はヒドロキシアルキルセルロースの水酸基から水素原子を除いた基との結合位置を示す。)
【0045】
<34> Zが、単結合又は酸素原子を有する炭化水素基である、<33>に記載のソイルリリース剤。
<35> 式(1)で表される基が、下記式(1-1-1)~(1-4)のいずれかで表される基を含有する、<33>又は<34>に記載のソイルリリース剤。
【0046】
【化7】
(式(1-1-1)~式(1-4)中、R
11及びR
12はそれぞれ独立に、炭素数2~4のアルキレン基を示し、R
1は式(1)におけるR
1と同義であり、*はヒドロキシアルキルセルロースの水酸基から水素原子を除いた基との結合位置を示し、n1は-R
11-O-の付加モル数を示し、n2は-R
12-O-の付加モル数を示し、n1及びn2は0以上30以下の整数である。)
【0047】
<36> R11及びR12がエチレン基である、<35>に記載のソイルリリース剤。
<37> n1及びn2が、20以下である、<35>又は<36>のいずれかに記載のソイルリリース剤。
<38> n1及びn2が、10以下である、<35>又は<36>に記載のソイルリリース剤。
<39> n1及びn2が、5以下である、<35>又は<36>に記載のソイルリリース剤。
<40> n1及びn2が、3以下である、<35>又は<36>に記載のソイルリリース剤。
<41> n1及びn2が、1以下である、<35>又は<36>に記載のソイルリリース剤。
<42> n1及びn2が、0以上である、<35>~<41>のいずれかに記載のソイルリリース剤。
<43> n1及びn2が、0である、<35>又は<36>に記載のソイルリリース剤。
<44> -R11-O-及び-R12-O-の平均付加モル数が10以下である、<35>~<43>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<45> -R11-O-及び-R12-O-の平均付加モル数が3以下である、<35>~<43>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<46> -R11-O-及び-R12-O-の平均付加モル数が1以下である、<35>~<43>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<47> -R11-O-及び-R12-O-の平均付加モル数が0以上である、<35>~<46>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
【0048】
<48> 式(1)で表される基が、式(1-1-1)、式(1-1-2)、式(1-2-1)又は式(1-2-2)で表される基である、<35>~<47>のいずれかに記載のソイルリリース剤。
<49> 式(1)で表される基が、式(1-1-1)又は式(1-1-2)で表される基である、<35>~<47>のいずれかに記載のソイルリリース剤。
【0049】
<50> 変性ヒドロキシアルキルセルロースにおける疎水基の置換度(MSR)が、0.005以上である、<1>~<49>のいずれかに記載のソイルリリース剤。
<51> MSRが、0.008以上である、<1>~<49>のいずれかに記載のソイルリリース剤。
<52> MSRが、0.01以上である、<1>~<49>のいずれかに記載のソイルリリース剤。
<53> MSRが、0.015以上である、<1>~<49>のいずれかに記載のソイルリリース剤。
<54> MSRが、0.06以下である、<1>~<53>のいずれかに記載のソイルリリース剤。
<55> MSRが、0.05以下である、<1>~<53>のいずれかに記載のソイルリリース剤。
<56> MSRが、0.04以下である、<1>~<53>のいずれかに記載のソイルリリース剤。
<57> MSRが、0.03以下である、<1>~<53>のいずれかに記載のソイルリリース剤。
【0050】
<58> 変性ヒドロキシアルキルセルロースの疎水基の置換度(MSR)とカチオン性基の置換度(MSC)の比(MSR/MSC)が、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.005以上、更に好ましくは0.01以上、より更に好ましくは0.05以上であり、そして、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは3以下、より更に好ましくは2以下、より更に好ましくは1.2以下、より更に好ましくは0.8以下、より更に好ましくは0.5以下、より更に好ましくは0.3以下である、<1>~<57>のいずれかに記載のソイルリリース剤。
【0051】
<59> 疎水基とカチオン性基が、ヒドロキシアルキルセルロースの有する、異なる水酸基から水素原子を除いた基と結合している、<1>~<58>のいずれかに記載のソイルリリース剤。
<60> 変性ヒドロキシアルキルセルロースが一つの側鎖上にカチオン性基及び疎水基を有し、変性ヒドロキシアルキルセルロースが、下記式(3-1)又は(3-2)で表される基を有する、<1>~<59>のいずれかに記載のソイルリリース剤。
【0052】
【化8】
(式(3-1)及び式(3-2)中、R
31~R
33はそれぞれ独立に、炭素数1以上24以下の炭化水素基を示し、R
31~R
33のうち、少なくとも1つは炭素数4以上の炭化水素基を示し、X
2a-はアニオンを示し、sは0以上3以下の整数を示し、*はヒドロキシアルキルセルロースの水酸基から水素原子を除いた基との結合位置を示す。)
【0053】
<61> R31~R33のうち、少なくとも1つは、炭素数4以上のアルキル基である、<60>に記載のソイルリリース剤。
<62> R31~R33の少なくとも1つは、炭素数が12以上である、<60>又は<61>に記載のソイルリリース剤。
<63> R31~R33の少なくとも1つは、炭素数が14以下である、<60>~<62>のいずれかに記載のソイルリリース剤。
<64> R31~R33のうちの1つが炭素数4以上の炭化水素基であり、2つがメチル基又はエチル基である、<60>~<63>のいずれかに記載のソイルリリース剤。
<65> R31~R33のうちの1つが炭素数4以上の炭化水素基であり、2つがメチル基である、<60>~<63>のいずれかに記載のソイルリリース剤。
<66> sが1である、<60>~<65>のいずれかに記載のソイルリリース剤。
<67> X2a-が、メチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン、塩化物イオン、及び臭化物イオンから選択される1種以上である、<60>~<66>のいずれかに記載のソイルリリース剤。
<68> X2a-が、塩化物イオンである、<60>~<66>のいずれかに記載のソイルリリース剤。
【0054】
<69> 変性ヒドロキシアルキルセルロースにおけるアニオン性基の置換度(MSA)とカチオン性基の置換度(MSC)との比(MSA/MSC)が、0.5以下である、<1>~<68>のいずれかに記載のソイルリリース剤。
<70> MSA/MSCが0.1以下である、<1>~<68>のいずれかに記載のソイルリリース剤。
<71> MSA/MSCが0以上である、<1>~<70>のいずれかに記載のソイルリリース剤。
<72> MSA/MSCが0である、<1>~<68>のいずれかに記載のソイルリリース剤。
<73> MSAが0.4以下である、<1>~<72>のいずれかに記載のソイルリリース剤。
<74> MSAが0.01未満である、<1>~<72>のいずれかに記載のソイルリリース剤。
<75> MSAが0.001以下である、<1>~<72>のいずれかに記載のソイルリリース剤。
<76> グリセロール基の置換度が0.5未満である、<1>~<75>のいずれかに記載のソイルリリース剤。
<77> グリセロール基の置換度が0.1未満である、<1>~<75>のいずれかに記載のソイルリリース剤。
<78> グリセロール基の置換度が0以上である、<1>~<77>のいずれかに記載のソイルリリース剤。
<79> グリセロール基の置換度が0である、<1>~<75>のいずれかに記載のソイルリリース剤。
【0055】
<80> <1>~<79>のいずれかに記載のソイルリリース剤を含有する、ソイルリリース組成物。
<81> ソイルリリース組成物が水及び有機溶剤から選ばれる少なくとも1つを含有する、<80>に記載のソイルリリース組成物。
<82> ソイルリリース組成物の使用時におけるソイルリリース剤の含有量が、好ましくは0.00001質量%以上、より好ましくは0.00005質量%以上、更に好ましくは0.0001質量%以上、より更に好ましくは0.0002質量%以上であり、そして、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である、<80>又は<81>に記載のソイルリリース組成物。
<83> <1>~<79>のいずれかに記載のソイルリリース剤、又は<80>~<82>のいずれかに記載のソイルリリース組成物の洗浄剤組成物の添加剤としての使用。
<84> <80>~<82>のいずれかに記載のソイルリリース組成物の洗浄剤組成物としての使用。
【実施例】
【0056】
実施例及び比較例で使用した測定方法は以下の通りである。
[置換度(モル平均置換度(MS))の測定]
・前処理
粉末状の変性ヒドロキシアルキルセルロース1gを100gの水に溶かした後、水溶液を透析膜(スペクトラポア、分画分子量1,000)に入れ、2日間透析を行った。得られた水溶液を、凍結乾燥機(eyela,FDU1100)を用いて凍結乾燥することで精製した変性ヒドロキシアルキルセルロースを得た。
【0057】
<ケルダール法によるカチオン性基質量の算出>
精製した変性ヒドロキシアルキルセルロースの200mgを精秤し、硫酸10mLとケルダール錠(Merck)1錠を加え、ケルダール分解装置(BUCHI社、K-432)にて加熱分解を行った。分解終了後、サンプルにイオン交換水30mLを加え、自動ケルダール蒸留装置(BUCHI社、K-370)を用いてサンプルの窒素含量(質量%)を求めることで、カチオン性基の質量を算出した。
【0058】
<Zeisel法による疎水基(アルキル基)質量の算出>
以下に、実施例1(炭化水素基の導入剤として、ラウリルグリシジルエーテルを使用)の場合を例に、炭化水素基であるアルキル基質量の算出方法を説明する。なお、他の導入剤を使用した場合も、検量線用の試料(ヨードアルカンや炭化水素基の導入剤など)を適宜選択することによって測定可能である。
精製したセルロース誘導体200mg、アジピン酸220mgを10mLバイアル(マイティーバイアルNo.3)に精秤し、内標溶液(テトラデカン/o-キシレン=1/25(v/v)) 3mL及びヨウ化水素酸3mLを加えて密栓した。また、セルロース誘導体の代わりに1-ヨードドデカンを2、4、又は9mg加えた検量線用の試料を調製した。各試料をスターラーチップにより撹拌しながら、ブロックヒーター(PIERCE社、Reacti-ThermIII Heating/Stirring module)を用いて160℃、2時間の条件で加熱した。試料を放冷した後、上層(o-キシレン層)を回収し、ガスクロマトグラフィー(株式会社島津製作所、GC-2010 plus)にて、1-ヨードドデカン量を分析した。
【0059】
・GC分析条件
カラム:Agilent HP-1(長さ:30m、液相膜厚:0.25μL、内径:32mm)
スプリット比:20
カラム温度:100℃(2min)→10℃/min→300℃(15min)
インジェクター温度:300℃
検出器:FID
検出器温度:330℃
打ち込み量:2μL
GCにより得られた1-ヨードドデカンの検出量から、サンプル中のアルキル基の質量を求めた。
【0060】
<ヒドロキシアルキル基質量の測定>
ヒドロキシアルキル基由来のヨウ化アルキルを定量することで、前述のアルキル基質量の測定と同様にして行った。
【0061】
<カチオン性基、疎水基、及びヒドロキシアルキル基の置換度(モル平均置換度)の算出>
上述のカチオン性基と疎水基(アルキル基)の質量及び全サンプル質量からHEC骨格の質量を計算し、それぞれ物質量(mol)に変換することで、カチオン性基の置換度(MSC)、及び疎水基であるアルキル基の置換度(MSR)を算出した。
【0062】
変性ヒドロキシアルキルセルロースの合成に用いた原料は、以下の通りである。
・Natrosol 250 GR:HEC(重量平均分子量:30万、ヒドロキシエチル基の置換度:2.5、Ashland社製)
・Natrosol 250 HR:HEC(重量平均分子量:100万、ヒドロキシエチル基の置換度:2.5、Ashland社製)
・Natrosol 250 JR:HEC(重量平均分子量:15万、ヒドロキシエチル基の置換度:2.5、Ashland社製)
・IPA:2-プロパノール
・LA-EP:ラウリルグリシジルエーテル、四日市合成株式会社製
・1,2-エポキシテトラデカン:和工純薬工業株式会社製
・GMAC:グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド、阪本薬品工業株式会社製「SY-GTA80」
【0063】
合成例1:変性ヒドロキシアルキルセルロース(M-HEC-1)の合成
ヒドロキシアルキルセルロースとして、Natrosol 250 GR 90gを1Lセパラフラスコに入れ、窒素フローを行った。イオン交換水77.2g、IPA 414.5gを加え、5分間撹拌した後、48%水酸化ナトリウム水溶液10.9gを加え、更に15分間撹拌した。次に、疎水化剤として、LA-EP 4.5gを加え、80℃で5時間疎水化反応を行った。更にカチオン化剤として、GMAC 10.3gを加え、50℃で1.5時間カチオン化反応を行った。その後、90質量%酢酸水溶液10.9gを加え、30分撹拌することで中和反応を行った。
得られた懸濁液を500mLの遠沈管2本に均等に移し替え、高速冷却遠心機(日立工機株式会社、CR21G III)を用いて1,500Gで40秒遠心分離を行った。上澄みをデカンテーションにより取り除き、取り除いた上澄みと同量の85質量%IPA水溶液を加え、再分散を行った。再度、遠心分離と再分散の操作を繰り返し、3回目の遠心分離を行った後に沈殿物を取り出した。得られた沈殿物を真空乾燥機(アドバンテック社、VR-420)を用いて80℃で12時間以上減圧乾燥し、エクストリームミル(ワーリング社、MX-1200XTM)により解砕することで、粉末状の変性ヒドロキシエチルセルロース(M-HEC-1)を得た。
得られたM-HEC-1のカチオン性基の置換度(MSC)は、0.085であり、疎水基(アルキル基)の置換度(MSR)は0.02であった。
【0064】
合成例2~10
使用したヒドロキシアルキルセルロース、疎水化剤としてのLA-EPの量、及びカチオン化剤としてのGMACの量を、表1に示す通りにした以外は、合成例1と同様の操作を行い、粉末状の変性ヒドロキシエチルセルロース(M-HEC-2~M-HEC-10)を得た。
【0065】
合成例11:
LA-EP 4.5gを、1,2-エポキシテトラデカン 12.8gに代えた以外は、合成例1と同様にして、粉末状の変性ヒドロキシエチルセルロース(M-HEC-11)を得た。
【0066】
合成例12:A-HECの製造
合成例1において、疎水化剤を1,2-エポキシテトラデカン25.2gに変更し、カチオン化剤との反応を行わなかった以外は同様の操作を行って得た。
【0067】
合成例13:C-HECの製造
合成例1において、GMACの量を18.2gに変更し、疎水化剤との反応を行わなかった以外は同様の操作を行って得た。
【0068】
【0069】
実施例1~14、及び比較例1~3
〔処理された布のソイルリリース性能の評価〕
(1)布の処理方法
1Lのビーカーに、総界面活性剤濃度20wt%水溶液(ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム10wt%、ポリオキシエチレン(10)ラウリルエーテル10wt%)を0.6g、硬度が4°dHである水599.4g、及び6cm×6cmの正方形にカットしたポリエステル布(ポリエステルファイユ、染色試材株式会社製)5枚を投入し、回転方向が10秒ごとに切り替わるように設定されたモーター(新東科学株式会社製「スリーワンモーター」)に撹拌用のプロペラを接続し、200r/minで5分間、ビーカー内を撹拌した。
次に、2槽式洗濯機(株式会社日立製作所製、PS-H45L形)でポリエステル布を1分間脱水した。その後、下記のソイルリリース組成物0.36gと硬度が4°dHである水599.64gを入れた1Lビーカーにポリエステル布を入れ、上記の同様の条件で撹拌を行った。次に前述した2槽式洗濯機でポリエステル布を1分間脱水し、12時間自然乾燥させた。
【0070】
<ソイルリリース組成物の組成>
表2に示す配合組成にて、本発明の組成物を調製した。使用した各成分は、以下の通りである。
・M-HEC-1~M-HEC-11:上記合成例1~11で得られた、変性ヒドロキシエチルセルロース
・A-HEC:前記合成例12で得られた変性ヒドロキシエチルセルロース
・C-HEC:前記合成例13で得られた変性ヒドロキシエチルセルロース
・MC:メチルセルロース、Ashland社製「Benecel A4C」
・SL100:SoftCATTM SL Polymer SL100、ダウ・ケミカル社製(ヒドロキシエチルセルロースの水酸基から水素原子を除いた基に、式(3-1)で表される基が結合しており、s=1、R31=C12H25、R32=R33=CH3である化合物)
・HEC:Ashland社製「Natrosol 250 GR」
【0071】
(2)汚染布の調製
以下のモデル皮脂人工汚染液0.1mLを、前記(1)において調製したポリエステル布(36cm2)に均一に塗布し、室温にて3時間放置し、乾燥させた。
<モデル皮脂人工汚染液>
・オレイン酸:35質量%
・トリオレイン:30質量%
・スクアレン:10質量%
・パルミチン酸2-エチルヘキシル:25質量%
以上の混合物に、0.02質量%のスダンIIIを混合して、モデル皮脂人工汚染液を調製した。
【0072】
(3)洗浄試験
1Lのビーカーに、総界面活性剤濃度20wt%水溶液(ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム10wt%、ポリオキシエチレン(10)ラウリルエーテル10wt%)を0.6g、硬度が4°dHである水599.4g、及び(2)で調製した汚染布5枚を投入し、回転方向が10秒ごとに切り替わるように設定されたモーター(新東科学株式会社製「スリーワンモーター」)に撹拌用のプロペラを接続し、200r/minで5分間、ビーカー内を撹拌して洗浄した。次に、前述した2槽式洗濯機で、洗浄したポリエステル布を1分間脱水した。その後、硬度が4°dHである水600gを入れた1Lビーカーにポリエステル布を入れ、上記の同様の条件で撹拌を行った。次に前述した2槽式洗濯機でポリエステル布を1分間脱水し、12時間自然乾燥させた。
【0073】
(4)洗浄率の評価
汚染前のポリエステル原布、及び洗浄前後のポリエステル布の460nmにおける反射率を測色色差計(日本電色工業株式会社製、SE-2000)にて測定し、次式によって洗浄率(%)を求めた。
洗浄率(%)=100×[(洗浄後の反射率-洗浄前の反射率)/(原布の反射率-洗浄前の反射率)]
また、前記(1)の布の処理方法においてソイルリリース組成物を0gとし、汚染布の洗浄試験を行ったブランクの洗浄率との差から、次式によって洗浄率向上性能(%)を求めた。洗浄率向上性能が高いほど、ソイルリリース性能に優れる。
洗浄率向上性能(%)=[ソイルリリース剤処理後の洗浄率(%)-ブランクの洗浄率(%)]
【0074】
【0075】
表2から明らかなように、カチオン性基及び疎水基の1種以上を有する変性ヒドロキシアルキルセルロースを含有する、本発明のソイルリリース組成物で処理することにより、皮脂汚れの付着を抑制し、ソイルリリース性能を向上させることが明らかとなった。
一方、カチオン性基及び疎水性基のいずれも有しないHECでは、十分なソイルリリース性能が得られなかった。
また、カチオン性基及び疎水基の双方を有し、かつ、異なる側鎖にカチオン性基及び疎水基が結合している変性ヒドロキシアルキルセルロースでは、第4級アルキルアンモニウムのアルキル基として疎水基を有するSL100に比べて、高いソイルリリース性能が得られた。
【0076】
実施例15、及び比較例4
〔処理された硬質表面のソイルリリース性能の評価〕
(1)硬質表面の処理方法
表3に記載のソイルリリース組成物1gと硬度が4°dHである水199gを入れた容器に、予め清浄にした基板を浸漬して25℃、110r/min、15分間の処理を行い、基板を引き上げて、自然乾燥し、処理基板を得た。用いた基板は、以下の通りである。
・ステンレス:株式会社エンジニアリングテストサービス製 SUS430 20×50mm
・ポリ塩化ビニル:株式会社エンジニアリングテストサービス製 PVC 25×37mm
・PAナイロン:株式会社エンジニアリングテストサービス製 PA 6ナイロン 25×37mm
【0077】
(2)汚染基板の調製
マイクロピペッターを用い、前記汚染布の調製で用いたモデル皮脂人工汚染液50μLを、水平に配置した前記処理基板の中央部に垂らし、室温にて30分間乾燥させて、汚染基板を得た。
【0078】
(3)洗浄試験
200mLのビーカーに、総界面活性剤濃度20wt%水溶液(ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム10wt%、ポリオキシエチレン(10)ラウリルエーテル10wt%)を0.012g、硬度が4°dHである水11.988g、及び、前記汚染基板を投入し、1分間浸漬させた後、50r/minで10秒間撹拌して洗浄し、テストピースを引き上げて、自然乾燥した。
【0079】
(4)洗浄率の評価
メタノールとクロロホルムとの体積比が1:1の混合溶剤4.5gを用いて、前記(3)で得られた洗浄された基板上に残留するモデル皮脂を抽出した。吸光度計(株式会社日立製作所製「U-2910」)を用いて、抽出液の波長510nmにおける吸光度を測定し、次式によって洗浄率(%)を求めた。
洗浄率(%)=k×(抽出液の吸光度)+100
式中の定数kは、実験条件により変動するため、予め洗浄率と吸光度との検量線より求めた値である、-1017.6を用いた。
また、前記(1)の布の処理方法においてソイルリリース組成物を0gとし、汚染布の洗浄試験を行ったブランクの洗浄率との差から、次式によって洗浄率向上性能(%)を求めた。洗浄率向上性能が高いほど、ソイルリリース性能に優れる。
洗浄率向上性能(%)=[ソイルリリース剤処理後の洗浄率(%)-ブランクの洗浄率(%)]
【0080】
【0081】
表3から明らかなように、カチオン性基及び疎水基の1種以上を有する変性ヒドロキシアルキルセルロースを含有する、本発明のソイルリリース組成物でステンレス、ポリ塩化ビニル、及びPAナイロン等の硬質表面を処理することにより、皮脂汚れの付着を抑制し、ソイルリリース性能を向上させることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明のソイルリリース剤又はソイルリリース組成物を対象物に処理することで、ソイルリリース性能を向上させるという、極めて優れた効果を付与しうる。本発明のソイルリリース剤を衣料用等の種々の洗浄剤組成物等に添加して、添加剤として使用してもよい。更に本発明のソイルリリース組成物は、種々の洗浄剤組成物として使用すること、又は、これらの洗浄剤組成物等に別途添加してもよい。