(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-28
(45)【発行日】2023-01-12
(54)【発明の名称】サンプル解凍デバイス、サンプル解凍システム、及び解凍方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20230104BHJP
C12M 1/02 20060101ALI20230104BHJP
C12N 1/04 20060101ALI20230104BHJP
【FI】
C12M1/00 Z
C12M1/02 B
C12N1/04
(21)【出願番号】P 2020529110
(86)(22)【出願日】2018-08-03
(86)【国際出願番号】 US2018045235
(87)【国際公開番号】W WO2019028399
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-08-02
(32)【優先日】2017-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519421983
【氏名又は名称】バイオライフ・ソリューションズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BioLife Solutions, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・シュライバー
(72)【発明者】
【氏名】スコット・コーミゾ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・マクファーソン
【審査官】小金井 悟
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-225019(JP,A)
【文献】特開2013-252204(JP,A)
【文献】特開2004-103480(JP,A)
【文献】特開2002-120805(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0238901(US,A1)
【文献】特開平07-185362(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0319995(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00- 3/10
Google/Google Patents
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッグ形式容器における凍結サンプルを解凍するサンプル解凍デバイスであって、
ハウジングと、
上部ヒータプレートを支持するカンチレバーアセンブリであって、上部ヒータプレートは、複数の第1抵抗ヒータに熱的に結合する上面を有
し、かつバッグ形式容器をクランプして圧力を加えるように構成されている、カンチレバーアセンブリと、
開位置と閉位置との間で動作するように配置され、下部ヒータプレートを支持する引き出しアセンブリであって、下部ヒータプレートは、バッグ形式容器を受け入れるように構成される上面、及び、複数の第2抵抗ヒータに熱的に結合される底面を有する、引き出しアセンブリと、
下部ヒータプレートに埋め込まれる1つ又は複数の熱センサであって、それぞれの熱センサは、下部ヒータプレートの上面に露出する絶縁ディスク内で中心に置かれる接点ディスクを有する、熱センサと、
を備える、サンプル解凍デバイス。
【請求項2】
複数の第1抵抗ヒータの部材は、独立して制御可能であり、上部ヒータプレートの局所領域の温度を制御するように適合されている、請求項1に記載のサンプル解凍デバイス。
【請求項3】
上部ヒータプレートは、バッグ形式容器をクランプして圧力を加えるように構成される底面を有する、請求項1に記載のサンプル解凍デバイス。
【請求項4】
複数の第2抵抗ヒータの部材は、独立して制御可能であり、下部ヒータプレートの局所領域の温度を制御するように適合されている、請求項1に記載のサンプル解凍デバイス。
【請求項5】
カンチレバーアセンブリのクランプ動作を駆動するように構成されるねじ駆動モータと、
引き出しアセンブリを開位置と閉位置との間で駆動するように構成される引き出し駆動モータと、をさらに備える、請求項1に記載のサンプル解凍デバイス。
【請求項6】
振動する揺動運動で上部ヒータプレートを駆動するように構成された揺動モータをさらに備える、請求項1に記載のサンプル解凍デバイス。
【請求項7】
1つ又は複数の熱センサは、下部ヒータプレートの横方向の中央線に沿って直線的に配置されている、請求項1に記載のサンプル解凍デバイス。
【請求項8】
タッチスクリーンインターフェースと、
タッチスクリーンインターフェースを介して命令を受け入れるように構成され、複数の第1抵抗ヒータの給電、複数の第2抵抗ヒータの給電、又はそれらの組み合わせを調節するフィードバック回路を制御するように構成される、制御ユニットと、
をさらに備える、請求項1に記載のサンプル解凍デバイス。
【請求項9】
絶縁ディスクは、半硬質発泡体材料である、請求項1に記載のサンプル解凍デバイス。
【請求項10】
下部ヒータプレートは、10mlから500mlのサンプル容量を保持するのに適したバッグ形式容器を受け入れるように構成されている、請求項1に記載のサンプル解凍デバイス。
【請求項11】
クライオバッグにおける凍結サンプルを解凍するサンプル解凍システムであって、
カンチレバーアセンブリによって支持される、上部ヒータプレートであって、当該上部ヒータプレートの上面に取り付けられる2つ以上のマットヒータを有
し、かつクライオバッグをクランプして圧力を加えるように構成されている、上部ヒータプレートと、
クライオバッグを支持するように構成され、引き出しアセンブリに置かれる下部ヒータプレートであって、当該下部ヒータプレートの底面に取り付けられる2つ以上のマットヒータを有する、下部ヒータプレートと、
下部ヒータプレートに位置し、下部ヒータプレートに着座するクライオバッグの温度を測定するように構成され及び配置された、複数のセンサアイランドと、
上部ヒータプレート及び下部ヒータプレートに取り付けられたそれぞれのマットヒータを制御するように構成された制御ユニットと、
クライオバッグ内に保持されるサンプルに関するサンプルデータを収集し及び送信するように構成された通信モジュールと、
を備える、サンプル解凍システム。
【請求項12】
バッグ形式容器における凍結サンプルを解凍する方法であって、
バッグ形式容器を、サンプル解凍デバイスの開いたサンプル引き出しへ、下部ヒータプレート上に装着することと、
サンプル引き出しを閉じることと、
カンチレバーアセンブリによって支持される上部ヒータプレートによってバッグ形式容器をクランプすることと、
下部ヒータプレートと上部ヒータプレートとの間にバッグ形式容器を保持することと、
下部ヒータプレート及び上部ヒータプレートの両方でバッグ形式容器を加熱することと、
下部ヒータプレートに埋め込まれた1つ又は複数の熱センサを使用して、バッグ形式容器の1つ又は複数の場所で温度を測定することと、
温度測定からのフィードバックに基づいて下部ヒータプレート及び上部ヒータプレートの両方の温度を調整することと、
測定された温度が閾値に到達したときにバッグ形式容器の加熱を終了することと、
を含む、解凍方法。
【請求項13】
それぞれの熱センサは、下部ヒータプレートの上面に露出する絶縁ディスク内で中心に置かれる接点ディスクを有する、請求項12に記載の解凍方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願への相互参照]
本出願は、2017年8月3日に出願された米国特許出願第62/540,976号明細書の利益を主張し、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、バッグ形式貯蔵容器内の凍結したサンプルを解凍するためのシステム及び方法に関する。様々な態様において、本開示は、細胞、組織、及び流体の極低温保存に関し、並びに極低温で保存された細胞、組織、及び流体の回復、回収のためのシステム、デバイス、及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
懸濁液中の細胞の極低温保存は、生細胞の長期的保存貯蔵及び回収(回復)のために確立され認められた技術である。一般的な方法として、細胞は、塩溶液、緩衝液、栄養素、成長因子、タンパク質、及び極低温保存剤を通常含む凍結保存培地において懸濁(浮遊)される。次に、細胞は、所望のサイズ及び容量の保存貯蔵容器に分配され、次いで、容器内容物が凍結するまで容器内の温度が下げられる。典型的な長期保存条件は、温度が通常-196°Cから-150°Cである液体窒素蒸気貯蔵を含む。凍結保存サンプルの所与の容量又は用途に適するようなバイアル又はバッグ形式貯蔵容器を使用して、このようなサンプル流体を貯蔵することができる。
【0004】
このような方法で保存された生細胞の成功した回収(回復)は、凍結と解凍との両方のプロセス間で細胞内領域における有害な氷晶成長を最小限に抑えることに依存し得る。凍結プロセス中の細胞内の氷晶成長を減らすために、幾つかの進歩がなされてきた。例えば、細胞外と細胞内との両方で氷晶の核形成及び成長を阻害する凍結保護化合物を組織又は細胞懸濁液に加えることにより、細胞内氷晶成長を減らすことができる。加えて、細胞内氷の成長は、サンプル温度の低下速度を管理することで制御することができる。凍結プロセス中、細胞外の氷晶形成は、成長する氷晶構造から溶質及び細胞を排除し、それによって溶質及び細胞を残りの液相に集結させる。溶質濃度の増加は、細胞膜透過性凍結保護剤が細胞内容積内の濃度を平衡可能にする時間の間、細胞の脱水を促進するだろう浸透ポテンシャルを確立する。凍結プロセスが進むと、細胞内容積内で最小サイズの氷晶核を有するガラス状態において高溶質濃度が固化する温度に達するだろう。次いで、固体状態の細胞懸濁液の温度は、極低温貯蔵温度に達するまでさらに低下する。この温度では、細胞が無制限に貯蔵され得るほど十分に分子活性が低下する。極低温貯蔵後の最適な細胞回収(回復)のために、凍結プロセス中の温度低下速度は、値の範囲内に収まらなければならない。温度低下速度が速すぎると、細胞内の水のレベルが十分に低下する前に細胞が凍結することがあり、それにより細胞内の氷晶の成長が促進される。温度低下速度が遅すぎると、細胞は、過度に脱水状態になり、細胞外溶質濃度が高くなりすぎることがあり、どちらの場合も、重要な細胞構造の損傷につながる。このため、凍結プロセス中の温度低下速度は、通常、制御される。例えば、温度低下速度を制御する1つの方法は、サンプルを絶縁材で囲み、アセンブリを静的な温度環境に置くことを含み、別の方法は、露出させたサンプル容器を、制御された速度で内部温度が低下する分離チャンバに置くことを含む。
【0005】
極低温保存状態からサンプルを戻すことは、サンプルを完全に液体状態に解凍することを伴う。解凍プロセスの間、ここでも温度変化速度は、極低温で保存された細胞の生存率に影響を与える可能性がある。サンプル貯蔵容器の固体内容物は、氷晶の小さな核と相互混合されたガラス状態の水性溶質のチャネルによって挟まれた結晶水の大きな島を含む。極低温貯蔵温度から完全な液体状態への相変化の終わりまでの遷移中、細胞内の小さな氷核の熱力学的に有利な伸長を含むサンプル内での水分子の再配列の機会がある。細胞内氷晶の成長は、細胞損傷に関連する可能性があり、かつ結晶成長の程度は、時間に依存する現象であるので、相変化を介する遷移の時間間隔を最小化することが望ましい。サンプル容器温度における急速なスルーレートは、通常、約37°Cの温度に設定された槽(湯煎)に容器を部分的に浸すことによって達成される。湯煎(bath)の温度を上げることによって、より速い解凍速度を達成することができるが、槽内に容器を浸すことで、最高温度が容器壁で示される状態で容器内の温度傾度が確立される。その結果、凍結した物質が近接して存在していても、液固混合物の温度が融解温度を超える一時的な熱力学的状態が発生する。したがって容器内の温度傾度は、湯煎温度に上限を置く。加えて、一般的な凍結保護剤は、既知の毒性影響を細胞に与えることから、時間及び温度に関する液体状態の細胞の異なる暴露は、解凍プロセスの完了時における細胞の生存率の変動を可能にする。凍結保護剤の毒性効果は、高温で増強されるため、より低い液体温度が望ましい。このため、一般的な解凍プロトコルは、通常、サンプル容器に少量の固体材料が依然として残っているときに終了する急速解凍段階を含む。湯煎から取り出した後、サンプル温度は、相変化温度に近い温度にすばやく平衡化するだろう。解凍プロトコルは、通常、凍結保護剤が濃縮された状態に解凍されたサンプルが保持される期間を最小にすることを求め、そしてサンプルを希釈する、又は凍結保存培地を培地と交換する後続のステップは、一般にできるだけ短い間隔で適用される。
【0006】
サンプルの解凍を自動化するために、幾つかの解凍デバイスが提案されているが、特にバッグ形式凍結保存容器(「クライオバッグ」と呼ばれる)に貯蔵されるサンプルに関しては、さらに改善される可能性がある。
【発明の概要】
【0007】
クライオバッグに貯蔵された細胞を解凍することに関し、従来の方法は、最後の氷片がほぼ溶ける温度ぐらいまで温かい湯煎(例えば37°C)において細胞をすばやく温め、その後、成長培地へ細胞をゆっくりと希釈する。サンプルが温かくなりすぎると、細胞は代謝を開始し、凍結プロセスでよく使用されるジメチルスルホキシド(DMSO)によって毒されることがある。一般に、極低温で保存された細胞及び組織の解凍は、検査技師によって実施され、適用されるプロトコルは、検査技師間で異なり得るだけでなく、技巧に依存することもある。サンプル解凍の完了は、一般にそれぞれ個々の技師によって主観的に判断され、その結果、解凍速度の変動又は温かくなりすぎたサンプルが生じることがある。反復可能な解凍プロファイルは、湯煎を使用してクライオバッグの挿入を手動で制御することで達成することが理論的には可能であるが、特に、凍結状態を監視するために、クライオバッグを頻繁に湯煎から取り出す必要性と組み合わせた、プロトコル適合度及び技術の両方において予想される変動は、標準プロファイルからの逸脱をほぼ確実にする。湯煎からクライオバッグを取り出すことは、湯煎水からクライオバッグへの熱エネルギーの伝達が中断され、解凍状態の視覚的評価は、しばしば困難になり、及び、クライオバッグ製品と一体化した外観として設けられるラベル及び印刷された筆記面の存在によって複雑化され得る。さらにまた、槽は汚染源であり、クライオバッグのシーリング接合部における不注意な浸漬の結果、クライオバッグのシーリング接合部を開いたり取り外したりする間に、クライオバッグの内容物に湯煎の液を取り込んでしまう可能性がある。
【0008】
単純化され、自動化された、及び/又はより一貫したサンプル解凍を提供するシステム、デバイス、及び方法は、有利であり、細胞回収(回復)率を高めることができる。幾つかの解凍デバイス及び方法が提案されているが、さらなる改善が望ましくなり得る。例えば、幾つかの例では、特に大きな細胞及び/又は多細胞生物を解凍するときに、熱伝導率を高めることが有利になり得る。加えて、解凍デバイスの携帯性を高めて、生細胞又は生物を使用した遠隔ワクチン接種などの野外用途でデバイスが使用され得ることも有利になり得る。本開示の実施形態は、これらの問題のうちの1つ又は複数に対処し得る。
【0009】
幾つかの実施形態では、開示するサンプル解凍デバイスは、バッグ形式容器内の凍結したサンプルを解凍するように構成され、ハウジングと、上部ヒータプレートを支持するカンチレバーアセンブリであって、ここで上部ヒータプレートは、複数の第1抵抗ヒータに熱的に結合される上面を有する、カンチレバーアセンブリと、開(伸長した)位置と閉(後退した)位置との間で動作可能な引き出しアセンブリであって、該引き出しアセンブリは下部ヒータプレートを支持し、ここで下部ヒータプレートは、バッグ形式容器を受け入れるように構成される上面、及び、複数の第2抵抗ヒータに熱的に結合される底面を有する、引き出しアセンブリと、下部ヒータプレートに埋め込まれる1つ又は複数の熱センサであって、該熱センサのそれぞれは、下部ヒータプレートの上面に露出する絶縁ディスク内で中心に置かれる接点ディスクを有する、1つ又は複数の熱センサと、を備える。
【0010】
バッグ形式容器サンプル解凍デバイスの幾つかの態様では、複数の第1抵抗ヒータの部材は、独立して制御可能であり、上部ヒータプレートの局所領域の温度を制御するように適合される。同様に、他の態様では、複数の第2抵抗ヒータの部材は、独立して制御可能であり、下部ヒータプレートの局所領域の温度を制御するように適合される。幾つかの態様では、上部ヒータプレートは、バッグ形式容器をしっかり締め付け、バッグ形式容器に圧力を加えるように構成される底面を有する。さらなる態様では、サンプル解凍デバイスは、カンチレバーアセンブリのクランプ動作を駆動するように構成されるねじ駆動モータと、引き出しアセンブリを開位置と閉位置との間で駆動するように構成される引き出し駆動モータと、をさらに備える。他の態様では、サンプル解凍デバイスは、振動する揺動運動において上部ヒータプレートを駆動するように構成される揺動モータをさらに備える。幾つかの実施では、1つ又は複数の熱センサは、下部ヒータプレートの横方向の中央線に沿って直線的に配置される。幾つかの実施形態では、サンプル解凍デバイスは、タッチスクリーンインターフェースと、制御ユニットであって、タッチスクリーンインターフェースを介して命令を受け入れるように構成され、複数の第1抵抗ヒータの温度又は給電、複数の第2抵抗ヒータの温度又は給電、又はそれらの組み合わせを調節するフィードバック回路を制御するように構成される、制御ユニットと、をさらに備えることができる。幾つかの態様では、絶縁ディスクは、半硬質発泡体材料であることができる。他の態様では、サンプル解凍デバイスは、10mlから500mlのサンプル容量のバッグ形式容器を受け入れるように構成される下部ヒータプレートを有することができる。
【0011】
他の実施形態では、開示するサンプル解凍システムは、クライオバッグ内の凍結したサンプルを解凍するように構成され、カンチレバーアセンブリによって支持される上部ヒータプレートであって、該上部ヒータプレートは、上部ヒータプレートの上面に取り付けられる2つ以上のマットヒータを有する、上部ヒータプレートと、クライオバッグを支持するように構成され、引き出しアセンブリに存在する下部ヒータプレートであって、該下部ヒータプレートは、下部ヒータプレートの底面に取り付けられる2つ以上のマットヒータを有する、下部ヒータプレートと、複数のセンサアイランドであって、下部ヒータプレート内に位置し、(クライオバッグが存在する場合)下部ヒータプレートに着座するクライオバッグの温度を測定するように構成及び配置される、複数のセンサアイランドと、上部ヒータプレート及び下部ヒータプレートに取り付けられるマットヒータのそれぞれを制御するように構成される制御ユニットと、クライオバッグ内に保持されるサンプルに関するサンプルデータを収集及び伝送するように構成される通信モジュールと、を備える。
【0012】
他の実施形態では、本開示は、バッグ形式容器における凍結したサンプルを解凍するための方法であって、バッグ形式容器を、サンプル解凍デバイスの開いたサンプル引き出しに入れ、下部ヒータプレート上に装填するステップと、サンプル引き出しを閉じるステップと、カンチレバーアセンブリによって支持される上部ヒータプレートでバッグ形式容器をしっかりクランプする(締め付ける)ステップと、下部ヒータプレートと上部ヒータプレートの間にバッグ形式容器を保持するステップと、下部ヒータプレート及び上部ヒータプレートの両方でバッグ形式容器を加熱するステップと、バッグ形式容器の1つ又は複数の場所において温度を測定するステップと、温度測定からのフィードバックに基づいて下部ヒータプレート及び上部ヒータプレートの両方の温度を調整するステップと、測定された温度が閾値に到達したときにバッグ形式容器の加熱を終了するステップと、を含む、方法を対象とする。
【0013】
この特許によってカバーされる発明の実施形態は、この概要ではなく、特許請求の範囲によって規定される。この概要は、発明の様々な態様の高いレベルでの概要であり、以下の詳細な説明欄では、さらに説明する概念の幾つかが紹介される。この概要は、クレームされた主題の重要な又は本質的な特徴を特定することを意図せず、クレームされた主題の範囲を決定するために単独で使用されることも意図しない。その主題は、この特許の明細書全体の適切な部分、任意の又はすべての図面、及び各請求項を参照することによって理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本開示の例示的な態様は、以下の図面を参照して以下で詳細に説明される。本明細書で開示する実施形態及び図は、制限的ではなく例示的であると見なされることを意図する。
【0015】
【
図1A】
図1Aは、様々な実施形態による、サンプル解凍装置外観の斜視図である。
【
図1B】
図1Bは、
図1Aに示すサンプル解凍装置の図であり、サンプル引き出しが延ばされ、取り外された上部シェルが下部シェル及び内部部品の上方にある、図である。
【
図2】
図2は、
図1Aに示すサンプル解凍装置の斜視図であり、様々な実施形態による、シェル外側の上部が取り外されている図である。
【
図3】
図3は、様々な実施形態による、
図2に示すサンプル解凍装置の左上視点からの図である。
【
図4】
図4は、様々な実施形態による、発明の特有の部分及びアセンブリを見せるように装置のさらなる部分が選択的に取り外された、
図3に示すのと同じ斜視視点の図である。
【
図5】
図5は、
図4に示す装置の一部におけるより後方の図である。
【
図6A】
図6Aは、様々な実施形態による、発明の特有の部分及びアセンブリを見せるように装置のさらなる部分が選択的に取り外された、
図5に示す装置の上側の左後方図である。
【
図6B】
図6Bは、様々な実施形態による、発明の特有の部分及びアセンブリを見せるように装置のさらなる部分が選択的に取り外された、
図5に示す装置の下側の左後方図である。
【
図7】
図7は、様々な実施形態による、発明の特有の部分及びアセンブリを見せるように装置のさらなる部分が選択的に取り外された、
図6に示す装置の上側の右前方図である。
【
図8】
図8は、様々な実施形態による、熱センサの断面図である。
【
図9】
図9は、容器内側に埋め込まれ、内面に取り付けられた熱電対センサから収集された、市販のクライオバッグ容器内側の凍結した内容物の解凍中の温度データの経時的グラフである。
【
図10】
図10は、容器が接触状態にあるヒータプレートに埋め込まれた熱電対センサから収集された、市販のクライオバッグ容器内側の凍結した内容物の解凍中の温度データの経時的グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態の主題は、具体的にここに説明されるが、この説明は、必ずしも特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。請求される主題は、他の方法で具現化されてもよく、異なる要素又はステップを含むこともでき、他の既存又は将来の技術と組み合わせて使用されてもよい。この説明は、個々のステップの順序又は要素の配置が明示的に説明されている場合を除き、様々なステップ又は要素の中の、又はそれらの間の特定の順序又は配置を暗示するものとして解釈されるべきではない。
【0017】
本開示は、関連するデバイス、システム、及び方法とともに、有機サンプルの熱的制御及び/又は解凍に関する様々な実施形態を記述する。本技術の様々な実施形態の完全な理解を提供するために、以下の記述及び図面において、信頼できる詳細が記載されている。しかしながら、加熱及び/又は冷却プロセス、モータなどにしばしば関連する既知の構造及びシステムを説明する他の詳細は、本技術の様々な実施形態の説明を不必要に曖昧にすることを避けるため以下に記載されない。図に示す詳細、寸法、角度、及び他の特徴の多くは、特定の実施形態の単なる例示である。したがって、他の実施形態は、本発明の精神又は範囲から逸脱することなく、他の詳細、寸法、角度、及び特徴を含むことができる。本技術の様々な実施形態は、図に示された構造以外の構造も含むことができ、図に示された構造に特に限定されない。さらに、図に示されている様々な要素及び特徴は、縮尺通りに描かれていないことがある。図において、同一の参照番号は、同一又は少なくとも全体的に類似の要素を同一に扱う。
【0018】
本明細書で使用する「実質的に(substantially)」という用語は、動作、特徴、特性、状態、構造、項目、又は結果の完全又はほぼ完全な範囲又は程度を指す。例えば、別の物体に対して「実質的に」高さが均一な物体は、それらの物体の高さが完全に又はほぼ完全に均一であることを意味する。絶対的完全性からのずれの正確な許容程度は、幾つかの場合では具体的な文脈に依存し得るが、一般的に言えば、完全性の近さは、あたかも絶対完全性及び総合的完全性が得られるかのように同じ全体結果を有するようなものである。
【0019】
本開示及び特許請求の範囲を通して使用される場合はいつでも、「概ね(generally)」という用語は、「およそ(approximately)」もしくは「近く(closely)」又は「近傍又は範囲内(within the vicinity or range of)」の意味を有する。本明細書で使用する「概ね」という用語は、修飾するために選択された用語の曖昧な又は不正確な拡張を意図するものではなく、むしろ、添付の特許請求の範囲を別の形で実施することを望み、些細な、又は重要でない、又はわずかな変化によってそれらを回避することを探し求める者に向けられた明確化及び可能性のある穴埋めを意図するものである。そのような些細な、又は重要でない、又はわずかな変化はすべて、「概ね」という用語を使用して、添付の特許請求の範囲の一部として包含されなければならない。
【0020】
本明細書で使用する「約(about)」という用語は、与えられた値が示された値よりも大きくても小さくてもよいことを提供することにより、数値範囲の終点に柔軟性を提供するために使用される。特に、「約」で修飾された与えられた値は、その値から±10%もしくは±10%内にあり得る。
【0021】
本明細書で使用する単数形「1つ(a)」、「1つ(an)」、及び「その(the)」は、文脈からそうでないことが明確に示されていない限り、複数形も含むことを意図する。本明細書で使用されるとき、「含む(includes)」及び/又は「含んでいる(including)」という用語は、述べられた特徴、整数、ステップ、操作(動作)、要素、及び/又は構成要素(部品)の存在を明記するが、1つ又は複数の他の特徴、整数、ステップ、操作(動作)、要素、部品(構成要素)、及び/又はそれらのグループの存在又は追加を排除しないことは、さらに理解されよう。
【0022】
本発明の幾つかの実施形態では、湯煎におけるクライオバッグ容器の完全又は部分的な浸漬とは対照的に、クライオバッグ外側との直接的な液体接触を排除することができる。したがって、本開示の多くの実施形態では、クライオバッグの外面(これは、容器の外面に加えて、ラベル又はシュリンクラップ(収縮包装)スリーブ、又は二次封じ込めバッグなどの積層を含むことができる)は、例えば、ヒータプレートとして成形され配置された固体材料とのみ接触するだろう。幾つかの態様では、容器外側と接触している固体材料は、同質固体であることができるが、他の場合では、固体材料は、複合材料であることができる。幾つかの実施形態では、固体材料は、アルミニウム、銅、亜鉛、マグネシウム、チタン、鉄、クロム、ニッケル、炭素、又は同じ元素の合金から形成することができる。幾つかのこのような態様では、固体材料の熱伝導率は、1メートルケルビンあたり10ワット(κ>10.0W/(m・K))を超えることができる。他の実施形態では、固体材料は、ポリマー又はセラミックなどの合成材料から形成することができる。さらなる実施形態では、固体材料は、シリコーンポリマー発泡体又はパテなどの合成熱導電性柔軟材料から形成することができる。幾つかのこのような態様では、固体材料の熱伝導率は、1メートルケルビンあたり0.2ワット(κ>0.2W/(m・K))を超えることができる。幾つかの態様では、固体材料は、材料の組み合わせ、例えば、限定ではないが、導電性柔軟材料及び金属合金から形成することができる。
【0023】
幾つかの実施形態では、サンプル容器を保持し、接触するためのヒータプレートとして形成される固体材料は、固体材料の温度を上昇させる目的の、1つ又は複数のヒータ要素を含み、その結果、サンプル容器がヒータプレート上に又はその間に置かれたとき、熱エネルギーは、固体材料からサンプル容器に移動する。様々な態様では、ヒータプレートに機械的に及び/又は熱的に接続されるヒータ要素は、電気抵抗ヒータ又は熱電素子ヒータであることができる。他の態様では、ヒータプレートは、代わりになる物として熱電素子によって加熱及び冷却することができる。さらなる態様では、ヒータプレートは、アセンブリの温度を検出し、アナログ又はデジタル信号をマイクロコントローラに提供することができる1つ又は複数の温度センサを含むことができる。マイクロコントローラは、温度測定信号を読み取り、それによって、ヒータプレートの温度を所望の温度に維持するために、ヒータ要素に供給される電力レベル又はデューティサイクルを調節するように構成される。
【0024】
本明細書に開示する解凍デバイス用の典型的な動作温度は、開示する装置が既存の経験的なプロトコルにおける槽(湯煎)の性能を置き換える用途で使用される可能性が高いことから、37℃以上であろう。本解凍デバイスによって達成可能な動作温度の範囲は、標準的な槽(湯煎)よりもはるかに広く、はるかに容易に制御される。幾つかの態様では、初期動作温度は、30℃から60℃の範囲内に設定可能、又はその範囲内の温度の任意の増分又は傾度で設定可能である。他の態様では、初期動作温度は、45℃から50℃の範囲内に設定することができる。本解凍デバイスは、ある運転動作温度でプロセスを開始し、そして、凍結したサンプルが目標温度に適切に到達するようにシステムの温度を調整できることを理解されたい。
【0025】
幾つかの実施形態では、ヒータプレートは、セグメント化され、輪郭形成され、突起を含み、異なる材料で作られ、又はそのような特性の組み合わせを有する、ことができる。ヒータプレートの構造のバリエーションにより、解凍プロセスの間、ヒータプレートのセクションにおいて意図的に、不均一な又は局所的な制御が提供可能である。
【0026】
幾つかの実施形態では、ヒータプレートは、ヒータプレート材料から熱的に絶縁されるが、ヒータアセンブリ内に受け入れられたサンプル容器の外面と接触するように位置決めされた1つ又は複数の温度センサを含むことができ、その結果、サンプル容器の表面における温度を確認でき、経時的に追跡することができる。様々な実施形態では、容器センサは、熱電対、サーミスタ、抵抗温度検出器(RTD)、又は非接触赤外線センサであることができる。
【0027】
-150°Cから-196°Cの範囲における極低温での貯蔵は、生細胞懸濁液を無期限に保存するために一般的に適用される方法である。この温度範囲内で、単一細胞及び多細胞生物さえも、安全に保存され、その後、適切な解凍技術を適用することによって生物学的に活性な状態に戻されることができる。細胞内の氷晶の形成によって細胞膜及び細胞小器官に与えられた損傷を受けると、凍結状態を介する遷移は、ほとんどの真核細胞種にとって壊滅的である。幾つかの特殊な生物は、前処置手段(means of preparative conditioning)を進化させ、凍結状態を介した遷移に耐えるように順応しているが、哺乳類細胞は、細胞死が一般的な結果である凍害を極めて受けやすい。それにもかかわらず、単一細胞又は細胞の小さな多細胞集合体が適切に前処理(prepared)されるときには、凍結状態の生存は可能であるだけでなく、ごく当たり前となる。このような調整(conditioning)は、通常、様々な製剤が存在する凍結保存溶液に細胞を懸濁することを含むが、ほとんどの場合、氷晶の形成を妨げる有機溶媒、緩衝液、及び凍結プロセスの間に細胞を脱水する塩溶液、を含むことが一般的であり、それによって細胞内側の結晶水の存在及び範囲を最小化する。凍結プロセス間の細胞の脱水は、凍結解凍サイクル後の最終的な生存率にとって重要となり得るため、細胞凍結の速度は、凍結が進行するにつれてますます濃縮される塩溶質が細胞から水を適切に引き出すための時間を割り当てるように制御されねばならない。
【0028】
凍結速度が、凍結された細胞懸濁液の適切な前処理(preparation)に重要であるのと同じように、解凍速度は、極低温で保存された細胞の生存率に直接影響を及ぼし得る。極低温から液相線温度への遷移中、およそ-50°Cから0°Cの温度範囲に出会い、ここでは分子の動きは抑制されるが、それにも関わらず現存し、この温度範囲内で、微小な氷晶は、移動して、細胞損傷の可能性が増す、より大きな分子構造に再形成されるかもしれない。したがって、この温度範囲を通過する遷移時間は、氷晶の再形成の機会が最小化されるように、できるだけ短いことが望ましい。凍結された細胞を解凍状態に戻すために適用される速度の典型的な目標は、「できるだけ早く」である。
【0029】
凍結細胞用の理想的な貯蔵容器の選択に重要な様々なパラメータが存在するけれども、解凍速度は、典型的に重要な考慮事項である。10mLから500mLの範囲における多くの細胞に関して、一般的にクライオバッグ容器が選択される。様々な実施形態において、本解凍デバイスは、25ml、50ml、250ml、500ml、750ml、1000ml、又は2000mlの容積を有するクライオバッグの内容物を収容し解凍することができる。凍結保存のために、そのようなバッグ形式容器は、概ね、容量まで満たされていないことが理解される。
【0030】
一例として(限定するものではない)、-77°Cの低温に平衡化されたクライオバッグが、45°Cのより高温に平衡化されたヒータプレートアセンブリに挿入されたとき、熱エネルギー再分配のプロセスが始まり、最終的には、混ぜ合わさった集団を共通の温度にする。ヒータプレートアセンブリの温度が、例えば45°Cに能動的に維持されている場合には、結合された集団の温度は、時間の経過とともに45°Cの温度で平衡化する。熱エネルギー再分配パターンは、ヒータプレートから混ぜ合わさった集団の中心面に向かう内向き方向における熱エネルギーの移動又は流れと考えられ得る。
【0031】
バッグ形式貯蔵容器は、貯蔵可能な流体の体積が、極低温にあるときの衝撃破壊に対する脆弱性につながり得る機械的安定性及び素材の壁の薄さの代償として向かってくるという幾つかの課題を提示する。さらに、このようなシステムの熱経路には、熱源-容器の接触面という形で更なる抵抗源が存在する。任意サイズの隙間は、どんなに小さくても、経路に熱抵抗を導くので、隙間を排除又は削減することで、熱エネルギーの伝達効率は、改善される。凍結するときに材料を保持するいずれのバッグも、バッグのセッティング及び形状に少なくとも幾つかのバリエーションを有するので、当接面には、クライオバッグ容器とヒータプレートとの間で解消することが不可能である小規模(エアーギャップ)な不完全性、欠陥(imperfections)が存在する。本ヒータプレートアセンブリの状況における解決策は、解凍サイクルの開始後比較的すぐに、解凍プロセス中、さらに氷晶形成を不能とし最小化しながら、クライオバッグがヒータプレートの表面に一致するように、解凍速度を制御することである。ヒータプレートがバッグ形式容器を平らにするために、いくらかの力が加えられない場合には、サンプル容器の外側とヒータプレートとの間に、過剰に長い時間、隙間が残存するだろう。適切な力の付加がない場合、熱源-容器の接触面における熱伝導率は、最適化されず、したがって熱源と容器との間に与えられた温度差に関する熱エネルギー伝達速度は、正確には計算されないだろう。
【0032】
逆に、バッグ形式貯蔵容器は、流体貯蔵に関して幾つかの利点を提示する。クライオバッグ容器は、通常、一般的に耐穿刺性でヒートシール可能な材料で構成される。クライオバッグ容器は、棚にある本のように保存可能であるカセットにおいてこれらが平らに凍結されるので、効率的に貯蔵、保存することができる。本解凍デバイスが活用する特別な利点は、容器の中心正中線(core midline)までの熱経路がほぼ常に最大約0.2インチであり、このことは、体積と表面積との比較的大きな比と組み合わされて、クライオバッグの内容物を迅速に解凍することを可能にするということである。さらに、そして実験目的のために、クライオバッグ容器は、概ね、容器の流体及び/又は凍結した内容物に浸出し得る化学物質を含まない。
【0033】
一部のクライオバッグ容器に関して、熱の再分配が、サンプル内の細胞の完全性を維持するのに十分な又は理想的な速度で、流体量を平衡化しないことがある。したがって、幾つかの態様では、サンプルの全量が目標時間範囲内で解凍されて目標温度に到達することを保証するために、物理的な揺動が内部モジュールを介してクライオバッグ容器に適用することができる。任意の与えられたサンプルを解凍するための目標時間範囲は、クライオバッグ容器のサイズ、サンプルの開始温度、クライオバッグ容器内のサンプル流体の体積、クライオバッグ容器の内容物の熱容量、及びクライオバッグ容器内の内容物の特性(例えば、細胞の種類、サンプル流体に加えられた極低温保存剤又は溶質の量、流体体積内の細胞の密度など)に依存可能である。
【0034】
幾つかの態様では、クライオバッグ内に保持されたサンプルの内容物を識別するために、クライオバッグは、バーコード、QRコード(登録商標)などでラベルを付けることができる。したがって、解凍システムは、そのようなコードを読み取り、それによってクライオバッグのサンプル内容物を識別する視覚センサを含むことができ、そのデータは、次いで、クライオバッグの対応する解凍時間を計算するために使用される。
【0035】
図1Aは、解凍ユニット100の外面を示している。解凍ユニット100は、機器の両側の継ぎ目130で接して下部シェル110と接合する上部シェル105で形成された成形シェルにおいて囲まれている。内部引き出し構造に取り付けられた前部パネル115は、機器の前面を覆い、後部パネル135は、機器の後面を覆う。幾つかの態様では、前部パネル115は、引き出し面の一部が内部引き出し構造に直接取り付けられ、内部引き出し構造とともに移動可能であるように、水平に(前部パネル115の幅にわたって)分割され得る。幾つかの実施形態では、下部シェル110における指先凹部120は、必要に応じて、例えば、機器への電源が失われた場合に、内部引き出しの手動前進を可能にするために設けられている。
【0036】
様々な態様では、上部シェル105及び下部シェル110はそれぞれ、プラスチック、合成又はポリマー材料、セラミック、金属、又はそれらの組み合わせで個々に形成することができる。解凍ユニット100は、同じ又は異なる材料で形成された上部シェル105及び下部シェル110を有することができる。幾つかの態様では、上部シェル105及び下部シェル110は、それぞれ合成プラスチックで形成することができ、さらに特定の色、質感、又は他のそのような装飾などの表面的な特徴を有することができる。幾つかの態様では、上部シェル105及び下部シェル110は、摩擦又はスナップ機能によって、又はねじ留め具によって、互いに機械的に結合することができる。
【0037】
幾つかの実施形態では、上部シェル105は、固定角カウル125に位置決めされたタッチスクリーンインターフェース140を含む。他の実施形態では、タッチスクリーンインターフェース140を有するカウル125は、ヒンジ構造によって上部シェル105に取り付け可能である独立した及び/又は分離可能な容器であってもよい。幾つかの態様では、ヒンジ構造は、タッチスクリーンインターフェース140の移動を単一軸に制限することができ、他の態様では、タッチスクリーンインターフェース140の複雑な位置決めを可能にするため、多軸ヒンジアセンブリを設けることができる。タッチスクリーンインターフェース140は、カウル125内に又は上部シェル105の一部として他の場所に位置決めされたドライバ回路基板に電子的に接続することができる。上部シェルはまた、外部通信又は記憶媒体へのアクセスを可能にするために、カウル125内にアクセスポート145(例えばUSBシリアルポートジャック)を含むこともできる。
【0038】
幾つかの態様では、上部シェル105及び/又は前部パネル115は、操作者が加熱アセンブリの動作及びクライオバッグ容器解凍プロセスの進行を見ることができる透明な材料(例えば、プラスチック)で形成することができる。透明材料は、ポリマー又は透明プラスチックなどの合成材料、又はガラス又は別の透明材料のものであり得る。そのような態様では、光源(例えば、LED)又はカメラを内部の加熱アセンブリの近くに置くことができる。
【0039】
さらに他の実施形態では、機器は、タッチスクリーンパネルなしで形成することができる。あるいはまた機器は、時間、温度、及び機器の動作に関連する他の態様を設定するために、上部シェル105あるいは下部シェル110のいずれか、又はその両方の外側にボタン又はスイッチなどの制御機能を含むことができる。
【0040】
図1Bは、
図1Aに示したサンプル解凍装置を図示し、サンプル引き出し及び前部パネル115が開位置に延びており、サンプルバッグを受け取る、又はサンプルバッグを取り出すことに利用できる状態にある。上部シェル105は、下部シェル110及び内部部品(以下でさらに詳細に論じる)の上方に持ち上げられて示されている。
【0041】
図2は、解凍ユニット100の内部部品を示し、具体的には、上部シェル105、タッチスクリーンカウル125、タッチスクリーンインターフェース140、及び前部パネル115が除去された状態で、
図1Aの解凍ユニット100を示している。上部ヒータプレート240が示されており、これは、限定されないが、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、ステンレス鋼、炭素繊維、グラフェン材料などの一般的に高い熱伝導率を有する材料で形成することができる。そのような態様では、上部ヒータプレート240は、1メートルケルビンあたり12から400ワット(κ=12-400W/(m・K))の熱伝導率、又はその範囲内の伝導率の増分又は傾度を有することができる。上部ヒータプレート240の上面には、2つ以上のヒータ255が結合されている。幾つかの態様では、ヒータ255は、可撓性のシリコーンマットヒータなどの抵抗ヒータであることができる。他の態様では、ヒータ255は、ヒータプレート240の上面の表面積の大部分を覆うことができる。幾つかの実施形態では、2つのヒータ255は、それらの間に1つ又は複数のサーミスタ257の通路又は配置を可能にする隙間256によって分離される。1つ又は複数のサーミスタ257は、上部ヒータプレート240の温度を監視するためにヒータプレート240に埋め込むことができ、熱測定情報を制御ユニットに提供することができ、それにより、その温度を制御ユニットのフィードバック回路によって制御することができ、このことは、2つのヒータ255に印可されるエネルギーを調節する。幾つかの実施形態では、上部ヒータプレート240の上又は内部におけるヒータ255は、独立した制御回路で作動することができ、それにより、ヒータプレートへの熱入力を能動的に(操作者の入力によって手動で、又はアルゴリズムによって自動的に)調節して、上部ヒータプレート240と接触し得る平坦でない熱シンクに応じて、上部ヒータプレート240の局所領域の温度のバランスをとることができる。幾つかの実施形態では、上部ヒータプレート240の温度のより優れた領域制御を適用するために、上部プレートにおける個々のヒータ255の数は、2つを超える数であってもよく、これによりプレートへの熱入力のより正確な制御及び動的バランスを提供し、その結果、解凍ユニットは、広範囲のサイズ又は容量のバッグ形式容器を受け入れて均等に解凍することができる。
【0042】
幾つかの態様では、ヒータ255は、上部ヒータプレート240の上面におけるヒータ255の場所に基づいて小部分として個別に制御することができる。例えば、上部ヒータプレート240の前方に向いて位置決めされたヒータ255は、上部ヒータプレート240の後方に向いて位置決めされたヒータとは異なる温度で調節されることができる。代替に、又は組み合わせて、上部ヒータプレート240の左側に向いて位置決めされたヒータ255は、上部ヒータプレート240の右側に向いて位置決めされたヒータとは異なる温度で調節されることができる。さらなる態様では、ヒータ255は、上部ヒータプレート240の表面において互いから、及び/又は解凍デバイスの残りの部分から、熱的に絶縁されることができる。
【0043】
ヒータプレート240は、2つの同心リング表面ベアリングによってカンチレバーアセンブリ202に取り付けられ、この表面ベアリングは、2つのカンチレバーアーム205のそれぞれに埋め込まれたシャフトにおいて回転する3つのフランジ付き乾燥軸受250により結合させる。カンチレバーアセンブリ202は、2つのカンチレバーアーム205、隔板210、及び押棒215によって形成されるカンチレバー式クランプ機構と考えることができる。円形の軸受レース245は、ヒータプレート240の動きを、クライオバッグの中央部を通る水平面と、クライオバッグの中心線を通る前部垂直面との交点に一致する軸の周りの回転に制限する。2つのカンチレバーアーム205は、カンチレバーアセンブリを強化し、不均一なクランプ荷重下のアセンブリの歪みを防ぐ2つの隔板210によって接合されている。カンチレバーアーム205は、ベースプレート285にも取り付けられた2つのベアリングブロック(以下の
図3に示す)と接合する2つのピボット225において回転する。カンチレバーアセンブリ202は、全体として、2つのピボットベアリング220を介して両方のカンチレバーアーム205に取り付けられている押棒215によって関節運動される。押棒215は、ねじジャッキ機構290によって生成される力によって関節運動される。
【0044】
標準的な極低温貯蔵バッグのモデルは、上部ヒータプレート240と下部ヒータプレート230との間にクランプされた容器260として示されている。下部ヒータプレート230は、フレームレシーバー235に置かれ、フレームレシーバー235は、伸張性の引き出し265の一部であり、引き出し265と共に可動である。下部ヒータプレート230は、上部ヒータプレート240に関して記載したものと、対応する熱伝導率と共に、同じ又は異なる材料で形成することができる。ねじジャッキ機構290によって生成されたクランプ圧力が解放され、カンチレバーアセンブリ202及び取り付けられた上部ヒータプレート240が上昇すると、引き出し265(及びその中に置かれた容器260)は、ローラベアリングスライドにおいて機器の残りの部分から前方に自由に延びる(以下の
図6Aを参照)。引き出し265の前進及び後退は、任意の適切な貯蔵バッグ(ここでは容器260で表される)を機器に導入し、かつ機器から取り外すことを可能にする。
【0045】
さらに上部シェルに取り付けられる画像制御回路基板280が示され、これは、タッチスクリーンインターフェース140及び/又はアクセスポート145に電子的に接続可能な別個の非一時的なコンピュータ可読媒体を含む。これもまた別個の非一時的なコンピュータ可読媒体を含む周辺回路基板295は、機器の機械的な及び電気的なパワー部品を管理するマイクロコントローラを含む。解凍ユニット100は、電源コード及び電源スイッチインターフェースモジュール270と、冷却ファン292と、配線リンクチェーンハーネス265(体積充填プリミティブ要素として示す)と、をさらに含むことができる。
【0046】
図3は、解凍ユニット100の内部部品を示しており、具体的には、
図2のような解凍ユニット100を、ねじジャッキ機構290の部品に焦点を当てた視点から示している。示されているのは、ウォームギア機構310を駆動するねじ駆動モータ305であり、モータのシャフトは、次にねじシャフト320に接合されるカプラ315によって接合される。ねじシャフト320は、4つのばね付勢ねじ330を介して押棒215に取り付けられたねじフランジ付きスリーブ325に結合する。ねじ320の回転方向に応じて、カンチレバー式アーム205は、上部ヒータプレート240と下部ヒータプレート230との間に置かれた対象物をクランプ又は解放する。ロードセル355が、モータ305とねじジャッキアセンブリ290の支持ベース360との間に位置決めされる。無負荷状態では、ロードセル355におけるウォームギア機構310の圧力は、ウォームギアハウジング310と支持ベース360との間で圧縮された4つのばね365によって無力、中立にされる。幾つかの態様では、支持ベース360は、ベースプレート285に直接取り付けられるベアリングブロック370に埋め込まれたピボットブッシングを介して、機器ベースプレート285に取り付けることができる。他の態様では、ベアリングブロック370は、中間装着構造を介してベースプレート285に取り付けることができる。
【0047】
容器260の外面における上部ヒータプレート240と下部ヒータプレート230との間の接触面の熱伝導率(κ)は、接触面に加えられる圧力に部分的に依存可能であることを理解されたい。したがって、ねじジャッキアセンブリ290によって駆動されるような、クランプカンチレバーアセンブリ202の係合及び係合解除は、ヒータプレートからクライオバッグ容器260への熱エネルギー伝達速度の制御の度合いを提供する。したがって、カンチレバーアセンブリ202及びねじジャッキアセンブリ290の制御により、上部ヒータプレート240及び下部ヒータプレート230は、選択可能な圧縮力でクライオバッグ容器260に圧力を作用させることができる。クランプカンチレバーアセンブリ202を介してヒータプレートと容器260の外面との接触面に加えられる均一な力の結果得られる、上部ヒータプレート240及び下部ヒータプレート230からクライオバッグ容器260への熱エネルギー伝達の正確な制御は、熱エネルギー伝達速度を、したがって解凍終点時間を計算可能な値にする。解凍終点時間の決定時に、クランプカンチレバーアセンブリ202からの容器260の解放は、ねじジャッキアセンブリ290からの圧力を解放する、又は引き戻すことによって達成することができ、これは、制御ユニットのフィードバック回路によって制御することができる。ねじジャッキアセンブリ290の力が解放され、上部ヒータプレート240が容器260に圧力をかけるのを解除すると、引き出しは、ラッチを外して開くことができ、容器260を取り外すことができる。
【0048】
図4は、解凍ユニット100の内部部品を示し、具体的には、上部ヒータプレート240用の揺動機構の部品を示している。揺動ギアモータ415は、装着ブラケット410によってベースプレート285に装着される。ギアモータ415のシャフトに取り付けられている偏心クランク420は、垂直振動でリニアベアリングブロック425を駆動し、ベアリングブロック425は、クランク420の回転に応じて上下に移動する。ベアリングブロック425は、ばねレバーアーム430に装着され、ばねレバーアームは、角度装着ブラケット435で終端し、角度装着ブラケット435に機械的に取り付けられる。角度装着ブラケット435は、次に上部ヒータプレート240に取り付けられる。ばねレバーアーム430を上げ下げすることは、上部ヒータプレート240に揺動運動を誘発し、この揺動運動は、機器によって保持された容器260の液体内容物を混合するように機能することができる。解凍シーケンスの開始では、容器260の内容物は、おそらく固体状態であり、そのため、プレート240と230との間にクランプされるとき、上部ヒータプレート230は、容器の剛性のために動きが制限され、また、クライオバッグ容器260の内容物が温度の上昇によって誘導される部分的な融解からある程度の可塑性を得るまで、揺動することができないだろう。したがって、レバーアーム430のばね動作は、ヒータプレートの揺動運動が制限されている間、クランク420の回転運動を継続することを可能にする。偏心クランク420アームの端部には、周辺回路基板295に装着された光ゲートを始動可能なフラグ422が取り付けられている。フラグ422によってトリガーされる光ゲート信号は、適切な回転角度においてギアモータを停止させることができ、それによって、カンチレバーアセンブリ202が持ち上げられたとき、上部ヒータプレート240の後縁が、引き出しアセンブリの前方伸長時における引き出し265の動作に干渉せず、又は物理的に衝突しないように、上部ヒータプレート240が適切な又は必要な角度にあることを確保する。
【0049】
様々な態様において、ギアモータ415は、毎分20から120サイクルの周波数で、又はその範囲内の速度の増分又は傾度で、上部ヒータプレート240を振動させるように構成することができる。他の態様では、ギアモータ415は、毎分20サイクル未満の周波数又は毎分120サイクルを超える周波数で上部ヒータプレート240を振動させるように構成することができる。
【0050】
サンプルの解凍プロセスの間、揺動運動により、容器のペイロード(搭載量)において混合振動が導入され、それによってサンプル流体内の熱対流が増加し、熱傾度が減少する。これにより、(1)全体の解凍時間を短縮し、(2)状況によっては、細胞の生存に有害となり得る高温の領域を抑制する、という最終的効果が得られる。流体混合はまた、凍結プロセスによって課される濃縮塩溶液の領域の均質化及び希釈にも役立つ。
【0051】
幾つかの実施形態では、容器260と接触する上部ヒータプレート240及び下部ヒータプレート230の表面は、むき出しの、平らな、金属又は合金プレートである。ほとんどの典型的な凍結保存溶液ではないにしても多くの場合、凍結する塩及び緩衝溶質は、暖められるときに、純水結晶の格子間空間における最も高い塩濃度の共晶材料が最初に融解することで、プロセスを逆転させる傾向があり、これは、より純粋な水の結晶の融解が起こる前に、凍結した材料の構造をゆるめる。言い換えれば、サンプル材料が解凍するとき、それはぬかるんだ状態になる。したがって、本明細書に記載されるクランプ圧力下では、容器表面は、初めには凹凸及び高い接触点を有するかもしれないが、容器の形状は、すぐに平らになり優れた熱的接触を与える傾向がある。
【0052】
むき出しのヒータプレートと容器の表面との間に迎合的な接触が存在すると、それらの表面間に熱抵抗体(シリコーンあるいはパテなど)はなくなり、バッグ容器システムに熱をすばやく導入することができる。そのような態様では、バッグ自体は、ヒータプレートで解凍するため、流体に順応する柔軟な材料と考えることができる。そのような態様では、容器においてヒータプレートによる何らかのクランプ圧力が必要とされる。例示的なシステムでは、45平方インチ(45in.2)の面積を有する9×5インチバッグ(9インチ×5インチ)の場合、約10から20ポンド(10-20lbs.)の圧縮が必要とされ、これは約0.2から0.4PSIになる。初期接点の対に集中された圧力、及び極めて大きな圧力をかける能力により、ヒータプレートへの容器の形状迎合は、解凍プロセスの間、かなり迅速に起こる。
【0053】
大まかに、解凍ユニット100は給電され、それにより、解凍ユニット100の蓋及び引き出しの開閉が、引き出し駆動ギアモータ605によって動作され、並びに、ねじジャッキアセンブリ290によるカンチレバーアセンブリ202の昇降が、ウォームギアモータ305によって動作される。局所的な停電などの緊急事態の間、給電されない機器内に収容されている容器の回収が必要になるかもしれない。解凍ユニット100は、クランプ圧力を利用して効率的な熱伝導を提供しているため、クランプ状態間の停電は、容器取り出しのために機器の引き出し265を開く前に、上部ヒータプレート240及びカンチレバーアセンブリ202を上昇させる必要がある。したがって、本発明の幾つかの実施形態は、カンチレバー解放機構を含む。
【0054】
図5は、解凍ユニット100の内部部品を示し、具体的には、緊急カンチレバー解放機構に焦点を当てている。機械的解放の1つの実施形態では、ねじジャッキアセンブリ290のベースプレート360は、ベアリングブロック370に埋め込まれたブッシングにおいて旋回する。ここで、ベアリングブロック370は、エンドブロック540に装着された2つのレール555を摺動するレールスレッド550に装着され、次にエンドブロック540は、ベースプレート285に取り付けられている。レールスレッド550は、右手の位置決めねじとして示されている位置決めねじ545によって前方位置に保持されている。位置決めねじ545を反時計回りに回転させることにより、レールスレッド550は、機器の後方に向かって後退され、それにより、上部ヒータプレート240と下部ヒータプレート230との間のクランプ圧力が緩和される。位置決めねじ545をさらに反時計回りに回転させると、上部ヒータプレート240及びカンチレバーアセンブリ202が上昇し、それにより、上部ヒータプレート240が上昇して、下部ヒータプレート230が装着された引き出しアセンブリ265の前進運動が可能になる。機器への電力の回復の前又は後に、位置決めねじ545を時計回りに回して、レールスレッド550を前方停止位置まで前方に進めて、機器に完全な正常機能を回復することができる。
【0055】
他の実施形態では、解凍装置は、クライオバッグ容器が破損した場合におけるフェールセーフ構造つまり安全構造を含むことができる。例えば、下部ヒータプレートは、破損した又は密封されていない容器からの解凍液を案内し、収集するための溝又は障壁を含むことができる。幾つかの態様では、下部ヒータプレート及び/又は上部ヒータプレートは、意図しない流体漏れが捕獲及び廃棄システムに正しく向けられることを保証するために、クライオバッグ容器を位置決めするための機能を有することができる。他の代替実施形態では、クライオバッグを二次収容バッグ内に保持することができ、それにより、クライオバッグのいずれの漏れ又は構造的破損は、二次収容バッグ内に流体を収容するようになる。
【0056】
図6Aは、引き出し移動機構の構造に焦点を当てた解凍ユニット100の内部部品を示している。
図6Bは、
図6Aに示す機器サブアセンブリの、ベースプレート285が図から取り除かれた状態での下面図を示している。引き出し駆動ギアモータ605は、装着フレーム610を介してベースプレート285に取り付けられている。タイミングベルトプーリ615が、引き出し駆動ギアモータ605のシャフトに取り付けられ、タイミングベルト620が、タイミングプーリ615、アイドラプーリ642、及びテンションプーリ645に巻き付けられている。タイミングベルト620は、タイミングプーリ615の回転が引き出しを前進及び後退させるように、引き出し(ここでは図示せず)にも取り付けられている連結ブラケット630に取り付けられている。引き出しは、下部ヒータプレート635を支え、引き出しはまた、引き出しを完全に延ばすことを可能にする2つのベアリングスライド640に固定される。
【0057】
図6Bでは、両方のベアリングスライド640だけでなく、タイミングベルト620、連結ブラケット630、タイミングプーリ615、アイドラプーリ642、及びテンションプーリ645の完全な周回を見ることができる。下部ヒータプレート230の下面も見ることができる。下部ヒータプレート230の下面に取り付けられているものとして、前方セットヒータ650及び後方セットヒータ660の2セットのマットヒータが示されている(前方及び後方は、引き出し265が移動しアクセスされる方向に関連して定義される)。前方セットヒータ650及び後方セットヒータ660の各セットは、2つのヒータを有する。他の実施形態では、前方セットヒータ650及び後方セットヒータ660のいずれか又は両方は、2つのヒータよりも多くのヒータを含むことができる。前方セットヒータ650及び後方セットヒータ660のヒータの数により、下部ヒータプレート230の加熱をより正確かつ段階的に制御することができる。さらに、2セットから構成されるマットヒータにより、各ヒータからの熱エネルギー入力を独立的に調整して、低温冷凍容器との接触のような、動的ヒートシンク条件下で下部ヒータプレート230の温度のバランスをとることが可能になる。
【0058】
また、下部ヒータプレート230内に埋め込まれた3つの温度センサ670からの導線も示されている。幾つかの態様では、3つよりも多い温度センサを使用して、下部ヒータプレート230の様々な領域を監視することができる。この図では、下部ヒータプレート230に埋め込まれる複数の容器温度センサのアイランド675の1つの下面を見ることができる。埋め込まれたセンサ670、675と結合され、前方セットヒータ650及び後方セットヒータ660に電力を供給する回路基板680が、下部ヒータプレート230の後方下面に装着されて示される。他の態様では、前方セットヒータ650及び後方セットヒータ660のそれぞれは、互いに、及び/又は解凍デバイスの残り部分から、熱的に絶縁されることができる。
【0059】
図7は、解凍ユニット100の内部部品を示しており、下部ヒータプレート230の構造に組み込まれた温度センサに焦点を当てている。特に、複数の容器温度センサのアイランド675が下部ヒータプレート230の本体に存在してこれを通過し、それにより、温度センサアイランド675は、下部ヒータプレート230の表面に置かれている、又はクランプされた、極低温貯蔵容器の表面温度を監視することができる。複数の温度センサアイランド675は、下部ヒータプレート230の横方向の中央線に沿って分配される。温度センサアイランド675間の間隔は、概ね、2つ以上の温度センサアイランド675と、市販のバッグ容器製品の大部分に相当する標準的な極低温貯蔵バッグ容器との接触を提供する配置である。幾つかの態様では、例えば、比較的小さな表面積を有する25ミリリットルの貯蔵バッグでは、温度センサアイランド675の1つのみが貯蔵バッグと接触することができる。上部ヒータプレート240とは対照的に、下部ヒータプレート230内の温度センサアイランド675の場所は、液相に達すると容器の内容物が、重力により、容器の底側の容器内部に存在するガスポケットを変位させ、それによって内容物と温度センサアイランド675との間に最適な熱経路を提供する、という利点を有する。言い換えれば、クライオバッグにおける気泡は、バッグの上部へ上昇し、バッグの底部は、下部ヒータプレート230の表面において実質的に平らになり、利用可能な熱センサとの接触を最大にする。センサを下部ヒータプレート230に設置する別の利点は、下部ヒータプレート230の位置が静止したままであり、一方、上部ヒータプレート240に設置されたセンサは、解凍プロセスの一部の間、振動を受けることがある、ということである。当然ながら、幾つかの実施形態では、上部ヒータプレート240に位置決めされた熱センサは、特定の容器において熱測定用の特有の場所を目標にするなどの、代わりの利点を提供するかもしれないことが理解される。さらなる実施形態では、温度センサは、熱電対、サーミスタ、IRセンサ、又はRTDセンサであってもよい。
【0060】
サンプル解凍装置全体のさらなる態様は、通信モジュールを含むことができ、この通信モジュールは、非一時的なコンピュータ可読媒体で形成され、解凍デバイスによって保持されるサンプル容器に関する熱データを含むサンプルデータを他のデバイスに送信するように構成される。通信モジュールは、温度センサアイランド675などの、サンプル解凍装置の温度センサと直接結合することができる。通信モジュールはまた、画像制御回路基板280、周辺回路基板295、及びタッチスクリーンインターフェース140と電子的に結合することもでき、機器のすべての態様の制御を可能にする。通信モジュールは、データを並べ替えて表示するために、リモートマイクロプロセッサ(例えばクラウドベースのサーバー又はコンピュータ)と通信するようにさらに構成することができる。通信モジュールはまた、命令データ又はサンプルバイアル識別データを受信し、それに応じてサンプルバイアルの加熱を制御するようにも構成される。
【0061】
図8は、センサアイランドの補助部品を示す下部ヒータプレートセンサ800(あるいは又、「熱センサ」とも呼ばれる)の断面を概略的に示している。下部ヒータプレート230における円筒形凹部に置かれるものは、下部ヒータプレート230と一体構造であり得るリングフランジ805によって支持される絶縁ディスク810である。幾つかの態様では、絶縁ディスクは、熱伝導性材料に取り付けることができ、熱伝導性材料は、さらに、熱電対又は他の温度センサ構造に取り付けられる。幾つかの実施形態では、絶縁ディスク810は、これに限定されないが、下向きの力に対してばね状の抵抗を提供する半硬質発泡体材料から構築することができ、また、0.02から0.15W/(m・K)の範囲の熱伝導率(κ)を有することができる。様々な実施形態では、半硬質発泡体材料は、ポリエチレン発泡体混合物、別のポリマー発泡体、又は発泡体材料のラミネートであり得る。絶縁ディスク810は、上面に、熱伝導性材料の接点ディスク815を受け入れる凹部812を含む。幾つかの実施形態では、接点ディスク815は、銅、銅合金、銀、銀合金、アルミニウム、又はアルミニウム合金から構築することができる(ただし、これらに制限されない)。幾つかの態様では、接点ディスク815は、1メートルケルビンあたり150ワット(κ>150W/(m・K))を超える熱伝導率を有する。幾つかの実施形態では、接点ディスク815の腐食を防止するために、接点ディスク815をニッケル又は金などのコーティングでめっきすることができる。熱電対接合部820が、概ね接点ディスク815の中心で、接点ディスク815の下面に取り付けられる。幾つかの態様では、熱電対接合部820は、はんだ接合部825によって接点ディスク815に取り付けることができる。幾つかの実施形態では、熱電対接合部の代わりに抵抗温度検出器を使用することができる。熱電対導線830は、チャネル835を通って絶縁ディスク810の下面から出る。幾つかの態様では、接点ディスク815は、接着接合部によって絶縁ディスク810に結合させることができる。
【0062】
作動中、凍結したクライオバッグ又はサンプル容器は、熱シンク負荷と見なすことができる。下部ヒータプレート230に置かれている熱シンク負荷は、接点ディスク815と接触し、それにより、ヒータプレート230、絶縁ディスク810、接点ディスク815、及びクライオバッグ容器を含むセンサシステムを通る動的熱流束が生成される。下部ヒータプレート230における1つ又は複数の熱センサ(例えば、温度センサアイランド675)のそれぞれは、
図7に見られるようなセンサシステムを形成することができ、このセンサシステムは、測定されたセンサデータの集合に基づいて個別に又は組み合わせて制御できることを理解されたい。絶縁ディスク810は、センサシステムの最も低い熱伝導率を有するように選択された材料で形成することができ、したがって、下部ヒータプレート230とクライオバッグ容器との間の確立された温度流束の条件下で、熱経路における最大の温度降下が絶縁ディスク810にわたって起こる。結果として、接点ディスク815の温度は、クライオバッグの温度に緊密に合わされる。言い換えれば、温度測定は、下部ヒータプレート230内のそれぞれの熱センサで、クライオバッグの区域に関して比較的、より明確になるだろう。
【0063】
下部ヒータプレート230と接触して置かれた凍結クライオバッグ容器の温度は、急速に上昇し始めるので、下部ヒータプレート230とクライオバッグ容器との間の温度差は減少し、各センサシステムを通る熱流束の大きさは、絶えず変化し、下部ヒータプレート230における各熱センサのところで測定されるとき局所変動を有するかもしれない。その結果、接点ディスク815の温度は、クライオバッグ容器と必ずしも平衡状態に達するとは限らず、むしろ接点ディスク815の温度は、接触バッグと接点ディスク815との接触面領域におけるクライオバッグ容器の温度に関して関連のある代用となるだろう。クライオバッグ容器の温度が上昇し、下部ヒータプレート230とクライオバッグ容器との間の温度差が減少することから、センサ接点ディスク815の温度は、クライオバッグ容器の温度を以下の温度までより厳密に表すだろう。この温度は、クライオバッグ容器の内容物の相変化のほぼ完了時で、接点ディスクの温度がバッグの内壁に装着されたセンサによって記録された温度と±10%の精度で互いに関連付けられる温度である。
【0064】
したがって、センサ接点ディスク815の温度は、クライオバッグ容器の内容物の相変化の完了状態に関する正確で再現可能な測定基準として使用することができる。したがって、センサ接点ディスク815から導出された温度プロファイルの解釈を、機器における解凍シーケンスを制御する解凍アルゴリズムの完了に関する主要な又は排他的なデータストリームとして使用することができる。クライオバッグ容器との複数のセンサ接点の適用(
図7に示すように)は、センサの1つが故障した場合の機能の保証としての冗長センサを提供することに加えて、クライオバッグ容器の温度プロファイルを容器上の異なる場所で測定可能とし、容器内又はヒータプレート内の温度傾度を補償可能であるより複雑なデータ処理アルゴリズムに統合可能にする。
【0065】
解凍装置の様々な使用は、本明細書に記述する例示的な一連の作動を含むが、これらに限定されず、上述の図から理解されるべきである。以下に記述するイベントにおける順番、シーケンス(sequence)は、発明の実施形態に適用され得る可能性のある多くの具体的なイベントの順番の1つを表し、機器の使用に関連付けられ得るイベントの状態、段階、又は順番のいかなる形においても限定することを意図しないことが、認識されるべきである。
【0066】
標準的な凍結クライオバッグ容器の解凍シーケンスの開始時には、クライオバッグ容器260は、機器内に存在しない。カンチレバー押棒215は、ウォームギア及びねじジャッキ機構290によって加えられる原動力の下で後退状態にあり、この状態では、カンチレバー式アセンブリ202全体及び関連する機械的に結合された部品(例えば、ベアリング、ヒータプレート、マットヒータ、サーミスタなど)も後退状態にあり、それにより、上部ヒータプレート240は、下部ヒータプレート230の上方に、2つのヒータプレートの間に隙間を開けた状態で懸架される。2つのヒータプレート間の隙間は、引き出しアセンブリ265の後壁の自由な移動を提供し、具体的には、引き出しアセンブリ265は、上部ヒータプレート240による妨害なしに前方に移動することができる。
【0067】
解凍シーケンスを開始するために、引き出し265の後壁が上部シェル105及び下部シェル110の前縁とほぼ同一平面になるように、引き出しアセンブリ265は、前方に伸長され、それにより、引き出し265の全面及び下部ヒータプレート230がアクセス可能になる。凍結クライオバッグ容器は、ドライアイスあるいは液体窒素などの相変化冷媒を有する絶縁容器などの局所温度管理環境において保持又は準備されることができる。次いで、凍結クライオバッグ容器260は、容器の長寸法中央線が下部ヒータプレート230の長寸法中央線と一致した状態で、下部ヒータプレート230の表面に置かれる。引き出しアセンブリ265の閉鎖及び解凍シーケンスの開始は、タッチスクリーン140におけるタッチ起動式ボタンを介して起動することができ、このとき、引き出しアセンブリ265は、引き出し駆動ギアモータ605の原動力によって閉じられる。あるいはまた、引き出しは、操作者からの手動力で閉じることができ、タッチスクリーンアセンブリは、解凍シーケンスを開始するために使用可能である。引き出しアセンブリ265がしっかりと閉じられると、プログラムシーケンスは、押棒215を前方に移動させるウォームギア及びねじ駆動モータ305を作動させ、それにより、上部ヒータプレート240を含む内部構造のカンチレバー式要素をクライオバッグ容器260上に閉じる。ウォームギア及びねじ機構が押棒215を前方に押し続けるとき、ウォームギアハウジング310は、支持ベース360の方へ変位され、それにより、拘束ロードセル355に圧縮力が導入される。
【0068】
周辺回路基板295マイクロコントローラは、ロードセル355からの信号入力を受けることができ、それにより、周辺回路基板295マイクロコントローラは、上部ヒータプレート240が拘束のクライオバッグ容器260に作用する圧力を調整することができる。圧縮力下で、凍結クライオバッグの予想通りに不均一な表面は、下部ヒータプレート230の補完する表面と共に、複数の点で上部ヒータプレート240の下面と接触する。クライオバッグ容器260が最初にヒータプレートと接触するのは、容器表面の高い点に制限されるが、断続的に生じる接触面積による熱エネルギーの伝達の制限は、一時的なものである。凍結細胞クライオメディアは、通常、水溶液中に塩、緩衝液、タンパク質、凍結保護溶媒、及び他の溶質を含むため、固体から液相への変換イベントは、特定の温度ポイントではなく温度範囲にわたって起こる。結果として、解凍の温度上昇の間、固体材料は、容器表面をヒータプレート表面に一致させることを可能にする圧力下で迎合性を増すと共に、剛性の漸進的な低下を経験するだろう。ヒータプレートとクライオバッグ容器260との間の接触点の表面積は増加し、クライオバッグ表面全体に広がるので、熱伝達の全体的な速度は、最大の接触が達成されるまで改善されるだろう。この時点で、ヒータプレートとバッグ表面との間の接触表面積は、槽に容器を浸すことによって得られるであろう接触の程度に等しくなるだろう。液相の熱伝導率は、固相の熱伝導率よりも低いため、液相の蓄積は、ヒータプレートから容器内容物の固相までの熱経路における熱抵抗を表す。熱伝達速度を遅くすることに加えて、液相は、解凍された細胞を含むため、液体が容器の内壁で停滞しないようにし、細胞の生存に有害な温度まで温め続けないことが必須である。
【0069】
部分的に液相の過度な温度上昇を防ぐために、揺動ギアモータ415によって駆動されるカンチレバーアセンブリ202は、クライオバッグ容器260及びその内容物を動かし続けるように揺動可能である。幾つかの実施では、カンチレバーアセンブリ202の揺動は、30から60秒(30-60秒)で解凍シーケンスに開始することができる。揺動ギアモータ415は、周辺回路基板295マイクロコントローラによって通電され、偏心クランク420により、軸受レース425、そして次にばねアーム430において垂直振動変位が導入される。ブラケット435を介して上部ヒータプレートに取り付けられているばねアーム430の振動運動は、上部ヒータプレート230においてねじり力を生成する。クライオバッグ容器260の内容物が固相にある場合、クランプ圧力下の上部ヒータプレート230は、移動範囲内に制限される。しかしながら、液相が容器内に蓄積し始めると、上部ヒータプレート230における揺動振動は、振幅を増加させ、液相において移動を始め、それによって、両方のヒータプレートと残りの固相との間の熱伝達を促進し、その結果、固相の解凍速度の増加とともに液相内の温度傾度の低減の両方を得る。解凍プロセスが継続し、固相から液相への変換が完了に近づくとき、単なる時間間隔の満了、又はクライオバッグ容器外側から収集された温度測定データ、又はその両方を含むことができるが、これらに限定されないアルゴリズムのトリガーに基づいて、解凍を終了することができる。トリガー閾値に到達すると、周辺回路基板295マイクロコントローラは、ウォームギア及びねじ駆動モータ305を逆転させて、クライオバッグ容器におけるクランプ圧力を解放し、カンチレバー式上部ヒータプレート240を後退させることができる。カンチレバーの後退に続いて、引き出し駆動ギアモータ605は、マイクロコントローラによって通電され、引き出し235を伸長する。引き出し265が完全に延びると、使用者は、解凍されたクライオバッグ容器260を回収することができる。
【0070】
ばね力は、ばね定数及びねじジャッキアセンブリ290に接続されたばね部品の延びの関数であるため、容器表面と共にヒータプレートによって接触がなされる位置において、容器の単位面積あたりの既知で反復可能な力の量が発生可能である。凍結したときの、よって少なくともわずかに凹凸である可能性がある、サンプルバッグ容器の形状の変動性は、サンプルバッグの内容物が実質的に液相になる前の初期期間中に十分な信頼性で説明又は推定することができる。熱エネルギー伝達経路の伝導率が確立された状態で、熱源と容器の温度との間の温度差の調整によって、熱伝導率は、正確に制御することができる。熱伝導率が制御されることにより、容器及び内容物の質量、熱容量、開始温度がわかっている場合には、解凍プロセスの求められる終点が正確に計算され予測可能である。したがって、幾つかの実施形態では、容器内容物への熱計測の持続的な適用がなくても、解凍プロセスの正しい終了を調整することができる。
【0071】
さらに、幾つかの実施形態では、上部ヒータプレート240及び下部ヒータプレート230のいずれか又は両方は、解凍プロセスの間、サンプルバッグの形状を保持する、支持する、又は他の方法で一致させるために、プレートの面から延在する輪郭、隆起、又は他の突出部を有することができる。ヒータプレートのそのような延長部又は外観は、カンチレバー式アセンブリ202によってサンプルバッグに作用される圧力の量と組み合わされて、必要に応じて加熱の均一な分配又は加熱の局所的集中を提供するのを助けることができる。さらに、解凍デバイスの構造及び圧力は、解凍プロセスの間、サンプルバッグ内のサンプルの体積膨張及びサイズ変化を把握可能であり、それにより、サンプルバッグは、構造的完全性を保持する。
【0072】
上の段落で記述した一連のイベントの間、エンドユーザーはもちろん機器のプログラマーは、プロセスの幾つかのバリエーションを利用できることを認識されたい。例えば、幾つかの態様では、クライオバッグ容器のクランプ力の範囲は、ゼロニュートンから100ニュートン(0N-100N)以上の範囲で適用してもよく、クランプ圧力の持続時間及び適用は、解凍シーケンスの間、動的に変更してもよい。他の態様では、ヒータに適用されるワット数は、0から1400ワット以上の範囲であってもよい。他の制御可能な変数は、熱を発生させるために抵抗ヒータに給電される期間、抵抗ヒータに給電されるシーケンスあるいは順序、各抵抗ヒータが一度に給電される配分、又は、これらの組み合わせ、を含む。設置されたヒータの数、及びヒータと接触するヒータプレートの領域は、変化してもよい。さらなる態様では、揺動プレートを介して導入される揺動の開始が調節されてもよく、及び、振動の周波数及び振幅もまた変えてもよい。加えて、例えば下部ヒータプレート230内の、円形の、楕円形の配分、又は配分の他のパターンなど、下部ヒータプレートセンサ675の配置及び数を変えてもよい。したがって、機器は、解凍状況が必要とするように、幅広く複雑な多様な要求に多種多様な応答をもたらすように構成されてもよい。
【0073】
図9は、市販のクライオバッグ容器内の凍結した内容物の解凍中における経時的な実験温度データのグラフを示す。具体的には、
図9のグラフは、複数の充填ポートの1つを通して公称500mlサイズのクライオバッグ容器に導入された、6つの熱電対センサセットから収集された温度データを示している。クライオバッグ容器内では、熱電対センサの接合部はすべて、直径0.125インチ、厚さ0.001インチの銅製ディスクに熱電対接合部を接合する個々のはんだ接合部で終端する。銅製ディスクは、クライオバッグ容器内壁に様々な位置で接着剤によって接合され、ここで様々な位置とは、容器の対向する両内壁に等しく相当するように、クライオバッグにおけるポート機構に対して遠位、中央、及び近位の場所に相当する位置である。クライオバッグは、凍結保存溶液の性能代用として、100ml容量の90%リン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液及び10%DMSOの100mlで充填された。クライオバッグ容器は、-196℃の温度まで平らに凍結され、次いで、プラスチック製のジッパーで密封される前に、殆どの空気を実質的に除去するプラスチック製のオーバエイジ(overage)に挿入される。容器及びオーバエイジは、予め37℃に加熱され、同じ37℃の温度を維持するように自動調節された槽(湯煎)に直ちに浸された。
【0074】
クライオバッグ容器の内容物が解凍されるとき、熱電対センサからの温度データが電子的に収集された。槽(湯煎)での解凍からのデータは、破線で示され、一方、本明細書に開示する解凍装置の実施形態からのデータは、実線で示されている。クライオバッグが最初に槽(湯煎)に浸されたとき、破線の記録集団では急激な上昇を見ることができる。温度上昇の速度は、約50秒で減速し始め、容器の内容物の相変化が始まり固体材料が液化するにつれて上昇速度は、減少し続けた。約250秒で、容器に固体材料の付随する残留物のみが残った状態で、相変化はほぼ完了した。この時点で、クライオバッグ及びオーバエイジは、槽(湯煎)から取り出された。クライオバッグ容器の内容物を解凍するため、槽(湯煎)の代わりに、本明細書に開示する解凍装置の実施形態を使用して、実験プロセスが繰り返された。実線の進行に見られるように、破線での槽(湯煎)データのような割合と同様であるが、データトレースは、わずかに減じられた割合で上昇している。解凍装置を使用した解凍の終了は、外部センサの値がプリセット値に達したときにトリガーされる終了アルゴリズムに基づいて、約280秒(下向きの矢印で示された)で起こった。2つの集団化したセンサトレースの並置は、37℃の槽(湯煎)での速度とほぼ同じ速度で解凍装置が解凍できることを示している。
【0075】
図10は、下部ヒータプレートの中央線に沿って下部ヒータプレートに装着された5つの熱電対センサのセットから収集された、経時的な実験温度データのグラフを示している。センサ1は、最も左端位置(
図7に示すものと同様)に位置しており、その位置は、クライオバッグ容器のネック端部に近位である。実際、ほとんどの標準的なクライオバッグ容器は、本明細書に開示する解凍デバイスの下部ヒータプレートに配置され、クライオバッグ容器の他の部分と必ずしも完全には結合されないネック領域を有する。残りのセンサ2、3、4、5は、センサ5がクライオバッグ容器のネックに対して最も遠位にある状態で、数値の昇順にセンサ1の右側へ配分されている。参考用に示される図は、センサ1、2、3、4、5に関してクライオバッグ容器の位置を明らかにする概略図である。
【0076】
90%/10%PBS/DMSOの100mlの重さを有する公称500mlサイズのクライオバッグ容器が
図9の説明のように凍結され、続いて本明細書に開示する装置において解凍されて、5つのセンサから得られた熱電対温度データが収集され、これは
図10に示されている。下部ヒータプレートセンサのデータが示すように、(
図8に示すような)接点ディスクに関する動的熱流束依存温度、すなわち既定のセンサによって報告される最低温度は、クライオバッグ容器表面との接点ディスクの接触及び結合の程度又は完全性だけでなく、センサに近い下部ヒータプレートと、接点ディスクに接触するクライオバッグ容器の表面温度との間の温度差にも依存する。例示的な500mlのクライオバッグ容器は、5つの下部ヒータプレートセンサのすべてをカバーするのに十分な長さを持っていなかったため、センサ5は、クライオバッグ容器に接触せず、よって、センサを横切る温度差を生成するのに要するヒートシンクを欠き、その結果、プレートにおける他のセンサと比較して、比較的変化のない温度プロファイルになっている。言い換えれば、センサ5は、比較的短いクライオバッグ容器と接触せず、センサ5は、クライオバッグ容器の温度変化を記録しなかった。
【0077】
クライオバッグ容器と接触していたセンサ1から4のデータを見ると、センサ4からセンサ1に進むにつれて、最低温度がより低くなる偏りが見られる。この偏りは、プレートに接触している凍結されたクライオバッグ容器の左に偏った配置のために与えられる不均等の熱負荷に応じて、下部ヒータプレートに確立された温度傾度を反映したものである。下部ヒータプレートに確立された初期の熱傾度にもかかわらず、容器の内容物の解凍が進むと、センサ1-4の温度値は、平衡状態に向かって合体する。したがってその点は、解凍プロセスの終点を決定又は設定するのに使用することができる。この例では、終了閾値は、14℃に設定されており、ここで(センサ1からの)最後の記録(trace)が、約280秒で、解凍状態の終了のトリガーとしての閾値を超える。解凍状態の終了の決定要因としてセンサデータを使用するために、例えば、及び制限的ではなく、最初のセンサトレース(trace)が閾値を超える、センサ値の平均が閾値を超える、又は重み付けられたセンサ値の平均が閾値を超える、などの複数のトリガーアルゴリズムが適用されてもよいことを認識されたい。
【0078】
能動的な下部プレートヒータは、下部ヒータプレートの下面における中央線の両側に位置決めされた2つのマットヒータストリップであり、この中央線は熱センサ配列が置かれるラインと一致しているという実施形態から、
図10に示すデータグラフが得られた。したがって、この実験例では、ヒータストリップの通電又は非通電以外に、下面のヒータプレート230に現れる熱傾度をバランスする選択肢がなかったことを理解することができる。他の実施形態において、追加のヒータストリップが、同様に、細分化されて、又は代替の場所に設置される場合では、解凍プロセスの間に下部ヒータプレートに現れる熱傾度をバランスするため、複数のヒータが同時に通電可能であり、プレート温度におけるこの局所的低下は、低下した温度の領域に近くのヒータを選択的に通電することによって補償されてもよい。
【0079】
別の実施形態では、本明細書に開示するような解凍デバイスは、クライオバッグ容器が装置の上部から挿入及び除去されるように、垂直アクセスを有することができる。口語表現を用いると、解凍デバイスは、トースタのように構成することができ、クライオバッグ容器は、それにしたがって装置内で配向されるだろう。そのような実施形態は、開位置と閉位置との間を移動する引き出しの必要性を回避し、必要であれば、蓋構造のサイズを最小化するだろう。
【0080】
幾つかの実施形態では、解凍終了時間を決定するために複数のアルゴリズムが提供されてもよい。任意的に、複数のアルゴリズムのそれぞれは、解凍終了時間の別々の推定値を提供するように、同時に実行されてもよい。そのシステムは、最初に推定解凍終了時間を提供するアルゴリズムに基づいて、解凍を終了するように構成されてもよい。任意的に、そのシステムは、それぞれのアルゴリズムにそれらの推定を完了させるように構成されてもよく、計算された最短の解凍間隔を利用してもよい。さらなる実施形態では、システムは、推定解凍間隔を平均化し、平均化された解凍間隔を利用して解凍終了時間を決定するように構成されてもよい。
【0081】
上述から、発明の具体的な実施形態が例示の目的で本明細書に記述されたが、発明の様々な実施形態の趣旨及び範囲から逸脱することなく様々な改変がなされ得ることが理解されよう。さらに、それらの実施形態の文脈において発明の特定の実施形態に関連する様々な利点を上で説明したが、他の実施形態もそのような利点を示す可能性があり、発明の範囲内に入るように、必ずしもすべての実施形態がそのような利点を示す必要はない。したがって、付属の特許請求の範囲による場合を除き、本発明は限定されない。
【0082】
上の記述は、発明の様々な実施形態、及び企図される最良の形態を説明しているが、上述の本文の詳細にかかわらず、発明は、多くの方法で実施することができる。システムの詳細は、その具体的な実施においてかなり異なり得るが、依然として本開示に包含される。上で指摘したように、発明の特定の特徴又は態様を説明するときに使用された特定の用語は、その用語が関連する発明における具体的な特性、特徴、又は態様に制限されるように、その用語が本明細書において再定義されることを意味するものと解釈されるべきではない。一般的に、特許請求の範囲で使用される用語は、上述の詳細な説明の欄がそのような用語を明確に定義しない限り、本明細書に開示する具体的な例に発明を限定するように解釈されるべきではない。したがって、発明の実際の範囲は、開示された例だけでなく、特許請求の範囲の下で発明を実践又は実施するすべての等価の方法も包含する。
【0083】
本明細書で提供される発明の教示は、必ずしも上で説明したシステムではなく、他のシステムに適用することができる。上で説明した様々な例の要素及び動作は、発明のさらなる実施を提供するように、組み合わせることができる。発明の幾つかの別の実施は、上述した実施に追加の要素を含むだけでなく、これよりも少ない要素を含んでもよい。さらに、本明細書において留意する任意の具体的な数値は、単なる例である。即ち、別の実施は、異なる値又は範囲を使用することができ、そのような範囲内及び境界での値の様々な増分及び傾度に対応することができる。
【0084】
特徴、利点、又は同様の言語に対する前述の説明全体の参照は、本技術で実現され得る特徴及び利点のすべてが発明の任意の単一の実施形態にあるべき、又はその実施形態にあるということを示すものではない。むしろ、特徴及び利点に言及する言葉は、実施形態に関連して記述される具体的な特徴、利点、又は特性が、本技術の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味すると理解される。したがって、本明細書全体にわたる特徴及び利点、並びに同様の言語の議論は、必ずしもそうではないが、同じ実施形態を参照することがある。
【0085】
さらに、本技術の記述された特徴、利点、及び特性は、1つ又は複数の実施形態において任意の適切な形で組み合わせられてもよい。当業者は、特定の実施形態における具体的な特徴又は利点のうちの1つ又は複数がない状態で本技術を実践できることを認識するであろう。他の例では、本技術のすべての実施形態に存在しないかもしれない追加の特徴及び利点が特定の実施形態において認識されてもよい。
【0086】
添付の書類に記載されてもよいものを含む、上述した特許、特許出願、及びその他の参考文献は、参照により本明細書に組み込まれる。上で説明した様々な参考文献におけるシステム、機能、及び概念を採用するように、発明の態様は、必要ならば、改変可能であり、発明のさらなる実施を提供することができる。
【0087】
1つ又は複数のコンピュータデバイスは、コンピュータ可読形式でレンダリングされたソフトウェア命令にアクセスすることにより、所望の機能を提供するように適合されてもよい。ソフトウェアが使用されるとき、本明細書に含まれる教示を実施するために、任意の適切なプログラミング、スクリプト、又は他の種類の言語あるいは言語の組み合わせが使用されてもよい。しかしながら、ソフトウェアは、独占的に使用する必要はなく、又は全く使用する必要はない。例えば、本明細書に記載される方法及びシステムの幾つかの実施形態は、特定用途向け回路に限定されないが、これを含むハードワイヤードロジック又は他の回路によって実施されてもよい。コンピュータで実行されるソフトウェア及びハードワイヤードロジック又はその他の回路の組み合わせも同様に適切であるかもしれない。
【0088】
本明細書で開示する方法の実施形態は、1つ又は複数の適切なコンピュータデバイスによって実行され得る。そのようなシステムは、本明細書で開示する方法の1つ又は複数の実施形態を実行するのに適した1つ又は複数のコンピュータデバイスを備えることができる。上述のように、そのようなデバイスは、少なくとも1つのコンピュータによって実行されたときに、少なくとも1つのコンピュータに本主題の方法の1つ又は複数の実施形態を実施させるコンピュータ可読命令を具現化する、1つ又は複数のコンピュータ可読媒体にアクセスすることができる。追加的又は代替的に、コンピュータデバイスは、本主題の方法のうちの1つ又は複数を実施するようにデバイスを動作可能にする回路を備えてもよい。
【0089】
現在開示している主題を実施又は実践するために、ディスケット、ドライブ、及び他の磁気ベースの記憶媒体、ディスク(例えばCD-ROM、DVD-ROM、それらの変形物、等)を含む光学記憶媒体、フラッシュ、RAM、ROM、及びその他のメモリデバイスなど、に限定されないがこれらを含む任意の適切なコンピュータ可読媒体又は複数の媒体が使用可能である。本明細書で使用するように、「マイクロプロセッサ」は、適切なコンピュータ可読媒体を含むことを理解することができる。
【0090】
本発明の主題は、特定のものと共にここに記載されているが、特許請求される主題は、他の方法において具現化されてもよく、異なる要素又はステップを含んでもよく、及び、他の既存の又は将来の技術と組み合わせて使用されてもよい。
【0091】
この記述は、個々のステップの順序又は要素の配置が明確に記述されている場合を除き、様々なステップ又は要素の中の又はそれらの間の特定の順序又は配置を暗示するものとして解釈されるべきではない。図面に示された又は上述した部品の、並びに、図示していない又は記述していない部品及びステップの異なる配置が可能である。同様に、幾つかの特徴及びサブコンビネーションは有用であり、他の特徴及びサブコンビネーションを参照せずに使用されてもよい。発明の実施形態は、理解を助けるもので限定しない目的で記述したものであり、この特許の読者には代替の実施形態が明らかになるであろう。したがって本発明は、上述の又は図面に示された実施形態に限定されるものではなく、以下の特許請求の範囲から逸脱することなく、様々な実施形態及び変更がなされてもよい。