(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】室内機
(51)【国際特許分類】
F24F 13/20 20060101AFI20230105BHJP
【FI】
F24F1/0007 401E
(21)【出願番号】P 2019028706
(22)【出願日】2019-02-20
【審査請求日】2021-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大濱 靖程
(72)【発明者】
【氏名】土井 康之
(72)【発明者】
【氏名】中島 誠二
(72)【発明者】
【氏名】高位 好文
【審査官】安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-131628(JP,A)
【文献】特開2009-019789(JP,A)
【文献】特開2010-084953(JP,A)
【文献】特開2018-159498(JP,A)
【文献】特表2001-515579(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0205352(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/0007
F24F 13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に熱交換器を有し、前記熱交換器の上方に送風機を備え、前記送風機の上方に吹き出しグリルが配置された上吹き式の空気調和装置において、
前記送風機の支持部と横並びに電装箱を備え、
前記電装箱の上部
の前方に正面視において前記電装箱の上部と重なるように前記吹き出しグリルの垂下部が張り出しており、
前記電装箱の前面に端子台が配置され、
前記端子台が正面視において前記垂下部に隠れずに露出するように前記電装箱が上下方向に移動自在に支持されている、
ことを特徴とする室内機。
【請求項2】
前記電装箱が前記筐体内の上隅部に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の室内機。
【請求項3】
前記電装箱の下方には前記電装箱の移動を許容する空間部が設けられ、
前記空間部の下方には電動膨張弁が配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の室内機。
【請求項4】
前記筐体には前記電装箱を取り付ける台座が設けられ、
前記電装箱には前記台座との干渉を避ける切り欠きが設けられていることを特徴とする 請求項1から3の何れか一項に記載の室内機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、床置き式の室内機を備えた空気調和装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この種の空気調和装置では、一台の室外機に対し一台の室内機を接続するものがある。室内機の筐体の内部には熱交換器、送風機、電装箱等を配置している。
ところで、空気調和装置は一台の室外機に対し複数台の室内機を互いに並列にマルチに接続する場合がある。この場合、各室内機の筐体の内部に従来室外機に設けられていた部材を配置することがある。この場合、この部材を制御する電子部品等が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この場合、電装箱が大きくなり、従来の室内機の筐体内レイアウトでは、電装箱のメンテナンスが困難になるため、未だ改善の余地があった。
そこで、本発明は、上述した従来の技術が有する課題を解消し、電装箱のメンテナンスが容易な室内機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、筐体内に熱交換器を有し、前記熱交換器の上方に送風機を備え、前記送風機の上方に吹き出しグリルが配置された上吹き式の空気調和装置において、前記送風機の支持部と横並びに電装箱を備え、前記電装箱の上部の前方に正面視において前記電装箱の上部と重なるように前記吹き出しグリルの垂下部が張り出しており、前記電装箱の前面に端子台が配置され、前記端子台が正面視において前記垂下部に隠れずに露出するように前記電装箱が上下方向に移動自在に支持されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、電装箱の上部に吹き出しグリルが張り出し、電装箱の上部と吹き出しグリルが干渉する構造であっても、電装箱が上下方向に移動自在であるため、電装箱を下にずらす作業により、電装箱が露出し、電装箱のメンテナンスが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【発明を実施するための形態】
【0008】
第1の発明は、筐体内に熱交換器を有し、前記熱交換器の上方に送風機を備え、前記送風機の上方に吹き出しグリルが配置された上吹き式の室内機において、前記送風機の支持部と横並びに電装箱を備え、前記電装箱の上部に前記吹き出しグリルが張り出し、前記電装箱が上下方向に移動自在に支持されている、ことを特徴とする。
この発明によれば、電装箱が上下方向に移動自在であるため、電装箱を下にずらす作業により、電装箱が露出し、電装箱のメンテナンスが容易となる。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、前記電装箱が前記筐体内の上隅部に配置されていることを特徴とする。
この発明によれば、電装箱が筐体内の上隅部に配置されているため、電装箱と熱交換器や冷媒配管との間の距離が大きくとれるため、運転時における熱交換器や冷媒配管からの輻射熱が電装箱に伝わり難くなる。
【0010】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記電装箱の下方には前記電装箱の移動を許容する空間部が設けられ、前記空間部の下方には電動膨張弁が配置されていることを特徴とする。
室内機と室外機が1対1対応の空気調和装置等、電動膨張弁を室外機に配置するものがある。例えば1台の室外機について複数台の室内機を備える空気調和装置の場合等、電動膨張弁を室内機に配置することが効果的な場合がある。電動膨張弁は、冷房運転時等に冷え、結露する。
この発明によれば、室内機に電動膨張弁を配置したとしても、電装箱の下方に空間部を設け、電装箱の下方への移動を許容した上で、空間部のさらに下方に電動膨張弁を配置したため、電装箱を移動可能として電装箱のメンテナンスを容易にしつつ、電動膨張弁の結露による影響を電装箱に与えることを抑制できる。
【0011】
第4の発明は、第1の発明から第3発明の何れかの発明において、前記筐体には前記電装箱を取り付ける台座が設けられ、前記電装箱には前記台座との干渉を避ける切り欠きが設けられていることを特徴とする。
この発明によれば、電装箱を移動させるとき、電装箱と台座との干渉を避けることができ、移動が容易である。
【0012】
以下に、添付図面を参照して本発明の一実施形態を詳細に説明する。
図1は、本実施形態による床置き式の室内機1の斜視図、
図2は室内機1の分解斜視図である。なお、以下の説明において、上下、前後、左右とは、室内機1を正面から見た場合の上下、前後、左右を示している。
【0013】
室内機1は、
図1に示すように、筐体2を備えている。筐体2の前面はフィルターユニット11で覆われ、フィルターユニット11の前面は前面パネル14で覆われている。前面パネル14の上部には吹き出しグリル20が設けられている。
筐体2の前面には、
図2に示すように、熱交換器3が取り付けられている。熱交換器3はフィンアンドチューブ型の熱交換器であり、冷媒配管4が下方へ延出している。熱交換器3の下方にはドレンパン6が配置され、ドレンパン6にはドレンホース6aが接続されている。熱交換器3の上方には一対の支持部5が設けられ、これら支持部5の間には送風機7が回転自在に支持されている。
筐体2には、送風機7の支持部5と横並びに電装箱9が配置されている。電装箱9は筐体2の上隅部2aに配置されている。電装箱9は、筐体2の内部の右上部に配置される。電装箱9の前面には端子台10が設けられている。
【0014】
熱交換器3の前面は、フィルターユニット11で覆われている。フィルターユニット11は複数枚のフィルター12を備える。
フィルターユニット11には電装箱9の端子台10に対応した位置に開口11aが設けられ、開口11aには端子台カバー13が設けられている。フィルターユニット11は前面パネル14により覆われている。
【0015】
本実施形態では、筐体2の送風機7の上方に吹き出しパネル15が配置される。吹き出しパネル15は、
図3に示すように、筐体2の横方向全体にわたって延びている。吹き出しパネル15は、筐体2の天面を構成する。吹き出しパネル15は、
図4に示すように、外板16と内板17とを備えている。外板16と内板17の間には風路19が形成されている。
風路19の奥端19aは送風機7の吹き出し口に連通し、風路19の前端19bは、開閉する吹き出しグリル20に連通している。
吹き出しグリル20は、前面部が下方に垂下し、垂下部20aは、正面視において、電装箱9の上部9aと重なっている。正面視では、上部9aと吹き出しグリル20とが重なって干渉し、上部9aは見えていない。
【0016】
図5は、電装箱9の取り付け状態を示す斜視図である。
図6は、電装箱9の取り付け状態を示す断面図である。
電装箱9は、
図5に示すように、端子台10を備えており、端子台10の上方及び下方には第1の蓋体21、第2の蓋体22が設けられている。
電装箱9は、送風機7の支持部5と横並びになって筐体2の上隅部2aに取り付けられている。送風機7は取り付け位置70に取り付けられている。
電装箱9の下端には突片23が一体に形成されている。
筐体2には台座24が形成されている。突片23には孔25が設けられている。孔25には、ねじ26が嵌められる。ねじ26は、台座24のめねじ孔にねじ込まれ、ねじ26(固定具)により電装箱9が台座24に取り付けられている。
【0017】
図6に示すように、電装箱9の裏面の下端部には、長さLの切り欠き27が形成されている。切り欠き27の下端に爪部28が形成されている。爪部28はリブ29の上に載せられる。爪部28をリブ29の上に載せた状態で、ねじ26により電装箱9を台座24に固定するため、電装箱9の固定状態が安定する。
【0018】
電装箱9の下方には、
図4に示すように、電装箱9の移動を許容するために、空間部Sが設けられている。空間部Sの下方には、電動膨張弁31や、ゴミ取りフィルター、防音用のマフラー等が配置されている。
ここで、電動膨張弁31は、冷媒流量の制御弁であって、一台の室外機(不図示)に室内機1を複数台接続したときに必要となり、この電動膨張弁31によって、各室内機1の冷媒流量が制御される。
電装箱9には、電子部品が実装された一枚の基板が収容される。電装箱9に備えられる端子台10には、電動膨張弁31を制御する部品が含まれている。その分、端子台10は大型化しており、
図5に示すように、電装箱9の幅Wを超えて、室内機1の内側に延びて配置されている。
【0019】
次に、電装箱9について説明する。
本実施形態の電装箱9は、上下方向に移動させることが可能である。
図6において、まず、ねじ26を外す。そして、矢印Aの方向(室内機1の内側の方向)に、爪部28がリブ29の高さを越えるまで電装箱9を引く。
爪部28がリブ29の高さを越えたら、矢印Bの方向(室外機1の下方向)に電装箱9を少しずらす。そして、爪部28がリブ29の下方に位置したら、矢印Aと逆の方向に電装箱9を押し戻して、その位置から、切り欠き27の段差部27aが、リブ29に当たって止まるまで、電装箱9を下方に引き下ろす。
空間部Sの高さは、切り欠き27の長さLよりも高く設定されている。そして、切り欠き27の長さLは、
図4に示す吹き出しグリル20の垂下部20aの長さL1とほぼ等しく設定されている。したがって、電装箱9が下方に引き下ろされたとき、電装箱9の上部9aが垂下部20aに隠れず、正面視において露出する。
【0020】
なお、端子台10に接続した配線の長さは、電装箱9を引き下ろしたときに、余裕があるように長めに設定されている。
【0021】
次に、作用について説明する。
本形態による室内機1は、送風機7の電動機(不図示)が駆動されると、前面パネル14の下方及び両側縁の開口から空気が吸引される。
空気は、フィルターユニット11のフィルター12を通り、熱交換器3に至り、熱交換されて送風機7の吐出側に至る。そして、吹き出しパネル15内の風路19を経て、吹き出しグリル20から室内に吹き出される。
【0022】
電装箱9はメンテナンス時に、基板やコネクタ等を抜き差しする必要がある。
本実施形態では、電装箱9が上下方向に移動自在に支持されているため、端子台10が電装箱9の前面(室内機1の正面方向)に備えられていても、吹き出しグリル20を取り外すことなく、ねじ26を外して、電装箱9を下にずらす作業だけで、電装箱9を露出させることができ、容易にメンテナンスできる。
このとき、端子台10は電装箱9の前面に位置するため、作業者は前面から端子台10にアクセスでき、メンテナンスが容易である。
【0023】
以上説明したように、本実施の形態によれば、筐体2内に熱交換器3を有し、熱交換器3の上方に送風機7を備え、送風機7の上方に吹き出しグリル20が配置された上吹き式の室内機1において、送風機7の支持部5と横並びに電装箱9を備え、電装箱9の上部に吹き出しグリル20が張り出し、電装箱9が上下方向に移動自在に支持した。
これにより、電装箱9が上下方向に移動自在であるため、電装箱9を下にずらす作業により、電装箱9が露出し、電装箱9のメンテナンスが容易となる。
【0024】
また、本実施の形態によれば、電装箱9を筐体2の図中右上隅部2aに取り付けたことで、熱交換器3から離れて電装箱9が取り付けられており、電装箱9と熱交換器3や冷媒配管4との間の距離が大きくとれるため、運転時における熱交換器3や冷媒配管4からの輻射熱が電装箱9に伝わり難くなる。
【0025】
また、本実施の形態によれば、電装箱9の下方には電装箱9の移動を許容する空間部Sが設けられ、空間部Sの下方には電動膨張弁31が配置される。
室内機1と室外機(不図示)が1対1対応の空気調和装置等では、電動膨張弁31を室外機に配置するものがある。しかし、本実施形態では、1台の室外機について複数台の室内機1を備える空気調和装置であり、電動膨張弁31を室内機に配置している。電動膨張弁31は、冷房運転時等に冷え、結露する。
本実施形態の上記構成によれば、室内機1に電動膨張弁31を配置したとしても、電装箱9の下方に空間部Sを設け、電装箱9の下方への移動を許容した上で、空間部Sのさらに下方に電動膨張弁31を配置したため、電装箱9を移動可能として電装箱9のメンテナンスを容易にしつつ、電動膨張弁31の結露による影響を電装箱9に与えることを抑制できる。
【0026】
また、本実施の形態によれば、筐体2には電装箱9を取り付ける台座24が設けられ、電装箱9には台座24との干渉を避ける切り欠き27を設けた。
これによれば、電装箱9を移動させるとき、電装箱9と台座24との干渉を避けることができ、移動が容易となる。
【0027】
本実施形態では、電装箱9の下方に電装箱9の移動を許容する空間部Sが設けられ、この空間部Sの下方には、電動膨張弁31や、ゴミ取りフィルター、防音用のマフラー等が纏まりよく配置されている。
熱交換器3や電動膨張弁31は、冷房運転中に冷える。
しかしながら、運転中は、電装箱9が筐体2の図中右上隅部2aに位置し、この位置は熱交換器3や電動膨張弁31から離れた位置であるため、冷えた輻射熱の影響が少なくなり、電装箱9内の電子部品が保護される。
また、空間部Sのさらに下方に電動膨張弁31を配置したため、電動膨張弁31を纏まりよく効率よく配置できる。
【0028】
本実施形態では、電装箱9を取り付ける台座24が筐体2に設けられるが、電装箱9には切り欠き27が設けられるため、ねじ26を外して、電装箱9を下方に移動させるときには、切り欠き27内に台座24が位置し、したがって、電装箱9と台座24との干渉が避けられ、電装箱9の下方への移動が容易になる。
【0029】
本実施の形態に係る空気調和装置は、一台の室外機(不図示)に対し複数台の室内機1を並列にマルチに接続している。そのため、室内機1の筐体2の内部に、従来室外機に設けられていた電動膨張弁31を配置している。この場合、電動膨張弁31のメンテナンスのためには、所定の空間が必要となる。そこで、筐体2の内部の上隅部に電装箱9を配置し、電動膨張弁31のメンテナンスを容易とするため電装箱9と電動膨張弁31との間に空間部Sを備え、この空間部Sの下方に電動膨張弁31を配置した。空間部Sは、電動膨張弁31のメンテナンスが容易となる程度の空間を備えていればよい。
空間部Sを設けることにより、電装箱9は筐体2の内部の上隅部に配置され、電装箱9の上部と吹き出しグリル20とが正面視において重なる位置に配置されることとなるが、上述のように、電装箱9は筐体2の内部を上下方向に移動自在に支持されているため、電装箱9を筐体2の内部の上隅部に配置した場合には、空間部Sを利用することにより電動膨張弁31のメンテナンスを容易とでき、電装箱9を下方に移動させ空間部Sの位置に配置した場合には、吹き出しグリル20を取り外すことなく電装箱9及び端子台10のメンテナンスを行うことができる。
このように、正面視において電装箱9と吹き出しグリル20とを重なる位置に配置し、電装箱9を上下方向に移動自在に支持し、電装箱9の下方に空間部Sを設け、空間部Sの下方に電動膨張弁31を配置することにより、電動膨張弁31のメンテナンスや検査を容易とするとともに、空間部Sを有効利用することにより筐体2の大型化を抑制できる。
【0030】
以上、本実施の形態に基づいて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。あくまでも本発明の実施の態様を例示するものであるから、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変更、及び応用が可能である。
例えば、電装箱9を上下方向に移動させる際に、電装箱9の両側に当たって縦に延びるガイドレールを設けることも可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 室内機
2 筐体
2a 上隅部
3 熱交換器
5 支持部
7 送風機
9 電装箱
9a 上部
10 端子台
11 フィルターユニット
15 吹き出しパネル
19 風路
20 吹き出しグリル
24 台座
26 ねじ
27 切り欠き
31 電動膨張弁
L 切り欠きの長さ
L1 グリルの垂下部の長さ
S 空間部