IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コーシャム サイエンス リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許-試料中の微生物を検出するための方法 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-28
(45)【発行日】2023-01-12
(54)【発明の名称】試料中の微生物を検出するための方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/06 20060101AFI20230104BHJP
   C12Q 1/6806 20180101ALI20230104BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20230104BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20230104BHJP
   C12N 15/10 20060101ALN20230104BHJP
【FI】
C12Q1/06
C12Q1/6806 Z ZNA
C12Q1/6869 Z
C12Q1/686 Z
C12N15/10 100Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020529816
(86)(22)【出願日】2018-08-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-15
(86)【国際出願番号】 EP2018071463
(87)【国際公開番号】W WO2019030261
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2021-07-21
(31)【優先権主張番号】17185252.8
(32)【優先日】2017-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520048861
【氏名又は名称】コーシャム サイエンス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハッセル,トムリン ジョー
(72)【発明者】
【氏名】メッシー,ルース キャサリン
(72)【発明者】
【氏名】ベーコン,リアン フランシス
【審査官】松田 芳子
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-502536(JP,A)
【文献】特開2005-318890(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00461477(EP,A1)
【文献】国際公開第2012/031156(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/116694(WO,A1)
【文献】APPL. ENVIRON. MICROBIOL.,1991年,vol.57, no.12, p.3529-3534
【文献】APPL. ENVIRON. MICROBIOL.,1994年,vol.60, no.1, p.374-376
【文献】ENVIRON. MICROBIOL.,2005年,vol.7, no.7, p.1024-1028
【文献】Letters in Appl. Microbiol.,2009年,vol.49,p.539-543
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/68
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)試料をフィルターで濾過して、前記試料中に存在する任意の微生物を捕捉すること;
b)前記フィルターを処理して、前記捕捉された微生物からゲノム材料又はDNAを放出させること;
c)前記捕捉された微生物から放出された前記ゲノム材料又はDNAを増幅すること;及び
d)前記ゲノム材料又はDNAの特異的領域を同定して、任意の捕捉された微生物の存在を決定すること、前記微生物の種を同定すること、又は前記微生物の数を定量すること、
を含み、
ステップc)が、前記フィルター上、又は前記フィルター中において多置換増幅を行うことを含む
試料中の微生物を検出するための方法。
【請求項2】
前記微生物が、細菌、真菌、古細菌、原生動物、藻類、微小動物、又はウイルスである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記微生物が、グラム陽性菌、グラム陰性菌、酵母、カビ、単細胞藻類若しくは珪藻、又はDNA若しくはRNAウイルスのうちの1種又は複数から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ステップa)が、0.01μm~5μmの孔径を有するフィルターで前記試料を濾過することを含む、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記フィルターが、0.2μmの孔径を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ステップb)が、前記フィルターを、音響エネルギー、物理的エネルギー、又は酵素溶液及び/若しくは溶解緩衝液である生物学的及び/若しくは化学的溶解液と接触させることを含む、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
ステップb)が、1種又は複数の前記微生物の細胞壁を破壊すること、及び前記捕捉された微生物を溶解してそれらのゲノム材料又はDNAを前記フィルター上、又は前記フィルター中に放出させること、という連続ステップを含む、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
ステップc)とステップd)の間にステップci)をさらに含み、ステップci)が、ゲノム材料又はDNAを前記フィルターから抽出することを含む、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
ステップci)が、正の力(positive force)、負の力(negative force)、又は遠心力を利用してゲノム材料又はDNAを前記フィルターから抽出することを含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
ステップd)が、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を利用して前記ゲノム材料又はDNAの特異的領域を同定することを含む、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
ステップd)が、定量ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記試料が、製造ラインの排水、血液試料、尿試料、スワブ試料、咳若しくは空気試料、食物、非経口栄養のための溶液、飲料、医薬組成物、又は水である、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれかに記載の方法により、患者、動物又は製造工程から得られた試料をテストすることを含む、疾患を診断するために前記微生物から得られたゲノム材料又はDNAのデータを取得する方法又は汚染物質を同定する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中の微生物を検出するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品業界では、患者の安全性を確保するために、全ての製品が無菌性についてテストされなければならない。MHRAのガイドラインでは、無菌性についてのテスト、模擬試験及び検証試験を達成するために、ブロスに基づく生育模擬実験が利用される。製品が市場に流通する前に、トリプシン大豆ブロス(TSB)などの高栄養ブロスを用いて、製品の無菌性が計測される。そのようなブロスは、適当な温度でインキュベートされると、多くの微生物が生育するのに適した条件を提供する。それゆえ、ブロス中での微生物生育は、汚染された製品の指示薬として働き、14日後のブロスの濁度の視覚的計測により、又は場合により変色により評価される。試料採取から14日以内には、製品が既に市場に存在する可能性があり、時には患者に投与されている可能性さえある。ブロスの濁度が同定されると、潜在的な汚染源への大規模な検査が実施されて、多くの場合、テストされた製品の回収及び破棄に及ぶ。
【0003】
そのようなブロスに基づくテストの利用は、医薬品業界に限定されず、非限定的に食品、水及び診断業界などにおいて適用が見出され得る。
【0004】
栄養ブロスの使用に伴うこの前提は、不可避であるが、本発明者らは、以下の適用制限:つまり、1)一部の微生物が緩やかに生育するため、テストが最長14日かかる可能性があること;2)濁度の同定が溶液中の濁度を認識するブロスの「読み手(reader)」の経験、熟練及び知識に依存し、ある程度の主観性を有すること;3)テストに必要となるインキュベーション時間により、汚染された製品が汚染を検出する前に患者に投与される場合があり、感染及び死亡をもたらす可能性があること;並びに4)全ての微生物が推奨されたブロスで生育し得るとは限らず、潜在的に偽陰性の結果を生じる可能性があること、を認識した。
【0005】
上記の制限が英国における乳児3名の死亡に寄与した近年の事件を受けて、本発明者らは、製品汚染の同日計測を提供することにより現行の規制規準の制限を克服する代替的試験を開発した。
【発明の概要】
【0006】
第一の態様によれば、本発明は、
a)試料をフィルターで濾過して、該試料中に存在する任意の微生物を捕捉すること;
b)該フィルターを処理して、該捕捉された微生物からゲノム材料又はDNAを放出させること;
c)該捕捉された微生物から放出された該ゲノム材料又はDNAを増幅すること;及び
d)該ゲノム材料又はDNAの特異的領域を同定して、任意の捕捉された微生物の存在を決定すること、該微生物の種を同定すること、又は該微生物の大体の数を定量すること、
を含み、
ステップc)が、該フィルター上で実施される、
試料中の微生物を検出するための方法を提供する。
【0007】
したがって本発明は、せいぜい数時間以内に個々の微生物(単一細菌又は真菌細胞)の存在を同定することが可能なDNA増幅技術を提供する。本発明の方法は、培養ステップ
を必要としないことを意味する。DNA増幅の迅速な性質により、ユーザーは、市場への製品発売の前に結果を得て、発売時点で、発売された製品が監督機関の厳重な生物汚染度の要件に適合するより大きな保証を提供することができる。
【0008】
DNA増幅の利用はまた、結果の読み取りにおける主観性を大きく低減する。DNAの有無を、異なる方法で検出することができ、その多くは、ユーザーに必要とされる解釈が最小限である。例えば、特異的DNA配列の存在について調べるqPCRの利用は、配列が存在すれば、容易に識別可能で、かつ機械での読み取りが可能な蛍光の読み出し情報を提供する。特にDNA解析技術は、供給源の微生物とは無関係に、同じタイプの読み出し情報を与える。それゆえユーザーは、1つのタイプの読み出し情報についてのみを訓練する必要がある。これは、異なる微生物培養物を異なる度合いで生育する可能性があり全く異なる外観を有する可能性がある、生育ブロスの利用とは対照的である。幾つかの例では、ブロス内に出現するものの解釈が非常に困難になる可能性がある。
【0009】
本発明の技術は、任意の所与のブロス中で生育することが可能な微生物を検出することのみに限定されない。DNA増幅は、ゲノム材料又はDNAを供給する微生物とは無関係に、任意のゲノム材料又はDNAで作用するロバストで再現性のある方法を利用して実施することができる。これは、非常に特異的条件下でわずかしか増殖しない微生物、例えば粒子の複製のために存在する適切な宿主細胞を必要とするウイルス粒子を検出するのに特に有利である。
【0010】
試料をフィルターに通すことにより、試料中に存在する任意の微生物が、フィルター上に、又はフィルター中に捕捉される。適切なフィルターが、典型的にはフィルターに通す試料の滅菌に用いられ、その後、フィルターは、典型的には廃棄される。本発明者らは、代わりに、フィルターが試料中の任意の微生物を検出する工程において重要なステップを形成し得ることを理解した。
【0011】
本発明者らは最初、小さく取り扱い易い容量のフィルターにより任意の微生物が捕捉される、という事実を活用した。その上、本発明者らは、ゲノム材料又はDNA放出及び増幅の分子生物学的技術をインサイチュの、即ちフィルター上又はフィルター中の任意の微生物に再現性良く適用し得ることを決定した。これにより、微生物のさらなる処置の前の任意の再懸濁ステップの必要性が回避される。これは、ゲノム材料又はDNAが増幅される前に実行されるステップ数を最小限に抑えて、微生物を損失するリスク、又は未増幅のゲノム材料若しくはDNAを損失するリスク、及び偽陰性を生じるリスクを最小限に抑える。このことは特に重要であり、というのは少数の微生物、そして単一の微生物であっても、同定に成功しなければならないためである。
【0012】
それゆえ本発明の方法により、ユーザーは、広範囲の気体又は液体試料媒体から単一微生物を獲得することができ、容易に制御可能で適切な容量サイズのフィルター中、又はフィルター上の微生物ゲノム材料又はDNAを放出及び保持することができ、そして短い時間枠で検出可能なシグナルを提供するためのロバストで再現性のある手法で、ゲノム材料又はDNAを増幅条件に供するための制御法を開拓することができる。それゆえ該方法は、試料100mlあたり1コロニー形成単位(CFU)もの低い汚染レベルを検出し得る場合がある。言い換えれば、該方法は、任意の試料容量中に1個の生存可能細胞という低い汚染レベルを検出し得る場合がある。
【0013】
さらに、1タイプより多くの微生物が存在する場合に、異なる微生物からのゲノム材料又はDNAが、類似の速度で増幅するはずである。これは、より急速な微生物複製がより緩徐な生物体複製を打ち消し得る先行技術の方法と対照的である。それゆえ本発明の方法は、多重汚染の迅速かつ正確な検出、即ち、複数の微生物タイプの存在の指示を可能にす
る。このことにより、急速に複製する温和な微生物が製造施設の危険な病原体の存在を覆い隠す可能性がある、先行技術のブロスに基づく方法の潜在的制限が克服される。
【0014】
検出される微生物は、1種又は複数の細菌、真菌、古細菌、原生動物、藻類、微小動物、又はウイルスであり得る。特に該微生物は、グラム陽性菌、グラム陰性菌、酵母、カビ、単細胞藻類若しくは珪藻、又はDNA若しくはRNAウイルスのうちの1種又は複数から選択され得る。本発明の方法は、ゲノム材料及び/又はDNAを放出及び増幅するため、該方法は、幅広い種類の微生物に類似の能力で適用され得る。これは、理想としてユーザーがテストしたい全ての微生物に適する単一の生育培地が存在する可能性が低いという先行技術の重大な制限を克服する。
【0015】
該方法は、少なくとも約0.01μLの気体又は液体試料に適用され得る。例えば液体試料は、一定容量若しくは少なくとも約500μLを有していてもよく、又は気体試料は、少なくとも約0.5Lの容量を有していてもよい。これにより、該方法を、数滴の尿などの少量の試料から、生理食塩水製造ラインからの数リットルの生理食塩水溶液などの多量の試料まで、広範囲の試料タイプに適用することができる。
【0016】
該試料は、約0.01μm~約5μmの孔径を有するフィルターで濾過され得る。典型的には該フィルターは、約0.2μmの孔径を有し得る。これらのような孔径は、全ての原核及び真核細胞型、並びにウイルス粒子の大部分を捕捉するはずである。
【0017】
該ゲノム材料又はDNAは、フィルターを、音響エネルギー、物理的エネルギー、又は酵素溶液及び/若しくは溶解緩衝液などの生物学的/化学的溶解と接触させることにより、捕捉された微生物から放出され得る。そのため、幅広い種類の微生物からゲノム材料又はDNAを放出させることが可能である。
【0018】
該ゲノム材料又はDNA放出法は、微生物の細胞壁を破壊すること、及び微生物を溶解してそれらのゲノム材料又はDNAを放出させること、という連続ステップを利用することができる。これにより、より複雑な構造を有する微生物からゲノム材料又はDNAを放出させて、ゲノム材料又はDNAを封入することができる。これには、例えば、複数の細胞膜を備えたグラム陰性菌、又は細胞及び核膜を備えた真核生物が挙げられる。
【0019】
本明細書に記載されたゲノム材料又はDNAは、汚染した微生物中に含有されるゲノム材料全てからなっていてもよい。典型的には該ゲノム材料又はDNAは、コード及び/又は非コードDNA及び/又はRNAを包含する。汚染した微生物がウイルスである場合には、該ゲノム材料又はDNAは、RNAそのものであってもよい。
【0020】
該ゲノム材料又はDNAの増幅は、多置換増幅(MDA)などのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に基づく増幅法を利用して実施され得る。増幅が、全長ゲノムDNA鎖を生成する必要はない。より短い鎖又は断片の合計が全ゲノムの代表である限り、それらの鎖又は断片を生じることで充分である。MDAは、標準的PCRよりも低いエラー頻度などの利点を有し、温度サイクルを必要とせずにフィルター中、又はフィルター上で実施され得る。さらなる利点は、ゲノム材料又はDNAが多数の短い鎖又は断片により表される、という事実から生じる。DNAの短い鎖又は断片は、フィルターからより即座にかつより信頼性が高く抽出又は分離され得る。
【0021】
ゲノム材料又はDNAの増幅後に、増幅されたゲノム材料又はDNAは、フィルターから抽出又は分離され得る。これにより、ゲノム材料又はDNAの特異的領域を同定するステップを、フィルターから離れた環境、例えばqPCRデバイスなどのPCRデバイスで実行することができる。ゲノム材料又はDNAの増幅後に、典型的には、フィルター上に
DNAを有することにより提供される制御がもはや必要でなくなるほど充分なゲノム材料又はDNAが存在する。
【0022】
増幅されたゲノム材料又はDNAをフィルターから抽出又は分離する方法としては、正の力(positive force)、負の力(negative force)、又は遠心力を利用することが挙げられる。
【0023】
該ゲノム材料又はDNAの特異的領域の同定は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)分析を利用して実施され得る。例えば定量PCR(qPCR)が、用いられ得る。PCR分析は、迅速で信頼性がある。同定は、フィルター上で、又はフィルターから増幅されたゲノム材料若しくはDNAを抽出若しくは分離した後にフィルターから離れて、実行され得る。
【0024】
該試料は、製造ラインの排水、体液試料(血液又は尿試料など)、スワブ試料、咳若しくは空気試料、食物、非経口栄養のための溶液、飲料、医薬組成物、又は水であり得る。
【0025】
第二の態様によれば、本発明は、本発明の第一の態様の方法を利用して、患者、動物又は製造工程から得られた試料をテストすることを含む、疾患を診断する方法又は汚染物質を同定する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の方法を概説した概略的フローチャートを提供する。ステップ1において、試料を濾過して、細菌又は真菌などの任意の潜在的な汚染微生物を捕捉する。ステップ2において、捕捉された微生物の細胞壁を緩衝液1中の酵素で消化し、その後、ステップ3において、緩衝液2を用いて該微生物を溶解して、それらのゲノム材料又はDNAを放出させる。ステップ4において、緩衝液3及び緩衝液4を用いて該ゲノム材料又はDNAを短いDNA区分で増幅する。これらの増幅区分を、その後、ステップ5においてフィルターから分離する。最後にステップ6において、DNAの特異的領域をqPCRにより緩衝液5中でさらに増幅して、目的微生物の存在を同定する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の方法は、複数のステップを有する、試料中の微生物を検出するための方法を提供する。
【0028】
ステップa)において、試料をフィルターで濾過して、試料中に存在する任意の微生物を捕捉する。適切なフィルターは、市販品として即座に入手可能である。例えば「滅菌フィルターユニット」は多くの場合、液体及び気体を滅菌するために用いられる。そのような流体を滅菌するために、流体を、滅菌フィルターを通して滅菌容器に入れる。滅菌フィルターは、微生物の通過を防止する孔径を有し、こうして通過する流体を滅菌させる。その後、滅菌フィルターは、一般に廃棄される。
【0029】
微生物は、フィルターにより捕捉される。これをもって本発明者らは、フィルターへ流体を流す際に微生物がフィルターに捕捉されるため、微生物が濾液に行き着かない、ということを意味する。微生物が捕捉される精密なメカニズムは、用いられるフィルターのタイプに依存する。1つの選択肢は、微生物をフィルター材料のマトリックス内に、例えば細孔内に捕捉することである。もう1つの選択肢は、微生物がフィルターの表面に接着すること、又は単に流体の流れによりフィルターの表面に物理的に保持される。典型的には該フィルターは、全細胞の形態の微生物のみを獲得する。試料中に存在し得る任意の浮遊性DNAは、フィルターを通過する、即ち捕捉されない。これにより、初期試料中でまだ分解されていない、予め存在するDNAから生じ得る偽陽性のリスクが低減される。
【0030】
濾過のステップにより、広範囲の流体容量から1種又は複数の微生物を捕捉することが可能になる。液体試料の適切な容量としては、少なくとも約0.01μL又は少なくとも約500μLが挙げられる。単一の微生物が、非常に多量の流体中に存在する場合であっても、全容量をフィルターに通すことにより、その単一微生物がフィルターに捕捉されるようになる。そのため本発明の方法は、少なくとも約10ml、好ましくは少なくとも約25ml、より好ましくは少なくとも約50mlなどの任意の大容量に適用され得る。本発明の実施形態において、液体試料は、少なくとも約100mlの容量を有していてもよい。
【0031】
気体試料の適切な容量としては、少なくとも約0.01μL、又は少なくとも約0.5Lが挙げられる。同じく該方法は、少なくとも約10L、好ましくは少なくとも約50L、より好ましくは少なくとも約100Lなどの任意の大容量の気体中の微生物を同定するのに特に有用である。
【0032】
濾過ステップは、広範囲の流体からの微生物の捕捉を可能にする。濾過のための試料は、液体又は気体であり得る。幾つかの適切な流体としては、尿、唾液、血液、精液などの体液、若しくは肺からの呼気;製造工程から採取された流体生成物の試料;製造ラインの排水;廃水流れ;又は流通される製品の洗浄液が挙げられる。
【0033】
本発明の実施形態において、試料が呼気である場合、試料の容量は、少なくとも約0.5L又は約0.5L~約10Lの範囲内であってもよい。
【0034】
微生物を捕捉するための典型的なフィルター孔径は、約0.01μm~約5μmの範囲内である。好ましくは該フィルターは、約0.2μmの孔径を有する。そのような孔径を有する、特に0.2μm及び0.45μm孔径を有するフィルターは、市販品として即座に入手可能である。
【0035】
ステップb)において、該フィルターを処理して、捕捉された微生物からゲノム材料又はDNAを放出させる。処理の方法は、次に増幅を受け得るようなゲノム材料又はDNAを放出させなければならないこと以外は、特に限定されない。様々な生物体タイプからゲノムDNAを放出させる方法は、当該技術分野で周知である。
【0036】
微生物からゲノム材料又はDNAを放出させる適切な方法は、フィルターを音響エネルギー、物理的エネルギー、又は酵素溶液及び/若しくは溶解緩衝液などの生物学的/化学的溶解と接触させることを含む。音響エネルギーの一例は、微生物を超音波に供することを含む。これは、細胞の内容物を放出させる、一般に用いられる細胞崩壊技術である。微生物を崩壊するための物理的エネルギー技術は、周知であり、ビーズビーティング又は凍結粉砕などがあり、フィルター表面の細胞に特に適用可能である。フィルターの細孔に捕捉される微生物と特に適合性がある物理的エネルギー技術としては、圧力サイクル又は窒素減圧が挙げられる。適切な酵素溶液及び溶解緩衝液など、微生物からゲノム材料又はDNAを放出させる生物学的/化学的溶解アプローチは、周知であり、市販されている。例えばリゾチームなどの酵素は、微生物の細胞壁を分解するのに特に効果的である。特定の界面活性剤(ドデシル硫酸ナトリウムなど)を含む溶解緩衝液は、微生物の細胞壁を溶解する際に特に効果的になり得る。
【0037】
ゲノム材料又はDNAを放出させる方法は、微生物の細胞壁を破壊すること、及び微生物を溶解してそれらのゲノム材料又はDNAを放出させること、という連続ステップを含み得る。特定の微生物は、それらのゲノム材料又はDNAの周りに複数の保護層を有する。例えばグラム陰性菌は、複数の細胞壁層を有し、真核細胞はさらに、ゲノムDNAを細
胞核内に遮蔽している。細胞壁、そしてさらなる膜を破壊する連続ステップを利用して、ゲノム材料又はDNAを確実に放出させることができる。
【0038】
ステップc)において、該ゲノム材料又はDNAは、増幅される。これをもって本発明者らは、全ゲノムを増幅し得ること、又はゲノム材料若しくはDNAの対象の特異的領域を増幅し得ること、を意味する。驚くべきことに本発明者らは、この増幅ステップがフィルター上で実施され得ることを見出した。その結果、放出されたゲノム材料又はDNAを、増幅する前にフィルターから分離する必要がなく、それにより分離工程の際にDNAが損失するリスクが回避され、本発明の方法の正確さ及び感度の両方が改善される。
【0039】
該ゲノム材料又はDNAの増幅は、PCRに基づく増幅法などの複数の周知技術のいずれかにより実施され得る。例えば全ゲノム増幅のための幾つかの一般的技術は、縮重オリゴヌクレオチド-ポリメラーゼ連鎖反応(DOP-PCR)、プライマー伸長予備増幅(primer extension preamplification)(PEP)及び多重置換増幅(MDA)である。MDAは、エラーを起こし難く、増幅バイアスが低く、典型的には完全なゲノムカバレッジを提供するため、特に好ましい。
【0040】
増幅酵素は、充分な増幅が実現された後に変性され得る。
【0041】
ステップd)において、該ゲノム材料又はDNAの特異的領域が、試料中に存在する微生物の存在を決定するため、該微生物の種を同定するため、又は該微生物の大体の数を定量するために同定される。DNAの特異的配列を同定する方法は、公知である。例えば遺伝子シーケンス又はqPCRなどのPCRに基づく方法が、用いられ得る。
【0042】
本質的に、同定ステップは単に、ゲノム材料又はDNAの有無を確定しなければならない。ゲノム材料又はDNAが存在すれば、汚染があったことになる。
【0043】
それゆえ本発明者らは、「特異的領域」をもって、ゲノム材料又はDNAの存在を包括的に同定するために用いられ得る任意の特異的領域を意味する。ゲノム材料又はDNAの存在を同定することにおいて、微生物間で共通する特異的領域が、選択され得る。例えば細菌及び真菌細胞で保存された適切な16S及び18Sリボソーム領域が存在する。加えて、特定の微生物に特異的である特異的領域が選択され得る。これにより、この付加的能力で特定の微生物を特異的に同定することができる。一利点は、微生物の存在を包括的に検出すると共に、特別な関心のある微生物のリストを迅速にスクリーニングし得ることである。例えばMRSAなどの特定の多剤耐性菌の同定は、バッチリリースを単に保留するというよりも踏み込んだ行動をとり得、製造施設のより広範囲の除染を開始するという急務を指示し得る。
【0044】
必要に応じて、ゲノム材料又はDNAの特異的領域を、さらに増幅することができる。これは、例えばゲノム材料又はDNAのそれらの特異的領域のみに向けられるプライマーでのPCRを利用して、実施され得る。さらなる増幅ステップが用いられる場合、さらなる増幅ステップの前に最初の増幅ステップの任意の酵素を変性させることが、有益になり得る。これにより、最初の増幅ステップの酵素が、さらなる増幅ステップを妨害しないことが確実になる。
【0045】
特定の技術を用いて、ゲノム材料又はDNAの特異的領域を、フィルター上に配置したまま同定することが可能である。例えば、インターカレーター色素などのDNAレポーター色素を、フィルターに塗布することができる。DNAが存在すれば、該色素が挿入されて活性化するようになり、DNAの存在が確定される。
【0046】
本発明の実施形態において、ステップc)(増幅)とステップd)(同定)の間に、フィルターから増幅されたゲノム材料又はDNAを抽出又は分離することを含むさらなるステップci)が存在し得る。これにより、ゲノム材料又はDNAの特異的領域を、フィルターから離れた環境で検出することができる。ゲノム材料又はDNAが既にステップc)で増幅されているおかげで、充分なゲノム材料又はDNAが存在するはずであり、移動時の一部のゲノム材料又はDNAの損失は、もはや偽陰性の重大なリスクにならない。
【0047】
増幅されたゲノム材料又はDNAは、正の力、負の力、又は遠心力を利用してフィルターから抽出又は分離されてもよい。これをもって本発明者らは、増幅されたゲノム材料又はDNAが本来の濾過と同方向に、又は本来の濾過と逆方向に、フィルターから抽出又は分離し得ることを意味する。これは、フィルターを通して増幅されたDNAを押し出すこと(正の力)、又はフィルターを通して増幅されたDNAを引き抜くこと(負の力)、又は遠心分離を利用して増幅されたDNAをフィルターに押し通すこと、により実施され得る。
【0048】
増幅されたゲノム材料又はDNAが、同定される前にフィルターから抽出又は分離される場合、qPCRなどのPCRに基づく技術を、ゲノム材料又はDNAの特異的領域の同定に用いることができる。例えばqPCRを用いて、単にDNAの有無よりも特異的な情報を提供することができる。例えばqPCRを用いて、汚染物質が元々存在した量を計算することができる。さらに、異なるレポーター色素の使用により、微生物の異なる型又は種を同定するように、qPCRを設定することができる。
【0049】
本発明の方法は最初、医薬品部門でのブロス模擬テスト及び無菌性テストに置き換えるために開発された。しかし、食品及び水の業界、並びに臨床及び獣医学的感染疾患の診断環境でも有用性を有する。
【0050】
本発明の方法は、任意の微生物についてテストするために用いることができ、ゲノム材料又はDNAをフィルター中、又はフィルター上に放出させることが可能である。上述の通り、事実上全ての微生物からゲノム材料又はDNAを放出させるのに、幅広い種類の技術を利用可能である。理論的には、本発明の方法はそれゆえ、事実上全ての微生物と適合性がある。そのような微生物としては、細菌、真菌、古細菌、原生動物、藻類、又は微小動物が挙げられる。本発明者らはまた、用語「微生物」がウイルス粒子にも及ぶことを意図する。そのため本発明の方法は、ウイルス粒子についてテストするのにも用いられ得る。本発明の方法は、植物細胞についてテストするのにも用いられ得る。より具体的には本発明の方法は、グラム陽性菌、グラム陰性菌、酵母、カビ、単細胞藻類、又は珪藻についてテストするのに用いられ得る。
【0051】
本発明の方法は、幅広い種類の供給源からの試料に適用され得る。該試料は、製造ラインの排水であり得る。これをもって本発明者らは、流体生成物を製造ラインに沿って運搬する製造施設を参照している。生成物が運搬された後、製造ラインが、排水される。その排水液を用いて、任意の微生物が汚染液により製造ラインに残留しているか否かを決定することができる。例えば医薬品の環境において、先行技術の方法では、ブロス100mlが医薬品を調製するのに用いられる配管内及び装置全体を通る。本発明の方法では、代わりに洗浄溶液100mlが、配管内及び装置全体を通り、その後、本発明の試料として用いられ得る。
【0052】
該試料は、血液又は尿試料などの体液試料であり得る。健常な尿は、DNA含有細胞を含有せず、本発明の方法により即座に分析され得る。健常な血液は、DNA含有細胞を有し、濾過前に血液細胞を溶解する、本発明の方法の改変法に供される必要がある。
【0053】
該試料は、スワブ試料であり得る。これをもって本発明者らは、スワブが分散媒を用いて洗浄され、分散媒がフィルターに通した試料であることを意味する。該スワブは、発売される製品の表面、製造機器から、又はヒト若しくは動物の身体からなど、様々な供給源のいずれから回収されてもよい。
【0054】
該試料は、空気試料であり得る。これは、生物製剤の製造及び発展のための施設など、制御された施設内の空気であり得る。空気及び他の気体を直接フィルターに通すことができ、気体からの任意の微生物を液体で捕捉する必要はない。増幅されたDNAが存在する前に必要とされるステップ数を最小限に抑えることで、偽陰性の機会もまた最小限に抑えられる。
【0055】
本発明の方法は、微生物学的又は医薬的環境など、環境のモニタリングに適用され得る。従来では、環境のモニタリングは、寒天プレートを環境に開放して4時間静置すること(受動的空気採取)、又はプレートの表面に空気を引き込むこと(能動的空気採取)、又は単に寒天プレートを検査される表面と接触させること(接触プレート)で、寒天プレートを環境に暴露することにより実行される。寒天プレートが、環境に暴露されたら、それらは、少なくとも3日間のインキュベーションを必要とする。しかし、最大7日のインキュベーション時間が、必要となる場合がある。本発明の方法を用いて、環境モニタリングのこれらの伝統的手段に置き換えることができる。この状況では本発明の方法を利用して、能動的空気採取でフィルターを通して空気を引き抜き、その後、処理、増幅及び同定ステップが実行されてもよい。またはスワブを用いて、対象の表面をモニタリングし、得られたスワブを溶液に移し、その後、該溶液をフィルターに通すことができ、その後、処理、増幅及び同定ステップが実行されてもよい。本発明の方法のこの適用により、製品のバッチが現場から離れる前に環境モニタリングの結果を入手し、それにより製造工程により大きな品質保証を提供することができる。
【0056】
試料は、食物、飲料又は医薬組成物であり得る。これらの物質は、長期間保存することができ、微生物生育のための適切な栄養素を含有し得る。これらの物質は、ヒト又は動物が消費することを予定しているため、製造施設を離れる物質の無菌性を確保することが特に重要である。これは、特定の医薬組成物及び非経口栄養などの静脈内に送達される物質にとって特に重要であり、それは、これらが侵襲性微生物に対するヒト又は動物の体内の防御機構の多くを迂回するためである。
【0057】
該試料は、水であり得る。これは、飲料水、消費される様々な食品、飲料若しくは医薬組成物に配合されることが予定されている水、長期保存のための任意の組成物に予定されている水、又は工業用水であり得る。これはまた、製造ライン、他の製造設備又は発売される製品を洗浄するのに用いられる水であり得る。
【0058】
先に述べられた通り、本発明の方法は、ヒト又は動物の身体からの試料で用いられ得る。詳細には、異なる型の侵襲性微生物に特異的なプライマーの使用により、侵襲した微生物の迅速な診断が可能になる。
【0059】
例えば該方法を用いて、血中の侵襲性微生物の存在を迅速に検出し、これにより敗血症の早期警告を提供することができる。これは、迅速な薬物投与が不可欠である易感染性の患者に特に有用であろう。本発明の方法は、特異的微生物の迅速な同定を提供して、薬効範囲の広い抗生物質を単に投与するというよりむしろ効果的な抗微生物処置薬の投与を可能にする。
【0060】
さらに、マイコバクテリウム・ツベルクローシスに特異的なプライマーを用いて、ヒト又は畜牛における結核(TB)についての迅速で簡便なテストを提供することができる。
現在のところ、TBの試験は、農場への運送用トラックを必要とする大型部品の機器を必要とする。本発明の方法は、極めて小さな機器を必要とし、電池で動作し得る携帯型デバイスに適用し易い。これにより、低コストで簡便なTB試験デバイスが可能になる。
【実施例
【0061】
材料と方法
以下は、図1を参照して記載されている。およそ100mlの液体容量中の汚染微生物の存在についてテストするために、液体を最初に0.2μmフィルターに通し、サイズ排除により物理的に、任意の細菌又は真菌細胞を捕捉する(ステップ1)。任意の微生物の細胞壁を、緩衝液1(1mg/mlリソスタフィン、5mg/mlリゾチーム及び2.5mg/mlグルカナーゼからなる酵素溶液)1μlをフィルター表面に添加して、フィルターを37℃で30分間インキュベートすることにより消化される(ステップ2)。微生物のゲノムは、それらの細胞膜を溶解することにより放出され、それは、緩衝液2(200mM KOH、50mM DTT)1μlをフィルターの表面に添加して65℃で10分間インキュベーションし(ステップ3)、その後、緩衝液3(900mM Tris HCl、300mM KCl、200mM HCl)1μlをフィルターの表面に添加することにより実現される。放出されたゲノムは、本明細書に記載されたような多重置換増幅(MDA)法:つまり、緩衝液4(Phi29酵素 0.45μl、BSA 0.09μl、Phi29緩衝液 0.9μl、ランダムヘキサマー(20μM)0.45μl、dNTP(40μM)0.45μl、水6.5μl)9μlをフィルターの表面に添加して、フィルターを30℃で3時間インキュベートすること、を利用して無作為な区分で増幅(複製/コピー)される。65℃で10分間インキュベートすることにより(ステップ4)、酵素を変性させて、酵素が次の増幅ステップを妨害するのを予防する。DNAの増幅された区分は、フィルターを通して抽出される(正の力、負の力又は遠心力による)(ステップ5)。増幅されたDNA 2μlのアリコットを、以下の表1に列挙された細菌又は真菌細胞中に存在する16S及び18Sリボソーム領域中の保存された領域に特異的なプライマー及び蛍光プローブを含有する緩衝液5(Taqmanプローブ 10μl、混合プライマー(10μM)4μl、FAM TAMRAプローブ0.05μl)に添加する(ステップ6)。反応は、StepOne Plus qPCR装置で以下のプログラムにより行われる。
【表1】
【0062】
陽性対照
テストのqPCR区分が機能的で、偽陰性の結果を生じないことを確証するために、陽性対照をこのテスト用に開発した。本発明者らは、合成DNAの100bp鎖を組み込み、その配列をランダムに作成し、NCBI BLASTサーチによりテストして、任意の既知の細菌又は真菌種中に見出されないことを確証した。プライマーをこの配列、蛍光タグJOEを有するプローブ用に設計して、細菌及び真菌株に用いられる蛍光プローブFAMと識別した(表1)。
【0063】
陽性対照のDNA配列:
GATCGCTCAGTCGCTTTTCGTACTGCGCGAAAGTTCGCACCGCTCATACACTTGGTTCCGAAGCCTGTCCTGATATATGAATCCAAACTAGAGCGGGGCT
【0064】
陰性対照
滅菌超純水を用いて、全実験用の「鋳型なし」又は陰性対照とする。これがqPCR反応において提供するCT値もまた、ベースラインとして使用されて、試料中の陽性反応を決定する、即ち、試料を陽性と見なすためには、この対照のCT値よりも少なくとも1単位低いCT値を有する必要がある。
【0065】
【表2】
【0066】
結果
本発明者らのテストがスタフィロコッカス・アウレウス、バチルス・サブチリス、シュードモナス・エルギノーサ、ミクロコッカス・ルテウス、カンジダ・アルビカンス及びアスペルギルス・ブラジリエンシスをはじめとする薬局方微生物全てに作用することを確証するために、本発明者らは、水のテスト溶液に各生物体の1~100コロニー形成単位(CFU)を添加した。それぞれを、トリプシン大豆ブロス(TSB)中で一晩生育させた(S.アウレウス、B.サブチリス及びP.エルギノーサでは37℃で、M.ルテウス、A.ブラジリエンシス及びC.アルビカンスでは30℃で)。翌日、培養物を適当な容量に希釈し、アリコットを播種して細胞密度を正確に決定するか、又はテストに進めた。表2の結果は、このテストがこれらの微生物を検出するのに効果的であったことを示している。
【0067】
【表3】
【0068】
6種の薬局方微生物についてのテストを開発した後、4つのさらなる菌種について実施して、幅広い適用性を決定した。水に、1~100コロニー形成単位のスタフィロコッカス・エピデルミディス、サルモネラ・ダブリン、エシェリヒア・コリ又はラクトバチルス
・ラクチスを添加して、テストを上記の通り実施した。表3の結果は、このテストがこれらの種を検出するのに効果的であることを示している。
【0069】
【表4】
【0070】
陽性対照の有効性をテストするために、全ての関連するプローブと共に陽性対照のプライマーを含むqPCR反応物を、18S、16Sで上記の通り調製した。各反応で、バチルス・サブチリスのゲノムDNA及び陽性対照のDNAを、互いに混合して、又は別個にテンプレートとして用いて、プライマーの特異性をチェックした。表4は、これらのプライマー及びプローブが任意の非特異的増幅は呈さないことを示している。
【0071】
【表5】
【0072】
結果から、試料100ml中で10,000CFUの感度であると一般に受け入れられている従来のブロステストと比較して、感度の有意な改善が示される。対照的に本発明の方法は、試料100ml中で1CFUでも潜在的に検出する可能性がある。加えて、最大14日という従来のブロステストに比較して、1日でも結果が得られた。
図1
【配列表】
0007203108000001.app