(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-28
(45)【発行日】2023-01-12
(54)【発明の名称】表面改質基板
(51)【国際特許分類】
H01M 50/403 20210101AFI20230104BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20230104BHJP
H01M 50/417 20210101ALI20230104BHJP
H01M 50/449 20210101ALI20230104BHJP
C08F 8/30 20060101ALI20230104BHJP
C08F 12/30 20060101ALI20230104BHJP
D06M 15/233 20060101ALI20230104BHJP
D06M 13/342 20060101ALI20230104BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20230104BHJP
D06M 14/28 20060101ALI20230104BHJP
【FI】
H01M50/403 E
H01M50/489
H01M50/417
H01M50/449
C08F8/30
C08F12/30
D06M15/233
D06M13/342
C09K3/00 R
D06M14/28
(21)【出願番号】P 2021079957
(22)【出願日】2021-05-10
(62)【分割の表示】P 2018229123の分割
【原出願日】2014-01-17
【審査請求日】2021-06-04
(32)【優先日】2013-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598064680
【氏名又は名称】セルガード エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】ストークス,クリストファー ケイ.
【審査官】福井 晃三
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-059367(JP,A)
【文献】特開平04-090877(JP,A)
【文献】特開昭63-041541(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0121623(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/40-50/497
D06M 14/28
C08F 8/30
C08F 12/30
D06M 15/233
D06M 13/342
C09K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面改質多孔質電池セパレータであって、前記表面改質電池セパレータに化学的に共有結合された表面改質剤を含み、前記面改質剤は、カルベン前駆体である基板結合成分を含む、表面改質多孔質電池セパレータ。
【請求項2】
前記基板結合成分はニトレン前駆体をさらに含む請求項1に記載の表面改質多孔質電池セパレータ。
【請求項3】
前記表面改質成分は、親水性成分、疎水性成分、親油性成分、疎油性成分、表面エネルギ改質成分、架橋成分、芳香成分、撥水性成分、生物学的成分、およびこれらの組合せからなる群より選択される請求項1
または2に記載の表面改質多孔質電池セパレータ。
【請求項4】
少なくとも1つの膜を含む請求項1に記載の表面改質多孔質電池セパレータ。
【請求項5】
前記膜は、ポリマー材、ポリオレフィン材、ポリプロピレン材、ポリエチレン材、多孔質ポリマー材、多孔質膜、ポリマー表面層、およびこれらの組合せからなる群より選択される請求項4に記載の表面改質多孔質電池セパレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2013年1月18日出願の米国仮特許出願第61/754,100号明細書に対する優先権及びその利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
少なくとも選択された実施形態によれば、本発明は、新規の、改善された又は最適化された表面改質剤、このような薬剤によって製作又は改質された材料、このような薬剤及び/又は改質された材料を製作及び/又は使用する方法、及び/又はこのような薬剤及び/又は改質された材料を組み込んだ新規の、改善された又は最適化されたポリマー及び/又は織物材料、セパレータ、衣服、布地などを指向する。少なくとも特定の実施形態によれば、本発明は、ポリマー及び/又は織物材料の表面改質剤、改質された材料、ポリマー及び/又は織物材料を改質及び/又は官能化するために表面改質剤を製作及び/又は使用する方法、及び/又は表面改質された又は官能化されたポリマー及び/又は織物材料を使用する方法を指向する。
【0003】
少なくとも特定の実施形態によれば、本発明は、1つ又は複数のニトレン及び/又はカルベン官能基を形成するために、任意的に熱又は光の存在下で化学反応をすることができる適切なニトレン及び/又はカルベン前駆体を含む表面改質剤を指向する。場合によっては好ましいニトレン前駆体は、1つ又は複数のニトレン官能基を形成するために熱又は光の存在下で化学反応をすることができるスルホニルアジド含有スチレンモノマー、ポリマー又はコポリマーなどの材料を含むが、それらに限定されない。少なくとも選択された特定の実施形態は、例えば、活性化するとポリマー又は織物材料の表面と化学反応して、特定の又は所望の化学的表面官能性をポリマー又は織物材料の表面に与えることができる、スルホニルアジド官能基などの1つ又は複数のスルホニル官能基を含有するスチレンスルホン化モノマー、ポリマー又はコポリマーを含む表面改質剤を指向する。
【0004】
与えられた改質又は官能性は、ポリマー及び/又は織物材料の物理特性を変化させる、又は材料を新しい官能的役割で使用可能にすることができる。例えば、官能性は、親水性、疎水性、親油性、疎油性などのような特性をポリマー及び/又は織物材料に与えることができる、及び/又は官能性は、ポリマー又は織物材料の表面エネルギーを変化させて、ポリマー及び/又は織物材料を改質し、特定の最終使用用途に適切なものとすることができる。さらに、特定の表面改質は新しい官能的役割のために特定の官能性を提供することができる。例えば、与えられた官能性は、材料が相互作用的になる、例えば他の分子などの他の材料と相互作用できる用途に材料を使用可能にすることを目的とすることができる。他の例は、改質された又は官能化材料が他の材料、コーティング、層などと相互作用する特定の用途を含むが、それらに限定されず、電気化学セル又は電池、織物、衣服、濾過、吸着、試験、薬物送達、検体感知、医療機器、医療診断装置などに使用する電池のセパレータ、バリア布地、膜、基層、層、布地、織物などの用途に特に適切とすることができる。
【背景技術】
【0005】
ポリマー又は織物材料の表面の物理的又は化学的性質を改質する様々な方法が存在する。ポリマー又は織物材料の表面に対する特定の既知の改質は一過性で、様々な最終使用用途のポリマー及び/又は織物基材を永続的に改質しないことが多い。
【0006】
このような既知の方法の1つは、例えば(特殊な表面改質剤を使用せず)紫外線(のみ
)、プラズマ処理、コロナ処理、又はフッ素酸化を使用したポリマー又は織物基材の表面の処理又は前処理である。このような処理は過酷なことがあり、薄膜及び特定のポリマークラスにはなおさらである。これらの方法を使用すると、ポリマー基材の表面に機械的又は化学的損傷の危険を引き起こすことがある。損傷は、場合によっては意図された最終使用用途のための改質されたポリマー基材の性能を損なうことがある。
【0007】
さらに一般的には、ポリマー又は織物基材の表面を処理又は前処理する他のこのような既知の方法には、例えば既知の手順に従ってポリマー又は織物基材の表面に何らかの官能性材料をコーティング、浸漬コーティング、噴霧などを施すことを含む。このような既存の処理は耐久性がない場合があり、時間とともに磨耗してポリマー又は織物基材の表面から除去され、ある時間の後、ポリマー又は織物材料がもはや意図された最終使用用途に適切でなくなることがある。
【0008】
したがって、少なくとも特定の用途又は使用では、ポリマー又は織物材料の表面の物理的及び/又は化学的性質を改質するために改善された方法が必要とされる。特に、様々な最終使用用途、表面改質されたポリマー又は織物材料、改質された官能化ポリマー、官能性ポリマー、このような材料の使用などのために、ポリマー又は織物基材を永続的に改質する改善された又は新規の方法が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
少なくとも選択された実施形態によれば、本発明は、ポリマー材料の1つ又は複数の表面の物理的及び/又は化学的性質を改質する新しい、改善された又は最適化された方法、様々な最終使用用途、表面改質されたポリマー材料、改質された官能化ポリマー、官能性ポリマー、このような材料の使用などのためにポリマー基材を永続的に改質する改善された、又は新規の方法を提供する、又は少なくともそれに対する要求に対応することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の少なくとも特定の実施形態は、上記要求に対応することができ、改質された官能化ポリマー、官能性ポリマー、及び改質された官能化ポリマーを含む化学的に改質された基材、官能化ポリマーを改質する方法及び/又は改質された官能化ポリマーを使用して基材の表面と化学的に反応させる方法、及び/又はこのような化学的に改質された基材を使用する方法を指向する。
【0011】
また、本発明は、ポリマー又は織物材料の1つ又は複数の表面(又は側部)の物理的及び/又は化学的性質を改質するために表面改質剤を使用する改善された方法、及び/又は様々な最終使用用途に対してポリマー又は織物基材を永続的に改質する改善された又は新規の方法を提供することができる。
【0012】
さらに、本発明は、表面改質剤を使用してポリマー及び/又は織物材料を改質する改善された方法、ポリマー及び/又は織物材料を改質及び/又は官能化するために表面改質剤を製作及び/又は使用する方法、及び/又は表面改質された又は官能化ポリマー及び/又は織物材料を使用する方法を提供することができる。また、本発明は、ポリマー又は織物材料の表面の物理的及び/又は化学的性質を改質するために表面改質剤を使用する改善された方法、及び/又は様々な最終使用用途に対してポリマー又は織物基材を永続的に改質するために改善された又は新規の方法を提供することができる。
【0013】
表面改質剤は、反応するとニトレン及び/又はカルベン官能基を形成することができる薬剤であることが、場合によっては望ましい。これで、ニトレン及び/又はカルベン官能
基を使用して、表面と反応させ、それに所望の官能性を与えることができる。表面改質剤は、反応するとニトレン官能基を形成することができる薬剤であることが、場合によっては好ましい。これで、ニトレン官能基を使用して、表面と反応させ、それに所望の改質及び/又は官能性を与えることができる。多孔質表面では、与えられた改質及び/又は官能性は表面全体にわたることができ、孔上、孔内、表面上、及び孔の下まで、1つの表面上のみ、両面上などの部分ではない。
【0014】
少なくとも選択された実施形態は、表面改質剤を調製する方法を指向し、これはスチレンスルホニルアジド含有モノマーを含む。スルホニルアジド含有モノマーは、熱又は紫外(UV)光の存在下で化学反応し、ニトレンとして知られる化学種を形成することができる。ニトレンは、六価電子のみを有する電子的に中性の化学種である反応中間体である。ニトレンは、飽和炭化水素、さらに他のC-H又はヘテロ原子結合などの特定の基材と、挿入反応によって反応することができ、ニトレンが基材のC-H又はヘテロ原子結合のうち1つ又は複数に入り込む。ポリマーのニトレン基は、基材の化学的特性を改質する目的で、多官能性ニトレン前駆体が基材の1つ又は複数のC-H又はヘテロ原子結合を活性化させて、それに共有結合で入り込むことができる反応性部位を提供する。
【0015】
少なくとも選択された実施形態は、スルホニルアジド含有ポリマー又はコポリマーを含む表面改質剤を調製する方法を指向する。スルホニルアジド含有ポリマー又はコポリマーは、熱又は紫外光の存在下で化学反応し、ニトレンとして知られる化学種を形成することができる。ニトレンは、六価電子のみを有する電子的に中性な化学種である反応中間体である。ニトレンは、ニトレンが基材のC-H又はヘテロ原子結合のうち1つ又は複数に入り込む挿入反応によって基材と反応することができる。スチレンポリマー又はコポリマーのスルホニルアジド基は、基材の化学的特性を改質する目的で、自身を基材の1つ又は複数のC-H又はヘテロ原子結合に共有結合で入り込むことができる反応性ニトレン部位を提供する。
【0016】
このようにして、ニトレン前駆体の官能基は、基材の化学的特性を改質する目的で、スルホニルアジド含有ポリマー又はコポリマーを基材に結合する反応性部位又は架橋コネクタとして働く。例えば基材がポリマー又は織物材料である場合、スチレンスルホニルアジド含有ポリマー又はコポリマーが付着すると、独自に又は所望の用途に対して適切なインターフェースをとるように選択された1つ又は複数のポリマーと混合することによって、ポリマー又は織物材料の表面の化学反応性を改質することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明による、改質された官能化基材、材料、層、基部、膜、セパレータ、多孔質膜、非多孔質前駆体膜などを形成するために基材の表面を改質又は官能化する一実施形態の図である。
【
図2】本発明による、改質された官能化基材、材料、層、基部、膜、セパレータ、多孔質膜、非多孔質前駆体膜などを形成するために基材の表面を改質又は官能化する別の実施形態の図である。
【
図3】本発明による、改質された及び/又は官能化基材、材料、層、基部、膜、セパレータ、多孔質膜、非多孔質前駆体膜などの概略側面図又は端面図を示す。
【
図4】本発明による、改質された及び/又は官能化基材、材料、層、基部、膜、セパレータ、多孔質膜、非多孔質前駆体膜などの2つの概略側面図又は端面図を示す。
【
図5】本発明による、コーティング、層などのような追加の成分Dを含む、改質された及び/又は官能化基材、材料、層、基部、膜、セパレータ、多孔質膜、非多孔質前駆体膜などの概略側面図又は端面図を示す。
【
図6】本発明による、コーティング、層などのような追加の成分Dを含む、改質された及び/又は官能化基材、材料、層、基部、膜、セパレータ、多孔質膜、非多孔質前駆体膜などの2つの概略側面図又は端面図を示す。
【
図7】本発明の様々な実施形態により製作した材料のFTIRスペクトルである。
【
図8】本発明の様々な実施形態により製作した材料を表すDSC曲線である。
【
図9】本発明の様々な実施形態により製作した材料の熱重量分析の図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の少なくとも選択された実施形態は、ポリマー及び/又は織物材料の表面改質剤、ポリマー及び/又は織物材料を改質又は官能化するために表面改質剤を製作及び/又は使用する方法、及び/又は表面改質された又は官能化ポリマー及び/又は織物材料を使用する方法、及び/又は表面改質された又は官能化ポリマー及び/又は織物材料を使用した又は組み込んだ生成物を指向する。また、本発明は、ポリマー又は織物材料の1つ又は複数の表面(又は側部又は部分)の物理的及び/又は化学的性質を改質するために表面改質剤を使用する改善された方法、さらに様々な最終使用用途のためにポリマー又は織物基材又は材料を永続的に改質する改善された又は新規の方法を提供することができる。
【0019】
少なくとも選択された実施形態は、表面改質剤を調製する方法を指向し、該薬剤を使用してポリマー又は織物基材の表面を改質又は官能化することができる。特定の実施形態の表面改質剤は、ニトレン又はカルベンの官能基、反応性部位及び/又は架橋部位を形成することができる前駆体を含む。1つの特定の実施形態では、表面改質剤はスチレンスルホニルアジド含有モノマー、ポリマー又はコポリマーを含む。スルホニルアジド官能性モノマーは適切な条件で、例えば熱又は紫外光の存在下で化学反応し、ニトレンとして知られる化学種を形成することができる。ニトレン(R-:N:)は、六価電子のみを有し、電子的に中性の化学種である反応中間体である。ニトレンは、ニトレンが基材のC-H又はヘテロ原子結合に入り込む挿入反応によって、ポリマー又は織物基材と反応することができる。以下の概略図のステップ1は、R-N=N+=N-として表され(一般的にR-N3とも呼ばれる)、UV光又は熱に曝露するとニトレンR-:N:を形成し、副生成物として窒素ガスがあるアジドの一般化した例を表す。
【0020】
【0021】
【0022】
上記概略図のステップ2で、ニトレンは次に例示的なC-H結合に入り込んでアルキル又はアリール成分と反応し(本図ではR’-CH3として図示)、R-N-CH2-R’を形成することができる。ニトレン中間体は、例示的炭化水素基材の化学的特性を改質する目的で、例示的R’-CH3炭化水素基材の1つ又は複数のC-H結合内に共有結合で入り込む反応性部位である。
【0023】
本発明の特定の実施形態は、R-S=O2-N3として表されるスルホニルアジド含有モノマーを調製する方法を指向し、これは熱又はUV光に曝露するとニトレン中間体を形成することができる。上記ニトレン中間体は、基材の化学的特性を改質する目的で基材と
化学反応し、C-H又はヘテロ原子結合のうち1つ又は複数に入り込むことができる。スルホニルアジド含有モノマーが活性化してニトレン中間体になり、ポリマー又は織物材料の1つ又は複数のC-H又はヘテロ原子結合に入り込むと、スルホン化官能化モノマーの化学的特性に基づいてポリマー又は織物材料の表面の化学反応性を改質することができる。1つのこのような例が、スルホン化スチレンアジドモノマー4-スチレンスルホニルアジドである。
【0024】
【0025】
さらに、4-スチレンスルホニルアジドがUV光又は熱に曝露すると、ポリマー又は織物材料の1つ又は複数のC-H又はヘテロ原子結合に入り込み、ポリマー又は織物材料の表面の化学反応性を改質することができる。スルホニルアジド基を含有するモノマーを含むポリマーは、活性化すると、ポリマー又は織物材料又は基材の表面に沿って様々なC-H又はヘテロ原子結合に入り込み、ポリマー又は織物材料基材の表面と反応するスルホニルアジド含有ポリマーの組成に基づいて、ポリマー又は織物材料の表面の化学反応性をある程度変更することができる複数のニトレン中間体を生成することができる。
【0026】
他の実施形態は、表面改質剤の調製方法を指向し、薬剤はスルホニルアジド含有小分子のような小分子を含む。スルホニルアジド含有小分子が熱又はUV光に曝露してニトレン官能基に変換されると、これはポリマー又は織物材料のC-H又はヘテロ原子結合に入り込むことができ、選択されたスルホニルアジド含有小分子の化学反応性に基づいてポリマー又は織物材料の表面の化学反応性又は他の界面特性を改質することができる。基本的に、ニトレン前駆体は付着した官能基の化学官能性をもたらし、選択された官能基の化学的特性に基づいてポリマー又は織物材料の表面の化学反応性又は界面特性を変化させる。単純な脂肪族炭化水素で表面を改質することができるスルホニルアジド含有分子の一例は、下式のように表すことができる。
【0027】
【0028】
さらに、1つ又は複数のスルホニルアジド含有分子又はポリマーが熱又は紫外光に曝露して化学反応し、1つ又は複数のニトレンを形成した場合、1つ又は複数のニトレンは、挿入反応によって基材の様々なC-H又はヘテロ原子結合部位にて反応することができ、挿入されたニトレン基の数に応じて、ポリマー又は織物基材の化学官能性又は界面特性をさらに高度に変化させることができる。このようにして、複数のニトレン前駆体は、基材の化学的特性を改質する目的で、反応性部位又は架橋コネクタとして働き、スルホニルアジド含有分子又はポリマーを基材に結合することができる。さらに、基材がポリマー又は織物材料である場合、1つ又は複数のスルホニルアジド含有ポリマーが付着すると、ポリマー又は織物材料の表面の化学反応性を改質し、意図された最終使用用途に適したものにすることができる。
【0029】
2つのモノマーを組み合わせる以外に、このようなスルホニルアジド含有ポリマーを生成する1つの方法は、ポリスルホン酸ビニル又はポリスチレンスルホン酸ナトリウムなどの材料を後重合で改質させることによる。これらのタイプのポリマーは、以下で描かれるような標準的化学的改質技術により、スルホニルアジドに容易に変換することができる。
【0030】
【0031】
本開示の別の実施形態は、表面改質剤の調製方法を指向し、該薬剤はスルホニルアジド含有ポリマーを含む。一般的に、本明細書で述べる様々な実施形態では、表面改質剤は、成分B(成分Bが、ポリマー又は織物基材を官能化するために使用されるニトレン前駆体材料から誘導されたニトレン基のような架橋又は反応性材料を含有する場合)、又は成分A+B(成分Bが以上で定義され、成分Aがポリマー又は織物基材と対になって、特定の配合、特性、化学的性質などをポリマー又は織物基材に与える何らかの官能性ポリマー又は官能基である場合)と呼ぶことができる。さらに、成分Bは、本明細書の様々な実施形態で、単にモノマーXを含有することができ、ここでモノマーXは反応性ニトレン又はカルベン官能基の前駆体であるモノマーを含む。しかし、成分Bは、本明細書の他の実施形態では、モノマーX+モノマーYを含有することができ、ここでモノマーYは(モノマーXのみを含有する成分Bに対して)材料の全体的費用を削減することができる何らかの他のモノマーであるか、ポリマー又は織物基材に何らかの特性又は官能性を与えることができる。
例示により、スルホニルアジド含有ポリマーは、ホモポリマー系内で以下のモノマーX
【0032】
【0033】
すなわち、スルホン化スチレンアジドモノマーを重合することによって調製することができる。このようなホモポリマー系では、上記命名法を用いて、成分B、すなわち、表面
改質剤は(モノマーX+Yではなく)モノマーXのみを含む。他の実施形態では、スルホニルアジド含有ポリマーは、モノマーX、すなわち、スルホン化スチレンアジドモノマーを重合し、他のモノマーYを含めることによって調製することができ、ここでモノマーYはニトレン(又はカルベン)前駆体材料を含有しない。モノマーYの幾つかの例は、例えば、スチレン、ペンタフルオロスチレン、又はスルホン化スチレンのナトリウム塩を含み、これらはすべて、それぞれ下式で示される。
【0034】
【0035】
上記方法は、結果となるスルホニルアジド含有ポリマーを、直交官能基又はさらなる配合にとって有利なことがある代替的表面特性を組み込むことによって、所望の特性になるようにさらに容易に調節されるという利点を有する。
さらに、モノマーYの他の例は以下のようにすることができる。
【0036】
【0037】
ここで、モノマーYの第一及び第二の例はそれぞれメタクリレートモノマー及びアクリレートモノマーであり、これらはR基の選択に基づいて表面改質剤の物理特性(ガラス転移温度など)を変化させることができ、第三の例は、さらなる直交化学反応の機会を提供する反応性化学種である無水物である。モノマーYの追加の例は、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン及び/又はN-ビニルピロリドンを含むことができるが、それらに限定されない。
【0038】
以下に示す他の例は、以下の例のうちいずれか1つを含むことができるが、それに限定されない特定の化学官能性があるR基を有する第二のモノマー(モノマーY、以下で量「m」で示す)で共重合したスルホニルスチレンアジド含有モノマー(モノマーX、以下で量「n」で示す)を重合することによって生成されたコポリマーである。
【0039】
【0040】
調製されたスルホニルアジド含有コポリマーは、熱又は紫外光に曝露すると化学反応して、ニトレン中間体を形成することができる。ニトレンは挿入反応によってポリマー又は織物基材と反応し、ここでニトレン官能基は基材のC-H又はヘテロ原子結合のうち1つ又は複数に入り込む。さらに、スルホン化スチレンコポリマーの反復単位であるnとmの比率は、0.1≦n/(n+m)≦0.75とすることができる。その別の表示方法は、特定の実施形態では、モノマーのモル比によるアジド含有率(n/(n+m))を、あるパーセンテージで、ここでは10~75%で表示することができる。特定の好ましい実施形態では、モノマーのモル比による上記アジド含有率(n/(n+m))を10~40%とすることができ、他の好ましい実施形態では、モノマーのモル比による上記アジド含有率(n/(n+m))を15~30%とすることができ、さらに他の好ましい実施形態では、モノマーのモル比による上記アジド含有率(n/(n+m))を20~25%とすることができる。
【0041】
このようにして、ニトレン官能基のうち1つ又は複数は、基材の化学的特性を改質する目的で、スルホニルアジド含有コポリマー、すなわち、成分B(ここではモノマーX+Yを含有する)を、又は幾つかの実施形態では成分A-Bを基材に結合する反応性部位又は架橋コネクタとして働く(ここで、ポリマー又は織物基材を本明細書では成分Cとも呼ぶ)。例えばスルホン化スチレンコポリマーがR基(例えば「Y」モノマー中のR基)としてペンタフルオロスチレンを含有する場合、ニトレンのうち1つ又は複数を炭化水素基材又はポリマー又は織物材料に挿入すると、ポリマー又は織物材料の表面の表面エネルギーを低下させることができる。
代替的官能性があるスルホニルアジド含有官能化材料の他の例は、ダンシルアジドであり、これは以下で示すように塩化ダンシルとナトリウムアジドとの反応によって形成される。
【0042】
【0043】
ダンシルアジドの興味深い化学的特性は、イオウ原子が窒素に結合すると蛍光を発することである。したがって、ダンシルアジドは、タンパク質のバイオマーカとして有用なことがある。ダンシルアジドがUV光又は熱の存在下で反応してニトレンを形成し、ニトレ
ンがポリマー又は織物基材と共有結合すると、基材は永続的に蛍光を発し、ダンシルニトレンの1つ又は複数のニトレン基とポリマー又は織物基材の1つ又は複数のC-H結合との共有結合的付着が生じたことを示す。その後の洗浄で、基材上のダンシル発光体の耐久性を検証することができる。以下の概略図は、UV光又は熱への曝露時にニトレンが形成され、その後にニトレンがポリマー又は織物基材と反応することを示し、これは本図ではR’-CH3で表される。
【0044】
【0045】
特定の実施形態では、ダンシルアジドをヘキサン溶液からコーティングとしてポリプロピレン薄膜基材に適用し、次に薄膜基材をUV光に曝露すると、その結果、薄膜が強烈な蛍光を発し、溶剤(アセトンなど)及び/又は水ですすいだ後も減少せず、1つ又は複数の分子がニトレン中間体を介してポリプロピレン薄膜基材の表面に共有結合していることを示す。
【0046】
他の例として、スルホニルアジド含有コポリマーが(以前に可能なモノマーYとして示した)スルホン酸塩官能基を含有する場合、ニトレン中間体をポリマー又は織物上に付着させると、処理された材料の表面エネルギーの著しい増加を示した。ポリマー又は織物材料の表面の表面エネルギーの増加又は減少は、ポリマー又は織物材料の表面の化学的特性を変化させ、これによって表面が着色剤、仕上げ剤、防水剤、抗菌剤、油、芳香剤などのような他の化学薬品と多少化学反応できるようになる。
【0047】
ポリマー又は織物基材材料の特性を化学的に改質することの他の例には、スルホニルアジド含有モノマーを、化学官能性に基づいて選択されたモノマー又はポリマーと共重合させることによって、ポリマー又は織物基材を親水性、疎水性、親油性又は疎油性にすることが含まれるが、それらに限定されない。例えば、スルホニルアジド含有モノマーが、親水性、疎水性、親油性又は疎油性官能基を含有するコポリマーと重合されている場合、親水性、疎水性、親油性、疎油性官能基の化学的特性をポリマー又は織物基材の表面に化学的に付着させることができる。
【0048】
さらに、本発明の選択された実施形態によれば、成分Bと定義されているスルホニルアジド含有モノマー又はポリマーと、成分Aと定義されているコポリマー、モノマー、ポリマー、又は他の官能基を化合させると、成分A-Bを形成することができ、これをコーティングとしてポリマー又は織物材料の表面に適用することができる(ポリマー又は織物材料も成分Cと呼ぶことができる)。ポリマー又は織物材料のコーティングした表面を熱又はUV光に曝露すると、成分A-B(又は成分B)上に1つ又は複数のニトレン反応性基を生成することができ、該反応性基は成分A-B(又は成分B)をポリマー又は織物材料(成分C)の表面に共有結合して、改質された基材A-B-C(又はB-C)を形成することができる。
【0049】
幾つかの実施形態では、熱又は光によって活性化するとニトレン及び/又はカルベン基を生成する材料を含有する成分Bは、モノマーX又はモノマーX+Yを含む。例えば、図
1では成分BはモノマーX及びYを含む。
図1では、多種多様な最終用途のためにポリマー又は織物材料(成分C)の化学反応性を変化させるために、ニトレン反応によって成分Bをポリマー又は織物材料(成分C)の表面に付着させる。
【0050】
図2に示す同様のアプローチは、多種多様な用途のためにポリマー又は織物材料(成分C)の化学反応性を変化させるために、ニトレン反応によって成分Bをポリマー又は織物材料(成分C)の表面に付着させることを含む。
図2に示す実施形態では、成分BはモノマーX+YではなくモノマーXを含む。
【0051】
スルホニルアジドがUV光に曝露すると、それがニトレン基を形成し、これは副生成物としてN2との追加反応によってC-H又は他のヘテロ原子結合への挿入反応を開始することができる。成分B又は成分ABが選択された波長の範囲を有する最適化したUV光に曝露すると、改質されたアジドは、新たに生成されたその反応性ニトレン末端基とともに標識付け試薬としても機能することができる。基材材料の表面上の部位でニトレン基が反応すると、官能化された成分AB(又は成分B)を挿入し、新しい所望の標識付け機能を成分C、ポリマー又は織物基材に導入する。
【0052】
さらに、挿入反応は、化学ラジカル種が挿入反応部位からの伝播を開始できないようにするという利点を有する。ポリエチレン(PE)又はポリプロピレン(PP)のようなポリオレフィン基材の場合、上記態様は重要である。何故なら、UV光に曝露した場合、ラジカルがポリオレフィンポリマーの主鎖に導入されると、PE及びPPが架橋結合又は分解する傾向があるからである。
【0053】
このようにして、ポリマー又は織物材料のような基材材料の表面を所望の化学的様式で改質又は標識することができ、ニトレン基の化学反応性のおかげで、所望の表面特性を多種多様な最終用途向けに注文製作することができる。1つのこのような例は、通常は反応性が低い表面を反応性表面に変化させることによって、ポリプロピレンのようなポリオレフィンの表面の表面エネルギー及び/又は疎水性及び/又は疎油性を変更することである。
【0054】
大部分のポリオレフィンは、材料の機械的又は化学的安定性に有意な結果を招かずに容易に化学的改質を受け入れることはないので、基本的に「非官能性」である。ニトレン系中間体は、多くの従来の表面改質アプローチで通常は生じるような深刻な損傷又は劣化、場合によっては意図された最終使用用途に対する改質されたポリオレフィン基材の性能を低下させることがある損傷又は劣化がない状態で、非官能性ポリオレフィンを改質する機会を提供する。
【0055】
本発明の少なくとも特定の選択された実施形態は、改質された官能化ポリマー、官能性ポリマー及び改質された官能化ポリマーを含む化学的に改質された基材、官能化ポリマーを改質する方法及び/又は改質された官能化ポリマーを使用して、基材の表面と化学反応させる方法、及び/又はこのような化学的に改質された基材を使用する方法を指向する。少なくとも特定の実施形態は、改質された官能化ポリマー、官能性ポリマー、及び多孔質、微孔質、及び非多孔質ポリマー基材を化学的に改質するために官能化ポリマーを改質する方法、及びこのような改質された基材を使用する方法を指向する。少なくとも選択された実施形態では、カルベン基R-C:又はニトレン基R-:N:は、ヘテロ原子挿入の化学反応を実行することができる反応性中間体である。カルベン又はニトレン中間体は、様々な熱反応及び光化学反応から形成することができる。ニトレン前駆体の例には、アリールアジド、アシルアジド、アジドホルメート、ホスホリルアジド、ホスホニル、又はスルホニルアジドがある。カルベン前駆体の例には、ハロアルカン、ジアゾアルカン、ジアゾケトン、ジアゾンアセテート、ベータ-ケト-アルファ-ジアゾアセテート、脂肪族アゾ又はジアジリジンがある。幾つかの実施形態では、カルベン材料は、上述したカルベン前駆体のうち1つ又は複数を使用してアルファ脱離反応から生成することができる。
【0056】
本発明の少なくとも特定の選択された実施形態は、多孔質ポリマー基材の表面を改質するという要求に対応する。本発明の少なくとも選択された実施形態は、上記要求に対応する、及び/又は改質された多孔質ポリマー膜基材、改質されたポリマー多孔質膜基材を製作する方法、及び/又は改質されたポリマー多孔質膜基材を使用する方法、化学的に改質されたポリオレフィン微孔質膜、化学的に改質されたポリオレフィン微孔質膜を製作する方法、及び/又は化学的に改質されたポリオレフィン微孔質膜を使用する方法、化学的に改質されたポリオレフィン微孔質電池セパレータ又は電池セパレータ膜、化学的に改質されたポリオレフィン微孔質電池セパレータ又は電池セパレータ膜を製作する方法、及び/又は化学的に改質されたポリオレフィン微孔質電池セパレータ又は電池セパレータ膜を使用する方法、カルベン又はニトレン中間体を含有する改質された官能化ポリマーをポリオレフィンの炭素水素結合と反応させて、ポリオレフィンで炭素又は窒素炭素共有結合を形成することによってポリオレフィン微孔質電池セパレータ又はセパレータ膜を化学的に改質すること、リチウムイオン充電式電池のポリオレフィン微孔質バッテリセパレータ又はセパレータ膜の親水性又は湿潤性を改善する方法、及び/又はポリオレフィン微孔質電池セパレータ又はセパレータ膜に架橋結合を導入する方法などを指向する。
【0057】
本発明の少なくとも選択され場合によっては好ましい実施形態によれば、ポリオレフィン微孔質セパレータ又は膜の少なくとも一部の化学的改質は、カルベン及び/又はニトレン中間体を含有する官能化ポリマー又はコポリマーと、例えばポリオレフィンの炭素水素結合によって遂行することができる。カルベン及び/又はニトレン中間体を含有して官能化ポリマー又はコポリマーに基づく上記化学反応又は処理は、リチウムイオン充電式電池のポリオレフィン微孔質セパレータの湿潤性をさらに永続的に改善する方法を提供する。また、ポリオレフィン微孔質セパレータ膜の少なくとも表面層において、カルベン及び/又はニトレン中間体を含有して官能化ポリマー又はコポリマーとC-H結合との反応を使用して、架橋官能性をポリオレフィンに導入することができ、これを使用してポリオレフィン微孔質セパレータ又は膜の高温安定性を改善することができる。
【0058】
少なくとも特定の選択された実施形態によれば、本発明は、多孔質ポリマー基材の表面を改質する要求に対応する。本発明の少なくとも選択された実施形態は、上記要求に対応し、改質された多孔質ポリマー膜基材、改質されたポリマー多孔質膜基材を製作する方法、及び改質されたポリマー多孔質膜基材を使用する方法を指向する。さらに特には、本発明は化学的に改質されたポリオレフィン微孔質膜、化学的に改質されたポリオレフィン微孔質膜を製作する方法、及び化学的に改質されたポリオレフィン微孔質膜を使用する方法を指向する。さらに特には、本発明は化学的に改質されたポリオレフィン微孔質の耐水性で通気性の織物膜、化学的に改質されたポリオレフィン微孔質の耐水性/通気性織物膜を製作する方法、及び化学的に改質されたポリオレフィン微孔質の耐水性/通気性織物膜を使用する方法を指向する。少なくとも選択された好ましい実施形態によれば、本発明は、カルベン及び/又はニトレン中間体を含有して改質された官能化ポリマーをポリオレフィンの炭素水素結合と反応させることによって、ポリオレフィン微孔質の耐水性/通気性織物膜を化学的に改質すること、耐水性通気性織物膜の表面エネルギーを減少させるか、それに疎油性を与えて、耐水性/通気性織物の耐汚損性を改善する及び/又は膜の耐水性の耐久性を改善する方法などを指向する。
【0059】
特定の選択された実施形態によれば、本発明は、ポリマー織物繊維の表面を改質するという要求に対応する。本発明の少なくとも選択された実施形態は、上記要求に対応し、改質されたポリマー織物繊維、改質されたポリマー織物繊維を製作する方法、及び改質されたポリマー織物繊維を使用する方法を指向する。さらに特には、本発明は化学的に改質さ
れたポリオレフィン織物繊維、化学的に改質されたポリオレフィン織物繊維を製作する方法、及び化学的に改質されたポリオレフィン織物繊維を使用する方法を指向する。少なくとも選択され場合によって好ましい実施形態によれば、本発明は、カルベン及び/又はニトレン中間体を含有する改質された官能化ポリマーをポリマー織物繊維の炭素水素結合と反応させることによって、ポリマー織物繊維を化学的に改質すること、例えばポリマー織物繊維の表面エネルギーを減少させるか、それに疎油性を与えて、ポリマー織物繊維の耐汚損性を改善する及び/又は織物繊維の耐水性の耐久性を改善する方法などを指向する。
【0060】
本発明の少なくとも特定の目的、実施形態、態様及び/又は実施例は、表面改質されたポリマー材料、改質された官能化ポリマー、官能性ポリマー、改質された官能化ポリマーを含む化学的に改質された基材、及び/又は表面改質されたポリマー材料、改質された官能化ポリマー、官能性ポリマー、及び/又は改質された官能化ポリマーを含む化学的に改質された基材を製作及び/又は使用する方法、官能性ポリマーを改質する方法及び/又は改質された官能化ポリマーを使用して基材の表面と化学的に反応させる方法、及び/又はこのような化学的に改質された基材を使用する方法を指向する。少なくとも特定の実施形態は、改質された官能化ポリマー、官能性ポリマー、及び多孔質及び/又は非多孔質ポリマー基材を化学的に改質するために官能化ポリマーを改質する方法及び/又はこのような改質された基材を使用する方法を指向する。少なくとも選択された実施形態は、改質された官能化ポリマー、官能性ポリマー、及び多孔質及び/又は微孔質ポリマー基材を化学的に改質するために官能化ポリマーを改質する方法及びこのような改質された基材を使用する方法を指向する。少なくとも特定の実施形態は、特定の官能化ポリマーを改質して、基材の表面特性の変化を実行可能にすることを指向する。少なくとも選択され場合によって好ましい実施形態によれば、本発明は、カルベン及び/又はニトレン架橋改質剤(モノマーX又はモノマーX+Yを含むことができる成分B)を使用して、官能化ポリマー(成分B)を化学的に改質し、これによって基材の表面と化学反応して、意図された用途のために基材の表面特性を変化させることができるカルベン又はニトレンの官能性を有する改質された官能化ポリマーA-Bを形成することを指向する。少なくとも選択され場合によって好ましい実施形態によれば、本発明は、カルベン及び/又はニトレン架橋改質剤(モノマーX又はモノマーX+Yを含むことができる成分B)を使用し、ポリマー表面(成分C)を官能化ポリマー(成分A)と共有結合で改質し、改質された基材A-B-Cを形成することを指向する。このような改質は、ポリマー表面の化学反応性を変化させることができ、これによって改質された基材は意図された最終使用又は用途に合わせて特異的に設計された官能性を有することができる。
【0061】
本発明による改質された基材が、例えば
図3から
図6に図示されている。
図3では、改質された基材A-B-Cは、成分A(官能性ポリマー、フルオロポリマー、マーカなど)と成分B(カルベン及び/又はニトレン架橋改質剤)を化合させることによって改質されている成分C(ポリマー又は織物基材)を含む。成分Aは、1つ又は複数の所望の特性(例えば、蛍光マーカ、疎水性、親水性など)を有する改質された基材を提供し、成分Bは成分Cの表面に反応性を与えて、成分Aのような何らかの官能性で改質する。
図4では、2つの改質された基材が、モノマーX及びYを含む成分Bによって改質されている成分C(ポリマー又は織物基材)を含む。
図4では、モノマーXは成分Cの表面を改質するニトレン及び/又はカルベン反応性を提供し、モノマーYは何らかの望ましい特性又は官能性を系に提供する。
【0062】
図5には改質された基材A- B-C-Dが図示され、追加の成分、ここでは成分Dが系に付加されている。
図5では、成分Dは、例えばセラミックコーティングなどのコーティングとすることができる。成分Cは、通常は成分Dとの融和性がない何らかのポリマー材料又は織物基材とすることができる。官能性ポリマーA(成分Aとも呼ぶ)と改質成分Bを化合させて成分Cの表面を改質することにより、成分Dは本発明の表面改質剤がない場合よりも容易かつ高い耐久性で成分Cの表面に付着することができる。同様に、
図6には2つの改質された基材が図示され、追加の成分、すなわち、成分Dが系に付加されている。
図6では、成分Dは、例えばセラミックコーティングなどのコーティングとすることができる。モノマーY及びモノマーXを含む材料で成分Cの表面を改質することにより、成分Dは、本発明の表面改質剤がない場合よりも容易かつ高い耐久性で成分Cの表面に付着する。
【0063】
本発明の少なくとも特定の目的、実施形態、態様、及び/又は実施例は、様々な最終使用又は用途のためにポリマー基材を永続的に改質する改善された又は新規の方法、表面改質されたポリマー材料、改質された官能化ポリマー、官能性ポリマー、このような材料の使用などを指向する。
【0064】
本発明の少なくとも特定の実施形態は、現在の要求に対応することができる、及び/又は新しい、改善された又は改質された表面改質されたポリマー材料、改質された官能化ポリマー、官能性ポリマー、及び/又は改質された官能化ポリマーを含む化学的に改質された基材、及び/又は官能性ポリマーを改質する方法、及び/又は改質された官能化ポリマーを使用して基材の表面と化学反応させる方法、及び/又はこのような化学的に改質された基材を使用する方法を指向する。
【0065】
さらに特には、特定の実施形態は特定の官能化ポリマーを改質し、それによって基材の表面特性の変化を実行できるようにすることを指向する。少なくとも選択された好ましい実施形態によれば、本発明は、ニトレン(又はカルベン)架橋改質剤(モノマーX又はモノマーX+Yを含むことができる成分B)を使用して、官能化ポリマー(成分A又は官能性又は官能化成分A)を化学的に改質し、改質された官能化ポリマーA-Bを形成することを指向することが好ましく、これは次にポリマー基材の表面を化学的に改質し、意図された用途に合わせてポリマー基材の表面特性を変化させることができる。
【0066】
少なくとも選択された実施形態は、表面改質剤を調製する方法を指向し、これは幾つかの実施形態では、熱又はUV光によって開始する化学反応を経験して、ニトレン及び/又はカルベン実体を形成することができるニトレン又はカルベン前駆体官能基を含有するスチレンスルホン化モノマー、ポリマー又はコポリマーを含む。少なくとも選択された実施形態は、ポリマー又は織物材料の表面と化学反応して、特定の又は所望の化学的表面官能性をポリマー又は織物材料に与えることができるニトレン実体を含有するスチレンスルホン化モノマー、ポリマー又はコポリマーを含む表面改質剤を指向する。
【0067】
少なくとも特定の実施形態は、モノマーXをモノマーYと共重合する方法を指向し、ここでモノマーYはポリマー又は織物材料(成分C)の表面エネルギー及び/又は化学的性質を変化させて、モノマーX+Yを含む成分Bを形成することができる何らかの種類の官能基を含有することができる。また、幾つかの実施形態は、親水性、疎水性、親油性、又は疎油性などの所望の官能性を有するように特異的に選択及び/又はポリマー又は織物材料の表面エネルギーを変化させるように選択された官能基を含有する成分Aを、改質されたスチレンスルホニルアジドモノマー、ポリマー又はコポリマーと化合して、熱又は光(UV光など)と反応することができる改質された官能化A-B種を形成し、成分Cと標識された飽和炭化水素基材と化学反応することができるニトレン官能基を有する改質されたスチレンスルホニルニトレンモノマー、ポリマー又はコポリマーを形成して、意図された最終使用用途に適切なA-B-Cポリマー又は織物材料を形成することを指向する。
【0068】
脂肪族又はアリールアジドがUV光に曝露すると、副生成物としてのN2との追加反応によってC-H結合への挿入反応を開始することができるニトレン基を形成する。選択された波長範囲のUV光に対する最適化した曝露があると、改質されたアジドはその反応性
ニトレン末端基とともに架橋及び標識試薬として機能することができる。変性脂肪族又はアリールアジドが、例えば、親水性、疎水性、親油性、又は疎油性のような官能性を有する特定の化学基も含有する場合、基材材料の表面上にある飽和C-H部位におけるR-:N:ニトレン基の反応が、官能化されたA-B成分を挿入し、新しく望ましい化学的官能性を成分C、ポリマー又は織物基材に導入する。
【0069】
ニトレン(R-:N:)は、カルベンの窒素類似体であり、6価電子しか有していない。ニトレン及びカルベンは、官能性及び名目上非官能性の基材の両方に対して一意の反応性を有することができる反応性中間体である。特定の官能性ポリマー基材を改質するのに利用可能な方法があるかもしれないが、本発明は、非官能性であるこれらのポリマー基材、すなわち、官能基を含有していないこれらのポリマー基材を改質するのに非常に適した方法を提供する。大部分のポリオレフィンは基本的に「非官能性」である。何故なら、材料の機械的又は化学的安定性に重大な結果を生ぜずに改質を容易には受容しないからである。ニトレン系中間体は、多くの従来の表面改質アプローチでは通常生じる深刻な劣化がない状態で、非官能性ポリオレフィンを改質する機会を提供する。さらに、本発明のニトレン系中間体を使用すると、官能基に特異的な化学的改質に関係なく、すべてとは言わないまでも大部分のポリマー基材に適用することができる機会を提供することができる。本発明の反応性ニトレン系中間体は、ポリオレフィンポリマー基材の炭素水素の化学結合に入り込むことができるという利点を有する。ニトレン系中間体成分Bの特殊な化学反応性は、選択された官能基をポリマー又は織物基材に付着させる手段を提供する。
【0070】
反応性ニトレン基を形成することができるアジドの例にはアリールアジド、アシルアジド、アジドホルメート、ホスホリルアジド及びスルホニルアジドが含まれるが、それらに限定されない。以下に示す好ましい実施形態は、R基の改質されたポリスチレンポリマーで共重合されたポリスチレンスルホニルアジドポリマーであり、その好ましい‘n/n+m’比率は0.1≦n/n+m≦0.75である。以下に示す改質されたポリスチレンポリマーのR官能基の3つの例はスチレン、2,3,4,5,6-ペンタフルオロスチレン及び4-スチレンスルホネートである。
【0071】
【0072】
本発明の一実施例によれば、複数のニトレン中間体又は前駆体を有する改質剤成分Bを、1つ又は複数の所望の官能性成分Aと混合し、本明細書で「複数反応性部位の改質された官能化ポリマーA-B」と呼ぶ特殊な化学種を形成することができる。適切な比率及び配合の状態であれば、上記ポリマーA-Bは、性質をポリオレフィン性とすることができる所与のポリマー基材と、又は何らかの他の合成又は自然由来のポリマー材料とさらに反応することができ、その結果、特定の望ましい化学官能基がポリマー基材に付着し、これは意図された最終用途に合わせてポリマー基材の化学的構造を特異的に調整する。
【0073】
改質された官能化ポリスルホン化ニトレンモノマー、ポリマー又はコポリマーは、化学反応、特に挿入反応することができ、ポリマー基材の表面上の1つ又は複数のC-H結合に入り込み、その結果、ポリマー基材の表面を共有結合で永続的に改質する。複数のニト
レン生成種を有するポリスチレンスルホン化ニトレンモノマー、ポリマー又はコポリマーは、ポリオレフィンポリマー基材の1つ又は複数のC-H結合に入る挿入反応によって、ポリオレフィンの表面上の複数の部位に付着し、その結果となる官能化材料(ポリオレフィン基材A-B-C)を形成することができる。その結果となる複合材料(ポリオレフィン基材A-B-C)は、ポリオレフィン基材に類似した内部特性を有するが、表面特性はポリスチレンスルホン化モノマー、ポリマー又はコポリマーである。例えば、改質後のポリオレフィン表面は、改質の品質及び程度に応じて、通常のポリオレフィンよりはるかに高い表面エネルギーを有するように見えることがある。また、改質後のポリオレフィン表面は、より高い又は低い程度の親水性、疎水性、親油性又は疎油性を有するように見えることがある。
【0074】
本発明の少なくとも選択された実施形態によれば、ポリオレフィンポリマー基材は、成分A-Bの官能性を有する、例えばより高い又は低い程度の親水性、疎水性、疎油性又は親油性を有する、又は異なる表面エネルギーを有するように化学的に改質されている表面を有する微孔質ポリオレフィン膜基材とすることができる。微孔質ポリオレフィン膜は、その孔内に大量の油を吸収する傾向がある。本発明の官能化成分A-B処理又は改質を用いて、微孔質ポリオレフィン膜の親油性表面を改質し、その油吸収量を減少させるか、油吸収性を排除し、それにより様々な材料の新しいタイプの分離又は濾過性能で使用するための改質された微孔質ポリオレフィン膜基材を生成することができる。
【0075】
官能化成分A-Bを使用して微孔質ポリオレフィン膜の親油性を変化させることによって可能になった最終使用用途の一例は「耐水性/通気性」の上着であり、衣服の通気性を向上し、それによって着用者の身体の水分が耐水性上着の布地を通して蒸発可能にすることにより、微孔質ポリオレフィン膜を含有する耐水性上着衣服の快適性を大幅に改善することができる。上記官能性を通常、「耐水性/通気性」上着と呼ぶ。多くの耐水性/通気性衣服は、水分子の分子輸送を用いて通気性を達成する非多孔質材料を組み込んでいる。水蒸気分子が空気中の拡散により蒸発できるようにし、したがって通気性を大幅に向上させて着用者の快適性を強化する真に多孔質の膜を組み込むことにより、改善された通気性を提供する必要がある。特定の微孔質膜の1つの欠点は、身体の自然の油又は他の油によって汚損することがあり、その結果、膜の耐水性能が低下することである。上記欠点は、本発明を使用して、例えばフッ化化合物で微孔質膜の表面を改質し、膜表面を疎油性で、身体の自然の油又は他の油による汚損に対して耐性にすることによって克服することができる。
【0076】
本発明の少なくとも選択された実施形態によれば、官能化成分A-Bを使用してポリマー織物繊維及び/又は布地の表面エネルギーを低下させる用途も存在する。ポリマー織物繊維及び布地の耐水性能及び/又は耐汚染性は、耐久性のある撥水性(「DWR」)コーティング及び仕上げ剤を適用することにより達成されることが多い。これらのDWRコーティング及び仕上げ剤は耐久性が低く、繰り返される洗浄及び/又は使用により磨り減る。一部の織物繊維及び布地、例えばアクリル樹脂で製作したものは、DWRコーティングでの処理がそれほど容易ではなく、耐水性及び/又は耐汚染性が重要である用途には使用されないことが多い。本発明の少なくとも特定の方法又は実施形態は、例えばフッ化化合物を使用してポリマー織物繊維及び/又は布地を改質し、ポリマー織物繊維及び/又は布地を永続的に耐水性及び/又は耐汚染性にするのに使用することができる。
【0077】
さらに、本発明の少なくとも選択された実施形態によれば、官能化化合物A-Bを使用して、特定の芳香剤容器装置の壁に使用するポリオレフィン膜の表面エネルギーを低下させることができる。特定の芳香剤容器装置は、芳香剤容器装置の1つ又は複数の壁を通して芳香剤材料を制御下で放出することによって機能する。芳香剤容器装置は通常、ポリオレフィンを含むことができ、ポリエチレンで製作することが多い。しかし、芳香剤容器装
置のポリオレフィン膜壁を通る芳香剤の放出速度は、ポリオレフィン膜の非多孔質の性質によって制限することができる。その結果、芳香剤の所望の放出速度を達成するために、芳香剤容器装置はサイズを大きくしなければならない、及び/又は芳香剤容器装置中の芳香剤の濃度を上昇させねばならない(それによって費用が増加する)。
【0078】
所望の芳香剤放出速度を達成しながら、このような芳香剤容器装置中の芳香剤使用量を少なくすることが経済的に要求されている。上記理由から、芳香剤容器装置又は容器の壁材料として微孔質ポリマー膜を使用すると、芳香剤容器装置の膜壁を通る芳香剤の動作を、はるかに高速の速度で促進する。しかし、芳香剤容器装置の用途に微孔質ポリオレフィン膜を使用することは、芳香剤油が容器の膜壁を通って漏れる傾向にあることから制限されてきた。上記欠点は、例えばフッ化官能化ポリマーA-Bを使用することによって微孔質膜の表面エネルギーを改質し、芳香剤容器装置の膜又は壁を疎油性にして、芳香剤油が漏れないようにする本発明を使用することによって克服することができる。
【0079】
本発明の少なくとも選択された実施形態によれば、改質された官能化ポリマーA-Bはポリマー基材を改質することができ、それは改質された官能化ポリマーA-Bがない状態では、所望の化学的物質の直接的付着を妨げることになる表面エネルギーが低下又は上昇している。あるいは、改質された官能化ポリマーA-Bはポリマー基材を共有結合で改質することができ、それは改質された官能化ポリマーA-Bがない状態では通常、所望の化学的物質の直接的付着を制限及び/又は防止するような極性を有する。また、改質された官能化ポリマーA-Bはポリマー基材を改質することができ、これは親水性又は疎水性である表面、すなわち、改質された官能化ポリマーA-Bがない状態では通常、所望の化学的物質の直接的付着を制限及び/又は防止するような表面特性を有する。あるいは、改質された官能化ポリマーA-Bはポリマー基材を改質することができ、これは親油性又は疎油性である表面、すなわち、改質された官能化ポリマーA-Bがない状態では通常、所望の化学的物質の直接的付着を制限及び/又は防止するような表面特性を有する。
【0080】
少なくとも特定の実施形態は、生物学的検出又は検定を必要とすることがある最終使用用途のために生物学的に誘導されたポリマー及び小分子を含む目的で、特定の官能化ポリマーを改質することを指向する。タンパク質、DNA、RNA、天然多糖、又は他の生物学的に関係がある材料を、これらのタイプの用途に使用することができる。このような実施形態では、単独のカルベン及び/又はニトレン成分Bで、又は多官能カルベン及び/又はニトレン成分Bで特定の官能化ポリマーを改質することによって、改質を生じさせることができる。また、少なくとも特定の実施形態は、官能性合成ポリマー、小分子、生物学的活性表面改質剤などのような、所望の成分Aと反応している多官能カルベン及び/又はニトレン前駆体成分Bの混合物でポリマー基材の表面を改質することを指向する。
【0081】
ポリマー基材の表面は、その官能性を変化させる目的で改質することができる。例えば、通常は化学的に不活性なポリマー基材を、官能性成分Aを、又はポリマー基材を改質する二次後処理反応に参加するように設計されている改質された官能性成分A-Bを加えた官能基で、基材の表面を装飾することによって改質することができる。このような変化は、意図された最終使用用途に合わせてポリマー基材の官能性を変更する。このような後処理反応の一例は、標準的な織物の染色化学物質及び前駆体を受容して実質的に異なる最終結果を生成することができるように、織物基材の表面が改質された成分A-Bと反応している織物の最終使用用途である。
【0082】
ポリマー基材(例えば成分C)は、任意の合成又は天然ポリマー又はコポリマー、例えばオレフィン、スチレン、シリコーン、ウレタン、アクリレート、エステル、ビニル、セルロース、アミド、アラミド、エーテル又はコポリマー、及びこれらの混合物を含むことができる。また、ポリマー基材は、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂のような架橋ネッ
トワーク材料、又はブタジエン、イソプレン及びネオプレンのようなゴム型の材料でもよい。また、ポリマー基材はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ二塩化ビニリデン(PVDC)及び/又はポリ塩化ビニル(PVC)のようなハロゲン含有ポリマーでよい。
【0083】
成分ABと呼ぶこともできる改質された官能性スチレンスルホン化モノマー、ポリマー又はコポリマーの化学構造は、最終使用用途のポリマー基材(成分C)によって必要とされる所望の表面官能基(例えば成分A)を含有する。官能性ポリマーA又は成分Aは、ポリマー基材と同様のポリマーを含むことができる。また、官能性ポリマーA又は成分Aは、ポリアミン、ポリオール、ポリアミド、及びその混合物又はコポリマーを含むことができる。
【0084】
本発明の少なくとも選択された実施形態は、改質された多孔質膜、改質された多孔質膜を製作する方法、及び改質された多孔質膜を使用する方法を指向する。さらに特には、本発明は化学的に改質されたポリオレフィン微孔質膜、化学的に改質されたポリオレフィン微孔質膜を製作する方法、及び化学的に改質されたポリオレフィン微孔質膜を使用する方法を指向する。さらに特には、本発明は化学的に改質されたポリオレフィン微孔質電池セパレータ又は電池セパレータ膜、化学的に改質されたポリオレフィン微孔質電池セパレータ又は電池セパレータ膜を製作する方法、及び化学的に改質されたポリオレフィン微孔質電池セパレータ又は電池セパレータ膜を使用する方法を指向する。
【0085】
少なくとも選択された好ましい実施形態によれば、本発明は、カルベン及び/又はニトレン中間体とポリオレフィンの炭素水素結合との化学反応によってポリオレフィン微孔質電池セパレータ又はセパレータ膜を化学的に改質すること、リチウムイオン充電式電池のポリオレフィン微孔質電池セパレータ又はセパレータ膜の親水性又は湿潤性を改善する方法、ポリオレフィン微孔質電池セパレータ又はセパレータ膜に架橋結合を導入する方法などを指向する。
【0086】
本発明の少なくとも選択された好ましい実施形態によれば、ポリオレフィン微孔質セパレータ又はセパレータ膜の表面の少なくとも一部の化学的改質は、カルベン及び/又はニトレン中間体とポリオレフィンの炭素水素結合との化学反応によって達成することができる。カルベン及び/又はニトレン中間体に基づく上記化学反応又は処理は、リチウムイオン充電式電池のポリオレフィン微孔質セパレータの湿潤性をさらに永続的に改善する方法を提供する。また、カルベン及び/又はニトレン中間体と、ポリオレフィン微孔質セパレータ膜の少なくとも表面層におけるC-H結合との好ましい反応を使用して、ポリオレフィンに架橋結合を導入することができ、これはポリオレフィン微孔質セパレータ又は膜の高温安定性を改善することができる。
【0087】
例示的電池セパレータ又は膜は、ポリオレフィン多孔質膜又は薄膜の1つ又は複数の層又はプライで製作した単層、多層、又は多重プライ電池セパレータとすることができる。微孔質膜は対称膜又は非対称膜とすることができる。膜は、ポリエチレン(PE、例えばLDPE、LLDPE及びHDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、上記のいずれのコポリマー、及びその混合物を含むが、それに制限されない1つ又は複数のポリオレフィンポリマー又は配合物から製作することができる。膜は、乾燥延伸法(CELGARDプロセスとしても知られる)又は溶剤プロセス(ゲル抽出又は相分離又は相反転又は抽出又は湿式法としても知られる)又はネッティング(又はアパーチャ)法(薄膜を冷却ロール上に流し込み、ロールは薄膜にエンボス加工されるパターンを有し、その後、エンボス加工した薄膜を伸長し(MD/TD)、それによりエンボス加工したパターンに沿って大きい孔が形成される)を含むが、それらに限定されない任意の適切な方法によって製作される。このような膜は、約75ミクロン以下の厚さを有することができる。膜は、リチウム電池、さらに好ましくは充電式リチウムイオン電池などのような電池の電池セパレータとして作用するために必要な特徴を有することが好ましい。本発明の化学的に改質された膜は、三層膜(例えばPP/PE/PP又はPE/PP/PE)又は他の多層膜又はセパレータ、例えば三層停止セパレータの外層とすることができる。
【0088】
ポリオレフィンは、単純なオレフィンから誘導される熱可塑性ポリマーのクラス又はグループである。ポリオレフィンは通常、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテン、及びそのコポリマーを含む。ポリオレフィン商品は一般的に繊維及び薄膜を含むが、微孔質薄膜及び微孔質中空繊維も含む。「微孔質」とは、有効径が1ミクロン以下の複数の孔を有する商品を指す。疎水性ポリオレフィンは、ポリエチレンの表面エネルギー以下の表面エネルギーを有するポリオレフィンを指す。
【0089】
少なくとも特定の実施形態によれば、ポリオレフィン商品は、カルベン及び/又はニトレン中間体をポリオレフィンの炭素水素結合と化学反応させることによって微孔質セパレータ又は膜のようなポリオレフィン商品の表面の少なくとも一部を化学的に改質することによって、親水性又は湿潤性が上がる。また、カルベン及び/又はニトレン中間体とポリオレフィン商品の少なくとも表面層におけるC-H結合との好ましい反応を用いて、ポリオレフィンに架橋結合を導入することができ、これは高温安定性、強度などを改善することができる。上記親水性ポリオレフィン商品は、親水性ポリオレフィンが必要又は望ましい任意の用途、例えば、空気濾過、空気浄化、水濾過、浄水、水精製、医療機器、分離機器、半導体製造、電池セルセパレータ、限外濾過機器などに使用することができる。
【0090】
電池又はセルセパレータに関して、化学処理を微孔質ポリオレフィン膜の片面又は両面に適用する。上記処理セパレータは、リチウム二次電池に特に適している。分離、濾過、洗浄、及び精製機器に関して、特に微孔質ポリオレフィンの中空繊維又は平膜を使用する場合、改質された材料を使用することによって、より高いフラックス速度を獲得可能である。
【0091】
ポリオレフィンの疎水性の性質を永続的に改質する手段として、ポリオレフィンの炭素水素及び他の結合を化学的に改質することは、利用可能な化学反応の数が限られているので、問題となることがある。炭素水素結合は非常に安定し、それによってポリプロピレン及びポリエチレンのようなポリオレフィンを永続的に改質することが困難になる。リチウムイオン充電式電池の微孔質セパレータ膜には、ポリプロピレン及びポリエチレンのようなポリオレフィンが一般的に使用されている。ポリオレフィン微孔質セパレータ膜の重要な性能特性は、リチウムイオン充電式電池に通常使用される非水性電解質溶媒によって容易に湿潤性になることである。現在、様々な界面活性剤が、ポリオレフィン微孔質セパレータ膜の疎水性の性質を変更し、非水性電解質溶媒によりその湿潤性を向上させるコーティングとして適用される。特定の界面活性剤コーティングは一時的な湿潤性しか提供しないことがある。何故なら、ポリオレフィン微孔質セパレータ膜の表面に物理的に吸着されているのみだからである。
【0092】
カルベン及び/又はニトレン表面処理は、多種多様な小分子官能基でも達成することができる。カルボン酸、アルコール、チオール、アミン(第一、第二、第三、及び第四)、グアニジニウム、エーテル、エステル、及び炭酸塩は、何らかの親水性の性質をポリオレフィン微孔質セパレータ膜に与えることができる官能基である。
【0093】
超極性電解質によるポリプロピレン微孔質セパレータ膜の湿潤性の大幅な上昇は、ポリプロピレン微孔質セパレータ膜の本発明の化学的改質によって達成することができ、それによってリチウムイオン充電式電池に使用することができる現在及び将来の電解質の範囲
をさらに広げることができる。
【0094】
例えば、基材の湿潤特性は、分子添加剤への置換に基づいて徹底的に改質することができる。過フルオロ基は超疎水性の挙動を与えることができる一方、ポリ(エチレングリコール)を付加すると可湿性を向上させることができる。ポリ(ジメチルシロキサン)を使用し、基材の触感をさらに快くすることによって材料の感触を向上させることができる。さらに、材料と多官能カルベン及び/又はニトレン前駆体との表面又は内部架橋結合、及び処理により、交差ウェブの靱性を向上させることができる。
【0095】
複数の化学反応が関わるカルベン及び/又はニトレン中間体を使用して、ポリオレフィン微孔質セパレータ膜中で架橋結合を誘発するように設計された特定の構造を挿入することもできる。ポリオレフィン材料の架橋結合は、ポリマー分子を相互に固定するので、微孔質ポリオレフィンセパレータ膜の交差ウェブ強度を強化することにより電池の安全性を向上させるという追加の利点が獲得される。
【0096】
一例として、孔が形成された後に、複数のカルベン及び/又はニトレン前駆体を組み込んだ分子をポリオレフィン微孔質セパレータ膜に適用し、架橋結合した表面を生成することができる。ポリオレフィン微孔質セパレータ膜表面の架橋結合は、高温の最終使用用途で重要になることがある。軽度に架橋結合した表面を生成することにより、ポリオレフィン微孔質セパレータ膜の構造的完全性の喪失をもたらす温度を上昇させ、架橋結合の密度に基づく特定の温度範囲に調整することができる。これを達成できるのは、架橋結合した材料が、架橋結合がない溶融した塊状材料を保持できるからである。表面架橋結合の密度が上昇するにつれ、ポリオレフィン微孔質セパレータ膜の構造的完全性を維持する外骨格として作用する能力が上昇する。
【0097】
また、押出法の間に複数のカルベン及び/又はニトレン前駆体を組み込んだ架橋結合分子を、ポリオレフィンポリマー樹脂に付加し、非多孔質の前駆体セパレータ膜を形成することができる。次に、上記前駆体セパレータ膜を伸長して、微孔質ポリオレフィン膜の孔を形成し、その結果、高温での引っ張り強度及び溶解完全性が改善された微孔質ポリオレフィン膜となる。
【0098】
少なくとも選択された実施形態では、セパレータは繊維で構成された不織布のような不織材料でよく、不織布の高温溶解完全性を改善する及び/又は不織布の湿潤性を改善するように化学的に改質することができる。
【0099】
本発明の少なくとも特定の目的によれば、新しい、改善された又は改質された表面改質されたポリマー材料、改質された官能化ポリマー、官能性ポリマー、改質された官能化ポリマーを含む化学的に改質された基材、表面改質されたポリマー材料、改質された官能化ポリマー、官能性ポリマー及び/又は改質された官能化ポリマーを含む化学的に改質された基材を製作及び/又は使用する方法、官能化ポリマーを改質する方法、及び/又は改質された官能化ポリマーを使用して基板の表面と化学反応させる方法、及び/又はこのような化学的に改質された基材を使用する方法が提供される。少なくとも特定の実施形態又は目的は、改質された官能化ポリマー、官能性ポリマー、及び多孔質及び/又は非多孔質ポリマー基材を化学的に改質するために官能化ポリマーを改質する方法、及び/又はこのような改質された基材を使用する方法を指向する。少なくとも選択された実施形態又は目的は、改質された官能化ポリマー、官能性ポリマー、及び多孔質及び/又は微孔質ポリマー基材を化学的に改質するために官能化ポリマーを改質する方法、及びこのような改質された基材を使用する方法を指向する。少なくとも特定の実施形態又は目的は、特定の官能化ポリマーを改質し、これによって基材の表面特性を変更できるようにすることを指向する。少なくとも選択され場合によっては好ましい実施形態によれば、本発明は、カルベン及び/又はニトレン架橋結合改質剤を使用して、官能化ポリマーを化学的に改質し、これによって基材の表面を化学的に改質して、意図された用途に合わせて基材の表面特性を変更することができる改質された官能化ポリマーを形成することを指向する。少なくとも選択され場合によっては好ましい実施形態によれば、本発明は、カルベン及び/又はニトレン架橋結合改質剤(モノマーX又はモノマーX+Yを含むことができる成分B)を使用し、官能化ポリマー(成分A)でポリマー表面(成分C)を共有結合で改質して、改質された官能化ポリマー材料又は基材A-B-Cである最終生成物を形成することを指向する。このような改質は、ポリマー表面の化学反応性を変化させ、それによって改質された基材が意図された最終使用又は用途に合わせて特異的に設計された官能性を有することを可能にすることができる。
【0100】
本発明は、新しい、改善された又は改質されたポリマー材料、膜、基材などに、及び様々な最終使用又は用途のためにポリマー基材の1つ又は複数の表面、側部又は部分の物理的及び/又は化学的性質を永続的に改質する新しい、改善された又は改質された方法に関する。例えば、1つの改善された方法は、カルベン及び/又はニトレン改質剤を使用して、官能化ポリマーを化学的に改質し、ポリマー基材の表面と化学反応してその化学反応性を変更することができる化学種を形成する。このような方法は、例えば、コーティング、材料、隣接層などとのポリマー基材の適合性を改善するために、ポリマー基材を改質して、その表面エネルギー、極性、親水性又は疎水性、親油性又は疎油性などを増加又は減少させる挿入反応又はメカニズムを含むことができる。さらに、本発明を使用して、化学的に改質された膜、繊維、中空繊維、織物などを生成することができる。例えば、本発明を使用して、改善された親水性又は湿潤性を有する、高温安定性を改善することができるポリオレフィン中の架橋結合を有するなどのことを有するポリオレフィン微孔質電池セパレータ又は膜を生成することができる。
【0101】
本発明の様々な実施形態は、重合したアリールスルホニルアジド又はそのコポリマーを含むポリマーに関する。このような実施形態では、アリールスルホニルアジドはスチレンスルホニルアジドでよい。また、アリールスルホニルアジドはビニルモノマーと共重合することができる。このような場合、ビニルポリマーは親水性又は疎水性とすることができる。また、ビニルモノマーはスチレンスルホン酸又はその塩でよい。また、ビニルモノマーは、置換スチレン、アクリル酸、メタクリル酸、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、アクリルアミド、メタクリルアミド、その塩などで構成されたグループから選択することができる。さらに、ビニルモノマーは反応性基で置換することができる。
【0102】
本発明の様々な他の実施形態では、改質された基材は表面改質剤を含み、薬剤は重合したアリールスルホニルアジド又はそのコポリマーを含む第一のポリマーを含み、第一のポリマーの少なくとも1つのアジドは基材の炭素原子と反応して、スルホンアミド結合基を形成している。このような実施形態では、第一のポリマー及び基材をUV光に曝露することによって、アジドが炭素原子と反応することができる。このような実施形態では、基材は、ポリマー、織物基材、繊維、ポリオレフィン材料、ポリプロピレン材料、ポリエチレン材料、多孔質ポリマー基材、非多孔質ポリマー基材、微孔質ポリマー基材、多孔質中空繊維、非多孔質中空繊維、多孔質電池セパレータ又は膜、微孔質ポリマー膜、薄膜、化学的に改質されたポリマー基材、ポリマー表面層、複合体、その化合物などで構成されたグループから選択することができる。
【0103】
本発明の他の実施形態は基材を改質する方法を含み、該方法は、重合したアリールスルホニルアジド又はそのコポリマーを含むことができるポリマーに基材を接触させることを含む。このような方法では、UV光及び/又は熱の存在下で基材をポリマーと接触させることができる。また、このような実施形態では、ポリマーは、反応性基で置換されたビニルモノマーとのコポリマーとすることができ、方法はさらに、反応性基を反応させるステ
ップを含み、それによって基材の表面を改質する。
【0104】
少なくとも選択された疎油性に関係する実施形態では:
1.ポリマー表面(薄膜、繊維、又は塊状材料)は、多官能性カルベン及び/又はニトレン前駆体(モノマーX又はモノマーX+Yを含むことができる成分B)と所望の官能性合成モノマー又はポリマー(成分A)との混合物で改質することができる。
a.ポリマー表面は、任意の合成又は天然ポリマー又はコポリマーでよく、これは以下のポリマークラス、すなわち、オレフィン、スチレン、シリコーン、ウレタン、アクリレート、エステル、ビニル、セルロース、アミド、アラミド、エーテルなどを含むが、それらに限定されない。ポリマー表面は、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂又はゴムタイプの材料、例えば、ブタジエン、イソプレン及びネオプレンのような架橋結合した網状材料でもよい。また、PTFE、PVDF、PVDC、及びPVCのような他のハロゲン含有ポリマー/ポリマー表面の改質を実行することができる。
【0105】
b.成分Aは、疎水性又は疎油性の処理用途に通常見られる材料でよい。織物処理として大いに使用されるフッ化アクリル性コポリマー系のような材料、又はキチン系材料は、適切な耐油性を提供することができる。また、成分Aは、抵抗性強化のためにナノ規模の粗さを生成する追加のナノ粒子との複合材料でよい。
c.成分Bは単官能性材料(f=1)でよい、又は他の実施形態では、カルベン及び/又はニトレン種をその場で生成するように調整された側官能基を有する多官能性材料(f>2.0)である。
【0106】
2.成分AとBの混合物のコーティング重量は、有機溶液又は水溶液に由来することがあり、ポリマー表面の表面改質は、熱処理又はUV光への曝露によってさらに進行する。
a.改質は、表面に十分な量で加えて、意図された用途に必要な表面特性をもたらすことができる。典型的な適用速度は0.05g/m2~1.0g/m2の範囲とすることができ、他の要因の中でも基材の表面積、溶液粘度及び/又は硬化速度に左右されることがある。
b.成分AとBとの比率は、最適な特性を生成するために変化可能とすることができる。典型的なA/B適用重量比は、所望の表面特性及びAとBの反応性に応じて1.0~200.0の範囲でよい。
【0107】
少なくとも選択された目的又は実施形態によれば、本発明は以下を提供する、又は指向する。
本明細書で図示又は説明するような改質されたポリマー基材、表面改質されたポリマー材料、改質された官能化ポリマー、官能性ポリマー、又は改質された官能化ポリマーを含む化学的に改質された基材。
【0108】
改質されたポリマー基材が化学的に改質されたポリマー基材である、上記発明。
【0109】
改質されたポリマー基材が多孔質ポリマー基材、非多孔質ポリマー基材、多孔質中空繊維、非多孔質中空繊維、多孔質電池セパレータ又は膜、薄膜、化学的に改質されたポリマー基材、繊維、織物、ポリオレフィン材料、ポリオレフィン配合物、ポリプロピレン材料、ポリエチレン材料、ポリマー表面層、複合体、その化合物などのうち少なくとも1つである、上記発明。
【0110】
改質されたポリマー基材が、カルベン及びニトレン中間体のうち少なくとも1つとポリマー基材の炭素水素結合との化学反応によって化学的に改質され、少なくとも1つの改質された官能化ポリマーをそれに共有結合で付着させる、上記発明。
【0111】
本明細書で図示又は説明するような、改質されたポリマー基材、表面改質されたポリマー材料、改質された官能化ポリマー、官能性ポリマー、又は改質された官能化ポリマーを含む化学的に改質された基材、薄膜、中空繊維、繊維、織物、複合体、層、表面、化学的に改質されたポリオレフィン微孔質膜、化学的に改質されたポリオレフィン微孔質電池セパレータ又は電池セパレータ膜、微孔質電池セパレータ又は電池セパレータ膜、リブ状材料、その化合物を製作する方法又は使用する方法、リチウムイオン充電式電池のポリオレフィン微孔質電池セパレータの湿潤性を改善する方法、ポリオレフィン微孔質セパレータなどに架橋結合を導入する方法。
【0112】
カルベン及びニトレン中間体のうち少なくとも1つをポリオレフィンの炭素水素結合と化学反応させることによってポリオレフィン微孔質電池セパレータ膜を化学的に改質するステップ、リチウムイオン充電式電池で使用するように適応したポリオレフィン微孔質電池セパレータの湿潤性を改善するステップ、ポリオレフィン微孔質電池セパレータに架橋結合を導入するステップなどのステップのうち少なくとも1つのステップを含む、上記方法。
【0113】
電池セパレータにて、化学的に改質された少なくとも1つの表面の少なくとも一部分を有するポリオレフィン微孔質膜を含む、改善。
【0114】
上記化学的に改質されたポリオレフィンが、ポリエチレンの表面エネルギー以上の表面エネルギーを有する、上記セパレータ。
【0115】
上記化学的改質が、ポリオレフィンの表面エネルギーを少なくとも約48ダイン/cmまで上昇させる、上記セパレータ。
【0116】
ポリオレフィン微孔質膜が化学的に改質されて、上記膜の表面エネルギーを上昇させる、上記セパレータ。
【0117】
上記ポリオレフィンが、ポリエチレン、ポリプロピレン、配合物、混合物、及びそのコポリマーで構成されたグループから選択される、上記セパレータ。
【0118】
負極、陽極、電解質、セパレータを備える電池において、上記セパレータを含む、改善。
【0119】
ポリオレフィン微孔質膜を含む織物において、化学的に改質された少なくとも1つの表面の少なくとも一部分を有する上記ポリオレフィン微孔質膜を含む、改善。
【0120】
上記化学的に改質されたポリオレフィン膜が、染色又は他の仕上げステップのような二次的標準織物処理を目的として、セルロース材料を含む表面改質を有する、上記織物。
【0121】
上記化学的に改質されたポリオレフィン膜が、ポリテトラフルオロエチレンの表面エネルギー以下の表面エネルギーを有する、上記織物。
【0122】
上記化学的改質が、ポリオレフィン膜の表面エネルギーを最大で約20ダイン/cmまで低下させる、上記織物。
【0123】
上記ポリオレフィン膜と結合した少なくとも1つの合成又は天然布地を含有する、織物積層品。
【0124】
自身の表面エネルギーを低下させるように化学的に改質されたポリオレフィン微孔質膜
を含む疎油性の改質されたポリオレフィン織物膜であって、上記ポリオレフィンが、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びその配合物、混合物、及びコポリマーで構成されたグループから選択され、上記化学的に改質されたポリオレフィンが、疎油性ポリマー又はポリマーの組み合わせなどを含む表面改質を有する、疎油性の改質されたポリオレフィン織物膜。
【0125】
カルベン及びニトレン中間体のうち少なくとも一方の化学反応によって化学的に改質されて、それに少なくとも1つの改質された官能化ポリマーを共有結合で付着させ、改善された湿潤性、低下した湿潤性、親水性、疎水性、疎油性、親油性、生物学的材料による汚損に対する耐性、有機溶媒による湿潤に対する耐性、メタノール、エタノール、1-プロパノール、アセトン及び/又は他の極性型溶媒による湿潤に対する耐性、及び脂肪族及び/又は芳香族型溶媒による湿潤に対する耐性のうち少なくとも1つを提供する耐久性のある化学的改質を提供する、少なくとも1つの表面又は部分を有する、微孔質ポリマー膜。
【0126】
非限定的実施例
実施例1―4-スチレンスルホニルアジドモノマーの合成
実施例1では、4-スチレンスルホニルアジドモノマーを合成した。詳細に述べると、34.4グラムの塩化チオニル(290mmol)をフラスコに加え、氷浴中で冷却した。10グラムのナトリウム-4-スルホン酸スチレン(48.4mmol)を、冷却した塩化チオニルに攪拌しながら一部分ずつ加えた。固体を加えるにつれ溶液が濃くなり、スラリになるのが観察された。60mLのDMFを20mLのアリコートで加え、攪拌し続け、均質な溶液を生成した。溶液を氷浴中で45分間攪拌し、室温まで温まるようにし、次にさらに1~2時間攪拌した。終了したら、反応生成物を氷(約200グラム)上に注ぎ、混合物を酢酸エチル(3×50mL)で抽出した。塩化スルホニル層を採取し、硫酸マグネシウム上で乾燥させて濃縮し、7.24グラムの明るいイエローオレンジの油にした。
【0127】
以前のステップで獲得した塩化スルホニル(35.1mmol)をアセトンに溶解させ、氷浴に入れた。20mLのイオン化H2Oを加え、その後5分間の期間にわたって2.39グラムのアジ化ナトリウム(36.9mmol)を一部分ずつ加えた。反応物を5日間攪拌できるようにし、その時点で溶液を酢酸エチル(3×20mL)で洗浄した。その結果の有機部分を採取し、硫酸マグネシウム上で乾燥させて濃縮し、明るい黄色の油にした(7.21gを受け取る)。上記明るい黄色の油は、4-スチレンアジ化スルホニルモノマーを構成していた。
【0128】
実施例2-4-スチレンスルホニルアジドを含有するスチレン系ポリマーの合成
上記実施例1で生成したスルホニルアジドモノマー(1.5グラム、7.1mmol)を、様々な所望のコモノマー(以下でさらに詳細に述べる)(7.1mmol)及び連鎖移動剤とともにフラスコに加えた。ここで、使用する特定の連鎖移動剤は2-シアノ-2-プロピルドデシルトリチオカーボネート(28mg、0.08mmol)であった。開始剤(ここでは4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸))(42mg、0.15mmol)を、重合フラスコに加えるDMF(3mL)溶液に別個に溶解させた。次に、重合フラスコをゴム隔壁で密封し、溶液に窒素を5分間散布した。次に重合フラスコを60℃の定温浴に5時間入れた。重合が進行した後、反応物を酸素に曝露することによって急冷し、適切な溶媒中で沈殿させ、スルホニルアジドポリマーを回収した。
【0129】
スルホニルアジドモノマーと重合したコモノマーは、2,3,4,5,6-ペンタフルオロスチレン、スチレン、及び4-スルホン酸スチレンを含んでいた。4-スルホン酸スチレン重合の場合、固体の4-スルホン酸スチレン材料の溶解を補助するために、追加のDMFが必要であった。
【0130】
実施例3-ニトレンを形成し、UVに曝露して基材と反応させるスルホニルアジドポリマーの一般的活性化
スルホニルアジド材料の配合及び活性化は、所望の表面改質のために適切なポリマーとともにアセトン中に溶解させることによって実行し、これは通常、スルホニルアジド:官能性ポリマーの重量比が1:1~1:10であった。溶液を基材に適用し、溶媒を乾燥させた。その結果の薄膜及び基材を高輝度の長波UV局部照明に15~45秒間曝露し、再度アセトンですすいで、物理吸着した材料があればすべて除去した。場合によっては、254nm波長のUV療法で良好な結果が得られた。
【0131】
活性化したスルホニルアジドポリマーを、様々な分析技術を用いて検査した。例示により、
図7は、約50%モノマー含有率のスルホニルアジドモノマー、及び約50%モノマー含有率の4-スルホン酸スチレンコモノマーを含めて形成されたポリマーのFTIRスペクトルのグラフを示す。例示のみで、
図7は2000cm
-1~2500cm
-1のピークを示し、該ピークはポリマーのアジド含有率に相関するようである。
【0132】
また、
図8は、約50%モノマー含有率のスルホニルアジドモノマー、及び約50%モノマー含有率の4-スルホン酸スチレンコモノマーを含めて形成されたポリマーのDSC曲線を示す。上記熱量測定曲線は、例えば水が約100℃で逃げ、次にニトレンが活性化し、その結果、190℃のすぐ上で窒素が喪失することを示す。上記温度は、上記特定の例では、ニトレン活性化温度と見なすことができる。
【0133】
図9は、約50%モノマー含有率のスルホニルアジドモノマー、及び約50%モノマー含有率の4-スルホン酸スチレンコモノマーを含めて形成されたポリマーで実施した熱重量分析のグラフを示す。ポリマーの上記分析は、ポリマーが様々な温度で分解することを示し、上記グラフからニトレン生成も突き止めることができる。例えば、様々な温度でニトレン生成が観察され、ポリマーの重量損に相関する。
【0134】
実施例4-ポリプロピレン不織布の反応性染色
ポリ(スルホン酸ナトリウムスチレン-コ-スチレンスルホニルアジド)を、37%スルホニルアジドモノマー含有率で合成し、210mgを12.5グラムの70℃の湯中に溶解させた。上記溶液に440mgの50重量%の枝分かれポリエチレンイミン溶液(BPEI)を加えた。次に、2.98グラムのアセトンを湿潤目的で加えた。溶液をポリプロピレン不織材料(100グラム/平方メートル(gsm))に適用し、溶液に曝露した後、基材を110℃の熱対流炉内で約5分間乾燥させた。次に乾燥した基材を、0.2J/cm2の254nmのUV放射に曝露した。次に、これらの材料を、5mg/mLのDrimaren Navy反応性染料の溶液に曝露した。これらの調製サンプルの結果は、斑点状であるが耐久性のある不織布の着色を実証した。追加の440mgのBPEI溶液を加えることにより、結果が向上し、不織材料に均一で耐久性のある青色を生成した。不織布の未処理区間も染色溶液に曝露したが、上記プロセスでは着色しなかった。
【0135】
実施例5-ポリプロピレン不織布の耐久性のある撥油性
ポリ(スルホン酸ナトリウムスチレン-コ-スチレンスルホニルアジド)を50%スルホニルアジドモノマー含有率で合成し、102mgを1.5mLのTG-8731(20重量%、Daikin)フルオロポリマーとともに3mLの水及び1mLのアセトンに溶解させた。ポリプロピレン不織布(45gsm)を上記溶液で処理し、115℃の熱対流炉で5分間乾燥させた。乾燥したら、基材を長波UV光に5分間曝露した。UV療法後、サンプルを攪拌用アセトン浴に曝露し、共有結合で付着していない材料があればすべて取り除いた。サンプルを再び5分間、115℃で乾燥させ、アセトンですすいだ後に撥ドデカン性を試験した。サンプルは4個とも、アセトン除去ステップ後に撥ドデカン性を示し
た。対照標準サンプルは、プロセス全体で撥ドデカン性を示さなかった。
【0136】
少なくとも選択された実施形態、態様、目的などによれば、本発明は、新しい、改善された又は最適化された表面改質剤、このような薬剤で製作又は改質された材料、及び/又はこのような薬剤及び/又は改質された材料を製作及び/又は使用する方法、及び/又はこのような薬剤、改質された材料、層、基層、前駆体などを組み込んだ新しい、改善された又は最適化されたポリマー及び/又は織物材料、セパレータ、衣服、布地などを指向する。少なくとも特定の実施形態によれば、本発明は、ポリマー及び/又は織物材料の表面改質剤、改質された材料、及び/又はポリマー及び/又は織物材料を改質し、官能化する表面改質剤を製作及び/又は使用する方法、及び/又は表面改質された又は官能化ポリマー及び/又は織物材料を使用する方法を指向する。
【0137】
少なくとも特定の実施形態によれば、本発明は、任意的に熱又は光の存在下で化学反応し、1つ又は複数のニトレン及び/又はカルベン官能基を形成することができる適切なニトレン及び/又はカルベン前駆体を含む表面改質剤を指向する。場合によっては好ましいニトレン前駆体は、熱又は光の存在下で化学反応し、1つ又は複数のニトレン官能基を形成することができるスチレンスルホニルアジドモノマー、ポリマー又はコポリマーなどの材料を含む。少なくとも選択された特定の実施形態は、活性化するとポリマー又は織物材料の表面と化学反応して、特定の又は所望の化学的表面官能性を表面に付与又は与えることができる1つ又は複数のスルホニルアジド官能基を含有する、スチレンスルホン化モノマー、ポリマー又はコポリマーを含む表面改質剤を指向する。少なくとも特定の場合によっては好ましい実施形態は、ポリマー又は織物材料の表面と化学反応して、所望の化学官能性をポリマー又は織物材料に付与又は与えることができる1つ又は複数のスルホニル官能基を含有する、スチレンスルホン化モノマー、ポリマー又はコポリマーを含む表面改質剤を指向する。
【0138】
与えられた改質又は官能性は、材料の物理特性を変化させるか、材料を新しい官能的役割で使用可能にすることができる。例えば、官能性は、親水性、疎水性、親油性及び/又は疎油性のような特性を与えることができる、及び/又はポリマー又は織物材料の表面エネルギーを変化させて、ポリマー又は織物材料を共有結合で改質し、例えば、特定の最終使用用途に適切なものとすることができる。さらに、特定の表面改質は、新しい官能的役割に特異的な官能性を提供することができる。例えば、与えられた官能性は、例えば他の分子のような他の材料と相互作用できる場合に、材料が相互作用的になる用途で材料を使用可能にすることを目的とすることができる。更なる例は、改質された又は官能化材料が他の材料、コーティング、層などと相互作用し、電気化学セル又は電池、織物、衣服、濾過、吸着、試験、薬物送達、検体感知、医療機器、医療診断などに使用される電池セパレータ、バリア布地、膜、基層、層、布地、織物などのような用途に特に適切なことがある特定の用途を含むが、それらに限定されない。
【0139】
本出願は一般に、2011年7月18日出願の米国仮特許出願第61/508,725号明細書、2012年7月18日出願の米国特許出願第13/551,883号明細書、及び2011年10月17日出願の米国仮特許出願第61/547,812号明細書のそれぞれに関連し、それらの全部及び各々は参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0140】
少なくとも選択された実施形態、態様、目的などによれば、本発明は、新しい、改善された又は最適化された表面改質剤、このような薬剤によって製作又は改質された材料、このような薬剤及び/又は改質された材料を製作及び/又は使用する方法、及び/又はこのような薬剤及び/又は改質された材料を組み込んだ新しい、改善された又は最適化されたポリマー及び/又は織物材料、セパレータ、衣服、布地などを、ポリマー及び/又は織物材料の表面改質剤、改質された材料、ポリマー及び/又は織物材料を改質及び/又は官能
化するために表面改質剤を製作及び/又は使用する方法、及び表面改質された又は官能化ポリマー及び/又は織物材料を使用する方法を、任意的に熱又は光の存在下で化学反応し、1つ又は複数のニトレン及び/又はカルベン官能基を形成することができる適切なニトレン及び/又はカルベン前駆体を含む表面改質剤を、熱又は光の存在下で化学反応し、1つ又は複数のニトレン官能基を形成することができるスルホニルアジド含有スチレンモノマー、ポリマー又はコポリマーなどの材料を含むが、それらに限定されない、場合によっては好ましいニトレン前駆体を、活性化するとポリマー又は織物材料の表面と化学反応して、特定の又は所望の化学的表面官能性をポリマー又は織物材料の表面に与えることができるスルホニルアジド官能基のような1つ又は複数のスルホニル官能基を含有する、例えば、スチレンスルホン化モノマー、ポリマー又はコポリマーを含む表面改質剤を、ポリマー及び/又は織物材料の物理特性を変化させるか、材料を新しい官能的役割で使用可能にすることを指向し、官能性は親水性、疎水性、親油性、疎油性などの特性をポリマー及び/又は織物材料に与えることができる、及び/又は官能性は、ポリマー又は織物材料の表面エネルギーを変化させて、ポリマー及び/又は織物材料を改質し、それが特定の最終使用用途に適したものにすることができ、さらに、新しい官能的役割に特定の官能性を提供することを指向し、与えられた官能性は、例えば他の分子のような他の材料と相互作用することができる場合に、材料が相互作用的になる用途に材料を使用可能にすることを目的とすることができ、さらに、改質された又は官能化材料が他の材料、コーティング、層などと相互作用し、電気化学セル又は電池、織物、衣服、濾過、吸着、試験、薬物送達、検体感知、医療機器、医療診断装置などに使用する電池セパレータ、バリア布地、膜、基層、層、布地、織物などの用途に特に適切なものとすることができる特定の用途などを指向する。
【0141】
本発明の他の目的、実施形態、態様、又は実施例は図面、発明を実施するための形態又は請求の範囲で示すか説明することができる。本発明の多くの他の変形又は修正は、本明細書の開示を鑑みて当業者に可能である。したがって、請求の範囲内で、本発明は本明細書で詳細に述べている以外に実践することができる。
【0142】
「備える/備えている(comprises/comprising)」という用語及び「有する/含む(having/including)」という用語は、本発明に関して本明細書で使用する場合、言明された形態、完全体、ステップ又は成分の存在を規定するために使用されるが、1つ又は複数の他の形態、完全体、ステップ、成分又はそのグループの存在又は追加を排除するものではない。
【0143】
明快さを期して別個の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の形態は、単一の実施形態で組み合わせて提供することもできることが認識される。逆に、簡潔さを期して単一の実施形態の文脈で説明されている本発明の様々な形態は、別個に、又は任意の適切な部分組み合わせで提供することもできる。