(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-28
(45)【発行日】2023-01-12
(54)【発明の名称】インターフェース型創傷被覆材
(51)【国際特許分類】
A61F 13/00 20060101AFI20230104BHJP
A61L 15/24 20060101ALI20230104BHJP
A61L 15/42 20060101ALI20230104BHJP
【FI】
A61F13/00 301G
A61L15/24 100
A61L15/42 310
(21)【出願番号】P 2020500864
(86)(22)【出願日】2018-07-11
(86)【国際出願番号】 FR2018051745
(87)【国際公開番号】W WO2019012226
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2021-06-18
(32)【優先日】2017-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516175711
【氏名又は名称】エイチシーピー ヘルスケア アジア ピーティーイー.リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】オーギュスト ステファーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ラモワゼ ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】ダネロール アン-ソフィー
(72)【発明者】
【氏名】ドウリン エルワン
【審査官】原田 愛子
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-504835(JP,A)
【文献】特表昭63-502804(JP,A)
【文献】特表2012-515609(JP,A)
【文献】特表2015-522365(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/00
A61L 15/24
A61L 15/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマーマトリクス(5)を含むインターフェース型創傷被覆材(1)であって、前記エラストマーマトリクス(5)は複数の貫通孔(6)を備え、各貫通孔(6)は中心軸(A)の周りに輪郭(C)を有し、
前記インターフェース型創傷被覆材(1)は、前記複数の貫通孔(
6)の少なくとも一部分が、少なくとも1つのパターンを形成するように配置され、各貫通孔(6)は少なくとも1つの他の貫通孔(6)に隣接しており、前記隣接する貫通孔(6)は輪郭(C)を有し、前記輪郭の像は、前記中心軸(A)に垂直な平面内で並進移動して前記並進移動によって前記中心軸(A)の像を
前記隣接する貫通孔(6)の前記中心軸(A)の像に併合しようとするとき、
前記隣接する貫通孔(6)の輪郭の像と重な
らず、
インターフェース型創傷被覆材(1)は、
0.4mm~2mmの厚さ、及び、
0.3mm~4mmの2つの隣接する貫通孔(6)の間の糸幅(f)、及び、
200g/m
2
~1200g/m
2
の坪量、及び、
2mm~4mmの貫通孔長さ(l)、及び、
1mm~2mmの貫通孔幅(L)、
を有することを特徴とするインターフェース型創傷被覆材(1)。
【請求項2】
前記エラストマーマトリクス(5)のみからなり
、エラストマー組成物を支える骨格を欠き、そのため自己支持性である請求項
1に記載のインターフェース型創傷被覆材(1)。
【請求項3】
前記パターンが、それぞれの中心軸(A)の周りに互いに角度的にずれた同一の輪郭(C)を有する隣接する貫通孔(6)を含む請求項1
又は請求項
2に記載のインターフェース型創傷被覆材(1)。
【請求項4】
前記パターンが、各々前記中心軸(A)の周りの回転対称性を欠く輪郭(C)を有する隣接する貫通孔(6)を含む請求項
3に記載のインターフェース型創傷被覆材(1)。
【請求項5】
前記パターンが、角度2π/nラジアンにわたる回転に関する前記中心軸(A)の周りの回転対称性を各々が呈する輪郭(C)を有する隣接する貫通孔(6)を含み、nは整数であり、前記パターンの前記隣接する貫通孔(6)の前記輪郭(C)が、2π/nラジアンとは異なる角度でそれぞれの中心軸(A)の周りに互いに角度的にずれている請求項
3に記載のインターフェース型創傷被覆材(1)。
【請求項6】
前記パターンが、矩形の輪郭(C)を有する隣接する貫通孔(6)を含む請求項1から請求項
5のいずれか一項に記載のインターフェース型創傷被覆材(1)。
【請求項7】
前記隣接する貫通孔(6)の前記矩形の輪郭(C)が互いに直角に配置されている請求項
6に記載のインターフェース型創傷被覆材(1)。
【請求項8】
前記パターンが、隣接する貫通孔(
6)のネットワークであって、隣接する貫通孔(
6)の前記中心軸(A)が少なくとも第1方向(X)に整列しているネットワークを含む請求項1から請求項
7のいずれか一項に記載のインターフェース型創傷被覆材(1)。
【請求項9】
前記ネットワークの前記隣接する貫通孔(6)の前記中心軸(A)が、前記第1方向(X)と垂直の第2方向(Y)に整列している請求項
8に記載のインターフェース型創傷被覆材(1)。
【請求項10】
前記エラストマーマトリクス(5)が、エラストマー組成物からなり、前記パターンの前記隣接する貫通孔(6)が、エラストマー組成物の糸(7)により互いに隔てられている請求項1に記載のインターフェース型創傷被覆材(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
概要
本発明は、インターフェース型創傷被覆材に関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、複数の貫通孔を備えるエラストマーマトリクスを含むインターフェース型創傷被覆材に関する。
【背景技術】
【0003】
創傷に接触させられることを意図された創傷被覆材を用いた創傷の処置は、かなり以前から知られており、このような創傷被覆材は、創傷と創傷からの滲出物を吸収するために創傷被覆材に置かれる吸収性圧定材(compresse absorbante)との間にインターフェースを設けられる。このような創傷被覆材は、通常、表現「インターフェース型創傷被覆材」によって表される。
【0004】
Laboratoires URGO社によりURGOTUL(登録商標)の名称で2000年から販売されているインターフェース型創傷被覆材は、このようなインターフェース型創傷被覆材の具体例である。
【0005】
特に特許出願、国際公開第00/016725号パンフレットの実施例1に記載されているこの製品は、オープンメッシュ生地骨格からなり、この生地の糸は、実質的に閉塞されずかつ各々が中心軸の周りに正方形の輪郭を有する複数の貫通孔を残すように、凝集性ゲルで被覆されている。このゲルは、強く可塑化され、分散体として少量の親水コロイドの親水性粒子を含有する、ABA(スチレン-飽和オレフィン-スチレン)型のトリブロック共重合体に基づくエラストマーマトリクスからなる組成物から形成される。
【0006】
このインターフェース型創傷被覆材のエラストマーマトリクスの定性的及び定量的組成は、そのエラストマーマトリクスに、治癒プロセスの促進及び、特に、線維芽細胞の増殖の促進に関して顕著な特性を与える。
【0007】
とはいうものの、URGOTUL(登録商標)製品は、例えば創傷の場所のため覆うことが困難な創傷に施用(貼付)することが望まれる場合、その骨格の剛性のため順応性を欠くという欠点を有する。
【0008】
この問題を解決するために、自己支持性インターフェース型創傷被覆材、つまり骨格を欠く創傷被覆材、が特許出願、仏国特許出願公開第2936158号明細書に記載されている。この特許出願で提案されている解決策により、良好な弾性、また、それらを取り扱うことを可能にするに十分な剛性及び凝集性を有する製品を得ることが可能になる。
【0009】
とはいうものの、これらのインターフェース型創傷被覆材は、それらを、覆われるべき創傷が存在する身体の部分に適合させるという点では、使用しづらい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明は、自己支持性であるか否かによらず、インターフェース型創傷被覆材の使用を改善することに向けられている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この効果に向けて、本発明は、エラストマーマトリクスを含むインターフェース型創傷被覆材であって、このエラストマーマトリクスは複数の貫通孔を備え、各貫通孔は中心軸の周りに輪郭を有し、
上記複数の貫通孔の少なくとも一部分は、少なくとも1つのパターンを形成するように配置され、各貫通孔は少なくとも1つの他の貫通孔に隣接しており、上記隣接する貫通孔は輪郭を有し、これらの輪郭の像は、上記中心軸に垂直な平面内で並進移動してこの並進移動によって上記中心軸の像を併合しようとするとき、重ならないインターフェース型創傷被覆材を提案する。
【0012】
これらの配置構成により、特に、覆われるべき創傷が存在する身体の部分の寸法に、及び形状に適合させるために、制御された態様で形作られること、特に切断又は引き裂きが可能であるインターフェース型創傷被覆材を得ることが可能になる。制御された態様で形作られることが可能な当該インターフェース型創傷被覆材は、外縁のレベル及び内側開口部のレベルの両方において、向上した使用をもたらす。
【0013】
さらには、特定の配置構成によれば、側方縁部に平行な方向に従って引張り力に曝された本発明に係るインターフェース型創傷被覆材は、その側方縁部を直線的に(真っ直ぐに)保つ。これは、インターフェース型創傷被覆材の施用の間、創傷被覆材を1つの方向、例えば長さの方向に伸ばし、他方で同時に別の垂直方向、例えば幅方向には全く同じ寸法を保持することができるために、特に有利である。
【0014】
上記エラストマーマトリクスは、エラストマー組成物からなることができ、上記パターンの隣接する貫通孔は、エラストマー組成物の糸により互いに隔てられていることができる。
【0015】
特に、当該インターフェース型創傷被覆材は、自己支持性であってもよい。その場合、当該インターフェース型創傷被覆材は、上記エラストマーマトリクスのみからなり、上記エラストマー組成物を支える骨格を欠く。
【0016】
これらの配置構成により、小さい曲率半径を有する曲面を含む部分を含めて身体のすべての部分に適合するための良好な弾性及び良好な柔軟性を有し、同時に、小さい曲率半径を有する拡大面を含む部分を含めて身体のすべての部分の適所に留まることを可能にする所定の強度を有するインターフェース型創傷被覆材を得ることが可能になる。
【0017】
上記組成物は、特に、
- 上記組成物の総重量に対して5~20重量%の、2つのスチレン熱可塑性末端ブロックA及び飽和オレフィンである中央エラストマー配列Bを含む少なくとも1種のABA型のトリブロック共重合体、又は2つのスチレン熱可塑性末端ブロックA及び飽和オレフィンである中央エラストマー配列Bを含むABA型のトリブロック共重合体のブレンド、
- 50~80重量%の少なくとも1種の可塑剤、
- 5~20重量%の樹脂、
を含むことができ、上記百分率は上記組成物の総重量に対するものである。
【0018】
上記パターンは、それぞれの中心軸の周りに互いに角度的にずれた同一の輪郭を有する隣接する貫通孔を含んでもよい。これらの配置構成により、貫通孔が互いに内側に入れ子になっているパターンを得ることが可能になる。
【0019】
特に、上記パターンは、各々中心軸の周りの回転対称性を欠く輪郭を有する隣接する貫通孔を含んでもよい。
【0020】
加えて、又はあるいは、上記パターンは、角度2π/nラジアンにわたる回転に関する中心軸の周りの回転対称性を各々が呈する輪郭を有する隣接する貫通孔を含んでもよく、nは整数であり、上記パターンの隣接する貫通孔の輪郭は、2π/nラジアンとは異なる角度でそれぞれの中心軸の周りに互いに角度的にずれている。
【0021】
上記パターンは、矩形の輪郭を有する隣接する貫通孔を含んでもよい。
【0022】
上記隣接する貫通孔の矩形の輪郭は、互いに直角に配置されてもよい。
【0023】
上記パターンは、隣接する貫通孔のネットワークであって、この隣接する貫通孔の中心軸が少なくとも第1方向に整列しているネットワークを含んでもよい。これらの配置構成は、第1方向での形状安定性をもたらす。
【0024】
上記ネットワークの隣接する貫通孔の中心軸は、上記第1方向と垂直の第2方向にも整列していてよい。その場合、インターフェース型創傷被覆材は、第2方向でも形状安定性を呈する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明の他の主題及び利点は、非限定的な例として与えられる本発明の特定の実施形態の以下の説明を読めば明らかとなるであろう。その説明は添付の図面を参照して与えられる。
【0026】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る第1例によるインターフェース型創傷被覆材を表し、このインターフェース型創傷被覆材は貫通孔を備えるエラストマーマトリクスを含み、この貫通孔は、2つの隣接する貫通孔がそれぞれの中心軸に対して90°だけずれている輪郭を有するように配置された同一の矩形の輪郭を有する。
【
図2】
図2は、
図1に表される本発明の実施形態に係るインターフェース型創傷被覆材を製造するための金型の図である。
【
図3】
図3は、先行技術の実施形態に係る第2例によるインターフェース型創傷被覆材を製造するための金型の図であり、貫通孔は同一の正方形の輪郭を有する。
【
図4】
図4は、
図3の金型での成形により得られる、先行技術に係る第2例によるインターフェース型創傷被覆材の図である。
【
図5】
図5は、先行技術の実施形態に係る第3例によるインターフェース型創傷被覆材を製造するための金型の図であり、貫通孔は、第2例の寸法よりも小さい寸法を有する同一の正方形の輪郭を有する。
【
図6】
図6は、
図1に表される本発明に係る第1例によるインターフェース型創傷被覆材の図であり、このインターフェース型創傷被覆材は切り取られている。
【
図7】
図7は、
図4に表される先行技術に係る第2例によるインターフェース型創傷被覆材の図であり、このインターフェース型創傷被覆材は切り取られている。
【
図8】
図8は、
図5に表される金型から得られる、先行技術に係る第3例によるインターフェース型創傷被覆材の図であり、このインターフェース型創傷被覆材は切り取られている。
【
図9】
図9は、
図1に表される本発明に係る第1例によるインターフェース型創傷被覆材の図であり、このインターフェース型創傷被覆材は、1つの伸縮方向に伸ばされている。
【
図10】
図10は、本発明の一実施形態に係る第5例によるインターフェース型創傷被覆材の図であり、このインターフェース型創傷被覆材は、三次元(3D)プリンティングにより得られたものであり、このインターフェース型創傷被覆材は、伸縮方向に伸ばされている。
【
図11】
図11は、第4例によるインターフェース型創傷被覆材の図であり、貫通孔は同一の八角形の輪郭を有し、このインターフェース型創傷被覆材は、伸縮方向に伸ばされている。
【
図12】
図12は、先行技術の実施形態に係る第6例によるインターフェース型創傷被覆材の図であり、貫通孔は同一の正方形の輪郭を有し、このインターフェース型創傷被覆材は、伸縮方向に伸ばされている。
【0027】
図では、同じ参照符号は、同一又は類似の要素を表す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
創傷被覆材の形状
図1は、創傷と吸収性圧定材との間に、創傷滲出物を吸収することができるとともに、同時にその吸収性圧定材を取り除くことができるようにするように、置くことを意図されたインターフェース型創傷被覆材1を表す。
【0029】
インターフェース型創傷被覆材1は、弾性的で、しなやかで柔軟であると同時に所定の強度を有するエラストマーマトリクス5を含む。限定はされないが、インターフェース型創傷被覆材1は、形状が実質的に正方形であり、支持面に平らにおかれるとき、長手方向Xに延在する2つの側方縁部2及び長手方向Xと垂直の横方向Yに延在する2つの横方法縁部3を有する。長手方向X及び横方向Yと垂直の高さ方向Zに測定されるとき、インターフェース型創傷被覆材1は、長手方向Xに測定される長さ及び横方向Yに測定される幅と比べて小さい厚さを有する。
【0030】
エラストマーマトリクス5は、エラストマー組成物からなり、その1つの特定の実施形態が、純粋に例証として本明細書の残部でより詳細に説明される。表された実施形態では、インターフェース型創傷被覆材1は自己支持性であり、つまりインターフェース型創傷被覆材1はエラストマーマトリクス5のみからなり、エラストマー組成物を支える骨格を欠く。
【0031】
エラストマーマトリクス5は貫通孔6を備える。貫通孔6は、貫通孔の総表面積がインターフェース型創傷被覆材1の総表面積の20%~75%、好ましくは30%~65%を占めるような密度で分散させることができる。
【0032】
貫通孔6は、各貫通孔6が1以上の他の貫通孔6に隣接しているパターンを形成するように配置される。表された特定の実施形態では、そのパターンは、第1方向、つまり長手方向Xに、及び第1方向と垂直の第2方向、つまり横方向Yに整列した貫通孔6のネットワークを形成するように規則的に分散された貫通孔6を含む。この場合、各貫通孔6は、長手方向Xの両側に配置された2つの貫通孔6及び横方向Yの両側に配置された2つの貫通孔6に隣接している。隣接する貫通孔6は、エラストマー組成物の糸7により2つを組にして(対状に)隔てられている。
【0033】
各貫通孔6は、中心軸Aの周りに輪郭Cを有する。本発明によれば、隣接する貫通孔6は輪郭Cを有し、それらの輪郭の像は、中心軸Aに垂直な平面内で並進移動してこの並進移動によって各貫通孔6の中心軸Aの像を併合しようとするとき、重ならない。
【0034】
特に、
図1では、隣接する貫通孔6の輪郭は同一であり矩形である。それらの像が、上記のように併進移動されるとき、重ならないために、隣接する貫通孔6の輪郭Cは、それぞれの中心軸Aの周りに互いに角度的にずれている。これを行うために、表された実施形態では、各貫通孔6の矩形の輪郭Cは、πラジアン、すなわち180°の角度にわたる回転に対して中心軸Aの周りの回転対称性を呈する。その場合、上記パターンの隣接する貫通孔6の輪郭は、πラジアンとは異なり、例えばπ/2ラジアン、すなわち90°の角度でそれぞれの中心軸Aの周りに互いに角度的にずれる。そのとき、長手方向X又は横方向Yに延在する各貫通孔6は、直角に配置される、つまり長手方向X及び横方向Yの他方の方向に延在する4つの貫通孔6(長手方向Xに2つ及び横方向Yに2つ)に隣接している。これは、長手方向X及び横方向Yの各々において、長手方向に延在する貫通孔6及び横方向に延在する貫通孔6の交替を生じる。貫通孔6のうちの1つの中心軸Aを隣接する貫通孔6のうちの1つの中心軸Aに合わせようと、中心軸Aに垂直な平面内での仮想的な並進移動が適用される場合、このようにして得られた輪郭の像は重ならない。
【0035】
図2に表されるように、インターフェース型創傷被覆材1を製造するために、エラストマーマトリクス5は、貫通孔6を形成するために選択されたパターンが刻まれたプレート10上で上記エラストマー組成物を高温注型することにより薄層へと成形され、次いで冷却され、金型から取り出される。プレート10は、例えば約10mmの厚さeを有し、このパターンは、望ましく、そして例えば0.4mm~2mm、好ましくは0.5mm~1mm、より好ましくは約0.8mmであるエラストマーマトリクス5の厚さを得るのに適する深さpを有する。
【0036】
あるいは、貫通孔6は、単独で又は仮支持体に若しくは創傷被覆材製造のために通常使用される保護膜に連結されて予め薄層に成形されたエラストマー組成物の穿孔又は打抜加工により製造することができる。
【0037】
貫通孔は、仮支持体上でのスクリーンコーティングにより製造することもできる。
【0038】
インターフェース型創傷被覆材は、三次元(3D)プリンティングにより製造することもできる。
【0039】
純粋に例証として与えられた第1の非限定的な例によれば、インターフェース型創傷被覆材1は、成形によって得られ、
- 0.4mm~2mm、好ましくは0.5mm~1mm、より好ましくは約0.8mmの厚さ、
- 0.3mm~4mm、好ましくは0.5mm~2mm、例えば0.8mmの、2つの隣接する貫通孔6の間の糸幅f、
- 200g/m2~1200g/m2、好ましくは300g/m2~800g/m2、例えば約390g/m2の坪量、
- 2mm~4mm、例えば約2.95mmの貫通孔長さl、
- 1mm~2mm、例えば約1.45mmの貫通孔幅L
を有する通気性ネット(又は格子)の形態にある。
【0040】
次いで、貫通孔6は、一般に0.25mm2~7mm2の表面積を有する。
【0041】
矩形の輪郭Cの貫通孔6が規則的に分散された特定の実施形態に関して記載された本発明は、そのようなパターンに限定されない。
【0042】
エラストマーマトリクス5は、特に、いくつかの異なるパターンを含むことができよう。
【0043】
他の実施形態では、上記パターン又は上記複数のパターンのうちの1つは、角度2π/nラジアンにわたる回転に関する中心軸Aの周りの回転対称性を各々が呈する輪郭Cを有する隣接する貫通孔6を含むことができよう。ここで、nは整数である。その場合、上記パターンの隣接する貫通孔6の輪郭Cは、2π/nとは異なる角度でそれぞれの中心軸Aの周りに互いに角度的にずれていることになろう。上記パターン又は上記複数のパターンのうちの1つは、各々が中心軸Aの周りの回転対称性を欠く輪郭Cを有する隣接する貫通孔6を含むこともできる。
【0044】
貫通孔6の輪郭Cの形状に加えて、貫通孔6のいずれの他の配置構成も想定することができよう。特に、貫通孔6は、第1の方向及び第2の方向のいずれに整列していてもよく、又は他の態様で分散していてもよい。
【0045】
さらに、インターフェース型創傷被覆材1は、上記エラストマー組成物を支える骨格を含むことができよう。
【0046】
エラストマー
上記組成物は、少なくとも1種のABA型のトリブロック共重合体を含むことが可能である。
【0047】
このブロック共重合体は、2つのスチレン熱可塑性末端ブロックA及び飽和オレフィンである中央エラストマー配列Bを含むABA型のトリブロック共重合体であってよい。飽和オレフィン配列Bは、例えば、エチレン-ブチレン配列、エチレン-プロピレン配列又はエチレン-エチレン-プロピレン配列である。
【0048】
簡明さのために、本明細書中では、上述の共重合体を構成する重合体ブロックは、その繰り返し単位の性質によって表される。従って、表現「スチレン配列A」又は「ブロック」は、ポリ(スチレン)配列を表し、表現「飽和オレフィン配列」又は「ブロック」は、ポリ(飽和オレフィン)配列を表す。
【0049】
1つの実施形態によれば、この組成物は、2種の共重合体のブレンドであって、トルエン中の5%質量/質量の溶液で測定された0.01~1Pa.sの粘度を有する少なくとも1種の共重合体及びトルエン中の15%(質量/質量)の溶液で測定された0.01~0.5Pa.sの粘度を有する少なくとも1種の共重合体を含むブレンドを含む。
【0050】
飽和の中央配列を含む上記トリブロック共重合体は、当業者にとっては周知であり、例えば
- ポリ(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン)(SEBSと略される)ブロック共重合体については、KRATON社により、KRATON(登録商標)Gの名称で、特にKRATON(登録商標)G1651、KRATON(登録商標)G1654、KRATON(登録商標)G1657、KRATON(登録商標)G1652又はKRATON(登録商標)G1650のグレードで、並びにKURARAY社により、SEPTON(登録商標)の名称で、特に8006又は8004のグレードで、
- KURARAY社により、ポリ(スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン)(SEPSと略される)ブロック共重合体については、SEPTON(登録商標)の名称で、特に2005、2006又は2063のグレードで、ポリ(スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレン)(SEEPSと略される)ブロック共重合体については、特に4033、4044、4055、4077又は4099のグレードで
販売されている。
【0051】
トルエン中の5%(質量/質量)の溶液で測定された0.01~1Pa.sの粘度を有する共重合体のうちで、KRATON社により、KRATON(登録商標)G1651及びKRATON(登録商標)G1654のグレードで販売されている共重合体、並びにKURARAY社により、SEPTON(登録商標)2005、2006、8006、4055、4077、4044又は4099のグレードで販売されている共重合体が挙げられてもよい。
【0052】
トルエン中の15%(質量/質量)の溶液で測定された0.01~0.5Pa.sの粘度を有する共重合体のうちで、KRATON社により、KRATON(登録商標)G1650、KRATON(登録商標)G1657及びKRATON(登録商標)G1652のグレードで販売されている共重合体、並びにKURARAY社により、SEPTON(登録商標)2063又は4033のグレードで販売されている共重合体が挙げられうる。
【0053】
これらの粘度は、ブルックフィールド(Brookfield)粘度計モデルLVIを使用して、共重合体の分子量に応じて、トルエン中の5%又は15%質量/質量の溶液で、30℃で測定される。
【0054】
25%~45重量%のスチレン含有量を有するSEBS、SEPS又はSEEPSトリブロック共重合体(重量%は、上記SEBS、SEPS又はSEEPS共重合体の重量に対する値である)が好ましい。
【0055】
一般に、最終組成物中の共重合体の量は、組成物の総重量に対して5~20重量%、好ましくは7~15重量%であってよい。
【0056】
2種のSEBブロック共重合体の使用が最も特に好ましく、特に、KRATON(登録商標)G1654が組成物の総重量に対して5~10重量%の量で存在し、KRATON(登録商標)G1650が組成物の総重量に対して2~5重量%の量で存在するKRATON(登録商標)G1654共重合体及びKRATON(登録商標)G1650共重合体の組み合わせが好ましい。
【0057】
従って、好ましくは、2種の共重合体のこのブレンドは、組成物の総重量に対して、少なくとも5~10重量%の、トルエン中の5%質量/質量の溶液で測定された0.01~1Pa.sの粘度を有する共重合体、及び少なくとも2~5%の、トルエン中の15%(質量/質量)の溶液で測定された0.01~0.5Pa.sの粘度を有する共重合体を含む。
【0058】
樹脂
上記エラストマーマトリクスは、樹脂も含有してよい。使用される樹脂は、このタイプのマトリクスで通常使用されるものである。
【0059】
これらの樹脂のうちで、例として、当業者によって一般に使用される樹脂、例えば変性ポリテルペン樹脂又は変性テルペン樹脂、水添ロジン樹脂、重合ロジン樹脂、ロジンエステル樹脂、炭化水素系樹脂、芳香族樹脂及び脂肪族樹脂の混合物等が挙げられる。例として、CRAY VALLEY社によりWINGTACK 86の名称で販売されているC5/C9共重合体から形成される合成樹脂が挙げられる。
【0060】
水素化炭化水素(1又は複数種)の樹脂のうちで、例えばARAKAWA社によってARKON(登録商標)の名称で販売されている樹脂が挙げられる。
【0061】
創傷上に置くことを容易にする接着性を組成物に与えるために、上記組成物は、少なくとも1種の粘着性付与樹脂も含んでよい。
【0062】
上記組成物で任意選択的に使用することができる粘着性付与樹脂は、特に低分子量ポリイソブチレンから選ばれる。一般に、5000シリーズのEscorez(登録商標)樹脂、さらにより好ましくはEscorez 5380(登録商標)樹脂等の水添樹脂の使用が好ましい。
【0063】
上記組成物で好ましく使用される樹脂は、芳香族炭化水素系樹脂、つまり芳香族単量体のみに基づく樹脂である。芳香族炭化水素系樹脂は、脂肪族単量体のみに基づく脂肪族樹脂とは異なり、脂肪族単量体及び芳香族単量体に基づく脂肪族/芳香族樹脂とも異なる。何らかの理論に結び付けられることは望まないが、これらの樹脂は、ABA共重合体のブロックAへの良好な溶解性を有し、このスチレンブロックを強化し、これにより、得られる最終のエラストマーマトリクスの凝集を改善するように思われる。
【0064】
特に、芳香族単量体はα-メチルスチレンである。従って、1つの実施形態によれば、上記芳香族炭化水素系樹脂はα-メチルスチレンの単独重合体及び共重合体の樹脂から選ばれる。
【0065】
試験された芳香族樹脂の中で、いくつかのものは、必ずしも満足できるものではなかった。実際、いくつかの樹脂グレードは、本発明の組成物を製造するためには、その高い軟化点に起因して高温(140℃超)に加熱される必要がある。このような温度で作業をすることにより、可塑剤が揮発するというリスクがある。親水コロイド(カルボキシメチルセルロース等)又は活性薬剤が上記組成物に添加される場合、これらが分解するリスクがある。
【0066】
従って、上記組成物で使用される樹脂は、軟化点が80~125℃、好ましくは90~110℃であるα-メチルスチレンタイプの樹脂である。
【0067】
軟化点は、ISO4625規格(「環球」式)に従って測定される。
【0068】
好ましくは、上記樹脂は、95~105℃若しくは115~125℃の軟化点を有するα-メチルスチレン樹脂、又は95℃~115℃の軟化点を有するポリ(スチレン-co-α-メチルスチレン)樹脂である。
【0069】
上記の好ましい樹脂は、当業者にとっては周知であり、市販されており、例えば以下の商品名で販売されている。
- Arizona ChemicalからのSylvares SA100及びSylvares SA120:それぞれ、95~105℃又は115~125℃の軟化点を有するα-メチルスチレン樹脂、
- Cray ValleyからのCleartack W90又はNorsolene W90樹脂:85~95℃の軟化点を有するポリ(スチレン-co-α-メチルスチレン)樹脂、
- EastmanからのKristalex 3100LV、Kristalex F100、Kristalex 3105SD及びKristalex F115樹脂:それぞれ、100℃、又は96~104℃、又は105℃、又は114~120℃の軟化点を有するポリ(スチレン-co-α-メチルスチレン)樹脂。
【0070】
上記樹脂は、好ましくは、組成物の総重量に対して、5%~20重量%、好ましくは5%~15重量%の量で存在する。
【0071】
当該インターフェース型創傷被覆材を製造するために、上記組成物中に存在する共重合体ブレンド及び樹脂は、1種(以上)の可塑性化合物と合わされる。
【0072】
使用することができる可塑剤は周知であり、上記共重合体の伸縮性、柔軟性、押出性又は加工特性を改善することが意図されている。この効果のために、1以上の可塑剤を必要に応じて使用することができる。
【0073】
一般に、上述のブロック共重合体の飽和オレフィン中央配列と相溶性である液体化合物が可塑剤として好ましいであろう。
【0074】
この効果のために使用することができる可塑性化合物のうちで、特に、可塑性鉱油が挙げられる。
【0075】
あるいは、飽和炭化水素の液体混合物に基づく合成物、例えばTOTAL社により、GEMSEAL(登録商標)の名称で販売されている製品、特に完全水添石油留分から誘導されるイソパラフィン混合物であるGEMSEAL(登録商標)60製品を使用することも可能である。
【0076】
可塑性油、特にパラフィン性若しくはナフテン性の化合物、又は様々な割合のこれらの混合物から形成される鉱油が、好ましくは使用されることになる。
【0077】
特に好ましい可塑性鉱油は、パラフィン性及びナフテン性の化合物の混合物、特にパラフィン性の化合物の割合が優勢であるこのような混合物から形成される。
【0078】
特に好適である可塑性油のうちで、SHELL社によりONDINA(登録商標)の名称で販売されている製品、特にONDINA(登録商標)919、又はPETRO CANADA社によりPURETOL(登録商標)9Dの参照名で販売されている油、又はSonnebornにより販売されているBLANDOL油、又はHansen & Rosenthalにより販売されているPionier 2076P油が挙げられてよい。
【0079】
油に加えて、上記可塑剤は、ワセリンも含んでよい。上記組成物で使用されるワセリンは仏国薬局方に準拠した市販のワセリンである。
【0080】
このワセリンは、上記組成物の総重量に対して1~30%、好ましくは5~25重量%の量で存在する。
【0081】
上記可塑剤は、上記組成物の総重量に対して50~80%、好ましくは60~70重量%の量で存在する。
【0082】
好ましくは、上記可塑剤は、鉱油及びワセリンの混合物からなり、この鉱油は、上記組成物の総重量に対して45~60重量%の範囲の量で存在し、上記ワセリンは、上記組成物の総重量に対して5~20重量%の範囲の量で存在する。
【0083】
活性薬剤
また、上記組成物は、治癒を誘導若しくは加速することを可能にするか、又は創傷の処置において好ましい役割を果たすことができる少なくとも1種の活性薬剤を含んでもよい。
【0084】
これらの活性物質のうちで、特に、例として
- 治癒促進剤、例えばレチノール、ビタミンA、ビタミンE、N-アセチルヒドロキシプロリン、Centella asiatica(センテラ・アジアティカ)のエキス、パパイン、シリコーン、タイム、ニアウリ、ローズマリー及びセージの精油、ヒアルロン酸、ショ糖オクタ硫酸エステルカリウム、スクラルファート、アラントイン及びメトホルミン、
- 抗菌剤、例えば銀の塩又は錯体(硫酸銀、硝酸銀、フルファミド銀又はさらには銀ベースのゼオライト等)、亜鉛塩又は銅塩、メトロニダゾール、ネオマイシン、ペニシリン類、クラブラン酸、テトラサイクリン類、ミノサイクリン、クロルテトラサイクリン、アミノグリコシド類、アミカシン、ゲンタマイシン及びプロバイオティクス、
- 防腐剤、例えばクロルヘキシジン、トリクロサン、ビグアニド、ヘキサミジン、チモール、複方ヨード・グリセリン、ポビドン-ヨウ素,塩化ベンザルコニウム及び塩化ベンゼトニウム、
- 鎮痛剤、例えばパラセタモール、コデイン、デキストロプロポキシフェン、トラマドール、モルヒネ及びその誘導体、副腎皮質ステロイド(コルチコステロイド)類及びそれらの誘導体
- 局所麻酔薬、例えばリドカイン、ベンゾカイン、ジブカイン、プラモキシン塩酸塩、ブピバカイン、メピバカイン、プリロカイン及びエチドカイン、
- 抗炎症薬、例えば非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、アスピリン又はアセチルサリチル酸、イブプロフェン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、ジクロフェナク、アセクロフェナク、ケトロラク、メロキシカム、ピロキシカム、テノキシカム、ナプロキセン、インドメタシン、ナプロキシノド、ニメスリド、セレコキシブ、エトリコキシブ、パレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、フェニルブタゾン、ニフルミン酸及びメフェナム酸
が挙げられてよい。
【0085】
当然、上記組成物は、洗浄相における作用について公知の1以上の他の化合物も含んでよく、このような化合物としては、例えば
- 酵素、
- 尿素
が挙げられる。
【0086】
好ましくは、上記治癒促進剤は、治癒促進剤レチノール、ビタミンA、ビタミンE、N-アセチルヒドロキシプロリン、Centella asiatica(センテラ・アジアティカ)のエキス、パパイン、シリコーン、タイム、ニアウリ、ローズマリー及びセージの精油、ヒアルロン酸、ショ糖オクタ硫酸エステルカリウム、スクラルファート、アラントイン及びメトホルミンから選ばれ、好ましくは、上記治癒促進剤はメトホルミンである。
【0087】
上記組成物は、上記組成物の総重量に対して、0.1%~15%、好ましくは1%~10重量%の活性薬剤を含む。
【0088】
親水コロイド
支持体又は癒傷のための骨格を有するインターフェース型創傷被覆材の製造に関しては、上記組成物は、親水コロイドの親水性粒子(又は親水コロイド粒子)を含んでもよい。
【0089】
実際、これらの粒子により、治癒を促進するために、インターフェース型創傷被覆材の無痛の取り除き及び創傷のレベルでの湿潤環境の維持が可能になる。
【0090】
この効果に向けて、かくして、少量の親水コロイドの親水性粒子は、エラストマーマトリクスが形成されるとそのエラストマーマトリクスの表面上に置かれるか、又は、好ましくは、上記組成物内に均一に分散される。
【0091】
本明細書中において、用語「親水コロイド」又は「親水コロイド粒子」は、水、生理食塩水又は創傷からの滲出物等の水性液体を吸収する能力のために、当業者によって通常使用されるあらゆる化合物を表すことが意図されている。
【0092】
好適な親水コロイドとして、例えば、ペクチン、アルギン酸塩及びアルギン酸エステル、特にカラヤガム等の天然植物ガム、カルボキシメチルセルロース及びナトリウム又はカルシウム等のアルカリ金属のそれらの塩等のセルロース誘導体、並びに「超吸収材」の名称で知られるアクリル酸塩をベースとする合成ポリマー、例えばCIBA Specialty Chemicals社によりSALCARE(登録商標)SC91の名称で販売されている製品、並びにこれらの化合物の混合物が挙げられてもよい。
【0093】
10マイクロメートル未満の粒径を有するため「マイクロコロイド」と記載されるこれらの超吸収材のいくつかも、当然、使用することができる。
【0094】
好ましい親水コロイドは、カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩、特に、カルボキシメチルセルロース(CMC)ナトリウムである。
【0095】
親水コロイド粒子のサイズ(粒径)は、一般に50~100ミクロン(50~100μm)、有利には約80ミクロン(80μm)である。
【0096】
一般に、上記組成物に組み込まれる親水コロイド粒子の量は、有利には、上記組成物の総重量に対して25重量%以下、有利には、約2~20重量%、好ましくは5~18重量%、より好ましくは10~15重量%である。
【0097】
親水コロイド粒子が、エラストマーマトリクスが形成されるとそのエラストマーマトリクスの表面に置かれる場合、それらの量は、好ましくは、エラストマーマトリクスの総重量に対して、約1~10重量%、より具体的には2~5重量%になろう。
【0098】
滲出物の吸収の間に貫通孔の閉塞につながる上記組成物のゲル化を回避するために、これらの値の範囲内での親水コロイド粒子の量の選択は、インターフェース型創傷被覆材の製造、特に自己支持性で通気性のインターフェース型創傷被覆材の製造にとっては重要である。
【0099】
酸化防止剤
上記組成物は、酸化防止剤も含んでよい。
【0100】
本明細書中で、用語「酸化防止剤」は、特に酸素、熱、オゾン又は紫外線に対して組成物の一部である化合物の安定性を確実にするために、当業者によって一般に使用される化合物を表すことが意図されている。
【0101】
好適な酸化防止剤の例として、特にフェノール系酸化防止剤、特にBASFによりIRGANOX(登録商標)1010、IRGANOX(登録商標)565及びIRGANOX(登録商標)1076の名称で販売されている製品等が挙げられてもよい。
【0102】
一般に、これらの酸化防止剤は、単独又は組み合わせて、上記組成物の総重量に対して約0.05~1重量%、好ましくは0.05~0.2重量%の量で使用されてもよい。
【0103】
上記組成物の総重量に対して0.05~0.2重量%の量での製品IRGANOX(登録商標)1010の使用が好ましいであろう。
【0104】
補助剤
上記組成物で使用することができる補助剤として、活性薬剤の放出を促進することが知られている化合物、例えば活性薬剤を組み込むURGOTUL(登録商標)製品で一般に使用されるMontanox(登録商標)80又はSepinov(登録商標)EMT10製品(2-メチル-2-[(1-オキソ-2-プロペニル)アミノ]-1-プロパンスルホン酸の塩と、プロペン酸の2-ヒドロキシエチルエステルとの共重合体、又は2-オクチル-1-ドデカノール、D-キシロピラノシド、2-オクチルドデシル及びポリエチレングリコール30ジポリヒドロキシステアレートの混合物)を挙げてよい。
【0105】
これらの補助剤は、エラストマーマトリクスの総重量に対して約0.01%~10重量%、好ましくは0.05%~5重量%の量で使用されてもよい。
【0106】
当然、ここで記載した特定の実施形態は、別々に、又はこれらの組み合わせのいずれか1つに従って実施することができる。
【0107】
本発明に係る組成物により、特に、自己支持性インターフェース型創傷被覆材又は骨格若しくは支持体を有するインターフェース型創傷被覆材を製造することが可能になる。
【0108】
インターフェース型創傷被覆材の製造に関しては、URGOTUL(登録商標)製品で使用されるものと同じ性質の化合物又は同一の化合物(共重合体、鉱油、ワセリン、酸化防止剤及び親水コロイド)を含む組成物の使用が好ましいであろう。
【0109】
エラストマーマトリクス
インターフェース型創傷被覆材を製造するために、上記組成物は、薄層に成形され、好ましくはエラストマーマトリクスを形成するように、層中に分散した態様で配置される貫通孔を備えて、薄層に成形されることになる。
【0110】
創傷被覆材
当該自己支持性インターフェース型創傷被覆材は、滲出物が通過することを許容する貫通孔を有する薄層の形態にあるエラストマーマトリクスを含み、このエラストマーマトリクスは、
- 5~20%の、スチレン-飽和オレフィン-スチレン型の少なくとも1種のトリブロック共重合体、
- 50~80重量%の少なくとも1種の可塑剤、
- 5~20%の少なくとも1種の樹脂
を含む組成物から得られ、上記百分率は上記組成物の総重量に対するものである。
【0111】
1つの好ましい実施形態によれば、当該自己支持性インターフェース型創傷被覆材は、滲出物が通過することを許容する貫通孔を有する薄層の形態にあるエラストマーマトリクスを含み、このエラストマーマトリクスは、
- 5~20%の、スチレン-飽和オレフィン-スチレン型の少なくとも1種のトリブロック共重合体、
- 50~80重量%の少なくとも1種の可塑剤、
- 5~20%の、軟化点が80~125℃、好ましくは90~110℃であるα-メチルスチレン型の少なくとも1種の樹脂
を含む組成物から得られ、上記百分率は上記組成物の総重量に対するものである。
【0112】
好ましくは、当該インターフェース型創傷被覆材は、ラテックスグローブに接着しない。これを達成するために、上記組成物は、好ましくは
- 100重量部の、スチレン-飽和オレフィン-スチレン型の2種の特定のトリブロック共重合体のブレンドPであって、そのうちの第1のトリブロック共重合体は、トルエン中の5%(質量/質量)の溶液で測定された0.01~1Pa.sの粘度を有し、第2のトリブロック共重合体は、トルエン中の15%(質量/質量)の溶液で測定された0.01~0.5Pa.sの粘度を有するブレンドPに対して、
- 300~1000重量部の可塑剤H、好ましくは可塑性油、及び
- 90~600重量部のワセリンV
を含んでもよく、
- P+H+Vによって表される、エラストマーブレンド、可塑剤及びワセリンの全量は490~1700重量部であり、
- P+H+V/Vによって表される、エラストマーブレンド、可塑剤及びワセリン及びの全量とワセリンの量との比は11未満であり、
2種の共重合体の上記ブレンドは、少なくとも20重量%の上記第1の共重合体を含み、
上記組成物は、5~20重量%の樹脂も含み、
上記百分率は上記組成物の総重量に対するものである。
【0113】
上記組成物を外部環境から保護するために、当該インターフェース型創傷被覆材は、使用者により使用前に取り除かれることになる仮保護膜により、好ましくは創傷被覆材の面の各々が、被覆されることが可能である。
【0114】
当該インターフェース型創傷被覆材の取り扱いをさらに容易にするために、特に当該インターフェース型創傷被覆材が自己支持性である場合に、これらの2つの仮保護膜は、特許出願、国際公開第2008/145884号パンフレット又は特許出願、国際公開第2015/018720号パンフレットに記載されるもの等の単一保護材によって置き換えられてもよく、その単一保護材の特定の構造は、創傷へのこの創傷被覆材の施用を容易にする。
【0115】
当然、ここで記載した特定の実施形態は、別々に、又はこれらの組み合わせのいずれか1つに従って実施することができる。
【実施例】
【0116】
自己支持性インターフェース型創傷被覆材の調製
第1、第2、第3、第4、第5及び第6の例に係るインターフェース型創傷被覆材は、本明細書中で以降、それぞれ例1、例2、例3、例4、例5、例6とも表されるが、これらを、比較試験を実施する目的で製造する。
【0117】
以下の構成成分を表1に示される重量百分率として表される割合で使用して、例1~6の組成物を製造した。
【0118】
エラストマー:ポリ(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン)(SEBSと略す)ブロック共重合体:
- KRATON(登録商標)G1654 ES トルエン中5%(質量/質量)での粘度:0.02Pa.s
- KRATON G1651
- KRATON(登録商標)G1650 E トルエン中15%(質量/質量)での粘度:0.2Pa.s
可塑剤:Hansen & Rosenthalにより販売されるPionier 2076P鉱油
- ワセリン:AIGLON社により販売されるVaseline Codex(登録商標)A
酸化防止剤:BASF社により販売されるIRGANOX(登録商標)1010
- 親水コロイド:ASHLAND社により販売されるカルボキシメチルセルロースナトリウム CMC BLANOSE(登録商標)7H4XF
樹脂:
- Sylvares SA100、Arizona Chemicalにより販売される95~105℃の軟化点を有するα-メチルスチレン樹脂
【0119】
組成物の製造
上記可塑剤、親水コロイド及びワセリンを、90℃という設定温度で、竪型混合機に連続的に導入し、この混合物を、均一な混合物が得られるまで撹拌した。
【0120】
次に、上記共重合体(1又は複数種)及び上記酸化防止剤を導入し、設定温度を150℃に上げ、次に、得られた混合物を、均一な混合物が得られるまで撹拌した。次に、適宜、上記樹脂(1又は複数種)を加えた。
【0121】
次いで、得られた混合物を放冷し、そうして混合機を空にした。
【0122】
第2工程で、上記混合物を125℃に再加熱し、次いで120℃に加熱した刻み目が付いたプレートに堆積する。こうして堆積した混合物をへら(同じく120℃に加熱した)で平坦にならし、型の空洞に上記混合物が行き渡るようにする。
【0123】
上記刻み目が付いたプレートを、次に40~50℃の温度まで冷却する。冷却した混合物を、次に、その刻み目が付いたプレートから手作業で取り出す。
【0124】
例5については、上記混合物を加熱容器により120℃に再加熱する。次に、この材料を、90℃に加熱したパイプによって、98℃に維持した0.5mmノズルを備える加熱ヘッドに移す。このノズルのオリフィス径は、必要に応じて変更可能である。パイプ、ヘッド及びノズルのアセンブリをガントリXYZに設置し、このガントリにより、材料が3次元で堆積されることが可能になる。自己支持性インターフェース型創傷被覆材は、2工程で製造する。まず、外部輪郭、次いで創傷被覆材の内部の描画(経路は、これまでに規定された増分だけずれたステップを表す)。
【0125】
例6については、上記混合物を130℃に再加熱し、参照番号601でMDB TEXINOV社により製造されるポリエステル糸製の緯糸を有するヒートセット編物の上にコーティングする。
【0126】
図3~
図5では、第2例及び第3例に係るインターフェース型創傷被覆材は、先行技術の実施形態によるものである。これらの第2例及び第3例に係るインターフェース型創傷被覆材では、貫通孔は整列しており、その輪郭は全く同一の配向で同一の正方形である。これらのインターフェース型創傷被覆材は、寸法、つまりそれらの長さL及び幅lによって他と異なる。
【0127】
図11に見ることができるインターフェース型創傷被覆材の第4例は、整列しておりかつ輪郭が全く同一の配向で同一の八角形の形状である貫通孔を含む。
【0128】
図10に見ることができるインターフェース型創傷被覆材の第5例は、本発明の一実施形態に係るものであり、それは、三次元(3D)プリンティングで得られるという点で第1例とは異なる。
【0129】
インターフェース型創傷被覆材の第6例は、第2例及び第3例と同様に先行技術の実施形態に係るものであり、第6例は、寸法によって第2例及び第3例とは異なる。
【0130】
第2例、第3例、第4例、第5例及び第6例に係るインターフェース型創傷被覆材の主な特徴を、下記表1、表2及び表3に与える。
【0131】
【0132】
【0133】
【0134】
図6~
図8では、第1例、第2例及び第3例に係るインターフェース型創傷被覆材が手作業で切断されている。なお、本発明に従って製造する第1例のインターフェース型創傷被覆材は、開始点から直線的に切れるが、これは、先行技術の実施形態に係る第2例及び第3例によるインターフェース型創傷被覆材には当てはまらない。
【0135】
図9~
図12では、一定の伸長速度での引張試験機によって、10cmの幅lを有する第1例(
図9)、第5例(
図10)、第4例(
図11)及び第6例(
図12)に係るインターフェース型創傷被覆材を、顎部間距離は5cm、100mm/分の速度で、創傷被覆材の長さに平行な伸縮方向に、その破断伸びのおよそ70%の伸びまで引張り力に曝す。このインターフェース型創傷被覆材を、その側方縁部の構造・形状を観察するために、この伸びで数秒間保持する。
【0136】
上記インターフェース型創傷被覆材を引張り力に曝すと、本発明に係る第1例及び第5例のインターフェース型創傷被覆材(
図9及び
図10)は、成形によって得られようと、又は3Dプリンティングにより得られようと、それらの側方縁部のレベルで直線状に留まり、これは、第4例(
図11)及び第6例(
図12)のインターフェース型創傷被覆材とは異なり、これらの例のインターフェース型創傷被覆材の側方縁部は、変形し、凹状になる。