(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】圧縮機用電動機および圧縮機
(51)【国際特許分類】
H02K 3/46 20060101AFI20230105BHJP
H02K 3/52 20060101ALI20230105BHJP
F04B 39/00 20060101ALI20230105BHJP
【FI】
H02K3/46 B
H02K3/52 Z
F04B39/00 106E
(21)【出願番号】P 2019016888
(22)【出願日】2019-02-01
【審査請求日】2021-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新井 和彦
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 好彦
(72)【発明者】
【氏名】芦森 丈明
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-104870(JP,A)
【文献】特開2014-147238(JP,A)
【文献】特開2002-247789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/30- 3/52
F04B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコア、および、前記ステータコアの両端に配置された一対のインシュレータを有するステータ部、を有する圧縮機用電動機であって、
前記インシュレータは、
外周領域に配置される縁部と、
前記縁部から内側に向けて延出し、前記ステータコアのティースを覆う延出部と、前記ステータ部に巻回された巻線と接するように前記延出部から突出する突出部と、
を有
し、
前記突出部は、前記延出部の延出方向に延びており、
前記延出部および前記突出部は、
前記突出部の延出方向の全体における前記巻線の各巻回位置において、前記延出部の前記巻線の巻回方向の両端部と、前記突出部の頂点部との三箇所で、前記巻線と接するように構成される、
圧縮機用電動機。
【請求項2】
前記ステータ部において前記巻線が巻かれる部分の周長は、前記縁部側に向かうほど小さくなる、
請求項1に記載の圧縮機用電動機。
【請求項3】
前記突出部の突出量は、前記縁部側に向かうほど小さくなる、
請求項2に記載の圧縮機用電動機。
【請求項4】
前記突出部は、前記延出部から前記ステータコアの軸方向に突出する
請求項1~3の何れか1項に記載の圧縮機用電動機。
【請求項5】
前記突出部において前記巻線が巻かれる部分は曲率半径の異なる2つの曲面を有しており、前記巻線が先に巻かれる第1の曲面の曲率半径は、前記巻線が後に巻かれる第2の曲面の曲率半径よりも大きい、
請求項4に記載の圧縮機用電動機。
【請求項6】
前記突出部は、前記一対のインシュレータのそれぞれに設けられる、
請求項4または請求項5に記載の圧縮機用電動機。
【請求項7】
請求項1~6の何れか1項に記載の圧縮機用電動機を備える、
圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧縮機用電動機および圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空調、または、冷凍等の用途で用いられる圧縮機においては、ステータと、コイルと、ステータのステータコアとともにコイルが巻き付けられる一対のインシュレータとを有する電動機が設けられる(例えば、特許文献1参照)。このような電動機では、例えば、ニードルをティースの周囲の一方方向に移動させることにより、巻線をステータコアおよびインシュレータに巻き付ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ステータコアの設計上、積層方向においてステータコアと巻線との間に隙間が生じる。その結果、巻線の巻き太りが発生し、当該巻き太りに起因して巻線が損傷する等の問題が生じる。
【0005】
本開示の目的は、ステータコアと巻線との間に隙間が生じることを抑制することが可能な圧縮機用電動機および圧縮機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る圧縮機用電動機は、
ステータコア、および、前記ステータコアの両端に配置された一対のインシュレータを有するステータ部、を有する圧縮機用電動機であって、
前記インシュレータは、
外周領域に配置される縁部と、
前記縁部から内側に向けて延出し、前記ステータコアのティースを覆う延出部と、前記ステータ部に巻回された巻線と接するように前記延出部から突出する突出部と、
を有し、
前記突出部は、前記延出部の延出方向に延びており、
前記延出部および前記突出部は、前記突出部の延出方向の全体における前記巻線の各巻回位置において、前記延出部の前記巻線の巻回方向の両端部と、前記突出部の頂点部との三箇所で、前記巻線と接するように構成される。
【0007】
本開示に係る圧縮機は、
上記の圧縮機用電動機を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、ステータコアと巻線との間に隙間が生じることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の第1の実施の形態に係る圧縮機の一態様を示す縦断面図である。
【
図4】ステータコアとインシュレータとの接続関係を示す図である。
【
図6】インシュレータの延出部部分を側面側から見た図である。
【
図7】インシュレータの延出部部分を巻線に沿って切った断面図である。
【
図8】突出部を有さないインシュレータの延出部部分の巻線に沿って切った断面図である。
【
図9】巻線装置で巻線を形成する様子を示す図である。
【
図10】突出部を有さないインシュレータにおける、1段目の巻線状態を示す図である。
【
図11】本実施の形態に係るインシュレータにおける、1段目の巻線状態を示す図である。
【
図12】変形例に係る突出部の一例を示す図である。
【
図13】変形例に係る突出部の一例を示す図である。
【
図14】第2の実施の形態に係るインシュレータの延出部部分の拡大図である。
【
図15】第2の実施の形態に係るインシュレータの延出部部分の巻線に沿って切った断面図である。
【
図16】巻線装置で巻線を形成する様子を示す図である。
【
図17】突出部を有さないインシュレータを含む電動機に巻線が形成された様子を簡易的に示す図である。
【
図18】第2の実施の形態に係る電動機に巻線が形成された様子を簡易的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の第1の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本開示の第1の実施の形態に係る圧縮機1の一態様を示す縦断面図である。
【0011】
図1に示すように、圧縮機1は、単段式のロータリコンプレッサであり、密閉容器10と、電動機20と、回転圧縮機構30とを有する。
【0012】
密閉容器10は、本体部11と、蓋部12と、底部13とを有する。本体部11は、円筒状に構成されており、内部に電動機20および回転圧縮機構30を収納している。密閉容器10の下端部付近には、冷媒を導入する導入管14が設けられている。密閉容器10の上端部付近には、圧縮された冷媒を機外に吐出する吐出管15が設けられている。
【0013】
蓋部12は、本体部11の上側開口を塞ぐように設けられており、上面に電動機20に電力を供給するためのターミナル16が取り付けられている。
【0014】
底部13は、本体部11の下側開口を塞ぐように設けられており、内部にオイルを貯留可能に構成されている。
【0015】
電動機20は、例えば、直流モータの圧縮機用電動機であり、本体部11の上部空間に設けられている。電動機20は、ステータ部21と、ロータ22とを有する。ステータ部21は、環状に構成されており、本体部11の内周面に沿うように設けられている。
【0016】
ロータ22は、ステータ部21の内側に設けられており、回転軸23を有する。回転軸23は、ロータ22の中心を通るように、ロータ22に設けられており、密閉容器10における本体部11から底部13にわたって上下方向に延びている。
【0017】
回転圧縮機構30は、本体部11の下部空間に設けられており、シリンダ31と、上側支持部材32と、下側支持部材33と、ローラ34と、ベーン(不図示)とを有する。
【0018】
シリンダ31は、円筒状に構成されており、上側支持部材32と下側支持部材33との間で、上側支持部材32および下側支持部材33に一体に固定されている。
【0019】
上側支持部材32および下側支持部材33は、本体部11に固定されている。上側支持部材32は、シリンダ31の上側の開口を閉塞するように配置され、回転軸23を回転可能に支持する孔が中心部に形成されている。下側支持部材33は、シリンダ31の下側の開口を閉塞するように配置され、回転軸23を回転可能に支持する孔が中心部に形成されている。
【0020】
ローラ34は、シリンダ31内に配置されている。ローラ34は、回転軸23に設けられた偏心部に嵌合されることで、シリンダ31の内周面に接触しながら偏心回転する。
【0021】
ベーンは、シリンダ31内に対して進退可能に構成されており、付勢部材によりローラ34を所定方向に常時押圧するように設けられている。このようにベーンが設けられることで、シリンダ31の内周面に接触するローラ34と、ローラ34に接触するベーンとにより、シリンダ31の内部が高圧縮室と低圧縮室とに区画される。
【0022】
また、上側支持部材32には、シリンダ31に形成された吸入口と連通する吸込通路32Aが設けられている。吸込通路32Aには、上述した導入管14が挿入されている。この吸込通路32Aを介して、導入管14からの冷媒がシリンダ31内に供給される。
【0023】
シリンダ31内に供給された冷媒は、ローラ34の偏心回転により、低圧縮室側から高圧縮室側に移動して、シリンダ31に形成された吐出口を介して密閉容器10内に吐出されて、その後、吐出管15から機外に吐出される。
【0024】
また、回転軸23の下端部には、オイルピックアップが設けられている。オイルピックアップは、回転軸23に圧入して取り付けられており、オイルを吸い上げ可能に構成されている。オイルピックアップは、回転軸23の回転により生じる遠心力により、密閉容器10の底部13に貯留されたオイルを吸い上げる。
【0025】
吸い上げられたオイルは、オイルピックアップに形成された給油孔を介して、回転軸23の、上側支持部材32、下側支持部材33および回転圧縮機構30との摺動部分に供給される。
【0026】
次に、電動機20の詳細について説明する。
図2は、電動機20の分解斜視図である。
図2に示すように、電動機20は、上述した、ステータ部21、ロータ22および回転軸23を有する。
【0027】
ステータ部21は、ステータコア24と、巻線25と、一対のインシュレータ100とを有する。ステータコア24は、複数の積層板24Aが軸方向(
図2に示す上下方向)に接合された円筒形状に構成されている。
【0028】
図3に示すように、積層板24Aは、環状のヨークA1と、ヨークA1から中心に向けて突出する複数のティースA2とを有する。
図3では、6つのティースA2がヨークA1の内周における6箇所からそれぞれ突出した構成が例示されている。
【0029】
ヨークA1と、隣接する2つのティースA2とにより、空隙であるスロットA3が形成される。各ティースA2および一対のインシュレータ100には、巻線25が、例えば、ニードル方式により集中巻きで巻き付けられる。言い換えると、巻線25は、複数の積層板24A(ティースA2)および一対のインシュレータ100の周囲にエナメル線等の絶縁電線が巻き付けられることで形成される。
【0030】
また、各ティースA2の先端よりも内側には、空間A4が形成され、その空間A4にロータ22が配置される。
図2に戻り、ロータ22は、ステータ部21のステータコア24の内部に回動可能に支持されており、ロータコア27及びプレート26と、上述の回転軸23とを有する。
【0031】
ロータコア27の中心部は、回転軸23に固定されており、ロータコア27の側壁には、永久磁石が設けられる。このように構成されることで、ロータコア27、回転軸23およびロータコア27は、一体となって回転する。また、ロータコア27には、永久磁石が内装(図示しない)される。
【0032】
図4に示すように、インシュレータ100は、ステータコア24の軸方向の両端部にそれぞれ配置されており、ステータコア24を挟持するように設けられている。
図5に示すように、インシュレータ100は、縁部110と、複数の延出部120と、突出部130とを有する。
【0033】
縁部110は、ステータ部21のステータコア24の外縁(ヨークA1)に沿って環状に形成されている。縁部110の任意の位置には、外壁111が設けられている。
【0034】
複数の延出部120は、縁部110から、縁部110の内側に向けて延出しており、ステータコア24のティースA2と対応する位置にそれぞれ設けられている。複数の延出部120は、各ティースA2を覆っており、各ティースA2と略同じ長さとなっている。延出部120の先端部には、内壁121が設けられている。
【0035】
図5および
図6に示すように、突出部130は、延出部120の外面120Aにおける中央部から突出しており、延出部120の延出方向に延びている。突出部130の突出量は、延出部120における縁部110側に向かうほど小さくなっている。言い換えると、ステータコア24、および、ステータコア24の両端に配置された一対のインシュレータ100とを有するステータ部21において、巻線25が巻かれる部分の周長は、インシュレータ100における縁部110側に向かうほど周長が小さくなる。
【0036】
このように構成されたインシュレータ100は、
図7に示すように、延出部120の部分でステータコア24のティースA2とともに巻線25が巻回される。具体的には、巻線装置のニードルが、一方側のインシュレータ100の延出部120、複数の積層板24Aおよび他方側のインシュレータ100の延出部120の周囲を回るようにして、巻線25を巻回する。
【0037】
なお、他方のインシュレータ100は、同様の構成であるので、
図7以降では、主に一方側(上側)のインシュレータ100のみを示し、他方側のインシュレータ100の説明は省略する。また、
図7以降では、巻線25の巻方向は、時計回り方向の場合の説明とする。
【0038】
延出部120の外面120Aには、突出部130が設けられているので、巻線25が突出部130に接触してティースA2とともに巻き付けられる。つまり、突出部130が電動機20における巻線25が巻回される部分の一部を構成する。
【0039】
ここで、例えば、突出部130が設けられていない構成の場合、
図8に示すように、延出部120の両端における角部120Bに巻線25が接触した状態で、巻回される。
【0040】
具体的には、巻線装置のニードルは、移動方向(巻方向)の上流側の角部120B(左側の角部120B)に巻線25を引っ掛けた上で、巻線25を延出部120に巻回する。この場合、巻線25には一定の剛性があるため、延出部120およびステータコア24の側面に巻線25を隙間ができるだけできないように巻くことが難しい。
【0041】
その結果、巻き付けられる巻線25が形成する円弧が、全体として大きくなるので、巻線25の巻き太りが発生し、ひいては巻線損傷等が発生するおそれがある。
【0042】
それに対し、
図7に示すように、本実施の形態では、突出部130が設けられているので、巻き付けられた巻線25が突出部130と接触する。
【0043】
そのため、突出部130があることにより、延出部120およびステータコア24の側面に隙間ができるだけできないように巻線25を巻回することができる。その結果、巻線25の巻き太りが発生することを抑制することができ、ひいては巻線25の数を増加させることができ、巻線25の高占有率化を実現することができる。
【0044】
また、ニードル方式による巻線装置で巻線を電動機20に巻回する場合、縁部110が環状であるので、ニードルがスロットA3の底部分(スロットA3における縁部110の部分)まで届かない。
【0045】
具体的には、
図9に示すように、ニードルNが延出部120における左から右に移動した上で、スロットA3を通過してステータコア24の積層方向に移動していくことにより、インシュレータ100およびステータコア24に巻線25が巻回される。つまり、ニードルNの左右方向の動作範囲は、延出部120(ティースA2)を挟む2つのスロットA3を通るような範囲となる。
【0046】
そのため、巻線25が延出部120の奥まで巻き付けられないので、巻線25の巻き始めにおいて、巻線25と、延出部120における縁部110との間に間隔が形成されやすい。
【0047】
ここで、例えば、
図10に示すように、突出部130が設けられていない場合、巻線25が、延出部120における縁部110との間に間隔が形成された状態のまま、次々と巻き付けられていく。
図10では、延出部120における左側から右側の方向に巻線25が巻回される。
【0048】
この場合、巻き始めの部分では、巻線25の位置が安定しない状態となる。その結果、巻線25が、ステータ部21の内側に引き込まれるなどして乱れ線が発生するおそれがある。
【0049】
それに対し、本実施の形態では、
図11に示すように、突出部130の突出量が、延出部120における縁部110側に向かうほど小さくなっているので、巻き付けられた巻線25が突出部130の傾斜に沿って縁部110側に滑るように移動する。
【0050】
その結果、巻線25の巻き始めにおいて、延出部120における縁部110との間に形成される間隔を狭めることができる。その結果、乱れ線が発生することを抑制することができ、ひいては、巻線25における高占有率化を実現することができる。
【0051】
また、突出部130をインシュレータ100と一体に構成することで、突出部130をインシュレータ100とは別体とする構成と比較して、インシュレータ100を製造しやすくすることができるとともに、インシュレータ100の材料を削減することができる。
【0052】
また、ステータ部21のステータコア24、および、ステータコア24の両端に配置された一対のインシュレータ100を有するステータ部において、巻線25が巻かれる部分の周長が縁部110側に向かうほど小さくなる構成としては、これに限定されない。例えば、突出部130の傾斜部分を、延出部120の中央よりも縁部110側にのみ設けることとしても良い。この場合、突出部130の傾斜部分を、延出部120全体の長さの4分の1程度としても良い。
【0053】
また、
図12に示すように、突出部130を階段状に構成するようにしても良い。また、
図13に示すように、インシュレータ100の横方向に延出部120から突出する突出部130を設け、突出部130が縁部110側に向かうほど、細くなるように構成しても良い。
【0054】
次に、第2の実施の形態について説明する。
図14は、第2の実施の形態に係るインシュレータ100の延出部120部分の拡大図である。
【0055】
第2の実施の形態に係る圧縮機1は、インシュレータ100以外の構成は、第1の実施の形態と同様である。
【0056】
図14に示すように、インシュレータ100は、第1の実施の形態と同様に、縁部110と、延出部120と、突出部130とを有する。縁部110および延出部120は、第1の実施の形態と同様である。
【0057】
突出部130は、
図14における延出部120の左右方向全体から突出する。そして、左右方向における突出部130の頂点130Aは、延出部120の左右方向の中央に対して左側に位置する。
【0058】
また、
図15に示すように、突出部130において巻線が巻かれる部分は曲率半径の異なる2つの曲面を有している。そして、巻線25が先に巻かれる第1の曲面の曲率半径R1は、巻線25が後に巻かれる第2の曲面の曲率半径R2よりも大きくなっている。
【0059】
このように構成されたインシュレータ100は、第1の実施の形態と同様に、延出部120の部分でステータ部21のティースA2とともに巻線25が巻回される。
【0060】
この場合、延出部120には、突出部130が設けられているので、巻線25が突出部130に接触してティースA2とともに巻き付けられる。つまり、突出部130が電動機20における巻線25が巻回される部分の一部を構成する。
【0061】
図16に示すように、巻線装置は、ニードルNが左から右に移動して延出部120に巻線25を巻回するので、巻き始めの際、延出部120の左端に巻線25が引っ掛かる。
【0062】
ここで、
図17に示すように、延出部120が突出部130を有さない構成である場合、上述した通り、巻線25には一定の剛性があるため、巻線25と、延出部120およびステータコア24との間隔が広くなりやすい。
【0063】
特に、角部120Bが角張った形状である場合、角部120Bに巻き付けられた巻線25に大きなストレスがかかるが、巻線25には一定の剛性があるため、巻線25と、延出部120およびステータコア24との間隔がさらに広くなりやすい。
【0064】
それに対し、
図18に示すように、本実施の形態では、延出部120の巻線25が巻かれる部分に曲率半径の異なる2つの曲面を有する突出部130が設けられているので、突出部130の部分に巻線25が引っ掛けられる。そして、巻線25が先に巻かれる第1の曲面の曲率半径R1は、巻線25が後に巻かれる第2の曲面の曲率半径R2よりも大きいので、突出部130を設けない構成と比較して、巻線25に掛かるストレスを低減することができる。
【0065】
すなわち、巻線25と、延出部120およびステータコア24との間隔が広くなることを低減することができる。その結果、巻線25の巻き太りが発生することを抑制することができ、ひいては巻線25における高占有率化を実現することができる。
【0066】
また、本実施の形態では、一対のインシュレータ100のそれぞれに突出部130が配置されている。そして、各突出部130において巻線25が巻かれる部分は曲率半径の異なる2つの曲面を有しており、巻線25が先に巻かれる第1の曲面の曲率半径R1は、巻線25が後に巻かれる第2の曲面の曲率半径R2よりも大きくなっている。
【0067】
このようにすることで、両方のインシュレータ100において、巻線25と、延出部120およびステータコア24との間隔が広くなることを防止できるので、全体的に巻線25の巻き形状を小さくすることができる。
【0068】
また、上記第2の実施の形態では、突出部130が延出部120全体にわたり設けられていたが、突出部130において巻線25が巻かれる部分が曲率半径の異なる2つの曲面を有しており、巻線25が先に巻かれる第1の曲面の曲率半径R1が、巻線25が後に巻かれる第2の曲面の曲率半径R2よりも大きくなっている限り、突出部130は全体に設けられていなくても良い。
【0069】
なお、上記実施の形態では、圧縮機として単段式のロータリコンプレッサを例示したが、本開示はこれに限定されず、例えば、多段式のロータリコンプレッサでも良い。
【0070】
その他、上記実施の形態は、何れも本開示を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本開示の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本開示はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本開示の圧縮機は、ステータコアと巻線との間に隙間が生じることを抑制することが可能な圧縮機として有用である。
【符号の説明】
【0072】
1 圧縮機
10 密閉容器
11 本体部
12 蓋部
13 底部
14 導入管
15 吐出管
16 ターミナル
20 電動機
21 ステータ部
22 ロータ
23 回転軸
24 ステータコア
24A 積層板
25 巻線
26 プレート
27 ロータコア
30 回転圧縮機構
31 シリンダ
32 上側支持部材
32A 吸込通路
33 下側支持部材
34 ローラ
100 インシュレータ
110 縁部
111 外壁
120 延出部
120A 外面
120B 角部
121 内壁
130 突出部
A1 ヨーク
A2 ティース
A3 スロット
A4 空間