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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-28
(45)【発行日】2023-01-12
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/44 20060101AFI20230104BHJP
   C23C 16/509 20060101ALI20230104BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20230104BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20230104BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20230104BHJP
【FI】
C23C16/44 B
C23C16/509
H01L21/302 101Z
H01L21/31 C
H05H1/46 M
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022060740
(22)【出願日】2022-03-31
【審査請求日】2022-04-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511265154
【氏名又は名称】SPPテクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】弁理士法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内田 亮平
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-056481(JP,A)
【文献】特開2000-058299(JP,A)
【文献】登録実用新案第3160877(JP,U)
【文献】韓国登録特許第10-1686564(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00-16/56
H01L 21/31
H01L 21/3065
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波電力が印加される平面視円形状の上部電極と、前記上部電極の下方に前記上部電極に対向するように設けられ、前記上部電極側から供給された処理ガスを拡散して吐出する平面視円形状のシャワーヘッドと、前記上部電極と前記シャワーヘッドとを締結する締結構造と、を備え、
前記締結構造は、
複数本のボルトと、
ナットと、
前記シャワーヘッドの外縁近傍に沿って前記シャワーヘッドに設けられ、前記複数本のボルトをそれぞれ前記シャワーヘッドの前記上部電極に対向する面と反対側の面から前記上部電極側に向かって挿入可能な複数の貫通した第1孔部と、
前記上部電極の外縁から内側に向けて溝状に形成され、前記上部電極の外縁側から挿入された前記ナットを収納可能なナット収納部と、
前記上部電極の外縁近傍に沿って、前記ナット収納部まで貫通するように前記上部電極に設けられ、前記複数の第1孔部に挿入された前記複数本のボルトをそれぞれ挿入可能な複数の第2孔部と、を有し、
前記ナットは、前記ナット収納部に収納された状態で、前記複数本のボルトがそれぞれ連結可能な複数の雌ねじ部を有し、
前記複数の第1孔部のP.C.D.と、前記上部電極の外径Dとの比が、以下の式(1)を満足する、プラズマ処理装置。
P.C.D./D>0.90 ・・・(1)
【請求項2】
前記複数の第1孔部のP.C.D.と、前記上部電極の外径Dとの比が、以下の式(2)を満足する、請求項に記載のプラズマ処理装置。
P.C.D./D≧0.95 ・・・(2)
【請求項3】
前記締結構造が前記上部電極の外縁近傍に沿って複数組設けられている、請求項1又は2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記第1孔部及び前記第2孔部が平面視円形状の丸孔である、請求項1からの何れかに記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記第1孔部が平面視円形状の丸孔であり、前記第2孔部が前記上部電極の外縁で開口する平面視U字状の孔である、請求項1からの何れかに記載のプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置に関する。特に、本発明は、上部電極、シャワーヘッド、及び、上部電極とシャワーヘッドとを締結する締結構造を備えるプラズマ処理装置であって、締結構造を長期間に亘って使用可能であると共に、締結状態において上部電極に生じる最大応力を低減可能なプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板にプラズマ処理を施すプラズマ処理装置として、容量結合プラズマ(CCP)方式のプラズマ成膜装置(CVD装置、スパッタ装置)やプラズマエッチング装置が知られている。
CCP方式のプラズマ処理装置は、一般に、内部に基板が配置されるチャンバと、チャンバの上部に設けられ(例えば、チャンバの上端開口部を覆うように設けられ)、高周波電力が印加される上部電極と、上部電極の下方に上部電極に対向するように設けられ、上部電極を介してガス供給源から供給された処理ガスをチャンバ内部に均一に拡散して吐出するシャワーヘッドと、を備えている。
上部電極及びシャワーヘッドは、シリコンウェハなどの基板に対するプラズマ処理の面内均一性を確保するため、一般に、平面視円形状になっている。また、シャワーヘッドと上部電極とは、一般に、ボルトとナットとを用いた締結構造によって締結される。
【0003】
シャワーヘッドには、処理ガスをチャンバ内部に吐出するための吐出孔が設けられている。基板に対するプラズマ処理の面内均一性を確保するため、この吐出孔は、シャワーヘッドの中央から外縁近傍まで多数設けることが望ましい。このため、シャワーヘッドと上部電極との締結構造も、シャワーヘッドの外縁近傍に設けることが望ましい。具体的には、締結構造を構成する複数本のボルトをそれぞれ挿入可能な複数の孔部を、シャワーヘッドの外縁近傍に沿って設けることが望ましい。
【0004】
また、上部電極の単位面積当たりの印加電力である印加電力密度が小さいと、プラズマのエネルギー密度が小さくなる。このため、上部電極の外径は、印加電力密度の低減を防止するために、基板に対するプラズマ処理の面内均一性に支障が生じない限りにおいて、できるだけ小さい方が望ましい。
【0005】
上記のように、シャワーヘッドに設けられる複数の孔部のP.C.D.(Pitch Circle Diameter)はできるだけ大きい方が望ましく、上部電極の外径Dはできるだけ小さい方が望ましい。したがって、望ましい締結構造の構成では、シャワーヘッドに設けられる複数の孔部のP.C.D.と上部電極の外径Dとの比P.C.D./Dが比較的大きな値(1に近い値)となる。
【0006】
一方、ボルトとナットとを用いた締結構造としては、従来、ボルトとインサートナット(ねじインサートともいう)とを用いた締結構造が知られている。
このような締結構造は、従来のプラズマ処理装置において一般的に用いられている。例えば、特許文献1に開示されたプラズマ処理装置では、チャンバ1内において、ブラケット8のブラケット曲部8Aと補捉板6とが上記のボルトとインサートナットとを用いた締結構造によって締結されている。具体的には、特許文献1の段落[0032]に開示されているように、捕捉板6にはインサートナット7が設けられており、ブラケット曲部8Aに設けられた穴部8E、8Fに挿入されたボルト(ねじ9A、9B)がインサートナット7に連結(螺合)することで、補捉板6がブラケット曲部8Aに着脱可能に固定(締結)されている。
【0007】
インサートナットは、内面にボルトと連結可能な雌ねじ部を有し、且つ、外面にインサートナットを取り付ける部材(被取り付け部材)と強固に噛み合うことが可能な構造(例えば、ローレット目など)を有する部材である。例えば、被取り付け部材に設けられた取付孔にインサートナットを圧入することで、被取り付け部材の取付孔の内側に雌ねじ部を設けることができる。
【0008】
被取り付け部材がアルミニウム製の上部電極である場合など、被取り付け部材が比較的柔らかい材料から形成されている場合、被取り付け部材の取付孔の内面に直接雌ねじ部を設けてボルトを連結させると、雌ねじ部とボルトとの締結力が不十分になるおそれがある。また、ボルトの挿脱を何度も繰り返す(ボルトと雌ねじ部との連結を何度も繰り返す)と、雌ねじ部のねじ山が潰れるおそれがある。これに対し、比較的硬い材料から形成されたインサートナットを被取り付け部材の取付孔に設けることにより、この問題を解消することができる。
【0009】
しかしながら、ボルトとインサートナットとを用いた締結構造を長期間に亘って使用すると、大気中であってもインサートナットの雌ねじ部が徐々に腐食し、ボルトと十分に締結できなくなる場合がある。インサートナットは、被取り付け部材に一度設けてしまうと、取り外すことが実質的に困難である。具体的には、インサートナットを取り外すこと自体は可能であるが、取り外す際に被取り付け部材の取付孔の内面が削れてしまい、再挿入してもインサートナットの外面が取付孔に噛み合わなくなる。このため、インサートナットの雌ねじ部が腐食した場合、インサートナットを設けた被取り付け部材ごと新品に取り替えなければならず、不経済である。
特に、プラズマ処理装置の内部には、プラズマ処理のためにフッ素系ガスや塩素系ガスなどのハロゲン系ガスを含む処理ガスが供給される。プラズマ処理装置の内部に設けられた締結構造は、処理ガスに曝露されるため、より腐食し易いという問題がある。また、反応生成物によって汚染され易いという問題もある。
【0010】
上記のようなインサートナットを用いることで生じる問題を解決するため、また、シャワーヘッドに設けられる複数の孔部のP.C.D.と上部電極の外径Dとの比P.C.D./Dが比較的大きな値であっても、上部電極とシャワーヘッドとを比較的容易に締結可能な締結構造として、上部電極の外縁から内側に向けて溝状に形成され、上部電極の外縁側から挿入されたナットを収納可能なナット収納部を設けることが考えられる。そして、シャワーヘッドの外縁近傍に、上部電極に対向する面と反対側の面から上部電極側に向かってボルトを挿入可能な孔部(第1孔部)を設け、上部電極の外縁近傍に、第1孔部に挿入されたボルトを挿入可能でナット収納部まで貫通する孔部(第2孔部)を設けて、第1孔部及び第2孔部に挿入されたボルトを、ナット収納部に収納されたナットの雌ねじ部に連結させる締結構造が考えられる。
上記のような締結構造であれば、上部電極の外縁側からナットをナット収納部に挿入可能であるため、ボルトとナットとが連結していない非締結状態においては、逆にナットを上部電極の外縁側に向けて移動させることで、ナット収納部から抜き取ることができる。このため、例えば、ナットが腐食したり汚染された場合、非締結状態において、この腐食・汚染したナットをナット収納部から抜き取ることで、新しいナットに容易に交換することができる。したがって、上記の締結構造では、ナット収納部が設けられた上部電極自体を新品に代える必要がなく、長期間に亘って締結構造を使用可能である。
【0011】
しかしながら、本発明者らの知見によれば、上記のような締結構造において、シャワーヘッドに設けられる複数の孔部のP.C.D.と上部電極の外径Dとの比P.C.D./Dが比較的大きな値であり、1個のナットが1本のボルトに連結する1個の雌ねじ部のみを有する通常のナットである場合(以下、この締結構造を適宜「参考例に係る締結構造」という)には、締結状態において、ナット収納部が設けられた上部電極の最大応力(上部電極を平面視したときにナットの周辺に位置する部位の応力)が大きくなることが分かった。このため、上部電極がクリープ変形し易くなることが分かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】国際公開第2008/146844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、上部電極とシャワーヘッドとを締結する締結構造を長期間に亘って使用可能であると共に、締結状態において上部電極に生じる最大応力を低減可能なプラズマ処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するため、本発明者らは、前述の参考例に係る締結構造において、1個のナットが複数本のボルトにそれぞれ連結可能な複数の雌ねじ部を有する構成に変更すれば、締結構造を長期間に亘って使用可能であるという参考例に係る締結構造と同様の利点を維持しつつ、締結状態において上部電極に生じる最大応力を低減可能であることを見出し、本発明を完成した。
【0015】
すなわち、前記課題を解決するため、本発明は、高周波電力が印加される平面視円形状の上部電極と、前記上部電極の下方に前記上部電極に対向するように設けられ、前記上部電極側から供給された処理ガスを拡散して吐出する平面視円形状のシャワーヘッドと、前記上部電極と前記シャワーヘッドとを締結する締結構造と、を備え、前記締結構造は、複数本のボルトと、ナットと、前記シャワーヘッドの外縁近傍に沿って前記シャワーヘッドに設けられ、前記複数本のボルトをそれぞれ前記シャワーヘッドの前記上部電極に対向する面と反対側の面から前記上部電極側に向かって挿入可能な複数の貫通した第1孔部と、前記上部電極の外縁から内側に向けて溝状に形成され、前記上部電極の外縁側から挿入された前記ナットを収納可能なナット収納部と、前記上部電極の外縁近傍に沿って、前記ナット収納部まで貫通するように前記上部電極に設けられ、前記複数の第1孔部に挿入された前記複数本のボルトをそれぞれ挿入可能な複数の第2孔部と、を有し、前記ナットは、前記ナット収納部に収納された状態で、前記複数本のボルトがそれぞれ連結可能な複数の雌ねじ部を有し、前記複数の第1孔部のP.C.D.と、前記上部電極の外径Dとの比が、以下の式(1)を満足する、プラズマ処理装置を提供する。
P.C.D./D>0.90 ・・・(1)
【0016】
本発明において、「シャワーヘッドの外縁」とは、平面視円形状のシャワーヘッドの円形の外周部分を意味する。また、「シャワーヘッドの外縁近傍」とは、シャワーヘッドの径方向について外縁と近い位置を意味する。同様に、「上部電極の外縁」とは、平面視円形状の上部電極の円形の外周部分を意味する。また、「上部電極の外縁近傍」とは、上部電極の径方向について外縁と近い位置を意味する。
本発明において、「上部電極の外縁から内側に向けて溝状に形成され」とは、上部電極の外縁で開口し、上部電極の径方向内側に向けて、上部電極を貫通しないように形成されていることを意味する。
本発明に係るプラズマ処理装置が備える締結構造によれば、ナット収納部にナットを収納し、複数本のボルトを第1孔部及び第2孔部に挿入し、ナットの複数の雌ねじ部に複数本のボルトを連結(螺合)させることにより、上部電極とシャワーヘッドとを締結可能である。
本発明に係るプラズマ処理装置が備える締結構造は、ナットを上部電極の外縁側からナット収納部に挿入可能(ひいては、ナット収納部から抜き取り可能)であるため、長期間に亘って使用可能である。
また、本発明によれば、ナットが複数本のボルトにそれぞれ連結可能な複数の雌ねじ部を有するため、本発明者らが知見したように、複数の第1孔部がシャワーヘッドの外縁近傍に沿って設けられ、複数の第2孔部が上部電極の外縁近傍に沿って設けられている(換言すれば、複数の第1孔部のP.C.D.と上部電極の外径Dとの比P.C.D./Dが0.90よりも大きな値になっている)場合であっても、締結状態において上部電極に生じる最大応力が低減し、ひいては上部電極のクリープ変形を低減可能である。
なお、P.C.D./Dの上限は、1より小さな値であって、第1孔部の寸法に依存する(ボルトの外径に依存する)値となるが、実用上は、例えば、0.964程度である。
【0018】
本発明は、前記複数の第1孔部のP.C.D.と、前記上部電極の外径Dとの比が、以下の式(2)を満足する場合に適用することが特に有効である。
P.C.D./D≧0.95 ・・・(2)
本発明者らの知見によれば、P.C.D./Dが上記の式(2)を満足する場合に、上部電極に生じる最大応力が顕著に大きくなり易い。このため、上部電極に生じる最大応力を低減可能な本発明を適用することが特に有効である。
【0019】
好ましくは、前記締結構造が前記上部電極の外縁近傍に沿って複数組設けられている。
上記の好ましい構成によれば、締結構造が複数組設けられているため、上部電極とシャワーヘッドとを確実に締結可能である。
【0020】
本発明において、例えば、前記第1孔部及び前記第2孔部は、平面視円形状の丸孔とされる。
本発明に係るプラズマ処理装置で基板にプラズマ処理を施す際には、上部電極とシャワーヘッドとは、上下方向に対向する。しかしながら、後述のように、上部電極とシャワーヘッドとを締結する際には、上部電極とシャワーヘッドとの対向方向が水平方向になる場合がある。上部電極とシャワーヘッドとの対向方向が水平方向になっている状態で、上部電極及びシャワーヘッドの下部に位置する締結構造の第2孔部が丸孔であれば、第1孔部及び第2孔部に挿入されたボルトをナットの雌ねじ部に仮止めしておけば、雌ねじ部に完全に連結していなくても、シャワーヘッドは落下しない。このため、比較的容易に締結できるという利点が得られる。
【0021】
また、本発明において、例えば、前記第1孔部は平面視円形状の丸孔であり、前記第2孔部は前記上部電極の外縁で開口する平面視U字状の孔である。
前述のように、上部電極とシャワーヘッドとの対向方向が水平方向になっている状態で、上部電極及びシャワーヘッドの下部に位置する締結構造の第2孔部が上部電極の外縁で開口する平面視U字状の孔であれば、第2孔部が丸孔の場合と異なり、第1孔部及び第2孔部に挿入されたボルトをナットの雌ねじ部に仮止めしても、ボルトが平面視U字状の孔の開口から落下することで、シャワーヘッドも落下するおそれがある。しかしながら、第2孔部が平面視U字状の孔であれば、丸孔の場合に比べて、ナットの雌ねじ部の位置を第2孔部とシャワーヘッドとの間から視認し易いため、ボルトをナットの雌ねじ部に連結させ易いという利点が得られる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、上部電極とシャワーヘッドとを締結する締結構造を長期間に亘って使用可能であると共に、締結状態において上部電極に生じる最大応力を低減可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係るプラズマ処理装置の概略構成を一部断面で示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係るプラズマ処理装置が備える上部電極の概略構成の一例を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係るプラズマ装置が備えるシャワーヘッドの概略構成を示す下面図である。
図4】上部電極にシャワーヘッドを締結する手順の概要を説明する図である。
図5】本発明の一実施形態に係るプラズマ処理装置が備える上部電極の概略構成の変形例を示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係るプラズマ処理装置が備える上部電極の概略構成の変形例を示す図である。
図7】本発明の一実施形態に係るプラズマ処理装置が備える上部電極の概略構成の変形例を示す図である。
図8】参考例に係る締結構造を構成する上部電極の概略構成の一例を示す図である。
図9】上部電極とシャワーヘッドとが接触する領域を説明する図である。
図10】上部電極に生じる最大応力を評価した結果の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を適宜参照しつつ、本発明の一実施形態に係るプラズマ装置用締結構造及びこれを備えるプラズマ処理装置について説明する。なお、各図に表された構成要素の寸法、縮尺及び形状は、実際のものとは異なっている場合があることに留意されたい。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態に係るプラズマ処理装置の概略構成を一部断面で示す図である。図1(a)はプラズマ処理装置の全体構成を示す図であり、図1(b)は図1(a)に示す締結構造を拡大して示す図である。図2は、本発明の一実施形態に係るプラズマ処理装置が備える上部電極の概略構成の一例を示す図である。図2(a)はナットをナット収納部に収納する前の上部電極の下面図であり、図2(b)はナットをナット収納部に収納した後の上部電極の下面図であり、図2(c)は図2(b)のCC矢視断面図である。図3は、本発明の一実施形態に係るプラズマ装置が備えるシャワーヘッドの概略構成を示す下面図である。なお、図2及び図3の「下面図」は、プラズマ処理装置でプラズマ処理を実行する状態において、下方から見た図を意味する。換言すれば、上部電極の下面図は、シャワーヘッドと対向する面の図を意味する。シャワーヘッドの下面図は、上部電極と対向する面と反対側の面の図を意味する。図6図7及び図8の下面図についても同様である。
図1(a)に示すように、本実施形態に係るプラズマ処理装置100は、例えば、SiH4系のSiN膜や、TEOS系のSiO膜などを基板W上に成膜する容量結合プラズマ(CCP)方式のプラズマ成膜装置(CVD装置)である。
プラズマ処理装置100は、チャンバ1と、載置台(下部電極)2と、上部電極3と、シャワーヘッド4と、高周波電源5と、加熱手段6と、を備えている。また、プラズマ処理装置100は、シール材7a、7bと、ガス供給源8と、ヒンジ9と、を備えている。
【0026】
チャンバ1の側壁及び上部電極3上には、電熱ヒーター等の加熱手段6が取り付けられており、この加熱手段6によってチャンバ1内は、例えば、50~400℃に加熱される。
【0027】
載置台2は、シール材7aによってチャンバ1と電気的に絶縁された状態で、チャンバ1内に配置されている。載置台2には、基板Wが載置される。図1(a)に示す例では、載置台2は接地されている。ただし、これに限るものではなく、後述の上部電極3と同様に、載置台2に高周波電力を印加することも可能である。載置台2の下面にも、電熱ヒーター等の加熱手段6が取り付けられており、この加熱手段6によって載置台2は加熱され、載置台2に載置された基板Wも加熱される。
なお、基板Wの材質は特に限定されないものの、代表的な材質はシリコンである。また、その他の材質としては、石英ガラス及びホウケイ酸ガラスに代表される耐熱ガラス、シリコンカーバイド(SiC)、各種セラミックス、ガリウム砒素(GaAs)、サファイアを例示できる。
基板Wが下地層を有する場合、特に限定されないものの、代表的には、下地層は、メタル(Al、Cu、Au等)膜や、樹脂膜とされる。
載置台2に載置される基板Wの最大外径としては、200~300mmを例示できる。
【0028】
上部電極3は、シール材7bによってチャンバ1と電気的に絶縁された状態で、チャンバ1の上部に設けられている。図1(a)に示す例では、上部電極3は、チャンバ1の上端開口部を覆うように設けられている。上部電極3は、平面視円形状であり(図2(a)参照)、基板Wの外径よりも大きな外径Dを有する。上部電極3は、載置台2に対して上方に対向配置されている。上部電極3は、例えば、アルミニウムや単結晶シリコンなどから形成されている。
【0029】
上部電極3は、ガス供給源8と接続されている。上部電極3の内部には、ガス供給源8から処理ガスが供給される。ガス供給源8から供給される処理ガスの種類及び流量は、基板W上に成膜する膜の種類に応じて、適宜選択される。
【0030】
上部電極3には高周波電源5が接続されており、高周波電源5から上部電極3に高周波電力が印加される。高周波電源5から出力される高周波電力は、例えば、相対的に高い周波数(例えば13.56MHz)の高周波、或いは相対的に低い周波数(例えば380kHz)の高周波を有する。
【0031】
シャワーヘッド4は、上部電極3の下方に、上部電極3に対向するように設けられている。シャワーヘッド4は、平面視円形状であり(図3参照)、上部電極3の外径Dと略同一の外径を有する。シャワーヘッド4は、締結構造10によって、上部電極3に締結されている。シャワーヘッド4には、上部電極3側から供給された処理ガスを拡散してチャンバ1の内部に吐出するための多数の吐出孔41が設けられている。上部電極3の内部に供給された処理ガスは、シャワーヘッド4に設けられた吐出孔41を通って、チャンバ1の内部に導入される。
なお、図1(a)では図示を省略しているが、上部電極3とシャワーヘッド4との間に、処理ガスを均等に拡散するためのバッフル板(多数の吐出孔が設けられたガス分散板)を挟み込んだ構成を採用することも可能である。
【0032】
以上の構成を有するプラズマ処理装置100において、チャンバ1内を真空排気し、加熱手段6によって、載置台2及びチャンバ1内(チャンバ1の側壁及び上部電極3を含む)を加熱する。次に、所定流量の処理ガスを上部電極3に供給し、シャワーヘッド4を介して、チャンバ1内に導入して、チャンバ1内が所定圧力となるように、排気流量を調整する。次に、高周波電源5から上部電極3に高周波電力を印加する。なお、載置台2にも高周波電力を印加する構成の場合には、ここで、上部電極3と同様に高周波電力を印加する。
以上の手順により、上部電極3からシャワーヘッド4を介してチャンバ1内に導入された処理ガスはプラズマ化し、生成されたプラズマ中の分子、イオン、ラジカルが載置台2に向けて移動することで、載置台2に載置された基板W上に所定の膜が成膜される。
【0033】
以下、本実施形態に係るプラズマ処理装置100の特徴部分の一つである締結構造10の構成について説明する。
図1(b)に示すように、締結構造10は、ボルト11と、ナット12と、シャワーヘッド4に設けられ、ボルト11を挿入可能な第1孔部13と、上部電極3に設けられ、ナット12を収納可能なナット収納部14と、上部電極に設けられ、ボルト11を挿入可能な第2孔部15と、を有する。1個のナット12は、ボルト11が連結可能な複数の雌ねじ部121を有する。
【0034】
なお、本実施形態の締結構造10のように、1組の締結構造10を構成する1個のナット12が複数の雌ねじ部121を有する場合、本明細書では、このナット12を、適宜「連結ナット」と称する。特に、図2に示すように、1個の連結ナット12が2個の雌ねじ部121を有する場合の締結構造10を、適宜「締結構造10A」と称する。また、後述の図6に示すように、1個の連結ナット12が3つの雌ねじ部121を有する場合の締結構造10を、適宜「締結構造10B」と称する。また、後述の図7に示すように、1個の連結ナット12が6個の雌ねじ部121を有する場合の締結構造10を、適宜「締結構造10C」と称する。さらに、後述の図8に示すように、1個のナット12が1個の雌ねじ部121のみを有する通常のナットである場合、このナット12を、適宜「単独ナット」と称し、この単独ナットを有する締結構造を、適宜「締結構造10’」と称する。
【0035】
図2に示す締結構造10Aは、上部電極3の外縁近傍に沿って(シャワーヘッド4の外縁近傍に沿って)、6組設けられている。
各締結構造10Aは、2本のボルト11(図2では図示省略)と、連結ナット12と、を有する。
ボルト11及び連結ナット12の材質は特に限定されないが、耐腐食性を有する金属であることが好ましい。このような金属としては、例えば、チタン、ニッケル、又はこれらの合金が挙げられ、好ましくはニッケル合金が挙げられる。
ニッケル合金は、ニッケルを主成分として20質量~90質量%含み且つその他の元素を1種又は複数種含む金属である。ニッケル合金に含まれるその他の元素としては、例えば、コバルト、クロム、モリブデン、タングステン、鉄、ケイ素、マンガン、炭素、ニオブなどを例示できる。特に、耐腐食性が高いことから、例えば、ハステロイ(登録商標)やインコネル(登録商標)を用いることが好ましい。
また、ボルト11及び連結ナット12には、耐腐食性のコーティング膜を用いてコーティング処理を施してもよい。コーティング膜の材質は、特に限定されないが、例えば、ニッケルやフッ素系樹脂が挙げられる。
【0036】
また、各締結構造10Aは、図3及び図1(b)に示すように、シャワーヘッド4の外縁近傍に沿って設けられ、2本のボルト11(図3では図示省略)をそれぞれシャワーヘッド4の上部電極3に対向する面と反対側の面から上部電極3側に向かって挿入可能な2個の貫通した第1孔部13を有する。締結構造10Aは6組設けられているため、図3に示すシャワーヘッド4には、計12個(=2個×6組)の第1孔部13が設けられている。第1孔部13は、平面視円形状の丸孔であり、その孔径がボルト11の外径と略同一になっている。これにより、シャワーヘッド4を上部電極3に締結する際に、シャワーヘッド4の位置がずれ難くなる。図3に示す例では、計12個の第1孔部13が、シャワーヘッド4の外縁近傍に沿ってほぼ等ピッチで設けられているが、必ずしも等ピッチである必要はない。
【0037】
また、各締結構造10Aは、図2及び図1(b)に示すように、上部電極3の外縁から内側に向けて溝状に形成され、上部電極3の外縁側から挿入された連結ナット12を収納可能なナット収納部14を有する。ナット収納部14は、例えば、エンドミルなどの切削手段を用いて上部電極3の外縁に溝状の凹部を加工することにより容易に設けることができる。締結構造10Aは6組設けられているため、図2に示す上部電極3には、6個のナット収納部14が設けられている。図2(b)や図1(b)を参照すれば分かるように、本実施形態では、ナット収納部14の径方向(上部電極3の径方向)の寸法は、収納される連結ナット12の径方向の寸法よりもやや大きくなっているが、これに限るものではなく、両寸法を略同一にすることも可能である。また、図2(c)を参照すれば分かるように、本実施形態では、ナット収納部14の周方向(上部電極3の周方向)の寸法は、収納される連結ナット12の周方向の寸法よりもやや大きくなっているが、これに限るものではなく、両寸法を略同一にすることも可能である。
【0038】
さらに、各締結構造10Aは、図2及び図1(b)に示すように、上部電極3の外縁近傍に沿って、ナット収納部14まで貫通するように設けられ、2個の第1孔部13(図2では図示省略)に挿入された2本のボルト11(図2では図示省略)をそれぞれ挿入可能な2個の第2孔部15を有する。締結構造10Aは6組設けられているため、図2に示す上部電極3には、計12個(=2個×6組)の第2孔部15が設けられている。図2に示す第2孔部15は、平面視円形状の丸孔であり、ボルト11の外径よりもやや大きく(例えば、数mm程度大きく)なっている。図2に示す例では、計12個の第2孔部15が、上部電極3の外縁近傍に沿ってほぼ等ピッチで設けられているが、必ずしも等ピッチである必要はない。上部電極3とシャワーヘッド4とを締結する際に(上部電極3とシャワーヘッド4とを対向させたときに)、計12個の第2孔部15の位置が、シャワーヘッド4に設けた計12個の第1孔部13の位置とほぼ合致していればよい。
【0039】
各締結構造10Aの連結ナット12は、連結ナット12がナット収納部14に収納された状態で、2本のボルト11がそれぞれ連結可能な2個の雌ねじ部121を有する。締結構造10Aは6組設けられているため、図2に示す上部電極3には、計12個(=2個×6組)の雌ねじ部121が設けられている。
【0040】
以上に説明した本実施形態の締結構造10Aにおいて、計12個の第1孔部13のP.C.D.(図1(a)参照)と、上部電極3の外径D(図1(a)参照)との比は、例えば、以下の式(1)を満足する。
P.C.D./D>0.90 ・・・(1)
特に、本実施形態の締結構造10Aは、後述のように、上部電極3に生じる最大応力を低減可能であるため、計12個の第1孔部13のP.C.D.と、上部電極3の外径Dとの比が、以下の式(2)を満足する場合(上部電極3に生じる最大応力が顕著に大きくなりやすい場合)に、特に有効である。
P.C.D./D≧0.95 ・・・(2)
【0041】
以下、上記の締結構造10Aを用いた、上部電極3とシャワーヘッド4との締結手順の具体例について説明する。
図4は、上部電極3にシャワーヘッド4を締結する手順の概要を説明する図である。
図4及び図1に示すように、本実施形態に係るプラズマ処理装置100は、チャンバ1の上壁と一方の側壁(図1に示す左側の側壁)とが、ヒンジ9によって連結されている。このため、上部電極3にシャワーヘッド4を締結する際には、図4に矢印A1で示すように、ヒンジ9を支点としてチャンバ1の側壁に対して上壁を上方に約90°回転させることにより、チャンバ1を開口状態にすることが可能である。チャンバ1の上壁を回転させることにより、これに連結された上部電極3も回転することになる。
【0042】
上部電極3にシャワーヘッド4を締結するには、まず、チャンバ1を開口状態にして、この開口状態において上部電極3の上部に位置するナット収納部14に、図4に矢印A2で示すように、連結ナット12を挿入して収納する。
次に、上部電極3にシャワーヘッド4を対向させる。この状態では、上部電極3とシャワーヘッド4の対向方向は水平方向になる。
次に、図4に矢印A3で示すように、シャワーヘッド4の第1孔部13にボルト11を挿入し、矢印A4で示すように、シャワーヘッド4を上部電極3に接するまで近づけて、ボルト11を連結ナット12の雌ねじ部121に仮止めする。これにより、シャワーヘッド4は落下しない状態になる。なお、シャワーヘッド4を上部電極3に接するまで近づけた後に、第1孔部13にボルト11を挿入してもよい。
【0043】
次に、開口状態において上部電極3の下部に位置するナット収納部14に、図4に矢印A5で示すように、連結ナット12を挿入して収納する。また、図4に矢印A6で示すように、シャワーヘッド4の第1孔部13にボルト11を挿入し、ボルト11を連結ナット12の雌ねじ部121に仮止めする。
【0044】
同様の動作を締結構造10Aの残りの組について行うと共に、上部電極3に対するシャワーヘッド4の位置の微調整を行った後、最後に、ボルト11を連結ナット12の雄ねじ部121に完全に連結(螺合)させることで、上部電極3とシャワーヘッド4との締結が完了する。この後、ヒンジ9を支点としてチャンバ1の側壁に対して上壁を下方に約90°回転させることにより、図1に示す状態となる。
なお、図1には、特に図示していないが、第1孔部13とボルト11の頭部との間にワッシャーを挟み込んでもよい。また、第1孔部13に、ボルト11の頭部を収納可能な寸法の座ぐり部を設けて、締結状態において、ボルト11の頭部がシャワーヘッド13の外部に出ない構成とすることも可能である。
【0045】
締結した上部電極3とシャワーヘッド4とは、上記の手順と逆の手順によって、容易に非締結状態にすることができる。本実施形態の締結構造10Aでは、非締結状態において、連結ナット12をナット収納部14から抜き取ることができる。このため、連結ナット12が腐食したり汚染した場合、この腐食・汚染した連結ナット12を抜き取って、新しい連結ナット12に容易に交換することができる。したがって、上部電極3を新品に代える必要がなく、長期間に亘って締結構造10Aを使用可能である。
【0046】
以上に説明した締結構造10Aでは、図2に示すように、第2孔部15が平面視円形状の丸孔である場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限るものではない。
図5は、本発明の一実施形態に係るプラズマ処理装置100が備える上部電極3の概略構成の変形例を示す図である。
図5に示す変形例では、第2孔部15Aが上部電極3の外縁で開口する平面視U字状の孔である。具体的には、上部電極3の外縁で開口し、上部電極3の径方向に延びる平面視U字状の孔である。平面視U字状の孔の延びる方向に直交する幅方向(上部電極3の周方向)の寸法は、図2に示す第2孔部15の孔径と略同一であることが好ましい。第2孔部15Aが平面視U字状の孔であれば、図2に示すような丸孔の場合に比べて、連結ナット12の雌ねじ部121の位置を第2孔部15Aとシャワーヘッド4との間から視認し易いため、ボルト11を連結ナット12の雌ねじ部121に連結させ易いという利点が得られる。
【0047】
また、以上の説明では、プラズマ処理装置100が備える締結構造10が、1個の連結ナット12が2個の雌ねじ部121を有する締結構造10Aである場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限るものではない。
【0048】
図6は、本発明の一実施形態に係るプラズマ処理装置が備える上部電極の概略構成の変形例を示す図である。図6(a)はナットをナット収納部に収納する前の上部電極の下面図であり、図6(b)はナットをナット収納部に収納した後の上部電極の下面図である。
図6に示す締結構造10Bは、上部電極3の外縁近傍に沿って(シャワーヘッド4の外縁近傍に沿って)、4組設けられている。
各締結構造10Bは、3本のボルト11(図6では図示省略)と、連結ナット12と、を有する。各締結構造10Bの連結ナット12は、連結ナット12がナット収納部14に収納された状態で、3本のボルト11がそれぞれ連結可能な3個の雌ねじ部121を有する。締結構造10Bは4組設けられているため、図6に示す上部電極3には、図2に示す場合と同様に、計12個(=3個×4組)の雌ねじ部121が設けられている。
ナット収納部14は、3個の雌ねじ部121を有する連結ナット12を収納可能な形状を有する。
締結構造10Bは、締結構造10Aと比べて、連結ナット12及びナット収納部14の構成が異なるが、その他の構成は同一である。
【0049】
図7は、本発明の一実施形態に係るプラズマ処理装置が備える上部電極の概略構成の変形例を示す図である。図7(a)はナットをナット収納部に収納する前の上部電極の下面図であり、図7(b)はナットをナット収納部に収納した後の上部電極の下面図である。
図7に示す締結構造10Cは、上部電極3の外縁近傍に沿って(シャワーヘッド4の外縁近傍に沿って)、2組設けられている。
各締結構造10Cは、6本のボルト11(図7では図示省略)と、連結ナット12と、を有する。各締結構造10Cの連結ナット12は、連結ナット12がナット収納部14に収納された状態で、6本のボルト11がそれぞれ連結可能な6個の雌ねじ部121を有し、平面視三日月形状(略半円形状)である。締結構造10Cは2組設けられているため、図7に示す上部電極3には、図2に示す場合と同様に、計12個(=6個×2組)の雌ねじ部121が設けられている。
ナット収納部14は、6個の雌ねじ部121を有する連結ナット12を収納可能な形状を有する。
締結構造10Cは、締結構造10A、10Bと比べて、連結ナット12及びナット収納部14の構成が異なるが、その他の構成は同一である。
【0050】
図6に示す締結構造10B及び図7に示す締結構造10Cの第2孔部15は、平面視円形状の丸孔であるが、図5に示す場合と同様に、平面視U字状の孔にすることも可能である。
【0051】
以下、締結構造10A、10B、10Cと、参考例に係る締結構造について、締結状態において上部電極3に生じる最大応力を評価した結果の一例について説明する。
まず、参考例に係る締結構造について説明する。
【0052】
図8は、参考例に係る締結構造を構成する上部電極の概略構成の一例を示す図である。図8(a)はナットをナット収納部に収納する前の上部電極の下面図であり、図8(b)はナットをナット収納部に収納した後の上部電極の下面図であり、図8(c)は図8(b)のC’C’矢視断面図である。
図8に示す参考例に係る締結構造10’は、上部電極3の外縁近傍に沿って(シャワーヘッド4の外縁近傍に沿って)、12組設けられている。各締結構造10’は、1本のボルト11(図8では図示省略)と、単独ナット12と、を有する。各締結構造10’の単独ナット12は、単独ナット12がナット収納部14に収納された状態で、1本のボルト11が連結可能な1個の雌ねじ部121を有する。締結構造10’は12組設けられているため、図8に示す上部電極3には、図2に示す場合と同様に、計12個(=1個×12組)の雌ねじ部121が設けられている。
ナット収納部14は、1個の雌ねじ部121を有する単独ナット12を収納可能な形状を有する。
締結構造10’は、締結構造10A、10B、10Cと比べて、単独ナット12及びナット収納部14の構成が異なるが、その他の構成は同一である。
【0053】
上部電極3に生じる最大応力は、何れの締結構造10A、10B、10C、10’についても、各ボルト11とナット12の雌ねじ部121との連結(螺合)によって、3125[N]の軸力が作用し(締め付けトルク2.5[N・m]、トルク係数0.2、ボルト11の外径0.004[m]で計算)、図9に示す上部電極3とシャワーヘッド4とが接触する領域(図9においてハッチングを施した領域)を固定端にするという条件で、有限要素法(FEM)による線形静解析を用いて、室温25℃における上部電極3に生じる応力を算出し、その最大値で評価した。なお、解析に使用したボルト11及びナット12の材質はハステロイ(登録商標)、上部電極3の材質はアルミニウム合金とした。上部電極3に生じる応力の算出は、第1孔部13のP.C.D.と上部電極3の外径Dとの比P.C.D./Dを0.8~0.964の範囲で変更して行った。なお、締結構造10C及び締結構造10’については、P.C.D./D=0.958のときに、第2孔部15が丸孔である場合と、平面視U字状の孔である場合の双方について最大応力を算出したが、その他については、第2孔部15が丸孔である場合についてのみ最大応力を算出した。
【0054】
図10は、上部電極3に生じる最大応力を評価した結果の一例を説明する図である。図10(a)は全ての結果を示す表であり、図10(b)は第2孔部15が丸孔である場合の結果について、横軸をP.C.D./D、縦軸を上部電極3に生じる最大応力で表したグラフである。
図10において、「連結ナット(2連)」は、締結構造10Aを構成する連結ナット12を解析に用いたことを意味する。「連結ナット(3連)」は、締結構造10Bを構成する連結ナット12を解析に用いたことを意味する。「連結ナット(6連)」は、締結構造10Cを構成する連結ナット12を解析に用いたことを意味する。
図10(a)、(b)から分かるように、少なくともP.C.D./D>0.90の場合には、連結ナットを用いる本実施形態の締結構造10の方が、単独ナットを用いる参考例に係る締結構造10’よりも、上部電極3に生じる最大応力が低減している。
図10(b)から分かるように、特に、P.C.D./D≧0.95のときには、上部電極3に生じる最大応力が顕著に大きくなり易いが、連結ナットを用いる本実施形態の締結構造10によって大きく低減可能である。このため、P.C.D./D≧0.95のときに、上部電極3に生じる最大応力を低減可能な本実施形態の締結構造10を適用することが特に有効であるといえる。また、締結構造10C(連結ナット(6連))、締結構造10B(連結ナット(3連))、締結構造10A(連結ナット(2連))の順に最大応力の低減量が大きくなっているため、最大応力を低減させるという観点では、1個の連結ナット12が有する雌ねじ部121の数を増やすほど、得られる効果が大きいといえる。本実施形態の締結構造10によって最大応力が低減するのは、連結ナットにすることで、ナット12の上部電極3との接触面積が増加し、応力を分散させる効果が生じるからだと考えられる。
なお、図10(a)から分かるように、締結構造10C及び締結構造10’について、P.C.D./D=0.958のときに、第2孔部15が丸孔である場合の最大応力と、平面視U字状の孔の場合の最大応力との間には大きな差が生じなかった。したがって、第2孔部15が平面視U字状の孔である場合についても、図10(b)に示す結果と同様の傾向が得られることが期待できる。
【符号の説明】
【0055】
3・・・上部電極
4・・・シャワーヘッド
10、10A、10B、10C・・・締結構造
11・・・ボルト
12・・・ナット
13・・・第1孔部
14・・・ナット収納部
15・・・第2孔部
100・・・プラズマ処理装置
121・・・雌ねじ部
【要約】
【課題】上部電極とシャワーヘッドとを締結する締結構造を長期間に亘って使用可能であると共に、上部電極に生じる最大応力を低減可能なプラズマ処理装置を提供する。
【解決手段】本発明に係るプラズマ処理装置100は、上部電極3と、シャワーヘッド4と、締結構造10と、を備える。締結構造は、複数本のボルト11と、ナット12と、複数の第1孔部13と、ナット収納部14と、複数の第2孔部15と、を有する。ナットは、ナット収納部に収納された状態で、複数本のボルトがそれぞれ連結可能な複数の雌ねじ部121を有する。本発明は、複数の第1孔部のP.C.D.と、上部電極の外径Dとの比が、以下の式(2)を満足する場合に適用することが特に有効である。
P.C.D./D≧0.95 ・・・(2)
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10