(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-28
(45)【発行日】2023-01-12
(54)【発明の名称】霧化ユニット及び非燃焼加熱型香味吸引器具
(51)【国際特許分類】
A24F 40/40 20200101AFI20230104BHJP
A24F 40/10 20200101ALI20230104BHJP
A24F 40/485 20200101ALI20230104BHJP
【FI】
A24F40/40
A24F40/10
A24F40/485
(21)【出願番号】P 2021558068
(86)(22)【出願日】2019-11-19
(86)【国際出願番号】 JP2019045225
(87)【国際公開番号】W WO2021100110
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2021-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】松本 光史
(72)【発明者】
【氏名】山田 学
【審査官】西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-531054(JP,A)
【文献】特開2010-104310(JP,A)
【文献】特表2017-538409(JP,A)
【文献】特表2019-528749(JP,A)
【文献】実公昭47-013435(JP,Y1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0084830(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/00-47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
霧化ユニットであって、
エアロゾル源を霧化するように構成される霧化部と、
前記エアロゾル源を保持するタンクと、
前記エアロゾル源が霧化されて生成されたエアロゾルが通過し且つ第1方向に延びるエアロゾル流路の少なくとも一部を画定する壁部を有し、
前記壁部の少なくとも一部は、前記タンクの側壁の一部を構成し、
前記エアロゾル流路は、第1エアロゾル流路と、前記第1エアロゾル流路の下流側と連通する第2エアロゾル流路と、を有し、
前記霧化ユニットは、さらに、前記第2エアロゾル流路に設けられ、前記第1エアロゾル流路と前記第2エアロゾル流路との境界から前記第2エアロゾル流路の下流に向かって延びる液退避部を有し、
前記壁部は、前記第1エアロゾル流路と前記第2エアロゾル流路との境界において前記第1方向と直交する第2方向に平行な平面部を有し、前記液退避部は、前記平面部によって画定される空間を含み、
前記第2エアロゾル流路及び前記液退避部の前記第2方向における断面積の、前記第1エアロゾル流路の前記第2方向における断面積に対する比率は、1超4.0以下である、霧化ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載された霧化ユニットにおいて、
前記壁部は、前記第2エアロゾル流路の少なくとも一部を画定する第2エアロゾル流路壁部を含み、
前記第2エアロゾル流路壁部は、前記タンクの側壁の一部を構成する、霧化ユニット。
【請求項3】
請求項2に記載された霧化ユニットにおいて
前記壁部は、前記第1エアロゾル流路の少なくとも一部を画定する第1エアロゾル流路壁部をさらに含み、
前記第1エアロゾル流路壁部は、前記タンクの側壁の一部を構成する、霧化ユニット。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載された霧化ユニットにおいて、
前記壁部は、前記第1方向に延びるスリットを含み、
前記液退避部は、前記スリットにより画定される空間を含む、霧化ユニット。
【請求項5】
請求項4に記載された霧化ユニットにおいて、
前記第2エアロゾル流路の前記第2方向における断面形状は円形であり、
前記スリットの高さは、前記第2エアロゾル流路の前記第2方向における直径よりも小さい、霧化ユニット。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか一項に記載された霧化ユニットにおいて、
前記第2エアロゾル流路及び前記液退避部の前記第2方向における断面形状は、全体として角形である、霧化ユニット。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載された霧化ユニットにおいて、
前記第1方向からみたときに、前記壁部は角部を有し、
前記液退避部は、前記角部により確定される空間を含む、霧化ユニット。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載された霧化ユニットにおいて、
前記液退避部の前記第1方向における長さの、前記第1エアロゾル流路及び前記第2エアロゾル流路の長さに対する比率は、1/3以上2/3以下である、霧化ユニット。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載された霧化ユニットにおいて、
前記第1エアロゾル流路の前記第2方向における断面形状は、前記第2エアロゾル流路の前記第2方向における断面形状と同一である、霧化ユニット。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載された霧化ユニットにおいて、
前記第1エアロゾル流路及び前記第2エアロゾル流路の前記第2方向における断面形状は、円形である、霧化ユニット。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載された霧化ユニットにおいて、
前記第1エアロゾル流路及び前記第2エアロゾル流路の前記第2方向における断面形状は、前記第1方向において一定である、霧化ユニット。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載された霧化ユニットと、
前記霧化部に電力を供給するための電源と、を有する、非燃焼加熱型香味吸引器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、霧化ユニット及び非燃焼加熱型香味吸引器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、材料の燃焼をすることなく香味を吸引するための香味吸引器具が知られている。このような香味吸引器具の一例は、香味を含む液体(エアロゾル源)を霧化して生成されたエアロゾルを使用者の口に供給したり、香味を含まない液体を霧化して生成されたエアロゾルを、香味源(例えばたばこ源)を通過させたうえで使用者の口にエアロゾルを供給したりする。
【0003】
このような香味吸引器具は、一般的に、霧化ユニット、電源、タンク、エアロゾル流路、及びマウスピース等を備える。霧化ユニットは、エアロゾル源を霧化する加熱要素等を含む。電源は、霧化ユニットに電力を供給するように構成される。タンクは、エアロゾル源を貯留する。エアロゾル流路は、霧化ユニットがエアロゾル源を霧化することによって生じたエアロゾルが通過する流路である。エアロゾル流路を通過したエアロゾルは、マウスピースを介してユーザの口内に到達する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した香味吸引器具が使用されると、霧化ユニットから生じたエアロゾルがエアロゾル流路を画定する壁面に凝集し、液滴が形成されることがある。香味吸引器具の使用がさらに継続されると、エアロゾル流路内に凝集した液滴が柱状に溜まることがある。柱状の液滴は、ユーザの香味吸引器具の吸引に伴いマウスピース側へ移動し、ユーザの口内に到達し、ユーザに不快感を与える恐れがある。
【0006】
特許文献1は、エアロゾルを吸引するための電子シガレットを開示している。特許文献1に開示された電子シガレットでは、エアロゾル流路中に多孔質体を配置することで、エアロゾル流路に凝集した液体を吸収している。
【0007】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたものである。その目的は、エアロゾル流路にエアロゾルが凝集して形成された液滴がユーザ口内に到達することを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態によれば、霧化ユニットが提供される。この霧化ユニットは、エアロゾル源を霧化するように構成される霧化部と、前記エアロゾル源を保持するタンクと、前記エアロゾル源が霧化されて生成されたエアロゾルが通過し且つ第1方向に延びるエアロゾル流路の少なくとも一部を画定する壁部を有する。前記壁部の少なくとも一部は、前記タンクの側壁の一部を構成する。前記エアロゾル流路は、第1エアロゾル流路と、前記第1エアロゾル流路の下流側と連通する第2エアロゾル流路と、を有する。前記霧化ユニットは、さらに、前記第2エアロゾル流路に設けられ、前記第1エアロゾル流路と前記第2エアロゾル流路との境界から前記第2エアロゾル流路の下流に向かって延びる液退避部を有する。前記壁部は、前記第1エアロゾル流路と前記第2エアロゾル流路との境界において前記第1方向と直交する第2方向に平行な平面部を有し、前記液退避部は、前記平面部によって画定される空間を含む。前記第2エアロゾル流路及び前記液退避部の前記第2方向における断面積の、前記第1エアロゾル流路の前記第2方向における断面積に対する比率は、1超4.0以下である。
【0009】
本発明の他の一形態によれば、非燃焼加熱型香味吸引器具が提供される。この非燃焼加熱型香味吸引器具は、上記霧化ユニットと、前記霧化部に電力を供給するための電源と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器具の全体斜視図である。
【
図2】
図1に示したカートリッジの分解斜視図である。
【
図4A】
図3に示したタンクの内壁部の上面図である。
【
図4B】
図4Aの矢視B-Bにおけるタンクの内壁部の側断面図である。
【
図4C】他の実施形態に係るタンクの内壁部の上面図である。
【
図4D】他の実施形態に係るタンクの内壁部の上面図である。
【
図4E】他の実施形態に係るタンクの内壁部の側断面図である。
【
図4F】他の実施形態に係るタンクの内壁部の側断面図である。
【
図5A】他の実施形態に係るタンクを示す概略側断面図である。
【
図5B】他の実施形態に係るタンクを示す概略側断面図である。
【
図6】実験例1で使用したタンクの内壁部の上面図である。
【
図7A】第2エアロゾル流路及び液退避部の形状に対応しない外面形状を有する内壁部を示す概略図である。
【
図7B】第2エアロゾル流路及び液退避部の形状に対応しない外面形状を有する内壁部を示す概略図である。
【
図7C】第2エアロゾル流路及び液退避部の形状に対応した外面形状を有する内壁部を示す概略図である。
【
図7D】第2エアロゾル流路及び液退避部の形状に対応した外面形状を有する内壁部を示す概略図である。
【
図9】他の実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器具のタンクの概略側断面図である。
【
図11】他の実施形態に係る蓋部材を備えたタンクの概略側断面図である。
【
図12】さらに他の実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器具のタンクの概略上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下で説明する図面において、同一の又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0012】
図1は、本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器具の全体斜視図である。
図1に示すように、非燃焼加熱型香味吸引器具100は、再使用される電源部90と、電源部90に取り付け可能なカートリッジ10と、を有する。電源部90は、その内部に電源92を有し、電源92は、電源部90に取り付けられたカートリッジ10に電力を供給するように構成される。カートリッジ10は、その先端に通気口12を有する。ユーザは、非燃焼加熱型香味吸引器具100で生成したエアロゾルを通気口12から吸引することができる。
【0013】
図2は、
図1に示したカートリッジ10の分解斜視図である。なお、本明細書において、カートリッジ10が電源部90に取り付けられた状態で電源部90に向く側を「カートリッジ10の後端」ということがある。また、カートリッジ10の後端と反対側を「カートリッジ10の先端」ということがある。また、カートリッジ10の後端と先端とをつなぐ方向を「第1方向」といい、第1方向と直交する方向を「第2方向」ということがある。
【0014】
カートリッジ10は、タンク30と、霧化部14と、霧化部固定部材16と、マウスピース18と、キャップ20と、を有する。タンク30は、その内部に水、グリセリン、プロピレングリコール等を含むエアロゾル源を保持する。また、タンク30は、第1方向の後端に近い位置に霧化チャンバ33を備える。霧化部14は、タンク30から供給されるエアロゾル源を霧化するように構成される。本実施形態では、
図3に関連して後述するように、霧化部14は、ガラス繊維等からなる筒状のウィックの外周に抵抗発熱体を巻き付けたコイルで形成される。霧化部14は、
図3に関連して後述するように電気接点を備える。カートリッジ10が電源部90に取り付けられると、電源部90の電極端子と霧化部14の電気接点とが導通し、電源部90から霧化部14に電力が供給され得る。
【0015】
霧化部14は、抵抗発熱体にエアロゾル源を供給するため、ガラス繊維等からなる筒状のウィックの他、例えば、有機繊維(セルロース等)からなるウィック、又は平板状若しくは筒状のセラミック等の多孔質体をウィックとして採用することができる。また、抵抗発熱体としては、例えばニクロムやステンレス等の金属や炭素等の非金属を用いることができる。ウィックが筒状の場合は、発熱抵抗体はコイル状に巻き付けられていていてもよく、また、筒状ウィックに沿って配置されていてもよい。ウィックが平板状の場合は、抵抗発熱体は、ウィック平面上に直線的に配置されていてもよく、また、蛇行的に配置されていてもよい。霧化部14は、抵抗発熱体に代えて、超音波や誘導加熱によりエアロゾル源を霧化するように構成されていてもよい。カートリッジ10は、複数の霧化部14を有していてもよい。霧化チャンバ33は、タンク30の第1方向の後端に近い位置に限らず、タンク30内のいずれかの位置、タンク30の外部に存在してもよい。また、霧化チャンバ33は、タンク30から着脱可能な部材によって画定されてもよい。
【0016】
キャップ20は、タンク30の第1方向における後端に取り付けられて、タンク30の霧化チャンバ33を保護し、カートリッジ10の使用時に取り外される。霧化部固定部材16は、霧化部14を保持した状態でタンク30の霧化チャンバ33内に固定される。これにより、霧化部14のウィックの一部がタンク30に保持されるエアロゾル源と接触し、ウィックにエアロゾル源が供給される。マウスピース18は、タンク30の第1方向における先端に取り付けられる。また、マウスピース18は、
図1に示した通気口12を備える。
【0017】
図3は、
図2に示したタンク30の概略側断面図である。
図3においては、
図2に示した霧化部固定部材16を図示省略している。図示のように、タンク30は、第1方向における先端の上壁部30aと、第1方向における後端の底壁部30bと、その外周面を構成する外壁部30cと、を有する。また、タンク30は、エアロゾル流路32の少なくとも一部を画定する内壁部34(壁部の一例に相当する)を備える。即ち、タンク30は、内壁部34によって、タンク30の後端と先端との間を第1方向に向かって延びるエアロゾル流路32をその内部の略中央部に画定する。本明細書において、タンク30の外壁部30cと内壁部34は、タンク30の側面を構成する壁であり、側壁ということもある。また、本明細書において、タンク30の側壁とは、タンク30の上壁部30a及び底壁部30bとともにエアロゾル源をタンク30内に保持する機能を有する壁をいい、タンク30の上壁部30a又は底壁部30bと一体に形成されていてもいなくてもよい。なお、本実施形態では、エアロゾル流路32を画定する内壁部34がタンク30の側壁の一部を構成している。これに限らず、エアロゾル流路32の少なくとも一部は、タンク30の側壁とは別の部材で構成される壁部によって画定されてもよい。
【0018】
図示のように、霧化部14は、タンク30の霧化チャンバ33内に固定される。具体的には、霧化部14は、筒状のウィック14aと、ウィック14aに巻き付けられたコイル14bとを備え、ウィック14aが第2方向に延びるように霧化チャンバ33内に配置される。ウィック14aは、タンク30に保持されたエアロゾル源を吸収して保持する。霧化部14は、さらに、コイル14bに電力を供給するための電気接点14cを備える。カートリッジ10が
図1に示した電源部90に取り付けられると、電源部90の接点と
図3に示す電気接点14cとが導通し、コイル14bに電源部90から電力が供給される。
【0019】
コイル14bに電力が供給されるとコイル14bが発熱し、ウィック14aに保持されたエアロゾル源を霧化し、エアロゾルが生成される。霧化チャンバ33で生成されたエアロゾルは、ユーザの吸引に伴い、エアロゾル流路32を通じて、マウスピース18の通気口12を介してユーザの口内に到達する。したがって、タンク30及び霧化部14は、エアロゾル源を霧化する霧化ユニットとして機能する。
【0020】
上述したように、非燃焼加熱型香味吸引器具100が使用されると、霧化部14から生じたエアロゾルがエアロゾル流路32を画定する内壁部34の壁面に凝集し、液滴が形成されることがある。非燃焼加熱型香味吸引器具100の使用がさらに継続されると、エアロゾル流路32内に凝集した液滴が柱状に溜まることがある。柱状の液滴は、ユーザの非燃焼加熱型香味吸引器具100の吸引に伴いマウスピース18側へ移動し、ユーザの口内に到達し、ユーザに不快感を与える恐れがある。
【0021】
そこで、本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器具100は、内壁部34に凝集した液滴がエアロゾル流路32から退避するための液退避部を有する。
図4Aは、
図3に示したタンク30の内壁部34の上面図である。
図4Bは、
図4Aの矢視B-Bにおけるタンク30の内壁部34の側断面図である。
図4A及び
図4Bにおいては、タンク30の内壁部34のみが抜粋して示されている。
【0022】
図4A及び
図4Bに示すように、内壁部34によって画定されるエアロゾル流路32は、第1エアロゾル流路32aと、第1エアロゾル流路32aの下流側(即ち先端)と連通する第2エアロゾル流路32bとを有する。言い換えれば、内壁部34は、第1エアロゾル流路32aの少なくとも一部を画定する第1エアロゾル流路壁部34aと、第2エアロゾル流路32bの少なくとも一部を画定する第2エアロゾル流路壁部34bと、を有する。本実施形態においては、第1エアロゾル流路壁部34a及び第2エアロゾル流路壁部34bは、それぞれタンク30の側壁の一部を構成する。これに限らず、第2エアロゾル流路壁部34bだけがタンク30の側壁の少なくとも一部を構成し、第1エアロゾル流路壁部34aは、タンク30の側壁とは別の壁部材で構成され、タンク30の外部に位置してもよい。
【0023】
図4Aに示すように、本実施形態では、第1エアロゾル流路32aと第2エアロゾル流路32bの第2方向における断面形状は円形である。また、本実施形態では、第1エアロゾル流路32aの第2方向における断面形状は、第2エアロゾル流路32bの第2方向における断面形状と同一である。さらに、本実施形態では、第1エアロゾル流路32a及び第2エアロゾル流路32bは、第1方向においてその断面形状及び断面積が一定である。即ち、第1エアロゾル流路32a及び第2エアロゾル流路32bは、その長さ方向に沿って断面形状及び断面積が変化しない。
【0024】
図4Bに示すように、内壁部34は、第1エアロゾル流路32aと第2エアロゾル流路32bとの境界において、第2方向に平行な平面部40と、平面部40から先端へ延びる一対のスリット42を有する。平面部40及びスリット42は、第2エアロゾル流路32bよりも第2方向において外側に位置する。
図4Aに示すように、本実施形態においては、内壁部34は、第2エアロゾル流路32bを挟むように一対のスリット42を備える。これに限らず、内壁部34は、1つ、又は3つ以上のスリット42を備えることもできる。
図4Aに示すように、内壁部34は、第1方向からみたときに、スリット42を形成する角部42aを備える。
図4Aに示すように、スリット42の先端は開放されている。
【0025】
なお、本明細書においては、
図4Aに示すように、幅Wは、第2エアロゾル流路32bの直径φと一対のスリット42の深さを含む長さをいい、スリット42の高さHは、スリット42の厚さ方向の長さを言う。
【0026】
スリット42の第2方向における断面形状は、
図4Aに示す形状に限られない。
図4C及び
図4Dは、他の実施形態に係るタンク30の内壁部34の上面図である。
図4Cに示す例では、スリット42の角部42aの第2方向における断面形状がアール形状に形成されている。即ち、角部42aには、90度の角部42aだけでなくアール形状の角部42aも含まれる。また、
図4Dに示す例では、スリット42の第2方向における断面形状が半円状に形成されている。スリット42は、
図4A、
図4C、及び
図4Dに示す断面形状に限らず、例えば三角形等の多角形などを含む任意の断面形状を有し得る。
【0027】
非燃焼加熱型香味吸引器具100が使用されると、霧化部14から生じたエアロゾルは、
図4A及び
図4Bに示す内壁部34によって画定される第1エアロゾル流路32a及び第2エアロゾル流路32bを通過する。このとき、第1エアロゾル流路壁部34a又は第2エアロゾル流路壁部34bの壁面にエアロゾルが凝集し、液滴が形成され得る。
【0028】
第1エアロゾル流路壁部34a及び/又は第2エアロゾル流路壁部34bの壁面に液滴が凝集し続けると、液滴が第1エアロゾル流路32aを塞ぐように堆積し、その結果、第1エアロゾル流路32a内に液滴が柱状に形成され得る。柱状の液滴は、ユーザの非燃焼加熱型香味吸引器具100の吸引に伴い、マウスピース18側、即ち第2エアロゾル流路32b側へ移動する。ここで、柱状の液滴が第2エアロゾル流路32bに達すると、第1エアロゾル流路32aと第2エアロゾル流路32bの境界に形成された平面部40によって画定される空間に液滴の一部が退避する。平面部40付近の空間には空気が流れにくいので、平面部40を通過する空気の流速は、第2エアロゾル流路32bの流速に比べて小さい。したがって、平面部40によって画定される空間に退避した液滴は、マウスピース18側へ移動しにくくなるので、ユーザの口内に液滴が到達することを抑制することができる。即ち、平面部40によって画定される空間は、凝集した液滴が第2エアロゾル流路32bから退避する液退避部の一部として機能する。
【0029】
また、第2エアロゾル流路32bに達した柱状の液滴は、平面部40から延びるスリット42の内部にも退避する。これにより、液滴は柱状でなくなり、スリット42の内部、即ちスリット42により画定される空間に位置するようになる。スリット42は、上述したように、角部42aを備えるので、液滴は、毛管作用によりスリット42の角部42aに保持される。スリット42は、第1エアロゾル流路32a及び第2エアロゾル流路32bよりも、第2方向において外側に位置するので、スリット42を通過する空気の流速は、第2エアロゾル流路32bの流速に比べて小さい。したがって、スリット42により画定される空間に退避した液滴は、マウスピース18側へ移動しにくくなるので、ユーザの口内に液滴が到達することを抑制することができる。即ち、スリット42よって画定される空間は、凝集した液滴が第2エアロゾル流路32bから退避する液退避部として機能する。
【0030】
エアロゾル流路32内に液滴が柱状に溜まることを抑制するために、エアロゾル流路32の幅又は径をエアロゾル流路32の全長にわたって大きくすることが考えられる。他方、エアロゾル流路32は、本実施形態のようにタンク30の側方又は内部を延びるように設けられ得る。この場合、エアロゾル流路32の幅又は径をその全長にわたって大きくすると、それに応じてタンク30のスペースが小さくなるので、エアロゾル源を貯留するタンク30の容積が減少する。これに対して、本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器具100は、第2エアロゾル流路32bに設けられ、第1エアロゾル流路32aと第2エアロゾル流路32bとの境界から第2エアロゾル流路32bの下流に向かって延びる液退避部を備える。具体的には、本実施形態では、非燃焼加熱型香味吸引器具100は、平面部40によって画定される空間、及びスリット42により画定される空間、特に角部42aにより画定される空間を液退避部として備える。特に角部42aにより画定される空間は、毛管力の作用による液保持能力が優れているので、一度液退避部に到達した液が第1エアロゾル流路32aにおいて再び柱状の液滴を形成することを抑制することができる。したがって、内壁部34の第1方向の全体にわたってエアロゾル流路32の幅又は径を大きくする場合に比べて、タンク30の容量の減少を抑えながら、液滴がユーザの口内に到達することを抑制することができる。また、本実施形態では、タンク30に別途部材を設けることなく、液滴がユーザの口内に到達することを抑制することができる。それにより、部材コストの増加や別途部材を設けることによる影響を抑制することができる。
【0031】
本実施形態では、平面部40は第2方向と平行であるが、これに限られない。
図4E及び
図4Fは、他の実施形態に係るタンク30の内壁部34の側断面図である。
図4E及び
図4Fに示す例では、平面部40は、第2方向に対して傾斜して設けられる。具体的には、
図4Bに示した平面部40が第1エアロゾル流路壁部34aに対して直角に延びるのに対し、
図4Eに示す例では、平面部40は、第1エアロゾル流路壁部34aに対して鈍角で傾斜するように延びる。言い換えれば、
図4Eに示す例では、平面部40は、第1エアロゾル流路壁部34aからマウスピース18側に向かって延びる。また、
図4Fに示す例では、平面部40は、第1エアロゾル流路壁部34aに対して鋭角で傾斜するように延びる。言い換えれば、
図4Fに示す例では、平面部40は、第1エアロゾル流路壁部34aからマウスピース18と逆側に向かって延びる。
図4Fに示す例では、平面部40とスリット42により、凹状の空間S1が確定される。この凹状の空間S1は、液退避部の一部を構成し、毛管力の作用による液保持能力が優れている。したがって、凹状の空間S1は、当該空間S1に到達した液が第1エアロゾル流路32aにおいて再び柱状の液滴を形成することを抑制することができる。
【0032】
本実施形態では、エアロゾル流路32がタンク30の内部中央に延在するように構成されている。これに限らず、エアロゾル流路32は、タンク30の側方に設けられ、タンク30の外壁部30cがエアロゾル流路32の少なくとも一部を画定する壁部として機能してもよい。
図5A及び
図5Bは、他の実施形態に係るタンク30を示す概略側断面図である。
図5Aに示す例では、ハウジング60にタンク30及び霧化部14が収容され、タンク30の一方の側方にエアロゾル流路32が形成されている。
図5Bに示す例では、ハウジング60にタンク30及び霧化部14が収容され、タンク30の両側方にエアロゾル流路32が形成されている。
図5A及び
図5B中の矢印A1及び矢印A2は、ハウジング60内を通過する空気又はエアロゾルの流れを示す。
【0033】
<実験例1>
液退避部の形状に応じた液滴到達量(ユーザの口内に到達する液滴量)を評価する実験を行った。
図6は、実験例1で使用したタンク30の内壁部34の上面図である。本実験では、
図6に示す実施例1から実施例9に係る内壁部34によって画定される第1エアロゾル流路32aに液体が柱状となるように所定量注入し、所定条件で吸引したときに第2エアロゾル流路32bから内壁部34の先端に飛散した液体量を測定した。
【0034】
実施例1から実施例9に係る内壁部34では、ともに第1エアロゾル流路32aの第1方向における長さを10mm、第2エアロゾル流路32b及びスリット42の第1方向における長さを20mmとした。また、第1エアロゾル流路32a及び第2エアロゾル流路32bの直径φは、2mmとした。スリット42と第2エアロゾル流路壁部34bの幅W及びスリット42の高さHを
図4Aに示すように定義したとき、実施例1から実施例9の幅W及び高さHは以下の通りである。
実施例1 幅W=6mm、高さH=2mm
実施例2 幅W=6mm、高さH=1mm
実施例3 幅W=6mm、高さH=0.6mm
実施例4 幅W=4mm、高さH=2mm
実施例5 幅W=4mm、高さH=1mm
実施例6 幅W=4mm、高さH=0.6mm
実施例7 幅W=3mm、高さH=2mm
実施例8 幅W=3mm、高さH=1mm
実施例9 幅W=3mm、高さH=0.6mm
【0035】
すなわち、実施例1,4,7の第2エアロゾル流路32b及び液退避部(スリット42)の第2方向における断面形状は全体的として角形である。また、実施例2,3,5,6,8,9では、スリット42の高さHは、第2エアロゾル流路32bの第2方向における直径φよりも小さい。
【0036】
また、液退避部を備えない内壁部34を備えたタンク30を比較例1とした。即ち、比較例1の内壁部34は、スリット42及び平面部40を備えない点を除いて実施例1から実施例9と同一の形状である。
【0037】
吸引条件は以下の通りである。
吸引容量 2400cc/min
吸引時間 3秒
パフ回数 1回
N数(サンプルサイズ) 3
タンク30の向き(第1方向の角度) 鉛直に対して斜め45°
液体の組成 グリセリン:プロピレングリコール:水=45:45:10
液体注入量:40μl
【0038】
【0039】
表1において、液退避部面積は、スリット42の第2方向における断面積であり、第2エアロゾル流路32bの断面積は含まない。また、表1において、(液退避部面積+第2エアロゾル流路の第2方向における断面積)/第1エアロゾル流路の第2方向における断面積は、第2エアロゾル流路32bとスリット42の第2方向における断面積の、第1エアロゾル流路32aの第2方向における断面積に対する比率を示している。表1に示されるように、液退避部を備えない比較例1の液滴到達量に対して、実施例1から実施例9のいずれにおいても液滴到達量は減少している。即ち、液退避部を内壁部34に設けることで、液滴到達量を減少させることができている。したがって、本実験によれば、上記比率が1超4.0以下であるときに、液滴到達量を減少できることがわかる。
【0040】
また、実施例1では、液滴到達量が0.9であり、比較例1に対して大幅に減少しているものの、液退避部面積、即ちスリット42の第2方向における断面積は8.86mm2であり、実施例2から実施例9と比較すると液退避部の面積が大きい。この液退避部の面積が大きいと、タンク30の容積に影響を与える可能性がある。したがって、本実験によれば、上記比率がおよそ3以下であることが好ましいことがわかる。
【0041】
実施例1から実施例9の液滴到達量を参照すると、実施例1-5,7は、他の実施例と比べて大きく液滴到達量を低減することができている。したがって、本実験によれば、上記比率が1.5以上であること特に好ましいことがわかる。
【0042】
なお、
図6に示す内壁部34の外面形状は、実験のためにすべて同一径とされている。しかしながら、内壁部34の外面形状は、第2エアロゾル流路32b及び液退避部の形状に対応した形状に設計され得る。
図7A及び
図7Bは、第2エアロゾル流路32b及び液退避部の形状に対応しない外面形状を有する内壁部34を示す概略図である。また、
図7C及び
図7Dは、第2エアロゾル流路32b及び液退避部の形状に対応した外面形状を有する内壁部34を示す概略図である。
図7Aに示す例では、内壁部34の外面形状は、第2エアロゾル流路32bの断面形状と相似形状(即ち円形)である。
図7Aに示す内壁部34の厚さは、液退避部(スリット42)近傍が相対的に薄い。このため、内壁部34が最も薄い部分において十分な強度を有するように内壁部34の外面形状が設計されると、内壁部34の厚さが部分的に過度に厚くなる。
図7Aの例では、第2エアロゾル流路32bを画定する部分(図中上下部分)の内壁部34が過度に厚くなっている。
【0043】
図7Bに示す例では、内壁部34の外面形状は矩形である。
図7Bにおいては、参考として
図7Aに示した内壁部34の外面形状が破線で示されている。
図7Bに示す内壁部34の厚さは、
図7Aに示した内壁部34と同様に、液退避部(スリット42)近傍が相対的に薄い。このため、内壁部34が最も薄い部分において十分な強度を有するように内壁部34の外面形状が設計されると、内壁部34の厚さが部分的に過度に厚くなる。
図7Bの例では、第2エアロゾル流路32bを画定する部分(図中上下部分)の内壁部34が過度に厚くなっている。
【0044】
これらに対して、
図7Cに示す例では、内壁部34の外面形状は楕円形である。
図7Cにおいては、参考として
図7Aに示した内壁部34の外面形状が破線で示されている。
図7Cに示す内壁部34は、液退避部(スリット42)近傍の厚さと、第2エアロゾル流路32bを画定する部分(図中上下部分)の厚さとが近くなるように設計されている。従って、
図7Cに示す内壁部34の外面形状が占める面積(
図7C中楕円の面積)は、
図7Aに示した内壁部34の外面形状が占める面積(
図7C中破線の円の面積)に比べて小さくなる。即ち、
図7Cに示す内壁部34を備えるタンク30では、
図7Aに示した内壁部34を備えるタンク30に比べて容量を大きくすることができる。
【0045】
また、
図7Dに示す例では、内壁部34の外面形状は、第2エアロゾル流路32b及び液退避部(スリット42)の相似形状である。
図7Dにおいては、参考として
図7Aに示した内壁部34の外面形状が破線で示されている。
図7Dにおいても、内壁部34の外面形状が占める面積は、
図7Aに示した内壁部34の外面形状が占める面積(
図7C中破線の円の面積)に比べて小さくなる。即ち、
図7Dに示す内壁部34を備えるタンク30では、
図7Aに示した内壁部34を備えるタンク30に比べて容量を大きくすることができる。したがって、第2エアロゾル流路32b及び液退避部の形状に対応した形状とは、
図7C及び
図7Dに示すように、
図7Aに示した第2エアロゾル流路32bの断面形状と相似の外面形状の断面積よりも小さい断面積となる形状である。
【0046】
<実験例2>
液退避部の長さに応じた液滴の到達量を評価する実験を行った。本実験では、スリット42の幅Wを3.0mm、高さHを1.5mmとした内壁部34(実施例10、実施例11)と、スリット42の幅Wを4.5mm、高さHを0.75mmとした内壁部34(実施例12,13)を準備した。実施例10及び実施例11の内壁部34に対して、スリット42の長さを0mm、5mm、10mm、15mm、20mmとし、実施例12及び実施例13の内壁部34に対してスリット42の長さを10mm、15mm、20mmとして、以下の吸引条件で実験を行った。本実験では、実施例10から実施例13に係る内壁部34によって画定される第1エアロゾル流路32aに液体が柱状になるように所定量注入し、所定条件で吸引したときに第2エアロゾル流路32bから内壁部34の先端に飛散した液体量を測定した。なお、実施例10から実施例13では、第1エアロゾル流路32a及び第2エアロゾル流路32bの第1方向における長さを30mmとした。
【0047】
吸引条件は以下の通りである。
吸引容量 2400cc/min
吸引時間 3秒
パフ回数 1回(実施例11及び実施例13)、5回(実施例10及び実施例12)
吸引間隔 20秒
N数(サンプルサイズ) 3
タンク30の向き(第1方向の角度) 鉛直に対して斜め45°
液体の組成 グリセリン:プロピレングリコール:水=45:45:10
液体注入量:20μl
【0048】
図8は、実験例2の評価結果を示すグラフである。
図8において、実施例10及び実施例11の液退避部長が0mmのプロットは、液退避部を備えない内壁部34の評価結果を示している。液退避部長が0mmの場合の実施例10の液滴到達量は、約19.2mgであり、液退避部長が0mmの場合の実施例11の液滴到達量は、約13.3mgであった。これに対して、液退避部長が5mmの実施例10及び実施例11は、それぞれ、液退避部長が0mmの実施例10及び実施例11より液滴到達量を低減することができている。具体的には、液退避部長が5mmの場合の実施例10の液滴到達量は、約14.3mgであり、液退避部長が5mmの場合の実施例11の液滴到達量は、約6.4mgであった。したがって、本実験により、液退避部が存在することで液滴到達量を低減できることがわかる。
【0049】
液退避部長が10mmの実施例1から実施例4の液滴到達量は、それぞれ、約2.7mg、約1.3mg、約3.3mg、約3.6mgであった。したがって、液退避部長が10mmの場合、液退避部長が5mmの場合の比べて大幅に液滴到達量を低減することができている。また、液退避部長が15mmの実施例1から実施例4の液滴到達量は、それぞれ、約1.2mg、約0.7mg、約2.8mg、約0.6mgであり、液退避部長が20mmの実施例1から実施例4の液滴到達量は、それぞれ、約1.1mg、約0.7mg、約0.4mg、約0.5mgであった。したがって、液退避部長を10mm以上とすることで、一層液滴到達量を低減することができている。
【0050】
以上の実験結果を踏まえると、液退避部長の長さは、液滴到達量の減少の観点から、液退避部長の長さは10mm以上であり且つ20mm以下であることが好ましい。言い換えれば、液退避部(スリット42)の第1方向における長さの、第1エアロゾル流路32a及び第2エアロゾル流路32bの長さ(30mm)に対する比率は、1/3以上2/3以下であることが好ましい。
【0051】
次に、他の実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器具100について説明する。他の実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器具100は、
図1から
図8で説明した非燃焼加熱型香味吸引器具100と比べて、液退避部に退避した液体と連通する液保持部を、タンク30の先端に備えている点が異なる。
図9は、他の実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器具100のタンク30の概略側断面図である。
図9に示すタンク30は、
図3に示したタンク30と同一の構造であってよい。
図9に示す例では、タンク30には、その先端の上壁部30aを覆う蓋部材50が設けられる。
【0052】
図10Aは、蓋部材50の斜視図である。
図10Bは、蓋部材50の平面図である。
図10Cは、
図10Bに示す矢視10C-10Cにおける断面図である。図示のように蓋部材50は、タンク30の形状に応じて略矩形板状をなす天板部52と、天板部52から延在する略筒状の側板部54とを備える。天板部52の略中央部には、タンク30のエアロゾル流路32と連通し、エアロゾル流路32からのエアロゾルが通過可能な開口部56が設けられる。開口部56は、蓋部材50がタンク30に取り付けられたときに開口部56の中心がタンク30のエアロゾル流路32の中心と第2方向において略一致するように、蓋部材50に形成される。また、天板部52のタンク30の上壁部30aと対向する面には、第2方向に延びる1又は複数の突条部58が設けられる。これにより、天板部52のタンク30の上壁部30aと対向する面に、凹凸部が形成される。蓋部材50がタンク30に取り付けられると、凹凸部はタンク30の液退避部と連通する。
【0053】
図10Bに示すように、突条部58は、第2方向においてエアロゾル流路32(又は開口部56)から離れるにつれて、突条部58の隙間が小さくなるように構成されることが好ましい。また、
図10Cに示すように、突条部58は、第1方向において天板部52から離れるにつれて、突条部58の隙間が大きくなるように構成されることが好ましい。言い換えれば、蓋部材50がタンク30に取り付けられた状態において、突条部58は、第1方向においてタンク30の上壁部30a(先端)から離れるにつれて、突条部58の隙間が小さくなるように構成されることが好ましい。なお、突条部58の第2方向における隙間の大きさは任意であり、例えば一定であってもよい。
【0054】
上述したように、エアロゾル流路32を画定する内壁部34の壁面にエアロゾルが凝集し、液滴が柱状に形成され得る。柱状の液滴は、ユーザの非燃焼加熱型香味吸引器具100の吸引に伴い、マウスピース18側へ移動し、液退避部、即ち平面部40又はスリット42に退避する。非燃焼加熱型香味吸引器具100の使用がさらに継続されると、液退避部に退避した液滴が液退避部の先端に到達したり、液退避部が液滴で満たされたりする可能性がある。この場合、液退避部からユーザの口内へ液滴が到達する恐れがある。
【0055】
そこで、本実施形態では、液退避部と連通する凹凸部(液保持部の一例に相当する)を蓋部材50に備えている。液退避部の先端に到達した液滴は、蓋部材50の凹凸部に、毛管作用により保持される。また、液退避部の先端に到達した液滴は、蓋部材50の天板部52とタンク30の上壁部30aとの隙間にも毛管作用により保持され得る。これにより、液退避部に退避した液体がユーザの口内へ到達することを抑制することができる。また、本実施形態では、第2方向においてエアロゾル流路32から離れるにつれて、突条部58の隙間が小さくなるように構成されるので、毛管現象により液体が第2方向においてエアロゾル流路32から離れる方向に移動することを促進することができる。さらに、本実施形態では、第1方向においてタンク30の上壁部30aから離れるにつれて、突条部58の隙間が小さくなるように構成されるので、毛管現象により液体が第1方向においてタンク30から離れる方向に移動することを促進することができる。
【0056】
なお、本実施形態では、凹凸部を形成するために複数の突条部58が設けられるが、これに限られない。液体を毛管作用により保持可能な凹凸部を形成することができれば、その形状は任意であり、例えば複数の凸部、複数の凹部等を採用することもできる。さらに、凹凸部に代えて、又はこれに加えて、蓋部材50の天板部52とタンク30の上壁部30aとの間に、多孔質部材又は繊維等からなる液保持部材(液保持部の一例に相当する)を設けることもできる。多孔質部材又は繊維等には、例えば、セルロース系不織布、ガラス繊維不織布、紙、スポンジ、セラミック、ガラス多孔質体等が含まれ得る。また、蓋部材50は、ユーザによりタンク30から着脱可能であってもよく、取り外しできないようにタンク30に固定されていてもよい。
【0057】
また、本実施形態の凹凸部は、エアロゾル流路32よりも径方向外側に位置する。したがって、エアロゾル流路32を通過するエアロゾルが凹凸部に到達することを防止することができ、その結果、エアロゾルが凹凸部に凝縮することを抑制することができる。多孔質部材又は繊維等からなる液保持部材を蓋部材50の天板部52とタンク30の上壁部30aとの間に配置する場合も、この液保持部材をエアロゾル流路32よりも径方向外側に離間した位置に配置することが好ましい。
【0058】
本実施形態では、凹凸部を形成するために複数の突条部58が設けられるが、液体を毛管作用により保持可能であれば、蓋部材50は突条部58を備えていなくてもよい。
図11は、他の実施形態に係る蓋部材50を備えたタンク30の概略側断面図である。
図11に示す蓋部材50は突条部58を備えていないが、液退避部の先端に到達した液滴は、蓋部材50の天板部52とタンク30の上壁部30aとの隙間(液保持部の一例に相当する)に毛管作用により保持される。また、図示の実施形態では、蓋部材50の天板部52のタンク30側の面とタンク30の上壁部30aとの距離が、第2方向においてエアロゾル流路32から離れるにつれて小さくなるように、蓋部材50が形成される。これにより、液退避部の先端に到達した液滴は、まず蓋部材50の天板部52とタンク30の上壁部30aとの相対的に大きな隙間に保持される。また、図示の実施形態によれば、相対的に大きな隙間に保持された液滴を、開口部56から離れるように第2方向に、毛管作用により移動することを促進することができる。
【0059】
なお、蓋部材50の天板部52のタンク30側の面と、タンク30の上壁部30aとの距離は一定であってもよい。また、
図11に示す蓋部材50に、
図10Aから
図10Cに示した突条部58を設けることもできる。
【0060】
図12は、さらに他の実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器具100のタンク30の概略上面図である。図示のように、タンク30の先端面には、1又は複数の突条部36が形成される。これにより、タンク30の上壁部30aの先端側の端面に、凹凸部(液保持部の一例に相当する)が形成される。この凹凸部はタンク30の液退避部と連通する。
【0061】
図12に示すように、突条部36は、第2方向においてエアロゾル流路32から離れるにつれて、突条部36の隙間が小さくなるように構成されることが好ましい。また、突条部36は、
図10Cに示した突条部58と同様に、第1方向において上壁部30aから離れるにつれて、突条部36の隙間が小さくなるように構成されることが好ましい。なお、突条部36の隙間の大きさは任意であり、例えば一定であってもよい。
【0062】
タンク30が液退避部と連通する凹凸部を有するので、液退避部の先端に到達した液滴は、タンク30の凹凸部に毛管作用により保持される。これにより、液退避部に退避した液体がユーザの口内へ到達することを抑制することができる。また、本実施形態では、第2方向においてエアロゾル流路32から離れるにつれて、突条部36の隙間が小さくなるように構成されるので、毛管現象により液体が第2方向においてエアロゾル流路32から離れる方向に移動することを促進することができる。さらに、第1方向においてタンク30の先端、即ちタンク30の上壁部30aから離れるにつれて、突条部36の隙間が小さくなるように構成される場合には、毛管現象により液体が第1方向においてタンク30の上壁部30aから離れる方向に移動することを促進することができる。
【0063】
なお、本実施形態では、凹凸部を形成するために複数の突条部58が設けられるが、これに限られない。液体を毛管作用により保持可能な凹凸部を形成することができれば、その形状は任意であり、例えば複数の凸部、複数の凹部等を採用することもできる。また、凹凸部に代えて、又はこれに加えて、タンク30の上壁部30aに多孔質部材又は繊維等からなる液保持部材(液保持部の一例に相当する)を設けることもできる。多質部材又は繊維等には、例えば、セルロース系不織布、ガラス繊維不織布、紙、スポンジ、セラミック、ガラス多孔質体等が含まれ得る。また、
図12に示すタンク30の先端に、
図10Aから
図10C又は
図11に示した蓋部材50を取り付けてもよい。
【0064】
以上に本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載のない何れの形状や材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。
【0065】
以下に本明細書が開示する形態のいくつかを記載しておく。
【0066】
第1形態によれば、霧化ユニットが提供される。この霧化ユニットは、エアロゾル源を霧化するように構成される霧化部と、前記エアロゾル源を保持するタンクと、前記エアロゾル源が霧化されて生成されたエアロゾルが通過し且つ第1方向に延びるエアロゾル流路の少なくとも一部を画定する壁部を有する。前記壁部の少なくとも一部は、前記タンクの側壁の一部を構成する。前記エアロゾル流路は、第1エアロゾル流路と、前記第1エアロゾル流路の下流側と連通する第2エアロゾル流路と、を有する。前記霧化ユニットは、さらに、前記第2エアロゾル流路に設けられ、前記第1エアロゾル流路と前記第2エアロゾル流路との境界から前記第2エアロゾル流路の下流に向かって延びる液退避部を有する。前記壁部は、前記第1エアロゾル流路と前記第2エアロゾル流路との境界において前記第1方向と直交する第2方向に平行な平面部を有する。前記液退避部は、前記平面部によって画定される空間を含む。前記第2エアロゾル流路及び前記液退避部の前記第2方向における断面積の、前記第1エアロゾル流路の前記第2方向における断面積に対する比率は、1超4.0以下である。
【0067】
第2形態は、第1形態において、前記壁部は、前記第2エアロゾル流路の少なくとも一部を画定する第2エアロゾル流路壁部を含み、前記第2エアロゾル流路壁部は、前記タンクの側壁の一部を構成することを要旨とする。
【0068】
第3形態は、第2形態において、前記壁部は、前記第1エアロゾル流路の少なくとも一部を画定する第1エアロゾル流路壁部をさらに含み、前記第1エアロゾル流路壁部は、前記タンクの側壁の一部を構成することを要旨とする。
【0069】
第4形態は、第1形態から第3形態のいずれかにおいて、前記壁部は、前記第1方向に延びるスリットを含み、前記液退避部は、前記スリットにより画定される空間を含むことを要旨とする。
【0070】
第5形態は、第4形態において、前記第2エアロゾル流路の前記第2方向における断面形状は円形であり、前記スリットの高さは、前記第2エアロゾル流路の前記第2方向における直径よりも小さいことを要旨とする。
【0071】
第6形態は、第1形態から第3形態のいずれかにおいて、前記第2エアロゾル流路及び前記液退避部の前記第2方向における断面形状は、全体として角形であることを要旨とする。
【0072】
第7形態は、第1形態から第6形態のいずれかにおいて、前記第1方向からみたときに、前記壁部は角部を有し、前記液退避部は、前記角部により確定される空間を含むことを要旨とする。
【0073】
第8形態は、第1形態から第7形態のいずれかにおいて、前記液退避部の前記第1方向における長さの、前記第1エアロゾル流路及び前記第2エアロゾル流路の長さに対する比率は、1/3以上2/3以下であることを要旨とする。
【0074】
第9形態は、第1形態から第8形態のいずれかにおいて、前記第1エアロゾル流路の前記第2方向における断面形状は、前記第2エアロゾル流路の第2方向における断面形状と同一であることを要旨とする。
【0075】
第10形態は、第1形態から第9形態のいずれかにおいて、前記第1エアロゾル流路及び前記第2エアロゾル流路の前記第2方向における断面形状は、円形であることを要旨とする。
【0076】
第11形態は、第1形態から第10形態のいずれかにおいて、前記第1エアロゾル流路及び前記第2エアロゾル流路の前記第2方向における断面形状は、前記第1方向において一定であることを要旨とする。
【0077】
第12形態によれば、非燃焼加熱型香味吸引器具が提供される。この非燃焼加熱型香味吸引器具は、第1形態から第6形態のいずれかの霧化ユニットと、前記霧化部に電力を供給するための電源と、を有する。
【符号の説明】
【0078】
10…カートリッジ
14…霧化部
30…タンク
30a…上壁部
30b…底壁部
30c…外壁部
32…エアロゾル流路
32a…第1エアロゾル流路
32b…第2エアロゾル流路
34…内壁部
34a…第1エアロゾル流路壁部
34b…第2エアロゾル流路壁部
36…突条部
40…平面部
42…スリット
42a…角部
50…蓋部材
56…開口部
58…突条部
92…電源
100…非燃焼加熱型香味吸引器具