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  • 特許-地盤攪拌機械 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-28
(45)【発行日】2023-01-12
(54)【発明の名称】地盤攪拌機械
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/12 20060101AFI20230104BHJP
【FI】
E02D3/12 102
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022146026
(22)【出願日】2022-09-14
【審査請求日】2022-09-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】597028287
【氏名又は名称】埼玉八栄工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118256
【弁理士】
【氏名又は名称】小野寺 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 正夫
(72)【発明者】
【氏名】根岸 良幸
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-127794(JP,A)
【文献】特開2013-056305(JP,A)
【文献】特開2005-054505(JP,A)
【文献】特開2003-301410(JP,A)
【文献】特開2002-180451(JP,A)
【文献】特開平09-316869(JP,A)
【文献】特開平09-105125(JP,A)
【文献】特開平08-311862(JP,A)
【文献】特開平08-041865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/00
E02D 3/12
E02F 3/18
E02F 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動アームと、
前記可動アームの先端に取り付けられた攪拌装置と、を備えた地盤攪拌機械であって、
前記攪拌装置は、
回転軸と、
前記回転軸の回転に伴って回転して土壌の掘削および攪拌を行う複数の攪拌羽根と、
前記複数の攪拌羽根の前方の一部を遮蔽するように、前記複数の攪拌羽根の回転方向に対して回動可能に取り付けられる可動ブレードと、
前記複数の攪拌羽根の上方及び側面を囲う固定フードと、
を備えた地盤攪拌機械。
【請求項2】
前記可動ブレードは、「コ」の字状である、請求項1に地盤攪拌機械。
【請求項3】
前記可動ブレードが前記固定フードと重なった場合、前記固定フードが前記可動ブレードの中に入り込むように、前記可動ブレードと前記固定フードとの大きさが設定される、請求項1に記載の地盤攪拌機械。
【請求項4】
前記固定フードが、前記回転軸の回転中心を基準とした、前記回転軸と前記複数の攪拌羽根を覆う角度は、180度以下である、請求項1に記載の地盤攪拌機械。
【請求項5】
前記固定フードは、前記可動アームの操作により前端部の位置が垂直方向に変動する、請求項1に記載の地盤攪拌機械。
【請求項6】
前記攪拌装置は、モータと、該モータと接続される減速機とを更に備え、該減速機は前記回転軸を回転する、請求項1から5のいずれか1項に記載の地盤攪拌機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤攪拌機械に関わり、特に、表層の土壌を攪拌する地盤攪拌機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地盤強化のための地盤改良機械として、例えば特許文献1に示された、バケットミキサー付き土壌や土質および地盤改良機械が知られている。
具体的には、特許文献1に記載の機械は、バケットミキサーにおけるバケット内に、掘削機能と回転攪拌機能を持つ回転攪拌翼を複数枚備え、隣り合う2枚の回転攪拌翼の間に、撹拌促進手段として非回転攪拌翼を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-47155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、地盤攪拌機械で、表面から目標とする深さまで掘り進めていく場合に、地中に埋設されている障害物が前方に飛散する課題があることを見出した。また、障害物が攪拌羽根を囲うフード内に留まると、フードを破損する場合もあった。
本発明の目的は、地中に埋設されている障害物が前方に飛散することを防ぎ、障害物がフードに留まらず、障害物を安全に排出することが可能な地盤攪拌機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1) 本発明の地盤攪拌機械の代表的な態様は、可動アームと、
前記可動アームの先端に取り付けられた攪拌装置と、を備えた地盤攪拌機械であって、
前記攪拌装置は、
回転軸と、
前記回転軸の回転に伴って回転して土壌の掘削および攪拌を行う複数の攪拌羽根と、
前記複数の攪拌羽根の前方の一部を遮蔽するように、前記複数の攪拌羽根の回転方向に対して回動可能に取り付けられる可動ブレードと、
前記複数の攪拌羽根の上方及び側面を囲う固定フードと、
を備えた地盤攪拌機械である。
【0006】
(2) 上記(1)の地盤攪拌機械において、前記可動ブレードは、「コ」の字状であることが好ましい。
【0007】
(3) 上記(1)の地盤攪拌機械において、前記可動ブレードが前記固定フードと重なった場合、前記固定フードが前記可動ブレードの中に入り込むように、前記可動ブレードと前記固定フードとの大きさが設定されることが好ましい。
【0008】
(4) 上記(1)の地盤攪拌機械において、前記固定フードが、前記回転軸の回転中心を基準とした、前記回転軸と前記複数の攪拌羽根を覆う角度は、180度以下であることが好ましい。
【0009】
(5) 上記(1)の地盤攪拌機械において、前記固定フードは、前記可動アームの操作により前端部の位置が垂直方向に変動することが好ましい。
【0010】
(6) 上記(1)から(5)のいずれかの地盤攪拌機械において、前記攪拌装置は、モータと、該モータと接続される減速機とを更に備え、該減速機は前記回転軸を回転することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、地中に埋設されている障害物が前方に飛散することを防ぎ、障害物がフードに留まらず、障害物を安全に排出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態の地盤攪拌機械の全体構成図である。
図2図1に示した地盤攪拌機械の攪拌装置の上面図、右側面図及び底面図である。
図3図1に示した地盤攪拌機械の攪拌装置を上斜め方向から見た斜視図である。
図4図1に示した地盤攪拌機械の攪拌装置を下斜め方向から見た斜視図である。
図5】本発明の一実施形態の地盤攪拌機械の攪拌装置の動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態の地盤攪拌機械の全体構成図である。図2は、図1に示した地盤攪拌機械の攪拌装置の上面図、右側面図及び底面図である。図3は、図1に示した地盤攪拌機械の攪拌装置を上斜め方向から見た斜視図である。図4は、図1に示した地盤攪拌機械の攪拌装置を下斜め方向から見た斜視図である。
図1に示すように、地盤攪拌機械1は、可動アーム10と攪拌装置(ミキサー)20とを備えている。地盤攪拌機械1は、表層の土壌を攪拌する地盤攪拌機械であり、特に、表層の土壌とセメント系固化材等の土壌改質材とを攪拌混合して地盤を強化する表層改良のために好適に用いられるものであり、かかる用途では表層地盤改良機とも呼ばれる。
地盤攪拌機械1は移動可能な作業車両であり、可動アーム10が延設されている。
可動アーム10は、折曲可能に連結されたアーム10aおよび10bとからなる。可動アーム10の先端に、攪拌装置20が取り付けられる。攪拌装置20は、可動アーム10の操作により、地盤に対して垂直方向及び水平方向に動かすことができる。図1では、攪拌装置20が、可動アーム10の操作により、地盤に対して水平方向に移動する様子を示している。
地盤攪拌機械1が表層地盤改良機として用いられる場合は、攪拌装置20には、スラリー状または粉体状のセメント等の土壌改質材が導かれる。この土壌改質材がホース等により攪拌装置20の先端から地中に吐出される。これにより、土壌が掘削されながら、土壌と土壌改質材とが攪拌混合される。以下の説明では、地盤攪拌機械1が表層地盤改良機として用いられる場合について説明する。
【0014】
攪拌装置20は、動力伝達部21、回転攪拌部22、固定フード23及び可動ブレード24を備えている。
動力伝達部21は、図2に示すように、一対の油圧モータ211a,211bと、減速機212a,212bとを備えている。一対の油圧モータ211a,211bはモータの一例である。モータは2つでなくともよく、1つであってもよい。この場合、1つの減速機が、後述する回転攪拌部22の回転軸221の中間位置で回転軸221を回転させる。
【0015】
減速機212aは、油圧モータ211aの回転軸と接続される第1のスプロケット(歯車)と、第1のスプロケットと第1のチェーンで接続される第2のスプロケットと、第2のスプロケットと第2のチェーンで接続される第3のスプロケットとを備えている。
減速機212bは、油圧モータ211bの回転軸と接続される第1のスプロケット(歯車)と、第1のスプロケットと第1のチェーンで接続される第2のスプロケットと、第2のスプロケットと第2のチェーンで接続される第3のスプロケットとを備えている。
【0016】
回転攪拌部22は、回転軸221と、両端に爪を有し、中心が回転軸221に接続される6本の攪拌羽根222a~222fとを備える。攪拌羽根222a~222fは、回転軸221の回転に伴って回転して土壌の掘削および攪拌を行う。
回転軸221の一方の端部は減速機212aの第3のスプロケットに接続され、回転軸221の他方の端部は減速機212bの第3のスプロケットに接続される。一対の油圧モータ211a,211bの両方の回転力が減速機212a,212bを介して回転軸221に伝達され、減速機212a,212bによって回転軸221が一方向に回転する。
6本の攪拌羽根222a~222fは、互いに30度ずつずれるように回転軸221に取り付けられる。回転軸221が1回転すると、6本の攪拌羽根222a~222fの12個の先端の爪が順次地盤を掘っていく。6本の攪拌羽根222a~222fのそれぞれの一方の端部の爪は、他方の端部の爪に対して、回転軸221の半回転分進んで又は半回転遅れて地盤を掘る。
6本の攪拌羽根222a~222fは、土壌を掘削しながら、土壌と、スラリー状または粉体状のセメント等の土壌改質材とを攪拌混合する。
【0017】
固定フード23は、回転攪拌部22の攪拌羽根222a~222fの上方及び側面を囲い、油圧モータ211a,211bの下に配置されるように取り付けられ、回転攪拌部22によって攪拌した土壌と土壌改質材とが周囲に飛散しないようにする。固定フード23が回転攪拌部22の攪拌羽根222a~222fを覆う角度α(後述する図5の(b)参照)は、回転軸221の回転中心を基準とすると、180度以下で適宜設定されるが、好ましくは90度から160度、より好ましくは100度から140度に設定される。
固定フード23は、後述する図5の(a)~(b)に示すように、可動アーム10の操作により、油圧モータ211a,211b及び減速機212a,212bとともに移動するが、減速機212a,212bに対する相対的な位置は固定される。固定フード23は、可動アーム10の操作により前端部の位置が垂直方向に変動する。例えば、固定フード23の前端部の位置が垂直方向に下がると、図5を用いて後述するように、固定フード23と可動ブレードとの間の開口距離が小さくなる。
固定フード23は油圧モータ211a,211bの下に設けられているため、回転攪拌部22で掘られた土壌が油圧モータ211a,211bにかかることを防止できる。
【0018】
可動ブレード24は、「コ」の字状で、回転攪拌部22の攪拌羽根222a~222fの前方の一部を遮蔽するように、複数の攪拌羽根222a~222fの回転方向に対して回動可能(複数の攪拌羽根222a~222fの回転方向と同じ方向又は逆方向に回転可能)に取り付けられる。可動ブレード24が固定フード23と重なった場合、固定フード23が可動ブレード24の中に入り込むように、可動ブレード24と固定フード23との大きさが設定される。具体的には、図2の(b)の右側面に示されるように、回転軸221の中心から可動ブレード24の上先端部までの長さLは、回転軸221の中心から固定フード23の上面までの長さLよりも長くなるように設定されている(L>L)。また、図3に示すように、可動ブレード24の幅Wは、固定フード23の幅Wよりも長くなるように設定されている(W>W)。
【0019】
図5は、本発明の一実施形態の地盤攪拌機械の攪拌装置の動作を示す説明図である。図5の(a)は地盤の表面近くを掘った場合の攪拌装置の動作を示し、図5の(b)は更に地盤を掘り進んだ場合の攪拌装置の動作を示し、図5の(c)は目標とする深さまで掘り進んだ場合の攪拌装置の動作を示している。
【0020】
図5の(a)に示すように、攪拌装置20が、地盤の表面近くを掘る場合、回転攪拌部22の回転軸221は地盤の表面から離れ、攪拌羽根222a~222fの先端は、水平方向に近い角度(この角度をθとする)で、地盤に埋設された異物(障害物)を飛ばしす。しかし、可動ブレード24の前部24fで異物が止められるために、異物が前方に水平方向に近い角度θで飛散することを防ぐことができる。この場合、固定フード23と可動ブレードとの間の開口距離はAとなる。
【0021】
図5の(b)に示すように、攪拌装置20が、更に地盤を掘り進んでいくと、回転攪拌部22の回転軸221は地盤の表面に近づき、攪拌羽根222a~222fの先端は、図5の(a)よりも水平方向から離れた角度(この角度をθとする。θ>θ)で、地盤に埋設された異物(障害物)を飛ばし、可動ブレード24の先端は前方向に移動する。よって、可動ブレード24の前部24fで、異物が前方に飛散することを防ぐ効果は図5の(a)よりも弱くなる。しかし、可動アーム10の固定フード23の前方の端部の位置は下がって地盤の表面に近づき、固定フード23と可動ブレードとの間の開口距離Aは開口距離Aよりも小さくなって(A<A)、異物が前方に飛散しにくくなる。
【0022】
図5の(c)に示すように、攪拌装置20が、目標とする深さまで地盤を掘り進んでいくと、回転攪拌部22の回転軸221は地盤の表面近辺となり、攪拌羽根222a~222fの先端は、図5の(b)よりも鉛直方向から近い角度(この角度をθとする。θ>θ)で、地盤に埋設された異物(障害物)を上方向に飛ばし、可動ブレード24の先端は更に前方向に移動する。そして、固定フード23は可動ブレード24に重なる。
固定フード23と可動ブレード24との間の開口距離A図5の(b)の開口距離Aよりも小さくなる(A<A)。そして、異物は、固定フード23と可動ブレード24との間の開口から上方向に飛散するようになり、異物が取り出される。
【0023】
本実施形態の地盤攪拌機械によれば、地盤に埋設された異物(障害物)が前方に飛散するのを抑制することができる。
固定フードは、油圧モータの下に設けられているため、回転攪拌部で掘られた土壌が油圧モータにかかることを防止できる。
【0024】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限るものではない。また、前述した実施形態に記載された効果は、本発明から生じる好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、前述した実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、表層の土壌を攪拌する地盤攪拌機械として利用され、特に地盤を掘削しながらセメント系固化材等の土壌改質材と土壌とを攪拌混合して軟弱地盤等を強化するための地盤攪拌機械として好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 地盤攪拌機械
10 可動アーム
10a、10b アーム
20 攪拌装置
21 動力伝達部
22 回転攪拌部
23 固定フード
24 可動ブレード
【要約】
【課題】地中に埋設されている障害物が前方に飛散することを防ぐ。
【解決手段】可動アームと、可動アームの先端に取り付けられた攪拌装置と、を備えた地盤攪拌機械であって、攪拌装置は、回転軸と、回転軸の回転に伴って回転して土壌の掘削および攪拌を行う複数の攪拌羽根と、複数の攪拌羽根の前方の一部を遮蔽するように、複数の攪拌羽根の回転方向に対して回動可能に取り付けられる可動ブレードと、複数の攪拌羽根の上方及び側面を囲う固定フードと、を備える。攪拌装置は、モータと、モータと接続される減速機とを更に備え、減速機は前記回転軸を回転することが好ましい。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5