IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パナソニックIPマネジメント株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ガスメータ 図1
  • 特許-ガスメータ 図2
  • 特許-ガスメータ 図3
  • 特許-ガスメータ 図4
  • 特許-ガスメータ 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】ガスメータ
(51)【国際特許分類】
   G01F 3/22 20060101AFI20230105BHJP
   G01F 1/66 20220101ALI20230105BHJP
【FI】
G01F3/22 D
G01F1/66 101
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019235388
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021103154
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木下 英樹
(72)【発明者】
【氏名】木場 康雄
(72)【発明者】
【氏名】安田 憲司
【審査官】羽飼 知佳
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-183230(JP,A)
【文献】特開2013-148523(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/00- 9/02
G01F 15/00-15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被計測流体が流れる計測流路と、
前記計測流路の上流と下流に配置された一対の超音波送受信器と、
前記超音波送受信器の間で超音波を送受信して計測された伝搬時間により前記被計測流体の流量計測を行う流量計測部と、
前記流量計測部で計測された伝搬時間若しくは流量に基づいて不正の有無を判定する不正判定部と、
を備え、
前記流量計測部は、流量を算出する最小時間として設定されたサンプリング周期を複数の等間隔な計測ブロックに分割し、当該計測ブロック毎に得られた流量値の平均値を、当該サンプリング周期の流量値として算出するよう構成されており、
前記計測ブロックにおける計測を、前記計測ブロックの一部の範囲で行う第1計測モードと全範囲で行う第2計測モードを切換えて行うことを特徴とするガスメータ。
【請求項2】
前記不正判定部は、前記第2計測モードの計測において、前記計測ブロック内で計測された伝搬時間若しくは流量の最大と最小の差が所定値以上の場合、不正が行われたと判定することを特徴とする請求項1に記載のガスメータ。
【請求項3】
前記不正判定部は、複数の前記計測ブロックで不正が行われたと判定された場合に不正が行われたと最終的に判定することを特徴とする請求項2に記載のガスメータ。
【請求項4】
前記不正判定部は、前記第2計測モードの計測において、前記第1計測モードの計測時間帯で計測された流量に対して、非計測時間帯で計測された流量が所定値以上大きい場合、不正が行われたと判定することを特徴とする請求項1に記載のガスメータ。
【請求項5】
前記流量計測部は、通常は前記第1計測モードで計測を行い、定期若しくは不定期に前記第2計測モードによる計測を行うことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のガスメータ。
【請求項6】
前記計測ブロックにおける流量計測は、上流側の前記超音波送受信器から下流側の前記超音波送受信器への順方向伝搬時間と下流側の前記超音波送受信器から上流側前記超音波送受信器への逆方向伝搬時間を1つの計測単位とし、複数の計測単位で構成されており、
前記第2計測モードにおける前記計測単位の数は前記第計測モードの前記計測単位の数よりも大きいことを特徴とする請求1~5のいずれか1項に記載のガスメータ。
【請求項7】
前記計測ブロックにおける流量計測は、上流側の前記超音波送受信器から下流側の前記超音波送受信器への順方向伝搬時間と下流側の前記超音波送受信器から上流側の前記超音波送受信器への逆方向伝搬時間を1つの計測単位とし、複数の計測単位で構成されており、
前記第2計測モードにおける前記計測単位の数と前記第計測モードの前記計測単位の数を同じとしたことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のガスメータ。
【請求項8】
外部に異常を報知する報知部を備え、
前記不正判定部は、不正が行われたと判断した場合、前記報知部により外部へ報知することを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載のガスメータ。
【請求項9】
前記被計測流体を遮断する遮断部を備え、
前記不正判定部は、不正が行われたと判定した場合、前記遮断部で前記被計測流体を遮断することを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載のガスメータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を利用してガスの流量を計測するガスメータに関し、特に、流量を制御することで検針値を少なくする不正を検知することが可能な流量計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波を用いて流体の流量を計測する超音波流量計の一つとして、伝搬時間逆数差法を利用したものが知られている。伝搬時間逆数差法では、流量計測の対象となる流路(計測流路)の上流側および下流側のそれぞれに超音波送受波器を設け、パルス状の超音波を交互に送受信させる。これにより、順方向および逆方向それぞれの伝搬時間を利用して流体の流速を測定することができるので、当該流速と計測流路の断面積とを利用して流体の流量を計測することができる。
【0003】
伝搬時間逆数差法を利用した超音波流量計の具体例としてガスメータがある。ガスメータは、電源として電池を用いており、電池の交換無しで長期(例えば10年間)の計測を行う必要から、計測流路となる配管内でガスの流量を間欠的にサンプリング計測し、その計測値の平均値を算出して積算することで、ガス使用量(流量積算値)を取得する構成となっている。
【0004】
なお、サンプリング計測は、基本的に、予め設定されているサンプリング周期毎に1回行われる。つまり、サンプリング周期とは、流量計測のための最少の時間単位として設定されている周期である。
【0005】
ところで、ガスは、水等の液体とは異なり圧縮可能な流体であるため、ガスエンジンヒートポンプ(GHP)等のガスを圧縮させる機器を通過する過程で、ガス流に脈動が生じやすい。ガスメータにおいては、この脈動がサンプリング周期に重なると、ガスの流量計測に誤差が生じることが知られている。
【0006】
そこで従来から、ガス流に脈動が生じても正確なガス流量値を得るための技術が種々提案されている。例えば、特許文献1には、サンプリング周期を、3つ以上の等間隔な計測ブロックに分割して当該計測ブロック毎に流量計測を行わせるとともに、サンプリング周期毎に、このすべての計測ブロックで得られた流量値の平均値を、当該サンプリング周期の流量値として算出するよう構成された超音波流量計が開示されている。更に、各計測ブロックでの計測タイミングをランダムとする方法も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2013-148523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、従来の方法による計測方法によると、GHP等による脈流に対しては、計測ブロックごとに計測された流量値の平均値を算出することで、脈流が平均化されて正確な流量を計測できるが、流れを意図的に変化させる場合には、正確な計測が行えないという課題があった。
【0009】
図5は、計測ブロックにおける計測タイミングと、GHP等による脈流と、意図的に変化させた脈流を示す図である。図において、流量計測は、サンプリング周期Tcを時間T
bで4つの計測ブロックに分割し、各計測ブロックのそれぞれで計測動作時間Tmにおいて実施するように構成されている。特許文献1では、各計測ブロックでランダムなタイミングで計測を行う構成も提示されており、この方法を用いることで不正を検知することは可能であるが、本願は、各計測ブロックでランダムなタイミングで計測を行う必要のない方法を提案するものである。
【0010】
そして、図5から分かるように、GHP等による脈流による流量変化(流量が-V~V間で徐々に変化しながら周期的に変化)に対しては、脈動の周期がサンプリング周期に同期しなければ各計測ブロックで計測された流量値を平均することで脈動による流量変動を相殺して流量計測を行うことができるが、意図的な流量変化(流量0~Vの間で矩形的に変化)で図示しているように、計測動作時間Tmで示す計測時間を避けてガスを流すようにすると、各計測ブロックで計測される流量値は0となるので、サンプリング周期で算出される流量は0となってしまう。
【0011】
従って、ガスメータとガス機器の間に、図5の意図的な流量変化で図示した流量制御を行う機器を設置することで、ガスを使用しているにも関わらず、ガスメータで計測される流量を0とすることができ、これを利用して不正にガスを取得することが可能であった。
【0012】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであって、超音波流量計測を利用したガスメータにおいて、意図的なガス流量の流量変化を検出することで、不正なガスの取得を検知することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明に係るガスメータは、被計測流体が流れる計測流路と、前記計測流路の上流と下流に配置された一対の超音波送受信器と、前記超音波送受信器の間で超音波を送受信して計測された伝搬時間により前記被計測流体の流量計測を行う流量計測部と、前記流量計測部で計測された伝搬時間若しくは流量に基づいて不正の有無を判定する不正判定部と、を備え、前記流量計測部は、流量を算出する最小時間として設定されたサンプリング周期を複数の等間隔な計測ブロックに分割し、当該計測ブロック毎に得られた流量値の平均値を、当該サンプリング周期の流量値として算出するよう構成されており、前記計測ブロックにおける計測を、前記計測ブロックの一部の範囲で行う第1計測モードと全範囲で行う第2計測モードを切換えて行うことを特徴とする。
【0014】
そして、計測ブロックの全範囲で計測を行う第2計測モードにより、意図的なガス流量の流量変化を検出することで、不正なガスの取得を検知することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明では、伝搬時間逆数差法を利用した超音波流量計において、意図的なガス流量の流量変化を検出することで、不正なガスの取得を検知することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態1のガスメータの構成を示すブロック図
図2】(a)本発明の実施の形態1のガスメータにおけるサンプリング周期および計測ブロックの構成例と意図的な流量変化との関係を示すタイムチャート、(b)計測ブロックにおける伝搬時間計測を説明するタイムチャート
図3】本発明の実施の形態1のガスメータの不正判定部の動作を説明する為のタイムチャート
図4】本発明の実施の形態1の他の実施例を説明するタイムチャート
図5】従来の超音波流量計におけるサンプリング周期および流量変化との関係を示すタイムチャート
【発明を実施するための形態】
【0017】
第1の発明は、被計測流体が流れる計測流路と、前記計測流路の上流と下流に配置された一対の超音波送受信器と、前記超音波送受信器の間で超音波を送受信して計測された伝搬時間により前記流体の流量計測を行う流量計測部と、前記流量計測部で計測された伝搬時間若しくは流量に基づいて不正の有無を判定する不正判定部と、を備え、流量計測部は、流量を算出する最小時間として設定されたサンプリング周期を複数の等間隔な計測ブロックに分割し、当該計測ブロック毎に得られた流量値の平均値を、当該サンプリング周期の流量値として算出するよう構成されており、前記計測ブロックにおける計測を、前記計測ブロックの一部の範囲で行う第1計測モードと全範囲で行う第2計測モードを切換えて行うことを特徴とするガスメータである。
【0018】
そして、計測ブロックの全範囲で計測を行う第2計測モードにより、意図的なガス流量の流量変化を検出することで、不正なガスの取得を検知することができる。
【0019】
第2の発明は、特に第1の発明において、前記不正判定部は、前記第2計測モードの計測において、前記計測ブロック内で計測された伝搬時間若しくは流量の最大と最小の差が所定値以上の場合、不正が行われたと判定することを特徴とする。
【0020】
第3の発明は、特に第2の発明において、前記不正判定部は、複数の前記計測ブロックで不正が行われたと判定された場合に不正が行われたと最終的に判定することを特徴とする。
【0021】
第4の発明は、特に第1の発明において、前記不正判定部は、前記第2計測モードの計測において、前記第1計測モードの計測時間帯で計測された流量に対して、非計測時間帯で計測された流量が所定値以上大きい場合、不正が行われたと判定することを特徴とする。
【0022】
第5の発明は、特に第1~4の何れか1つの発明において、前記流量計測部は、通常は前記第1計測モードで計測を行い、定期若しくは不定期に前記第2計測モードによる計測を行うことを特徴とする。
【0023】
第6の発明は、特に第1~5の何れか1つの発明において、前記計測ブロックにおける流量計測は、上流側の前記超音波送受信器から下流側の前記超音波送受信器への下流側伝搬時間と上流側の前記超音波送受信器から下流側の超音波送受信器への上流側伝搬時間を1つの計測単位とし、複数の計測単位で構成されており、前記第2計測モードにおける前記計測単位の数は前記第2計測モードの前記計測単位の数よりも大きいことを特徴とするものである。
【0024】
第7の発明は、特に第1~5の何れか1つの発明において、前記計測ブロックにおける流量計測は、上流側の前記超音波送受信器から下流側の前記超音波送受信器への下流側伝搬時間と上流側の前記超音波送受信器から下流側の前記超音波送受信器への上流側伝搬時間を1つの計測単位とし、複数の計測単位で構成されており、前記第2計測モードにおける前記計測単位の数と前記第2計測モードの前記計測単位の数を同じとしたことを特徴とするものである。
【0025】
第8の発明は、特に第1~7の何れか1つの発明において、外部に異常を報知する報知部を備え、前記不正判定部は、不正が行われたと判断した場合、前記報知部による外部へ報知することを特徴とする。
【0026】
第9の発明は、特に第1~8の何れか1つの発明において、被計測流体を遮断する遮断部を備え、前記不正判定部は、不正が行われたと判定した場合、前記遮断部で被計測流体を遮断することを特徴とする。
【0027】
以下、図面を参照しながら実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。
【0028】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0029】
(実施の形態1)
[ガスメータの構成]
本発明の実施の形態1に係るガスメータの構成について、図1を参照して具体的に説明する。本実施の形態に係るガスメータ1は、伝搬時間逆数差法を利用した超音波流量計測方法を利用している。
【0030】
ガスメータ1は、図1に示すように、ガスが流れる計測流路30と、計測流路30の上流と下流に配置された一対の超音波送受信器(第一超音波送受信器11,第二超音波送受信器12)及び流量計測部10を備えている。また、流量計測部10は、送受信切換部13と、発振駆動部14と、超音波検出部15と、伝搬時間測定部16と、流量算出部17と、計測制御部20を備えている。
【0031】
一対の超音波送受信器は、測定対象のガスが流れる計測流路30に交差して対向配置される。本実施の形態では、図1に示すように、計測流路30に傾斜して交差するように、第一超音波送受信器11および第二超音波送受信器12が対向して配置されている。なお、計測流路30内のガスの流れる方向を図中矢印Fとすると、第一超音波送受信器11および第二超音波送受信器12の対向方向は角度φで傾斜している。
【0032】
第一超音波送受信器11および第二超音波送受信器12は、互いに超音波の送信および受信を行う。これら超音波送受信器の具体的な構成は限定されず、超音波の送信および受信の双方を行うことができる公知の超音波発振素子を用いることができる。本実施の形態では、公知の圧電セラミック振動子が用いられる。
【0033】
送受信切換部13は、計測制御部20の制御により一定の周期で一対の超音波送受信器の送受信を切り替える。発振駆動部14は、送信側に設定された超音波送受信器の一方を駆動することにより、他方に向けて超音波を送信させる。超音波検出部15は、受信側に設定された超音波送受信器の一方で受信した超音波を検出する。
【0034】
より具体的には、例えば、送受信切換部13により、第一超音波送受信器11が送信側に第二超音波送受信器12が受信側に設定されていれば、発振駆動部14は、第一超音波送受信器11を駆動させ、第二超音波送受信器12に向けて超音波をさせる(図中双方向の矢印Ss参照)。第二超音波送受信器12は、第一超音波送受信器11から送信された超音波を受信し、当該超音波は超音波検出部15により検出される。その後、送受信切換部13により、第二超音波送受信器12が送信側に第一超音波送受信器11が受信側に設定されれば、同様の超音波の送受信および検出が行われる。
【0035】
伝搬時間測定部16は、超音波検出部15で検出された超音波の伝搬時間を測定する。
つまり、第一超音波送受信器11が送信側に第二超音波送受信器12が受信側に設定されている例であれば、第一超音波送受信器11で送信された超音波が第二超音波送受信器12で受信されるまでの時間を測定する。流量算出部17は、伝搬時間測定部16により検出された伝搬時間から、ガスの流量値を算出する。本実施の形態では、流量算出部17は、計測ブロック流量算出部171とサンプリング周期流量算出部172とから構成されている。これら流量算出部17による流量の算出については後述する。
【0036】
送受信切換部13、発振駆動部14、超音波検出部15、伝搬時間測定部16、および流量算出部17の具体的な構成は特に限定されず、超音波発振素子の分野で公知の切換回路、駆動回路、受信回路、計測回路、演算回路等を好適に用いることができる。また、送受信切換部13、発振駆動部14、超音波検出部15、伝搬時間測定部16、および流量算出部17は、それぞれ独立した回路等として構成されてもよいし、単一の基板上に実装されて一体的に構成されてもよい。あるいは、流量算出部17がCPU等の演算素子およびメモリ等の記憶部であれば、送受信切換部13、発振駆動部14、超音波検出部15および伝搬時間測定部16の少なくとも一部の構成が、記憶部に格納されるプログラムに従って演算素子が動作することにより実現される構成、すなわち演算素子の機能構成となっていてもよい。
【0037】
なお、流量計測部10の具体的構成は、図1に示す構成に限定されず、公知の他の構成を採用することができる。したがって、本発明においては、流量計測部10は、一対の超音波送受信器の間で超音波を送受信することにより流体の流量計測を行うよう構成されていればよく、送受信切換部13、発振駆動部14、超音波検出部15、伝搬時間測定部16、および流量算出部17の少なくとも一部を備えていない構成であってもよいし、これら以外の構成要素を備えている構成であってもよい。
【0038】
計測制御部20は、送受信制御部21、サンプリング周期設定部22、計測ブロック分割部23、及び計測モード切換部25から構成されている。送受信制御部21は、送受信切換部13、発振駆動部14、伝搬時間測定部16、および流量算出部17(具体的にはサンプリング周期流量算出部172)の動作を制御することにより、第一超音波送受信器11および第二超音波送受信器12の間で超音波を送受信させ、流量計測を行う。なお、超音波検出部15(および計測ブロック流量算出部171)の構成によっては、これらの動作も送受信制御部21により制御されてよい。
【0039】
サンプリング周期設定部22は、流量計測のための最少の時間単位であるサンプリング周期を設定する。送受信制御部21は、送受信切換部13等の動作を制御して一対の超音波送受信器の間で超音波を送受信させる。計測ブロック分割部23は、サンプリング周期を複数の計測ブロックに分割する。計測ブロックは、等間隔の時間帯であって、計測ブロック分割部23は、3つ以上の計測ブロックにサンプリング周期を分割する。送受信制御部21は、等間隔に分割されたサンプリング周期の下位周期といえる計測ブロックそれぞれにおいて、超音波の送受信を行わせる。
【0040】
計測モード切換部25は、計測ブロックの一部の範囲で行う第1計測モードと全範囲で行う第2計測モードの切換えを送受信制御部21に指示するもので、詳細は後述する。
【0041】
不正判定部24は、計測ブロックにおける計測流量に基づいて、流量変化状態を判断し不正の有無を判断するもので、詳細は後述する。
【0042】
計測制御部20は、基本的に、サンプリング周期毎に、流量計測を行うように構成されていればよいが、ここでいう流量計測は、計測ブロック毎の流量計測で算出される流量値ではなく、サンプリング周期全体についての流量値である。前者をブロック流量値と称し
、後者を周期流量値と称すれば、周期流量値は、単一のサンプリング周期におけるブロック流量値の平均値として算出される。
【0043】
送受信制御部21、サンプリング周期設定部22、および計測ブロック分割部23、の具体的構成は特に限定されない。例えば、送受信制御部21はCPU等の演算素子およびメモリ等の記憶部から構成され、サンプリング周期設定部22、および計測ブロック分割部23、は、それぞれ公知のスイッチング素子、減算器、比較器等による論理回路等として構成されてもよい。あるいは、計測制御部20がCPU等の演算素子で構成されていれば、送受信制御部21、サンプリング周期設定部22、計測ブロック分割部23は、計測制御部20の機能構成であってもよい。この場合、演算素子が記憶部に格納されるプログラムに従って動作することにより、送受信制御部21、サンプリング周期設定部22、および計測ブロック分割部23、が実現される。
【0044】
[サンプリング周期および計測ブロック]
次に、前述したサンプリング周期および計測ブロック、並びに、流量計測の方法(計測ブロック流量算出部171およびサンプリング周期流量算出部172の構成の説明も含む)について、図2(a),(b)を参照して具体的に説明する。
【0045】
なお、本実施の形態では、サンプリング周期Tcを2秒とし、サンプリング周期Tcを4等分した第1計測ブロック~第4計測ブロックの4つの計測ブロックで構成している。従って、1つの計測ブロックの時間Tbは0.5秒である。
【0046】
図2(a)は、流量0と流量Vを繰り返す意図的な流量変化と本実施の形態の計測ブロックにおいて実際に計測する時間の関係を示しており、斜線部が実際に計測を行っている時間(以下、計測動作時間という)であり、本実施の形態の超音波流量計においては、計測モード切換部25の指示により、前記計測ブロックの一部の範囲で行うことで消費電力を抑えた第1計測モード(以下、通常計測モードと称す)と全範囲で行う第2計測モード(以下、詳細計測モードと称す)を切換えて流量計測を行っている。
【0047】
なお、通常計測モードにおいては、計測ブロックの時間Tbに対して、計測動作時間Tm=Tb/2に設定されている。また、詳細計測モードにおいては、計測動作時間Tn=Tbに設定されている。
【0048】
図2(b)は、図2(a)の第1計測ブロックを拡大したもので、伝搬時間の計測タイミングを示している。図2(b)の矢印A、Bは、超音波の伝搬方向を示しており、矢印Aは、上流から下流、即ち、第一超音波送受信器11で送信した超音波を第二超音波送受信器12で受信して伝搬時間を計測するタイミングを示し、矢印Bは、下流から上流、即ち、第二超音波送受信器12で送信した超音波信号を第一超音波送受信器11で受信して伝搬時間を計測するタイミングを示している。
【0049】
そして、通常計測モードにおける計測は、矢印A、Bを1つの計測単位として、計測単位S1~S8までの8個の計測単位で構成され、詳細計測モードにおける計測は、計測単位S1~S16までの16個の計測単位で構成されている。
【0050】
そして、流量算出部17のうち、計測ブロック流量算出部171は、第1計測ブロックから第4計測ブロックのすべての計測ブロックで計測されたガスの流量値を算出して記憶する。具体的には、通常計測モードでは、計測単位S1~S8毎に計測されたで上流から下流への伝搬時間と下流から上流への伝搬時間の時間差の平均値から既知の演算式で流量を算出する。また、詳細計測モードでは、計測単位S1~S16毎に計測されたで上流から下流への伝搬時間と下流から上流への伝搬時間の差分値(伝搬時間差)の平均値から既
知の演算式で流量を算出する。
【0051】
その後、流量算出部17のうちサンプリング周期流量算出部172は、送受信制御部21からのサンプリング周期Tcに関する情報を取得し、第1計測ブロックから第4計測ブロックで流量計測された流量値を、計測ブロック流量算出部171から取得し、これらの平均値を算出して、当該平均値をサンプリング周期Tcの流量値として取得する。
【0052】
なお、詳細計測モードにおいては、各計測ブロックの全範囲で伝搬時間の計測を行っている為に、計測ブロックの終了時に流量演算を完了できない場合も考えられるが、その場合は、計測ブロック流量算出部171による流量値を算出とサンプリング周期流量算出部172による流量値の算出のタイミングが遅延することになるものの、通常計測モードと詳細計測モードの流量値算出の遅延時間を固定し、例えば次の計測ブロックの終了タイミングに流量値を出力するようにすれば0.5秒遅れることになるが、見かけ上、サンプリング周期Tc毎に流量値を取得できるので、ガスメータとしての計測上の実質的な問題は発生しない。
【0053】
次に、不正判定部24の動作について、図2を用いて説明する。
【0054】
詳細計測モードでは、各計測ブロックの全範囲で伝搬時間の計測を行っているので、流量変化を計測単位S1~S16毎に計測される伝搬時間差の変化として検知できる。そこで、不正判定部24は、計測単位S1~S16毎に計測された伝搬時間差を用い、流量0と所定流量を繰り返す意図的な流量変化に対応する伝搬時間差の変化が検知された場合、不正が行われていることを判定することができる。なお、伝搬時間差の代わりに、伝搬時間差に基づき演算された流量値を用いても良いが、この場合には演算が必要となり、流量算出部17の負荷が大きくなる。
【0055】
図3は、不正判定部24における不正の判定方法を説明する為の図で、図3(ア)は計測単位S1~S16で得られた伝搬時間差を示している。そして、不正判定部24は、計測単位S1~S16で計測されたそれぞれの伝搬時間差(計測単位ごとの伝搬時間差をΔt1~Δt16とする)を比較し、ある計測単位を境(図2(b)では、計測単位S8と計測単位S9にかけて)に、流量が所定値以上に急変することを、伝搬時間差の変化量(計測単位S8と計測単位S9の場合は、Δt=Δt8-Δt9)で判定することができる。
【0056】
また、不正判定部24は、意図的な流量変化でなければ計測ブロックの時間Tb間に急激な変化が起こり得ないことが分かっている場合は、急激な変化を検知する代わりに、計測ブロックにおける伝搬時間の最大と最小の差が所定値以上の場合に不正ありと判定するように構成しても良い。
【0057】
更に、図3(イ)は計測単位S1~S16で計測されたそれぞれの伝搬時間差の3個の移動平均を示している。そして、不正判定部24は、伝搬時間差の移動平均の最大と最小の差が所定値以上の場合に不正と判定するように構成しても良い。意図的な流量変化のように矩形的な流量変化では移動平均でも最大と最小の差は変わらないが、GHP等による流量変化のように曲線的に変化する場合には移動平均の最大と最小の差は小さくなる。従って、移動平均を用いて判断することで、最大と最小の差による不正判定の精度を向上することができる。
【0058】
なお、移動平均を演算する伝搬時間差の数は、3個に限らず、意図的な流量変化に合わせ適宜設定することができることは言うまでもない。
【0059】
また、不正判定部24は、1つの計測ブロックによる判断だけでなく、複数の計測ブロックで急激な流量変化有が判定された場合に、不正が行われていることを判定するようにしてもよい。例えば、サンプリング周期Tcを構成する4つの計測ブロックの内、2つの計測ブロックで不正ありと判定された場合に、不正であると確定するこことで、ノイズ等により誤検知を防止し、確実に不正を判定することができる。
【0060】
また、不正判定部24は、詳細計測モードの計測において、通常計測モードの計測動作時間Tnに対応する期間で計測された流量に対して、非計測時間Teの期間で計測された流量が所定値以上大きい場合、不正が行われたと判定するように構成しても良い。この場合、1つの計測ブロックで判断しても良いし、複数の計測ブロックで不正が行われたと判定された場合に、最終的に不正と判断しても良い。
【0061】
更に、不正判定部24で不正ありと判定された場合、遮断弁27により流路を遮断してガスを止める、或いは、報知部26により、表示或いは通信により外部に報知する構成としても良い。
【0062】
また、本実施の形態では、一対の超音波送受信器(第一超音波送受信器11,第二超音波送受信器12)は計測流路30に角度φで交差して対向配置される構成となっているが、例えば、計測流路30の同じ側に配置される構成であってもよい。この構成では、送信側に設定された超音波送受信器からされた超音波が、計測流路30の内壁で反射されて受信側に設定された超音波送受信器で受信されることになる。また、計測流路30は、超音波送受信器とともに一体化されて超音波計測ユニットを構成してもよい。
【0063】
また、本実施の形態では、通常計測モードにおける計測単位を8個とし、詳細計測モードにおける計測単位の数を増やして16としたが、図4に示す様に、計測単位の通常計測モードと同じ8個として計測ブロックの全体に均等に分散してもよく、この場合、計測に要する消費電力の増加を抑制することができる。
【0064】
なお、本発明は前記実施の形態の記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、ガスメータ等の伝搬時間逆数差法を利用したガスの流量計測の分野に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0066】
1 ガスメータ
10 流量計測部
11 第一超音波送受信器(超音波送受信器)
12 第二超音波送受信器(超音波送受信器)
24 不正判定部
26 報知部
27 遮断弁
30 計測流路
図1
図2
図3
図4
図5