(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】インクジェットヘッド
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20230105BHJP
B41J 2/16 20060101ALI20230105BHJP
【FI】
B41J2/14 301
B41J2/14 613
B41J2/16 503
(21)【出願番号】P 2018221445
(22)【出願日】2018-11-27
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】入江 一伸
(72)【発明者】
【氏名】吉田 英博
(72)【発明者】
【氏名】大塚 巨
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-188653(JP,A)
【文献】特開2005-280247(JP,A)
【文献】特開平06-270403(JP,A)
【文献】特開2009-096133(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0018018(US,A1)
【文献】特開2013-006404(JP,A)
【文献】特開2009-113304(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットヘッドであって、
圧電素子と、
振動板と、
前記圧電素子と前記振動板との間に配置され、前記圧電素子と前記振動板とを接合する接着材層と、を備え、
前記接着材層は、前記振動板よりも硬度が高いビーズを含有しており、かつ前記接着材層の膜厚が、前記ビーズの粒径よりも小さ
く、
前記圧電素子は、前記振動板に対向する接合面に窪み部を有し、
前記ビーズのうち少なくとも一部は、前記窪み部の中に配置される
インクジェットヘッド。
【請求項2】
前記振動板は樹脂によって構成される
請求項1に記載のインクジェットヘッド。
【請求項3】
前記振動板は、
振動部と、
前記振動部よりも前記圧電素子側に凸状に厚くなっている接合部と、を備え、
前記接着材層により前記接合部と前記圧電素子とが接合される
請求項1または2に記載のインクジェットヘッド。
【請求項4】
前記ビーズは、粒径が異なる第1ビーズ、および第2ビーズを含み、
前記第2ビーズの粒径よりも大きい前記第1ビーズの粒径よりも、前記膜厚は小さい
請求項1乃至3記載のインクジェットヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はインクジェットヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスや光学デバイスの製造工程の中で、基材上への微細パターンの形成を印刷によって実現する工程が多用されている。微細パターンの印刷においては、インク化された材料の吐出に関与する一連の流路、圧電素子、および振動板などが小型化、高密度化される必要がある。また従来、圧電素子を小型化、高密度化するための技術が公開されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1では、圧電素子を駆動するための引き出し配線において、導電層を接着する密着層の幅を狭くすることで、高密度に圧電素子を配置しても隣り合う引き出し配線どうしの短絡を抑制できる液体噴射ヘッドを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-027711号公報
【文献】特開平10-34919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、インクジェットヘッドを用いたインクの吐出において、振動板と圧電素子とは確実に接合される必要がある。例えばこのような接合の信頼性が低い場合、圧電素子から振動板が剥離し、設計上のインク吐出精度が維持できないといった問題が生じうる。
【0006】
そこで本開示は、信頼性の高いインクジェットヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示におけるインクジェットヘッドの一態様は、圧電素子と、振動板と、前記圧電素子と前記振動板との間に配置され、前記圧電素子と前記振動板とを接合する接着材層と、を備え、前記接着材層は、前記振動板よりも硬度が高いビーズを含有しており、かつ前記接着材層の膜厚が、前記ビーズの粒径よりも小さい。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様によれば、信頼性の高いインクジェットヘッドが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、従来のインクジェットヘッドの拡大断面図である。
【
図2】
図2は、実施の形態1に係るインクジェットヘッドの断面図である。
【
図3】
図3は、実施の形態2に係るインクジェットヘッドの断面図である。
【
図4】
図4は、実施の形態3に係るインクジェットヘッドの拡大断面図である。
【
図5】
図5は、実施の形態4に係るインクジェットヘッドの拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(開示の基礎となった知見)
低コストで微細パターンを形成する方法として、所望するパターンの材料をインク化して基材上に印刷を行う印刷法、とりわけ印刷版が不要なインクジェット法が注目されている。しかし近年、インクジェット法で形成するパターンの微細化への要求に伴ってノズル列のノズル間ピッチが小さくなり、それに伴いインクジェットヘッドを構成する各部材の接合部の面積が小さくなっている。
【0011】
その結果、各部材の接合部の接合強度が低下しやすくなり、中でも圧電素子を用いたインクジェットヘッドにおいて、インク室内に圧力を発生するために駆動する圧電素子と、駆動の変位を振動としてインク室に伝達する振動板との間の接合部は、圧電素子の駆動に合わせ高速で振動している。したがって、圧電素子と振動板との間の接合部では、特に接合強度の低下、ひいては圧電素子と振動板との剥離を起こしやすく信頼性が低いという課題がある。
【0012】
この課題に対して以下のような先行技術が公開されており、
図1を用いて説明する。
図1は、従来のインクジェットヘッド100aにおける圧電素子と振動板との接合箇所の拡大断面図である。
【0013】
特許文献2では、
図1に示すように、振動板8aの接合部82aの圧電素子5aとの接合面を粗化するという技術が公開されている。当該技術では、接合部82aの表面の粗化により、接着材が粗化された表面(接合面)に入り込んで硬化され、接着材層9aを形成するため、アンカー効果を得ることで接合強度を高めることができるとしている。しかしその粗化工程は、振動板8aを形成後、化学的、または電気化学的処理を用いて行うため煩雑である。また、振動板8aが数μm乃至数十μmと極めて薄い部材のため、その粗化処理量のプロセスマージンが狭くなりプロセスのコントロールが困難である。つまり、プロセスにばらつきがあると接合部82aの圧電素子5aとの接合面が粗化されすぎて膜厚が薄くなりすぎ、ピンホールが発生したり、粗化が不足して十分な接合強度が得られなかったりするという課題がある。
【0014】
本開示は、上記従来の技術における課題を解決するもので、粗化工程などの追加工程なしに、かつ低コストで振動板と圧電素子との接合強度を高め、信頼性の高いインクジェットヘッドを提供することを目的とする。
【0015】
上記目的を達成するため、本開示の一態様におけるインクジェットヘッドは、圧電素子と、振動板と、圧電素子と振動板との間に配置され、圧電素子と振動板とを接合する接着材層と、を備え、接着材層は、振動板よりも硬度が高いビーズを含有しており、かつ接着材層の膜厚が、ビーズの粒径よりも小さい。
【0016】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素の内、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0017】
また説明に用いられる各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては、同一の符号を付し、重複する説明は省略または簡略化される場合がある。
【0018】
(実施の形態1)
はじめに、
図2を用いて本開示における実施の形態1について説明する。
図2は、本開示の実施の形態1に係るインクジェットヘッド100の断面図を示している。
【0019】
<インクジェットヘッド100>
図2の(a)は、本開示のインクジェットヘッド100の断面図であり、複数のノズル2の配列方向、かつインクの吐出方向に沿う面で切断した断面を示している。なお、インクジェットヘッド100のうち、複数のノズル2の配列方向における両端部は、破断され省略されている。本実施の形態のインクジェットヘッド100は、少なくともノズルプレート1と、流路形成基板4と、圧電素子5と、振動板8と、基台10と、を備える。
【0020】
またノズルプレート1上には、複数のノズル2が形成されている。流路形成基板4は隔壁を備え、当該隔壁によって、ノズル2に連通する圧力発生室3を画成している。圧電素子5は、各圧力発生室3に対応する領域に設けられた駆動部6と、流路形成基板4の各隔壁に対応する領域に設けられた柱部7とを有する。
【0021】
振動板8は、流路形成基板4と圧電素子5とを隔てる位置に設けられる。インクジェットヘッド100はさらに、これらの部材の外周を保持し、流路形成基板4へのインク供給のための流路を有する筐体(図示せず)を備える。
【0022】
また、
図2の(a)の振動板8と圧電素子5とを接合する部分(図中に示す領域b)を拡大したものが
図2の(b)である。
図2の(b)に示すように、振動板8と圧電素子5との接合には、接着材層9が用いられる。接着材層9には、図中に示すようにビーズ11が含まれる。
【0023】
<ノズルプレート1およびノズル2>
ノズルプレート1は、基板上に複数のノズル2を所望の数と間隔で形成したものである。ノズルプレート1上に、複数のノズル2を形成する方法としては、レーザ加工、ドリル加工、プレス加工、エッチング法、および電鋳法などがある。ノズル2の形状の加工自由度、および形状制御のし易さ等を考えるとノズル2はレーザ加工によって形成されることが好ましい。
【0024】
またノズルプレート1の被塗布物に対向する側の表面には、撥水膜を形成してもよい。このような撥水膜は、インク吐出時に、ノズルプレート1表面のうちノズル2近傍に、濡れ広がる等によりわずかに染み出したインクを、ノズル2内に戻す作用がある。例えばノズル2近傍に染み出したインクが残ったままの場合、インク表面のメニスカスが崩れ、次のインク吐出に悪影響を及ぼすため、撥水膜の形成は安定した吐出の維持に対して有効である。撥水膜を形成する方法としては、フッ素を有するアルコキシシランの溶液をノズルプレート1に塗布し、焼成を行うことで形成する方法や、フッ素を有するモノマーの気層重合によって形成する方法などがあるが、これらに限定されるものではない。また撥水膜に用いる材料にも特に限定はない。
【0025】
ノズルプレート1の材料には、例えば、ステンレスなどの金属やセラミックの薄板を用いることができる。ここでノズルプレート1は、インクジェットヘッド100の中で最も被印刷ワーク(つまり被塗布物)側に接近している部材である。したがって、ノズルプレート1をセラミックの薄板で作製した場合、何らかのトラブルでインクジェットヘッド100が被印刷ワークに接触すると、ノズルプレート1が割れてしまう可能性があるため、ノズルプレート1はステンレスなどの金属で形成される方が好ましい。なお、インク吐出において、このようなトラブルが起こる可能性がない場合は、ノズルプレート1は上述のいかなる材料を用いて構成してもよい。
【0026】
また、ノズルプレート1に形成される複数のノズル2の数および間隔は、作製したい電子デバイス、光学デバイス等、用途のパターン形状によって決まるが、電子デバイス、光学デバイス等の高性能化のために、そのパターン形状は微細化傾向にある。したがって、インクジェットヘッド100に求められるノズル2の数は増大し、また間隔は小さくなるため、ノズル2が高密度化される必要がある。特に、ノズル2の間隔は、例えば0.1mm乃至0.2mm程度と、非常に高密度であることが要求されうる。また、ノズル径も微細化するパターン形状に応じて小径化し、例えば、10μm乃至20μmといった非常に小さいノズル2が必要になってくる。
【0027】
<圧力発生室3および流路形成基板4>
流路形成基板4は、ノズル配置に応じた隔壁が基板に等間隔で設けられた部材である。それぞれの隔壁と隔壁との間に形成される空間が圧力発生室3となり、圧力発生室3には、
図2の紙面手前奥方向に配置される共通流路(図示せず)からインクが供給される。流路形成基板4も同様に、レーザ加工、およびエッチング法などの手法により形成することができる。
【0028】
また、流路形成基板4の構造によっては、別々に加工した複数の基板を重ね合わせて一枚の流路形成基板4を形成するという方法で製造してもよい。ノズルプレート1と流路形成基板4とは、金属接合や接着材などによって接合することができる。接着材を用いる場合、接着材の種類は特に問わないが、熱硬化型接着材、2液混合型接着材、紫外線硬化型接着材、嫌気性接着材、またはこれらの併用効果により硬化する接着材などを用いることができる。
【0029】
流路形成基板4の材料は、ステンレスなどの金属やセラミックなどを用いることができるが、熱硬化接着材を用いてノズルプレート1と接合する場合、熱膨張係数の差によるズレや反りを防ぐために、ノズルプレート1と流路形成基板4とは同一の材料であることが好ましい。またノズルプレート1と流路形成基板4とは、ステンレス材料を用いて構成されることがより好ましい。
【0030】
<圧電素子5>
圧電素子5は、表面電極、裏面電極、及び内部電極と、圧電体とによって構成される。より具体的には、圧電素子5は、圧電体、表面電極に接続された内部電極、圧電体、裏面電極に接続された内部電極の順に積層された単位素子をさらに複数積層することによって構成される。したがって、表面電極、及び裏面電極それぞれに接続された内部電極どうしは、互いに噛み合う櫛歯状の二種の内部電極を形成し、チタン酸ジルコン酸鉛などで構成された圧電体がこれらの間に介在する形に積層される。
【0031】
表面電極、及び裏面電極は、積層された圧電体層が成す長尺形状の側面に配置され、二種の内部電極それぞれについて、各単位素子に含まれる同種の内部電極を電気的に接続する。さらに具体的には、ここでは積層された圧電体層は直方体であり、直方体の側面のうち、互いに背向する面のそれぞれ(
図2では紙面の表裏面)に表面電極、及び裏面電極が形成されている。
【0032】
言い換えると、二種の内部電極は、積層された単位素子を構成する各層一層ごとに、互い違いに一部分が重ねられるように形成されており、長手方向に沿って二種の内部電極が交互に表面電極と裏面電極とに接続するように配置されている。
【0033】
圧電素子5には、表面電極に接続された内部電極と、裏面電極に接続された内部電極とが長手方向に沿って交互に配置されているため、表面電極、及び裏面電極に電位差を発生させると、その電位差に応じて圧電素子5が
図2の紙面上下方向に伸縮する。
【0034】
また、この圧電素子5にはノズル2の配置に応じた複数のチャンネルが列設されている。各々のチャンネルの間には溝が存在しているが、このような溝は圧電素子5を一体で形成した後、上記複数のチャンネルを分割するためにダイシング加工を行うことで形成されるものであり、各チャンネル間はこの溝により離間絶縁されている。また、このチャンネルは、フレキシブルケーブルに接続され、入力信号に応じて駆動し、チャンネルの変位を生じる、圧力発生室3の下に配置された駆動部6と、流路形成基板4の隔壁の下に配置され、流路形成基板4を支持する柱部7とから構成される。なお、駆動部6と、柱部7とは交互に配置されている。この圧電素子5は、セラミック、または金属等によって構成された土台となる基台10によって支えられている。
【0035】
<振動板8>
振動板8は、圧電素子5の駆動部6で発生した変位によって振動し、圧力発生室3内部の容積を変動させることで、圧力発生室3内部に充填されたインクに圧力を発生させ、ノズル2よりインクを吐出させる。
【0036】
ここで、本実施の形態において振動板8は樹脂によって構成されている。振動板8を柔軟な樹脂で形成することにより、振動板8と後述の圧電素子5との接合時に接着材に混錬したビーズの頂部は、樹脂製の振動板8にわずかに食い込む。これにより接着材層9はアンカー効果を得ることができ、接着材層9と振動板8との接着強度を高めることができる。
【0037】
振動板8を構成する樹脂の材料としては特に制約はないが、振動板8の圧力発生室3側はインクに接する面であるため、耐薬品性の高い材料が好ましい。例えば、このような材料としては、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、フッ素樹脂などを例示することができる。特にポリイミドは電子回路用途で広く用いられており、コーティングやエッチングなどフォトリソグラフィの技術を用いて微細加工が容易に行える製品も開発されており、本開示の用途に好適に用いることができる。なお、インクに用いる溶媒や機能性材料等によって最も好適な振動板8の材料は変化するため、限定されない種々の材料から適宜選択して振動板8を構成することができる。
【0038】
また、振動板8の厚さは、圧電素子5の駆動部6で発生した変位によって振動可能であり、圧力発生室3内部の容積を変動させることで、圧力発生室3内部に充填されたインクに圧力を発生させることのできる膜厚であれば特に制約は無い。例えば、1μm以上100μm以下程度のものであればよく、振動板8を構成する樹脂の柔らかさと、振動板8によるインク吐出特性から最適な膜厚を選定することができる。
【0039】
また、振動板8の硬度は後述するビーズ11が食い込むことができる硬度である。これは例えば、ヤング率が1GPa以上10GPa以下の振動板8であれば好適に用いることができる。振動板8のヤング率が1GPaよりも小さい場合、後述するビーズ11が振動板8に食い込み易すぎて、振動板8を接合する際の押圧力の制御が困難になり、また、10GPaよりも大きい場合、ビーズ11が振動板8に十分に食い込まなくなる。
【0040】
<接着材層9>
接着材層9は、圧電素子5と振動板8とを接合する際に用いられる接着材が硬化することで形成される所定の膜厚(層厚)を有する接合層である。したがって接着材層9は、圧電素子5と振動板8との間に配置される。なお、本開示において接着剤と接着材層9とは、未硬化のものを接着材と記述し、塗布され、所定の膜厚で硬化した後のものを接着材層9と記述する。
【0041】
接着材層9に用いることができる接着材の種類としては、熱硬化型接着材、2液混合型接着材、紫外線硬化型接着材、嫌気性接着材、またはこれらの併用効果により硬化する接着材などを用いることができる。特に熱硬化型接着材の一種であるエポキシ接着材は、硬化後に比較的高硬度な接着材層9を形成できるため、圧電素子5の変位を、減衰することなく振動板8に伝達することができ、好適に用いることができる。ここで、接着材層9は、前述したようにビーズ11を含有している。
【0042】
<ビーズ11>
接着材層9に含有されるビーズ11は、振動板8よりも硬度が高いビーズであり、硬化前の接着材に混錬して用いられる。接着材に混錬されるビーズ11としては、ジルコニア、アルミナ、およびシリカなどのセラミックビーズ、もしくはガラスビーズ、もしくは金属ビーズなどを用いることができる。特に液晶ディスプレイのスペーサビーズとして用いられるビーズは、粒径の精度が高く、好適に用いることができる。このようなビーズの一例としては、「ハイプレシカ(宇部エクシモ(株)製)」などを挙げることができる。
【0043】
ビーズ11の粒径は形成する接着材層9の厚み(膜厚91)によって決められるが、例えば、数μm以上数十μm以下ものを用いることができる。なお、接着材層9の膜厚91と、ビーズ11の粒径との関係は、接着材層9の膜厚91が、ビーズ11の粒径よりも小さい。
【0044】
また、ビーズ11の硬度は前述した振動板8に食い込むことができる硬度である。これは例えば、ヤング率が30GPa以上のビーズ11であれば好適に用いることができる。なおビーズ11のヤング率が30GPa以下の場合は、後述するように振動板への食い込みが不足する。
【0045】
<効果>
上記ビーズ11を混錬した接着材は、スクリーン印刷やフレキソ印刷、グラビア印刷などによって圧電素子5、または振動板8に塗布される。また、圧電素子5側に接着材を塗布する場合は、接着材はベタ膜として平面に塗布され、その後圧電素子5が当該平面に押し当てられ、当接する面に接着材が転写されることによって、塗布されることもできる。
【0046】
その後、圧電素子5と振動板8との位置合わせを行い、押圧を行った後、用いた接着材それぞれに適した硬化方法によって、接着材は硬化され、圧電素子5と振動板8とを接合する接着材層9を形成する。
【0047】
ここで
図2の(b)に示すように、押圧の際に、ビーズ11の振動板8側の頂部は、ビーズ11よりも柔軟な振動板8に食い込んで表面を変形させ、振動板8には凹部90が形成され、さらに凹部90に接着材が入り込む。
【0048】
ここで、接着材層9の膜厚91は、ビーズ11が食い込んだ凹部90を考慮しないものとする。即ち、膜厚91は圧電素子5と振動板8との対向面どうしの離間距離である。したがって、接着材層9の膜厚91は、ビーズ11が食い込んだ分だけビーズ11の粒径よりも小さくなる。
【0049】
凹部90に入り込んだ接着材により、硬化した接着材層9は、アンカー効果を得ることができ、振動板8に対する接着強度を高めることができる。即ち、塗布された接着材は硬化後、接合に用いられる膜厚91を有する圧電素子5と振動板8との対向面間の層と、凹部90に入り込み、アンカー効果を得る部分とを形成する。したがって、上記のアンカー効果により、圧電素子5に接着された接着材層9は振動板8と強固に接着されるため、圧電素子5と振動板8との接合強度が高く、信頼性の高いインクジェットヘッド100が実現される。
【0050】
以上説明したように、本実施の形態におけるインクジェットヘッド100は、圧電素子5と、振動板8と、圧電素子5と振動板8との間に配置され、圧電素子5と振動板8とを接合する接着材層9と、を備え、接着材層9は、振動板8よりも硬度が高いビーズ11を含有しており、かつ接着材層9の膜厚91が、ビーズ11の粒径よりも小さい。
【0051】
このような構成のインクジェットヘッド100は、接着材層9が振動板8に対してアンカー効果により強固に接着されるため、振動板8が接着材層9から剥離することが抑制される。よって接着材層9が接着されたもう一方の圧電素子5と、振動板8との接合強度が高くなり、信頼性の高いインクジェットヘッドが実現される。
【0052】
また、振動板8が接着材に混錬されたビーズ11に押圧された際に、ビーズ11より硬度が低い(変形容易な)振動板8は変形し、凹部90が形成されるため、凹部90に接着材が入り込む。よって凹部90に入り込んだものを含めて接着材が硬化し、接着材層9が形成されるため、振動板8に粗面化の処理を必要とせず、インクジェットヘッド100の製造が容易に実現可能である。
【0053】
また例えば、振動板8は樹脂によって構成されてもよい。
【0054】
これにより、ビーズ11として好適に用いることのできるセラミック、ガラス、または金属等に比べ、硬度の低い樹脂製の振動板8が構成可能であり、振動板8よりも硬度の高いビーズ11の選択可能性を広げることができる。
【0055】
(実施の形態2)
次に
図3を用いて、本開示における実施の形態2について説明する。
図3は、本開示の実施の形態2に係るインクジェットヘッド100bを示している。
【0056】
<インクジェットヘッド100b>
図3の(a)は、本開示のインクジェットヘッド100bの断面図であり、
図2の(a)と同一断面における断面を示している。
【0057】
本実施の形態のインクジェットヘッド100bは、少なくともノズルプレート1と、流路形成基板4と、圧電素子5と、振動板8bと、基台10とを備える。
【0058】
またノズルプレート1上には、複数のノズル2が形成されている。流路形成基板4は隔壁を備え、当該隔壁によって、ノズル2に連通する圧力発生室3が画成されている。圧電素子5は、各圧力発生室3に対応する領域に設けられた駆動部6と、流路形成基板4の各隔壁に対応する領域に設けられた柱部7とを有する。
【0059】
振動板8bは、流路形成基板4と圧電素子5とを隔てる位置に設けられる。インクジェットヘッド100はさらに、これらの部材の外周を保持し、流路形成基板4へのインク供給のための流路を有する筐体(図示せず)を備える。
【0060】
以上は実施の形態1と同じ構成であるが、本実施の形態は実施の形態1に対して、振動板8bの構成が異なっている。より具体的には、振動板8bは振動部81、および圧電素子5との接合形状に対応し、振動部81よりも圧電素子5側に凸状に厚くなっている接合部82を備えている。よって接着材層9bは圧電素子5と振動板8bの接合部82との間に配置され、接着材層9bにより接合部82と圧電素子5とが接合される。
【0061】
図3の(a)の振動板8bと圧電素子5との接合部(図中に示す領域b2)を拡大した図が
図3の(b)である。振動板8bと圧電素子5との接合には接着材層9bとビーズ11とが用いられる。なお、比較例として接合部82が無い場合におけるインクジェットヘッドの領域b2と同様部分の拡大図(即ち実施の形態1と同様の構成)を
図3の(c)に示す。
【0062】
実施の形態1において、振動板8の厚みは、例えば、1μm乃至100μm程度である。前述したように押圧の際に、ビーズ11の振動板8側の頂部は、ビーズ11よりも柔軟な振動板8に食い込んで表面を変形させ、振動板8には凹部90が形成される。この際例えば、振動板8が比較的薄い場合、
図3の(c)のように食い込んだ分の振動板8の厚みは、振動板8の流路形成基板4側の表面に微小な変形83として現れる。このため、振動板8の振動特性、即ちインクジェットヘッド100の吐出特性は、ノズル2ごとの変形83の程度によってばらついてしまう恐れがある。
【0063】
上記の変形83は振動板8の厚みが厚いほど小さくなり、吐出特性のばらつきは抑制されるものの、振動板8の厚みを厚くすると振動板8の剛性が増すため、圧電素子5の変位が伝達しにくくなってしまう。
【0064】
<効果>
そこで本実施の形態では、前述したように振動板8bは、
図3の(b)のように、振動部81、ならびに圧電素子5との接合位置、および形状に対応し振動部81よりも圧電素子5側に凸状に厚くなっている接合部82とを備える。これにより、振動部81の厚みを厚くせずにビーズ11の食い込みによる振動板8bの流路形成基板4側の表面の変形83を抑制することが可能である。
【0065】
また、この時の接着材層9bの膜厚92はビーズ11の粒径よりも小さい。なお実施の形態1と同様に、接着材層9bの膜厚92は、ビーズ11が食い込んだ凹部90bを考慮せず、圧電素子5と振動板8bとの対向面どうしの離間距離によって規定される。
【0066】
さらに、上記構成とすることにより、圧電素子5と振動板8bとの接合時の押圧力にばらつきが発生した場合、接着材は押しつぶされすぎることで、圧電素子5の幅(ノズル2の配列方向における圧電素子5の長さ)よりも広がってはみ出し、はみ出し部93が発生することが考えられる。また、接着材の塗布量のぶれ等でもこのようなはみ出し部93の形成が想定される。このはみ出し部93は、接合部82の振動部81に対する高さによって振動部81に接しないように設計することが可能である。よって接着材が硬化した際に振動部81の動作を阻害して振動特性をばらつかせることを抑制できるという効果も同時に得ることができる。
【0067】
なお、以上のような、振動部81と接合部82とから構成される樹脂製の振動板8bを作製する方法としては、例えばフォトリソグラフィによって樹脂フィルムをハーフエッチして作製する方法、感光性ポリイミドのような感光性樹脂のパターニングを積層して作製する方法、インプリントやエンボスなどの工法で金型から樹脂フィルムに接合部82の形状を転写して作製する方法などを挙げることができる。
【0068】
以上説明したように、本実施の形態におけるインクジェットヘッド100bの備える振動板8bは、振動部81と、振動部81よりも圧電素子5側に凸状に厚くなっている接合部82と、を備え、接着材層9bにより接合部82と圧電素子5とが接合される。
【0069】
(実施の形態3)
次に、
図4を用いて本開示における実施の形態3について説明する。
図4は、本開示の実施の形態3に係るインクジェットヘッド100cの断面図を示している。
【0070】
<インクジェットヘッド100c>
図4は、
図3における領域b2を拡大したもの(即ち
図3の(b)と同じ箇所)であるが、
図3の(b)と比較すると、
図4では、圧電素子5cは、振動板8bに対向する接合面(振動板8b側の表面)に窪み部51を有する。つまり、本実施の形態は、実施の形態2に比べ圧電素子5cの接合面に窪み部51を有する(形成されている)点で異なっている。このような窪み部51は接着材に混錬されたビーズ11の一部が入り込める大きさになっている。したがって、ビーズ11のうち少なくとも一部は、窪み部51の中に配置される。
【0071】
このため、接着材層9cに含まれるビーズ11は圧電素子5cの表面(接合面のうち窪み部51を除く箇所)に位置するビーズ11と窪み部51に位置するビーズ12とがある点で異なっている。なお後述するが、圧電素子5cの表面に位置するビーズ11は実施の形態1、および実施の形態2と同様に押圧力によって振動板8bに食い込むものである。
【0072】
<効果>
以上に説明した窪み部51の形状や配置密度を適切に調整することで、圧電素子5cと振動板8bとを接合する押圧の際に、圧電素子5cの表面に位置するビーズ11の振動板8b側の頂部は、ビーズ11よりも柔軟な振動板8の接合部82に食い込む。ビーズ11の食い込みは振動板8bの接合部82の表面を変形させ、振動板8bには凹部90bが形成される。一方、窪み部51に位置するビーズ12は、振動板8b側の頂部において、振動板8の接合部82に接するが、食い込まない。本実施の形態ではこのような構成の接着材層9cを形成させることが可能になる。
【0073】
この時の接着材層9cの膜厚94は圧電素子5cの表面に位置するビーズ11の粒径よりも小さい。また、窪み部に位置するビーズ12の粒径に対しても、膜厚94は小さい。つまり、ビーズ11が振動板8bに食い込むとともに、ビーズ12は、圧電素子5c側に食い込んだような形態となり、窪み部51にも接着材が入り込む。
【0074】
なお、上記の実施の形態と同様に、接着材層9cの膜厚94は、ビーズ11が食い込んだ凹部90bを考慮せず、また窪み部51も考慮しない圧電素子5cと振動板8bとの対向面どうしの離間距離によって規定される。以上のような構成にすることで、圧電素子5cの表面に位置するビーズ11によって発生した凹部90bに食い込んだ接着材層9cは、振動板8bに対してアンカー効果を得ることができ、接着強度を高めることができる。さらに接着材層9cは、窪み部51に入り込み硬化された接着材も含むため、圧電素子5cに対してもアンカー効果を得ることができる。
【0075】
さらに、窪み部51に位置するビーズ12の存在によって、圧電素子5cと振動板8bとを接合する押圧における、膜厚94のコントロールが容易になる。より詳しくは、圧電素子5cと振動板8bとを接合する押圧力を加えることによって膜厚94を徐々に小さく設定していくが、膜厚94の設定がビーズ12の振動板8b側の頂部の位置において、加えた圧力に対する応力は変化する。つまり膜厚94の設定がビーズ12の頂部の位置に達したことがトルク管理等により容易に確認でき、膜厚94のコントロールが容易になる。
【0076】
このような膜厚94のコントロール容易性は、圧電素子5cと振動板8bとを接合する押圧力によって接着材が押しつぶされすぎて、圧電素子5cの幅よりも押し広げられてしまうという不具合を抑制することを可能にする。
【0077】
なお、圧電素子5cは振動板8bを構成する樹脂のような、表面が平滑な材料ではなく、セラミックの焼結体であるため、もともと凹凸構造があり、当該凹凸構造の研削によって接合可能になるまで平滑に加工されている。このため、研削による平滑化の加工度合いを適正化する(凹凸構造を残存させる)だけで、圧電素子5cには接合に適した平滑面(表面)を形成すると同時に一部に窪み部51を形成する(残存させる)ことが可能である。したがって、窪み部51の形成においては、窪み部51を形成するための追加の工程を特に必要とせず、さらに研削の一部省略による加工時間の短縮も想定しうる。
【0078】
なお、
図4の振動板8は
図3の(b)と同様、接合部82がある場合を描いているが、本実施の形態は接合部82が無く、圧電素子5cと振動板とが接合される構成でも構わない。
【0079】
以上説明したように、本実施の形態におけるインクジェットヘッド100cの備える圧電素子5cは、振動板8bに対向する接合面に窪み部51を有し、ビーズ11、および12のうち少なくとも一部(ビーズ12)は、窪み部51の中に配置される。
【0080】
これにより、窪み部51に入り込んだ接着材が硬化することにより、接着材層9cは圧電素子5cに対するアンカー効果を得ることができ、圧電素子5cとの接着強度を高めることができる。また、窪み部51に入り込んだビーズ12は、振動板8bの接合部82の圧電素子5c側表面が接する位置で膜厚94を容易にコントロールできる。
【0081】
(実施の形態4)
さらに以下では、
図5を用いて、本開示における実施の形態4について説明する。
図5は、本開示の実施の形態4に係るインクジェットヘッド100dを示している。
【0082】
<インクジェットヘッド100d>
図5は、
図3における領域b2を拡大したもの(即ち
図3の(b))、および
図4と同じ箇所について示した断面図である。
図5には、
図3の(b)に示したビーズ11が単一の粒径のものによる構成ではなく、粒径分布があるもの、または単一の粒径のビーズ11等を複数混ぜたものなどを用いた場合における、振動板8bと圧電素子5とが接合されている部分を示している。
【0083】
つまり、本実施の形態に用いられるビーズは、粒径が異なる第1ビーズ13、および第2ビーズ14を少なくとも含む。この点が以上に述べた他の実施の形態に対して異なっている。
【0084】
複数の粒径のビーズの中で最も粒径の大きい第1ビーズ13と、当該第1ビーズ13よりも粒径が小さい第2ビーズ14とを混錬した接着材は、
図2の(b)等と同様に圧電素子5、また接合部82を備える構成においては接合部82のいずれかに塗布される。その後、圧電素子5と振動板8bとの位置合わせを行い、さらに押圧を行った後、用いた接着材それぞれに適した硬化方法によって、接着材は硬化され、圧電素子5と振動板8bとを接合する。
【0085】
なお、
図5における振動板8bは
図3の(b)と同様に、接合部82がある場合で描いているが、本実施の形態は接合部82が無く、圧電素子5cと振動板とが接合される構成でも構わない。
【0086】
<効果>
第1ビーズ13と、第2ビーズ14との濃度(ビーズ数濃度)を適切に調整することで、圧電素子5と振動板8bとを接合する押圧の際に第1ビーズ13の振動板8b側の頂部は第1ビーズ13よりも柔軟な振動板8bに食い込み、振動板8bの表面に凹部90bを形成する。一方、第2ビーズ14は、の振動板8b側の頂部において、振動板8bに接するが、食い込まない。
【0087】
つまり、第1ビーズ13、第2ビーズ14、及び接着材層9dの膜厚95の関係は、第2ビーズ14の粒径よりも大きい第1ビーズ13の粒径よりも、接着材層9dの膜厚95が小さい関係である。本実施の形態ではこのような構成の接着材層9dを形成させることが可能になる。
【0088】
この時の接着材層9dの膜厚95は第1ビーズ13の粒径よりも小さい。また、第2ビーズ14の粒径に対しては、膜厚95は略一致する。つまり、第1ビーズ13が振動板8bに食い込むとともに、第2ビーズ14は、圧電素子5表面と、凹部90bが形成されていない接合部82の表面との間に挟持される。
【0089】
なお、上記の実施の形態と同様に、接着材層9cの膜厚94は、ビーズ11が食い込んだ凹部90bを考慮せず、圧電素子5と振動板8bとの対向面どうしの離間距離によって規定される。
【0090】
第2ビーズ14の存在によって、膜厚95のコントロールが単一粒径の場合よりも容易になる。より詳しくは、圧電素子5と振動板8bとを接合する押圧力を加えることによって膜厚95を徐々に小さく設定していくが、膜厚95の設定が第2ビーズ14の粒径の位置において、加えた圧力に対する応力が変化する。つまり膜厚95が第2ビーズ14の粒径に達したことがトルク管理等により容易に確認でき、膜厚95のコントロールが容易になる。
【0091】
このような膜厚95のコントロール容易性は、圧電素子5と振動板8bとを接合する押圧によって、接着材が押しつぶされすぎて、圧電素子5の幅よりも広がって接着し、硬化されることを抑制できる。よって、はみ出して硬化した接着材が振動板8bの振動を阻害してしまうという不具合を抑制することが可能になる。なお第2ビーズ14は、さらに複数の粒径のビーズを含んでいてもよい。つまり、第2ビーズ14のうち最も大きい粒径に依存して膜厚95を決定することができ、膜厚95として使用したい所定の粒径以下の第2ビーズ14であればよい。言い換えると、第1ビーズ13に比べ、第2ビーズ14の粒径は管理容易であるため安価な(粒径管理が粗い)ビーズを用いることもできる。
【0092】
また、上記のような複数の粒径を有する第2ビーズ14を用いた場合、第2ビーズ14のうち、どの粒径と一致する膜厚95を設定するかを、加える圧力によってより多段階に制御することもできる。
【0093】
以上説明したように、本実施の形態におけるインクジェットヘッド100dが備えるビーズ11は、粒径が異なる第1ビーズ13、および第2ビーズ14を含み、第2ビーズ14の粒径よりも大きい第1ビーズ13の粒径よりも、膜厚95は小さい。
【0094】
これにより、圧電素子5に窪み部51を有することなく、膜厚95を容易にコントロールできるため、圧電素子5と振動板8bとの接合信頼性を確保しつつ、所望の吐出特性を有するインクジェットヘッドを容易に実現することができる。
【0095】
(その他の実施の形態)
以上、実施の形態について説明したが、本開示は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0096】
また、上記実施の形態においてインクジェットヘッドを構成する構成要素について例示したが、インクジェットヘッドが備える構成要素の各機能は、インクジェットヘッドを構成する複数の部分にどのように振り分けられてもよい。
【0097】
その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態、または、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。
【0098】
例えば、本開示においては、振動板8、および8bを樹脂により構成する一例を示したが、ビーズ11、および13よりも硬度の低い材料であればいかなる材料を用いて振動板を構成してもよい。
【0099】
また例えば、振動板8bは振動部81と接合部82とによって構成されたが、接合部82を備えなくてもよい。例えば、変形83が振動板の厚みに対して無視できるような大きさ(厚み)である場合は、このような接合部82を備えなくてもよい。もしくは、変形83が無視できるような十分な厚みを有する振動板を振動させることができる変位特性を有する圧電素子を備えてもよい。
【0100】
また、実施の形態1乃至実施の形態4のうち複数の形態を任意に組み合わせて、信頼性の高いインクジェットヘッドを実現してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本開示により信頼性の高いインクジェットヘッドが提供されるため、低コストで電子デバイスや光学デバイスのパターンが形成でき有用である。
【符号の説明】
【0102】
1 ノズルプレート
2 ノズル
3 圧力発生室
4 流路形成基板
5、5a、5c 圧電素子
6 駆動部
7 柱部
8、8a、8b 振動板
9、9a、9b、9c、9d 接着材層
10 基台
11、12、13、14 ビーズ
51 窪み部
81 振動部
82、82a 接合部
83 変形
90、90b 凹部
91、92、94、95 膜厚
93 はみ出し部
100、100a、100b、100c、100d インクジェットヘッド