(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-28
(45)【発行日】2023-01-12
(54)【発明の名称】積層体の製造方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
B29C 48/08 20190101AFI20230104BHJP
B29C 48/88 20190101ALI20230104BHJP
B29C 48/92 20190101ALI20230104BHJP
B29C 48/305 20190101ALI20230104BHJP
B29C 48/154 20190101ALI20230104BHJP
B29K 21/00 20060101ALN20230104BHJP
B29L 9/00 20060101ALN20230104BHJP
【FI】
B29C48/08
B29C48/88
B29C48/92
B29C48/305
B29C48/154
B29K21:00
B29L9:00
(21)【出願番号】P 2020553901
(86)(22)【出願日】2019-10-28
(86)【国際出願番号】 JP2019042209
(87)【国際公開番号】W WO2020090753
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-10-17
(31)【優先権主張番号】P 2018202621
(32)【優先日】2018-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591040708
【氏名又は名称】株式会社瑞光
(74)【代理人】
【識別番号】110001265
【氏名又は名称】特許業務法人山村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 秀幸
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-267456(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0024513(US,A1)
【文献】特表2002-521241(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/00-48/96
B32B 5/00- 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性フィルムFとなるフィルム状のフィルム原料Mのパスラインを形成するパスライン形成工程を経た後に、合流部において前記熱可塑性フィルムFがシートS1に積層された積層体Wを製造する方法であって、前記パスライン形成工程は、
前記フィルム原料Mとなる溶融状態の樹脂を吐出部Tの吐出口TOから垂下してフィルム状の前記フィルム原料Mを連続的に吐出する垂下工程と、
前記吐出口TOの下方において、シート用パスライン1に沿って前記シートS1を横方向または斜め横方向に搬送する第1搬送工程と、
前記吐出口TOから吐出されて垂下した前記フィルム原料Mの先端部Eを前記シート用パスライン1において前記シートS1で受け止める受止工程と、
前記シート用パスライン1上の前記シートS1に前記先端部Eが重なり、互いに重なった状態の前記シートS1および前記フィルム原料Mを前記シート用パスライン1に沿って搬送する第2搬送工程と、
前記互いに重なった状態の前記シートS1および前記フィルム原料Mを前記シート用パスライン1から前記合流部に導入する導入工程と、を備え、
ここにおいて、前記熱可塑性フィルムFはエラストマーフィルムFであり、前記フィルム原料Mはフィルム状のプレエラストマーMで、
ここにおいて、前記パスライン形成工程後に、前記プレエラストマーMが固化した前記エラストマーフィルムFを前記合流部において前記シートS1に接合することで積層して前記積層体Wを生成する接合工程を備え、
ここにおいて、前記合流部である接合ロールArの外周面に沿って前記シートS1および前記エラストマーフィルムFが重なって搬送され、前記接合ロールAr上において前記接合工程が実行され、
ここにおいて、前記導入工程後において、前記吐出口TOから垂下されたフィルム状のプレエラストマーMが第1冷却ロールT1の外周面に巻き付いてプレエラストマーMが冷却される第1冷却工程を備える、製造方法。
【請求項2】
請求項1において、前記第1冷却ロールT1は前記垂下工程において前記垂下されたフィルム状のプレエラストマーMに接離可能に設けられ、
前記プレエラストマーMの前記先端部Eおよび前記シートS1が前記接合ロールArに巻き込まれた後に、前記第1冷却工程が開始されて、前記プレエラストマーMが冷却される、製造方法。
【請求項3】
請求項2において、前記垂下工程において前記吐出口TOから垂下された前記プレエラストマーMの一方の側面に対向するように前記第1冷却ロールT1が配置され、
前記垂下工程において前記プレエラストマーMの前記一方の側面とは反対の他方側面に対向するように押付ロールが配置され、
前記プレエラストマーMの垂下方向と交差する方向に前記押付ロールが移動して、前記プレエラストマーMが前記第1冷却ロールT1に接触する距離を大きくする工程を更に備える、製造方法。
【請求項4】
請求項3において、前記押付ロールは第2冷却ロールT2であり、
前記第1冷却ロールT1で冷却された前記プレエラストマーMを前記第2冷却ロールT2で更に冷却する第2冷却工程を備える、製造方法。
【請求項5】
請求項2において、前記接合ロールArよりも上流において前記エラストマーフィルムFを挟むニップロールNrが設けられ、
前記第1冷却工程が開始された後に、前記ニップロールNrにおけるエラストマーフィルムFの搬送速度Vsよりも前記接合ロールArにおけるエラストマーフィルムFの搬送速度Vが大きいことによって、前記シートS1に接合される前の前記エラストマーフィルムFを搬送方向に伸張させる伸張工程を備える、製造方法。
【請求項6】
熱可塑性フィルムFとなるフィルム状のフィルム原料Mのパスラインを形成するパスライン形成工程を経た後に、合流部において前記熱可塑性フィルムFがシートS1に積層された積層体Wを製造する装置であって、
前記フィルム原料Mとなる溶融状態の樹脂を吐出口TOから垂下してフィルム状の前記フィルム原料Mを連続的に吐出する吐出部Tと、
前記吐出口TOの下方において、前記シートS1を横方向または斜め横方向に搬送すると共に前記吐出口TOから吐出されて垂下した前記フィルム原料Mの先端部Eを前記シートS1で受け止め、前記先端部Eが前記シートS1に重なり、互いに重なった状態のシートS1およびフィルム原料Mを搬送するシート用パスライン1と、
前記互いに重なった状態の前記シートS1および前記フィルム原料Mを前記シート用パスライン1から導入される合流部と、を備え、
ここにおいて、前記熱可塑性フィルムFはエラストマーフィルムFであり、前記フィルム原料Mはフィルム状のプレエラストマーMで、
ここにおいて、前記合流部は前記プレエラストマーMが固化した前記エラストマーフィルムFを前記シートS1に接合することで積層して前記積層体Wを生成し、
ここにおいて、外周面に沿って前記シートS1および前記エラストマーフィルムFが重なって搬送される接合ロールArが前記合流部の少なくとも一部を構成し、
ここにおいて、前記吐出口TOから垂下されたフィルム状の前記プレエラストマーMが外周面に巻き付いて前記プレエラストマーMを冷却する第1冷却ロールT1を備える、製造装置。
【請求項7】
請求項6において、前記第1冷却ロールT1は前記垂下されたフィルム状の前記プレエラストマーMに接離可能に設けられている、製造装置。
【請求項8】
請求項7において、前記吐出口TOから垂下された前記プレエラストマーMの一方の側面に対向するように前記第1冷却ロールT1が配置され、
前記プレエラストマーMの前記一方の側面とは反対の他方側面に対向するように配置され、前記プレエラストマーMの垂下方向と交差する方向に移動して、前記プレエラストマーMが前記第1冷却ロールT1に接触する距離を大きくする押付ロールを更に備える、製造装置。
【請求項9】
請求項8において、前記押付ロールは前記第1冷却ロールT1で冷却された前記プレエラストマーMを更に冷却する第2冷却ロールT2である、製造装置。
【請求項10】
請求項9において、前記接合ロールArよりも上流において前記エラストマーフィルムFを挟むニップロールNrが設けられ、
前記シートS1に接合される前の前記エラストマーフィルムFを搬送方向に伸張できるように、
前記吐出口TOから垂下された前記フィルム状のプレエラストマーMが前記第1冷却ロールT1の外周面に巻き付いて前記プレエラストマーMが冷却される第1冷却工程が開始された後に、前記ニップロールNrにおけるエラストマーフィルムFの搬送速度Vsよりも前記接合ロールArにおけるエラストマーフィルムFの搬送速度Vが大きく設定されている、製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は使い捨てオムツなどの使い捨て吸収性物品の一部に利用できる積層体の製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、かかる積層体として、一対の不織布シート間にエラストマーフィルム(elastomer film)を挟んだ構造が提案されている。また、この積層体の製造ラインにおいて、溶融状態の樹脂から前記フィルムを生成する提案がなされている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
上記従来技術では、溶融した状態の樹脂を吐出口からフィルム状に押し出し、押し出されたフィルム状で粘着性を有するプレエラストマー(pre‐elastomer)を冷却することでエラストマーフィルムを生成し、その後、エラストマーフィルムを不織布シートに積層している。
【0005】
かかる製造ラインにおいて、一旦、積層体の製造を停止し、その後、前記製造を再開する場合、前記粘着性のプレエラストマーのパスライン(pass line:搬送系路)を形成してエラストマーフィルムのパスラインを形成する必要がある。しかし、従来はオペレータが粘着性のプレエラストマーの先端部を引っ張ってプレエラストマーのパスラインを形成していた。かかる作業はプレエラストマーが完全に固化していないことがあるため、困難を伴う。
【0006】
例えば吸収性物品の製造ラインにおいてエラストマーフィルムを生成し、エラストマーフィルムを弾性部材として用いる場合、製造する製品のサイズの変更等でしばしばラインを停止させることがあり、上記のような作業も多くなる。
【0007】
本発明の目的は、フィルム製造工程を含む積層体の生産ラインにおいて生産ラインが停止しても容易にフィルム用パスラインを形成可能な製造方法および装置を提供する。
【0008】
本発明の製造方法は、熱可塑性フィルムFとなるフィルム状のフィルム原料Mのパスラインを形成するパスライン形成工程を経た後に、合流部において前記熱可塑性フィルムFがシートS1に積層された積層体Wを製造する方法であって、前記パスライン形成工程は、
前記フィルム原料Mとなる溶融状態の樹脂を吐出部Tの吐出口TOから垂下してフィルム状の前記フィルム原料Mを連続的に吐出する垂下工程と、
前記吐出口TOの下方において、シート用パスライン1に沿って前記シートS1を横方向または斜め横方向に搬送する第1搬送工程と、
前記吐出口TOから吐出されて垂下した前記フィルム原料Mの先端部Eを前記シート用パスライン1において前記シートS1で受け止める受止工程と、
前記シート用パスライン1上の前記シートS1に前記先端部Eが重なり、互いに重なった状態の前記シートS1および前記フィルム原料Mを前記シート用パスライン1に沿って搬送する第2搬送工程と、
前記互いに重なった状態の前記シートS1および前記フィルム原料Mを前記シート用パスライン1から前記合流部に導入する。
【0009】
一方、本発明の製造装置は、熱可塑性フィルムFとなるフィルム状のフィルム原料Mのパスラインを形成するパスライン形成工程を経た後に、合流部において前記熱可塑性フィルムFがシートS1に積層された積層体Wを製造する装置であって、
前記フィルム原料Mとなる溶融状態の樹脂を吐出口TOから垂下してフィルム状の前記フィルム原料Mを連続的に吐出する吐出部Tと、
前記吐出口TOの下方において、前記シートS1を横方向または斜め横方向に搬送すると共に前記吐出口TOから吐出されて垂下した前記フィルム原料Mの先端部Eを前記シートS1で受け止め、前記先端部Eが前記シートS1に重なり、互いに重なった状態のシートS1およびフィルム原料Mを搬送するシート用パスライン1と、
前記互いに重なった状態の前記シートS1および前記フィルム原料Mを前記シート用パスライン1から導入される合流部と、を備える。
【0010】
本発明において、前記熱可塑性フィルムFはエラストマーフィルムFであってもよく、前記フィルム原料Mはフィルム状のプレエラストマーMであってもよい。
【0011】
本発明において、吐出口からフィルム状に垂下したプレエラストマーMの先端部Eを横方向または斜め横方向に搬送されるシートで受け止めることができる。そのため、プレエラストマーMの先端部Eをシートと共に搬送して積層体を生成する合流部に自動的に導入することができる。したがって、フィルム用パスラインを容易に形成することができる。
【0012】
本発明において、熱可塑性フィルムは伸縮性が少ないプラストマーフィルム(plastomer film)であってもよい。また、熱可塑性フィルムがエラストマーフィルムである場合、長さが2倍~数倍まで伸張し、かつ、元の長さに復元する伸縮性の大きいフィルムであってもよい。
【0013】
本発明において、溶融状態の樹脂とは、熱可塑性の樹脂(例えば熱可塑性エラストマー)の軟化点以上の温度でTダイ等の吐出口からフィルム状に吐出される樹脂を意味する。
【0014】
熱可塑性エラストマーとは、加熱によって軟化し、外力によって変形するが、室温でゴム弾性を呈する高分子材料をいう。プレエラストマーMとは、溶融状態で吐出口を出た直後の弾性のない液体に近い性質の膜状(フィルム状)の熱可塑性エラストマーを意味する。
熱可塑性エラストマーとしては、たとえばポリエチレン共重合体を採用することができる(JPH10-29259 A参照)。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1Aおよび
図1Bは、それぞれ、フィルム用パスラインを形成する工程の一実施例を示すレイアウト図である。
【
図2】
図2Aおよび
図2Bは、それぞれ、フィルム用のパスラインを形成する工程の一実施例を示すレイアウト図である。
【
図3】
図3Aおよび
図3Bは、それぞれ、本発明の積層体の製造方法および装置の一実施例を示す概略レイアウト図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
好ましくは、前記パスライン形成工程後に、前記プレエラストマーMが固化した前記エラストマーフィルムFを前記合流部において前記シートS1に接合することで積層して前記積層体Wを生成する接合工程を備える。
この場合、接合工程を担う合流部において、エラストマーフィルムFとシートS1とが接合されて積層される。
【0017】
好ましくは、前記合流部である接合ロールArの外周面に沿って前記シートS1および前記エラストマーフィルムFが重なって搬送され、前記接合ロールAr上において前記接合工程が実行される。
この場合、前記接合工程がアンビルロールのような接合ロール上において行われる。
【0018】
好ましくは、前記導入工程後において、前記吐出口TOから垂下されたフィルム状のプレエラストマーMが第1冷却ロールT1の外周面に巻き付いてプレエラストマーMが冷却される第1冷却工程を備える。
【0019】
この場合、フィルム状のプレエラストマーMが第1冷却ロールで冷却されて、伸縮性のあるエラストマーフィルムとなる。
【0020】
好ましくは、前記第1冷却ロールT1は前記垂下工程において前記垂下されたフィルム状のプレエラストマーMに接離可能に設けられ、
前記プレエラストマーMの前記先端部Eおよび前記シートS1が前記接合ロールArに巻き込まれた後に、前記第1冷却工程が開始されて、前記プレエラストマーMが冷却される。
【0021】
この場合、第1冷却ロールT1に溶融状態の樹脂が不規則に粘着するおそれがなく、したがって、フィルム状のプレエラストマーがシート用パスライン1に導入されるのを第1冷却ロールT1は妨げないだろう。
【0022】
好ましくは、前記垂下工程において前記吐出口TOから垂下された前記プレエラストマーMの一方の側面に対向するように前記第1冷却ロールT1が配置され、
前記垂下工程において前記プレエラストマーMの前記一方の側面とは反対の他方側面に対向するように押付ロールが配置され、
前記プレエラストマーMの垂下方向と交差する方向に前記押付ロールが移動して、前記プレエラストマーMが前記第1冷却ロールT1に接触する距離を大きくする工程を更に備える。
【0023】
この場合、第1冷却ロールT1による冷却効果が高まる。
【0024】
好ましくは、前記押付ロールは第2冷却ロールT2であり、
前記第1冷却ロールT1で冷却された前記プレエラストマーMを前記第2冷却ロールT2で更に冷却する第2冷却工程を備える。
【0025】
この場合、フィルム状のプレエラストマーが第2冷却ロールT2においても更に冷却される。
【0026】
好ましくは、前記接合ロールArよりも上流において前記エラストマーフィルムFを挟むニップロール(nip roll)Nrが設けられ、
前記第1冷却工程が開始された後に、前記ニップロールNrにおけるエラストマーフィルムFの搬送速度Vsよりも前記接合ロールArにおけるエラストマーフィルムFの搬送速度Vが大きいことによって、前記シートS1に接合される前の前記エラストマーフィルムFを搬送方向に伸張させる伸張工程を備える。
【0027】
この場合、積層前のエラストマーフィルムFは搬送中において搬送方向に伸びており、生成された積層体Wは無負荷の状態で搬送方向に収縮する。この収縮力により積層体Wが着用者の胴回り等にフィットする。
【0028】
1つの前記各実施態様または下記の実施例に関連して説明および/または図示した特徴は、1つまたはそれ以上の他の実施態様または他の実施例において同一または類似な形で、および/または他の実施態様または実施例の特徴と組み合わせて、または、その代わりに利用することができる。
【実施例】
【0029】
本発明は、添付の図面を参考にした以下の好適な実施例の説明からより明瞭に理解されるであろう。しかし、実施例および図面は単なる図示および説明のためのものであり、本発明の範囲を定めるために利用されるべきものではない。本発明の範囲は請求の範囲によってのみ定まる。添付図面において、複数の図面における同一の部品番号は、同一または相当部分を示す。
なお、本明細書のカタカナ表記の一部には、その意味をより明瞭にするために英単語を()書で併記している。
【0030】
以下、本発明の一実施例を図面にしたがって説明する。
まず、定常的な製造方法および装置について説明する。
【0031】
図3Bは連続的に積層体Wを生成する定常運転時を示す。この図において吐出部TはTダイと呼ばれる周知の押出成形機で、溶融状態の熱可塑性エラストマー(樹脂)がTダイに一時的に貯留されている。Tダイは、その吐出口TOからプレエラストマー(フィルム原料の一例)Mとなる溶融状態の樹脂をフィルム状に吐出してプレエラストマーMを連続的に生成する。
【0032】
前記吐出口TOから吐出されたプレエラストマーMは第1冷却ロールT1の外周面に巻き込まれて一時冷却されると共に、第1冷却ロールT1の下方の第2冷却ロールT2の外周面に向かって搬送される。これにより、プレエラストマーMは概ね固化してエラストマーフィルム(熱可塑性フィルムの一例)Fとしての弾性(伸縮性)を持つようになる。
【0033】
前記第2冷却ロールT2に向かったプレエラストマーMは第2冷却ロールT2の外周面によって二次冷却される。これにより、プレエラストマーMは完全に固化してエラストマーフィルム(弾性フィルム)Fとなる。
【0034】
前記二次冷却されたエラストマーフィルムFは第2冷却ロールT2とニップロールNrとの間で挟まれた後、接合ロールArに向かう。接合ロールArは第2冷却ロールT2よりも周速度(搬送速度)が大きく、そのため、エラストマーフィルムFはニップロールNrと接合ロールArとの間で搬送方向に伸張される。
【0035】
このように、溶融樹脂はプレエラストマー(フィルム原料)Mの状態を経てエラストマーフィルム(熱可塑性フィルム)Fとなる。ここで、物質としての溶融樹脂からプレエラストマーMへの遷移やプレエラストマーMからエラストマーフィルムFへの遷移をどの時点で呈するかは、ガラス転移温度や樹脂の厚さや室温により区々であり、定かではない。
【0036】
例えば、溶融樹脂は吐出口TOを出た直後にプレエラストマーMとなり、一見した外観は固体のようであるが、弾性のない液体に近い性質の場合がある。
【0037】
一方、プレエラストマーMはニップロールNrから下流において引っ張られている部位ではエラストマーフィルムFに変化しているが、ニップロールNrの上流の第2冷却ロールT2に接してからエラストマーフィルムFになる場合や、第1冷却ロールT1に接してからエラストマーフィルムFになる場合など区々である。
【0038】
したがって、フィルム用パスライン3は、フィルムが少なくとも一部においてプレエラストマー(フィルム原料)Mの状態の当該フィルムの搬送経路を意味する。
【0039】
一方、前記接合ロールArには、不織布からなる第1および第2シートS1,S2が供給される。各シートS1,S2は、各々、シート用の第1パスライン1または第2パスライン1Aに沿って接合ロールArに供給される。
【0040】
前記エラストマーフィルムFは前記一対のシートS1,S2に挟まれた状態で接合ロールArに導入される。前記接合ロールAr上において、一対のシートS1,S2とエラストマーフィルムFとが超音波ホーンHによって互いに接合されて積層され積層体Wが生成される。
なお、積層体WはホーンHによる超音波接合ではなく、加熱ロールにより熱溶着されて生成されてもよい。
【0041】
前記積層体Wの生産は連続的に行われるが、サイズ変更などに伴い、一旦、生産が停止される場合がある。この場合、新たなエラストマーフィルムFについて、
図1A~
図3Aに示すフィルム用パスラインの形成が実行される。
【0042】
つぎに、製造装置について説明する。
図2Bの各冷却ロールT1,T2は、各々、スライドベース6に回転自在に支持され、ガイダ(guider)4に沿ってシリンダ(cylinder)5により、
図2Bおよび
図3Aに示すように水平方向に移動される。各冷却ロールT1,T2は図示しないモータにより周速度Vsで回転駆動される。一方、前記接合ロールArは図示しないモータによって前記周速度Vsよりも大きい周速度Vで回転駆動される。
【0043】
新たにフィルム用パスライン3(
図3B)を形成するには、まず、
図1Aのように、各冷却ロールT1,T2が前記シリンダ5により退避される。この退避により、吐出部Tの吐出口TOから新たに吐出され垂下されるプレエラストマーMは各冷却ロールT1,T2に接触しない状態になる。すなわち、各冷却ロールT1,T2は
図1Aの垂下されたプレエラストマーMに接離可能に設けられている。
【0044】
図3Aにおいて、第1および第2シートS1,S2用の各パスライン1,1AはシートS1,S2を搬送するための1つまたは複数の第1ロール21および接合ロールArなどで形成されている。前記積層体のパスライン2は積層体Wを搬送するための接合ロールArおよび第2ロール22などで形成されている。前記フィルム用パスライン3はプレエラストマーMまたはエラストマーフィルムFを搬送するための第1冷却ロールT1および第2冷却ロールT2と、エラストマーフィルムFをシートS1,S2に接合するための接合ロールArなどで形成されている。
図3Bの積層体Wのパスライン2は前記一対のシート用のパスライン1,1Aおよびフィルム用パスライン3が接合ロールArにおいて合流して形成される。
【0045】
つぎに、
図3Bの新たな積層体Wの生産に先立って必要なフィルム用パスライン3の形成工程について説明する。
【0046】
図1Aにおいて、フィルム用パスラインの形成工程においては前記吐出口TOから垂下されたプレエラストマーMの一方の側面に対向するように前記第1冷却ロールT1が配置される。前記一方の側面とは反対の他方側面に対向するように第2冷却ロールT2(押付ロール)が配置される。したがって、吐出部Tから吐出されたプレエラストマーMは第1冷却ロールT1と第2冷却ロールT2との間を第1冷却ロールT1および第2冷却ロールT2に接触することなく、真下に向かって垂下される。
【0047】
すなわち、
図1Aの前記プレエラストマーMとなる溶融状態の樹脂が吐出部Tの吐出口TOから垂下され、フィルム状のプレエラストマーMが連続的に吐出される。こうして、プレエラストマーMは鉛直面に沿って、1つの平らな平面上を各ロールT1,T2,Arに触れることなく垂下される。
【0048】
一方、前記吐出口TOの真下においては、第1シート用の第1パスライン1に沿って第1シートS1が横方向にないし斜め横方向に搬送される。この第1シートS1が搬送されている状態で、
図1Bのように、前記吐出口TOから吐出されて垂下した前記プレエラストマーMの先端部Eは第1シートS1で受け止められる。
【0049】
この受け止め後、
図2Aに示すように、前記先端部Eは第1シートS1に重なり、当該互いに重なった(二重になった)状態の第1シートS1およびプレエラストマーMは第1シート用の第1パスライン1に沿って搬送される。前記互いに重なった状態の第1シートS1およびプレエラストマーMは第1シート用の第1パスライン1から前記接合ロールAr(接合部(合流部の一例))の外周面に沿うように導入される。
【0050】
この導入により、
図2Bのように、プレエラストマーMは吐出口TOから接合ロールArの外周面に接するように直線的に搬送され始める。その後、
図3Aのように、第1冷却ロールT1および第2冷却ロールT2がプレエラストマーMに向かって移動される。
【0051】
こうして、吐出口TOから連続的に吐出されるプレエラストマーMが第1冷却ロールT1および第2冷却ロールT2の外周面に接し、かつ、第2冷却ロールT2とニップロールNrとの間にエラストマーフィルムFが挟まれたフィルム用パスライン3が形成(完成)される。
【0052】
前記フィルム用パスライン3において、プレエラストマーMが第1冷却ロールT1の外周面に巻き付いてプレエラストマーMが冷却される第1冷却工程が実行される。製造装置が少なくとも1つの冷却ロールを備えている場合、プレエラストマーMが当該冷却ロールに接した段階でフィルム用パスラインが形成されたことになる。
【0053】
また、前述のように、プレエラストマーMの前記垂下方向と交差する方向に第2冷却ロールT2である前記押付ロールが移動して、プレエラストマーMが第1冷却ロールT1に接触する距離を大きくする。前記押付ロールは第2冷却ロールT2であり、第1冷却ロールT1で冷却された前記プレエラストマーMが第2冷却ロールT2により更に冷却される。これによりプレエラストマーMは固化してエラストマーフィルムFとなる。
なお、各冷却ロールは溶融樹脂またはフィルムを冷却するためのもので、冷媒が流れることによりロール表面を冷却する流路を内部に備えていてもよい。
【0054】
一方、ニップロールNrは前記接合ロールArよりも上流においてエラストマーフィルムFを挟む。前記フィルム用パスライン3が形成された後に、前記ニップロールNrにおけるエラストマーフィルムFの搬送速度Vsよりも前記接合ロールArにおけるエラストマーフィルムFの搬送速度Vが大きいことによって、両シートS1,S2に接合される前の前記エラストマーフィルムFは搬送方向に伸張される。これにより、エラストマーフィルムFにプレストレス(張力)が付与される。
【0055】
図3Aの前記フィルム用パスライン3の形成工程後に、
図3BのようにホーンHが接合ロールArに対し超音波振動を繰り返し、エラストマーフィルムFを接合ロールAr上において両シートS1,S2に接合して前記積層体Wが生成される。すなわち、接合ロールArの外周面に沿って両シートS1,S2およびエラストマーフィルムFが重なって搬送され、接合ロールArに対しホーンHが超音波振動することにより、両シートS1,S2およびエラストマーフィルムFに超音波エネルギーが付与され、不織布シートとエラストマーフィルムとが接合されて、積層される。
なお、前記接合は前記積層体Wが伸縮領域と接合領域とを交互に有するように、例えば、間欠的になされてもよい。
【0056】
ところで、
図1Aの吐出口TOから吐出されたプレエラストマーMは生成当初は品質にバラツキがある。したがって、生成当初のプレエラストマーMは切断除去されて廃棄されてもよい。
【0057】
以上のとおり、図面を参照しながら好適な実施例を説明したが、当業者であれば、本明細書を見て、自明な範囲で種々の変更および修正を容易に想定するであろう。
たとえば、冷却ロールは1つでもよい。また、冷却ロールを設けずに、プレエラストマーを空冷により冷却してもよい。
したがって、そのような変更および修正は、請求の範囲から定まる本発明の範囲内のものと解釈される。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は使い捨てオムツなどの着用物品の積層体の製造に利用できる。
【符号の説明】
【0059】
1:シート用の第1パスライン 1A:シート用の第2パスライン
2:積層体のパスライン 3:フィルム用パスライン
4:ガイダ 5:シリンダ 6:スライドベース
21:第1ロール 22:第2ロール
F:エラストマーフィルム(熱可塑性フィルムの一例)
M:プレエラストマー(フィルム原料の一例)
S1:第1シート S2:第2シート W:積層体
E:先端部
Ar:接合ロール H:ホーン Nr:ニップロール
T:吐出部 TO:吐出口
T1:第1冷却ロール T2:第2冷却ロール