IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パナソニックIPマネジメント株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-超音波流量計 図1
  • 特許-超音波流量計 図2
  • 特許-超音波流量計 図3
  • 特許-超音波流量計 図4
  • 特許-超音波流量計 図5
  • 特許-超音波流量計 図6
  • 特許-超音波流量計 図7
  • 特許-超音波流量計 図8
  • 特許-超音波流量計 図9
  • 特許-超音波流量計 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】超音波流量計
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/66 20220101AFI20230105BHJP
【FI】
G01F1/66 102
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019082372
(22)【出願日】2019-04-24
(65)【公開番号】P2020180811
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安田 憲司
(72)【発明者】
【氏名】中林 裕治
(72)【発明者】
【氏名】中井 弘
(72)【発明者】
【氏名】木場 康雄
(72)【発明者】
【氏名】石崎 祐大
(72)【発明者】
【氏名】藤井 裕史
【審査官】森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特許第4561088(JP,B2)
【文献】特開2011-158470(JP,A)
【文献】特許第4531426(JP,B2)
【文献】特許第3473592(JP,B2)
【文献】特許第6111422(JP,B2)
【文献】特許第4792653(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波信号を送受信可能な一対の超音波振動子と、
一方の前記超音波振動子から送信され、流体を伝搬した超音波信号を他方の前記超音波振動子が受信するまでの超音波の伝搬時間を測定する伝搬時間測定部と、
前記伝搬時間から演算によって前記超音波振動子間を満たす流体の流量を求める制御部と、
受信側の前記超音波振動子が受信した受信波の第m波目を検知する受信検知回路と、
を備え、
前記伝搬時間測定部は、送信側の前記超音波振動子から超音波を送信して1回目の受信波の第m波目を前記受信検知回路が検知するまでの第1伝搬時間TPと、受信側の前記超音波振動子と送信側の前記超音波振動子で1回づつ反射して受信側の前記超音波振動子に達した2回目の受信波の第m波目を前記受信検知回路が検知するまでの第2伝搬時間TP2を測定し、前記第1伝搬時間TPと第2伝搬時間TP2の差の2分の1より超音波振動子間の真の伝搬時間TP0を求め、この真の伝搬時間TP0と前記第1伝搬時間TPの差より受信側の超音波振動子に超音波が到達して受信検知回路で受信開始から超音波の受信波の第m波目を受信したと検知するまでの受信遅れ時間TRを算出し、
前記受信検知回路は、前記第2伝搬時間TP2の測定時に前記第1伝搬時間TPの3倍から予め設定されていた推定遅れ時間TR0の2倍を引いた時間より所定時間TDだけ短い時間を前記2回目の受信波を受け付けない時間として第2受信波マスク時間TMを設定するマスク時間設定手段を備えたことを特徴とする超音波流量計。
【請求項2】
前記受信検知回路は、超音波流量計製造時に求めた遅れ時間TRを超音波流量計完成後の初回の流量計測時の前記推定遅れ時間TR0として使用し、それ以降の流量計測時は前記推定遅れ時間TR0として、前回の流量計測時に求めた受信遅れ時間TRを使用することを特徴とした請求項1に記載の超音波流量計。
【請求項3】
受信波を増幅するアンプと、前記第2伝搬時間TP2が予め予測された第2伝搬時間推定範囲の範囲内か否かを判定する第2伝搬時間判定手段を備え、
前記受信検知回路は、前記第2伝搬時間判定手段で範囲外と判断した場合に受信波の第m波目を検知するための検知基準電圧と、前記アンプの増幅率を調整して前記第2伝搬時間TP2を再測定することを特徴とした請求項1または2記載の超音波流量計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の送受信可能な超音波振動子を用いて超音波の伝搬時間を測定し、被測定流体の流量を計測する超音波流量計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の超音波流量計に用いられている超音波伝搬時間の測定方法は、一対の送受信可能な超音波振動子を対向して配置し、一方の超音波振動子をバースト信号で駆動し、超音波を送信し、他方の超音波振動子で受信して測定していた。図8は、伝搬時間の測定方法を説明する為の受信波形のイメージ図で、横軸に時間を、縦軸に電圧を示す。図中の起点T0は駆動波13の開始時点を、終点T1は駆動開始後、第m(図ではm=3)波終了時点を示す。R0は受信開始時点を、終点R1は受信開始後、第m波終了時点を示す。
【0003】
このように、駆動波13の第m波目のゼロクロス点を終点T1とし、受信側の超音波送受信器で受信した受信波14の第m波目のゼロクロス点を終点R1として、終点T1と終点R1との間の伝搬時間TP1を超音波伝搬時間として測定し、この伝搬時間を用いて流体の流速を計測し、流量を演算していた(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図9は、特許文献2に記載された超音波流量計の構成を示すものである。この超音波流量計100は流体の流れる測定流路101に設置した超音波振動子102と、超音波振動子102を駆動する駆動回路103と、駆動回路103にスタート信号を出力する制御部104と、超音波の伝搬時間を測定する伝搬時間測定部105と、超音波振動子102から送信した超音波を受ける超音波振動子107と、超音波振動子107の出力を増幅するアンプ106と、アンプ106の出力と検知基準電圧15とを比較し大小関係が反転したときに伝搬時間測定部105を停止させる受信検知回路108から構成されている。
【0005】
また、音速に対する温度の影響を無視できるように伝搬時間逆数差法を用いるために、測定流路1の上流側から下流側への超音波の伝搬時間と下流側から上流側への伝搬時間が測定できるように、切り替えスイッチ109を備えている。
【0006】
さらに、超音波振動子のバラツキや温度変化等によって超音波振動子内の遅れ時間や受信波形の変化による遅れ時間が変化した場合でも、超音波の伝搬時間が正確に測定できるように、送信側の超音波振動子から超音波を送信して1回目の受信波(第1受信波)の第m波目を受信検知回路で受信するまでの伝搬時間TPと、受信側の超音波振動子と送信側の超音波振動子に1回づつ反射して受信側の超音波振動子に達した2回目の受信波(第2受信波)の第m波目を受信検知回路で受信するまでの第2の伝搬時間TP2を測定し、伝搬時間TPと第2伝搬時間TP2の差の2分の1より超音波振動子間の真の伝搬時間TP0と真の受信遅れ時間TRを求める受信遅れ時間測定手段110を備えている。
【0007】
図10に第1受信波と第2受信波のイメージ図を示す。図に示すように、送信側の超音波振動子は、駆動波13で駆動されて超音波信号を送信し、受信側の超音波振動子は第1受信波14として受信する。同時に、反射波が発生して送信側の超音波振動子に波形21として到達して反射される。そして、この反射波を受信側の超音波振動子が第2受信波22として受信する。ここで、TRが測定した伝搬時間の遅れ時間である(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平9-33308号公報
【文献】特開2005-172556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、天然ガスのように密度の低い気体においては、気体内伝搬中の超音波の減衰が大きく、真の伝搬時間TP0を測定するための2回目の受信波は1回目の受信波に比べて非常に小さく、1回目の受信波と同等に増幅することが困難であり、従来の受信方式では1回目の受信波と同等に正確な受信タイミングを測定することが困難という課題があった。
【0010】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、超音波の減衰が大きく、従来の技術では2回目の受信波を測定することが困難な気体でも、超音波振動子のバラツキや温度変化の影響を受けない真の伝搬時間を測定することによって、より高精度な超音波流量計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記従来の課題を解決するために、本発明の超音波流量計は、超音波信号を送受信可能な一対の超音波振動子と、一方の前記超音波振動子から送信され、流体を伝搬した超音波信号を他方の前記超音波振動子が受信するまでの超音波の伝搬時間を測定する伝搬時間測定部と、前記伝搬時間から演算によって前記超音波振動子間を満たす流体の流量を求める制御部と、受信側の前記超音波振動子が受信した受信波の第m波目を検知する受信検知回路と、を備え、前記伝搬時間測定部は、送信側の前記超音波振動子から超音波を送信して1回目の受信波の第m波目を前記受信検知回路が検知するまでの第1伝搬時間TPと、受信側の前記超音波振動子と送信側の前記超音波振動子で1回づつ反射して受信側の前記超音波振動子に達した2回目の受信波の第m波目を前記受信検知回路が検知するまでの第2伝搬時間TP2を測定し、前記第1伝搬時間TPと第2伝搬時間TP2の差の2分の1より超音波振動子間の真の伝搬時間TP0を求め、この真の伝搬時間TP0と前記第1伝搬時間TPの差より受信側の超音波振動子に超音波が到達して受信検知回路で受信開始から超音波の受信波の第m波目を受信したと検知するまでの受信遅れ時間TRを算出し、 前記受信検知回路は、前記第2伝搬時間TP2の測定時に前記第1伝搬時間TPの3倍から予め設定されていた推定遅れ時間TR0の2倍を引いた時間より所定時間TDだけ短い時間を前記2回目の受信波を受け付けない時間として第2受信波マスク時間TMを設定するマスク時間設定手段を備えたことを特徴としたものである。
【0012】
これによって、超音波の減衰が大きな気体についても超音波振動子のバラツキや温度変化の影響を受けない真の伝搬時間を測定することが可能になり、流量計測精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の超音波流量計は、従来技術で正確な測定が困難だった密度の低い気体の計測精度を向上できるとともに、受信回路の増幅率を向上させなくても2回目の受信波が測定できるため、消費電流の低減が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態1における超音波流量計の構成図
図2】本発明の実施の形態1における超音波の受信波形のイメージ図
図3図2の第2受信波の拡大図
図4】(a)~(d)本発明の実施の形態1が適用できる測定流路の構造例を示す図
図5】本発明の実施の形態2における超音波の受信波形のイメージ図
図6】本発明の実施の形態3における超音波流量計の構成図
図7】本発明の実施の形態3における第2受信波形の拡大図
図8】従来例の超音波の受信波形のイメージ図
図9】従来例の超音波流量計の構成図
図10】従来例の第2受信波を含む受信波形のイメージ図
【発明を実施するための形態】
【0015】
第1の発明は、超音波信号を送受信可能な一対の超音波振動子と、一方の前記超音波振動子から送信され、流体を伝搬した超音波信号を他方の前記超音波振動子が受信するまでの超音波の伝搬時間を測定する伝搬時間測定部と、前記伝搬時間から演算によって前記超音波振動子間を満たす流体の流量を求める制御部と、受信側の前記超音波振動子が受信した受信波の第m波目を検知する受信検知回路と、を備え、前記伝搬時間測定部は、送信側の前記超音波振動子から超音波を送信して1回目の受信波の第m波目を前記受信検知回路が検知するまでの第1伝搬時間TPと、受信側の前記超音波振動子と送信側の前記超音波振動子で1回づつ反射して受信側の前記超音波振動子に達した2回目の受信波の第m波目を前記受信検知回路が検知するまでの第2伝搬時間TP2を測定し、前記第1伝搬時間TPと第2伝搬時間TP2の差の2分の1より超音波振動子間の真の伝搬時間TP0を求め、この真の伝搬時間TP0と前記第1伝搬時間TPの差より受信側の超音波振動子に超音波が到達して受信検知回路で受信開始から超音波の受信波の第m波目を受信したと検知するまでの受信遅れ時間TRを算出し、前記受信検知回路は、前記第2伝搬時間TP2の測定時に前記第1伝搬時間TPの3倍から予め設定されていた推定遅れ時間TR0の2倍を引いた時間より所定時間TDだけ短い時間を前記2回目の受信波を受け付けない時間として第2受信波マスク時間TMを設定するマスク時間設定手段を備えたことによって、超音波の減衰が大きな気体についても超音波振動子のバラツキや温度変化の影響を受けない真の伝搬時間を測定することが可能になり、流量計測精度を向上させることができる。
【0016】
第2の発明は、第1の発明の構成に加えて、前記受信検知回路は、超音波流量計製造時に求めた遅れ時間TRを超音波流量計完成後の初回の流量計測時の前記推定遅れ時間TR0として使用し、それ以降の流量計測時は前記推定遅れ時間TR0として、前回の流量計測時に求めた受信遅れ時間TRを使用することによって、超音波流量計の各構成部品のバラツキによる前記遅れ時間TR0の差の影響をうけることなく、超音波の減衰が大きな気体についても超音波振動子のバラツキや温度変化の影響を受けない真の伝搬時間を測定することが可能になり、流量計測精度を向上させることができる。
【0017】
第3の発明は、第1または2の発明の構成に加えて、受信波を増幅するアンプと、前記第2伝搬時間TP2が予め予測された第2伝搬時間推定範囲の範囲内か否かを判定する第2伝搬時間判定手段を備え、前記受信検知回路は、前記第2伝搬時間判定手段で範囲外と判断した場合に受信波の第m波目を検知するための検知基準電圧と、前記アンプの増幅率を調整して前記第2伝搬時間TP2を再測定することによって、より第2伝搬時間の測定精度が向上し、超音波の減衰が大きな気体についても超音波振動子のバラツキや温度変化の影響を受けない真の伝搬時間を測定することが可能になり、流量計測精度を向上させることができる。
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0019】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における超音波流量計の構成図を示すものである。
【0020】
図1に示すように、超音波流量計20は、流体の流れる測定流路1の上流と下流に設置した一対の超音波振動子2、7と、一対の超音波振動子2、7の送受信の設定切り替えを行う切り替えスイッチ9と、送信側に設定された超音波振動子を駆動する駆動回路3と、駆動回路3にスタート信号を出力する制御部4と、超音波の伝搬時間を測定する伝搬時間測定部5と、受信側に設定された超音波振動子で受信した超音波信号を所定の振幅に増幅するアンプ6と、アンプ6で増幅された受信波の第m波目を検知する受信検知回路8とを備えている。
【0021】
伝搬時間測定部5は、送信側の超音波振動子から超音波を送信して1回目の受信波(第1受信波)の第m波目を受信検知回路8が検知するまでの第1伝搬時間TPと、受信側の超音波振動子と送信側の超音波振動子で1回づつ反射して受信側の超音波振動子に達した2回目の受信波(第2受信波)の第m波目を受信検知回路8で検知するまでの第2伝搬時間TP2を測定し、第1伝搬時間TPと第2伝搬時間TP2の差の2分の1より超音波振動子間の真の伝搬時間TP0を求め、この真の伝搬時間TP0と第1伝搬時間TPの差より受信遅れ時間TRを算出する。
【0022】
ここで、受信検知回路8は、予め設定された検知基準電圧とアンプ6で増幅された受信波を比較し、大小関係が反転したことで第m波目を検知し、その後の最初のゼロクロスのタイミングを受信タイミングとし、伝搬時間測定部5は、送信開始から受信タイミングまでの時間を伝搬時間として測定する構成である。
【0023】
また、受信検知回路8は、第2伝搬時間TP2の測定時に第1伝搬時間TPの3倍から予め設定されていた推定遅れ時間TR0の2倍を引いた時間より所定時間TDだけ短い時間を第2受信波を受け付けない時間として第2受信波マスク時間TMを設定するマスク時間設定手段12を備えている。そして、マスク時間設定手段12は、第2受信波の想定される受信検知タイミング間際まで受信検知回路8における受信波の検知をマスクすることができる。
【0024】
この第2受信波マスク時間TMと第2受信波の受信タイミングの関係を図2に示す。なお、図2では、m=3として図示しており、以下、第m波目を第3波目として説明する。
【0025】
図2に示すように、第2受信波22の受信タイミングである終点R2は第1受信波14の第3波目を受信検知回路8が検知するまでの第1伝搬時間TPが判っていれば、第1伝搬時間TPの3倍から受信遅れ時間TRの2倍を引いた時間であることが推定できる。
【0026】
そこで、本発明では第1受信波の検知で測定した第1伝搬時間TPを基に第2受信波マスク時間TMを設定し、第2受信波22の終点R2ぎりぎりまで第2受信波マスク時間TMを設定し、第2伝搬時間TP2を正確に測定できるようにしている。ここで、第2受信波マスク時間TMを設定するためには受信遅れ時間TRが必要になるが、第2受信波マスク時間TMの設定にはある程度誤差のある受信遅れ時間TRでも問題無いため、超音波振動子の周波数等から予め設定された推定遅れ時間TR0を受信遅れ時間TRとして使用する。
【0027】
図3図2の第2受信波22を拡大した図である。
【0028】
図3に示すように、受信検知回路8は、検知基準電圧15とアンプ6による増幅後の受信波14とを比較し、第2受信波マスク時間TMが経過した後に大小関係が反転したタイミングPを第3波目として検知し、タイミングP後の最初のゼロクロス点を第2受信波の受信タイミングである終点R2とし、伝搬時間測定部5は、送信開始タイミングである起点T0から終点R2までの伝搬時間TP2を測定する。
【0029】
そして、図からわかるように、検知基準電圧15を受信波のゼロクロスレベル近辺(第3波目より前の第1波目や第2波目を検知できる電圧)に設定しておいても、終点R2よりも所定時間TD(超音波の周波数の1周期)前に第2受信波マスク時間TMを設定することによって、受信検知回路8は第3波目を検知することができ、伝搬時間測定部5は正確に第2受信波22の終点R2を受信検知し、第2伝搬時間TP2を測定することができる。なお、所定時間TDは、超音波の周波数の1周期に限らず、第2波を検知しない時間であれば良いことは言うまでもない。
【0030】
これによって、第2受信波22を第1受信波と同等の振幅まで増幅する必要がなくなり、超音波の減衰が大きい気体の流量を計測する場合においても第2伝搬時間TP2が正確に測定でき、高精度の超音波流量計を実現できる。
【0031】
また、本発明に使用する測定流路と超音波振動子の配置と点線で示す超音波の伝搬経路の関係は、図1の構成に限定されず、図4に示すように測定流路1の上流と下流に配置された一対の超音波振動子2,7間の超音波の伝搬時間を測定して流体の流量を測定する超音波流量計すべてに適用できる。
【0032】
図4(a)は、本実施の形態の説明で用いたもので超音波の伝搬経路が測定流路1の流れ方向に一致するように上流と下流に一対の超音波振動子2,7を対向して配置したもの、(b)は、超音波の伝搬経路が測定流路1の流れ方向に対して斜めに横切るように上流と下流に一対の超音波振動子2,7を対向して配置したもの、(c)は、測定流路1の上流と下流の同一面に一対の超音波振動子2,7を配置し、超音波の伝搬経路が測定流路1の対向する面に1回反射するようにしたもの、(d)は、測定流路1の上流と下流の同一面に一対の超音波振動子2,7を配置し、超音波の伝搬経路が測定流路1の対向する面に2回反射するようにしたものである。
【0033】
また、従来例のように第2受信波22が第1受信波と同じ振幅まで増幅可能な気体においては、従来の受信検知方法を採用し、第1受信波測定時の増幅率から従来方式では困難と判断した場合のみ本発明のマスク時間設定手段を用いる構成としても良い。
【0034】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。本実施の形態の超音波流量計も、図1と同様の構成をとる。基本的な構成、動作は実施の形態1と同じである。実施の形態1との差異は、マスク時間設定手段で設定される第2受信波マスク時間TMを計算するときの推定遅れ時間TR0を各超音波流量計の部品バラつきや温度、気体の影響を考慮して更新できることである。
【0035】
即ち、実施の形態2において、超音波流量計の製造時に温度、気体が安定した状態で当該の超音波流量計の製造時の環境で受信遅れ時間TRを従来の方式で測定する。そして、この受信遅れ時間TRを初期値として受信検知回路8に保存し、超音波流量計完成後の初回の流量計測時は製造時に測定した受信遅れ時間TRを用いて第2受信波マスク時間TMを決定し、それ以降の流量計測時は推定遅れ時間TR0として、前回の流量計測時に求めた遅れ時間TRを使用するものである。
【0036】
図5は、実施の形態2の第2受信波マスク時間TMの決定方法を示すイメージ図で、基本的には実施の形態1と同様であるが、固定値だった推定遅れ時間TR0を前回の受信遅れ時間TR(n-1)として、毎測定毎に更新することを特徴としている。ここで、前回の受信遅れ時間TR(n-1)は前回の流量計測時に測定した第1伝搬時間TP(n-1)と第2伝搬時間TP2(n-1)から算出された遅れ時間である。そして、第2受信波
マスク時間TMは、今回の流量計測で得られた第1伝搬時間TPの3倍から前回の受信遅れ時間TR(n-1)の2倍及び所定時間TDを引いた時間で設定される。こうすることによって、超音波流量計の部品バラツキや周囲環境の影響を受けることなく正確な第2受信波マスク時間TMが決定できるために、より高精度な超音波流量計を実現できる。
【0037】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3について説明する。本実施の形態の超音波流量計も、図1と同様の構成をとる。基本的な構成、動作は実施の形態1と同じである。実施の形態1との差異は、図6に示すように、本実施の形態の超音波流量計30は、第2伝搬時間判定手段16を備えたことである。
【0038】
第2伝搬時間判定手段16は、第2受信波マスク時間TMより第2伝搬時間TP2の推定される範囲を決めて、実際に測定された第2伝搬時間TP2が推定範囲TKに収まっているかどうかを判定する。
【0039】
図7に実施の形態3の説明の為の第2受信波22の拡大図を示す。本実施の形態3では第2伝搬時間判定手段で推定範囲TKの範囲外と判定された場合は、検知基準電圧15とアンプ6の増幅率を変更し、推定範囲TKの範囲内に第2伝搬時間TP2が収まるまで調整する。
【0040】
また、ここで調整できない場合は、受信遅れ時間TRを更新せずに次回の流量計測動作に移行する。こうすることによって、周囲環境の急激な変化やノイズによって、間違ったTRを設定することが無くなるため、流量計測の信頼性を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上のように、本発明にかかる超音波流量計は、超音波振動子のバラツキや周囲環境の影響を受けることなく、常に正確な超音波の伝搬時間を測定できるため、非常に高精度な超音波流量計を実現することが可能となり、流量測定基準器やガスメータ等の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0042】
1 測定流路
2、7 超音波振動子
3 駆動回路
4 制御部
5 伝搬時間測定部
6 アンプ
8 受信検知回路
9 切り替えスイッチ
12 マスク時間設定手段
16 第2伝搬時間判定手段
20、30 超音波流量計
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10