(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】コンデンサ
(51)【国際特許分類】
H01G 4/32 20060101AFI20230105BHJP
H01G 2/10 20060101ALI20230105BHJP
H01G 4/224 20060101ALI20230105BHJP
H01G 4/228 20060101ALI20230105BHJP
【FI】
H01G4/32 540
H01G2/10 K
H01G4/224 200
H01G4/228
H01G4/32 301F
H01G4/32 305A
(21)【出願番号】P 2019004117
(22)【出願日】2019-01-15
【審査請求日】2021-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111383
【氏名又は名称】芝野 正雅
(74)【代理人】
【識別番号】100170922
【氏名又は名称】大橋 誠
(72)【発明者】
【氏名】小数賀 直浩
(72)【発明者】
【氏名】光田 敬二
【審査官】西間木 祐紀
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1020749(KR,B1)
【文献】実開昭63-24820(JP,U)
【文献】特開2014-187150(JP,A)
【文献】特開2008-205074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/32
H01G 2/10
H01G 4/224
H01G 4/228
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端面に電極を有するコンデンサ素子と、各前記電極に接続されるリード線端子と、を含む素子ユニットと、
前記素子ユニットが収容されるケースと、を備え、
前記コンデンサ素子における端面に沿う方向の寸法は、前記電極から前記リード線端子が延び出す第1方向の寸法が当第1方向と直交する第2方向の寸法よりも小さくされ、
各前記リード線端子は、前記コンデンサ素子の端面の前記第2方向における中央部に、半田により固定され、
前記素子ユニットは、前記第1方向が前記ケースの開口方向となるように前記ケース内に収容され、
前記ケースは、前記コンデンサ素子の両端面と対面する一対の第1内側面と、当該一対の第1内側面と直交する一対の第2内側面とを含み、
各前記第1内側面には、前記一対の第2内側面の並び方向における中央に、その第1内側面が対面する前記コンデンサ素子の端面に向かって突出し、前記並び方向の前記リード線端子の動きが規制されるように前記リード線端子を保持する保持部が設けられ、
前記ケースは、
2つの前記保持部の間隔が、前記コンデンサ素子の両端面の並び方向における2つの前記半田の部分での前記素子ユニットの寸法よりも小さくされ、
前記第2内側面と前記保持部との間隔が、前記第2方向における前記コンデンサ素子の端から当該端から遠い側の前記半田の端までの寸法よりも小さくされ、
前記素子ユニットは、
前記第1方向における前記コンデンサ素子の前記リード線端子が延び出す側の端から当該端から遠い側の前記半田の端までの寸法が、前記リード線端子が前記第2内側面側に倒れるように傾けた素子ユニットを、前記第2内側面と前記保持部との間から前記ケース内に挿入し、前記リード線端子が前記ケースの上端に接触するまでの間に前記素子ユニットの傾きを戻したときに、前記半田が前記保持部に接触することなく前記保持部よりも前記ケースの内部側に移動できる寸法とされる、
ことを特徴とするコンデンサ。
【請求項2】
請求項1に記載のコンデンサにおいて、
前記保持部には、その先端部に、前記リード線端子が、当該リード線端子の径方向に半分より多く嵌り込むことが可能な溝部が設けられる、
ことを特徴とするコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
コンデンサ素子の一対の側面(両端面)に設けられた集合電極に金属製単線からなる導電線(リード線端子)が半田により接続され、導電線が接続されたコンデンサ素子が、上面が開口するケースに収容されるフィルムコンデンサにおいて、ケースの対面し合う2つの内壁面に凸部が設けられるとともに各導電線に突起部が設けられ、突起部の上部が凸部の下面に当接するような構成が、特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1のフィルムコンデンサでは、突起部を凸部に当接させるため、2つの突起部の間隔が2つの凸部の間隔よりも広くなるよう、2つの導電線が外方向に曲げられる。よって、導電線が曲げられる前の状態では、2つの凸部の間隔が2つの突起部の間隔より広くなっており、さらには、2つの凸部の間隔が、2つの導電線を接続する2つの半田の部分でのコンデンサ素子の幅よりも広くなっている(特許文献1の
図1参照)。
【0004】
ケースの凸部には、先端に溝部を設けることができる。この場合、導電線の一部が溝部に収納される(特許文献1の
図4参照)。これにより、ケースにおける凸部が設けられていない一対の内壁面の方向に動かないように、導電線が凸部に保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のフィルムコンデンサでは、2つの凸部が、真っ直ぐな状態の2つの導電線および2つの半田の外方に位置するため、前述のように、コンデンサ素子がケースに収容された後に導電線が曲げられなければならず、その際、半田による導電線の接続部分に応力負荷が掛かってしまうことが懸念される。また、コンデンサ素子の両端面と凸部が設けられた内壁面との隙間が大きくなるので、ケースが大きくなってしまうことが懸念される。
【0007】
かかる課題に鑑み、本発明は、コンデンサ素子の電極に接続されたリード線端子がケースに設けられた保持部により良好に保持され得るコンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の主たる態様に係るコンデンサは、両端面に電極を有するコンデンサ素子と、各前記電極に接続されるリード線端子と、を含む素子ユニットと、前記素子ユニットが収容されるケースと、を備える。ここで、前記コンデンサ素子における端面に沿う方向の寸法は、前記電極から前記リード線端子が延び出す第1方向の寸法が当第1方向と直交する第2方向の寸法よりも小さくされる。各前記リード線端子は、前記コンデンサ素子の端面の前記第2方向における中央部に、半田により固定される。前記素子ユニットは、前記第1方向が前記ケースの開口方向となるように前記ケース内に収容される。前記ケースは、前記コンデンサ素子の両端面と対面する一対の第1内側面と、当該一対の第1内側面と直交する一対の第2内側面とを含み、各前記第1内側面には、前記一対の第2内側面の並び方向における中央に、その第1内側面が対面する前記コンデンサ素子の端面に向かって突出し、前記並び方向の前記リード線端子の動きが規制されるように前記リード線端子を保持する保持部が設けられる。さらに、前記ケースは、2つの前記保持部の間隔が、前記コンデンサ素子の両端面の並び方向における2つの前記半田の部分での前記素子ユニットの寸法よりも小さくされ、前記第2内側面と前記保持部との間隔が、前記第2方向における前記コンデンサ素子の端から当該端から遠い側の前記半田の端までの寸法よりも小さくされる。そして、前記素子ユニットは、前記第1方向における前記コンデンサ素子の前記リード線端子が延び出す側の端から当該端から遠い側の前記半田の端までの寸法が、前記リード線端子が前記第2内側面側に倒れるように傾けた素子ユニットを、前記第2内側面と前記保持部との間から前記ケース内に挿入し、前記リード線端子が前記ケースの上端に接触するまでの間に前記素子ユニットの傾きを戻したときに、前記半田が前記保持部に接触することなく前記保持部よりも前記ケースの内部側に移動できる寸法とされる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コンデンサ素子の電極に接続されたリード線端子がケースに設けられた保持部により良好に保持され得るコンデンサを提供できる。
【0010】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施の形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施の形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る、ケースの開口面が上に向けられた状態のフィルムコンデンサの斜視図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係る、フィルムコンデンサの分解斜視図である。
【
図3】
図3(a)は、実施の形態に係る、素子ユニットの底面図であり、
図3(b)は、実施の形態に係る、ケースの底面図である。
【
図4】
図4(a)は、実施の形態に係る、
図3(b)のA-A´断面図であり、
図4(b)は、実施の形態に係る、素子ユニットが、ケース内に収容されているときの姿勢のままではケース内に挿入できないことを示す図である。
【
図5】
図5は、実施の形態に係る、素子ユニットをケース内に挿入するときの手順について説明するための図である。
【
図6】
図6(a)および(b)は、変更例に係る、フィルムコンデンサの構成について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のコンデンサの一実施形態であるフィルムコンデンサ1について図を参照して説明する。便宜上、各図には、適宜、前後、左右および上下の方向が付記されている。なお、図示の方向は、あくまでフィルムコンデンサ1の相対的な方向を示すものであり、絶対的な方向を示すものではない。また、説明の便宜上、「天面部」、「前側面部」など、一部の構成において、図示の方向に従った名称がつけられる場合がある。
【0013】
本実施の形態において、フィルムコンデンサ1が、特許請求の範囲に記載の「コンデンサ」に対応する。また、端面電極110が、特許請求の範囲に記載の「電極」に対応する。さらに、左内壁面304aおよび右内壁面305aが、特許請求の範囲に記載の「一対の第1内側面」に対応する。さらに、前内壁面302aおよび後内壁面303aが、特許請求の範囲に記載の「一対の第2内側面」に対応する。
【0014】
ただし、上記記載は、あくまで、特許請求の範囲の構成と実施形態の構成とを対応付けることを目的とするものであって、上記対応付けによって特許請求の範囲に記載の発明が実施形態の構成に何ら限定されるものではない。
【0015】
図1は、ケース300の開口面が上に向けられた状態のフィルムコンデンサ1の斜視図である。
図2は、フィルムコンデンサ1の分解斜視図である。
図3(a)は、素子ユニット500の底面図であり、
図3(b)は、ケース300の底面図である。
図4(a)は、
図3(b)のA-A´断面図であり、
図4(b)は、素子ユニット500が、ケース300内に収容されているときの姿勢のままではケース300内に挿入できないことを示す図である。なお、
図1では、充填樹脂400の一部が斜線で描かれており、残りの部分が透明に描かれている。また、
図4(b)では、便宜上、素子ユニット500が透明な状態に描かれている。
【0016】
フィルムコンデンサ1は、コンデンサ素子100と、一対のリード線端子200と、ケース300と、充填樹脂400と、を備える。一対のリード線端子200がコンデンサ素子100に接続されることにより、素子ユニット500が構成される。素子ユニット500が収容されたケース300内に充填樹脂400が充填され、コンデンサ素子100と一対のリード線端子200の一部とが充填樹脂400により覆われる。一対のリード線端子200の先端部が、充填樹脂400から露出し、ケース300の下方に延びる。
【0017】
本実施の形態のフィルムコンデンサ1は、プリント基板等の実装面に実装が可能であり、たとえば、自動車等の車両の電装部品の一つとして用いられ得る。フィルムコンデンサ1が実装面に実装される際には、一対のリード線端子200の先端部が、実装面に設けられたランドの貫通孔に挿入され、半田によりランドと接続固定される。
【0018】
以下、フィルムコンデンサ1の詳細な構成について説明する。
【0019】
コンデンサ素子100は、誘電体フィルム上にアルミニウムを蒸着させた2枚の金属化フィルムを重ね、重ねた金属化フィルムを巻回または積層し、扁平状に押圧することにより形成される。コンデンサ素子100は、ほぼ長円柱形状を有し、左右2つの長円形の端面101と、2つの端面101を繋ぐ周面102とを含む。周面102は、上下一対の平坦面102aと前後一対の円弧面102bとで構成される。コンデンサ素子100は、平坦面102aの並び方向、即ち、上下方向の寸法が、当該方向に直交する円弧面102bの並び方向、即ち前後方向の寸法よりも小さい。コンデンサ素子100の両側の端面101には、亜鉛等の金属の吹付けにより端面電極110が形成される。なお、平坦面102aの並び方向が、特許請求の範囲に記載の第1方向に対応し、円弧面102bの並び方向が、特許請求の範囲に記載の第2方向に対応する。以下、平坦面102aの並び方向を短手方向と称し、円弧面102bの並び方向を長手方向と称する。
【0020】
一対のリード線端子200は、丸棒状を有し、銅などの導電性に優れる心材を錫などのメッキ材で被覆することにより形成される。一対のリード線端子200の上端部が、コンデンサ素子100の両側の端面101、即ち両側の端面電極110に半田120によって接続固定される。これにより、一対のリード線端子200がコンデンサ素子100の両側の端面電極110と電気的に接続される。このとき、リード線端子200の端面電極110への接続位置は、コンデンサ素子100の端面101の中心部、即ち、短手方向における中央部且つ長手方向における中央部とされ、その接続位置からリード線端子200が下方へと真っ直ぐに延び出す。半田120は、リード線端子200の上端部を覆い、コンデンサ素子100の端面101の正面方向から見たときにほぼ円形を有し、端面電極110からリード線端子200の外径(直径)よりも僅かに高い位置まで盛り上げられる。
【0021】
ケース300は、樹脂製であり、たとえば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)により形成される。ケース300は、ほぼ直方体の箱状に形成され、天面部301と、前側面部302と、後側面部303と、左側面部304と、右側面部305とを含み、底面が開口する。ケース300は各角部が曲面形状を有し、特に、天面部301と前側面部302との角部および天面部301と後側面部303との角部は、その他の角部よりも大きな曲面形状を有する。
【0022】
左側面部304の内壁面304aと右側面部305の内壁面305aは、素子ユニット500がケース300内の収容されたとき、コンデンサ素子100の両側の端面101と対面する。前側面部302の内壁面302aおよび後側面部303の内壁面303aは、左側面部304の内壁面304aおよび右側面部305の内壁面305aと直交する。以下、4つの内壁面302a、303a、304a、305aを、それぞれ、前内壁面302a、後内壁面303a、左内壁面304aおよび右内壁面305aと称する。
【0023】
前側面部302と後側面部303の下面には、左右の2か所に直方体形状の脚306が形成される。フィルムコンデンサ1がプリント基板等の実装面に実装されたとき、4つの脚306が実装面に接触する。また、天面部301には、内壁面301aの前後の2か所に、左右方向に延びるリブ307が形成される。これらリブ307により、素子ユニット500がケース300内に収容されたとき、コンデンサ素子100の周面102と天面部301の間に充填樹脂400が入り込む隙間が生じる。
【0024】
左内壁面304aと右内壁面305aには、前後方向、即ち、前内壁面302aと後内壁面303aの並び方向における中央部であって、上端部、即ちケース300の開口面よりやや低い位置に、ケース300の内側に突出するように保持部308が設けられる。保持部308には、その先端部に、リード線端子200の断面形状に対応するようU形状を有する溝部309が設けられる。溝部309は、リード線端子200の直径とほぼ同じ幅を有するとともに、リード線端子200の半径より大きな深さを有する。
【0025】
ケース300は、2つの保持部308の間隔C1(
図3(b)参照)が、コンデンサ素子100の両側の端面101の並び方向(左右方向)における2つの半田120の部分での素子ユニット500の寸法L1(
図3(a)参照)よりも小さくなっている。よって、素子ユニット500が、ケース300内において、左内壁面304aと右内壁面305aの並び方向(左右方向)の中央に配されると、ケース300の開口方向から見たときに、保持部308の先端部が半田120およびリード線端子200と重なり、溝部309の位置がリード線端子200の位置とほぼ整合する。
【0026】
フィルムコンデンサ1が組み立てられる際には、素子ユニット500とケース300とが上下逆さまにされ、素子ユニット500が、ケース300の底面の開口300aを通じてケース300内に収容される。
【0027】
素子ユニット500は、リード線端子200が延び出す方向がケース300の開口方向となるようにケース300内に収容されるが、この姿勢のままでは、ケース300内へ挿入することができない。前述のように、2つの保持部308の間隔C1(
図3(b)参照)が、2つの半田120の部分での素子ユニット500の寸法L1(
図3(a)参照)よりも小さく、半田120の部分が保持部308にぶつかってしまうためである。
【0028】
また、
図4(b)に示すように、ケース300は、前内壁面302a(後内壁面303a)と保持部308との間隔C2が、長手方向におけるコンデンサ素子100の端からその端から遠い側の半田120の端までの寸法L2よりも小さい。このため、
図4(b)のように、素子ユニット500が前内壁面302a側に寄せられても、半田120の部分が保持部308にぶつかってしまうため、ケース300内に収容されているときの姿勢では、素子ユニット500をケース300内へ挿入することができない。
【0029】
そこで、素子ユニット500は、以下のようにして、ケース300内に挿入される。
【0030】
図5は、素子ユニット500をケース300内に挿入するときの手順について説明するための図である。
図5では、便宜上、素子ユニット500が透明な状態に描かれている。なお、ここでは、素子ユニット500が、前内壁面302aと保持部308との間からケース300内に挿入される例について説明するが、同様な挿入方法により、素子ユニット500を、後内壁面303aと保持部308との間からケース300内に挿入することもできる。
【0031】
図5を参照し、まず、
図Aのように、前内壁面302aと後内壁面303aの並び方向(前後方向)におけるコンデンサ素子100の端からその端から遠い側の半田120の端までの寸法L4が、前内壁面302aと保持部308との間隔C2より小さくなる角度まで、リード線端子200が前内壁面302a側に倒れるように、素子ユニット500が傾けられる。この状態で、素子ユニット500が、前内壁面302a側に寄せられ、前内壁面302aと保持部308の間からケース300内に挿入される。
図Bのように、リード線端子200がケース300の上端に接触するまでの間に、半田120が保持部308よりもケース300の内部側に移動すると、
図Cのように、素子ユニット500の傾きが戻される。その後、素子ユニット500は、
図Dのように、ケース300の天面部301の内壁面301aまで移動された後、
図Eのように、ケース300の中央へと移動される。素子ユニット500が中央へ移動する途中、リード線端子200が保持部308の端部に当接する。このとき、リード線端子200が内側に撓まされることで、保持部308の端部を避けることができる。
【0032】
図Eのように、素子ユニット500がケース300の中央へ移動すると、リード線端子200が保持部308の溝部309に嵌り込む。このとき、リード線端子200は、当該リード線端子200の径方向に半分より多く溝部309に嵌り込む。リード線端子200が、前内壁面302aと後内壁面303aの並び方向(前後方向)およびケース300の外方への動きが規制されるように、保持部308に保持され、ケース300内の適正な位置に位置決めされる。こうして、素子ユニット500のケース300内への収容が完了する。
【0033】
ここで、コンデンサ素子100の短手方向における寸法が大きくなることにより、短手方向におけるコンデンサ素子100のリード線端子200が延び出す側の端から当該端から遠い側の半田120の端までの寸法L3(
図4(b)参照)が大きくなるほど、素子ユニット500を大きく傾ける必要が生じる。そして、上記寸法L3がさらに大きくなると、リード線端子200がケース300の上端に接触する位置で素子ユニット500の傾きを戻したときに、半田120が保持部308に当接して引っ掛かり、それ以上、素子ユニット500をケース300内に挿入できなくなる。
【0034】
そこで、本実施の形態では、素子ユニット500を保持部308に邪魔されることなくケース300内に挿入できるように、素子ユニット500の上記寸法L3が、リード線端子200が前内壁面302a側に倒れるように傾けた素子ユニット500を、前内壁面302aと保持部308との間からケース300内に挿入し、リード線端子200がケース300の上端に接触するまでの間に素子ユニット500の傾きを戻したときに、半田120が保持部308に接触することなく保持部308よりもケース300の内部側、即ち天面部301の内壁面301a側に移動できる寸法とされている。
【0035】
素子ユニット500がケース300内に収容されると、コンデンサ素子100が収容されたケース300の内部に充填樹脂400が充填される。充填樹脂400は、熱硬化性樹脂、たとえば、エポキシ樹脂であり、液相状態で、保持部308よりもやや上の位置までケース300内に注入される。その後、ケース300内が加熱されると、ケース300内の充填樹脂400が硬化する。コンデンサ素子100が、ケース300および充填樹脂400によって覆われ、湿気や衝撃から保護される。
【0036】
こうして、
図1のように、フィルムコンデンサ1が完成する。
【0037】
<実施の形態の効果>
以上、本実施の形態によれば、以下の効果が奏される。
【0038】
ケース300は、2つの保持部308の間隔C1(
図3(b)参照)が、コンデンサ素子100の両側の端面101の並び方向(左右方向)における2つの半田120の部分での素子ユニット500の寸法L1(
図3(a)参照)よりも小さくされているので、保持部308の先端部をリード線端子200の部分まで内側に張り出させることができる。このため、リード線端子200を、外方に曲げることなく保持部308により保持できる。また、コンデンサ素子100の両側の端面101とケース300の左内壁面304aおよび右内壁面305aとの間の隙間が大きくなりにくいので、左内壁面304aと右内壁面305aの並び方向にケース300が大きくなりにくい。
【0039】
また、ケース300は、前内壁面302a(後内壁面303a)と保持部308との間隔C2が、長手方向におけるコンデンサ素子100の端から当該端から遠い側の半田120の端までの寸法L2(
図4(b)参照)よりも小さいので、前内壁面302aと後内壁面303aの並び方向にケース300が大きくなりにくい。
【0040】
さらに、素子ユニット500は、短手方向におけるコンデンサ素子100のリード線端子200が延び出す側の端から当該端から遠い側の半田120の端までの寸法L3(
図4(b)参照)が、リード線端子200が前内壁面302a側に倒れるように傾けた素子ユニット500を、前内壁面302aと保持部308との間からケース300内に挿入し、リード線端子200がケース300の上端に接触するまでの間に素子ユニット500の傾きを戻したときに、半田120が保持部308に接触することなく保持部308よりもケース300の内部側に移動できる寸法とされている。このため、ケース300が不要に大きくされなくとも、素子ユニット500を、保持部308に邪魔されることなく、ケース300内に収容することができる。
【0041】
さらに、リード線端子200が、当該リード線端子200の径方向に半分より多く保持部308の溝部309に嵌り込む。これにより、リード線端子200が溝部309から外れにくくなるので、リード線端子200を良好に保持部308により保持できる。加えて、フィルムコンデンサ1のプリント基板等への実装時に重要となるリード線端子200同士の間隔の寸法精度の向上と各リード線端子200の前後方向(前内壁面302aと後内壁面303aの並び方向)の位置ズレの低減を、従来使用していた治工具等なしで実現できる。
【0042】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、また、本発明の適用例も、上記実施の形態の他に、種々の変更が可能である。
【0043】
たとえば、
図6(a)に示すように、フィルムコンデンサ1に、上記実施の形態のコンデンサ素子100よりもよりも短手方向の寸法および長手方向の寸法が大きなコンデンサ素子100Aが用いられてもよい。この場合、素子ユニット500Aは、長手方向におけるコンデンサ素子100の端から当該端から遠い側の半田120の端までの寸法L2が、上記実施の形態の素子ユニット500の同寸法L2よりも大きく、短手方向におけるコンデンサ素子100Aのリード線端子200が延び出す側の端から当該端から遠い側の半田120の端までの寸法L3が、上記実施の形態の素子ユニット500の同寸法L2よりも大きい。
【0044】
本変更例の素子ユニット500Aが、ケース300内に収容される場合、
図6(b)に示すように、素子ユニット500Aは、上記実施の形態の素子ユニット500がケース300内に収容される場合と比べて大きく傾けられることになるが、リード線端子200がケース300の上端に近接した後に素子ユニット500の傾きを戻したときに、半田120が保持部308に接触することなく保持部308よりもケース300の内部側に移動される。よって、本変更例の素子ユニット500Aも、上記実施の形態と同様、半田120が保持部308に引っ掛かってしまうことなく、ケース300内に収容することができる。
【0045】
なお、
図6(a)では、便宜上、充填樹脂400が透明に描かれており、その表面部分の一部に斜線が入れられている。また、
図6(b)では、便宜上、素子ユニット500Aが透明に描かれている。
【0046】
また、上記実施の形態では、コンデンサ素子100の端面101における短手方向の中央部に、リード線端子200の上端部が半田120により接続された。しかしながら、コンデンサ素子100の端面101における短手方向の中央部から一方の平坦面102a側にずれた位置に、リード線端子200の上端部が半田120により接続されてもよい。
【0047】
さらに、上記実施の形態では、コンデンサ素子100は、誘電体フィルム上にアルミニウムを蒸着させた金属化フィルムにより形成されたが、これ以外にも、亜鉛、マグネシウム等の他の金属を蒸着させた金属化フィルムにより形成されてもよい。あるいは、コンデンサ素子100は、これらの金属のうち、複数の金属を蒸着させた金属化フィルムにより形成されてもよいし、これらの金属どうしの合金を蒸着させた金属化フィルムにより形成されてもよい。また、上記実施の形態では、コンデンサ素子100は、誘電体フィルム上にアルミニウムを蒸着させた2枚の金属化フィルムを重ね、重ねた金属化フィルムを巻回または積層することで形成されたものであるが、これ以外にも、誘電体フィルムの両面にアルミニウムを蒸着させた金属化フィルムと絶縁フィルムとを重ね、これを巻回または積層することにより、コンデンサ素子100が形成されてもよい。さらに、3枚以上の金属化フィルムを重ね、これを巻回または積層することにより、コンデンサ素子100が形成されてもよい。
【0048】
さらに、上記実施の形態では、本発明のコンデンサの一例として、フィルムコンデンサ1が挙げられた。しかしながら、本発明は、フィルムコンデンサ1以外のコンデンサに適用することもできる。
【0049】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【0050】
なお、上記実施の形態の説明において「上方」「下方」等の方向を示す用語は、構成部材の相対的な位置関係にのみ依存する相対的な方向を示すものであり、鉛直方向、水平方向等の絶対的な方向を示すものではない。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、各種電子機器、電気機器、産業機器、車両の電装等に使用されるコンデンサに有用である。
【符号の説明】
【0052】
1 フィルムコンデンサ(コンデンサ)
100 コンデンサ素子
101 端面
110 端面電極(電極)
120 半田
200 リード線端子
300 ケース
302a 前内壁面(第2内側面)
303a 後内壁面(第2内側面)
304a 左内壁面(第1内側面)
305a 右内壁面(第1内側面)
308 保持部
309 溝部