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特許7203228引張式のシフトチェンジ伝動システム及び食品調理機
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-28
(45)【発行日】2023-01-12
(54)【発明の名称】引張式のシフトチェンジ伝動システム及び食品調理機
(51)【国際特許分類】
   F16H 19/02 20060101AFI20230104BHJP
   A47J 43/046 20060101ALI20230104BHJP
【FI】
F16H19/02 D
A47J43/046
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021537774
(86)(22)【出願日】2019-11-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-10
(86)【国際出願番号】 IB2019059812
(87)【国際公開番号】W WO2020136465
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-09-03
(31)【優先権主張番号】18116666.9
(32)【優先日】2018-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】HK
(31)【優先権主張番号】201910799936.8
(32)【優先日】2019-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】512262167
【氏名又は名称】ヤン クウォン ウォン
(74)【代理人】
【識別番号】100096758
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100114845
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 雅和
(74)【代理人】
【識別番号】100148781
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 友和
(72)【発明者】
【氏名】ヤン クウォン ウォン
(72)【発明者】
【氏名】ウォン, フン タイ
(72)【発明者】
【氏名】イエン, ヒウ フン
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3191494(JP,U)
【文献】独国特許出願公開第102013112225(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 19/02
A47J 43/046
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直径の異なる回転台が接続されて構成された同軸筒状体を少なくとも1つ含む引張手段を含み、
前記引張手段に紐繋止部が設置され引き紐の一端が前記紐繋止部を介して引張手段に接続されて、回転台に巻回しており、前記引張手段に、引き出された前記引き紐を回収するための反発力を提供する反発手段が接続され、
前記紐繋止部は、前記直径の異なる回転台が接続されている部分に近接しており、前記引き紐が回収される回転台を選択可能であることを特徴とする、引張式のシフトチェンジ伝動システム。
【請求項2】
前記同軸筒状体が、直径の異なる2つの回転台が接続されて構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の引張式のシフトチェンジ伝動システム。
【請求項3】
前記直径の異なる回転台が接続されている部分が外側に延出して、外側に突出した突出部が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の引張式のシフトチェンジ伝動システム。
【請求項4】
ガイド溝を有する上蓋をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の引張式のシフトチェンジ伝動システム。
【請求項5】
前記紐繋止部が回転台を貫通する構造であり、前記引き紐が回転台から外側に伸びていることを特徴とする、請求項4に記載の引張式のシフトチェンジ伝動システム。
【請求項6】
前記反発手段が、引張手段に接続された一組のコイルばねであることを特徴とする、請求項1に記載の引張式のシフトチェンジ伝動システム。
【請求項7】
前記シフトチェンジ伝動システムに、さらにガイド構造が設置され、前記ガイド構造は、引き紐を通して制限するための制限部と、制限部の上下動を制御する制御部とを含み、引き紐が制限部を通り、制御部を介して制限部の位置を制御することで、引き紐の位置を制御することを特徴とする、請求項1に記載の引張式のシフトチェンジ伝動システム。
【請求項8】
前記制御部が押しボタン軸筒を含み、押しボタン軸筒の下方は、押しボタン軸筒より小径の第2の軸筒であり、前記第2の軸筒の下方に、第2の軸筒と同径の第3の軸筒が一定の距離で設置され、第2の軸筒及び第3の軸筒に、ばねが外嵌して設けられ、前記第3の軸筒の下方に、ばねの下端が圧接する平面台が接続されており、
前記ガイド構造が、横方向に設置された孔付きシート体であり、前記孔付きシート体の一側が押しボタン軸筒に接続され、引き紐が前記孔付きシート体の孔を通ることを特徴とする、請求項7に記載の引張式のシフトチェンジ伝動システム。
【請求項9】
前記制御部は、導管溝筒が同軸に被嵌された押しボタン軸筒を含み、押しボタン軸筒の下方は、ばねが被嵌された細軸筒に接続し、ばねの上方は押しボタン軸筒の下方に圧接し、下方は導管溝筒の内側底部の平面台に圧接しており、
前記ガイド構造が、横方向に設置された孔付きシート体であり、前記孔付きシート体の一側が細軸筒に接続され、引き紐が前記孔付きシート体の孔を通ることを特徴とする、請求項7に記載の引張式のシフトチェンジ伝動システム。
【請求項10】
前記制御部は、底部に鋸歯を有する導管溝筒が同軸に被嵌された押しボタン軸筒を含む、ボールペンの押しボタン構造であり、押しボタン軸筒に戻り用のばねが被嵌され、下方は上下動する可動筒と、ばねを介して接続しており、
前記ガイド構造が、横方向に設置された孔付きシート体であり、前記孔付きシート体の一側が可動筒に接続され、引き紐が前記孔付きシート体の孔を通ることを特徴とする、請求項7に記載の引張式のシフトチェンジ伝動システム。
【請求項11】
前記制御部は、上方がつまみであるつまみ軸筒を含み、つまみの下方が軸筒本体に接続し、軸筒本体は、外側に第1のガイド構造が設置されるとともに、第1のガイド構造に係合する第2のガイド構造を内側に有する導管溝筒が外嵌して設けられ、第1のガイド構造と第2のガイド構造との相互作用により、つまみ軸筒を回転させて導管溝筒を上下動させており、
前記ガイド構造が、横方向に設置された孔付きシート体であり、前記孔付きシート体の一側が導管溝筒に接続され、引き紐が前記孔付きシート体の孔を通ることを特徴とする、請求項7に記載の引張式のシフトチェンジ伝動システム。
【請求項12】
前記第1のガイド構造が、ねじ山又は傾斜した凸部又は凹溝であり、前記第2のガイド構造が、ねじ山又は傾斜した凹溝又は凸部であることを特徴とする、請求項11に記載の引張式のシフトチェンジ伝動システム。
【請求項13】
請求項1~6のいずれかに記載の引張式のシフトチェンジ伝動システムを含み、前記引張手段に伝動手段が接続され、伝動手段が、回転するように作動する食品処理装置に接続することを特徴とする食品調理機。
【請求項14】
さらに底蓋が設置され、底蓋の中心は反発手段に接続し、底蓋と引張手段が接続されており、引張手段に、前記引張手段を覆う上蓋が外嵌して設けられ、上蓋は、頂部に位置する頂面及び側面に位置する側壁を含み、前記側壁の下縁が底蓋に接続され、前記上蓋の側壁に、前記引き紐を通すためのガイド溝が設置されていることを特徴とする、請求項13に記載の食品調理機。
【請求項15】
前記ガイド溝が縦方向のガイド溝であり、ガイド溝の長さが直径の異なる回転台に亘る長さであり、
引き紐の外端が引き手に接続し、引き手の長さが縦方向ガイド溝の長さより長いことを特徴とする、請求項14に記載の食品調理機。
【請求項16】
前記伝動手段が、回転軸であるか又はワンウェイギヤに接続した伝動軸であり、伝動軸の上方が上蓋頂面を貫通して、食品処理装置に接続されていることを特徴とする、請求項13に記載の食品調理機。
【請求項17】
請求項7~12に記載の引張式のシフトチェンジ伝動システムを含み、前記引張手段に伝動手段が接続され、伝動手段は、回転するように作動する食品処理装置に接続しており、前記伝動手段が、回転軸であるか又はワンウェイギヤに接続した伝動軸であり、伝動軸の下方が食品処理装置に接続され、上方が外カバーであり、外カバーの上平面に、案内構造を露出させるための貫通孔が設置されていることを特徴とする、食品調理機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シフトチェンジ伝動システムに関し、特に非電動の引張式のシフトチェンジ伝動システムに関する
【背景技術】
【0002】
既存の引張式の伝動システムは、主に単一の円形ブロック又は直径の異なる複数の同軸円形ブロックの組み合わせによって構成されており、手動の引張式の食品切断処理装置に用いることができる。一般的な手動の引張式の食品切断処理装置は、単一の出力方式しかなく、異なる伝動比を変える必要がある場合、例えば、大小のトルクを変換して加減速するときに、複数の円形ブロックを組み合わせて構成された引張式の伝動システムは、シフトレバーを介してギヤを調整し、シフトチェンジを行う。
【0003】
上記従来の引張式の伝動システムには、少なくとも以下の欠陥がある。
【0004】
出力の伝動比を随時簡単に調整することができない。
【0005】
例えば、食品切断器では、最初に大きな硬い食品を切断するときは、より大きな力を必要とし、速度は高くなくてよいが、小さな食品を切断するときは、より高い回転速度が必要である。
【0006】
従来の食品切断器は、伝動比を変更することができない。伝動比が変換可能な機器であっても、引っ張り操作を停止して、構造(ギヤ又は同軸円形ブロックの位置など)を調整してから使用する必要があり、一貫した引っ張り操作で処理を行うことができず、不便であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決する主な技術的課題は、回転シフト位置の切り替えを容易にする引張式のシフトチェンジ伝動システム及び食品調理機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に用いられる技術的解決手段は、以下のとおりである。
【0009】
引張式のシフトチェンジ伝動システムであって、直径の異なる回転台が接続されて構成された同軸筒状体を少なくとも1つ含む引張手段を含み、直径の異なる回転台が接続する平面は係着面であり、該引張手段に紐繋止部が設置され、紐繋止部は引張手段の側面に設けられ、引き紐の一端が紐繋止部を介して引張手段に接続されて、回転台に巻回しており、該引張手段に、引き出された引き紐を回収するための反発力を提供する反発手段が接続されている。
【0010】
該同軸筒状体は、直径の異なる2つの回転台が接続されて構成されており、ここで、上方の回転台の直径がより大きく、下方の回転台の直径がより小さい。
【0011】
該係着面は外側に延出して外側に突出した突出部が設けられている。
【0012】
該紐繋止部は該突出部に設置されている。
【0013】
該紐繋止部は係着面に近接し、係着面の上方又は下方に位置する。
【0014】
該紐繋止部は回転台を貫通する構造であり、回転台内部に貫通溝を形成しており、引き紐の一端は該溝の一端に接続し、他端は該溝を通って回転台から伸びている。
【0015】
該紐繋止部は回転台を貫通する構造であり、該引き紐は回転台から外側に伸びている。
【0016】
該反発手段は、引張手段の上方又は下方に設置された一組のコイルばねである。
【0017】
食品調理機であって、上記引張式のシフトチェンジ伝動システムを含み、該引張手段に伝動手段が接続され、伝動手段は、回転するように作動する食品処理装置に接続する。
【0018】
該食品調理機には、さらに底蓋が設置され、底蓋の中心は反発手段に接続し、底蓋と引張手段が接続されており、引張手段に、引張手段を覆う上蓋が外嵌して設けられ、上蓋は、頂部に位置する頂面及び側面に位置する側壁を含み、該側壁の下縁が底蓋に接続され、該上蓋の側壁に、引き紐を通すためのガイド溝が設置されている。
【0019】
該ガイド溝が設置された位置は紐繋止部と平行であり、ガイド溝は縦方向のガイド溝であり、ガイド溝の長さは直径の異なる回転台に亘る長さであり、引き紐の外端は引き手に接続し、引き手の長さは縦方向ガイド溝の長さより長い。
【0020】
該伝動手段は、回転軸であるか又はワンウェイギヤに接続した伝動軸であり、伝動軸の上方は上蓋頂面を貫通して、食品処理装置に接続されている。
【0021】
該シフトチェンジ伝動システムには、さらに案内構造が設置され、該案内構造は、引き紐を通して制限するための制限部と、制限部の上下動を制御する制御部とを含み、引き紐が制限部を通り、制御部を介して制限部の位置を制御することで、引き紐の位置を制御する。
【0022】
該制御部は押しボタン軸筒を含み、押しボタン軸筒の下方は、押しボタン軸筒より小径の第2の軸筒であり、該第2の軸筒の下方には、第2の軸筒と同径の第3の軸筒が一定の距離で設置され、第2の軸筒及び第3の軸筒に、ばねが外嵌して設けられ、該第3の軸筒の下方に、ばねの下端が圧接する平面台が接続されており、該ガイド構造は、横方向に設置された孔付きシート体であり、該孔付きシート体の一側は押しボタン軸筒に接続され、引き紐は該孔付きシート体の孔を通る。
【0023】
該制御部は、導管溝筒が同軸に被嵌された押しボタン軸筒を含み、押しボタン軸筒の下方は、ばねが被嵌された細軸筒に接続し、ばねの上方は押しボタン軸筒の下方に圧接し、下方は導管溝筒の内側底部の平面台に圧接しており、該ガイド構造は、横方向に設置された孔付きシート体であり、該孔付きシート体の一側は細軸筒に接続され、引き紐は該孔付きシート体の孔を通る。
【0024】
該制御部は、底部に鋸歯を有する導管溝筒が同軸に被嵌された押しボタン軸筒を含む、ボールペンの押しボタン構造であり、押しボタン軸筒に戻り用のばねが被嵌され、下方は上下動する可動筒とばねを介して接続しており、該ガイド構造は、横方向に設置された孔付きシート体であり、該孔付きシート体の一側は可動筒に接続され、引き紐は該孔付きシート体の孔を通る。
【0025】
該制御部は、上方がつまみであるつまみ軸筒を含み、つまみの下方は軸筒本体に接続し、軸筒本体は、外側に第1のガイド構造が設置されるとともに、第1のガイド構造に係合する第2のガイド構造を内側に有する導管溝筒が外嵌して設けられ、第1のガイド構造と第2のガイド構造との相互作用により、つまみ軸筒を回転させて導管溝筒を上下動させており、該ガイド構造は、横方向に設置された孔付きシート体であり、該孔付きシート体の一側は導管溝筒に接続され、引き紐は該孔付きシート体の孔を通る。該第1のガイド構造は、ねじ山又は傾斜した凸部又は凹溝であり、該第2のガイド構造は、ねじ山又は傾斜した凹溝又は凸部である。
【0026】
食品調理機であって、上記引張式のシフトチェンジ伝動システムを含み、該引張手段に伝動手段が接続され、伝動手段は、回転するように作動する食品処理装置に接続しており、該伝動手段は、回転軸であるか又はワンウェイギヤに接続した伝動軸であり、伝動軸の下方は食品処理装置に接続され、上方は外カバーであり、外カバーの上平面に、案内構造を露出させるための貫通孔が設置されている。
【発明の効果】
【0027】
本発明の有益な効果は以下のとおりである。本発明は、全く新しい非電動の引張式のシフトチェンジ伝動システムを提供し、これを主要な構造として様々な食品調理機を作ることができる。構造が単純で、簡単な上下の引っ張り操作により、対応する回転シフト位置を変更することができ、使用中に機器を停止して交換したり、引く操作を中断したりする必要がなく、より便利に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1a】引き紐が小径の回転台に巻き付けられた、本発明の引張手段の概略図である。
図1b】本発明の引張手段に上蓋を被せて、下に引っ張る構造を示す図である。
図1c】引き紐が大径の回転台に巻き付けられた、本発明の引張手段の概略図である。
図1d】本発明の引張手段に上蓋を被せて、上に引っ張る構造を示す図である。
図2】本発明の引張式のシフトチェンジ伝動システムの一実施例の断面構造を示す図であり、図中の引き紐は、引き締められた状態で小径の回転台に巻回されている。
図3】本発明の引張式のシフトチェンジ伝動システムの他の実施例の断面構造を示す図であり、図中の引き紐は、引き締められた状態で大径の回転台に巻回されている。
図4a】引き紐が接続されていない本発明の引張手段の構造を立体的に示す図である。
図4b】引き紐が接続されていない本発明の引張手段の構造を立体的に示す図である。
図4c図4bのA-A面断面構造を示す図である。
図5】食品処理装置が接続されていない、食品調理機としての本発明の引張式のシフトチェンジ伝動システムの分解構造を示す図である。
図6】本発明の食品調理機の外観構造を立体的に示す図である。
図7】本発明における上蓋に設置されたガイド溝の構造を示す図である。
図8a】本発明の案内手段の第1の実施例の構造を正面から示す図である。
図8b】本発明の案内手段の第1の実施例の構造を立体的に示す図である。
図8c図8aの構造を左側から示す図である。
図9】本発明の案内手段の第2の実施例の構造を立体的に示す図である。
図10a】本発明の案内手段の第3の実施例の構造を正面から示す図である。
図10b】本発明の案内手段の第3の実施例の構造を立体的に示す図である。
図10c図10aの構造を左側から示す図である。
図11a】本発明の案内手段の第4の実施例の構造を正面から示す図である。
図11b】本発明の案内手段の第4の実施例の構造を立体的に示す図である。
図11c図10aの構造を左側から示す図である。
図11d】本発明の案内手段の第4の実施例の別の態様の構造を立体的に示す図である。
図12a】本発明の引張式のシフトチェンジ伝動システムを食品調理機の上面に用いた構造を正面から示す図である。
図12b】本発明の引張式のシフトチェンジ伝動システムを食品調理機の上面に用いた構造を立体的に示す図である。
図12c図12aの構造を左側から示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明に開示された引張式のシフトチェンジ伝動システムは、少なくとも1つの同軸筒状体を含む引張手段1を含み、該同軸筒状体は、直径の異なる回転台11が接続されて構成され、直径の異なる回転台11が接続する平面は係着面12である。
【0030】
該引張手段1には紐繋止部2が設置されており、紐繋止部2は引張手段1の側面に設けられ、引き紐3の一端が紐繋止部2を介して引張手段1に接続され、回転台11に巻回されている。該引張手段1には、反発力を提供する反発手段4が接続され、引き出された引き紐3を回収するために用いられる。
【0031】
ここで、反発手段として、一般的にはコイルばね(引張ばね)を選択し、引張手段の上方又は下方(本実施例では下方)に設置することができ、これは従来よく見られる構造である。本発明においては、初期状態で引き紐は回転台に巻回されており、コイルばねは弛緩状態であるが、引き紐が引き出されると、同軸筒状体が回転して、コイルばねが締め付け状態となり、引き紐が緩められると、コイルばねは自身の弾性力の働きにより、弛緩状態に戻る。つまり、引き紐に反発力を提供することによって、回転台を回転させ、引き紐を回転台に戻して巻回させる。回転台の直径が異なるため、使用の際、引き紐を引くときに、引き紐を斜め上に引くことも、斜め下に引くこともでき、引き紐は引き出されて、反発するときに、直径の異なる回転台上で自在に巻き付いたり伸びたりすることができる。再び引き紐を引っ張ると、引き紐と軸心との距離の相違により、異なるトルクが発生するため、異なる回転方式で引き出され、異なるトーションと速度を出力する。
【0032】
この好ましい実施例では、同軸筒状体は、図1a及び図1cに示すように、直径の異なる2つの回転台11が接続されて構成されており、ここで、上方の回転台11の直径がより大きく、下方の回転台11の直径がより小さい。上方は直径が大きいため、より大きな動力を出力することができ、下方は直径が小さいため、より高い速度を出力することができる。この直径の大きさは上下を入れ替えてもよく、人間工学を考慮すると、下に/水平に引っ張る動きは高速回転により適しているため、下方の直径を小さくし、上方の直径を大きくすることが好ましい。図1a及び図1bに示すように、下に引っ張ると、引き紐が小径の回転台に固定され、高速回転出力を引き出す。図1c及び図1dに示すように、上向きに引っ張ると、引き紐が大径の回転台に固定され、トーションの大きい回転出力を引き出す。
【0033】
紐繋止部2が設置される位置は、係着面12に近い位置に設置されてよく、図2では、下方の回転台11の係着面に近い位置に設置されている。当然、上方の回転台の係着面に近い位置に設置することもできる。また、図2、3及び図4a~cに示すように、この係着面12は、外側に延出し、外側にやや突出した突出部121を設けてよく、図2及び図4a~cに示すように、この突出部121に紐繋止部2を設置してもよい。これらの構造は、いずれも引き紐を上方又は下方に引っ張ることで、引き紐3を対応する回転台に巻回することができ、突出部のわずかな突出構造によって、引き紐が回収されるとき、引き紐を引き締めやすくすることができ、また、引き紐が直径の異なる部分をスムーズに往復しやすくすることもできる。図4a~cには、異なる2箇所の紐繋止部が示されており、必要に応じて引き紐を対応する紐繋止部に固定することができる。
【0034】
図2に示すように、引き紐3をよりよく回収するために、紐繋止部2は回転台11を貫通する構造であってよく、回転台11の内部に貫通溝21を形成しており、引き紐3の一端がこの溝の一端に接続し、他端がこの溝21を通って回転台11から伸びている。この図では、引き紐及び紐繋止部はいずれも下方の回転台に設置されている。このほか、紐繋止部2を回転台11の内部に設置してもよく、引き紐3の一端が回転台11内部の紐繋止部2に接続し、他端は回転台11から外へ伸びる。
実用上は、上記の引張式のシフトチェンジ伝動システムは、一般的に食品調理機に用いられる。
【0035】
本発明はさらに食品調理機を開示しており、図5及び6に示すとおり、上記の引張式のシフトチェンジ伝動システムを含み、該引張手段1に伝動手段が接続されており、伝動手段には、回転するように作動する食品処理装置が接続される。引張手段は、回転によって伝動手段を動作させ、伝動手段が食品処理装置を動作させる。該伝動手段は、一般的な伝動軸5であってよく、引張手段の回転によって伝動軸5を回転させ、それによってさらに食品処理装置を動作させる。本実施例では、図示のように、ワンウェイギヤセット6が設置された伝動軸5であってよく、伝動軸5は食品処理装置に接続されているが、コイルばねが引張手段を回転させるとき、回転の動力が伝動軸に伝達されて、慣性に従って回転し続けることがなく、食品処理装置の動作に影響を与えない。ここでの食品処理装置は、例えば、切断器、撹拌器、水切り器等、対応する機能をすべて回転によって実現する既存の装置であってよく、ここに示しているのは、食品処理装置を備えた容器構造の概略図である。このような伝動軸の伝動構造は、ワンウェイギヤセットの伝動構造と、対応する食品処理装置の構造と機能とを組み合わせており、いずれも従来技術の構造及び製品であって、当業者が実施することができるものである。
【0036】
本発明の食品調理機は、さらに底蓋7が設置されており、底蓋の下方に滑り止めマット71を設置してもよく、底蓋7の中心に反発手段4が接続され、ここで反発手段4は引張ばね(コイルばね)であり、底蓋7と引張手段1が接続されている。引張手段1には引張手段1を覆う上蓋8が外嵌して設けられ、上蓋8は、頂部に位置する頂面81及び側面に位置する側壁82を含み、伝動軸5の上方は上蓋の頂面81を貫通して食品処理装置に接続され、該側壁82の下縁は底蓋7に接続される。図7に示すとおり、該上蓋8の側壁82には、引き紐を通すためのガイド溝83が設置されている。該ガイド溝83が設置された位置は紐繋止部2と平行であり(図2及び図3参照)、ガイド溝83は縦方向のガイド溝であって、ガイド溝83の長さは、径の異なる回転台11に亘る長さである。対応して、引き紐3の外端は引き手31に接続し、引き手31の長さは縦方向ガイド溝83の長さより長い。図1b及び図1dに示すように、引き手31を用いれば、より便利かつ快適に引き紐を引っ張ることができ、ガイド溝83は、さらに引き紐を制限する作用を発揮することもでき、また、引き手31は、引き紐3が反発した際、ガイド溝83の外側に引っ掛かり得る。
【0037】
図6は、本発明の食品調理機の外観構造を示す図であり、その上蓋内には、引張式のシフトチェンジ伝動システムが収容されており、上方に食品処理装置が接続される。その構造は、通常、内部にブレード、攪拌器具等を有し、外部が透明又は不透明な外カバー9である。
【0038】
さらに、本発明の引張式のシフトチェンジ伝動システムは、引き紐を牽引することによって引き紐の引き出し方向及び水平高さを案内し、直径の異なる回転台により正確かつ容易に巻回されるようにすることを目的として、案内構造を増設することができる。この案内構造は、引き紐を通して制限するための制限部20と、制限部20の上下動を制御する制御部21とを含み、引き紐3は制限部20を通り、制御部21を介して制限部20の位置を制御することで、引き紐3の位置を制御する。
【0039】
一般的な簡単な機械構造によって、この機能を実現することができ、以下にいくつかの具体的な実施例を示す。
【0040】
図8a~図8cに示すのは、押しボタン式戻りばねの形態である。該制御部21は、押しボタン軸筒211を含み、押しボタン軸筒211の下方は、押しボタン軸筒211より小径の第2の軸筒212であり、該第2の軸筒212の下方には、第2の軸筒212と同径の第3の軸筒213が一定の距離で設置されている。ここでの軸筒は、円柱形、十字形、又はその他の形状の筒体であってよい。第2の軸筒212及び第3の軸筒213には、ばね22が外嵌して設けられ、該第3の軸筒213の下方には、ばね22の下端が圧接する平面台214が接続されている。該ガイド構造20は、横方向に設置された孔付きシート体201であって、該孔付きシート体201の一側は押しボタン軸筒211に接続され、引き紐3は該孔付きシート体の孔を通る。使用時には、押しボタン軸筒を押下し、押しボタン軸筒が上下動すると、孔付きシート体も上下動する。引き紐がすでに孔付きシート体に挿通されているため、引き紐はガイド構造とともに上下動することができ、それによって直径の異なる回転台に、より正確かつ容易に巻回され、ばねが戻り作用を発揮して、押しボタン軸筒を離すと、反発して元に戻る。
【0041】
図9に示すのは、図8a~図8cの構造と同様の、押しボタン式戻りばねの形態である。該制御部21は、導管溝筒30が同軸に被嵌された押しボタン軸筒211を含み、押しボタン軸筒211の下方には、ばね22が被嵌された細軸筒215が接続され、ばね22の上方は押しボタン軸筒211の下方に圧接し、下方は導管溝筒30の内側底部の平面台214に圧接している。該ガイド構造20は、横方向に設置された孔付きシート体201であって、該孔付きシート体201の一側は細軸筒215に接続され、引き紐3は該孔付きシート体201の孔を通る。使用時には、押しボタン軸筒を押下し、押しボタン軸筒が上下動すると、孔付きシート体も上下動する。引き紐がすでに孔付きシートに挿通されているため、引き紐はガイド構造とともに上下動することができ、それによって直径の異なる回転台に、より正確かつ容易に巻回され、ばねが戻り作用を発揮して、押しボタン軸筒を離すと、反発して元に戻る。ここでの孔付きシート片の形状は、必要に応じて任意に設定することができ、スリットや、開いた細長溝など、他の方式で引き紐を案内してもよい。
【0042】
図10a~図10cに示すのは、軸筒でロックされる押しボタンの形態である。該制御部21はボールペンの押しボタン構造であり、押しボタン式ボールペンの対応する構造を制御部の構成として用いている。該構造は、底部に鋸歯を有する導管溝筒30が同軸に被嵌された押しボタン軸筒211を含み、押しボタン軸筒211には戻り用のばね22が被嵌され、下方には上下動する可動筒216がばね22を介して接続されている。該ガイド構造20は、横方向に設置された孔付きシート体201であり、該孔付きシート体201の一側は可動筒216に接続され、引き紐3が該孔付きシート体201の孔を通る。本実施例は、制御部の構造としてボールペンによく見られるロック構造を用いており、押してロックし、もう一度押してロック解除することで、ガイド構造を上下動させる。引き紐もガイド構造とともに上下動することができるため、直径の異なる回転台に、より正確かつ容易に巻回される。
【0043】
図11a~図11cに示すのは、つまみによって戻る形態である。該制御部21は、上方がつまみであるつまみ軸筒217を含み、つまみの下方は軸筒本体218に接続し、軸筒本体218は、外側に第1のガイド構造219が設置されるとともに、導管溝筒30が外嵌して設けられ、導管溝筒30は、第1のガイド構造219に係合する第2のガイド構造(図示せず)を内側に有し、第1のガイド構造219と第2のガイド構造との相互作用により、つまみ軸筒217を回転させて導管溝筒30を上下動させる。該ガイド構造20は、横方向に設置された孔付きシート体201であり、該孔付きシート体201の一側が導管溝筒30に接続され、引き紐3が該孔付きシート体201の孔を通る。該第1のガイド構造219は、ねじ山又は傾斜した凸部又は凹溝であってよく、該第2のガイド構造は、これに対応してねじ山又は傾斜した凹溝又は凸部である。使用時には、つまみ軸筒をひねり、係合している第1のガイド構造と第2のガイド構造によって導管溝筒が移動し、孔付きシートを上下動させ、引き紐はガイド構造とともに上下動することができるため、直径の異なる回転台に、より正確かつ容易に巻回される。図11dに示すのは、上記の図11a~;図11cと同様の構造を有する別の形のつまみによる戻り例であるが、ここでは詳述しない。
【0044】
また、上記案内構造を有する例では、食品調理機として使用する場合、図12a~12cに示すように、食品調理機の頂部全体にシフトチェンジ伝動システムを設置することが好ましい。すなわち、伝動軸の下方が食品処理装置に接続され、上方が外カバー9であり、外カバー9の上平面に、案内構造を露出させるための貫通孔91が設置されており、本図面ではつまみ軸筒のつまみが露出している。これにより衛生的で美観に優れ、使用時は、片手で上部蓋を押さえて片手で引き紐を引っ張ればよく、人間工学的要件も満たしている。
【産業上の利用可能性】
【0045】
上記を総合すると、本発明は、全く新しい非電動の引張式のシフトチェンジ伝動システムを提供し、これを主要な構造として様々な食品調理機を作ることができる。構造が単純で、簡単な上下の引っ張り操作により、対応する回転シフト位置を変更することができ、使用中に機器を停止して交換したり、引く操作を中断したりする必要がなく、より便利に使用することができる。
図1a
図1b
図1c
図1d
図2
図3
図4a
図4b
図4c
図5
図6
図7
図8a
図8b
図8c
図9
図10a
図10b
図10c
図11a
図11b
図11c
図11d
図12a
図12b
図12c