(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-28
(45)【発行日】2023-01-12
(54)【発明の名称】布帛処理組成物
(51)【国際特許分類】
D06M 15/09 20060101AFI20230104BHJP
【FI】
D06M15/09
(21)【出願番号】P 2019558250
(86)(22)【出願日】2018-12-05
(86)【国際出願番号】 JP2018044722
(87)【国際公開番号】W WO2019111949
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-09-15
(31)【優先権主張番号】P 2017234711
(32)【優先日】2017-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山脇 有希子
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 隆儀
(72)【発明者】
【氏名】伊森 洋一郎
(72)【発明者】
【氏名】小山 皓大
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-178303(JP,A)
【文献】特開平10-195772(JP,A)
【文献】国際公開第2016/077207(WO,A1)
【文献】特開2003-301376(JP,A)
【文献】米国特許第04000093(US,A)
【文献】国際公開第2017/142869(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/094582(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M15/00-15/715
C11D1/00-19/00
D06L1/00-4/75
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシアルキルセルロースに、カチオン性基、及び炭素数4以上の炭化水素基を含む疎水
基が結合しているヒドロキシアルキルセルロース(A)を含有し、
カチオン性基が式(2-1)又は式(2-2)で表され、
ヒドロキシアルキルセルロース(A)におけるアニオン性基の置換度が0.001以下であり、
前記ヒドロキシアルキルセルロース(A)1質量部に対する界面活性剤(B)の含有量が3.5質量部以下である、布帛処理組成物。
【化1】
(式(2-1)及び式(2-2)中、R
21
~R
23
はそれぞれ独立に、炭素数1以上3以下の炭化水素基を示し、X
1a-
はアニオンを示し、tは0以上3以下の整数を示し、*はヒドロキシアルキルセルロースの水酸基から水素原子を除いた基との結合位置を示す。)
【請求項2】
ヒドロキシアルキルセルロース(A)の疎水基の置換度(MS
R)とカチオン性基の置換度(MS
C)の比(MS
R/MS
C)が、0.001以上10以下である、請求項
1に記載の布帛処理組成物。
【請求項3】
疎水基及びカチオン性基が、ヒドロキシアルキルセルロースの異なる側鎖上に結合している、請求項
1又は
2に記載の布帛処理組成物。
【請求項4】
炭素数4以上の炭化水素基を含む疎水基が、下記式(1)で表される、請求項1~
3のいずれかに記載の布帛処理組成物。
【化2】
(式(1)中、Zは単結合、又は酸素原子及び窒素原子から選択される少なくとも1つを有する炭化水素基を示し、R
1は炭素数4以上の炭化水素基を示し、*はヒドロキシアルキルセルロースの水酸基から水素原子を除いた基との結合位置を示す。)
【請求項5】
式(1)で表される疎水基が、下記式(1-1-1)で表される疎水基、式(1-1-2)で表される疎水基、式(1-2-1)で表される疎水基、式(1-2-2)で表される疎水基、式(1-3)で表される疎水基、及び式(1-4)で表される疎水基から選ばれる少なくとも1つを含む、請求項
4に記載の布帛処理組成物。
【化3】
(式(1-1-1)~式(1-4)中、R
11及びR
12はそれぞれ独立に、炭素数2~4のアルキレン基を示し、R
1は式(1)におけるR
1と同義であり、*はヒドロキシアルキルセルロースの水酸基から水素原子を除いた基との結合位置を示し、n1は-R
11O-の付加モル数を示し、n2は-R
12-O-の付加モル数を示し、n1及びn2は0以上30以下の整数である。)
【請求項6】
ヒドロキシアルキルセルロースの重量平均分子量が1,000以上3,000,000以下である、請求項1~
5のいずれかに記載の布帛処理組成物。
【請求項7】
ヒドロキシアルキルセルロース(A)における炭素数4以上の炭化水素基を含む疎水基の置換度が、0.0001以上1以下である、請求項1~
6のいずれかに記載の布帛処理組成物。
【請求項8】
ヒドロキシアルキルセルロース(A)におけるカチオン性基の置換度が、0.001以上1以下である、請求項1~
7のいずれかに記載の布帛処理組成物。
【請求項9】
水を含有する、請求項1~
8のいずれかに記載の布帛処理組成物。
【請求項10】
処理対象となる布帛が、疎水性繊維からなる布帛である、請求項1~
9のいずれかに記載の布帛処理組成物。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれかに記載の布帛処理組成物に処理対象となる布帛を含浸させる工程を有する、布帛の処理方法。
【請求項12】
処理対象となる布帛中のセルロース含有量が90質量%以下である、請求項
11に記載の布帛の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は布帛処理組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
多糖誘導体は、シャンプーやリンス、トリートメント、コンディショナー等の毛髪洗浄剤組成物や衣料の洗浄剤組成物の配合成分に用いられ、その用途は多岐にわたる。
特開2000-178303号公報(特許文献1)には、洗濯用仕上げ剤として、特定のアルキル基、カルボキシメチル基、及びカチオン基で置換されている多糖誘導体が記載されている。
特開2015-168666号公報(特許文献2)には、特定の界面活性剤、カチオン性基含有セルロースエーテル及びグリセリルエーテルを含有する、水性毛髪洗浄剤が記載されている。
特表2013-529644号公報(特許文献3)には、多糖類、及びカチオン性モノマーを含有する合成ポリマーからなる群から選択される特定の持続性ポリマーを含む、パーソナルケア組成物添加剤が開示されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は以下の<1>及び<2>に関する。
<1> ヒドロキシアルキルセルロースに、カチオン性基、及び炭素数4以上の炭化水素基を含む疎水基から選ばれる1種以上が結合しているヒドロキシアルキルセルロース(A)を含有し、前記ヒドロキシアルキルセルロース(A)1質量部に対する界面活性剤(B)の含有量が3.5質量部以下である、布帛処理組成物。
<2> <1>に記載の布帛処理組成物に処理対象となる布帛を含浸させる工程を有する、布帛の処理方法。
【発明を実施するための形態】
【0004】
洗浄時に汚れの洗浄性を向上させることができる、布帛処理組成物が求められている。しかしながら、従来の組成物では、充分な性能を発揮することができていない。
本発明は、布帛に処理することで、洗浄時の汚れの洗浄性を向上することができる布帛処理組成物、及び該布帛処理組成物を使用する布帛の処理方法に関する。
本発明者等は、特定のヒドロキシアルキルセルロース(A)を含有し、ヒドロキシアルキルセルロース(A)1質量部に対する界面活性剤の含有量を3.5質量部以下とすることにより、上記の課題が解決されることを見出した。
本発明によれば、布帛に処理することで、洗浄時の汚れの洗浄性を向上することができる布帛処理組成物、該布帛処理組成物を使用する布帛の処理方法、及び前記方法により処理された布帛が提供される。
以下の説明において、「ソイルリリース性能」とは、布帛に処理することにより、洗浄時の汚れの落ちやすさを向上させる性能を意味する。
【0005】
[布帛処理組成物]
本発明の布帛処理組成物は、ヒドロキシアルキルセルロースに、カチオン性基、及び炭素数4以上の炭化水素基を含む疎水基(以下、単に「疎水基」ともいう。)から選ばれる1種以上が結合しているヒドロキシアルキルセルロース(A)を含有し、前記ヒドロキシアルキルセルロース(A)1質量部に対する界面活性剤(B)の含有量が3.5質量部以下である。
【0006】
本発明者らは、ヒドロキシアルキルセルロース(A)を含有し、ヒドロキシアルキルセルロースに対する界面活性剤の含有量が特定の範囲である本発明の布帛処理組成物を、衣類等の処理対象となる布帛に処理することにより、洗浄時の汚れの落ちやすくなる性能が向上することを見出した。その詳細な作用機構は不明であるが、一部は以下のように推定される。
本発明において、ヒドロキシアルキルセルロース(A)は、界面活性剤(B)の量が特定の範囲内にあることで、衣類等の処理対象となる布帛の表面に対する吸着性が高まり、また、表面に付着したヒドロキシアルキルセルロース(A)により、布帛に均質かつ適度な親水性が付与され、その結果、洗浄時に汚れが落ちやすくなる性能が向上したものと推定される。更に、ヒドロキシアルキルセルロース(A)がカチオン性基や疎水基を有する場合には、布帛への吸着形態が制御され、更に性能が向上すると考えられる。
【0007】
<ヒドロキシアルキルセルロース(A)>
本発明の布帛処理組成物は、ヒドロキシアルキルセルロース(A)を含み、該ヒドロキシアルキルセルロース(A)は、ヒドロキシアルキルセルロースに、カチオン性基、及び炭素数4以上の炭化水素基を含む疎水基から選ばれる1種以上が結合している。ここで、ヒドロキシアルキルセルロース(A)は、ソイルリリース性能の観点から、少なくともカチオン性基又は疎水基が結合しており、カチオン性基及び疎水基の双方が結合していることが好ましい。
【0008】
ソイルリリース性能の観点から、前記ヒドロキシアルキルセルロースが有するヒドロキシアルキル基は、ヒドロキシエチル基及びヒドロキシプロピル基から選ばれる少なくとも1つが好ましく、ヒドロキシエチル基又はヒドロキシプロピル基のみであることがより好ましく、ヒドロキシエチル基のみであることが更に好ましい。前記ヒドロキシアルキルセルロースは、ヒドロキシエチル基及びヒドロキシプロピル基の双方を有していてもよく、いずれか一方のみを有することが好ましく、ヒドロキシエチル基のみを有することがより好ましい。
ヒドロキシアルキルセルロースは、ソイルリリース性能の観点から、好ましくはヒドロキシエチルセルロース(以下、「HEC」ともいう)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシブチルセルロース、より好ましくはHEC、ヒドロキシプロピルセルロース、更に好ましくはHECである。
本発明において、ヒドロキシアルキルセルロース(A)は、ソイルリリース性能の観点から、好ましくはヒドロキシエチルセルロース(A)(以下、「HEC(A)」ともいう)、ヒドロキシプロピルセルロース(A)、ヒドロキシブチルセルロース(A)、より好ましくはHEC(A)、ヒドロキシプロピルセルロース(A)、更に好ましくはHEC(A)である。
【0009】
ヒドロキシアルキルセルロースにおけるヒドロキシアルキル基の置換度は、溶解性の観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは1以上、より更に好ましくは1.5以上であり、そして、ソイルリリース性能の観点から、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは5以下、より更に好ましくは3以下である。
本発明において、X基の置換度とは、X基のモル平均置換度であり、セルロースの構成単糖単位あたりのX基の置換数を意味する。例えば、「ヒドロキシエチル基の置換度」は、アンヒドログルコース単位1モルに対して導入された(結合している)ヒドロキシエチル基の平均モル数を意味する。
前記ヒドロキシアルキルセルロースが、ヒドロキシエチル基及びヒドロキシプロピル基の双方を有する場合には、ヒドロキシアルキル基の置換度は、ヒドロキシエチル基の置換度と、ヒドロキシプロピル基の置換度の合計である。
【0010】
(重量平均分子量)
本発明において、ヒドロキシアルキルセルロースの重量平均分子量は、ソイルリリース性能の観点から、好ましくは1,000以上、より好ましくは1万以上、更に好ましくは3万以上、より更に好ましくは5万以上、より更に好ましくは7万以上、より更に好ましくは10万以上、より更に好ましくは13万以上であり、そして、組成物中での溶解性の観点から、好ましくは300万以下、より好ましくは150万以下、更に好ましくは120万以下、より更に好ましくは79万以下、より更に好ましくは60万以下、より更に好ましくは50万以下、より更に好ましくは40万以下である。
ヒドロキシアルキルセルロースとして、製品を入手して使用する場合には、製造社の公表値を使用してもよい。
【0011】
(カチオン性基)
本発明において、ヒドロキシアルキルセルロース(A)は、ヒドロキシアルキルセルロースの水酸基から水素原子を除いた基に、カチオン性基が結合していることが好ましい。前記水酸基は、セルロースに結合したヒドロキシアルキル基が有する水酸基と、セルロース骨格を形成するグルコースが有する水酸基(ヒドロキシアルキル基が結合していない水酸基)とを含む。
ヒドロキシアルキルセルロース(A)が有するカチオン性基は、第4級アンモニウムカチオンを含むことが好ましく、全体として、以下の式(2-1)又は式(2-2)で表されることが好ましい。
【0012】
【化1】
(式(2-1)及び式(2-2)中、R
21~R
23はそれぞれ独立に、炭素数1以上3以下の炭化水素基を示し、X
1a-はアニオンを示し、tは0以上3以下の整数を示し、*はヒドロキシアルキルセルロースの水酸基から水素原子を除いた基との結合位置を示す。)
【0013】
R21~R23はそれぞれ独立に、炭素数1以上3以下の直鎖又は分岐の炭化水素基であることが好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましく、R21~R23の全てがメチル基又はエチル基であることが更に好ましく、R21~R23の全てがメチル基であることがより更に好ましい。
tは、好ましくは1以上3以下の整数、より好ましくは1又は2、更に好ましくは1である。
X1a-は、第4級アンモニウムカチオンの対イオンであり、炭素数1以上3以下のアルキル硫酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、炭素数1以上3以下のカルボン酸イオン(ギ酸イオン、酢酸イオン、プロピオン酸イオン)、及びハロゲン化物イオンが例示される。
これらの中でも、製造の容易性及び原料入手容易性の観点から、X1a-は、好ましくはメチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン、塩化物イオン、及び臭化物イオンから選択される1種以上であり、得られるヒドロキシアルキルセルロース(A)の水溶性及び化学的安定性の観点から、より好ましくは塩化物イオンである。
X1a-は1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
【0014】
式(2-1)又は式(2-2)で表される基は、カチオン性基の導入剤(以下、「カチオン化剤」ともいう)を使用することによって得ることができる。カチオン化剤としては、例えば、グリシジルトリアルキルアンモニウムクロリド、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルトリアルキルアンモニウムクロリドが挙げられ、原料の入手の容易性及び化学的安定性の観点から、グリシジルトリアルキルアンモニウムクロリドが好ましい。
これらのカチオン化剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0015】
本発明において、ヒドロキシアルキルセルロース(A)におけるカチオン性基の置換度(以下、「MSC」ともいう)は、ソイルリリース性能の観点から、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.005以上、更に好ましくは0.01以上、より更に好ましくは0.02以上、より更に好ましくは0.05以上、より更に好ましくは0.07以上であり、そして、好ましくは1以下、より好ましくは0.7以下、更に好ましくは0.4以下、より更に好ましくは0.35以下、より更に好ましくは0.3以下、より更に好ましくは0.25以下、より更に好ましくは0.2以下、より更に好ましくは0.15以下、より更に好ましくは0.1以下である。
カチオン性基の導入量は、実施例に記載の方法により測定される。
【0016】
(疎水基)
本発明において、ヒドロキシアルキルセルロース(A)は、ヒドロキシアルキルセルロースに炭素数4以上の炭化水素基を含む疎水基が結合していることが好ましい。
疎水基が含有する炭化水素基は、ソイルリリース性能の観点から、好ましくはアルキル基又はアルケニル基、より好ましくはアルキル基、更に好ましくは直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、より更に好ましくは直鎖状のアルキル基である。
疎水基が含有する炭化水素基の炭素数は、ソイルリリース性能の観点から、4以上、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは10以上であり、そして、好ましくは24以下、より好ましくは22以下、更に好ましくは18以下、より更に好ましくは16以下、より更に好ましくは14以下である。
疎水基は、下記式(1)で表される基であることが好ましい。
【0017】
【化2】
(式(1)中、Zは単結合、又は酸素原子及び窒素原子から選ばれる少なくとも1つを有する炭化水素基を示し、R
1は炭素数4以上の炭化水素基を示し、*はヒドロキシアルキルセルロースの水酸基から水素原子を除いた基との結合位置を示す。)
【0018】
R1の好ましい態様は、前述の疎水基が含有する炭化水素基と同様である。
R1は、炭化水素基の炭素数が最大となるように定義される。従って、式(1)において、Z中のR1と結合する原子は、例えば酸素原子、窒素原子、カーボネート炭素、水酸基が結合している炭素原子、ヒドロキシアルキル基が結合している炭素原子等である。
【0019】
Zは、単結合又は酸素原子及び窒素原子から選ばれる少なくとも1つを有する炭化水素基を表す。Zは、単結合又は少なくとも酸素原子を有する炭化水素基であることが好ましく、単結合又は酸素原子を有する炭化水素基であることがより好ましい。前記炭化水素基は、アルキレン基であることが好ましく、アルキレン基の一部のメチレン基がエーテル結合で置換されていてもよく、メチレン基の一部がカルボニル基(-C(=O)-)で置換されていてもよく、メチレン基の一部がアミド結合で置換されていてもよく、アルキレン基の一部の水素原子が、水酸基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基で置換されていてもよい。
Zが酸素原子を有する炭化水素基(以下、炭化水素基(Z)ともいう。)である場合、炭化水素基(Z)は、エポキシ基由来の基、オキシグリシジル基由来の基、又はカルボン酸(若しくはその無水物)由来の基を含むが好ましく、ソイルリリース性能の観点から、オキシグリシジル基由来の基を含むことがより好ましい。
式(1)で表される基は、下記式(1-1-1)~(1-4)のいずれかで表される基を含むことがより好ましい。
【0020】
【化3】
(式(1-1-1)~式(1-4)中、R
11及びR
12はそれぞれ独立に、炭素数2~4のアルキレン基を示し、R
1は式(1)におけるR
1と同義であり、*はヒドロキシアルキルセルロースの水酸基から水素原子を除いた基との結合位置を示し、n1は-R
11-O-の付加モル数を示し、n2は-R
12-O-の付加モル数を示し、n1及びn2は0以上30以下の整数である。)
【0021】
式(1-1-1)~式(1-4)におけるR1の好ましい態様は、式(1)中のR1と同じである。式(1-1-1)~式(1-4)からR1を除いた基は、炭化水素基Zの好ましい態様である。
R11及びR12はそれぞれ独立に、好ましくはエチレン基又はプロピレン基、より好ましくはエチレン基である。R11及びR12の炭素数は、好ましくは2以上3以下である。R11及びR12が複数存在する場合、それぞれ同一でも異なっていてもよい。n1及びn2は、好ましくは20以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは5以下、より更に好ましくは3以下、より更に好ましくは1以下であり、そして、0以上であってもよく、0であることがより更に好ましい。
【0022】
式(1)で表される基が、式(1-1-1)で表される基及び式(1-1-2)で表される基から選択される少なくとも1つの基を含有する場合、-R11-O-の平均付加モル数は、ソイルリリース性能の観点から、好ましくは20以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは5以下、より更に好ましくは3以下、より更に好ましくは1以下であり、そして、好ましくは0以上である。
式(1)で表される基が、式(1-4)で表される基を含有する場合、式(1-4)における-R12-O-の平均付加モル数は、ソイルリリース性能の観点から、好ましくは20以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは5以下、より更に好ましくは3以下、より更に好ましくは1以下であり、そして、好ましくは0以上である。
【0023】
式(1-1-1)及び式(1-1-2)は、グリシジル((ポリ)アルキレンオキシ)ヒドロカルビルエーテルに由来する基であり、Zがオキシグリシジル基又は(ポリ)アルキレンオキシグリシジル基由来の基である。式(1-1-1)又は式(1-1-2)で表される基は、疎水基の導入剤(以下、「疎水化剤」ともいう)として、グリシジル((ポリ)アルキレンオキシ)ヒドロカルビルエーテル、好ましくはグリシジル((ポリ)アルキレンオキシ)アルキルエーテル、より好ましくはグリシジルアルキルエーテルを使用することによって得られる。
式(1-2-1)及び式(1-2-2)は、Zがエポキシ基に由来する基である。式(1-2-1)及び式(1-2-2)で表される基は、疎水化剤として、末端エポキシ化炭化水素、好ましくは末端エポキシ化アルカンを使用することで得られる。
式(1-3)は、疎水基が直接にヒドロキシアルキルセルロースの水酸基から水素原子を除いた基と結合している場合である。式(1-3)で表される基は、疎水化剤として、ハロゲン化炭化水素を使用することで得られる。
式(1-4)は、Zがカルボニル基を含有する。式(1-4)で表される基は、疎水化剤として、R1-C(=O)-OH、R1-C(=O)-A(Aはハロゲン原子を示す。)、R1-C(=O)-O-C(=O)-R1等を使用することで得られる。
これらの中でも、ヒドロキシアルキルセルロース(A)の製造時に塩の副生がなく、また、ソイルリリース性能の観点から、式(1-1-1)、式(1-1-2)、式(1-2-1)又は式(1-2-2)で表される基であることが好ましく、より好ましくは式(1-1-1)又は式(1-1-2)で表される基である。
式(1)で表される疎水基の中で、式(1-1-1)で表される疎水基、式(1-1-2)で表される疎水基、式(1-2-1)で表される疎水基、式(1-2-2)で表される疎水基、式(1-3)で表される疎水基、及び式(1-4)で表される疎水基の合計含有量は、好ましくは50mol%、より好ましくは80mol%以上、更に好ましくは90mol%以上であり、100mol%以下であり、100mol%であることがより更に好ましい。
【0024】
本発明において、ヒドロキシアルキルセルロース(A)における疎水基の置換度(以下、「MSR」ともいう)は、ソイルリリース性能の観点から、好ましくは0.0001以上、より好ましくは0.001以上、更に好ましくは0.005以上、より更に好ましくは0.008以上、より更に好ましくは0.01以上、より更に好ましくは0.015以上であり、そして、溶解性の観点から、好ましくは1以下、より好ましくは0.4以下、更に好ましくは0.2以下、より更に好ましくは0.1以下、より更に好ましくは0.08以下、より更に好ましくは0.06以下、より更に好ましくは0.05以下、より更に好ましくは0.04以下、より更に好ましくは0.03以下である。
【0025】
本発明において、ヒドロキシアルキルセルロース(A)の疎水基の置換度(MSR)とカチオン性基の置換度(MSC)の比(MSR/MSC)は、ソイルリリース性能の観点から、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.005以上、更に好ましくは0.01以上、より更に好ましくは0.05以上であり、そして、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは3以下、より更に好ましくは2以下、より更に好ましくは1.2以下、より更に好ましくは0.8以下、より更に好ましくは0.5以下、より更に好ましくは0.3以下である。
【0026】
本発明において、ヒドロキシアルキルセルロース(A)が疎水基及びカチオン性基の双方を有する場合、疎水基とカチオン性基とが互いに異なる側鎖上に結合していてもよく、一つの側鎖上に疎水基及びカチオン性基を有してもよい。ソイルリリース性能の観点から、疎水基とカチオン性基とは、ヒドロキシアルキルセルロースの有する、異なる水酸基から水素原子を除いた基と結合していることが好ましい。すなわち、疎水基及びカチオン性基が、ヒドロキシアルキルセルロースの異なる側鎖上に結合していることが好ましい。
【0027】
ヒドロキシアルキルセルロース(A)が一つの側鎖上にカチオン性基及び疎水基を有する場合、ヒドロキシアルキルセルロース(A)は、下記式(3-1)又は(3-2)で表される基を有することが好ましい。
【0028】
【化4】
(式(3-1)及び式(3-2)中、R
31~R
33はそれぞれ独立に、炭素数1以上24以下の炭化水素基を示し、R
31~R
33のうち、少なくとも1つは炭素数4以上の炭化水素基を示し、X
2a-はアニオンを示し、sは0以上3以下の整数を示し、*はヒドロキシアルキルセルロースの水酸基から水素原子を除いた基との結合位置を示す。)
【0029】
R31~R33のうち、少なくとも1つは、炭素数4以上の炭化水素基を示し、好ましくはアルキル基又はアルケニル基、より好ましくはアルキル基、更に好ましくは直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、より更に好ましくは直鎖状のアルキル基である。
R31~R33の少なくとも1つは、ソイルリリース性能の観点から、炭素数が4以上であり、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは10以上、より更に好ましくは12以上であり、そして、好ましくは24以下、より好ましくは22以下、更に好ましくは18以下、より更に好ましくは16以下、より更に好ましくは14以下である。
R31~R33のうちの1つが炭素数4以上の炭化水素基であり、2つが炭素数1~3の炭化水素基であることが好ましい。炭素数1~3の炭化水素基としては、メチル基又はエチル基が好ましく、R31~R33の2つがメチル基又はエチル基であることがより好ましく、R31~R33の2つがメチル基であることが更に好ましい。
【0030】
sは、好ましくは1以上3以下の整数、より好ましくは1又は2、更に好ましくは1である。
X2a-は、第4級アンモニウムカチオンの対イオンである。具体的には、炭素数1以上3以下のアルキル硫酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、炭素数1以上3以下のカルボン酸イオン(ギ酸イオン、酢酸イオン、プロピオン酸イオン)、及びハロゲン化物イオンが例示される。
これらの中でも、製造の容易性及び原料入手容易性の観点から、X2a-は、好ましくはメチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン、塩化物イオン、及び臭化物イオンから選択される1種以上であり、得られる変性ヒドロキシアルキルセルロースの水溶性及び化学的安定性の観点から、より好ましくは塩化物イオンである。
X2a-は1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
【0031】
式(3-1)又は式(3-2)で表される基を有するヒドロキシアルキルセルロース(A)は、例えば、後述のヒドロキシアルキルセルロース(A)の製造工程において、カチオン性基及び疎水基の導入剤を作用させることによって得ることができる。前記導入剤としては、グリシジルジメチルラウリルアンモニウムクロリド、及びグリシジルジエチルラウリルアンモニウムクロリドが好ましく挙げられる。
前記導入剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
本発明において、ヒドロキシアルキルセルロース(A)は、アニオン性基を有していてもよい。ヒドロキシアルキルセルロース(A)におけるアニオン性基の置換度(以下、「MSA」ともいう)とカチオン性基の置換度の比(MSA/MSC)は、ソイルリリース性能の観点から、好ましくは3以下、より好ましくは1.7以下、更に好ましくは1.5以下、より更に好ましくは1以下、より更に好ましくは0.5以下、より更に好ましくは0.1以下であり、そして、0以上であってもよく、0であることがより更に好ましい。
MSAは、ソイルリリース性能の観点から、好ましくは0.01未満、より好ましくは0.001以下である。
ヒドロキシアルキルセルロース(A)がアニオン性基を有する場合、該アニオン性基としては、カルボキシメチル基等が例示される。
カルボキシメチル基の導入反応(カルボキシメチル化反応)は、ヒドロキシアルキルセルロースに塩基性化合物の存在下、モノハロゲン化酢酸及び/又はその金属塩を反応させることにより行われる。
モノハロゲン化酢酸及びモノハロゲン化酢酸の金属塩としては、具体的には、モノクロル酢酸、モノクロロ酢酸ナトリウム、モノクロロ酢酸カリウム、モノブロモ酢酸ナトリウム、モノブロモ酢酸カリウム等が例示される。これらモノハロゲン化酢酸及びその金属塩は単独あるいは2種以上を組み合せても使用することができる。
【0033】
本発明において、ヒドロキシアルキルセルロース(A)は、置換基としてグリセロール基を有していてもよい。グリセロール基の置換度は、ソイルリリース性能の観点から、好ましくは0.5未満、より好ましくは0.1未満であり、そして、0以上であってもよく、0であることが更に好ましい。
グリセロール基を有するヒドロキシアルキルセルロース(A)は、例えば、後述のヒドロキシアルキルセルロース(A)の製造工程において、グリセロール化剤を作用させることによって得られる。該グリセロール化剤としては、グリシドール、3-クロロ-1,2-プロパンジオール、3-ブロモ-1,2-プロパンジオール、グリセリン、グリセリンカーボネート等が挙げられ、塩が副生しないこと、及び反応性の観点から、グリシドールが好ましい。
【0034】
<ヒドロキシアルキルセルロース(A)の製造方法>
本発明において、ヒドロキシアルキルセルロース(A)は、ヒドロキシアルキルセルロースに対し、カチオン化剤及び疎水化剤から選ばれる1種以上と反応させて、カチオン性基及び疎水基を導入して得ることが好ましい。
ヒドロキシアルキルセルロースに対する、カチオン性基の導入反応(以下、「カチオン化反応」ともいう)及び疎水基の導入反応(以下、「疎水化反応」ともいう)は、いずれも塩基性化合物の共存下で行うことが好ましい。導入反応の反応速度の観点から、アルカリ金属水酸化物が好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムがより好ましい。
前記反応は、反応性の観点から、非水溶剤の存在下で行ってもよい。前記非水溶剤としては、2-プロパノール等の極性溶剤が挙げられる。
反応後は、酸を用いて塩基性化合物を中和することができる。酸としては、例えばリン酸等の無機酸、酢酸等の有機酸が挙げられる。
得られたヒドロキシアルキルセルロース(A)は、必要に応じて、濾過、洗浄等により精製してもよい。
【0035】
<界面活性剤(B)>
本発明の布帛処理組成物は、ヒドロキシアルキルセルロース(A)1質量部に対する界面活性剤(B)の含有量が3.5質量部以下である。
布帛処理組成物中の界面活性剤(B)の含有量は、ソイルリリース性能の観点から、ヒドロキシアルキルセルロース(A)1質量部に対して3.5質量部以下、好ましくは3質量部以下、より好ましくは2質量部以下、更に好ましくは1.5質量部以下、より更に好ましくは1.2質量部以下であり、そして、好ましくは0質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは0.2質量部以上、より更に好ましくは0.5質量部以上、より更に好ましくは0.8質量部以上である。
【0036】
界面活性剤(B)としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤が例示される。
(アニオン性界面活性剤)
アニオン性界面活性剤としては、界面活性剤の疎水基、好ましくはアルキル基の1級炭素原子又はフェニル基にアニオン性基が結合した末端アニオン性界面活性剤、及び疎水基、好ましくはアルキル基の2級炭素原子にアニオン性基が結合した内部アニオン性界面活性剤が挙げられる。
末端アニオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)、α-オレフィンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩(AS)、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩(AES)、α-スルホ脂肪酸エステル塩、及び脂肪酸塩から選ばれる1種以上のアニオン性界面活性剤が挙げられる。内部アニオン性界面活性剤としては、特開2015-028123の段落0011に記載の、内部オレフィンスルホン酸塩のオレフィン体(IOS)及びヒドロキシ体(HAS)が挙げられる。
ソイルリリース性能の観点から、これらの中でも、LAS、AS、AES、IOS、及びHASから選ばれる1種以上のアニオン性界面活性剤が好ましい。末端アニオン性界面活性剤のアルキル基の炭素数は、好ましくは8以上、より好ましくは10以上、より好ましくは12以上であり、そして、好ましくは18以下、より好ましくは16以下、より好ましくは14以下である。内部アニオン性界面活性剤のアルキル基の炭素数は、好ましくは12以上、より好ましくは14以上、より好ましくは16以上であり、そして、好ましくは24以下、より好ましくは22以下、より好ましくは18以下である。AESが有するオキシアルキレン基は、好ましくはエチレンオキシ基であり、その平均付加モル数は、好ましくは0.5以上、より好ましくは1以上であり、そして、好ましくは10以下、より好ましくは5以下である。
アニオン性界面活性剤の塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、及びアンモニウム塩が好ましい。
本発明において前記アニオン性界面活性剤は、下記式(16)で表されるASやAESであってもよい。
R51O(A51O)mSO3M51 (16)
(式中、R51は、炭素数8以上、20以下の炭化水素基を示し、A51は、炭素数2以上、4以下のアルキレン基を示し、M51は水素原子、アルカリ金属又はNH4を示す。また、mは平均値で0以上、4以下の数である。)
アニオン性界面活性剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
(ノニオン性界面活性剤)
ノニオン性界面活性剤としては、アルキル基等の疎水基と、ポリオキシエチレン基等の非イオン性の親水基とを有するものが挙げられる。前記疎水基としては、洗浄性能の観点から、好ましくは炭化水素基、より好ましくはアルキル基である。前記疎水基の炭素数は、変性ヒドロキシアルキルセルロースの水への分散性の向上の点から、前記疎水基の炭素数は、好ましくは8以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは12以上、そして、好ましくは18以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは14以下である。
【0038】
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレン基を有するノニオン性界面活性剤、アルキルポリグリコシド、アルキルグリセリルエーテルが挙げられる。これらの中でも、洗浄性能の観点から、ポリオキシアルキレン基を有するノニオン性界面活性剤が好ましく、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマーから選ばれる1種以上がより好ましく、変性ヒドロキシアルキルセルロースの水への分散性に優れる点から、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが更に好ましい。
洗浄性能の観点から、オキシアルキレン基としては、好ましくはオキシエチレン基、オキシプロピレン基、より好ましくはオキシエチレン基である。オキシアルキレン基の炭素数は、2以上3以下が好ましい。
変性ヒドロキシアルキルセルロースの水への分散性の向上の観点から、オキシアルキレン基の平均付加モル数は、好ましくは5以上、より好ましくは6以上、更に好ましくは7以上であり、そして、好ましくは20以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは16以下、より更に好ましくは14以下、より更に好ましくは12以下である。
ノニオン性界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
アミド系ノニオン性界面活性剤としては、脂肪酸アルカノールアミド系界面活性剤が例示され、モノアルカノールアミド、ジアルカノールアミドのいずれでもよく、炭素数2~3のヒドロキシアルキル基を有するものが入手容易であり、例えばオレイン酸ジエタノールアミド、パーム核油脂肪酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ラウリン酸イソプロパノールアミド、ラウリン酸モノエタノールアミド等が挙げられる。これらの中でも、天然脂肪酸ジエタノールアミドが汎用的であり、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、パーム核油脂肪酸ジエタノールアミドなどが例示される。
【0040】
(両性界面活性剤)
両性界面活性剤としては、アルキル基及びアシル基が8~18個の炭素原子を有するアルキルアミンオキシド、カルボベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン、アミドスルホベタイン、イミダゾリニウムベタイン、ホスホベタイン等が挙げられる。具体的には、脂肪酸アミドプロピルベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン等が挙げられる。これらのうち、脂肪酸アミドプロピルベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインが好ましく、ラウリン酸アミドプロピルベタインがより好ましい。
【0041】
本発明の布帛処理組成物が界面活性剤(B)を含有する場合、界面活性剤(B)としては、アニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤から選ばれる少なくとも1つが好ましい。界面活性剤(B)は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
<その他の成分>
本発明の布帛処理組成物は、使用時の取扱い性の観点から、水を含有することが好ましい。
本発明の布帛処理組成物は、有機溶剤、アルカリ剤、キレート剤、分散剤等を含有してもよい。
【0043】
本発明の布帛処理組成物は、濃縮した状態や無溶剤で市場に流通させ、使用時に希釈して使用してもよい。本発明の布帛処理組成物を衣料用洗浄剤組成物に添加して使用してもよい。更に、使用時に他の成分を添加してもよい。
使用時のヒドロキシアルキルセルロース(A)の含有量は、ソイルリリース性能の観点から、好ましくは0.00001質量%以上、より好ましくは0.0001質量%以上、更に好ましくは0.001質量%以上であり、そして、経済性の観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
【0044】
[布帛の処理方法]
本発明の布帛の処理方法は、本発明の布帛処理組成物に処理対象となる布帛を含浸させる工程を有する。上述した通り、本発明の布帛処理組成物を適宜希釈して使用してもよく、使用時に他の成分を添加してもよい。
処理対象となる布帛を含浸させる温度は、処理対象となる布帛へのヒドロキシアルキルセルロース(A)の吸着性を向上させる観点から、好ましくは0℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは20℃以上であり、そして、取扱い容易性の観点から、好ましくは100℃以下、更に好ましくは80℃以下である。
処理対象となる布帛を含浸させる時間は、処理対象となる布帛へのヒドロキシアルキルセルロース(A)の吸着性の観点から、好ましくは1分以上、より好ましくは3分以上、更に好ましくは5分以上であり、そして、生産性の観点から、好ましくは60分以下、より好ましくは40分以下、更に好ましくは30分以下である。
【0045】
処理対象となる布帛を含浸させる際の浴比(処理対象となる布帛1kgに対する布帛処理組成物の容量(L))は、処理対象となる布帛へのヒドロキシアルキルセルロース(A)の吸着性、作業性及び経済性の観点から、好ましくは0.3以上、より好ましくは1以上、更に好ましくは3以上、より更に好ましくは10以上、より更に好ましくは20以上であり、そして、好ましくは500以下、より好ましくは200以下、更に好ましくは100以下、より更に好ましくは70以下である。
【0046】
処理対象となる布帛を含浸させる際の、ヒドロキシアルキルセルロース(A)の%owf(処理対象となる布帛の質量に対するヒドロキシアルキルセルロース(A)の質量%(on the weight of fiber))は、ソイルリリース性の観点から、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.005以上、更に好ましくは0.01以上、より更に好ましくは0.02以上、より更に好ましくは0.05以上であり、そして、作業性及び経済性の観点から、好ましくは5以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは0.5以下、より更に好ましくは0.25以下である。
【0047】
本発明において、布帛処理組成物に含浸した布帛に対して、処理後に濯ぎ工程、及び乾燥工程を行うことが好ましい。濯ぎ工程及び乾燥工程は、一方のみを行ってもよいが、濯ぎ工程及び乾燥工程をこの順で行うことがより好ましい。
濯ぎ工程では、布帛処理組成物に含浸した布帛を濯ぎ、余分な布帛処理組成物を洗い流す。乾燥工程では、布帛処理液への含浸又は濯ぎにより濡れた状態となった処理済みの布帛を乾燥する。本発明において、処理された布帛は、乾燥状態で使用することが好ましい。
【0048】
本発明において、処理対象となる布帛は、高いソイルリリース性能を得る観点から、表面が疎水性であることが好ましく、疎水性繊維からなる布帛であることがより好ましい。
疎水性繊維としては、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、トリアセテート繊維、ジアセテート繊維、ポリアミド繊維、及びこれらの繊維を2種類以上用いた混紡繊維等が挙げられる。これらとレーヨン等の再生繊維、木綿、絹、羊毛等の天然繊維との混紡繊維も、本明細書においては疎水性繊維に含まれる。これらの中でも、処理対象となる疎水性繊維としては、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、及びアクリル繊維から選ばれる1種以上が好ましく、ポリエステル繊維がより好ましい。
処理対象となる布帛のセルロース含有量は、高いソイルリリース性能を得る観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは10質量%以下であり、そして0質量%以上であり、0質量%であってもよい。
処理対象となる布帛は、上記と同様の観点から、疎水性繊維を含有することが好ましく、布帛中の疎水性繊維の含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは90質量%以上であり、そして、100質量%以下であり、100質量%であってもよい。
【0049】
処理対象となる布帛の疎水性は、例えば、水面に対し垂直に配置した布帛の下部を25℃のイオン交換水に浸漬したときの、水性染料のクロマトグラフィーによって15分間で垂直に展開した距離(吸水性指数、単位:cm)で評価できる。吸水性指数が小さいほど、疎水性が高いことを示す。本発明において、処理対象となる布帛の吸水性指数は、高いソイルリリース性能を得る観点から、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは7以下であり、そして、0以上である。
吸水性指数は、実施例記載の方法で測定できる。
【0050】
処理対象となる「布帛」は、本来は「織物」の意であるが、本発明において処理対象となる「布帛」は織物に限定されず、織物、ニットやレースを含む編物、フェルトを含む不織布の全てを包含する。これらの中でも、処理対象となる布帛は、本発明の布帛処理剤により高いソイルリリース性能が付与される観点から、平滑な表面を有することが好ましく、織物、編物、又はフェルトであることがより好ましく、織物又はフェルトであることが更に好ましく、織物であることがより更に好ましい。
【0051】
処理対象となる布帛の表面粗さは、例えば、光学顕微鏡による観察において、焦点を連続的に変化させて画像解析処理を行うことにより得られる算術平均高さSaの算出により、測定することができる。処理対象となる布帛の表面粗さは、高いソイルリリース性能を得る観点から、好ましくは100μm以下、より好ましくは30μm以下であり、そして、10μm以上である。
算術平均高さSa及び表面粗さは、実施例記載の方法で測定できる。
【0052】
処理対象となる布帛を処理することにより付与される性能は特に限定されず、例えば、蓄熱、帯電防止、電磁波遮断、難燃、耐熱、防風、防水、防汚、脱汚などが例示される。
これらの中でも、防汚及び脱汚の目的で処理することが特に好ましい。
【0053】
[処理された布帛]
本発明の処理された布帛は、上記布帛の処理方法により処理された布帛である。本発明の処理された布帛は、ソイルリリース性能に優れる。
本発明において、処理された布帛は、縫製された衣料でもよく、縫製前の布帛でもよい。
【0054】
本発明は、更に、以下の<1>~<127>を開示する。
<1> ヒドロキシアルキルセルロースに、カチオン性基、及び炭素数4以上の炭化水素基を含む疎水基から選ばれる1種以上が結合しているヒドロキシアルキルセルロース(A)を含有し、前記ヒドロキシアルキルセルロース(A)1質量部に対する界面活性剤(B)の含有量が3.5質量部以下である、布帛処理組成物。
<2> ヒドロキシアルキルセルロース(A)に、カチオン性基及び疎水基から選ばれる少なくとも1つが結合している、<1>に記載の布帛処理組成物。
<3> ヒドロキシアルキルセルロース(A)に、カチオン性基及び疎水基の双方が結合している、<1>又は<2>に記載の布帛処理組成物。
<4> ヒドロキシアルキルセルロース(A)が、ヒドロキシエチルセルロース(A)である、<1>~<3>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<5> ヒドロキシアルキルセルロースにおけるヒドロキシアルキル基の置換度が、1.5以上である、<1>~<4>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<6> ヒドロキシアルキルセルロースにおけるヒドロキシアルキル基の置換度が、3以下である、<1>~<5>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<7> ヒドロキシアルキルセルロースの重量平均分子量が、13万以上である、<1>~<6>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<8> ヒドロキシアルキルセルロースの重量平均分子量が、120万以下である、<1>~<7>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<9> ヒドロキシアルキルセルロースの重量平均分子量が、79万以下である、<1>~<7>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<10> ヒドロキシアルキルセルロースの重量平均分子量が、40万以下である、<1>~<7>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
【0055】
<11> ヒドロキシアルキルセルロース(A)が有するカチオン性基が、第4級アンモニウムカチオンを含む、<1>~<10>に記載の布帛処理組成物。
<12> ヒドロキシアルキルセルロース(A)が有するカチオン性基が、以下の式(2-1)又は式(2-2)で表される、<1>~<11>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
【0056】
【化5】
(式(2-1)及び式(2-2)中、R
21~R
23はそれぞれ独立に、炭素数1以上3以下の炭化水素基を示し、X
1a-はアニオンを示し、tは0以上3以下の整数を示し、*はヒドロキシアルキルセルロースの水酸基から水素原子を除いた基との結合位置を示す。)
【0057】
<13> R21~R23の全てがメチル基又はエチル基である、<12>に記載の布帛処理組成物。
<14> R21~R23の全てがメチル基である、<12>に記載の布帛処理組成物。
<15> tが1である、<12>~<14>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<16> X1a-が、メチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン、塩化物イオン、及び臭化物イオンから選択される1種以上である、<12>~<15>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<17> X1a-が、塩化物イオンである、<12>~<15>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
【0058】
<18> ヒドロキシアルキルセルロース(A)におけるカチオン性基の置換度(MSC)が、0.01以上である、<1>~<17>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<19> MSCが0.02以上である、<1>~<17>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<20> MSCが0.05以上である、<1>~<17>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<21> MSCが0.07以上である、<1>~<17>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<22> MSCが0.2以下である、<1>~<21>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<23> MSCが0.15以下である、<1>~<21>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<24> MSCが0.1以下である、<1>~<21>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
【0059】
<25> 疎水基が含有する炭化水素基がアルキル基である、<1>~<24>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<26> 疎水基が含有する炭化水素基の炭素数が、6以上である、<1>~<25>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<27> 疎水基が含有する炭化水素基の炭素数が、8以上である、<1>~<25>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<28> 疎水基が含有する炭化水素基の炭素数が、10以上である、<1>~<25>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<29> 疎水基が含有する炭化水素基の炭素数が、24以下である、<1>~<28>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<30> 疎水基が含有する炭化水素基の炭素数が、18以下である、<1>~<28>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<31> 疎水基が含有する炭化水素基の炭素数が、16以下である、<1>~<28>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<32> 疎水基が含有する炭化水素基の炭素数が、14以下である、<1>~<28>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
【0060】
<33> 疎水基が、下記式(1)で表される基である、<1>~<32>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
【0061】
【化6】
(式(1)中、Zは単結合、又は酸素原子及び窒素原子から選ばれる少なくとも1つを有する炭化水素基を示し、R
1は炭素数4以上の炭化水素基を示し、*はヒドロキシアルキルセルロースの水酸基から水素原子を除いた基との結合位置を示す。)
【0062】
<34> Zが単結合又は少なくとも酸素原子を有する炭化水素基である、<33>に記載の布帛処理組成物。
<35> 式(1)で表される基が、下記式(1-1-1)~(1-4)のいずれかで表される基から選ばれる少なくとも1つを含む、<33>又は<34>に記載の布帛処理組成物。
【0063】
【化7】
(式(1-1-1)~式(1-4)中、R
11及びR
12はそれぞれ独立に、炭素数2~4のアルキレン基を示し、R
1は式(1)におけるR
1と同義であり、*はヒドロキシアルキルセルロースの水酸基から水素原子を除いた基との結合位置を示し、n1は-R
11-O-の付加モル数を示し、n2は-R
12-O-の付加モル数を示し、n1及びn2は0以上30以下の整数である。)
【0064】
<36> R11及びR12がエチレン基である、<35>に記載の布帛処理組成物。
<37> -R11-O-及び-R12-O-の平均付加モル数が10以下である、<35>又は<36>に記載の布帛処理組成物。
<38> -R11-O-及び-R12-O-の平均付加モル数が3以下である、<35>又は<36>に記載の布帛処理組成物。
<39> -R11-O-及び-R12-O-の平均付加モル数が1以下である、<35>又は<36>に記載の布帛処理組成物。
<40> -R11-O-及び-R12-O-の平均付加モル数が0以上である、<35>~<39>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<41> n1及びn2が20以下である、<35>~<40>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<42> n1及びn2が10以下である、<35>~<40>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<43> n1及びn2が5以下である、<35>~<40>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<44> n1及びn2が3以下である、<35>~<40>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<45> n1及びn2が1以下である、<35>~<40>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<46> n1及びn2が0以上である、<35>~<45>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<47> n1及びn2が0である、<35>~<40>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
【0065】
<48> 式(1)で表される基が、式(1-1-1)、式(1-1-2)、式(1-2-1)及び式(1-2-2)で表される基から選ばれる少なくとも1つを含む、<35>~<47>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<49> 式(1)で表される基が、式(1-1-1)及び式(1-1-2)で表される基から選ばれる少なくとも1つを含む、<35>~<47>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
【0066】
<50> ヒドロキシアルキルセルロース(A)における疎水基の置換度(MSR)が0.005以上である、<1>~<49>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<51> MSRが0.008以上である、<1>~<49>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<52> MSRが0.01以上である、<1>~<49>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<53> MSRが0.015以上である、<1>~<49>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<54> MSRが0.06以下である、<1>~<53>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<55> MSRが0.04以下である、<1>~<53>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<56> MSRが0.03以下である、<1>~<53>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
【0067】
<57> ヒドロキシアルキルセルロース(A)の疎水基の置換度(MSR)とカチオン性基の置換度(MSC)の比(MSR/MSC)が、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.005以上、更に好ましくは0.01以上、より更に好ましくは0.05以上であり、そして、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは3以下、より更に好ましくは2以下、より更に好ましくは1.2以下、より更に好ましくは0.8以下、より更に好ましくは0.5以下、より更に好ましくは0.3以下である、<1>~<56>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<58> 疎水基とカチオン性基とが、ヒドロキシアルキルセルロースの有する、異なる水酸基から水素原子を除いた基と結合している、<1>~<57>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<59> ヒドロキシアルキルセルロース(A)が一つの側鎖上にカチオン性基及び疎水基を有し、ヒドロキシアルキルセルロース(A)が、下記式(3-1)又は(3-2)で表される基を有する、<1>~<58>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
【0068】
【化8】
(式(3-1)及び式(3-2)中、R
31~R
33はそれぞれ独立に、炭素数1以上24以下の炭化水素基を示し、R
31~R
33のうち、少なくとも1つは炭素数4以上の炭化水素基を示し、X
2a-はアニオンを示し、sは0以上3以下の整数を示し、*はヒドロキシアルキルセルロースの水酸基から水素原子を除いた基との結合位置を示す。)
【0069】
<60> R31~R33のうち、少なくとも1つは、炭素数4以上のアルキル基である、<59>に記載の布帛処理組成物。
<61> R31~R33の少なくとも1つが、炭素数が12以上である、<56>又は<60>に記載の布帛処理組成物。
<62> R31~R33の少なくとも1つが、炭素数が14以下である、<56>~<61>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<63> R31~R33のうちの1つが炭素数4以上の炭化水素基であり、2つがメチル基又はエチル基である、<59>~<62>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<64> R31~R33のうちの1つが炭素数4以上の炭化水素基であり、2つがメチル基である、<59>~<62>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<65> sが1である、<59>~<64>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<66> X2a-が、メチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン、塩化物イオン、及び臭化物イオンから選択される1種以上である、<59>~<65>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<67> X2a-が、塩化物イオンである、<59>~<65>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
【0070】
<68> ヒドロキシアルキルセルロース(A)におけるアニオン性基の置換度(MSA)とカチオン性基の置換度(MSC)の比(MSA/MSC)が、0.5以下である、<1>~<67>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<69> MSA/MSCが、0.1以下である、<1>~<67>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<70> MSA/MSCが、0以上である、<1>~<69>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<71> MSA/MSCが、0である、<1>~<67>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<72> MSAが、0.01未満である、<1>~<71>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<73> MSAが、0.001以下である、<1>~<71>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
【0071】
<74> ヒドロキシアルキルセルロース(A)におけるグリセロール基の置換度が0.5未満である、<1>~<73>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<75> 前記グリセロール基の置換度が0.1未満である、<1>~<73>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<76> 前記グリセロール基の置換度が0以上である、<1>~<75>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<77> 前記グリセロール基の置換度が0である、<1>~<73>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
【0072】
<78> 界面活性剤(B)の含有量が、ヒドロキシアルキルセルロース(A)1質量部に対して3質量部以下である、<1>~<77>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<79> 界面活性剤(B)の含有量が、ヒドロキシアルキルセルロース(A)1質量部に対して2質量部以下である、<1>~<77>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<80> 界面活性剤(B)の含有量が、ヒドロキシアルキルセルロース(A)1質量部に対して1.5質量部以下である、<1>~<77>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<81> 界面活性剤(B)の含有量が、ヒドロキシアルキルセルロース(A)1質量部に対して1.2質量部以下である、<1>~<77>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<82> 界面活性剤(B)の含有量が、ヒドロキシアルキルセルロース(A)1質量部に対して0質量部以上である、<1>~<81>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<83> 界面活性剤(B)の含有量が、ヒドロキシアルキルセルロース(A)1質量部に対して0.1質量部以上である、<1>~<81>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<84> 界面活性剤(B)の含有量が、ヒドロキシアルキルセルロース(A)1質量部に対して0.2質量部以上である、<1>~<81>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<85> 界面活性剤(B)の含有量が、ヒドロキシアルキルセルロース(A)1質量部に対して0.5質量部以上である、<1>~<81>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<86> 界面活性剤(B)の含有量が、ヒドロキシアルキルセルロース(A)1質量部に対して0.8質量部以上である、<1>~<81>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
【0073】
<87> 界面活性剤(B)が、アニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤から選ばれる少なくとも1つである、<1>~<86>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<88> アニオン性界面活性剤が、界面活性剤の疎水基、好ましくはアルキル基の1級炭素原子又はフェニル基にアニオン性基が結合した末端アニオン性界面活性剤、及び疎水基、好ましくはアルキル基の2級炭素原子にアニオン性基が結合した内部アニオン性界面活性剤から選択される、<87>に記載の布帛処理組成物。
<89> アニオン性界面活性剤が、LAS、AS、AES、IOS、及びHASから選ばれる1種以上である、<87>に記載の布帛処理組成物。
<90> アニオン性界面活性剤が、AESである、<87>に記載の布帛処理組成物。
<91> ノニオン性界面活性剤が、ポリオキシアルキレン基を有するノニオン性界面活性剤である、<87>~<90>のいずれか1つに記載の布帛処理組成物。
<92> ノニオン性界面活性剤が、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルである、<87>~<90>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<93> 布帛処理組成物が、水を含有する、<1>~<92>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<94> 使用時のヒドロキシアルキルセルロース(A)の含有量が、好ましくは0.00001質量%以上、より好ましくは0.0001質量%以上、更に好ましくは0.001質量%以上であり、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である、<1>~<93>のいずれかに記載の布帛処理組成物。
<95> <1>~<94>のいずれかに記載の布帛処理組成物に布帛を含浸させる工程を有する、布帛の処理方法。
<96> 処理対象となる布帛が疎水性繊維を含有し、布帛中の疎水性繊維の含有量が、10質量%以上である、<95>に記載の布帛の処理方法。
<97> 処理対象となる布帛が疎水性繊維を含有し、布帛中の疎水性繊維の含有量が、50質量%以上である、<95>に記載の布帛の処理方法。
<98> 処理対象となる布帛が疎水性繊維を含有し、布帛中の疎水性繊維の含有量が、90質量%以上である、<95>に記載の布帛の処理方法。
<99> 処理対象となる布帛が疎水性繊維を含有し、布帛中の疎水性繊維の含有量が、100質量%以下である、<95>~<98>のいずれかに記載の布帛の処理方法。
<100> 処理対象となる布帛が疎水性繊維を含有し、布帛中の疎水性繊維の含有量が、100質量%である、<95>に記載の布帛の処理方法。
【0074】
<101> 処理対象となる布帛の表面が疎水性である、<95>~<100>のいずれかに記載の布帛の処理方法。
<102> 処理対象となる布帛が、疎水性繊維からなる布帛である、<95>~<100>のいずれかに記載の布帛の処理方法。
<103> 疎水性繊維が、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、トリアセテート繊維、ジアセテート繊維、ポリアミド繊維、及びこれらの繊維を2種類以上用いた混紡繊維から選択される、<96>~<102>のいずれかに記載の布帛の処理方法。
<104> 処理対象となる布帛の吸水性指数が10以下である、<95>~<103>のいずれかに記載の布帛の処理方法。
<105> 処理対象となる布帛の吸水性指数が8以下である、<95>~<103>のいずれかに記載の布帛の処理方法。
<106> 処理対象となる布帛の吸水性指数が7以下である、<95>~<103>のいずれかに記載の布帛の処理方法。
<107> 処理対象となる布帛の吸水性指数が0以上である、<95>~<106>のいずれかに記載の布帛の処理方法。
<108> 処理対象となる布帛のセルロース含有量が、90質量%以下である、<95>~<107>のいずれかに記載の布帛の処理方法。
<109> 処理対象となる布帛のセルロース含有量が、50質量%以下である、<95>~<107>のいずれかに記載の布帛の処理方法。
<110> 処理対象となる布帛のセルロース含有量が、10質量%以下である、<95>~<107>のいずれかに記載の布帛の処理方法。
<111> 処理対象となる布帛を含浸させる際の浴比(処理対象となる布帛1kgに対する布帛処理組成物の容量(L))が、好ましくは0.3以上、より好ましくは1以上、更に好ましくは3以上、より更に好ましくは10以上、より更に好ましくは20以上であり、そして、好ましくは500以下、より好ましくは200以下、更に好ましくは100以下、より更に好ましくは70以下である、<95>~<110>のいずれかに記載の布帛の処理方法。
<112> 処理対象となる布帛を含浸させる際の、ヒドロキシアルキルセルロース(A)の%owf(処理対象となる布帛の質量に対するヒドロキシアルキルセルロース(A)の質量%(on the weight of fiber))が0.001以上である、<95>~<111>のいずれかに記載の布帛の処理方法。
<113> 処理対象となる布帛を含浸させる際の、ヒドロキシアルキルセルロース(A)の%owfが0.005以上である、<95>~<111>のいずれかに記載の布帛の処理方法。
<114> 処理対象となる布帛を含浸させる際の、ヒドロキシアルキルセルロース(A)の%owfが0.01以上である、<95>~<111>のいずれかに記載の布帛の処理方法。
<115> 処理対象となる布帛を含浸させる際の、ヒドロキシアルキルセルロース(A)の%owfが0.02以上である、<95>~<111>のいずれかに記載の布帛の処理方法。
<116> 処理対象となる布帛を含浸させる際の、ヒドロキシアルキルセルロース(A)の%owfが0.05以上である、<95>~<111>のいずれかに記載の布帛の処理方法。
<117> 処理対象となる布帛を含浸させる際の、ヒドロキシアルキルセルロース(A)の%owfが5以下である、<95>~<116>のいずれかに記載の布帛の処理方法。
<118> 処理対象となる布帛を含浸させる際の、ヒドロキシアルキルセルロース(A)の%owfが2以下である、<95>~<116>のいずれかに記載の布帛の処理方法。
<119> 処理対象となる布帛を含浸させる際の、ヒドロキシアルキルセルロース(A)の%owfが0.5以下である、<95>~<116>のいずれかに記載の布帛の処理方法。
<120> 処理対象となる布帛を含浸させる際の、ヒドロキシアルキルセルロース(A)の%owfが0.25以下である、<95>~<116>のいずれかに記載の布帛の処理方法。
<121> 処理対象となる布帛の表面粗さが100μm以下である、<95>~<120>のいずれかに記載の布帛の処理方法。
<122> 処理対象となる布帛の表面粗さが30μm以下である、<95>~<120>のいずれかに記載の布帛の処理方法。
<123> 処理対象となる布帛の表面粗さが10μm以上である、<95>~<122>のいずれかに記載の布帛の処理方法。
<124> 処理対象となる布帛を含浸させる工程の後に、含浸した布帛を濯ぐ工程(濯ぎ工程)を更に有する、<95>~<123>のいずれかに記載の布帛の処理方法。
<125> 処理対象となる布帛を含浸させる工程の後に、含浸した布帛を濯ぐ工程(濯ぎ工程)及び乾燥する工程(乾燥工程)を更に有する、<95>~<123>のいずれかに記載の布帛の処理方法。
<126> <95>~<125>のいずれかに記載の方法により処理された布帛。
<127> <1>~<94>のいずれかに記載の布帛処理組成物の処理対象となる布帛を処理するための使用。
【実施例】
【0075】
実施例及び比較例で使用した測定方法は以下の通りである。
<吸水性指数の測定>
厚さ0.03cm、長辺25cm、短辺2.5cmの長方形の布帛片を用いた。布帛片の短辺の端から長辺方向に沿って0.5cmの場所に黒色の水性マーカーで印をつけた。印を付けた場所を0cmとして、最大20cmに達するまで、長辺方向に沿って1cm毎に印を付けた。前記の布帛片を、0cmの印を付けた方向を下に、反対の短辺を上に、長辺方向を水面に対して垂直に配置させた。布帛片の下端の短辺を、水面が0cmの印の高さになるように、25℃のイオン交換水に浸し、15分間静置した。水の上昇に伴って、クロマトグラフィーによって黒色インクが展開した先端のうち、0cmの印の位置から最も遠い先端までの長さ(単位cm)を吸水性指数とした。吸水性指数が小さい方が、疎水性が高いことを示す。
【0076】
<表面粗さの測定>
布帛の表面を、デジタルマイクロスコープ(株式会社キーエンス製「VHX-6000」、クイック合成&3Dモード、倍率100倍)で観察した。観察データの3mm×2mmの範囲について、3D形状測定ソフトウエア(株式会社キーエンス製「VHZ-H4M」)を用い、表面粗さ計測モードで解析を行い、測定範囲の高低差の平均値に相当する算術平均高さSa(単位:μm)を算出した。前記算術平均高さSaの算出を、布帛の表面の5か所について行い、その平均値を表面粗さとした。
【0077】
[置換度(モル平均置換度(MS))の測定]
・前処理
粉末状のヒドロキシアルキルセルロース1gを100gのイオン交換水に溶かした後、水溶液を透析膜(スペクトラポア、分画分子量1,000)に入れ、2日間透析を行った。得られた水溶液を、凍結乾燥機(eyela,FDU1100)を用いて凍結乾燥することで精製したヒドロキシアルキルセルロース(A)を得た。
【0078】
<ケルダール法によるカチオン性基質量の算出>
精製したヒドロキシアルキルセルロース(A)の200mgを精秤し、硫酸10mLとケルダール錠(Merck)1錠を加え、ケルダール分解装置(BUCHI社、K-432)にて加熱分解を行った。分解終了後、サンプルにイオン交換水30mLを加え、自動ケルダール蒸留装置(BUCHI社、K-370)を用いてサンプルの窒素含量(質量%)を求めることで、カチオン性基の質量を算出した。
【0079】
<Zeisel法による疎水基(アルキル基)質量の算出>
以下に、実施例1(炭化水素基の導入剤として、ラウリルグリシジルエーテルを使用)の場合を例に、炭化水素基であるアルキル基質量の算出方法を説明する。なお、他の導入剤を使用した場合も、検量線用の試料(ヨードアルカンや炭化水素基の導入剤など)を適宜選択することによって測定可能である。
精製したセルロース誘導体200mg、アジピン酸220mgを10mLバイアル(マイティーバイアルNo.3)に精秤し、内標溶液(テトラデカン/o-キシレン=1/25(v/v)) 3mL及びヨウ化水素酸3mLを加えて密栓した。また、セルロース誘導体の代わりに1-ヨードドデカンを2、4、又は9mg加えた検量線用の試料を調製した。各試料をスターラーチップにより撹拌しながら、ブロックヒーター(PIERCE社、Reacti-ThermIII Heating/Stirring module)を用いて160℃、2時間の条件で加熱した。試料を放冷した後、上層(o-キシレン層)を回収し、ガスクロマトグラフィー(株式会社島津製作所、GC-2010 plus)にて、1-ヨードドデカン量を分析した。
【0080】
・GC分析条件
カラム:Agilent HP-1(長さ:30m、液相膜厚:0.25μL、内径:32mm)
スプリット比:20
カラム温度:100℃(2min)→10℃/min→300℃(15min)
インジェクター温度:300℃
検出器:FID
検出器温度:330℃
打ち込み量:2μL
GCにより得られた1-ヨードドデカンの検出量から、サンプル中のアルキル基の質量を求めた。
【0081】
<ヒドロキシアルキル基質量の測定>
ヒドロキシアルキル基由来のヨウ化アルキルを定量することで、前述のアルキル基質量の測定と同様にして行った。
【0082】
<カチオン性基、疎水基、及びヒドロキシアルキル基の置換度(モル平均置換度)の算出>
上述のカチオン性基と疎水基(アルキル基)の質量及び全サンプル質量からHEC骨格の質量を計算し、それぞれ物質量(mol)に変換することで、カチオン性基の置換度(MSC)、及び疎水基であるアルキル基の置換度(MSR)を算出した。
【0083】
ヒドロキシアルキルセルロース(A)の合成に用いた原料は、以下の通りである。
・Natrosol 250 GR:HEC(重量平均分子量:30万、ヒドロキシエチル基の置換度:2.5、Ashland社製)
・IPA:2-プロパノール
・LA-EP:ラウリルグリシジルエーテル、四日市合成株式会社製
・1,2-エポキシテトラデカン、和光純薬工業株式会社製
・GMAC:グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド、阪本薬品工業株式会社製「SY-GTA80」
【0084】
合成例1:ヒドロキシアルキルセルロース(A)(M-HEC)の合成
Natrosol 250 GR 90gを1Lセパラフラスコに入れ、窒素フローを行った。イオン交換水77.2g、IPA 414.5gを加え、5分間撹拌した後、48質量%水酸化ナトリウム水溶液10.9gを加え、更に15分間撹拌した。
次に、LA-EP 4.2gを加え、80℃で13時間疎水化反応を行った。更にGMAC 8.6gを加え、50℃で1.5時間カチオン化反応を行った。その後、90質量%酢酸水溶液10.9gを加え、30分撹拌することで中和反応を行った。
次に精製工程として、以下の操作を行った。
得られた懸濁液を500mLの遠沈管2本に均等に移し替え、高速冷却遠心機(日立工機株式会社、CR21G III)を用いて1,500Gで40秒遠心分離を行った。上澄みをデカンテーションにより取り除き、取り除いた上澄みと同量の85質量%IPA水溶液を加え、再分散を行った。再度、遠心分離と再分散の操作を繰り返し、3回目の遠心分離を行った後に沈殿物を取り出した。得られた沈殿物を真空乾燥機(アドバンテック社、VR-420)を用いて80℃で12時間以上減圧乾燥し、エクストリームミル(ワーリング社、MX-1200XTM)により解砕することで、粉末状のヒドロキシエチルセルロース(A)(M-HEC)を得た。
得られたM-HECのカチオン性基の置換度(MSC)は、0.066であり、疎水基の置換度(MSR)は0.022であった。
【0085】
合成例2:ヒドロキシアルキルセルロース(A)(A-HEC)の合成
Natrosol 250 GR 90gを1Lセパラフラスコに入れ、窒素フローを行った。イオン交換水77.2g、IPA 414.5gを加え、5分間撹拌した後、48質量%水酸化ナトリウム水溶液10.9gを加え、更に15分間撹拌した。次に、1,2-エポキシテトラデカン20.6gを加え、80℃で13時間疎水化反応を行った。
得られた懸濁液に対し、合成例1の精製工程と同様の操作を行い、粉末状のヒドロキシエチルセルロース(A)(A-HEC)を得た。
得られたA-HECの疎水基の置換度(MSR)は0.055であった。
【0086】
合成例3:界面活性剤(B)(C16 IOS)の合成
撹拌装置付きフラスコに1-ヘキサデカノール(製品名:カルコール6098、花王株式会社製)7000g、触媒としてγ-アルミナ(Strem Chemicals, Inc.社)700gとを仕込み、撹拌下、280℃にて、系内に窒素(7000mL/分)を流通させながら3時間以上反応を行い、C16内部オレフィン純度99.6%の粗内部オレフィンを得た。前記粗内部オレフィンを、136~160℃、4.0mmHgで蒸留することで、オレフィン純度100%の炭素数16の内部オレフィンを得た。得られた内部オレフィンの二重結合分布は、C1位2.3%、C2位23.6%、C3位18.9%、C4位17.6%、C5位13.6%、C6位11.4%、C7位、8位の合計が7.4%であった。
前記内部オレフィンを、薄膜式スルホン化反応器に入れ、反応器外部ジャケットに20℃の冷却水を通液する条件下で、SO3ガスを用いてスルホン化反応を行った。反応モル比(SO3/内部オレフィン)は1.005に設定した。得られたスルホン化物を、理論酸価に対し1.05モル倍に相当する水酸化カリウム水溶液と混合し、30℃で1時間中和した。中和物をオートクレーブ中で170℃、1時間加熱することで加水分解を行い、対スルホン化物1.0質量%の過酸化水素水で脱色し、対スルホン化物0.15質量%の亜硫酸ナトリウムで還元することで、炭素数16の内部オレフィンスルホン酸カリウム(C16 IOS)を得た。
C16 IOSにおけるヒドロキシ体とオレフィン体との質量比(HAS/IOS)は84/16であった。C16 IOSの固形分中の原料内部オレフィンの含有量は0.5質量%、無機化合物は1.2質量%であった。
【0087】
処理対象となる布帛としては、以下の物を用いた。
ポリエステル布:染色試材株式会社谷頭商店製「ポリエステルファイユ」、ポリエステル100%、吸水性指数=5.9、 表面粗さSa 15μm
ナイロン布:染色試材株式会社谷頭商店製「ナイロンタフタ」、ナイロン100%、吸水性指数=1.3
アクリル布:染色試材株式会社谷頭商店製「アクリルタフタ」、アクリル100%、吸水性指数=7.7
【0088】
実施例1~18、及び比較例1~6
〔ソイルリリース性能の評価〕
(1)処理対象となる布帛の処理方法
100mLのサンプル瓶に表1に示す組成の布帛処理組成物100mL(100g)、及び6cm×6cmの正方形にカットしたポリエステル布5枚(合計2g)を投入した。往復振とう機(TEROKA SHAKER)を用い、20℃にて300r/minで10分間振とうしてポリエステル布の処理を行った。次いで、2槽式洗濯機を用いてポリエステル布を1分間脱水した。100mLのサンプル瓶に得られたポリエステル布、及び4°dH水100mLを投入した。往復振とう機を用い、室温にて300r/minで3分間振とうして濯ぎを行った。次いで、2槽式洗濯機を用いてポリエステル布を1分間脱水した後、1時間自然乾燥して本発明の布帛を得た。
実施例11及び12、15~18、比較例4~6では、サンプル瓶に添加する布帛処理組成物の量を変更し、浴比が表に示す通りとなるように調整した。
【0089】
<布帛処理組成物の組成>
表1及び表2に示す配合組成にて、本発明の組成物を調製した。各配合量は、固形分換算(有効成分量)である。組成物の合計が100質量部となるように、イオン交換水を配合した。使用した各成分は、以下の通りである。
・SL-5:ダウ・ケミカル社、SoftCATTM SL Polymer SL-5(ヒドロキシエチルセルロースの水酸基から水素原子を除いた基に、式(3-1)で表される基が結合しており、s=1、R31=C12H25、R32=R33=CH3、X2a-が塩化物イオンである化合物)
・C-60H:カチオン化ヒドロキシエチルセルロース(花王株式会社製「ポイズ C-60H」)
・QP 100MH:HEC(重量平均分子量:210万、ヒドロキシエチル基の置換度:2.5、ダウ・ケミカル社製「CELLOSIZETM QP 100MH」)
・C12 ES:ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(花王株式会社製「エマール 20C」)
・C16 IOS:合成例3で得られたC16 IOS
・C12 EO:ポリオキシエチレン(5)ラウリルエーテル(花王株式会社製「エマルゲン 106」)
【0090】
(2)汚染布の調製
前記(1)において調製したポリエステル布を(3)の洗浄試験方法で1回洗浄した後、以下のモデル皮脂人工汚染液0.1mLを均一に塗布し、40℃にて1時間乾燥させた。
<モデル皮脂人工汚染液>
・オレイン酸:35質量%
・トリオレイン:30質量%
・スクアレン:10質量%
・パルミチン酸2-エチルヘキシル:25質量%
以上の混合物に、0.02質量%のスダンIIIを混合して、モデル皮脂人工汚染液を調製した。
【0091】
(3)洗浄試験
界面活性剤(ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム/ポリオキシエチレン(10)ラウリルエーテル=1/1(w/w))が150mg/kgとなるように4°dH水により希釈し、洗浄液を調製した。100mLのサンプル瓶に、洗浄液100mLと前記(2)で得られたポリエステル布5枚を投入した。往復振とう機(TERAOKA SHAKER)を用いて、300r/min、20℃、10分の条件でポリエステル布を洗浄した。100mLのサンプル瓶に、得られたポリエステル布、及び4°dH水100mLを投入し、前記往復振とう機を用いて300r/min、20℃、3分の条件で濯ぎ、2槽式洗濯機で1分間脱水した後、1時間自然乾燥した。
【0092】
〔ソイルリリース性能の評価〕
汚染前のポリエステル原布、及び洗浄前後のポリエステル布の460nmにおける反射率を測色色差計(日本電色工業株式会社製、SE-2000)にて測定し、次式によって洗浄率(%)を求めた。
洗浄率(%)=100×[(洗浄後の反射率-洗浄前の反射率)/(原布の反射率-洗浄前の反射率)]
また、前記(1)の布帛の処理方法において、布帛処理組成物の代わりにイオン交換水を用いて処理したポリエステル布を用い、汚染布の洗浄試験を行ったブランクの洗浄率との差から、次式によって洗浄率向上性能(%)を求めた。洗浄率向上性能が高いほど、ソイルリリース性能に優れる。
洗浄率向上性能(%)=[ソイルリリース剤処理後の洗浄率(%)-ブランクの洗浄率(%)]
【0093】
【0094】
【0095】
実施例1~18において、ポリエステル布に代え、ナイロン布、アクリル布に対して前記ソイルリリース性能の評価を行うことで、同様の洗浄率向上性能を得ることができる。
【0096】
表1から明らかなように、ヒドロキシアルキルセルロース(A)を含有し、ヒドロキシアルキルセルロース(A)1質量部に対する界面活性剤(B)の含有量が3.5質量部以下である実施例1~18の布帛処理組成物で処理することにより、皮脂汚れの付着を抑制し、ソイルリリース性能を向上させることが明らかとなった。
一方、界面活性剤(B)の含有量が、ヒドロキシアルキルセルロース(A)1質量部に対して3.5質量部を超える比較例1及び2では、十分なソイルリリース性能をえることができなかった。
また、比較例3及び6に示すように、カチオン性基及び疎水基を有しない、ヒドロキシアルキルセルロースでは、十分なソイルリリース効果が得られなかった。一方、疎水基又はカチオン性基を有するヒドロキシアルキルセルロース(A)では、高いソイルリリース性能を示した。更に、カチオン性基及び疎水基を有し、かつ、カチオン性基及び疎水基がヒドロキシアルキルセルロースの異なる側鎖に置換しているM-HECを使用した場合には、より高いソイルリリース性能が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の布帛処理組成物により布帛を処理することで、ソイルリリース性能を向上させることができる。更に本発明の布帛処理組成物は、種々の洗浄剤組成物に別途添加して使用すること、又は、独立に布帛処理組成物として使用することができる。これらの組成物で処理することにより、ソイルリリース性能の向上という、極めて優れた効果を付与しうる。