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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】照明装置及び投写型映像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 21/14 20060101AFI20230105BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20230105BHJP
   G02B 5/26 20060101ALI20230105BHJP
   F21V 7/28 20180101ALI20230105BHJP
   F21V 14/04 20060101ALI20230105BHJP
   F21V 9/35 20180101ALI20230105BHJP
   F21V 7/30 20180101ALI20230105BHJP
   F21V 9/14 20060101ALI20230105BHJP
   F21V 9/40 20180101ALI20230105BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20230105BHJP
【FI】
G03B21/14 A
G03B21/00 F
G02B5/26
F21V7/28 240
F21V7/28 250
F21V14/04
F21V9/35
F21V7/30
F21V9/14
F21V9/40 200
F21S2/00 355
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018204060
(22)【出願日】2018-10-30
(65)【公開番号】P2020071307
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-07-30
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(72)【発明者】
【氏名】山本 紀和
【審査官】中村 直行
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-129733(JP,A)
【文献】特開2017-009690(JP,A)
【文献】特開2012-137744(JP,A)
【文献】特開2018-146691(JP,A)
【文献】米国特許第09170423(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 21/00 - 21/64
G02B 5/26
F21V 7/28
F21V 14/04
F21V 9/35
F21V 7/30
F21V 9/14
F21V 9/40
F21S 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の色成分光を発生する光源と、
ある瞬間において、前記第1の色成分光を部分的に透過し、前記第1の色成分光を部分的に反射し、かつ、前記第1の色成分光とは異なる第2の色成分光を透過する分離素子と、
前記分離素子を透過した前記第1の色成分光により励起されて前記第2の色成分光を発生する発光体と、
前記光源から前記分離素子に入射して前記分離素子によって反射された第1の色成分光と、前記発光体から前記分離素子に入射して前記分離素子を透過した前記第2の色成分光とを互いに合成する光学系とを備え、
前記分離素子は、前記第1の色成分光について可変な透過率及び反射率を有するように構成され
前記光源によって発生される前記第1の色成分光は直線偏光され、
前記分離素子は、前記第1の色成分光を反射しかつ前記第2の色成分光を透過する第1の領域と、前記第1及び第2の色成分光を透過する第2の領域とを有するダイクロイックミラーを含み、前記第2の領域は、前記第1の領域の内部に設けられ、前記光源から前記ダイクロイックミラーに入射する前記第1の色成分光のスポットサイズよりも小さなサイズを有し、
前記ダイクロイックミラーは、前記第1の色成分光が前記第2の領域に入射するか否かを切り換えるように移動可能に構成された、
照明装置。
【請求項2】
前記ダイクロイックミラーは、互いに異なるサイズを有する複数の第2の領域を有し、前記第1の色成分光が前記複数の第2の領域のうちのいずれに入射するかを切り換えるように移動可能に構成された、
請求項記載の照明装置。
【請求項3】
前記第1の色成分光は青色光であり、前記第2の色成分光は緑域を含む色成分光である、
請求項1または2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記分離素子は、前記第2の色成分光の緑域の波長よりも長波長の色成分光を反射する、
請求項記載の照明装置。
【請求項5】
前記光源は固体光源素子である、
請求項1~4のうちの1つに記載の照明装置。
【請求項6】
前記照明装置は、所定の角度範囲にわたる開口を有する第1の蛍光体ホイール装置をさらに備え、
前記開口を介して前記光源から前記分離素子に前記第1の色成分光が入射し、
前記光学系は、前記分離素子によって反射された第1の色成分光と、前記分離素子を透過して前記開口を通過した前記第2の色成分光とを互いに合成する、
請求項1~5のうちの1つに記載の照明装置。
【請求項7】
前記発光体は第2の蛍光体ホイール装置に配置された、
請求項1~6のうちの1つに記載に照明装置。
【請求項8】
請求項1~7のうちの1つに記載の照明装置を備えた、
投写型映像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、投写型映像表示装置の光変調素子などのための照明光を発生する照明装置に関し、また、そのような照明装置を備えた投写型映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
映画及び会議プレゼンテーションなどにおいて映像を大画面に投写するために、投写型映像表示装置が広く用いられている。投写型映像表示装置は、主にほぼ平面状の白色の投写面の上に、周辺まで焦点が合った歪みのない映像を投写することができる。
【0003】
従来、投写型映像表示装置の光源として、キセノンランプ及び超高圧水銀ランプなど、大光量の白色のランプ光源が使用されてきた。しかしながら、ランプ光源は、数千時間ごとに寿命による交換が必須であり、かつ、最悪の場合、使用中に寿命となったときに表示が全くできなくなるなど、長期使用時のメンテナンス性に課題がある。
【0004】
最近では、ランプ光源に代わり、より長寿命の発光ダイオード及びレーザダイオードなどの固体光源素子を用いた照明装置及び投写型映像表示装置が開発されている。固体光源素子は、交換の頻度が低減又は不要になることで、そのメンテナンス性が著しく向上した。それに加えて、固体光源素子の狭い分光分布特性のため、広い色域を有する投写型映像表示装置を実現できるようになった。特にレーザダイオードを光源として用いる場合、光源からの光の広がりが少ないので、光利用効率を向上させることが可能となる。特に明るさが必要な場合、青色のレーザダイオードと蛍光体とを備え、青色光を蛍光体に照射することにより他の色成分光を発生する投写型映像表示装置が提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-054667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の目的は、既存の照明装置及び投写型映像表示装置の構成に対して大幅な変更を必要とすることなく、簡単な構成で、ある色成分光の分光特性を選択的に改善することができる照明装置及び投写型映像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る照明装置によれば、第1の色成分光を発生する光源と、ある瞬間において、第1の色成分光を部分的に透過し、第1の色成分光を部分的に反射し、かつ、第1の色成分光とは異なる第2の色成分光を透過する分離素子と、分離素子を透過した第1の色成分光により励起されて第2の色成分光を発生する発光体と、光源から分離素子に入射して分離素子によって反射された第1の色成分光と、発光体から分離素子に入射して分離素子を透過した第2の色成分光とを互いに合成する光学系とを備える。分離素子は、第1の色成分光について可変な透過率及び反射率を有するように構成される。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様に係る照明装置及び投写型映像表示装置によれば、既存の照明装置及び投写型映像表示装置の構成に対して大幅な変更を必要とすることなく、簡単な構成で、ある色成分光の分光特性を選択的に改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態に係る投写型映像表示装置1の例示的な構成を示す概略図である。
図2図1のダイクロイックミラー106の例示的な透過特性を示すグラフである。
図3図1の蛍光体ホイール装置210の例示的な構成を示す正面図である。
図4図1の蛍光体ホイール装置210の例示的な構成を示す側面図である。
図5図1のダイクロイックミラー220の例示的な構成を示す概略図である。
図6図1のダイクロイックミラー220の例示的な透過特性を示すグラフである。
図7図1のフィルタホイール装置240の例示的な構成を示す正面図である。
図8図1のフィルタホイール装置240の例示的な構成を示す側面図である。
図9図7のダイクロイック膜242dの分光特性を示す図である。
図10図1の投写型映像表示装置1のCIE1931色空間のxy色度図である。
図11図1の投写型映像表示装置1において青色光の分光特性を改善する場合における青色光の経路を示す概略図である。
図12図1の投写型映像表示装置1において青色光の分光特性を改善しない場合における青色光の経路を示す概略図である。
図13】第1の実施形態の比較例に係る投写型映像表示装置1Aの例示的な構成を示す概略図である。
図14】第1の実施形態の第1の変形例に係るダイクロイックミラー220Bの例示的な構成を示す概略図である。
図15】第1の実施形態の第2の変形例に係る投写型映像表示装置1Cの例示的な構成を示す概略図である。
図16図15の蛍光体ホイール装置250の例示的な構成を示す正面図である。
図17図15の蛍光体ホイール装置250の例示的な構成を示す側面図である。
図18】第2の実施形態に係る投写型映像表示装置1Dの例示的な構成を示す概略図である。
図19図18の偏光ビームスプリッタ235の例示的な透過特性を示すグラフである。
図20図18の投写型映像表示装置1Dにおいて青色光の分光特性を改善する場合における青色光の経路を示す概略図である。
図21図18の投写型映像表示装置1Dにおいて青色光の分光特性を改善しない場合における青色光の経路を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、適宜図面を参照しながら、実施形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0011】
なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために、提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0012】
[本開示の課題について]
装置の簡略化及びコスト削減のために、各色成分光(例えば、赤色光、緑色光、及び青色光)を単一の光変調素子に時分割で照射し、映像の各フレームの互いに異なる色成分を高速に切り換えて表示することで、フルカラーの映像を知覚させる投写型映像表示装置が提供されている。このような投写型映像表示装置では、例えば青色の固体光源素子と蛍光体とを光源として用いた場合、一般的に、光変調素子に照射される青色光としては、固体光源素子によって発生された青色光がそのまま使用される。しかしながら、固体光源素子の発光効率が最大化されるときに固体光源素子により発生される青色光の分光特性は、投写型映像表示装置により投写すべき好ましい青色光の分光特性と必ずしも同一ではない。また、蛍光体の発光効率を最大化するように蛍光体を励起する青色光の分光特性もまた、投写型映像表示装置により投写すべき好ましい青色光の分光特性と必ずしも同一ではない。従って、固体光源素子及び蛍光体の発光効率を考慮すると、照明装置及び投写型映像表示装置の青色光の分光特性が、投写型映像表示装置により投写すべき好ましい青色光の分光特性からずれてしまうという課題がある。
【0013】
青色光の分光特性を改善するために、例えば特許文献1の発明が提案されている。特許文献1の発明は、青色光の一部を反射し、残余の青色光及びその他の色光を透過する波長選択反射板と、波長選択反射板を透過した青色光によって励起されて緑色光を発生する蛍光板と、蛍光板によって発生された緑色光を集光して波長選択反射板に向けて出射する集光素子とを備える。波長選択反射板は、例えば蛍光体ホイールの一部に設けられる。特許文献1の発明は、波長選択反射板によって反射された青色光と、蛍光板によって発生されて波長選択反射板を透過した緑色光とを合成することにより、青色光の分光特性を改善する。
【0014】
特許文献1の発明は、波長選択反射板が一体化された蛍光体ホイールと、反射板と、集光素子とを設けるために、既存の投写型映像表示装置の構成に対して大幅な変更を必要とする。従って、既存の照明装置及び投写型映像表示装置の構成に対して大幅な変更を必要とすることなく、簡単な構成で、ある色成分光の分光特性を改善できることが求められる。
【0015】
また、特許文献1の発明では、青色光には常に緑色光が合成されている。蛍光板の発光効率は100%よりも小さいので、蛍光板を励起するために青色光の一部を使用すると、青色光に緑色光を合成しない場合に比較して、青色光の輝度が常に低下してしまう。特許文献1の発明では、緑色光が合成されていない青色光を発生するためには、再び、その構成の大幅な変更を必要とする。従って、簡単な構成で、ある色成分光の分光特性を改善するか否かを選択できることが求められる。
【0016】
以下の実施形態では、既存の照明装置及び投写型映像表示装置の構成に対して大幅な変更を必要とすることなく、簡単な構成で、ある色成分光の分光特性を選択的に改善することができる照明装置及び投写型映像表示装置を提供する。
【0017】
[1.第1の実施形態]
以下、図1図17を参照して、第1の実施形態に係る投写型映像表示装置について説明する。
【0018】
以下では、本開示の具体的な実施形態として、光変調素子として、ディジタルマイクロミラーデバイス(以下、「DMD」と称する)を備えた投写型映像表示装置について説明する。
【0019】
[1-1.構成]
図1は、第1の実施形態に係る投写型映像表示装置1の例示的な構成を示す概略図である。投写型映像表示装置1は、複数のレーザダイオード(LD)101、複数のコリメートレンズ102、コンデンサレンズ103、凹レンズ104、拡散板105、ダイクロイックミラー106、コンデンサレンズ107,108、蛍光体ホイール装置210、コンデンサレンズ111、ダイクロイックミラー220、駆動装置230、コンデンサレンズ231,232、蛍光体233、凹レンズ112、反射ミラー113、拡散板114、凸レンズ115、反射ミラー116、及びコンデンサレンズ117を備える。本明細書では、投写型映像表示装置1のこれらの構成要素を、「照明装置」ともいう。投写型映像表示装置1は、フィルタホイール装置240、ロッドインテグレータ121、リレーレンズ122,123,124、内部全反射プリズム(TIRプリズム)125、ディジタルマイクロミラーデバイス(DMD)126、及び投写光学系300をさらに備える。前述の照明装置は、ディジタルマイクロミラーデバイス126に照射するための照明光を発生する。ディジタルマイクロミラーデバイス126は、照明装置から入射した照明光を空間的に変調することにより、スクリーン400に投写するための映像光を発生する。
【0020】
図1の投射型映像表示装置1は、レーザダイオード101によって発生された青色光の分光特性を改善するため、ダイクロイックミラー220、駆動装置230、コンデンサレンズ231,232、及び蛍光体233を備える。蛍光体233は、青色光によって励起されて緑色光を発生する。ダイクロイックミラー106、コンデンサレンズ107,108、蛍光体ホイール装置210、コンデンサレンズ111、ダイクロイックミラー220、コンデンサレンズ231,232、凹レンズ112、反射ミラー113、拡散板114、凸レンズ115、及び反射ミラー116を含む光学系は、レーザダイオード101によって発生された青色光と、蛍光体233より発生された緑色光とを、ダイクロイックミラー106において互いに合成するように構成されている。
【0021】
各LD101は、447nmから462nmの波長幅において、直線偏光された青色光を発生する。各LD101は、出射光がダイクロイックミラー106の入射面に対してP偏光となるように配置される。各コリメートレンズ102は、対応する1つのLD101からの出射された光を平行光化する。コンデンサレンズ103及び凹レンズ104は、平行光を収束してより細い平行光を生成するアフォーカル系を構成する。具体的には、コンデンサレンズ103は、複数のコリメートレンズ102からの平行光を集光し、凹レンズ104は、コンデンサレンズ103からの光を平行化する。拡散板105は、凹レンズ104からの光を拡散する。拡散板105を通過した光は、ダイクロイックミラー106に入射する。
【0022】
本明細書において、各LD101を「光源」ともいう。
【0023】
図2は、図1のダイクロイックミラー106の例示的な透過特性を示すグラフである。ダイクロイックミラー106は、波長465nmを有するS偏光の青色光が入射するとき、その半分ずつを透過及び反射し、また、波長472nmを有するP偏光の青色光が入射するとき、その半分ずつを透過及び反射する。ダイクロイックミラー106は、緑色光及び赤色光については、偏光にかかわらず、その95%以上を反射する。拡散板105からダイクロイックミラー106にはP偏光の青色光が入射するので、青色光はダイクロイックミラー106と透過してコンデンサレンズ107に進む。
【0024】
拡散板105からダイクロイックミラー106に入射して透過した青色光は、コンデンサレンズ107,108に入射して、次いで、蛍光体ホイール装置210の表面に集光される。コンデンサレンズ108の焦点距離は集光角度が40度以下となるように設定され、蛍光体ホイール装置210の近傍に集光スポットが形成される。
【0025】
図3は、図1の蛍光体ホイール装置210の例示的な構成を示す正面図である。図4は、図1の蛍光体ホイール装置210の例示的な構成を示す側面図である。図3は、コンデンサレンズ108から蛍光体ホイール装置210に光が入射する面を示す。蛍光体ホイール装置210は、中心軸210X、アルミニウム基板211、蛍光体層212、駆動モータ213、及び開口214を備える。
【0026】
アルミニウム基板211は、その中央部に駆動モータ213を備え、中心軸210Xの周りに回転可能な円形基板である。アルミニウム基板211の表面には、反射膜(図示せず)が形成され、反射膜の表面にさらに蛍光体層212が形成されている。反射膜は、可視光を反射する金属層もしくは誘電体膜である。アルミニウム基板211の一部には開口214が設けられている。蛍光体層212には、青色光により励起され、緑色光及び赤色光の波長成分を含む黄色光を発生するCe付活YAG系黄色蛍光体が形成されている。この黄色蛍光体の結晶母体の代表的な化学組織は、YAl12である。蛍光体層212はほぼ円環状に形成されているが、円環の一部分には、青色光を透過させるための開口214が設けられ、蛍光体層212は形成されていない。
【0027】
本明細書では、蛍光体ホイール装置210を「第1の蛍光体ホイール装置」ともいう。
【0028】
蛍光体層212は、コンデンサレンズ108からのスポット光で励起されることにより、緑色光及び赤色光を含む黄色光を発生する。蛍光体ホイール装置210は、アルミニウム基板211を中心軸210Xの周りに回転させることにより、青色光で励起されることによる蛍光体層212の温度上昇を抑制し、蛍光変換効率を安定に維持することができる。蛍光体層212によって発生された緑色光及び赤色光の一部は、コンデンサレンズ108に向かって出射する。蛍光体層212により発生されて反射膜の側に進んだ緑色光及び赤色光は反射膜で反射され、コンデンサレンズ108に向かって出射する。また、蛍光体層212によって発生された緑色光及び赤色光は、ランダムな偏光状態を有する自然光として出射される。蛍光体層212から出射した緑色光及び赤色光は、再びコンデンサレンズ108,107で集光されてほぼ平行光に変換されたのち、ダイクロイックミラー106で反射され、コンデンサレンズ117に進む。
【0029】
一方、コンデンサレンズ108から蛍光体ホイール装置210の開口214に入射した青色光は、開口214をそのまま通過し、コンデンサレンズ111によってほぼ平行かつ広い光束の光線に変換された後、ダイクロイックミラー220に進む。
【0030】
図5は、図1のダイクロイックミラー220の例示的な構成を示す概略図である。ダイクロイックミラー220は、ガラスなどの平坦な透明基板に形成されたダイクロイックコート層221及びAR(anti-reflection)コート層222を備える。ダイクロイックコート層221は、青色光を反射し、かつ、緑色光を透過する。ARコート層222は、青色光及び緑色光を透過する。ARコート層222の領域は、ダイクロイックコート層221の領域の内部に設けられ、コンデンサレンズ111(すなわち光源)からダイクロイックミラー220に入射する青色光のスポットサイズよりも小さなサイズを有する。これにより、ダイクロイックミラー220は、ある瞬間において、青色光を部分的に透過し、青色光を部分的に反射し、かつ、蛍光体233によって発生された緑色光(後述)を透過する。
【0031】
図6は、図1のダイクロイックミラー220の例示的な透過特性を示すグラフである。ダイクロイックミラー220は、波長472nmを有するS偏光の青色光が入射するとき、その半分ずつを透過及び反射し、また、波長465nmを有するP偏光の青色光が入射するとき、その半分ずつを透過及び反射する。ダイクロイックミラー220は、緑色光及び赤色光については、偏光にかかわらず、その95%以上を透過する。図1の例では、コンデンサレンズ111からダイクロイックミラー220に入射する青色光は、拡散板105からダイクロイックミラー220に入射する青色光と同様に、P偏光を有する。
【0032】
図5では、ARコート層222の形状を円形に示すが、多角形又は他の形状などであってもよい。
【0033】
本明細書では、ダイクロイックミラー220を「分離素子」ともいう。また、本明細書では、ダイクロイックコート層221を「第1の領域」ともいい、ARコート層222を「第2の領域」ともいう。
【0034】
駆動装置230は、コンデンサレンズ111からダイクロイックミラー200に入射する青色光がすべてダイクロイックコート層221に入射するか、それとも、部分的にARコート層222に入射するかを切り換えるように、ダイクロイックミラー200移動させる。前者の場合は、コンデンサレンズ111からダイクロイックミラー200に入射する青色光のすべては、ダイクロイックコート層221によって反射される。一方、後者の場合は、コンデンサレンズ111からダイクロイックミラー200に入射する青色光の一部は、ARコート層222を透過し、残りはダイクロイックコート層221によって反射される。これにより、ダイクロイックミラー220は、青色光について可変な透過率及び反射率を有するように構成される。
【0035】
コンデンサレンズ111からダイクロイックミラー220に入射した青色光の大部分は、ダイクロイックコート層221によって反射され、凹レンズ112、反射ミラー113、拡散板114、及び凸レンズ115を介して、ほぼ平行な光線に変換される。凸レンズ115によってほぼ平行な光線に変換された青色光は、反射ミラー116にて反射されてダイクロイックミラー106へ入射する。ダイクロイックミラー106に入射した青色光は、ダイクロイックミラー106を透過してコンデンサレンズ117に進む。
【0036】
一方、コンデンサレンズ111からダイクロイックミラー220に入射した青色光の一部は、ARコート層222を透過し、コンデンサレンズ231,232を介して蛍光体233の表面に集光する。コンデンサレンズ232の焦点距離は集光角度が40度以下となるように設定され、蛍光体233の近傍に集光スポットが形成される。
【0037】
蛍光体233は、板状基板と、板状基板の表面に形成された反射膜と、反射膜の表面に形成された蛍光体層とを備える。反射膜は、可視光を反射する金属層もしくは誘電体膜である。蛍光体233には、青色光により励起され、緑色光を発生するCe付活LAG系緑色蛍光体が形成されている。緑色蛍光体の結晶母体の代表的な化学組織は、LuAl12である。
【0038】
蛍光体233は、コンデンサレンズ232からのスポット光で励起されることにより、緑色光を発生する。蛍光体233の裏面には放熱板(図示せず)が配置され、青色光で励起されることによる蛍光体233の温度上昇を抑制し、蛍光変換効率を安定に維持することができる。蛍光体233によって発生された緑色光の一部は、コンデンサレンズ232に向かって出射する。蛍光体233により発生されて反射膜の側に進んだ緑色光は反射膜で反射され、コンデンサレンズ232に向かって出射する。また、蛍光体233によって発生された緑色光は、ランダムな偏光状態を有する自然光として出射される。蛍光体233から出射した緑色光は、再びコンデンサレンズ232,231で集光されてほぼ平行光に変換されたのち、ダイクロイックミラー220を透過し、コンデンサレンズ111に進む。
【0039】
コンデンサレンズ111を透過した緑色光は、コンデンサレンズ111で集光され、蛍光体ホイール装置210の開口214を通過する。次いで、緑色光は、コンデンサレンズ108,107でほぼ平行光に変換された後、ダイクロイックミラー106で反射されてコンデンサレンズ117に進む。
【0040】
本明細書では、蛍光体233を「発光体」ともいう。また、本明細書では、LD101によって発生される青色光を「第1の色成分光」ともいい、蛍光体233によって発生される緑色光を「第2の色成分光」ともいう。
【0041】
光源からダイクロイックミラー220に入射して反射された青色光と、蛍光体233からダイクロイックミラー220に入射して透過した緑色光とは、ダイクロイックミラー106において互いに合成される。このように、青色光に緑色光を合成することにより(「合成後の青色光」という)、投写型映像表示装置1により投写すべき好ましい青色光の分光特性を実現することができる。
【0042】
このように、蛍光体層212によって発生された緑色光及び赤色光を含む黄色光と、蛍光体233によって発生された緑色光を含む合成後の青色光とが得られ、これらの色成分光は、ダイクロイックミラー106からコンデンサレンズ117に進む。これらの色成分光を時分割多重により合成すると、白色光として視認される。ダイクロイックミラー106からコンデンサレンズ117に入射した光は、フィルタホイール装置240に集光される。
【0043】
図7は、図1のフィルタホイール装置240の例示的な構成を示す正面図である。図8は、図1のフィルタホイール装置240の例示的な構成を示す側面図である。図7は、コンデンサレンズ117からフィルタホイール装置240に光が入射する面を示す。フィルタホイール装置240は、中心軸240X、透明基板241、ダイクロイック膜242、及び駆動モータ243を備える。
【0044】
透明基板241は、その中央部に駆動モータ243を備え、中心軸240Xの周りに回転制御可能な円形基板である。透明基板241は、例えば可視域全域にわたり高い透過率を有するガラス板で構成される。透明基板241の表面には、所望の波長帯域のみを透過するようにダイクロイック膜242が形成されている。ダイクロイック膜242は、例えば図7に示すように、4つの扇形領域であるダイクロイック膜242a~242dを含む。例えば、ダイクロイック膜242aは黄色光(緑色光+赤色光)のみを透過し、ダイクロイック膜242bは、赤色光のみを透過し、ダイクロイック膜242cは、緑色光のみを透過し、ダイクロイック膜242dは、青色光と真緑色光を透過する。
【0045】
蛍光体ホイール装置210及びフィルタホイール装置240は、互いに同期しながら回転するように制御される。例えば、図3の蛍光体層212の位置と、図6のダイクロイック膜242a~242cの位置とが時間的に同期するように制御される。これにより、図3の蛍光体層212から出射した緑色光及び赤色光を含む黄色光は、図4のダイクロイック膜242a~242cを透過する際に、黄色光、赤色光、及び緑色光にそれぞれ分離される。一方、蛍光体233によって発生されて図3の開口214を通過した緑色光を含む合成後の青色光は、図4のダイクロイック膜242dを透過する際に、緑色光の長波長側の色成分がカットされ、緑色光に代えて真緑色光を含む合成後の青色光になる。ダイクロイック膜242a~242dをそれぞれ透過した各色成分光は、図1のロッドインテグレータ121に進む。
【0046】
図9は、図7のダイクロイック膜242dの分光特性を示す図である。図9は、蛍光体233によって発生された緑色光がダイクロイック膜242dを通過する際の分光特性を示す。蛍光体233によって発生された緑色光は、ダイクロイック膜242dを透過することにより、長波長側の色成分がカットされ、真緑色光の分光特性を有するように変換される。ダイクロイック膜242dのカットオフ波長は、例えば552nmである。この場合、ダイクロイック膜242dを透過した後の緑色光は、例えばCIE1931色空間のxy色度の座標:x=0.158、y=0.686を有する。
【0047】
図10は、図1の投写型映像表示装置1のCIE1931色空間のxy色度図である。図10において、Rec.709の色空間と、LD101の青色光の色度座標とを示す。LD101の青色光は、例えば主波長456nmを有し、xy色度の座標:x=0.150、y=0.026を有する。ダイクロイック膜242dを透過した真緑色光を含む合成後の青色光は、青色光及び真緑色光の強度比に応じて、色空間において破線のように移動する。青色光及び真緑色光の強度比は、ダイクロイックミラー220におけるARコート層222の大きさにより調整可能である。青色光及び真緑色光の強度比を調整することで、投写型映像表示装置1により投写する青色光の分光特性を、Rec.709の青色光の座標:x=0.150、y=0.060と一致させることが可能である。
【0048】
このように、コンデンサレンズ117からフィルタホイール装置240に入射した黄色光及び合成後の青色光は、フィルタホイール装置240によって赤色光、緑色光、青色光、及び黄色光に分離され、ロッドインテグレータ121に進む。これらの赤色光、緑色光、青色光は良好な3原色を示し、これらの色成分光は時分割多重により色合成すると、良好なホワイトバランスの発光特性を得ることができる。さらに、これらの色成分光は、DMD126の各画素のオン時間及びオフ時間を調整することにより、所望の色度座標の色に変換することができる。
【0049】
ロッドインテグレータ121は、ガラスなどの透明部材によって構成される中実のロッドである。ロッドインテグレータ121は、入射する光を内部で複数回反射させることにより、均一な強度分布を有する光を生成する。なお、ロッドインテグレータ121は、ミラー面によって構成される内壁を有する中空のロッドであってもよい。
【0050】
リレーレンズ122,123,124は、ロッドインテグレータ121の出射光をDMD126にほぼ結像する。ロッドインテグレータ121の出射光は、リレーレンズ122,123,124を透過し、内部全反射プリズム(TIRプリズム)125に入射する。TIRプリズム125は2つのプリズム125b,125aから構成され、プリズム125b,125aが互いに近接する面には薄い空気層(図示せず)が形成されている。空気層は、臨界角以上の角度でプリズム125aから出射する光を全反射する。リレーレンズ124からTIRプリズム125aに入射した光は、この空気層で全反射され、DMD126にほぼ結像する。
【0051】
DMD126は、映像信号等の各種の制御信号に基づき、DMD126に入射した光を空間的に変調し、画素ごとに異なる光強度を有する映像光を、色成分光のそれぞれについて時分割で生成する。具体的には、DMD126は、複数の可動式の微小ミラーを有する。各微小ミラーは、基本的に1画素に相当する。DMD126は、制御信号からの変調信号に基づいて各微小ミラーの角度を変更することにより、反射光を投写光学系300に向けるか否かを切り換える。DMD126のある微小ミラーがオンであるとき、当該微小ミラーで反射された光は、TIRプリズム125a,125bの双方を透過して投写光学系300に入射したのちに、スクリーン400の投写面に投写される。
【0052】
時分割でそれぞれ生成された赤色の映像光、緑色の映像光、及び青色の映像光、黄色の映像光は、スクリーン400の投写面に到達し、フルカラー映像として知覚される。この際、時分割の周期(フレームレート)が遅いと、人間の眼に色のちらつきが知覚されることがある。従って、例えば、60フレーム/秒(60fps)などの高いフレームレートの映像データを使用し、例えば赤色光~黄色光までの1周期を映像データのフレームレートの3倍速(180fps)で駆動することで、色のちらつきを抑制することができる。
【0053】
[1-2.動作]
図5に示すように、ダイクロイックミラー220は移動可能に構成されている。これにより、コンデンサレンズ111からダイクロイックミラー220に入射する光を、ダイクロイックコート層221及びARコート層222の両方で受けるか(図5のON状態)、ダイクロイックコート層221のみで受けるか(図5のOFF状態)を切り換えることが可能である。
【0054】
図11は、図1の投写型映像表示装置1において青色光の分光特性を改善する場合における青色光の経路を示す概略図である。図12は、図1の投写型映像表示装置1において青色光の分光特性を改善しない場合における青色光の経路を示す概略図である。図11図5のON状態の場合における光の経路を示し、図12図5のOFF状態の場合における光の経路を示す。
【0055】
図11の場合、これまで示したように、ダイクロイックミラー220を透過した青色光が蛍光体233を励起し、ダイクロイックミラー106で青色光と緑色光が合成され、合成後の青色光がフィルタホイール装置240に進む。蛍光体233の変換効率は100%よりも小さいので、フィルタホイール装置240に到達する合成後の青色光の強度は、LD101からダイクロイックミラー220に到達した青色光の強度よりも低下してしまう。このような合成後の青色光を緑色光、赤色光、及び黄色光と合成し、ホワイトバランスを調整すると、青色光の分光特性は改善しているが、投写光全体の輝度は低下してしまう。使用環境によっては、青色光の分光特性を低下させてでも投写光全体の輝度を高めることが求められる場合もある。そのため、図12に示すように、蛍光体233に到達する青色光を遮断することで(図5のOFF状態)、フィルタホイール装置240に到達する青色光の強度が増大し、投写光全体の輝度を高めることができる。
【0056】
このように、実施形態に係る投写型映像表示装置1によれば、ダイクロイックミラー220を移動させるという簡単な構成及び動作により、青色光の分光特性を改善するか否か(又は、投写光全体の輝度の低下を許容するか否か)を選択的に切り換えることができる。
【0057】
図13は、第1の実施形態の比較例に係る投写型映像表示装置1Aの例示的な構成を示す概略図である。投写型映像表示装置1Aは、図1のダイクロイックミラー220、駆動装置230、コンデンサレンズ231,232、及び蛍光体233に代えて、ミラー220Aを備える。第1の実施形態によれば、投写型映像表示装置1Aのような既存の装置の構成に対して大幅な変更を必要とすることなく、簡単な構成で、青色光の分光特性を改善することができる。
【0058】
[1-3.変形例]
図14は、第1の実施形態の第1の変形例に係るダイクロイックミラー220Bの例示的な構成を示す概略図である。図1の投写型映像表示装置1は、図5のダイクロイックミラー220に代えて、図14のダイクロイックミラー220Bを備えてもよい。ダイクロイックミラー220Bは、互いに異なるサイズを有する複数のARコート層222,223を有し、青色光が複数のARコート層222,223のうちのいずれに入射するかを切り換えるように移動可能に構成される。これにより、青色光及び緑色光を互いに合成するとき、各色成分光の強度比を変更することができる。
【0059】
ダイクロイックミラーは、互いに異なるサイズを有する3つ以上のARコート層を有してもよい。
【0060】
図15は、第1の実施形態の第2の変形例に係る投写型映像表示装置1Cの例示的な構成を示す概略図である。投写型映像表示装置1Cは、図1の蛍光体233に代えて、蛍光体ホイール装置250を備える。図1の投写型映像表示装置1では、蛍光体233は固定され、その裏面の放熱板(図示せず)により放熱していた。一方、図15の投写型映像表示装置1Cでは、より放熱効果を高めるために、回転する蛍光体ホイール装置250を使用する。
【0061】
図16は、図15の蛍光体ホイール装置250の例示的な構成を示す正面図である。図17は、図15の蛍光体ホイール装置250の例示的な構成を示す側面図である。図16は、コンデンサレンズ232から蛍光体ホイール装置250に光が入射する面を示す。蛍光体ホイール装置250は、中心軸250X、アルミニウム基板251、蛍光体層252、及び駆動モータ253を備える。
【0062】
アルミニウム基板251は、その中央部に駆動モータ253を備え、中心軸250Xの周りに回転制御可能な円形基板である。アルミニウム基板251の表面には、反射膜(図示せず)が形成され、反射膜の表面にさらに蛍光体層252が形成されている。反射膜は、可視光を反射する金属層もしくは誘電体膜である。蛍光体層252には、青色光により励起され、緑色光を発生するCe付活LAG系黄色蛍光体が形成されている。この黄色蛍光体の結晶母体の代表的な化学組織は、LuAl12である。蛍光体層252は円環状に形成している。
【0063】
本明細書では、蛍光体ホイール装置250を「第2の蛍光体ホイール装置」ともいう。
【0064】
蛍光体ホイール装置250は、蛍光体ホイール装置210及びフィルタホイール装置240と同期する必要はなく、ダイクロイックミラー220から蛍光体ホイール装置250に青色光が入射するとき(図5のON状態)、独立して駆動される。蛍光体ホイール装置250は、ダイクロイックミラー220から蛍光体ホイール装置250に青色光が入射しないとき(図5のOFF状態)、停止されてもよい。蛍光体ホイール装置250は、アルミニウム基板251を中心軸250Xの周りに回転させることにより、青色光で励起されることによる蛍光体層252の温度上昇を抑制し、蛍光変換効率を安定に維持することができる。
【0065】
また、蛍光体233又は蛍光体ホイール装置250によって発生された緑色光の長波長側の成分を、フィルタホイール装置240のダイクロイック膜242dでカットすることに代えて、ダイクロイックミラー220のダイクロイックコート層221でカットしてもよい。この場合、ダイクロイックコート層221は、波長472nmを有するS偏光の青色光が入射するとき、その半分ずつを透過及び反射し、また、波長465nmを有するP偏光の青色光が入射するとき、その半分ずつを透過及び反射する。さらに、ダイクロイックコート層221は、カットオフ波長552nmで橙色光及び赤色光をカットするよう構成される。蛍光体233又は蛍光体ホイール装置250によって発生された緑色光は、ダイクロイックコート層221を透過する際、その長波長側の色成分がカットされ、真緑色光の分光特性に変換される。ダイクロイックコート層221を透過した後の緑色光は、例えばCIE1931色空間のxy色度の座標:x=0.158、y=0.686を有する。また、この場合、フィルタホイール装置240のダイクロイック膜242dには、可視光を透過させるARコート膜のウインドウが形成されている。青色光と真緑色光の合成された色成分光は、その分光特性を変化することなく、ダイクロイック膜242dを透過する。このように構成することで、フィルタホイール装置240のコストを削減することが可能となる。
【0066】
[1-4.効果等]
第1の実施形態に係る照明装置及び投写型映像表示装置によれば、LD101と、分離素子と、蛍光体233と、光学系とを備える。LD101は、第1の色成分光を発生する。分離素子は、ある瞬間において、第1の色成分光を部分的に透過し、第1の色成分光を部分的に反射し、かつ、第1の色成分光とは異なる第2の色成分光を透過する。蛍光体233は、分離素子を透過した第1の色成分光により励起されて第2の色成分光を発生する。光学系は、LD101から分離素子に入射して分離素子によって反射された第1の色成分光と、蛍光体233から分離素子に入射して分離素子を透過した第2の色成分光とを互いに合成する。分離素子は、第1の色成分光について可変な透過率及び反射率を有するように構成される。
【0067】
これにより、既存の装置の構成に対して大幅な変更を必要とすることなく、簡単な構成で、青色光の分光特性を選択的に改善することができる。
【0068】
第1の実施形態に係る照明装置及び投写型映像表示装置によれば、光源によって発生される第1の色成分光は直線偏光されてもよい。分離素子は、第1の色成分光を反射しかつ第2の色成分光を透過するダイクロイックコート層221の領域と、第1及び第2の色成分光を透過するARコート層222の領域とを有するダイクロイックミラー220を含み、ARコート層222の領域は、ダイクロイックコート層221の領域の内部に設けられ、光源からダイクロイックミラー220に入射する第1の色成分光のスポットサイズよりも小さなサイズを有してもよい。ダイクロイックミラー220は、第1の色成分光がARコート層222の領域に入射するか否かを切り換えるように移動可能に構成されてもよい。
【0069】
これにより、ダイクロイックミラー220を移動させるという簡単な構成及び動作により、既存の装置の構成に対して大幅な変更を必要とすることなく、簡単な構成で、青色光の分光特性を選択的に改善することができる。
【0070】
また、ダイクロイックミラー220に照射される光は、蛍光体ホイール装置210の開口214を通過し、さらに、コンデンサレンズ111によりほぼ平行かつ広い光束を有する光線に変換されている。従って、蛍光体ホイール装置の回転ムラ及び/又は面ブレが発生しても、投写型映像表示装置1から出力される光の輝度は安定し、安定した色合成が可能な投写型映像表示装置を提供することができる。
【0071】
第1の実施形態に係る照明装置及び投写型映像表示装置によれば、ダイクロイックミラー220は、互いに異なるサイズを有する複数のARコート層222,223の領域を有し、第1の色成分光が複数のARコート層222,223の領域のうちのいずれに入射するかを切り換えるように移動可能に構成されてもよい。
【0072】
これにより、青色光及び緑色光を互いに合成するとき、各色成分光の強度比を変更することができる。
【0073】
第1の実施形態に係る照明装置及び投写型映像表示装置によれば、第1の色成分光は青色光であってもよく、第2の色成分光は緑域を含む色成分光であってもよい。
【0074】
これにより、青色光の分光特性を改善することができる。
【0075】
第1の実施形態に係る照明装置及び投写型映像表示装置によれば、分離素子は、第2の色成分光の緑域の波長よりも長波長の色成分光を反射してもよい。
【0076】
これにより、フィルタリングの機能を分離素子に一体化することにより、後段のフィルタホイール装置などにおいて、そのコストを低減することができる。
【0077】
第1の実施形態に係る照明装置及び投写型映像表示装置によれば、光源は固体光源素子であってもよい。
【0078】
これにより、高輝度の投写型映像表示装置1を提供することができる。
【0079】
第1の実施形態に係る照明装置及び投写型映像表示装置によれば、所定の角度範囲にわたる開口214を有する蛍光体ホイール装置210をさらに備えてもよい。開口を介して光源から分離素子に第1の色成分光が入射する。光学系は、分離素子によって反射された第1の色成分光と、分離素子を透過して開口を通過した第2の色成分光とを互いに合成する。
【0080】
これにより、蛍光体ホイール装置210により、第1の色成分光から他の色成分光を発生することができる。
【0081】
第1の実施形態に係る照明装置及び投写型映像表示装置によれば、蛍光体は蛍光体ホイール装置250に配置されてもよい。
【0082】
これにより、青色光で励起されることによる蛍光体の温度上昇を抑制し、蛍光変換効率を安定に維持することができる。
【0083】
[2.第2の実施形態]
第1の実施形態では、青色光を部分的に透過及び部分的に反射するために、ダイクロイックミラーを用いた。第2の実施形態では、青色光を部分的に透過及び部分的に反射するために、ダイクロイックミラーに代えて、1/2波長板及び偏光ビームスプリッタを用いる場合について説明する。
【0084】
[2-1.構成]
図18は、第2の実施形態に係る投写型映像表示装置1Dの例示的な構成を示す概略図である。投写型映像表示装置1Dは、図1のダイクロイックミラー220及び駆動装置230に代えて、1/2波長板234、偏光ビームスプリッタ235、及び駆動装置230Dを備える。
【0085】
1/2波長板234は、コンデンサレンズ111から到来する青色光の偏光面を所定角度にわたって回転させる。図18の例では、コンデンサレンズ111から1/2波長板234に入射する青色光は、拡散板105からダイクロイックミラー220に入射する青色光と同様に、P偏光を有する。
【0086】
偏光ビームスプリッタ235は、青色光の偏光に応じて青色光を部分的に透過及び部分的に反射する。
【0087】
駆動装置230Dは、1/2波長板234を光軸の周りに回転させる。1/2波長板234を回転させることにより、1/2波長板234から偏光ビームスプリッタ235に入射する青色光の偏光面が変化する。これにより、1/2波長板234及び偏光ビームスプリッタ235は、青色光について可変な透過率及び反射率を有するように構成される。
【0088】
本明細書では、1/2波長板234及び偏光ビームスプリッタ235を「分離素子」ともいう。
【0089】
図19は、図18の偏光ビームスプリッタ235の例示的な透過特性を示すグラフである。偏光ビームスプリッタ235は、波長465nmを有するS偏光の青色光が入射するとき、その半分ずつを透過及び反射し、また、波長442nmを有するP偏光の青色光が入射するとき、その半分ずつを透過及び反射する。偏光ビームスプリッタ235は、緑色光及び赤色光については、偏光にかかわらず、その96%以上を透過する。
【0090】
[2-2.動作]
図20は、図18の投写型映像表示装置1Dにおいて青色光の分光特性を改善する場合における青色光の経路を示す概略図である。図21は、図18の投写型映像表示装置1Dにおいて青色光の分光特性を改善しない場合における青色光の経路を示す概略図である。具体的には、1/2波長板234から偏光ビームスプリッタ235に入射する青色光のすべてをS偏光させることで、図21に示すように、青色光はすべて偏光ビームスプリッタ235により反射される。一方、1/2波長板234を回転させ、S偏光された青色光にP偏光された青色光を混ぜることで、図20に示すように、青色光の一部が偏光ビームスプリッタ235を透過し、コンデンサレンズ231,232を介して蛍光体233に入射する。蛍光体233によって発生された緑色光は、第1の実施形態の場合と同様にダイクロイックミラー106まで到達し、青色光の分光特性を改善することができる。このように、1/2波長板234の角度を変化させることで、1/2波長板234を透過する青色光の偏光特性(S偏光及びP偏光の混合比率)が変化する。これにより、偏光ビームスプリッタ235の反射率及び透過比が変化する。
【0091】
1/2波長板234の回転角度に応じて、CIE1931色空間のxy色度の座標は、図10の破線に沿って任意に変化させることができる。
【0092】
[2-3.効果等]
第2の実施形態に係る照明装置及び投写型映像表示装置によれば、光源によって発生される第1の色成分光は直線偏光される。分離素子は、第1の色成分光の偏光面を所定角度にわたって回転させる1/2波長板234と、第1の色成分光の偏光に応じて第1の色成分光を部分的に透過及び部分的に反射する偏光ビームスプリッタ235とを含む。1/2波長板234は回転可能に設けられる。
【0093】
これにより、1/2波長板234を回転させるという簡単な構成及び動作により、既存の装置の構成に対して大幅な変更を必要とすることなく、簡単な構成で、青色光の分光特性を選択的に改善することができる。
【0094】
[他の実施形態]
以上のように、本開示における技術の例示として、実施形態を説明した。そのために、添付図面及び詳細な説明を提供した。
【0095】
したがって、添付図面及び詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0096】
本明細書では、青色光の分光特性を改善する場合について説明したが、他の色成分光(赤色光、緑色光など)の分光特性も同様に改善可能である。
【0097】
本明細書では、光源としてレーザダイオードを用いる場合について説明したが、光源として例えば発光ダイオードを用いてもよい、これにより、照明装置及び投写型映像表示装置の輝度を低減する場合、そのコストを低減することが可能となる。
【0098】
図5及び図14では、ダイクロイックミラー220,220Bが直線状に移動する場合について説明したが、ダイクロイックミラーは何らかの回転軸の周りに回転移動してもよい。
【0099】
ダイクロイックミラー220,220B及び1/2波長板234は、駆動装置に代えて、手動で移動又は回転されてもよい。
【0100】
また、上述の実施形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲又はその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本開示は、照明装置及び投写型映像表示装置において、既存の装置の構成を大幅に変更することなく、ある色成分光の分光特性を改善することができる。
【符号の説明】
【0102】
1,1A,1C,1D…投写型映像表示装置、
101…レーザダイオード(LD)、
102…コリメートレンズ、
103…コンデンサレンズ、
104…凹レンズ、
105,114…拡散板、
106…ダイクロイックミラー、
107,108,111…コンデンサレンズ、
112…凹レンズ、
113,116…反射ミラー、
115…凸レンズ、
117…コンデンサレンズ、
121…ロッドインテグレータ、
122,123,124…リレーレンズ、
125…内部全反射プリズム(TIRプリズム)、
125a,125b…プリズム、
126…ディジタルマイクロミラーデバイス(DMD)、
210…蛍光体ホイール装置、
210X…中心軸、
211…アルミニウム基板、
212…蛍光体層、
213…駆動モータ、
214…開口、
220,220B…ダイクロイックミラー、
220A…ミラー、
221…ダイクロイックコート層、
222…ARコート層、
230,230D…駆動装置、
231,232…コンデンサレンズ、
233…蛍光体層、
234…1/2波長板、
235…偏光ビームスプリッタ、
240…フィルタホイール装置、
240X…中心軸、
241…透明基板、
242,242a,242b,242c,242d…ダイクロイック膜、
243…駆動モータ、
250…蛍光体ホイール装置、
250X…中心軸、
251…アルミニウム基板、
252…蛍光体層、
253…駆動モータ、
300…投写光学系、
400…スクリーン。
図1
図2
図3
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図5
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