(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】ガス保安装置の通信回路
(51)【国際特許分類】
H04L 25/02 20060101AFI20230105BHJP
【FI】
H04L25/02 F
(21)【出願番号】P 2020014347
(22)【出願日】2020-01-31
【審査請求日】2022-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】羽迫 里志
(72)【発明者】
【氏名】屋木 悠佑
(72)【発明者】
【氏名】阿南 裕己
(72)【発明者】
【氏名】萱場 貴士
(72)【発明者】
【氏名】中村 英治
【審査官】川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0263232(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0018467(US,A1)
【文献】特表2019-528644(JP,A)
【文献】特開平01-157153(JP,A)
【文献】特開2008-072168(JP,A)
【文献】中国実用新案第209181836(CN,U)
【文献】特開平02-122730(JP,A)
【文献】特開平09-065448(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極通信端子と、
回路グランドに接続された負極通信端子と、
電源としてのDC電圧源と、
前記正極通信端子と前記負極通信端子間に接続する抵抗を、1対1通信用の第1抵抗値と、バス通信用の第2抵抗値に切替可能な受信回路と、
前記正極通信端子と前記負極通信端子間に送信信号を発生する送信回路と、
ショットキーバリアダイオードと、イネーブル抵抗と、前記ショットキーバリアダイオードと前記イネーブル抵抗を前記正極通信端子と前記DC電圧源間に直列に接続するイネーブル回路と、
を備えたガス保安装置の通信回路。
【請求項2】
前記受信回路は、前記正極通信端子と前記負極通信端子間に接続された端末装置のダイオードの有無を検知するダイオード検知回路を備えた請求項1に記載のガス保安装置の通信回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス供給路に使用するガス保安装置の通信回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図6は、従来の通信装置の構成図であり、1対1通信回路とバス通信回路の両方を、独立に備えている(特許文献1の
図2を参照。なお、特許文献1では、ガス保安装置に接続される無線端末装置側の通信回路として掲載されている)。1対1通信回路とバス通信回路の両方を備える理由は、どちらか片方のみを備える端末装置との接続を可能とするためである。なお、簡易な構成として1対1通信回路のみを備えたガス保安装置も存在する。
【0003】
1対1通信回路は、正極通信端子DTと、負極通信端子SGと、受信回路RXDと、送信回路TXDと、イネーブル回路ENDを備え、DC電圧源VDDと、回路グランドGNDに接続されており、受信回路RXDは受信抵抗R21と受信信号端子RTDを備え、送信回路TXDは送信スイッチSW8と送信抵抗R9を備え、イネーブル回路ENDはイネーブルスイッチSW9とダイオードD3とイネーブル抵抗R10を備えている。
【0004】
送信時には、所定の時間、イネーブルスイッチSW9を閉じることで、正極通信端子DTと負極通信端子SGを介して接続されている端末側に起動要求を伝えることで、端末側から供給される電圧により正極通信端子DTがHigh電圧に維持される。そして、送信スイッチSW8を閉じることで正極通信端子DTをLow電圧にしてスペース信号を送信し、送信スイッチSW8を開くことで正極通信端子DTをHigh電圧にしてマーク信号を送信する。受信時には送信スイッチSW8およびイネーブルスイッチSW9が開いた状態となり、端末装置から送られてくるマーク信号もしくはスペース信号を受信信号端子RTDから取り出す。
【0005】
1対1通信回路の規格の例として、Nライン規格がある。Nライン規格では、正極通信端子DTのHigh電圧の最大定格は6Vに規定されているが、High電圧の最小値は規定されておらず、機器の設計者により自由に設定できるようになっている。また、イネーブル回路のダイオードD3はNライン規格により搭載が義務付けられているものではないが、多くのガス保安装置で用いられるDC電圧源VDDが3.6V以下である一方で、正極通信端子DTの最大定格が6Vに規定されていることから、イネーブルスイッチSW9に逆電圧がかかることを防ぐ目的で搭載されているものである。
【0006】
バス通信回路は、正極通信端子U1と、負極通信端子U2と、受信回路RXUと、送信回路TXUと、イネーブル回路ENUを備え、DC電圧源VDDと、回路グランドGNDに接続されており、受信回路RXUは受信抵抗R22と受信信号端子RTUを備え、送信回路TXUは送信スイッチSW10と送信抵抗R11を備え、イネーブル回路ENUはイネーブルスイッチSW11とイネーブル抵抗R12を備えている。
【0007】
送信時には、イネーブルスイッチSW11を閉じることで、正極通信端子U1をHigh電圧に維持する。そして、送信スイッチSW10を閉じることで正極通信端子U1をLow電圧にしてスペース信号を送信し、送信スイッチSW10を開くことで正極通信端子U1をHigh電圧にしてマーク信号を送信する。受信時には送信スイッチSW10およびイネーブルスイッチSW11が開いた状態となり、端末装置から送られてくるマーク信号もしくはスペース信号を受信信号端子RTUから取り出す。
【0008】
バス通信回路の規格の例として、Uバス規格がある。Uバス規格では、抵抗を介して正
極通信端子U1をDC電圧源VDDに接続することで、正極通信端子U1の電圧をHighレベルに変化させる。DC電圧源VDDの電圧値の範囲は2.2V~3.6Vに規定されている。Nライン規格の正極通信端子DTの電圧が最大で6Vであるのとは異なり、Uバス規格の正極通信端子U1の電圧は3.6Vを超えることはない。その分、イネーブルスイッチSW11にかかる逆電圧は小さくて済むので、ダイオードは必ずしも必要とはならない。
【0009】
一方、Nラインの正極通信端子DTと異なり、Uバスの正極通信端子U1は、High電圧の下限値が規格によって定められており、機器の設計者が自由に設定できるようにはなっていない。よって、イネーブル回路ENUにダイオードを使用すると、DC電圧源VDDの電圧値をダイオードの電圧降下分だけ高く維持する必要が生じる。その場合、昇圧回路を追加する等のコストアップ要因をかかえることになるので設計上不利である。以上の理由から、通常、バス通信回路のイネーブル回路ENUにはダイオードは搭載されていない。
【0010】
受信回路の抵抗は、マーク信号を受信側に伝達する際に流れる電流の大きさを規定する。その抵抗値は、それぞれの規格に要請される条件から、ノイズ耐性と消費電流のバランスに鑑みて定められるべきものである。実際、Nライン規格とUバス規格では、その抵抗値は異なっており、
図6においても、受信回路RXDの受信抵抗R21と受信回路RXUの受信抵抗R22の値は異なることを前提としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来の構成では、1対1通信回路とバス通信回路が独立の回路として存在し、端子台にもそれぞれ独立の端子が設けられていてコストが高いという問題があった。1対1通信回路とバス通信回路の基本構成は類似しているものの、電圧および受信抵抗の仕様が異なることから、これまで共用化することは考えられず、別個の独立な回路として搭載されていた。本発明では、1対1通信回路とバス通信回路の回路を統合することでコストダウンを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記従来の課題を解決するために、本発明のガス保安装置の通信回路は、正極通信端子と、回路グランドに接続された負極通信端子と、電源としてのDC電圧源と、前記正極通信端子と前記負極通信端子間に接続する抵抗を、1対1通信用の第1抵抗値と、バス通信用の第2抵抗値に切替可能な受信回路と、前記正極通信端子と前記負極通信端子間に送信信号を発生する送信回路と、ショットキーバリアダイオードと、イネーブル抵抗と、前記ショットキーバリアダイオードと前記イネーブル抵抗を前記正極通信端子と前記DC電圧源に直列に接続するイネーブル回路と、を備えたもので、イネーブル回路に電圧降下の小さいショットキーバリアダイオードを用いることで、1対1通信回路として用いる際に、イネーブルスイッチに逆電圧がかかることを防止するとともに、バス通信回路として用いる際に、正極通信端子のHigh電圧の下限要求を満たしながら、DC電圧源の電圧値を大きくする必要が生じないようにする。また、受信抵抗値をR1とR2の両方に切り替え可能とすることで、1対1通信回路、バス通信回路のどちらとしても動作する共通回路を実現する。
【発明の効果】
【0014】
1対1通信回路、バス通信回路のどちらとしても動作する共通回路とすることで、従来、独立の回路として搭載されていたものが1本化され、かつ、DC電圧源の電圧を昇圧する回路の追加も不要なので部品点数が削減されるとともに、端子台の端子数も削減され、コストダウンを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態1におけるガス保安装置の通信回路を示す構成図
【
図2】
図1に示した受信回路とは別の受信回路の構成図
【
図3】本発明の実施の形態2におけるガス保安装置の通信回路を示す構成図
【
図4】(a)ガス保安装置の1対1通信回路に接続される端末装置の構成図、(b)ガス保安装置のバス通信回路に接続される端末装置の構成図
【発明を実施するための形態】
【0016】
第1の発明は、正極通信端子と、回路グランドに接続された負極通信端子と、電源としてのDC電圧源と、前記正極通信端子と前記負極通信端子間に接続する抵抗を、1対1通信用の第1抵抗値と、バス通信用の第2抵抗値に切替可能な受信回路と、前記正極通信端子と前記負極通信端子間に送信信号を発生する送信回路と、ショットキーバリアダイオードと、イネーブル抵抗と、前記ショットキーバリアダイオードと前記イネーブル抵抗を前記正極通信端子と前記DC電圧源間に直列に接続するイネーブル回路と、を備えた構成である。
【0017】
そして、イネーブル回路に備えたショットキーバリアダイオードが一般のスイッチングダイオードよりも電圧降下が小さいという特徴を有するので、バス通信回路として用いる際に、通信端子間のHigh電圧の下限要求を満たしながら、DC電圧源の電圧値を大きくする必要が生じない。そして、1対1通信回路として用いる際には、イネーブルスイッチに逆電圧がかかることを防止する。また、1対1通信用の受信抵抗と、バス通信用の受信抵抗を任意に切り替え可能とすることで、1対1通信回路、バス通信回路のどちらとしても動作する共通回路を実現する。
【0018】
従って、従来、独立の回路として搭載されていたものが1本化され、部品点数を削減できる。また、端子台の端子数が削減されるため、コストダウンを実現できる。
【0019】
第2の発明は、第1の発明において、前記受信回路は、前記正極通信端子と前記負極通信端子間に接続された端末装置のダイオードの有無を検知するダイオード検知回路を備えた構成である。
【0020】
第1の発明に加え、端末装置のダイオード有無を検知する機能を備えたことで、ガス保安装置に接続された端末装置の通信装置が、正極通信端子DTと負極通信端子SG間にダイオードを有しないNライン通信回路であるか、正極通信端子U1と負極通信端子U2の間にダイオードを有するUバス通信回路であるかを判定することができる。
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、各実施の形態を説明する上で、かならずしも必要ではない規格上の制約条件については、説明の単純化のために記載を省略している。
【0022】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるガス保安装置の通信回路を示す構成図で、正極
通信端子DT/U1と、負極通信端子SG/U2と、受信回路RXC1と、送信回路TXCと、イネーブル回路ENCと、DC電圧源VDDと、回路グランドGNDを備えており、1対1通信もしくはバス通信のどちらの回路としても動作させることができる。
【0023】
受信回路RXC1は、1対1通信用の第1受信抵抗R1と、バス通信用の第2受信抵抗R2と、第1受信抵抗R1と第2受信抵抗R2を選択して正極通信端子DT/U1と負極通信端子SG/U2間に接続する抵抗切替スイッチSW1と、受信信号端子RTCを備えている。従って、抵抗切替スイッチSW1の切替によって、1対1通信を行う際は第1受信抵抗R1が選択され、バス通信を行う際は第2受信抵抗R2が選択されることで、正極通信端子DT/U1と負極通信端子SG/U2間に接続する抵抗を、1対1通信用の第1抵抗値と、バス通信用の第2抵抗値に切替可能となっている。
【0024】
そして、正極通信端子DT/U1と負極通信端子SG/U2に接続された外部機器(図示せず)からの送信信号は、受信信号端子RTCからマーク信号もしくはスペース信号が受信信号として取り出され、受信データの値が確定される。
【0025】
送信回路TXCは、送信抵抗R3と、送信抵抗R3を正極通信端子DT/U1と負極通信端子SG/U2間に接続する送信スイッチSW2を備えている。送信抵抗R3の抵抗値は、
図6における送信抵抗R9とR11に求められる条件を両方とも満たすように決定される。つまり、1対1通信とバス通信の両方の要件を満たす抵抗値に決定される。そして、送信スイッチSW2の開閉により、スペース信号もしくはマーク信号が外部機器に送信される。
【0026】
イネーブル回路ENCは、イネーブルスイッチSW3とショットキーバリアダイオードSDとイネーブル抵抗R4を備えている。イネーブルスイッチSW3は、直列接続されたショットキーバリアダイオードSDとイネーブル抵抗R4をDC電圧源VDDに接続することで、1対1通信を行う際には、
図6のイネーブルスイッチSW9と同様の開閉動作を行い、バス通信を行う際には、
図6のイネーブルスイッチSW11と同様の開閉動作を行う。
【0027】
ショットキーバリアダイオードSDは一般のスイッチングダイオードより電圧降下の小さいショットキーバリアダイオードを用いることで、バス通信回路として用いる際に、Uバス規格の正極通信端子U1のHigh電圧の下限要求を満たすために、DC電圧源の電圧値を大きくする必要が生じないようにする。そして、1対1通信回路として用いる際には、イネーブルスイッチSW3に逆電圧がかかることを防止する。イネーブル抵抗R4の抵抗値は、
図6におけるイネーブル抵抗R10とR12に求められる条件を両方とも満たすように決定される。つまり、1対1通信とバス通信の両方の要件を満たす抵抗値に設定される。
【0028】
以上に述べたように、
図1に示す通信回路は、イネーブル回路ENCに電圧降下の小さいショットキーバリアダイオードSDを用いることで、1対1通信回路とバス通信回路の異なる電圧仕様に対応するとともに、抵抗切替スイッチSW1で受信抵抗値を第1受信抵抗R1と第2受信抵抗R2のどちらにも切り替え可能とすることで、1対1通信回路、バス通信回路のどちらとしても動作する共通回路となっている。従って、従来、独立の回路として搭載されていたものが1本化され、部品点数を削減できる。また、端子台の端子数が削減されるため、コストダウンを実現できる。
【0029】
本実施の形態において、1対1通信の規格としてはNライン規格もしくはHライン規格を想定しており、バス通信の規格としてはUバス規格を想定している。
【0030】
図2は、
図1に示した受信回路とは別の受信回路の構成図である。受信回路RXC2はバス通信用の第2受信抵抗R2と、抵抗R5と、抵抗切替スイッチSW4と、受信信号端子RTCを備えている。第2受信抵抗R2は、
図1と同様、バス通信用の受信抵抗であり、抵抗R5は第2受信抵抗R2と並列接続したときの合成抵抗が、1対1通信用の第1受信抵抗R1と等しくなるように決定された抵抗である。抵抗R5の抵抗値は、以下の数式により表される。なお、以降に示す数式において、各抵抗の符号が抵抗値を表しているものとしている。
【0031】
R5=R1×R2/(R2-R1)
抵抗切替スイッチSW4は、1対1通信とバス通信を切り替える際に選択されるスイッチであり、1対1通信を行う際は抵抗切替スイッチSW4を閉じることで、受信抵抗値は第2受信抵抗R2と抵抗R5の合成抵抗値と等しい第1受信抵抗R1の抵抗値となり、バス通信を行う場合は抵抗切替スイッチSW4を開くことで、受信抵抗値は第2受信抵抗R2単独の抵抗値となる。従って、正極通信端子DT/U1と負極通信端子SG/U2間に接続する抵抗を、1対1通信用の第1抵抗値と、バス通信用の第2抵抗値に切替可能な機能を有する。
【0032】
以上に述べたように、
図2に示す受信回路RXC2は、
図1の受信回路RXC1と等しい機能を持つので、
図1の受信回路RXC1を
図2の受信回路RXC2と置換えても、同様の効果を得ることが出来る。
【0033】
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2におけるガス保安装置の通信回路を示す構成図であり、実施の形態1で述べた
図1にいくつかの構成要件を加えている。加えた構成要件は、受信回路RXC3内のダイオード検知抵抗R6とダイオード検知抵抗接続スイッチSW5と、端末装置のダイオード有無を検知するための信号を送信する検知信号スイッチSW6と、電流制限抵抗R7とからなるダイオード検知回路DSCである。また、本通信回路の外に、正極通信端子DT/U1と負極通信端子SG/U2を介して、端末装置TMを接続した状態を示している。
【0034】
ダイオード検知抵抗接続スイッチSW5と検知信号スイッチSW6は、互いに連動したスイッチとして動作する。通常は、検知信号スイッチSW6は回路グランドGND側に接続され、ダイオード検知抵抗接続スイッチSW5は開いており、このときの回路構成は
図1と同じであって、実施の形態1で説明したのとまったく同じ動作をする。
【0035】
一方、端末装置TMのダイオード有無を検出しようとするときには、検知信号スイッチSW6は電流制限抵抗R7側に接続され、ダイオード検知抵抗接続スイッチSW5は閉じた状態となる。このとき、負極通信端子SG/U2には、DC電圧源VDDから電流制限抵抗R7を介して電圧が印可される。そして、受信信号端子RTCの電圧レベルをしきい判定することで、接続されている端末装置TMの種類を判定する。
【0036】
その後、検知信号スイッチSW6を回路グランドGND側に接続し、ダイオード検知抵抗接続スイッチSW5を開いて通常動作に戻る際に、判定結果に基づいて、抵抗切替スイッチSW1の接続を第1受信抵抗R1もしくは第2受信抵抗R2のどちらかに設定する。
【0037】
ダイオード検知抵抗R6および電流制限抵抗R7の抵抗値は、受信信号端子RTCの電圧レベルがしきい値よりも低い場合は、1対1通信用の端末装置が接続されていると判定され、受信信号端子RTCの電圧レベルがしきい値よりも高い場合は、バス通信用の端末装置が接続されていると判定できるように、端末装置TMの種類の判定条件を勘案の上、設定されている。なお、端末装置TMのダイオード有無を検出しようとするときの抵抗切
替スイッチSW1の接続状態は、設計時にあらかじめどちらかに決定されるが、抵抗値が大きい方に接続されるようにするのが好適である。
【0038】
次に、端末装置TMの内部回路構成について説明し、そのあと、ダイオード検知抵抗R6および電流制限抵抗R7の抵抗値設計の方法について説明する。
【0039】
図4は、ガス保安装置の通信回路に接続される端末装置の構成図であり、
図3のTMの内部回路構成を表している。なお、説明の単純化のため、本実施の形態を説明するのに必要な回路素子のみを表示している。
【0040】
図4(a)は、端末装置の1対1通信回路を示している。端末装置TM1は、受信抵抗R8を備え、本実施の形態の通信回路の通信端子(正極通信端子DT/U1と負極通信端子SG/U2)に接続されている。受信抵抗R8の抵抗値は
図3の第1受信抵抗R1と同じである。
【0041】
図4(b)は、端末装置のバス通信回路を示している。端末装置TM2は、ダイオードD1を備え、本実施の形態の通信回路の通信端子(正極通信端子DT/U1と負極通信端子SG/U2)に接続されている。ダイオードD1は逆接続保護用ダイオードとして、バス通信回路に搭載されるものである。
【0042】
以下に、
図3と
図4を参照しながら、端末装置のダイオード有無を検出するための、ダイオード検知抵抗R6および電流制限抵抗R7の抵抗値設計の方法について説明する。ここで、検知信号スイッチSW6は電流制限抵抗R7側に接続され、ダイオード検知抵抗接続スイッチSW5は閉じており、抵抗切替スイッチSW1は第2受信抵抗R2に接続されるよう設計されているものとする。まず、受信回路RXC3の内部抵抗の合成抵抗値RSUMは第2受信抵抗R2とダイオード検知抵抗R6が並列接続されていることから、以下の数式で求めることができる。
【0043】
RSUM=R2×R6/(R2+R6)
次に、
図3の端末装置TMとして、
図4(a)に示す端末装置TM1が接続されている場合、受信信号端子RTCの電圧値V1は以下の数式により表される。
【0044】
V1=VDD×RSUM/(R7+R8+RSUM)
また、
図3のTMとして、
図4(b)に示す端末装置TM2が接続されている場合、受信信号端子RTCの電圧値V2は、ダイオードD1の順方向電圧VFを用いて、以下の数式により表される。
【0045】
V2=(VDD-VF)×RSUM/(R7+RSUM)
そして、電圧しきい値VTHは、以下の数式を満たすように設定される。
【0046】
V1<VTH<V2
ここで、電圧しきい値VTHと電圧値V1との電圧差と、電圧値V2と電圧しきい値VTHとの電圧差が、共に出来るだけ大きくなるように、ダイオード検知抵抗R6、電流制限抵抗R7を選択することが望ましい。そのほうが、電圧、温度、部品の定数値など、諸要因のバラツキが存在しても、数式で規定した条件が成立しやすいためである。そのためには、合成抵抗値RSUMの値が受信抵抗R8に比べて十分小さくなるように、ダイオード検知抵抗R6を選ぶことで、端末装置TM1が接続された際の受信信号端子RTCの電圧値V1を低くすればよい。また、合成抵抗値RSUMの値が電流制限抵抗R7に比べて十分大きくなるように、電流制限抵抗R7を選ぶことで、端末装置TM2が接続された際の受信信号端子RTCの電圧値V2を高くすればよい。
【0047】
また、コストを抑制する観点から、オペアンプを使用しなくてすむように、電圧しきい値VTHの値を一般のデジタル・トランジスタのON/OFF動作しきい電圧値に設定できるよう、ダイオード検知抵抗R6、電流制限抵抗R7を選択することが望ましい。
【0048】
以上に述べたように、
図3に示す通信回路は、端末装置TMのダイオード有無を検知するダイオード検知回路DSCを備えたことで、ガス保安装置に接続された端末装置TMの通信回路が、正極通信端子DTと負極通信端子SG間にダイオードを有しないNライン通信回路(
図4(a))であるか、正極通信端子U1と負極通信端子U2の間にダイオードを有するUバス通信回路(
図4(b))であるかを判定する機能を有する。その判定結果に基づき、1対1通信もしくはバス通信のどちらの回路としても動作させることができる。
【0049】
図5は、逆接続保護回路の構成図であり、本実施の形態の正極通信端子DT/U1とSG/U2の間に挿入して使用するようにしてもよい。逆接続保護回路PRTは、ダイオードD2とスイッチSW7を備えており、スイッチSW7は、
図3のダイオード検知抵抗接続スイッチSW5および検知信号スイッチSW6と連動したスイッチとして動作する。
【0050】
具体的には、通常動作のときに、スイッチSW7は閉じ、ダイオード検知抵抗接続スイッチSW5は開き、検知信号スイッチSW6は回路グランドGND側に接続され、端末装置TMのダイオード有無を検出しようとするときには、スイッチSW7は開き、ダイオード検知抵抗接続スイッチSW5は閉じ、検知信号スイッチSW6は電流制限抵抗R7側に接続される。このように、スイッチSW7の開閉制御を行う理由は、
図3に示す端末装置TMとして、
図4(a)のTM1が接続されている場合において、ダイオードD2が通信端子(正極通信端子DT/U1と負極通信端子SG/U2)間に接続されていると、
図4(a)の受信抵抗R8がダイオードD2によってバイパスされてしまい、本実施の形態の判定方法が成立しなくなるためである。
【0051】
逆接続保護回路PRTをガス保安装置の通信回路に備えることは、本実施の形態の効果を得るために必須な条件ではないが、Uバス規格に逆接続保護用のダイオードの搭載が規定されているので、Uバス規格に対応するためには必要となる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明はガス供給路に使用するガス保安装置の通信回路として利用できる。
【符号の説明】
【0053】
DT/U1 正極通信端子
SG/U2 負極通信端子
RTC 受信信号端子
RXC1、RXC2、RXC3 受信回路
TXC 送信回路
ENC イネーブル回路
VDD DC電圧源
GND 回路グランド
DSC ダイオード検知回路
R4 イネーブル抵抗
SD ショットキーバリアダイオード