(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-28
(45)【発行日】2023-01-12
(54)【発明の名称】機能性甘味料を含むチューインガム
(51)【国際特許分類】
A23G 4/10 20060101AFI20230104BHJP
A23G 4/06 20060101ALI20230104BHJP
【FI】
A23G4/10
A23G4/06
(21)【出願番号】P 2021530753
(86)(22)【出願日】2018-08-10
(86)【国際出願番号】 KR2018009200
(87)【国際公開番号】W WO2020032301
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-04-09
(73)【特許権者】
【識別番号】500578515
【氏名又は名称】サムヤン コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソ,イル
(72)【発明者】
【氏名】キム,ボンチャン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヨンイン
(72)【発明者】
【氏名】イ,スンミ
(72)【発明者】
【氏名】イム,スヨン
(72)【発明者】
【氏名】イム,ヘジン
(72)【発明者】
【氏名】ハン,テチョル
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-519512(JP,A)
【文献】特表2018-509925(JP,A)
【文献】国際公開第2008/059623(WO,A1)
【文献】特開昭63-003759(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガムベース、アルロースおよび乳化剤を含有するチューインガム組成物であって、
前記乳化剤は、
シュガーエステルであり、HLB(hydrophile-liphophile balance)値が1~
3であ
り、全体チューインガム組成物の固形分重量100重量%を基準として、0.1~1重量%含まれ、
前記アルロースは、粉末形態で提供され、全体チューインガム組成物の固形分重量100重量%を基準として、10~40重量%含まれ、
前記ガムベースは、全体チューインガム組成物の固形分重量100重量%を基準として、20~50重量%含まれ、
前記チューインガム組成物は、30℃の温度および相対湿度75%RHの条件で8時間保管時に吸収される水分が、製造直後の重量100%を基準として、0.1~2.3%である、チューインガム組成物。
【請求項2】
前記チューインガム組成物が、アルロースを除いた単糖類、二糖類、糖アルコール類、植物繊維類およびオリゴ糖類からなる群より選択された1種以上の糖類を追加的に含む、請求項1に記載のチューインガム組成物。
【請求項3】
前記糖アルコール類が、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、ラクチトール、イノシトールおよびソルビトールからなる群より選択された1種以上である、請求項
2に記載のチューインガム組成物。
【請求項4】
前記追加の糖類が、砂糖であり、前記アルロースおよび砂糖が固形分重量比1:99~99:1で含まれるように添加されるものである、請求項
2に記載のチューインガム組成物。
【請求項5】
前記ガムベースが、天然ガム、ポリビニルアセテート、ポリイソブチレン、ワックス類、ポリブテン
、充填剤およびエステルガムからなる群より選択された1種以上を含むものである、請求項1に記載のチューインガム組成物。
【請求項6】
ガムベース、アルロース、糖アルコールおよび乳化剤を含有
する砂糖なし(sugar-free)チューインガム組成物であって、
前記乳化剤
は、シュガーエステルであり、HLB(hydrophile-liphophile balance)値が1~
3であ
り、全体チューインガム組成物の固形分重量100重量%を基準として、0.1~1重量%含まれ、
前記アルロースは、粉末形態で提供され、全体チューインガム組成物の固形分重量100重量%を基準として、10~40重量%含まれ、
前記ガムベースは、全体チューインガム組成物の固形分重量100重量%を基準として、20~50重量%含まれ、
前記砂糖なしチューインガム組成物は、30℃の温度および相対湿度75%RHの条件で8時間保管時に吸収される水分が、製造直後の重量100%を基準として、0.1~2.3%である、砂糖な
しチューインガム組成物。
【請求項7】
前記アルロースが、粉末X線分光スペクトル上において、(a)15.35、30.95、18.83および47.15;または(b)15.35、30.95、18.83、47.15および25.17の±0.2°である2θでピークを有するアルロース結晶である、請求項1に記載のチューインガム組成物。
【請求項8】
アルロース、乳化剤およびガムベースを混合する段階を含
む、
チューインガム組成物の製造方法であって、
前記乳化剤
は、シュガーエステルであり、HLB(hydrophile-liphophile balance)値が1~
3であ
り、全体チューインガム組成物の固形分重量100重量%を基準として、0.1~1重量%含まれ、
前記アルロースは、粉末形態で提供され、全体チューインガム組成物の固形分重量100重量%を基準として、10~40重量%含まれ、
前記ガムベースは、全体チューインガム組成物の固形分重量100重量%を基準として、20~50重量%含まれ、
前記チューインガム組成物は、30℃の温度および相対湿度75%RHの条件で8時間保管時に吸収される水分が、製造直後の重量100%を基準として、0.1~2.3%である、チューインガム組成物の製造方法。
【請求項9】
前記アルロースが、粉末X線分光スペクトル上において、(a)15.35、30.95、18.83および47.15;または(b)15.35、30.95、18.83、47.15および25.17の±0.2°である2θでピークを有するアルロース結晶である、請求項
6に記載の砂糖なしチューインガム組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、甘味と清涼感に優れたアルロース含有チューインガムに関し、糖類として砂糖およびアルロースを含むことで、官能的に優れ、保存安定性に優れたチューインガムを提供する。
【背景技術】
【0002】
チューインガムとは、天然または合成樹脂に可塑剤、充填剤、甘味料、着香料などを配合して成形したものを称するものであって、形態または成分に応じて、板ガム(plate gum、一般に流通するガム)、風船ガム(bubble gum)、糖衣ガム(sugar coated gum)、砂糖なしガム(sugarless gum)として、砂糖の代わりに糖アルコール類であるsorbitol、mannitol、xylitolなどを添加して作ったガム、center filling gum(ガムの内部にシロップ、ジャム、パウダーなどを入れたガム)などに分類される。
【0003】
特に、最近は、肥満または成人性疾患などによって砂糖なしガムに対する消費が増加しており、砂糖に代わる甘味を付与する成分への要求があった。特に、D-プシコース(D-psicose)とも呼ばれるD-アルロース(D-allulose)は、砂糖の甘味度の約70%の甘味度を有しながらもカロリーはほとんどなくて、砂糖に代わるチューインガムの甘味成分として研究された。しかし、D-アルロースを用いる場合、砂糖に比べて糖度が一部低く、チューインガムの強度が強くなり硬くなるという問題点があった。
【0004】
一方、一般にチューインガムの甘味と香味を長持ちさせるために乳化剤を用い、多数の先行研究によれば、チューインガムに乳化剤を用いるにあたり、HLB(hydrophile-liphophile balance)を高い値(例えば、少なくとも10)で有する乳化剤を用いてこそ、味の維持に効果があると知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、砂糖、アルロースおよび乳化剤を含有するチューインガム組成物およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、砂糖、アルロースおよび乳化剤を提供することで、チューインガム組成物に向上した保管安定性および甘味持続性を付与する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、熱量は低いながらも、糖類として同量の砂糖を含む組成に比べて清涼感を付与すると同時に、甘味により優れているだけでなく、吸湿性が低くて保管安定性に優れたチューインガム組成物を開発した。
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
【0007】
本発明の一例は、アルロースを含有するチューインガム組成物を提供する。
【0008】
例えば、本発明のチューインガム組成物は、ガムベース、アルロースおよび乳化剤を含むチューインガム組成物であってもよい。
【0009】
本発明の他の例として、ガムベース、アルロースおよび乳化剤を含有するチューインガム組成物であって、前記乳化剤は、HLB(hydrophile-liphophile balance)値が1~8である、チューインガム組成物を提供する。
本発明のさらに他の例は、ガムベース、アルロース、糖アルコールおよび乳化剤を含有する砂糖なし(sugar-free)チューインガム組成物であって、前記乳化剤は、HLB(hydrophile-liphophile balance)値が1~8である、砂糖なしチューインガム組成物を提供する。
【0010】
本発明のチューインガム組成物に含まれるアルロースは、プシコースとも呼ばれる低熱量の単糖類であって、砂糖の過剰摂取を低減し、糖尿、肥満などの成人病の予防に良い効果がありながらも、砂糖と類似の水準で甘味度が高いという利点がある。前記アルロースは、全体チューインガム組成物の固形分重量100重量%を基準として、1~70重量%、好ましくは10~40重量%含まれる。チューインガム組成物に前記範囲でアルロースを含むことによって、チューインガムを噛む時、脆くならず適切に強度が維持できるだけでなく、甘味が長持ちできる。特に、アルロースを含む本発明のチューインガム組成物は、HLB値の低い乳化剤を用いるにも甘味持続性に優れていることを特徴とする。
【0011】
前記チューインガム組成物に含まれるアルロースは、シロップまたは粉末形態で添加されて製造されるものであってもよい。前記アルロース粉末を用いる場合、アルロース粉末の固形分は、全体アルロース組成物粉末、例えば、純度90%以上のアルロースを粉末として使用することができる。前記アルロースシロップは、アルロースを用いて多様な濃度で製造した溶液であってもよいし、アルロース含有混合糖シロップ形態の場合、アルロース含有混合糖は、混合糖の全固形分含有量100重量部を基準として、アルロース2~55重量部、果糖30~80重量部、およびブドウ糖2~60重量部、およびオリゴ糖0.01~15重量部を含むものであってもよいし、前記オリゴ糖は含まなくてもよい。前記アルロース、果糖およびブドウ糖は、好ましくは、いずれもD型-異性体である。
【0012】
本発明のチューインガム組成物に使用される前記アルロースは、アルロース結晶であってもよいし、例えば、下記の(1)~(6)からなる群より選択された1種以上の特性を有するアルロース結晶であってもよい。
(1)粉末X線分光スペクトル上において、(a)15.35、30.95、18.83および47.15;または(b)15.35、30.95、18.83、47.15および25.17の±0.2°である2θでピークを有する粉末X線分光スペクトルを有するもの、
(2)示差走査熱量分析(DSC)により125.8±5℃のTm温度を有するもの、
(3)示差走査熱量分析により200~220J/gの溶融エンタルピー(H)を有するもの、
(4)400μm以上の平均長径を有するもの、
(5)アルロース結晶の短径に対する長径の長さ(マイクロメートル)の比率(=長径/短径)が1.5~6.9の範囲のものもの、および
(6)結晶の形状が長方形の六面体のもの。
【0013】
アルロースは、化学的合成、またはアルロースエピマー化酵素を用いた生物学的方法で製造されたものであってもよい。好ましくは、アルロースは、生物学的方法、例えば、微生物または酵素反応で製造できる。例えば、前記混合糖は、アルロースエピマー化酵素、前記酵素を生産する菌株の菌体、前記菌株の培養物、前記菌株の破砕物、および前記破砕物または培養物の抽出物からなる群より選択された1種以上を含むアルロース生産用組成物を果糖-含有原料と反応して製造された混合糖、またはこれから得られるものであってもよい。
【0014】
本発明のアルロース製造のための一例として、アルロースエピマー化酵素を高い発現率と安定性で生産できる発現システム、これを用いたGRAS(Generally recognized as safe)微生物、および前記発現システムを用いた微生物および酵素を含むアルロースの生産方法などは、韓国登録特許第10-1318422号および第10-1656063号などに詳細に記載されている。
【0015】
本発明のチューインガム組成物に含まれる乳化剤は、互いに混合しない2種の液体が安定したエマルジョンを形成するために加えられる物質であって、親水性および親油性の比率に応じて親水親油平衡(hydrophile-Lipophile-balance、HLB)値で表す。つまり、HLB値が大きいというのは、親水性の比率が大きいことを意味し、HLB値が小さいというのは、親水性の比率が小さいことを意味する。
【0016】
従来は、チューインガムにおいて味と香味を付与する成分がオイルベースの香料(oil-based flavor)が多くて、チューインガムの味と香りを長持ちさせるために、HLB値の高い乳化剤、例えば、HLB値が少なくとも10以上の乳化剤を添加することが好ましいと知られている。
【0017】
本発明のチューインガム組成物に含まれる乳化剤は、HLB値が1~10、好ましくは1~8、さらに好ましくは1~3の乳化剤であってもよい。また、本発明のチューインガム組成物は、前記乳化剤を全体チューインガム組成物の固形分重量100重量%を基準として、0~3重量%、好ましくは0.1~1重量%含むことができる。
【0018】
具体的な乳化剤の例は、HLB6以下の乳化剤として、モノグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルおよびポリグリセリンポリリシノレートであってもよいし、前記脂肪酸は、炭素数10~18の脂肪酸、好ましくは炭素数16~18の脂肪酸である。前記乳化剤は、具体的には、モノグリセリドおよびジグリセリド(MD)、モノステアリン酸ソルビタン(SMS)、トリステアリン酸ソルビタン(STS)、ポリグリセロールエステル(PGE)、モノグリセリドおよびジグリセリドの乳酸エステル(LMD)、モノグリセリドおよびジグリセリドのリン酸エステル(PMD)、モノグリセリドのジアセチル酒石酸エステル(DATEM)、シュガーエステルおよびレシチンのうちの1つ以上を使用することができ、前記レシチンは、大豆レシチンおよび卵黄レシチンを含み、好ましくは、大豆レシチンであり、前記グリセリン脂肪酸エステルは、モノグリセリンステアリン酸エステルであり、前記ソルビタン脂肪酸エステルは、ソルビタンオレイン酸エステルおよびソルビタンステアリン酸エステルであってもよい。
【0019】
前記チューインガム組成物は、HLB値の低い乳化剤を用いることで、HLB値の高い乳化剤を含むチューインガムに比べて吸湿度が低くて、保管中に空気中の湿気を吸収してガムの物性が脆くなったり、包装紙などにくっつく問題点がなく、保管安定性に優れている。例えば、前記チューインガム組成物は、吸湿度が低くて、30℃の温度および相対湿度75%RHの条件で8時間保管時、下記の数式1で算出される吸湿度が0.1~2.3%、好ましくは0.5~2.0%であってもよい。
数式1: 吸湿度(%)=100%-{(n時間差のチューインガムの重量)-(0時間差のチューインガムの重量)}/(n時間差のチューインガムの重量)*100%
【0020】
特に、チューインガムを商業的に提供する場合、流通期限を設定するにあたり、ガムの色相、物性、香りなどが品質指標となるが、特に、このような品質指標に影響を及ぼす重要要因が水分である点を考慮する時、吸湿性の低いチューインガム組成物は、品質維持および流通期間の拡張の面で非常に優れるという利点がある。
【0021】
また、従来のチューインガム組成物にHLB値の低い乳化剤を用いる場合、甘味が落ちたり、長持ちしない官能上の問題点があると知られているが、本発明のチューインガム組成物は、糖類として特定の含有量でアルロースおよび砂糖を含むことで、アルロースまたは砂糖だけを含む組成に比べて甘味に優れるだけでなく、甘味持続性(prolongation)に優れていて、低いHLB値の乳化剤を用いることによる甘味低減または持続力減少の問題点を解消することができる。
【0022】
本発明のチューインガム組成物は、アルロース以外の単糖類、二糖類、糖アルコール類、植物繊維類およびオリゴ糖類からなる群より選択された1種以上の糖類を追加的に含むことができる。
【0023】
例えば、前記単糖類および二糖類は、砂糖、アロース、デオキシリボース、エリトルロース、ガラクトース、イドース、マンノース、リボース、ソルボース、タガトース、エリトロース、フクロース、ゲンチオビオース、ゲンチオビウロース、イソマルトース、ソマルツロース、コージビオース、ラクツロース、アルトロース、ラミナリビオース、アラビノース、ロイクロース、フコース、ラムノース、ソルボース、マルツロース、マンノビオース、マンノスクロース、メレジトース、メリビオース、メリビウロース、ニゲロース、ラフィノース、ルチノース、ルチヌロース、スタキオース、トレオース、トレハロース、トレハルロース、ツラノース、キシロビオース、フルクトース、およびグルコースからなる群より選択された1種以上であってもよい。
【0024】
例えば、前記チューインガム組成物は、糖類としてアルロースおよび砂糖を混合して使用することができ、アルロースで特異的に付与される糖類由来の清涼感を付与可能であり、糖類として同量の砂糖またはアルロースのみを含む組成に比べて甘味にさらに優れているだけでなく、噛んでいる間に甘味がさらに長持ちする効果がある。前記チューインガム組成物に含まれる砂糖およびアルロースは、99:1~1:99、好ましくは99:1~50:50、さらに好ましくは75:25~65~35の重量比で含まれる。
【0025】
前記チューインガム組成物に含まれる砂糖は、精製度に応じて白砂糖、黄砂糖などであってもよく、平均粒径に応じて精白糖、細粒糖、微粒糖、粉糖であってもよいし、前記砂糖は、全体チューインガム組成物の重量100重量%を基準として、50~90重量%、好ましくは60~70重量%含まれる。
【0026】
あるいは、本発明のチューインガム組成物は、糖類として砂糖を含まない、砂糖なし(sugar-freeまたはsugarless)チューインガム組成物であってもよい。砂糖なしチューインガム組成物によって砂糖による成人病または代謝性疾患などの誘発の可能性を低減できるだけでなく、砂糖の添加によるベタつき防止、歯の腐食性を防止することができる。
【0027】
前記糖アルコール類は、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、ラクチトール、イノシトールおよびソルビトールからなる群より選択された1種以上であってもよい。前記植物繊維類は、水溶性植物繊維であってもよいし、水溶性植物繊維は、ポリデキストロース、難消化性マルトデキストリンおよびペクチンからなる群より選択された1種以上であってもよい。前記オリゴ糖類は、フラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、マルトオリゴ糖およびガラクトオリゴ糖からなる群より選択された1種以上であってもよい。
【0028】
例えば、前記チューインガム組成物は、糖類として糖アルコールを追加的に含むことができ、通常、糖アルコールを含むチューインガム組成物の場合、糖類として砂糖を含むチューインガム組成に比べて低い硬度、つまり、脆い物性を有する問題点があるが、本発明のチューインガム組成物の場合、アルロースによって前記糖アルコール含有チューインガム組成物の硬度が高くなって物性が補完される。
【0029】
本発明のチューインガム組成物に含まれるガムベースは、合成および/または天然弾性重合体、例えば、ポリイソプレン、ポリビニルアセテート、ポリイソブチレン、エステルガム、天然チクル、ラテックス、樹脂(例、テルペン樹脂)、ポリビニルエステルおよびアルコールからなる群より選択された1種以上を含むことができる。
【0030】
例えば、ガムベースの重量100%を基準として、ポリビニルアセテートを20~50重量%、ポリイソブチレン5~20重量%、および/またはエステルガムを3~45重量%含むことができる。前記ガムベースは、滑沢剤、ワックス類(例、カンデリラワックス、カルナウバワックス、マイクロクリスタリンワックス、石油ワックス、ビーズワックスおよび/または精製パラフィンワックス)、乳化剤、ポリブテン、充填剤(例えば、タルクおよび/または炭酸カルシウム)、高甘味甘味料、酸味料、着香剤、機能性物質、および増粘多糖類からなる群より選択された1以上を追加的に含むことができ、例えば、ガムベース100重量%を基準として、ポリビニルアセテート20~50重量%、ポリイソブチレン5~20重量%、ワックス類1~20重量%、乳化剤0.5~10重量%、タルク10~20重量%、炭酸カルシウム10~20重量%、可塑剤1~2重量%、エステルガム20~45重量%、天然甘味料1~6重量%、香料1~3重量%およびグリセリン0.1~5重量%を含むことができるが、これに限定されない。
【0031】
本発明のチューインガム組成物は、高甘味甘味料、着香剤、天然抽出物、酸味剤、ワックスおよび充填剤、色素および光沢剤(シェラックなど)からなる群より選択された1以上の添加剤を追加的に含むことができる。
【0032】
前記ガムベースまたはチューインガム組成物に含まれる高甘味甘味料は、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、シクラミン酸ナトリウム、サッカリンナトリウム、スクラロース、ステビア甘味料(例えば、ステビオール配糖体、酵素処理ステビア)、ズルチン、ソーマチン、トマチン、ネオテーム、レバウジオシド(例えば、レバウジオシドA、レバウジオシドD、およびレバウジオシドM)およびモネリンからなる群より選択される1種以上であってもよいが、これに限定されない。
【0033】
前記ガムベースまたはチューインガム組成物に含まれる着香剤は、単一香料化合物および/または凍結-乾燥した天然植物由来成分、例えば、植物から抽出および/または加工された精油およびエッセンスからなる群より選択された1以上であってもよい。例えば、前記単一香料化合物は、メントール類、メントン、バニリン、エチルバニリン、桂皮酸、ピペロナール、d-ボルネオール、マルトール、エチルマルトール、カンファー(kamfer)、アントラニル酸メチル、シンナミックアルコール、N-メチルアントラニル酸メチル、メチル-ナフチルケトン、リモネン、リナロール、および/またはイソチオシアン酸アリールを含むことができるが、これに限定されない。また、前記天然植物由来成分は、ココナッツ、コーヒー、チョコレート、バニラ、ブドウ、オレンジ、ライム、ハッカ、カンゾウ、キャラメル香、ハチミツ香、ピーナッツ、クルミ、カシュー、ヘーゼルナッツ、アーモンド、パイナップル、イチゴ、ラズベリー、トロピカルフルーツ、チェリー、桂皮、ペパーミント、トウリョクユ(wintergreen)、スペアミント、ユーカリ、およびミントを含み、フルーツエッセンスとして、リンゴ、ナシ、モモ、イチゴ、アンズ、ラズベリー、チェリー、パイナップルおよびスモモエッセンス;精油として、ペパーミント、スペアミント、メントール、ユーカリ、チョウジ油、ベイ油、アナイス、タイム、セダーリーフ(cedar leaf)油、ナツメグ、前記のフルーツオイルを含むことができるが、これに限定されない。
【0034】
本発明のさらに他の例として、糖類として砂糖およびアルロースを含有するチューインガム組成物の製造方法を提供する。
【0035】
前記チューインガム組成物に関する事項は、チューインガム組成物の製造方法に同一に適用可能である。
【0036】
前記製造方法は、砂糖およびアルロースを99:1~1:99、好ましくは99:1~50:50の重量比で混合する段階を追加的に含むことができる。前記砂糖は、全体チューインガム組成物の重量100重量%を基準として、50~90、好ましくは60~70重量%含まれ、前記アルロースは、全体チューインガム組成物の固形分重量100重量%を基準として、1~70重量%、好ましくは10~40重量%含まれるように混合することができる。
【0037】
前記製造方法は、乳化剤を添加する段階を追加的に含むことができ、前記乳化剤は、全体チューインガム組成物の固形分重量100重量%を基準として、0~3重量%、好ましくは0.1~1重量%含まれるように混合することができ、前記乳化剤は、親水親油平衡(hydrophile-Lipophile-balance、HLB)値が1~20、好ましくは1~7、さらに好ましくは1~3の乳化剤であってもよい。
【0038】
本発明の製造方法において、前記アルロースは、アルロース結晶であってもよいし、冷却法、例えば、アルロース溶液を速やかにまたは遅く冷却させて過飽和状態を誘導化して結晶を生成する段階を追加的に含むことができる。冷却速度は、例えば、0.01~20℃/分に維持することができ、前記アルロース結晶の製造時、種晶を含まずに結晶を製造したり、結晶の生成速度/大きさを増加させるために種晶(seed)を含むことができる。
【0039】
前記製造方法は、砂糖およびアルロース以外の糖類、つまり、単糖類、二糖類、糖アルコール類、植物繊維類およびオリゴ糖類からなる群より選択された1以上を混合する段階を追加的に含むことができる。
【0040】
前記製造方法は、ガム基礎剤、香料、酸味剤、甘味剤、ワックスおよび充填剤、色素、光沢剤(シェラックなど)からなる群より選択された1以上の添加剤を混合する段階を追加的に含むことができる。
【0041】
本発明のさらに他の例として、砂糖、アルロースおよび乳化剤を提供することで、チューインガム組成物に保管安定性および/または甘味持続性を増加させる方法を提供する。
【0042】
前記チューインガム組成物に関する事項は、向上した保管安定性および/または水分安定性を増加させる方法に同一に適用可能である。
【発明の効果】
【0043】
本発明は、糖類として砂糖、アルロースおよび低いHLB値を有する乳化剤を含むチューインガム組成物であって、低いHLB値を有する乳化剤を用いたにもかかわらず甘味に非常に優れ、甘味持続性が高いだけでなく、清涼感に優れて官能的に優れ、吸湿性が低くて保管安定性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】本発明の実施例1~3および比較例1のチューインガムにおける時間経過による吸湿度を表に示したものである。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0045】
下記の例示的な実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の保護範囲が下記の実施例に限定される意図ではない。
【0046】
アルロースの製造
アルロース96重量%を含む高純度アルロースシロップを81Bx(%、w/w)の濃度に濃縮させ、過飽和状態になる温度35℃から徐々に温度10℃まで冷却させて結晶を成長させた。この時、アルロース種晶を添加し、温度35℃でゆっくり撹拌して少量の結晶核を生成させた後、温度を時間あたり1℃ずつ減少させて結晶を成長させ、前記結晶成長工程で冷却途中に生成された微細結晶を再溶解するために溶液の温度を30~35℃まで高めて微細結晶を溶解する工程を行った。前記結晶成長工程と微細結晶溶解工程を少なくとも1回以上繰り返して結晶化を行った。ここで製造されたアルロース結晶は、遠心脱水によって母液を除去し、結晶を冷却水で洗浄した後、乾燥して回収した。アルロース結晶の収率は61%であった。
前記回収されたアルロース結晶の平均粒度は853.3μmであり、平均短径が約208.0μmであった。また、DSC分析(Diamond DSC、30~250℃、10℃/min昇温、N2 gas purge)の結果、Tm(℃)は125.8℃であり、211.7J/gの△Hを有することを確認した。さらに、前記アルロース結晶のXRD分析の結果(D/MAX-2200 Ultima/PC)を下記表1に示した。
【0047】
【0048】
実施例1~3.チューインガムの製造
前記製造されたアルロース、および糖アルコール類としてキシリトール、マルチトールまたはソルビトールを含み、下記表2の成分および組成でチューインガムを製造した。乳化剤は、HLB値が3のS370および/またはHLB値が7のS770(ナムヨン商社)を使用した。具体的なミキシング段階として、下記表の組成をガムニーダーに入れてニーディングした後、40℃の温度でミキシングして、配合物を繰り広げた時、網状構造が完成した場合に排出した。前記ガム配合物を押し棒で押して1.5~2mmにシーティングし、カッティングした。
【0049】
【0050】
前記実施例1~6に対する比較例として、同様の方法でチューインガムを製造し、乳化剤をHLB値が16のS1670(ナムヨン商社)を含む下記表2の組成で製造した。
【0051】
実施例4および6: チューインガムの製造
実施例1~3の製造方法と同様の方法で、糖類としてアルロースおよび砂糖を含有量比を異ならせて含むチューインガムを下記表3の組成で製造した。比較例として、アルロースを含まず、砂糖、ブドウ糖および水飴だけを含む組成でチューインガムを製造した。
【0052】
【0053】
実施例7~9: チューインガムの製造
前記実施例1~3の製造方法と同様の方法で、糖類としてアルロース、砂糖、ブドウ糖および水飴を含み、乳化剤の種類および含有量を異ならせて下記表4の組成でチューインガムを製造し、比較例として乳化剤を含まなかったり(比較例3)、HLB値16の乳化剤だけを含む組成(比較例4)でチューインガムを製造した。
【表4】
【0054】
試験例1.吸湿度評価
前記製造された実施例1~3、実施例8および9と、比較例1~4のアルロースを含むチューインガムに対して時間経過による吸湿度を評価した。具体的には、トレイに製造されたチューインガムを置いて重量を測定し、恒温(30℃)および恒湿(75%RH)の条件下、0、2、4、6、8時間経過後にチューインガムの重量を測定し、下記の数式1で算出された増加した重量を時間による比率で計算して、下記表5、表6、および
図1に示した。
数式1: 吸湿度(%)=100%-{(n時間差のチューインガムの重量)-(0時間差のチューインガムの重量)}/(n時間差のチューインガムの重量)*100%
【0055】
【0056】
【0057】
前記結果から確認できるように、アルロースを除いた糖の種類を問わず、同一の糖類を用いる時、HLB値の低い乳化剤を用いるほど吸湿度を低く維持できることを確認した。特に、HLB値が1の乳化剤を用いる実施例1または8の場合、HLB値16の乳化剤を含む比較例1または4のチューインガムに比べて吸湿度が顕著に低く、特に、HLB1の乳化剤を約半分程度少ない量で乳化剤を含む場合(実施例9)にも、HLB16の乳化剤を用いたものに比べて低い吸湿度を維持できることを確認した。
【0058】
試験例2.硬度評価
前記製造された実施例1~3と、比較例1のチューインガムに対する硬度をPunture Test(Measure Force in Compression)方法で、5mm径のプローブを用いて1mm/sの速度で5回繰り返し測定して硬度を測定した。
前記測定の結果を下記表に示しており、HLB値の低い乳化剤を用いた実施例1~6(HLB1または7)、特に実施例3~6(HLB1)の硬度が高いことを確認した。
【0059】
【0060】
糖アルコールとしてキシリトールと、乳化剤としてHLB値の高い乳化剤(HLB16)を含む比較例1の場合、硬度が低くて物性が脆くなって咀嚼性が良くないことが予想されるのに対し、HLB値の低い乳化剤(HLB3)を含む実施例1の場合、硬度が高くて糖アルコールを含むにもかかわらず一定水準以上の硬度を付与できることを確認した。
【0061】
試験例3.官能評価
前記製造された実施例4~6、比較例2のチューインガムに対する官能評価を実施した。試料を口の中に入れて噛んでいる間の甘味強度、甘味嗜好度、強度および強度嗜好度を5点尺度で評価し、試料を口の中に入れた後、初期と3分経過後の嗜好度をそれぞれ評価し、その結果を表8に示した。
前記項目の評価基準は下記の通りであり、その結果を下記表に示した。
<評価基準>
甘味: 甘味強度が強ければ5点、弱ければ1点
甘味嗜好度: 甘味質の選好度に優れていれば5点、低ければ1点
硬度(Hardness): 硬度が強ければ5点、弱ければ1点
強度嗜好度(Hardness): 硬度の嗜好度に応じて選好度に優れていれば5点、低ければ1点
【0062】
【0063】
前記結果から確認できるように、アルロースを含まない比較例2のチューインガムと比較して、通常のチューインガムの組成で、糖類として砂糖を含まず、アルロースを約53重量%含む組成で製造された実施例6のチューインガムは、甘味が低いだけでなく、時間経過後にチューインガムの強度が強くなることを確認した。
特に、砂糖およびアルロースを約42:10および33:20の重量比で含む組成である実施例5および6の場合、砂糖を多量含む比較例2に比べて甘味がさらに強く感じられるだけでなく、清涼感(クーリング感)による甘味嗜好度が高いことを確認した。また、砂糖またはアルロースだけを含む比較例の場合に比べて、実施例5および6の場合、甘味が長い間高い水準に維持される効果があることを確認した。