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特許7203303電気化学デバイス用正極およびそれを備える電気化学デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】電気化学デバイス用正極およびそれを備える電気化学デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/137 20100101AFI20230105BHJP
   H01M 4/60 20060101ALI20230105BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20230105BHJP
   H01G 11/48 20130101ALI20230105BHJP
【FI】
H01M4/137
H01M4/60
H01M4/62 Z
H01G11/48
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019510228
(86)(22)【出願日】2018-03-30
(86)【国際出願番号】 JP2018013556
(87)【国際公開番号】W WO2018181874
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-03-09
(31)【優先権主張番号】P 2017072861
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】松村 菜穂
(72)【発明者】
【氏名】竹下 昌利
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-040143(JP,A)
【文献】特開平01-194266(JP,A)
【文献】特開2014-139927(JP,A)
【文献】特開2013-232388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/137
H01M 4/60
H01M 4/62
H01G 11/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電体と、
前記正極集電体上に形成された導電性炭素材料を含むカーボン層と、
前記カーボン層上に形成された導電性高分子を含む活性層と、を備え、
前記導電性高分子は、ポリアニリン類を含み、
前記活性層は、赤外線吸収スペクトルにおいてアミド結合のカルボニル基に由来するピークを示し、
前記カルボニル基に由来するピークは、少なくとも1600cm -1 以上1700cm -1 以下の範囲に現れる、
電気化学デバイス用正極。
【請求項2】
前記活性層は、還元作用を示すカルボニル基含有化合物またはその残渣を含む、
請求項1に記載の電気化学デバイス用正極。
【請求項3】
前記カルボニル基含有化合物は、アルデヒド類、ギ酸、シュウ酸、没食子酸、およびアスコルビン酸類からなる群より選択される少なくとも一種である、
請求項2に記載の電気化学デバイス用正極。
【請求項4】
前記カルボニル基含有化合物は、複数のカルボン酸を有する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の電気化学デバイス用正極。
【請求項5】
正極と、負極と、を具備し、
前記正極は、請求項1~4のいずれか1項に記載の正極である、
電気化学デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性高分子を含む活性層を備える電気化学デバイス用正極およびそれを備える電気化学デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン二次電池と電気二重層キャパシタの中間的な性能を有する電気化学デバイスが注目を集めており、例えば導電性高分子を正極材料として用いることが検討されている(例えば、特許文献1)。正極材料として導電性高分子を含む電気化学デバイスは、アニオンの吸着(ドープ)と脱離(脱ドープ)により充放電を行うため、反応抵抗が小さく、一般的なリチウムイオン二次電池に比べると高い出力を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-35836号公報
【発明の概要】
【0004】
ポリアニリンまたはその誘導体を含むポリアニリン類を導電性高分子として用いた場合、電気化学デバイスに一定電圧が連続的に印加されるフロート充電において、フロート特性が低下し易い。
【0005】
本発明の一局面は、正極集電体と、前記正極集電体上に形成された導電性高分子を含む活性層と、を備え、
前記導電性高分子は、ポリアニリン類を含み、
前記活性層は、赤外線吸収スペクトル(以下、IRスペクトルと言う)においてカルボニル基に由来するピークを示す、電気化学デバイス用正極に関する。
【0006】
本発明の他の局面は、正極と、負極と、を具備し、前記正極は、上記の正極である、電気化学デバイスに関する。
【0007】
本発明によれば、電気化学デバイスのフロート特性の低下が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る電気化学デバイス用正極の断面模式図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る電気化学デバイスの断面模式図である。
図3図3は、図2の電気化学デバイスの電極群の構成を説明するための概略図である。
図4図4は、実施例1の正極の活性層のIRスペクトルである。
図5図5は、実施例1~2および比較例1の電気化学デバイスのフロート特性(フロート充電時の内部抵抗変化ΔDCR)の評価結果を示すグラフである。
図6図6は、実施例1~2および比較例1の電気化学デバイスの信頼性(フロート充電時の容量変化率ΔC)の評価結果を示すグラフである。
図7図7は、実施例1および比較例1の電気化学デバイスの耐電圧性(反応電流密度)の評価結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
電気化学デバイスにおいて、導電性高分子を正極材料として用いることが検討されている。充電時には、電解液中のアニオンが導電性高分子にドープされ、電解液中のリチウムイオンが負極材料に吸蔵される。放電時には、導電性高分子から脱ドープされたアニオンが電解液中へ移動し、負極材料から放出されたリチウムイオンが電解液中へ移動する。なお、本発明において、導電性高分子は、脱ドープ状態において導電性が殆どない、または導電性がない場合も含む。
【0010】
導電性高分子として、ポリアニリンおよびその誘導体などのポリアニリン類を用いる場合、フロート充電により電気化学デバイスに一定電圧が連続的に印加されると、正極の容量が低下し易くなる。
【0011】
本発明の一実施形態に係る電気化学デバイス用正極では、導電性高分子を含む活性層において、導電性高分子がポリアニリン類を含むとともに、活性層が、IRスペクトルにおいてカルボニル基(>C=O)に由来するピークを示す。このような活性層を設けることで、充放電に寄与する導電性高分子の状態を維持できる。よって、フロート充電時の内部抵抗の増加が抑制される。また、フロート充電時の容量低下が抑制されることにより、電気化学デバイスのフロート特性の低下を抑制できる。
【0012】
上記IRスペクトルは、正極を十分に洗浄し、乾燥することにより得られるサンプルの表面の活性層について測定すればよい。
≪電気化学デバイス≫
本実施形態に係る電気化学デバイスは、正極と、負極と、を具備する。正極は、正極集電体と、正極集電体上に形成された活性層とを備える。正極集電体上にはカーボン層を形成してもよい。カーボン層を設ける場合には、正極集電体と活性層との間の抵抗を低減して、容量の低下を抑制できるため、フロート特性の低下を抑制する上でより有利である。活性層は、正極集電体と活性層との間にカーボン層などを介在させた状態で、正極集電体上に配されていてもよく、カーボン層が存在しない領域がある場合には、正極集電体上に直接配されていてもよい。
【0013】
図1に、カーボン層を含む場合の正極の概略縦断面図を示す。図示例の正極11は、正極集電体111と、正極集電体111上に形成されたカーボン層112と、カーボン層112を介して正極集電体111上に形成された活性層113と、を備える。活性層113は、ポリアニリン類を含む導電性高分子を含む。活性層113は、IRスペクトルにおいてカルボニル基に由来するピークを示す。
【0014】
以下、本発明に係る電気化学デバイスの構成について、図面を参照しながら、より詳細に説明する。図2は、本実施形態に係る電気化学デバイス100の断面模式図であり、図3は、同電気化学デバイス100が具備する電極群10の一部を展開した概略図である。
【0015】
電気化学デバイス100は、電極群10と、電極群10を収容する容器101と、容器101の開口を塞ぐ封口体102と、封口体102を覆う座板103と、封口体102から導出され、座板103を貫通するリード線104A、104Bと、各リード線と電極群10の各電極とを接続するリードタブ105A、105Bと、を備える。容器101の開口端近傍は、内側に絞り加工されている。容器101の開口端を、封口体102に対してかしめるように、容器101の開口端はカール加工されている。電極群10は、正極11と負極とを備えている。通常、正極11と負極との間にはセパレータが配置される。
(正極)
本発明には、電気化学デバイスの正極(電気化学デバイス用正極)も包含される。以下に正極についてより詳細に説明する。
【0016】
(正極集電体)
正極11が備える正極集電体111には、例えば、シート状の金属材料が用いられる。シート状の金属材料としては、例えば、金属箔、金属多孔体、パンチングメタル、エキスパンデッドメタル、エッチングメタルなどが用いられる。正極集電体111の材質としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、チタンなどを用いることができ、好ましくは、アルミニウム、アルミニウム合金が用いられる。正極集電体111の厚みは、例えば、10~100μmである。
(カーボン層)
カーボン層112は、例えば、正極集電体111の表面に導電性炭素材料を蒸着することにより形成される。あるいは、カーボン層112は、導電性炭素材料を含むカーボンペーストを、正極集電体111の表面に塗布して塗膜を形成し、その後、塗膜を乾燥することで形成される。カーボンペーストは、例えば、導電性炭素材料と、高分子材料と、水および/または有機溶媒とを含む。カーボン層112の厚さは、例えば1~20μmであればよい。
【0017】
導電性炭素材料には、黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン、カーボンブラックなどを用いることができる。なかでも、カーボンブラックは、薄くて導電性に優れたカーボン層112が形成され易い点で好ましい。導電性炭素材料の平均粒径D1は特に限定されないが、例えば、3~500nmであり、10~100nmであることが好ましい。平均粒径とは、レーザー回折式の粒度分布測定装置により求められる体積粒度分布におけるメディアン径(D50)である(以下、同じ)。なお、カーボンブラックの平均粒径D1は、走査型電子顕微鏡で観察することにより、算出してもよい。
【0018】
高分子材料の材質は特に限定されないが、電気化学的に安定であり、耐酸性に優れる点で、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン樹脂、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、水ガラス(珪酸ナトリウムのポリマー)等が好ましく用いられる。
(活性層)
活性層113は、導電性高分子を含む。活性層113を作製する際には、まず導電性高分子層を形成する。導電性高分子層は、例えば、カーボン層112を備える正極集電体111を、導電性高分子の原料を含む反応液に浸漬し、正極集電体111の存在下で原料を電解重合することにより形成される。導電性高分子層を形成する際に、正極集電体111をアノードとして電解重合を行うことにより、導電性高分子層は、カーボン層112の表面を覆うように形成される。なお、カーボン層112を形成しない場合には、正極集電体111を反応液に浸漬して電解重合を行うことで導電性高分子層が正極集電体111の表面を覆うように形成される。また、カーボン層以外の介在層を形成した後に、導電性高分子層を形成してもよい。
【0019】
導電性高分子層は、電解重合以外の方法で形成されてもよい。例えば、原料を化学重合することにより、導電性高分子層を形成してもよい。あるいは、導電性高分子もしくはその分散体(dispersion)を用いて導電性高分子層を形成してもよい。
【0020】
本実施形態において、活性層113は、ポリアニリン類を含む導電性高分子を含むため、電解重合または化学重合で用いられる原料は、重合により導電性高分子を生成可能な重合性化合物であればよい。原料としては、モノマーおよび/またはオリゴマーなどが挙げられる。原料モノマーとしては、例えば、アニリンまたはその誘導体などのアニリン類が挙げられる。アニリンの誘導体とは、アニリンを基本骨格とするモノマーを意味する。原料オリゴマーとしては、例えば、アニリン類のオリゴマーが挙げられる。これらの原料は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
導電性高分子としては、ポリアニリン類が使用される。ポリアニリン類としては、ポリアニリンまたはその誘導体などを用いることができる。なお、ポリアニリンの誘導体とは、ポリアニリンを基本骨格とする高分子を意味する。ポリアニリン類は、π共役系であることが好ましい。ポリアニリン類は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いることができる。ポリアニリン類の重量平均分子量は、特に限定されないが、例えば1000~100000である。
【0022】
活性層を構成する導電性高分子は、ポリアニリン類(第1導電性高分子とも言う)以外の導電性高分子(第2導電性高分子とも言う)を含んでもよいが、その比率は小さいことが好ましい。活性層を構成する導電性高分子全体に占める第1導電性高分子の比率は、例えば、90質量%以上であり、95質量%以上であることが好ましく、導電性高分子をポリアニリン類のみで構成することがさらに好ましい。第2導電性高分子としては、ポリアニリン類以外のπ共役系高分子、例えば、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリチオフェンビニレン、ポリピリジン、または、これらの誘導体を用いることができる。なお、これらのπ共役系高分子の誘導体とは、π共役系高分子を基本骨格とする高分子を意味する。
【0023】
電解重合または化学重合は、アニオン(ドーパント)を含む反応液を用いて行うことが望ましい。導電性高分子の分散液や溶液もまた、ドーパントを含むことが望ましい。ポリアニリン類および他のπ共役系高分子は、ドーパントをドープすることで、優れた導電性を発現する。例えば、化学重合では、ドーパントと酸化剤と原料モノマーとを含む反応液に正極集電体111を浸漬し、その後、反応液から引き揚げて乾燥させればよい。また、電解重合では、ドーパントと原料モノマーとを含む反応液に正極集電体111と対向電極とを浸漬し、正極集電体111をアノードとし、対向電極をカソードとして、両者の間に電流を流せばよい。
【0024】
反応液の溶媒には、水を用いてもよいが、モノマーの溶解度を考慮して非水溶媒を用いてもよい。非水溶媒としては、アルコール類などを用いてもよい。導電性高分子の分散媒あるいは溶媒としても、水や上記非水溶媒が挙げられる。
【0025】
ドーパントとしては、硫酸イオン、硝酸イオン、燐酸イオン、硼酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、ナフタレンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、メタンスルホン酸イオン(CFSO )、過塩素酸イオン(ClO )、テトラフルオロ硼酸イオン(BF )、ヘキサフルオロ燐酸イオン(PF )、フルオロ硫酸イオン(FSO )、ビス(フルオロスルホニル)イミドイオン(N(FSO )、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン(N(CFSO )などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
ドーパントは、高分子イオンであってもよい。高分子イオンとしては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸などのイオンが挙げられる。これらは単独重合体であってもよく、2種以上のモノマーの共重合体であってもよい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
本実施形態において、活性層113は、IRスペクトルにおいてカルボニル基に由来するピークを示す。このような活性層113は、導電性高分子層にカルボニル基を導入することにより形成できる。カルボニル基の導入は、例えば、カルボニル基含有化合物を、正極集電体111上に形成された導電性高分子層に接触させることにより行うことができる。カルボニル基含有化合物を導電性高分子層に接触させることにより、導電性高分子にカルボニル基含有化合物またはその残渣が、付着し(もしくは導入され)、活性層のIRスペクトルにおいて、カルボニル基に由来するピークが観測されるようになる。
【0028】
活性層のIRスペクトルにおいて、カルボニル基に由来するピークが観察されればよく、カルボニル基に由来するピークの位置は、特に制限されない。しかし、活性層のIRスペクトルにおいて、カルボニル基に由来するピークは、少なくとも1600cm-1以上1700cm-1以下の範囲に現れることが好ましい。活性層のIRスペクトルがこのような範囲にピークを示す場合、フロート特性を維持し易くなる。また、カルボニル基に由来するピークが、1600cm-1以上1700cm-1以下の範囲に加え、この範囲以外の範囲に観察されてもよい。活性層は、カルボニル基に由来するピークとして、少なくとも、アミド結合のカルボニル基に由来するピークを示すことが好ましい。この場合、フロート特性を更に維持し易くなる。
【0029】
カルボニル基の導電性高分子への導入の形態は特に制限されない。カルボニル基が直接または間接的に導電性高分子に結合した状態であってもよい。例えば、導電性高分子鎖の末端にカルボニル基が結合した状態であってもよい。また、分子間の相互作用によりカルボニル基が活性層に導入されていてもよい。カルボニル基は、例えば、ポリアニリン類に含まれる窒素原子に、結合または相互作用した状態で、活性層に導入されていてもよい。また、例えば、活性層に含まれる導電性高分子のモノマーやオリゴマーに結合した状態であってもよい。
【0030】
カルボニル基含有化合物としては、例えば、カルボン酸類、カルボン酸エステル類、ラクトン類、アルデヒド類、ケトン類、アミド類、ラクタム類、コハク酸類、グルタル酸類、アジピン酸類、スベリン酸類、セバシン酸類、およびデセン酸類などが挙げられる。カルボニル基含有化合物は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
カルボニル基含有化合物は、導電性高分子層に接触させることができればよい。例えば、導電性高分子層を、カルボニル基含有化合物及び/またはカルボニル基含有化合物を含む溶液を用いて処理してもよい。または、導電性高分子にドープしたドーパントを脱ドープするために還元処理を行う際に、カルボニル基含有化合物を用いてもよい。カルボニル基含有化合物は、カルボニル基含有化合物を含む溶液として用いてもよい。また、導電性高分子層を洗浄する際に、カルボニル基含有化合物を含む溶液を用いて洗浄してもよい。還元処理を行う際に、還元作用を示すカルボニル基含有化合物を用いれば、還元処理とカルボニル基の導電性高分子層への導入とを同じタイミングで行なうことができるため、有利である。
【0032】
導電性高分子層が多孔体である場合は、多孔体の孔にカルボニル基含有化合物(またはカルボニル基含有化合物を含む溶液)を含浸させることが好ましい。
【0033】
還元作用を示すカルボニル基含有化合物としては、例えば、アルデヒド類、ギ酸、シュウ酸、没食子酸、およびアスコルビン酸類(アスコルビン酸、イソアスコルビン酸、またはこれらの塩など)などが挙げられる。このような化合物は、適度な還元作用を示し、導電性高分子層を還元する際の還元剤として利用できるとともに、導電性高分子にカルボニル基を導入することができるため、高いフロート特性を確保する上で有利である。アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、グリオキサールなどの他、脂肪族アルデヒド、脂環族アルデヒド、芳香族アルデヒドのいずれを用いてもよい。アルデヒド類のうち、還元性が高い観点からは、ホルムアルデヒドやグリオキサールが好ましく、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒドなどの脂肪族アルデヒドも好ましい。還元剤は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
カルボニル基含有化合物を含む溶液は、例えば、カルボニル基含有化合物と、この化合物を溶解する溶媒とを含む。溶媒としては、例えば、水、アルコール類などの有機溶媒が挙げられる。
【0035】
また、カルボン酸の数が多いカルボニル基含有化合物を用いることで活性層の強度を向上させることができる。具体的には、1つのカルボン酸を有するカルボニル基含有化合物には、1つの導電性高分子が結合するが、複数のカルボン酸を有するカルボニル基含有化合物には、これらカルボン酸のそれぞれに導電性高分子が複数結合するため、活性層の結合が強固になる。
【0036】
また、複数のカルボン酸の間の距離が長く、さらに枝分かれ構造を有するカルボニル基含有化合物は、カルボン酸における二次元ないし三次元のネットワーク構造を形成するため活性層の強度がより高くなるため好ましい。
【0037】
このようなカルボニル基含有化合物としては、アルキルジカルボン酸類、アルキルトリカルボン酸、アリールトリカルボン酸類およびアリールテトラカルボン酸類があげられる。
【0038】
アルキルジカルボン酸類としては、2-ブチルコハク酸、2,3-ジメチルグルタル酸、2,3-ジエチルグルタル酸、2,3-ジプロピルグルタル酸、2-ブチル-3-メチルグルタル酸、2,2,4,4-テトラエチルグルタル酸、3,3,5-トリメチルアジピン酸、2,7-ジブチルスベリン酸、2,9-ジプロピルセバシン酸、12-ビニル-8-オクタデセン二酸および7,12-ジメチルー7,11-オクタデカジエン-1,18-ジカルボン酸等があげられる。
【0039】
アルキルトリカルボン酸類としては、1,2,4-ブタントリカルボン酸、1,2,5-ヘキサントリカルボン酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸および1,2,7,8-オクタンテトラカルボン酸等があげられる。
【0040】
アリールトリカルボン酸類としては、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,5-ベンゼントリカルボン酸、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸および1,2,4-ナフタレントリカルボン酸等があげられる。
【0041】
アリールテトラカルボン酸類としては、ピロメリット酸があげられる。
【0042】
なお、活性層113の厚みは、例えば、電解の電流密度や重合時間を適宜変更したり、正極集電体上に付着させる導電性高分子の量を調節したりすることで容易に制御することができる。活性層113の厚みは、例えば、片面あたり10~300μmである。また、活性層113において、ドーパントは還元処理により全部または一部が脱ドープされていてもよい。
(負極)
負極12は、例えば負極集電体と負極材料層とを有する。
【0043】
負極集電体には、例えば、シート状の金属材料が用いられる。シート状の金属材料としては、例えば、金属箔、金属多孔体、パンチングメタル、エキスパンデッドメタル、エッチングメタルなどが用いられる。負極集電体の材質としては、例えば、銅、銅合金、ニッケル、ステンレス鋼などを用いることができる。
【0044】
負極材料層は、負極活物質として、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵および放出する材料を備えることが好ましい。このような材料としては、炭素材料、金属化合物、合金、セラミックス材料などが挙げられる。炭素材料としては、黒鉛、難黒鉛化炭素(ハードカーボン)、易黒鉛化炭素(ソフトカーボン)が好ましく、特に黒鉛やハードカーボンが好ましい。金属化合物としては、ケイ素酸化物、錫酸化物などが挙げられる。合金としては、ケイ素合金、錫合金などが挙げられる。セラミックス材料としては、チタン酸リチウム、マンガン酸リチウムなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、炭素材料は、負極12の電位を低くすることができる点で好ましい。
【0045】
負極材料層には、負極活物質の他に、導電剤、結着剤などを含ませることが望ましい。導電剤としては、カーボンブラック、炭素繊維などが挙げられる。結着剤としては、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ゴム材料、セルロース誘導体などが挙げられる。フッ素樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体などが挙げられる。アクリル樹脂としては、ポリアクリル酸、アクリル酸-メタクリル酸共重合体などが挙げられる。ゴム材料としては、スチレンブタジエンゴムが挙げられ、セルロース誘導体としてはカルボキシメチルセルロースまたはその塩などが挙げられる。
【0046】
負極材料層は、例えば、負極活物質と、導電剤および結着剤などとを、分散媒とともに混合して負極合剤ペーストを調製し、負極合剤ペーストを負極集電体に塗布した後、乾燥することにより形成される。
【0047】
負極12には、予めリチウムイオンをプレドープすることが望ましい。これにより、負極12の電位が低下するため、正極11と負極12の電位差(すなわち電圧)が大きくなり、電気化学デバイス100のエネルギー密度が向上する。
【0048】
リチウムイオンの負極12へのプレドープは、例えば、リチウムイオン供給源となる金属リチウム膜を負極材料層の表面に形成し、金属リチウム膜を有する負極12を、リチウムイオン伝導性を有する電解液(例えば、非水電解液)に含浸させることにより進行する。このとき、金属リチウム膜からリチウムイオンが非水電解液中に溶出し、溶出したリチウムイオンが負極活物質に吸蔵される。例えば負極活物質として黒鉛やハードカーボンを用いる場合には、リチウムイオンが黒鉛の層間やハードカーボンの細孔に挿入される。プレドープさせるリチウムイオンの量は、金属リチウム膜の質量により制御することができる。
【0049】
負極12にリチウムイオンをプレドープする工程は、電極群10を組み立てる前に行なってもよく、非水電解液とともに電極群10を電気化学デバイス100の容器101に収容してからプレドープを進行させてもよい。
(セパレータ)
セパレータ13としては、セルロース繊維製の不織布、ガラス繊維製の不織布、ポリオレフィン製の微多孔膜、織布、不織布などが好ましく用いられる。セパレータ13の厚みは、例えば10~300μmであり、10~40μmが好ましい。
(非水電解液)
電極群10は、非水電解液を含むことが好ましい。
【0050】
非水電解液は、リチウムイオン伝導性を有し、リチウム塩と、リチウム塩を溶解させる非水溶媒とを含む。このとき、リチウム塩のアニオンは、正極11へのドープと脱ドープとを、可逆的に繰り返すことが可能である。一方、リチウム塩に由来するリチウムイオンは、可逆的に負極12に吸蔵および放出される。
【0051】
リチウム塩としては、例えば、LiClO、LiBF、LiPF、LiAlCl、LiSbF、LiSCN、LiCFSO、LiFSO、LiCFCO、LiAsF、LiB10Cl10、LiCl、LiBr、LiI、LiBCl、LiN(FSO、LiN(CFSOなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、アニオンとして好適なハロゲン原子を含むオキソ酸アニオンを有するリチウム塩およびイミドアニオンを有するリチウム塩よりなる群から選択される少なくとも1種を用いることが望ましい。充電状態(充電率(SOC)90~100%)における非水電解液中のリチウム塩の濃度は、例えば、0.2~5mol/Lである。
【0052】
非水溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートなどの環状カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなどの鎖状カーボネート、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの脂肪族カルボン酸エステル、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトンなどのラクトン類、1,2-ジメトキシエタン(DME)、1,2-ジエトキシエタン(DEE)、エトキシメトキシエタン(EME)などの鎖状エーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフランなどの環状エーテル、ジメチルスルホキシド、1,3-ジオキソラン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ニトロメタン、エチルモノグライム、トリメトキシメタン、スルホラン、メチルスルホラン、1,3-プロパンサルトンなどを用いることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
非水電解液に、必要に応じて非水溶媒に添加剤を含ませてもよい。例えば、負極12の表面にリチウムイオン伝導性の高い被膜を形成する添加剤として、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、ジビニルエチレンカーボネートなどの不飽和カーボネートを添加してもよい。
(製造方法)
以下、本発明の電気化学デバイス100の製造方法の一例について、図2および3を参照しながら説明する。ただし、本発明の電気化学デバイス100の製造方法はこれに限定されるものではない。
【0054】
電気化学デバイス100は、例えば、正極集電体111上にカーボン層112を形成する工程と、正極集電体111上にカーボン層112を介して、導電性高分子を含む活性層113を形成することにより正極11を得る工程と、得られた正極11、セパレータ13および負極12をこの順に積層して、電極群10を得る工程と、得られた電極群10を非水電解液とともに容器101に収容する工程と、を備える方法により製造される。
【0055】
カーボン層112は、上述のように、例えば、カーボンペーストを用いて形成される。
【0056】
活性層113は、上述のように、例えば、カーボン層112を備える正極集電体111の存在下で、導電性高分子層を形成し、導電性高分子層にカルボニル基を導入することにより形成される。
【0057】
上記のようにして得られた正極11に、リード部材(リード線104Aを備えるリードタブ105A)を接続し、負極12に他のリード部材(リード線104Bを備えるリードタブ105B)を接続する。続いて、これらリード部材が接続された正極11と負極12との間にセパレータ13を介在させて巻回し、図3に示すような、一端面よりリード部材が露出する電極群10を得る。電極群10の最外周を、巻止めテープ14で固定する。
【0058】
次いで、図2に示すように、電極群10を、非水電解液(図示せず)とともに、開口を有する有底円筒形の容器101に収容する。封口体102からリード線104A、104Bを導出する。容器101の開口に封口体102を配置し、容器101を封口する。具体的には、容器101の開口端近傍を内側に絞り加工し、開口端を、封口体102に対してかしめるようにカール加工する。封口体102は、例えば、ゴム成分を含む弾性材料で形成されている。
【0059】
上記の実施形態では、円筒形状の巻回型の電気化学デバイスについて説明したが、本発明の適用範囲は上記に限定されず、角形形状の巻回型や積層型の電気化学デバイスにも適用することができる。
【0060】
実施例]
以下、実施例に基づいて、本発明をより詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
(1)正極の作製
厚さ30μmのアルミニウム箔の両面に、カーボンブラックを含むカーボン層(厚さ2μm)が形成された積層体を準備した。一方、アニリンおよび硫酸を含むアニリン水溶液を準備した。
【0061】
上記積層体と対向電極とを、アニリン水溶液に浸漬し、10mA/cmの電流密度で20分間、電解重合を行ない、硫酸イオン(SO 2-)がドープされた導電性高分子(ポリアニリン)の膜を、積層体の両面のカーボン層上に付着させた。
【0062】
硫酸イオンがドープされた導電性高分子を還元し、ドープされていた硫酸イオンを脱ドープした。還元は、還元剤としてのシュウ酸を0.1mol/L濃度で含む水溶液に、導電性高分子の膜が形成された積層体を浸漬させることにより行なった。こうして、導電性高分子を含む活性層を形成した。次いで、活性層を十分に洗浄し、その後、乾燥を行なった。活性層の厚さは、片面あたり35μmであった。
【0063】
得られた正極の活性層について、FT-IR測定装置を用いてIRスペクトルを測定した。このときのIRスペクトルを図4に示す。図4に示すように、活性層のIRスペクトルでは、カルボニル基の伸縮振動に由来するピークが、1670cm-1付近に観察された。
(2)負極の作製
厚さ20μmの銅箔を負極集電体として準備した。一方、ハードカーボン97質量部と、カルボキシセルロース1質量部と、スチレンブタジエンゴム2質量部とを混合した混合粉末と、水とを、質量比で40:60の割合で混錬した負極合剤ペーストを調製した。負極合剤ペーストを負極集電体の両面に塗布し、乾燥して、厚さ35μmの負極材料層を両面に有する負極を得た。次に、負極材料層に、プレドープ完了後の電解液中での負極電位が金属リチウムに対して0.2V以下となるように計算された分量の金属リチウム層を形成した。
(3)電極群の作製
正極と負極にそれぞれリードタブを接続した後、図3に示すように、セルロース製不織布のセパレータ(厚さ35μm)と、正極と、負極とを、それぞれ、交互に重ね合わせた積層体を巻回して、電極群を形成した。
(4)非水電解液の調製
プロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとの体積比1:1の混合物に、ビニレンカーボネートを0.2質量%添加して、溶媒を調製した。得られた溶媒にリチウム塩としてLiPFを所定濃度で溶解させて、アニオンとしてヘキサフルオロリン酸イオン(PF )を有する非水電解液を調製した。
(5)電気化学デバイスの作製
開口を有する有底の容器に、電極群と非水電解液とを収容し、図2に示すような電気化学デバイスを組み立てた。その後、正極と負極との端子間に3.8Vの充電電圧を印加しながら25℃で24時間エージングし、リチウムイオンの負極へのプレドープを進行させた。得られた電気化学デバイスについて、以下の方法に従って評価した。評価結果をまとめて表1に示す。
(評価法)
(1)フロート特性
(1a)内部抵抗変化率ΔDCR
電気化学デバイスを3.8Vの電圧で充電した後、所定時間放電した際の電圧降下量から、初期の内部抵抗(初期DCR)を求めた。
【0064】
電気化学デバイスを、60℃、3.6Vの条件で所定時間連続充電(フロート充電)したときの内部抵抗値を測定し、初期DCRを100%としたときの、初期DCRに対する内部抵抗の比率をΔDR(%)とし、算出した。ΔDCRの値が小さいほど、フロート特性の低下が抑制されていることを示す。
(1b)容量変化率ΔC
電気化学デバイスを3.8Vの電圧で充電した後、2.5Vまで放電した際の放電容量(初期容量)を求めた。
【0065】
電気化学デバイスを、60℃、3.6Vの条件で所定時間連続充電(フロート充電)したときの放電容量を上記と同様にして測定し、初期容量を100%としたときの、初期容量に対する放電容量の比率をΔC(%)とし、算出した。ΔCが100%に近いほど、フロート充電時の容量低下が小さく、電気化学デバイスの信頼性が高いことを示す。
(2)耐電圧性
20×20mmの評価用の正極を、他方の電極として金属リチウム箔を準備し、非水電解液中において、電極間に標準電極電位から50mV毎に電圧を印加し、1時間保持後の反応電流を測定した。そして、反応電流と活物質の質量から反応電流密度を求めた。
(実施例2)
還元剤としてシュウ酸をギ酸に変更したこと以外は、実施例1と同様にして電気化学デバイスを作製し、フロート特性および信頼性の評価を行なった。
【0066】
得られた活性層について、FT-IR測定装置を用いてIRスペクトルを測定したところ、図4に示されるように、カルボニル基の伸縮振動に由来するピークが、図4の点線の楕円で囲まれる1670cm-1付近に観察された。
(比較例1)
シュウ酸による還元に代えて、硫酸水溶液中において電気化学的に還元を行ったこと以外は、実施例1と同様にして電気化学デバイスを作製し、評価を行なった。
【0067】
得られた活性層について、FT-IR測定装置を用いてIRスペクトルを測定したところ、図4に示すようにカルボニル基に由来するピークは観察されなかった。
【0068】
実施例1~2および比較例1のフロート特性の評価結果を図5に示す。また、容量変化率の評価結果を図6に、耐電圧性の評価結果を図7に、それぞれ示す。なお、これらの図では、実施例1~2をA1~A2で表し、比較例1をBで表した。
【0069】
図5に示されるように、活性層がカルボニル基に由来するピークを示す実施例では、このようなピークを示さない比較例に比べて、フロート充電時の内部抵抗変化率ΔDCRが小さくなっている。
【0070】
また、図6に示されるように、実施例では、比較例に比べて、フロート充電時の容量変化ΔCが小さくなっている。
【0071】
つまり、実施例では、比較例に比べて、フロート特性の低下が抑制され、電気化学デバイスの信頼性が高まっていることが分かる。
【0072】
図7からは、例えば、反応電流密度が0.01A/gのときの電位が、比較例1では、3.7Vであるのに対し、実施例1では3.9Vに向上していることが分かる。つまり、反応電流密度が0.01A/gのときに、漏れ電流が生じる電位が、3.7Vから3.9Vに向上しており、耐電圧性も向上していることが分かる。
【0073】
なお、実施例1および2の電気化学デバイスを分解し、正極を取り出して、十分に洗浄し、活性層のIRスペクトルを上記と同様にして測定した。その結果、電気化学デバイスを組み立てる前の正極の活性層についての測定結果と同様に、1670cm-1付近に、カルボニル基の伸縮振動に由来するピークが観察された。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明に係る電気化学デバイスは、フロート特性に優れるため、各種電気化学デバイス、特にバックアップ用電源として好適である。
【符号の説明】
【0075】
10:電極群
11:正極
111:正極集電体
112:カーボン層
113:活性層
12:負極
13:セパレータ
14:巻止めテープ
100:電気化学デバイス
101:容器
102:封口体
103:座板
104A、104B:リード線
105A、105B:リードタブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7