(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-28
(45)【発行日】2023-01-12
(54)【発明の名称】超伝導体-半導体製造
(51)【国際特許分類】
H10N 60/10 20230101AFI20230104BHJP
C23C 14/06 20060101ALI20230104BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20230104BHJP
【FI】
H01L39/22 G
C23C14/06 S
H01L29/06 601N
(21)【出願番号】P 2019571656
(86)(22)【出願日】2017-11-30
(86)【国際出願番号】 EP2017081038
(87)【国際公開番号】W WO2019001753
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2020-10-27
(32)【優先日】2017-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】314015767
【氏名又は名称】マイクロソフト テクノロジー ライセンシング,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】クローウストロプ イェッペセン,ピーター
【審査官】上田 智志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0141287(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0133576(US,A1)
【文献】特開2014-045111(JP,A)
【文献】特開2010-283206(JP,A)
【文献】KANUNGO, Pratyush Das et al.,Selective area growth of III-V nanowires and their heterostructures on silicon in a nanotube template: towards monolithic integration of nano-devices,NANOTECHNOLOGY,2013年05月01日,Vol. 24,pp. 225304-1-225304-6,<DOI: 10.1088/0957-4484/24/22/225304>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 39/22、29/06
C23C 14/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合半導体-超伝導体プラットフォームを製造する方法であって、
マスキング段階にて、基板上に誘電体マスクを、該誘電体マスクが前記基板の1つ以上の領域を露出させたままにするように形成し、
選択的エリア成長段階にて、前記露出させた1つ以上の領域内で前記基板上に半導体材料を選択的に成長させ、
超伝導体成長段階にて、超伝導材料の層を形成し、該層の少なくとも一部が、前記選択的に成長させた半導体材料と直に接触する、
ことを有し、
前記露出させた1つ以上の領域内の前記半導体材料は、面内ナノワイヤのネットワークを形成し、
前記混合半導体-超伝導体プラットフォームは、前記選択的に成長させた半導体材料と、前記選択的に成長させた半導体材料と直に接触した前記超伝導材料とを有し、
前記超伝導体成長段階において、前記超伝導材料の層は、前記基板の面の法線に対して非ゼロの入射角を有するビームを用いた分子線エピタキシ(MBE)を用いてエピタキシャル成長され、その結果、前記基板の前記面の外側に突出する構造の一方側に前記ビームが入射し、それにより、前記突出する構造の他方側のシャドー領域が前記超伝導材料で覆われるのを防止するように
、前記ビームが前記基板に対して角度付けられる
、
方法。
【請求項2】
前記突出する構造は、前記半導体材料の突出部であり、前記シャドー領域が、前記半導体材料を、ゲート領域に堆積される前記超伝導材料の部分から分離する、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記ゲート領域から前記超伝導材料を除去し、
前記ゲート領域内に、ゲート材料からゲートを形成する、
ことを有する請求項
2に記載の方法。
【請求項4】
前記突出する構造は誘電体材料で形成される、請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
前記突出する構造は、前記半導体材料によって形成されるナノワイヤに隣接し、前記シャドー領域は、前記ナノワイヤの幅にわたって延在し、その結果、前記ナノワイヤの一セクションが、その全幅にわたって、前記超伝導材料によって覆われず、それにより、双方とも前記超伝導材料によって少なくとも部分的に覆われる前記ナノワイヤの2つの更なるセクションの間にジャンクションを形成する、請求項
1に記載の方法。
【請求項6】
前記選択的エリア成長段階及び前記超伝導体成長段階は、真空チャンバ内で、これらの段階全体を通して及びこれらの段階の間に前記基板が前記真空チャンバ内にあるまま実行される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、例えば量子コンピュータに使用される半導体-超伝導体プラットフォームなどの超伝導体-半導体プラットフォームの製造に関する。
【背景技術】
【0002】
量子コンピューティングは、例えば量子状態の重ね合わせ及びエンタングルメント(もつれ)などの本質的に量子力学的な現象を利用して、特定の計算を、古典的コンピュータが可能とするよりも遥かに速く計算を実行する類のコンピューティングである。“トポロジカル”量子コンピュータでは、特定の物理系で生じる“非可換エニオン”と呼ばれる準粒子を操作することによって計算が実行される。エニオンは、自身をフェルミオン及びボソンのどちらからも区別する独特な物理特性を持つ。非可換エニオンはまた、可換エニオンに対して、独特な特性を持つ。トポロジカル量子コンピューティングの基礎を成すのはこれら独特な特性であり、トポロジカル量子コンピューティングでは、情報が非可換エニオンのトポロジカル特性、具体的には、それらの空間-時間世界線の組み紐としてエンコードされる。これは、他のモデルの量子コンピューティングに対する一定の利益を有する。1つの主要な利益は安定性である。何故なら、量子組み紐は、他のタイプの量子コンピュータでは誤りを誘発する量子デコヒーレンスを引き起こし得るスケールの摂動によって影響されないからである。
【0003】
大まかに言えば、これまでに、物性凝縮における“5/2分数量子ホール”系、及び(より最近になっての)半導体‐超伝導体(SE/SU)ナノワイヤという2種類の物理系が、可能性あるホストとして考えられてきた。後者に関し、現場での重要な進展は、超伝導体(SU)に結合された半導体(SE)ナノワイヤ(NW)において“マヨラナゼロモード”(MZM)の形態の非可換エニオンが形成され得ることが認識されたことである。
【0004】
SE/SUナノワイヤの状況で遭遇する問題の1つは、所謂“ソフトギャップ”状態の存在である。ソフトギャップ問題は、公開された文献に記載されており、これらのソフトギャップ状態は、存在する場合に、MZMのデコヒーレンスの原因となると言っておけば十分である。SE/SU界面における無秩序がソフトギャップの原因となることを解析と実験が指し示しており、より安定なMZMを提供することを狙ってSE/SU界面の品質を改善することについての研究が現場で最近行われている。
【発明の概要】
【0005】
製造技術における最近の発展が、SE/SUナノワイヤにおけるSE/SU界面の品質の有意な改善につながっているが、問われているアプローチは全て、スケーラビリティの難題に直面している。これは、これらのアプローチで製造されることが可能なSE/SUナノワイヤネットワークのサイズ及び複雑さに制限を課す。後で例を示して状況を提示する。
【0006】
本技術の実施形態は、SE/SUナノワイヤ構造を製造する方法を提供し、当該方法は、高品質のSE/SU界面を製造することができるだけでなく、そうすることを、大規模で潜在的に複雑なSE/SUナノワイヤネットワークの製造を可能にするスケーラブルな手法で行うことができる。これは、超伝導体堆積/成長との、選択的エリア成長(SAG)による半導体技術の組み合わせによって達成される(なお、用語“選択エリア成長”及び“選択的エリア成長”は、ここでは交換可能に使用される)。
【0007】
本技術の第1の態様は、以下のステップを有した混合半導体-超伝導体プラットフォームを製造する方法に向けられる。マスキング段階にて、基板上に誘電体マスクが、該誘電体マスクが基板の1つ以上の領域を露出させたままにするように形成される。選択的エリア成長段階にて、露出させた1つ以上の領域内で基板上に半導体材料が選択的に成長される。超伝導体成長段階にて、超伝導材料の層が形成され、該層の少なくとも一部が、選択的に成長させた半導体材料と直に接触する。混合半導体-超伝導体プラットフォームは、選択的に成長させた半導体材料と、該選択的に成長させた半導体材料と直に接触した超伝導材料とを有する。
【0008】
実施形態において、露出させた1つ以上の領域内の半導体材料は、面内(インプレーン)ナノワイヤのネットワークを形成し得る。
【0009】
超伝導体成長段階において、超伝導材料の層はエピタキシャル成長され得る。
【0010】
超伝導体材料は、分子線エピタキシ(MBE)を用いてエピタキシャル成長され得る。
【0011】
超伝導体成長段階において、超伝導材料の層はビームを用いて形成され得る。
【0012】
ビームは、基板の面の法線に対して非ゼロの入射角を有し得る。
【0013】
基板の面の外側に突出する構造の一方側にビームが入射し、それにより、突出する構造の他方側のシャドー領域が超伝導材料で覆われるのを防止するように、粒子のビームが基板に対して角度付けられ得る。
【0014】
突出する構造は、半導体材料の突出部とすることができ、シャドー領域が、半導体材料を、ゲート領域に堆積される超伝導材料の部分から分離する。
【0015】
当該方法は、ゲート領域から半導体材料を除去することと、ゲート領域内に、ゲート材料からゲートを形成することとを有し得る。
【0016】
突出する構造は誘電体材料で形成され得る。
【0017】
突出する構造は、半導体材料によって形成されるナノワイヤに隣接することができ、シャドー領域は、ナノワイヤの幅にわたって延在し、その結果、ナノワイヤの一セクションが、その全幅にわたって、超伝導材料によって覆われず、それにより、双方とも超伝導材料によって少なくとも部分的に覆われるナノワイヤの2つの更なるセクションの間にジャンクションを形成する。
【0018】
選択的エリア成長段階及び超伝導体成長段階は、真空チャンバ内で、これらの段階全体を通して及びこれらの段階の間に基板が真空チャンバ内にあるまま実行され得る。
【0019】
本技術の他の一態様は、選択エリア成長(SAG)半導体領域と、超伝導領域と、を有する量子回路を提供する。
【0020】
実施形態において、SAG半導体領域は、導電性の面内ナノワイヤを有得る。
【0021】
面内ナノワイヤは調節可能(チューナブル)であるとし得る。
【0022】
面内ナノワイヤは、サイドゲート、トップゲート、又はボトムゲートを介して調節可能であるとし得る。
【0023】
超伝導領域は、SAG半導体領域の半導体材料と直に接触した超伝導体材料を有し得る。
【0024】
当該量子回路は、上にSAG半導体領域が成長された絶縁基板と、該絶縁基板上に形成された誘電体マスクとを有することができ、超伝導領域は、誘電体マスクによって覆われていない基板の1つ以上の領域上に選択的に成長された超伝導体材料で形成される。
【0025】
本技術の他の一態様は、選択エリア成長(SAG)ナノワイヤのネットワークと、SAGナノワイヤ上に形成された超伝導体材料の層と、を有するトポロジカル量子コンピュータを提供する。SAGナノワイヤのネットワークと超伝導体材料とが、量子コンピューティングを実行するのに使用されるマヨラナモードを提供するように結合される。
【0026】
実施形態において、当該トポロジカル量子コンピュータは、マヨラナモードを操作するように構成された少なくとも1つのゲートを有し得る。
【0027】
本技術の他の一態様は、量子コンピューティングを実行する混合半導体-超伝導体プラットフォームを生成することを有する方法を提供する。前記生成することは、基板上に超伝導体層を堆積させることと、堆積させた超伝導体領域の1つ以上の領域を除去することと、堆積させた超伝導体領域の除去した領域内に1つ以上の選択的エリア成長半導体領域を成長させることとを有する。
【0028】
実施形態において、1つ以上の選択的エリア成長半導体領域を成長させることは、サイドゲート、トップゲート、及び/又はボトムゲートで調節されることが可能なナノワイヤを形成することを有する。
【0029】
本技術の他の一態様は、量子コンピューティングを実行する混合半導体-超伝導体プラットフォームを生成することを有する方法を提供し、前記生成することは、基板上に1つ以上の超伝導体層を成長させることと、該1つ以上の超伝導体層によって占有されていない基板の領域内で、基板上に1つ以上の選択的エリア成長半導体領域を成長させることとを有する。
【0030】
実施形態において、1つ以上の選択的エリア成長半導体領域を成長させることは、サイドゲート、トップゲート、及び/又はボトムゲートで調節されることが可能なナノワイヤを形成することを有する。
【0031】
本開示の他の一態様は、混合半導体-超伝導体プラットフォームを製造する方法を提供し、当該方法は、基板上に半導体構造を形成し、少なくとも1つの突出誘電体構造を形成し、そして、ビームを使用して、超伝導材料の層を、その少なくとも一部を半導体構造と直に接触させて形成することを有し、突出誘電体構造の一方側にビームが入射し、それにより、突出誘電体構造の他方側のシャドー領域が超伝導材料で覆われるのを防止するように、ビームが突出誘電体構造に対して角度付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本技術のいっそう十分な理解のために、また、その実施形態がどのように実施に移されるのかを示すために、単に例として、以下を含む図面を参照する。
【
図1】SE/SUナノワイヤのネットワークを製造する方法の概略図を示している。
【
図2】エピタキシャル成長段階におけるSAG SEナノワイヤの概略的な斜視図を示しており、ナノワイヤの上及び周囲に超伝導材料が堆積されている。
【
図3】InP基板上のSAG InAsナノワイヤネットワークの上面像を示している。
【
図4】SE/SUナノワイヤとサイドゲート領域とを有する量子回路の概略的な上面図を示している。
【
図5】記載される方法を用いて製造された2つのSAGナノワイヤについて測定されたそれぞれのI-Vグラフを示している。
【
図6】その場パターニングを用いて追加の構造が作り出される、製造方法の一拡張を概略的に示している。
【
図7】ジャンクションを作り出すために使用されるその場パターニングの一例を示す概略的な斜視図を示している。
【
図8】その場パターニングの他の一例における基板の概略的な側面図を示している。
【
図9】
図9及び10は、その場パターニングの更なる他の一例における基板の概略的な斜視図を示している。
【
図10】
図9及び10は、その場パターニングの更なる他の一例における基板の概略的な斜視図を示している。
【
図11】異なるミラー指数を持つナノワイヤの断面図を示している。
【
図12】第1の堆積角度にて超伝導体で被覆された[100]ナノワイヤの像を示している。
【
図13】第2の堆積角度にて被覆された[100]ナノワイヤの一例を示している。
【
図14】第2の堆積角度にて被覆された[100]ナノワイヤの更なる像を示している。
【
図15】SAG SE/SUナノワイヤネットワークの一部の上面像を示している。
【発明を実施するための形態】
【0033】
エピタキシャル半導体-超伝導体材料は、ゲート可能で低消費の超伝導エレクトロニクス及び超伝導量子コンピューティングのための有望なプラットフォームである。トポロジカル量子コンピューティングの状況においては、強いスピン-軌道結合を持つ超伝導ナノワイヤが、フォールトトレラントな量子情報処理の基礎を成し得るトポロジカル励起をサポートすることができる。
【0034】
ゲート可能な超伝導ナノワイヤエレクトロニクスのための半導体-超伝導体材料を合成するための現行アプローチは、二次元平面材料(例えば、Shabani他のPRB 93,155402(2016)参照)又はボトムアップ成長されたナノワイヤ材料(例えば、Krogstrup他のNature Mater.14,400-406(2015)参照)のいずれかに基づいている。どちらのアプローチも、様々な理由でスケーラビリティの難題に直面している。後者のアプローチに関し、これは、非常に高い品質のSE/SU界面を達成することができるようになっている。しかしながら、このアプローチでは、ネットワークの部分を形成するためのSE/SUナノワイヤが、個々に成長されて、成長後に、実際のネットワークを形成するように絶縁材料上に個々に配置されなければならない。従って、このアプローチをいっそう大規模なネットワークに拡張することは、非常に大きな難題を提示する。
【0035】
開示される技術の実施形態例は、SAG半導体を超伝導相と組み合わせることによって、スケーラビリティの問題に対するソリューションを提供する。
【0036】
ここで、
図1を参照して、三段階製造方法の一例を説明する。この製造方法を用いて、SE/SUナノワイヤのネットワークを作り出すことができ、そしてそれが、例えば、量子回路(例えば、量子コンピュータ用)又は他の混合半導体-超伝導体プラットフォームの基盤を形成することができる。特に、この方法は、特に、ソフトギャップデコヒーレンスのない、又はそれが大幅に低減された、安定したMZMをホストすることが可能なSE/SUナノワイヤネットワークを製造するのにとりわけ適している。安定したMZMは、フォールトフリーなトポロジカル量子コンピューティングの基礎を形成し得るものである、
しかしながら、言及しておくことには、この材料プラットフォームは量子コンピューティングに関連するものであるが、それが提供するゲート可能な超伝導エレクトロニクスは、特に低エネルギー消費が要求される状況において、量子コンピューティングには属さない又は量子コンピューティングに直接的には関係しない他の用途をも有し得るものである。
【0037】
明らかになるように、SE/SUナノワイヤネットワークがSAGを用いて作り出されるので、ナノワイヤネットワーク全体が、絶縁基板上に全体として製造されることができる。これらの絶縁基板及びナノワイヤは、ナノワイヤを別の異なる表面に転写する必要なく、最終製品に直接的に組み込まれることができる。従って、この方法は、既存のアプローチよりも大幅に手頃である。
【0038】
1) マスキング段階
第1段階P1(マスキング段階)にて、絶縁基板104の上に、パターニングされた誘電体材料102の層(誘電体マスク)が形成される。
図1の左側に、誘電体マスク102を備えた基板104の側面図及び上面図が示されている。基板104は、例えばInP(インジウム燐)などの任意の好適な基板材料で形成されることができ、記載される例では絶縁基板である。記載される例では、誘電体材料102は酸化物であるが、誘電体材料102は、この製造方法の第2段階P2(以下参照)におけるSAGを容易にする任意の誘電体材料とし得る。
【0039】
酸化物層102が、所望の領域106内で基板の狭いストリップを露出させる(すなわち、酸化物102によって覆われない)ように形成されるという点で、この酸化物層はパターン形成されている。この文脈でのパターンは、最終的にナノワイヤネットワークの構造になる所望の領域106の構造を指す(SEナノワイヤが成長されるのはこの露出させた領域106であるため)。従って、ナノワイヤ群の大きさ及び構造が、露出領域106の大きさ及び構造と一致する。
図1には1つの露出領域106のみが示されているが、ナノワイヤは、複数の領域内で同時に成長されることができ、所望の領域106に関連する全ての説明が、複数のこのような領域に等しく当てはまる。従って、(1つ以上の)露出領域の構造によって、ナノワイヤネットワーク全体の構造を定めることができる。この例では、ストリップ、ひいては、得られるナノワイヤは、数十ナノメートル又は数百ナノメートルのオーダーの幅を持つ。
【0040】
酸化物層102は、任意の好適手法にて、所望の領域106を露出させたままにするように形成され得る。例えば、均一で連続した酸化物の層を基板104上に堆積させることができ、次いで、所望の領域106から酸化物102を選択的にエッチング除去することによって、露出領域106を形成することができる(この場合、最終的なナノワイヤネットワーク構造を定めるのは、このエッチングである)。他の一例として、所望の領域106における酸化物102の堆積を防止するマスクを用いて、酸化物層102を基板104上に選択的に堆積させることができる(この場合、最終的なナノワイヤネットワーク構造を定めるのは、このマスクである)。
【0041】
SAGナノワイヤは、基板上の高対称性の面内結晶方位に沿って画成され、これがまた、明確に画成されてのナノワイヤのファセット化を与える。これは、SU/SE界面を平坦(可能性として、原子レベルで平坦)で明確に画成されたものとする。
【0042】
2) SAG段階
第2段階P2すなわちSAG段階にて、基板104の露出部分の上で、所望の領域106内に、半導体材料108が選択的に成長される。一例を
図1の右上に示しており、そこに基板104の側面図が示されている。酸化物層102のパターニングにより、選択的に成長された半導体108は、面内(インプレーン)ナノワイヤ(すなわち、基板104の面内に位置するナノワイヤ)を形成する。
【0043】
SAGは、結晶成長真空チャンバを用いる成長法である。SAGは、誘電体マスクそれ自体上での成長を防止するように成長条件を選択した、基板の露出領域での局所的な半導体の成長を指す。これは、例えば、化学ビームエピタキシ(CBE)、分子線エピタキシ(MBE)、又は有機金属化学気相成長(MOCVD)に基づくことができる。半導体との関連で、SAGは、特定のクラスのエピタキシャル半導体成長を指し(及び選択的エリアエピタキシとも呼ばれ)、成長される半導体材料の意図した構造を規定するために、パターニングされた誘電体マスクが使用される(リソグラフィの形態)。SAGプロセスは、半導体成長が、誘電体マスクそれ自体上では起こらずに、誘電体マスクによって覆われていない基板の領域上のみで起こるように調節される。これは、例えば、ボトムアップ成長(マスクが使用されない)及び材料がその材料組成に関係なく表面にわたって均一に堆積される均一堆積(エピタキシャル又はその他)(段階P3においてのような;以下参照)などの、その他の堆積/成長プロセスとは全く異なる。SAGは、高真空又は超高真空で行われ、所望の選択的半導体成長を達成するために注意深い調節を必要とする。
【0044】
第2段階P2では、露出領域106内に所望のSEナノワイヤを作り出すため、好適な如何なるSAGプロセスが使用されてもよい。
【0045】
SAGそれ自体は知られており、故に、ここで更に詳細に説明することはしない。SAGの更なる説明については、例えば、G.J Davies,Proc.SPIE 2140,Epitaxial Growth Process,58(1994年5月11日);M Fahed,Doctoral thesis:Selective area growth of in-plane III-V nanostructures using molecular beam epitaxy,2016,http://www.theses.fr/2016LIL10114;Fukui et al,Appl.Phys.Lett.58,2018(1991);doi:http://dx.doi.org/10.1063/1.105026を参照されたい。
【0046】
敢えて言うなら、SAG段階P2は、その段階の終了時に、半導体材料108が、所望の領域106(すなわち、基板104が酸化物マスク102によって覆われていない領域106)を満たすが、基板104の面(以下では、xy平面)内で、酸化物層102で画成された所望の領域106の境界を越えて延在しないようにするものである。しかしながら、理解され得るように、半導体材料108は、基板104の面に垂直な方向(以下では、z方向)に外向きに、酸化物マスク102の外方まで突出するように延在する。すなわち、半導体材料108は、z方向において、酸化物層102よりも大きい距離だけ基板104から延在する。斯くして、半導体材料108は、実質的に基板104の面内にあるナノワイヤ(面内ナノワイヤ)を形成する。
【0047】
半導体材料108は、例えばインジウム砒素(InAs)などの任意の好適な半導体材料とすることができる。SAG半導体108は、例えば、閉じ込め2DEG(二次元電子ガス)半導体又は単一材料の半導体とすることができる。
【0048】
3) 超伝導体成長段階
第3段階P3(超伝導体成長段階)にて、粒子ビーム110を用いて超伝導材料の層112が成長される。ここでは、超伝導材料は、少なくとも特定の条件下で超伝導特性を示す材料を意味する。そのような材料の一例はアルミニウム(Al)である。以下の例において、超伝導体は段階P3でエピタキシャルに成長され、超伝導体成長段階P3は、この文脈で、エピタキシャル成長段階として参照され得る。しかしながら、この技術は、これに関して限定されるものではなく、段階P3で非エピタキシャルな超伝導体成長によって、意図した結果を達成することが可能であり得る。
【0049】
超伝導材料112は、段階P3で、例えば、分子線エピタキシ(MBE)電子銃エピタキシを用いて成長され得る。
【0050】
超伝導体層112の少なくとも一部は、超伝導体層112のこの部分(
図1で符号116を付す)がSEナノワイヤ108と直に接触するように、SEナノワイヤ108の上に堆積される。すなわち、SEナノワイヤ108が少なくとも部分的に超伝導材料で覆われるようにされる。
【0051】
これもエピタキシの形態であるが、SAGではない。特に、エピタキシャル成長段階P3では、エピタキシャル成長が、SEナノワイヤ108上だけでなく、酸化物層102上でも起こる。
【0052】
ビームは、露出されている酸化物層102及びSE材料108の表面の基本的に全てがSU層112によって覆われるように、実質的にz方向に角度付けられることができる。しかしながら、この例において、粒子ビーム110は、z方向に対して非ゼロの入射角(堆積角度)で基板104に入射している。この非ゼロの堆積角度及びSEナノワイヤ108の突出構造の結果として、SEナノワイヤ108は超伝導体層112によって部分的に被覆されるのみであり、すなわち、SEナノワイヤの一部(符号118を付す)は、超伝導体材料によって被覆されない。酸化物層102の大部分も超伝導体層112によって被覆されるが、入射ビーム110の角度及びSEナノワイヤ108の突出構造に起因して、突出したSEナノワイヤ108のすぐ隣の酸化物層102の小さい領域(シャドー領域)は、露出したまま残され、すなわち、SU材料によって被覆されない。
図1では、1つのこのようなシャドー領域に符号120を付している。シャドー領域120は、“サイドゲート”領域122内のSU層112の部分からSE材料108を離隔させる。サイドゲート領域122内のSU層112の部分は、SEナノワイヤ108を制御するためのゲートを形成するために使用されることができ、又は(より大きな可能性として)以下の例においてのように、SU材料がこの領域からエッチング除去され、より好適なゲート材料で置換され得る。いずれにしても、シャドーギャップ120は、意図した通りにゲートが動作することを確保する。(上述のように)SUエピタキシ段階P3において“in-situ(インサイチュ、その場)”パターニングを用いてギャップ120を形成することは、壊れやすいナノワイヤ108の過度に近くで材料をエッチングする必要がないことを確保する。
【0053】
これは、超伝導体が均一層として堆積されるが、選択的エリア成長された材料による“影(シャドー)”を用いて半導体と超伝導体との間にギャップが形成されるという基本的プロセスの一例である。この特定の例では、半導体に接触していない超伝導体が、サイドゲートとして使用され得る又はエッチング除去されてもっと好適なゲート材料で置換され得る一方で、半導体に直に接触した超伝導体が、超伝導を誘起するために使用される。
【0054】
図1の右下が、第3段階P3の終了時における基板104の側面図及び上面図の双方を示している。なお、この上面図では、SEナノワイヤ108を部分的に被覆する超伝導体層112の部分116が、SEナノワイヤ108の被覆されない部分118から区別されておらず、むしろ、ナノワイヤ108と、それらナノワイヤを(部分的に)覆う(すなわち、それらと直に接触した)超伝導体材料116の部分とで形成された、組み合わせのナノワイヤ構造が、ラベルSE∥SUを付した単一の要素として描かれている。以降の図でもこの組み合わせ構造は同様にラベルを付されて表されており、ここでの“SE/SUナノワイヤ”又は“SE∥SUナノワイヤ”への言及は、別段の指示がない限り、SEナノワイヤ108と、SEナノワイヤ108を(部分的に)覆うSU材料116とに言及するものである。
【0055】
説明を更に助けるために、
図2は、第3段階P3における第1及び第2のナノワイヤ108A、108Bの概略的な斜視図を示しており、これらのナノワイヤが部分的に、超伝導体層112のそれぞれの部分116A、116Bによって被覆されている。第1のナノワイヤ108Aにすぐ隣にあって、上述のようにして、第1のナノワイヤ108Aを、サイドゲート領域122内の超伝導体層112の部分から分離するものである上述の類のシャドーギャップ120が示されている。
【0056】
SAG段階P2及び超伝導体成長段階P3は、好ましくは段階間で基板104を移動させることなく、真空チャンバ内で行われ得る。これらの段階は、高真空又は超高真空(~10-8-10-12Torr以下)の条件下で実行されることができ、これらの真空条件が段階間で維持され得る。とりわけ、これは、望ましくない不純物を含まない清浄なSE/SU界面を保証する。
【0057】
理解されることになるように、段階P2のSAG半導体成長及び段階P3の超伝導体成長はどちらも、これらの2つの段階に関するそれぞれの“成長ウィンドウ”内に入り、それにより、それぞれ、所望の半導体成長及び超伝導体成長を達成するように、注意深く較正された条件を必要とする。材料の種類に応じて、成長条件、温度及びフラックスを慎重に選定する必要がある。例えば、MBE(半導体SAG段階P2及び超伝導体成長段階P3の双方で使用され得る)の場合、基板は一般的に、自然酸化物に関して表面をクリーンにするために、およそ500℃以上又はそれより高い温度に加熱される必要がある。しかしながら、SE SAG成長段階P2及びSU成長段階P3では、所望の成長が起こるそれぞれの温度ウィンドウが、それぞれ、SE材料108及びSU材料112の組成に依存する。超伝導体は、真空を破壊することなく、インサイチュで成長/堆積される。斯くして、SAGの表面が空気中で酸化されず、上にSUが置かれるまでクリーンなまま維持され、それにより、クリーンなSE-SU界面が確保される。
【0058】
ユースケース例
ゲート可能な超伝導体ネットワークの基礎としてSAGを用いることは、望ましくは、絶縁された基板を伴い、選択的エリア成長された材料が、誘起される超伝導を担持することができる。
【0059】
その上にSE/SUナノワイヤネットワークが成長される基板104及び酸化物層102は、ナノワイヤをそれらが元々その上に製造された基板から転写することなく、SE/SUナノワイヤネットワークとともに、例えば量子回路又は量子コンピュータなどの最終製品に組み込まれることができる。
【0060】
開示される技術の実施形態は、このような混合された半導体及び超伝導体領域を使用して形成されるナノワイヤのネットワークを有した、トポロジカルに保護される量子コンピューティング回路を含む。
【0061】
図3には、例えば、絶縁性のInP基板上に成長されたInAsナノワイヤで構成されたワイヤパターンが示されている。特に、
図3は、一次元ナノワイヤネットワークに基づく複雑なネットワークの製造を示している。このネットワークは、InP基板上に形成されたSAG InAsナノワイヤネットワークである。
【0062】
図4は、量子回路400を形成するように上述の方法を用いて製造されたT字型SE∥SUナノワイヤ構造の概略的な上面図を示している。SE∥SUナノワイヤとの電気接続を可能にするために、量子回路400のコンタクト(Contact)402がSE∥SUナノワイヤに付加されている。ゲート用の領域112が示されており、そこでは、SE∥SUナノワイヤを操作するための、また、例えば、トポロジカル量子コンピューティングの状況では、量子計算を実行するために、SE∥SUナノワイヤによってホストされるマヨラナゼロモードを操作するための、サイドゲート(Side-gate)を形成するために、SU材料112の大部分がエッチング除去されて、例えば、異なるゲート材料(図示せず)で置換される。
【0063】
図5は、上述の方法に従って製造された、2つのマッチング用の、隣り合わせた例の、SE/SUナノワイヤ構造502a、502bの上面像500を示している。ここでは、コンタクト(縦方向の明るい線)及びトップゲート(縦方向の暗い線)がSAGナノワイヤ(横方向の明るい線)に適用されているのが見て取れる。これらは、例えばリソグラフィ法を用いて付加されることができる。
【0064】
図5はまた、マッチング構造502a、502bのそれぞれについてのそれぞれのI-V(電流-電圧)グラフ504a、504bを示している。見て取れるように、2つのSE/SUナノワイヤ構造502a、502bは、非常に類似したI-V特性を示している。これは、この製造方法の利点の1つである再現性、すなわち、一致した物理特性を持つナノワイヤ構造を生産する能力を実証するものである。このレベルの再現性は、既存のナノワイヤ製造方法に対する大幅な改善を表す。
【0065】
拡張-その場パターニング
図6及び7は、
図1の方法の拡張の一例を概略的に示しており、ここでは、その場パターニングを行うために、超伝導体成長段階P3における角度付きビーム110と共に、突出誘電体構造102Pが使用される。突出誘電体構造102Pが、角度付きビームを選択的に遮って、SU材料112の堆積が上述の種類の特定のシャドー領域で起こるのを防止するという点で、原理は、突出したSE材料108によって提供されるその場パターニングと同様である。
【0066】
この例において、突出誘電体構造102Pは、ナノワイヤ108の全幅にわたって延在するシャドー領域602を提供するようにSEナノワイヤ108に隣接して位置付けられた誘電体材料の“ピラー”であり、その結果、ナノワイヤ108は、その全幅にわたって、領域602内でSU材料で全く被覆されない。故に、この被覆されない部分602が、SE/SUナノワイヤの2つのセクション604a、604bの間のSEジャンクションを形成する。これが、
図6の側面図及び上面図、並びに
図7の斜視図に示されている。
【0067】
図8-10に例示するように、複数の突出誘電体構造102Pを使用して、任意の所望のその場パターニングを達成することができる。
【0068】
理解されることになるように、これは、ジャンクションの形成に限定されるものではなく、上述の原理に従って、突出誘電体構造(例えば、ウォール、ピラー、ループなど)を個別に又は組み合わせで用いることで、SU材料の任意の所望のパターニングを達成することができる。
【0069】
更なるユースケース例
図11は、“[100]”SE/SUナノワイヤ及び“[110]”SE/SUナノワイヤという、特定の種類の量子回路に見出され得る2つの結晶ナノワイヤ構造を示している。ここで、[100]及び[110]はミラー指数であり、これは、この文脈において、ナノワイヤの配向自体に対するナノワイヤの結晶構造の向きを指す。理解されるように、異なるミラー指数は、SAG段階P2において異なる形状のナノワイヤの成長をもたらす。特に、ワイヤの幅を横切って断面をとるときに、SAG[100]ワイヤは基本的に三角形のプロファイルを持つのに対し、SAG[110]ワイヤは、その頂部に、より平坦な部分を持つ。これら異なるプロファイルのため、エピタキシャル成長段階P3において、粒子ビーム110の角度が、(1つ以上の)SAGナノワイヤのミラー指数に応じて好ましく選定される。[100]ナノワイヤでは、z軸に対して少なくとも45度の角度が好適であり得るのに対し、[110]ナノワイヤでは、少なくとも35度の角度が好適であり得る。
【0070】
図12及び
図13-14は、異なる堆積角度(各図の左上に概略的に示す)で製造されたSE∥SUナノワイヤのトップダウン像を示している。理解されるように、異なる堆積角度を使用することで、異なる幅のシャドーギャップ120を達成することができる。ここでは、上述のように、SEナノワイヤ108が角度付きビームを遮ることによりシャドーギャップが生み出されて、得られるSE/SUナノワイヤをゲート用の領域122から分離する。
【0071】
図12のSE/SUナノワイヤは、Al堆積を用いて、金属堆積チャンバ内で低温のステージにて電子銃(e-gun)から製造されたものである。
【0072】
図13及び14のSE/SUナノワイヤは、MBEを用いて、MBEチャンバ内で、法線から(すなわち、上で定めたz軸に対して)ほんの33度のビーム角度で製造されたものである。これは純粋なる例であり、大抵のシステムは、角度を所望の方向に変えることを可能にしている。
【0073】
図15は、記載された方法を用いて製造されたSE/SUナノワイヤ構造の別の像を示している。
【0074】
一般に、超伝導材料は、基板全体上に均一に堆積/成長されてその後に特定の領域で除去されるか、堆積/成長中にリソグラフィマスクを用いて特定の領域に堆積/成長されるか、のいずれかであることができる。これは、上述のように、その場パターニングの形態とすることができる。一部の実装例では、選択的エリア成長された材料が、サイドゲート、トップゲート、及び/又はボトムゲートを用いて調節されることができる導電性の面内配向のナノワイヤを残す。また、一部の実施例では、リーク電流を防止するために基板が絶縁される。
【0075】
開示された方法、装置、及びシステムは、いかようにも限定するものとして解釈されるべきでない。いずれかの例からの技術が、他の例のうちのいずれか1つ以上にて記載された技術と組み合わされ得る。開示された技術の原理が適用され得る数多くの可能な実施形態に鑑みて、認識されるはずのことには、説明した実施形態は、開示された技術の例であり、開示された技術の範囲についての限定として解されるべきでない。構造機構及び/又は方法行為に特有の言葉で事項を説明してきたが、理解されるべきことには、添付の請求項にて定められ事項は必ずしも上述の特定の機構又は行為に限定されるわけではない。むしろ、上述の特定の機構及び行為は、請求項を実施する形態例として開示されたものである。