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特許7203362表示制御システム、表示システム、移動体、表示制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】表示制御システム、表示システム、移動体、表示制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G09G 5/00 20060101AFI20230105BHJP
   G02B 27/01 20060101ALI20230105BHJP
【FI】
G09G5/00 510V
G09G5/00 510A
G09G5/00 530H
G09G5/00 550P
G02B27/01
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021079915
(22)【出願日】2021-05-10
(62)【分割の表示】P 2017131527の分割
【原出願日】2017-07-04
(65)【公開番号】P2021131565
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2021-06-09
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】窪田 耕明
【審査官】塚本 丈二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/055699(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/125266(WO,A1)
【文献】特開2014-238537(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 5/00-5/42
G02B 27/01
B60K 35/00-37/06
B60R 9/00-11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理的に分離した複数の表示装置を制御する表示制御部と、
前記複数の表示装置に表示させる画面を記憶する単一の仮想フレームメモリと、を備え、
前記複数の表示装置は、単一の移動体に搭載され、
前記複数の表示装置は、第1の表示装置と、第2の表示装置と、を含み、
前記第1の表示装置はカーナビゲーションシステムの表示器であり、
前記第2の表示装置はヘッドアップディスプレイであり、
前記表示制御部は、前記第1の表示装置と前記第2の表示装置とに跨って表示させる画面を前記仮想フレームメモリに書き込むように構成されており、
前記第1の表示装置と前記第2の表示装置とに跨って表示させる画面は、前記第2の表示装置へユーザの注意を促す第1アイコンと、前記第2の表示装置に表示されている虚像にユーザの視線を誘導する第2アイコンと、を含む単一の画面の情報として前記仮想フレームメモリに書き込まれ、
前記虚像は、前記単一の移動体の運転者が前記第1の表示装置に着目している時に、前記単一の移動体の前方に歩行者が現れた場合、前記歩行者を囲むように前記第2の表示装置に表示され、
前記第1アイコンは、前記第1の表示装置に表示され、
前記第2アイコンは、前記第1アイコンから、前記第2の表示装置上に表示される前記虚像に向けて延びる画像である
表示制御システム。
【請求項2】
前記表示制御部は、前記複数の表示装置に個別に表示させる画面を前記仮想フレームメモリに更に書き込むように構成されている
請求項1に記載の表示制御システム。
【請求項3】
前記表示制御部は、
前記複数の表示装置を複数のグループに分類した場合に、前記複数のグループと一対一に対応する複数のプロセッサと、
前記複数のプロセッサと一対一に対応し、前記仮想フレームメモリを構成する複数のフレームメモリと、を有し、
前記複数のプロセッサの各々は、描画コマンドに従って前記複数のフレームメモリのうち対応するフレームメモリに書き込むことにより、前記複数の表示装置のうち対応するグループに属するいずれかの表示装置に表示させる画面を生成するように構成されている
請求項1又は2に記載の表示制御システム。
【請求項4】
前記複数のプロセッサの各々は、
前記複数のプロセッサのうち他の全てのプロセッサに前記描画コマンドを転送し、前記他の全てのプロセッサとの間で前記描画コマンドを共有することにより、前記複数のフレームメモリを前記仮想フレームメモリとして機能させる
請求項3に記載の表示制御システム。
【請求項5】
前記描画コマンドには優先度が設定され、
前記描画コマンドのうち、少なくとも前記第1の表示装置と前記第2の表示装置とに跨って表示させる画面を描画させる描画コマンドは前記優先度が高く設定され、
前記複数のプロセッサの各々は、
前記描画コマンドの前記優先度を判定し、前記描画コマンドの前記優先度が高いと判定した場合は、前記描画コマンドの転送を実行する
請求項4に記載の表示制御システム。
【請求項6】
前記仮想フレームメモリには、
前記複数のプロセッサと一対一に対応する複数の描画領域が設定されており、
前記複数のプロセッサの各々は、
前記複数の描画領域のうち対応する描画領域に、前記描画コマンドにて指定される前記仮想フレームメモリ上の描画位置が属さない場合には、前記複数のプロセッサのうち他の少なくとも1つのプロセッサに前記描画コマンドを転送することにより、前記複数のフレームメモリを前記仮想フレームメモリとして機能させる
請求項3に記載の表示制御システム。
【請求項7】
前記表示制御部は、前記複数のプロセッサと前記複数の描画領域との対応関係を管理する統合管理部を更に有する
請求項6に記載の表示制御システム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の表示制御システムと、
前記複数の表示装置と、を備える
表示システム。
【請求項9】
請求項8に記載の表示システムと、
前記表示システムが搭載された移動体本体と、を備える
移動体。
【請求項10】
物理的に分離した複数の表示装置を制御する表示制御方法であって、
前記複数の表示装置は、単一の移動体に搭載され、
前記複数の表示装置は、第1の表示装置と、第2の表示装置と、を含み、
前記第1の表示装置はカーナビゲーションシステムの表示器であり、
前記第2の表示装置はヘッドアップディスプレイであり、
前記複数の表示装置に表示させる画面を記憶する単一の仮想フレームメモリに、前記第1の表示装置と前記第2の表示装置とに跨って表示させる画面を書き込み、
前記第1の表示装置と前記第2の表示装置とに跨って表示させる画面は、前記第2の表示装置へユーザの注意を促す第1アイコンと、前記第2の表示装置に表示されている虚像にユーザの視線を誘導する第2アイコンと、を含む単一の画面の情報として前記仮想フレームメモリに書き込まれ、
前記虚像は、前記単一の移動体の運転者が前記第1の表示装置に着目している時に、前記単一の移動体の前方に歩行者が現れた場合、前記歩行者を囲むように前記第2の表示装置に表示され、
前記第1アイコンは、前記第1の表示装置に表示され、
前記第2アイコンは、前記第1アイコンから、前記第2の表示装置上に表示される前記虚像に向けて延びる画像である
表示制御方法。
【請求項11】
コンピュータシステムに、
請求項10に記載の表示制御方法を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に表示制御システム、表示システム、移動体、表示制御方法及びプログラムに関し、より詳細には、物理的に分離した複数の表示装置を制御する表示制御システム、表示システム、移動体、表示制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、乗員(運転者等)に脇見を止めるよう促すための警報装置が記載されている。この警報装置は、左方向の脇見を検出した場合には左前方ピラーに設けられた第1警告灯を点灯(又は点滅)させ、右方向の脇見を検出した場合には右前方ピラーに設けられた第2警告灯を点灯(又は点滅)させる。この警報装置では、乗員(運転者)の脇見に伴って第1警告灯又は第2警告灯が点灯(又は点滅)することで、乗員(運転者)が脇見を自覚しやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2013/051307号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ただし、特許文献1に記載の構成では、物理的に分離した複数の表示装置(第1警告灯及び第2警告灯)は個別に表示(点灯又は点滅)するだけであって、複数の表示装置が連携して単一の情報を表示することはない。そのため、特許文献1に記載の構成では、例えば、運転者の視線(注視方向)を前方へ誘導する効果が十分に得られないことがある。
【0005】
本開示は上記事由に鑑みてなされており、物理的に分離した複数の表示装置を連携させて複数の表示装置にて単一の情報を表示可能な表示制御システム、表示システム、移動体、表示制御方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る表示制御システムは、表示制御部と、単一の仮想フレームメモリと、を備える。前記表示制御部は、物理的に分離した複数の表示装置を制御する。前記仮想フレームメモリは、前記複数の表示装置に表示させる画面を記憶する。前記複数の表示装置は、単一の移動体に搭載される。前記複数の表示装置は、第1の表示装置と、第2の表示装置と、を含む。前記第1の表示装置はカーナビゲーションシステムの表示器である。前記第2の表示装置はヘッドアップディスプレイである。前記表示制御部は、前記第1の表示装置と前記第2の表示装置とに跨って表示させる画面を前記仮想フレームメモリに書き込むように構成されている。前記第1の表示装置と前記第2の表示装置とに跨って表示させる画面は、前記第2の表示装置へユーザの注意を促す第1アイコンと、前記第2の表示装置に表示されている虚像にユーザの視線を誘導する第2アイコンと、を含む単一の画面の情報として前記仮想フレームメモリに書き込まれる。前記虚像は、前記単一の移動体の運転者が前記第1の表示装置に着目している時に、前記単一の移動体の前方に歩行者が現れた場合、前記歩行者を囲むように前記第2の表示装置に表示される。前記第1アイコンは、前記第1の表示装置に表示される。前記第2アイコンは、前記第1アイコンから、前記第2の表示装置上に表示される前記虚像に向けて延びる画像である。
【0007】
本開示の一態様に係る表示システムは、前記表示制御システムと、前記複数の表示装置と、を備える。
【0008】
本開示の一態様に係る移動体は、前記表示システムと、前記表示システムが搭載された移動体本体と、を備える。
【0009】
本開示の一態様に係る表示制御方法は、物理的に分離した複数の表示装置を制御する表示制御方法である。前記複数の表示装置は、単一の移動体に搭載される。前記複数の表示装置は、第1の表示装置と、第2の表示装置と、を含む。前記第1の表示装置はカーナビゲーションシステムの表示器である。前記第2の表示装置はヘッドアップディスプレイである。前記制御方法では、前記複数の表示装置に表示させる画面を記憶する単一の仮想フレームメモリに、前記第1の表示装置と前記第2の表示装置とに跨って表示させる画面を書き込む。前記第1の表示装置と前記第2の表示装置とに跨って表示させる画面は、前記第2の表示装置へユーザの注意を促す第1アイコンと、前記第2の表示装置に表示されている虚像にユーザの視線を誘導する第2アイコンと、を含む単一の画面の情報として前記仮想フレームメモリに書き込まれる。前記虚像は、前記単一の移動体の運転者が前記第1の表示装置に着目している時に、前記単一の移動体の前方に歩行者が現れた場合、前記歩行者を囲むように前記第2の表示装置に表示される。前記第1アイコンは、前記第1の表示装置に表示される。前記第2アイコンは、前記第1アイコンから、前記第2の表示装置上に表示される前記虚像に向けて延びる画像である。
【0010】
本開示の一態様に係るプログラムは、コンピュータシステムに、前記表示制御方法を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本開示は、物理的に分離した複数の表示装置を連携させて単一の情報を表示可能となる、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態1に係る表示制御システムを用いた場合の運転者の視野を示す概念図である。
図2図2A図2Dは、同上の表示制御システムの用途の一例を示す概念図である。
図3図3は、同上の表示制御システム及びそれを備えた表示システムの基本構成を示す概念図である。
図4図4は、同上の表示制御システム及び表示システムの構成を示す概念図である。
図5図5は、同上の表示制御システムの構成を示す概念図である。
図6図6は、同上の表示制御システムにおける仮想フレームメモリの構造を示す概念図である。
図7図7は、同上の表示制御システムの動作を示すフローチャートである。
図8図8は、実施形態2に係る表示制御システムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施形態1)
(1)概要
本実施形態に係る表示制御システム1は、図1に示すように、物理的に分離した複数(本実施形態では6つ)の表示装置21~26を制御するためのシステムである。表示制御システム1は、複数の表示装置21~26と共に表示システム10を構成する。つまり、本実施形態に係る表示システム10は、表示制御システム1と、複数の表示装置21~26と、を備えている。以下、複数の表示装置21~26を特に区別しない場合には、複数の表示装置21~26の各々を単に「表示装置2」と呼ぶ。
【0014】
本実施形態に係る表示システム10は、図1に示すように、例えば、移動体100の移動体本体110に搭載される。本実施形態では、移動体100は、一例として、人を乗せた状態で路面上を走行する自動車である。つまり、移動体100は、表示システム10と、表示システム10が搭載された移動体本体110と、を備えている。そのため、表示システム10に含まれている複数の表示装置21~26は、単一(1台の)の移動体100に搭載されることになる。
【0015】
本実施形態では一例として、各表示装置2は、移動体本体110に搭載されているカーナビゲーションシステム、電子ミラーシステム、マルチインフォメーションディスプレイ又はヘッドアップディスプレイ(HUD:Head-Up Display)等の表示器である。具体的には、(第1の)表示装置21はカーナビゲーションシステムの表示器である。(第2の)表示装置22は左サイドミラーとして機能する電子ミラーシステムの表示器であって、(第3の)表示装置23は右サイドミラーとして機能する電子ミラーシステムの表示器である。(第4の)表示装置24はバックミラーとして機能する電子ミラーシステムの表示器である。(第5の)表示装置25はマルチインフォメーションディスプレイであって、(第6の)表示装置26はヘッドアップディスプレイである。
【0016】
ここで、ヘッドアップディスプレイを構成する表示装置26は、移動体100の車室内におけるウインドシールド101の下方(例えば、ダッシュボード内)に設置されたプロジェクタを有し、プロジェクタからウインドシールド101に画像を投影する。ウインドシールド101に画像が投影されると、反射部材としてのウインドシールド101で反射された画像が、運転者120(図2A参照)に視認される。すなわち、表示装置26によれば、運転者120は、移動体100の前方(車外)の空間に投影された虚像261を、ウインドシールド101越しに視認する。本開示でいう「虚像」は、表示装置26から出射される光がウインドシールド101等の反射物にて発散するとき、その発散光線によって、実際に物体があるように結ばれる像を意味する。そのため、運転者120は、図1に示すように、移動体100の前方に広がる実空間に重ねて、表示装置26にて投影される虚像261を見ることができる。図1の例では、一例として、「直進」を指示する矢印及び「53km/h」という車速情報が虚像261として表示されている。図1はユーザの視野を示す概念図であって、図1では、表示装置26の表示エリア、つまり虚像261を表示可能な範囲を「表示装置26」として図示する。
【0017】
表示制御システム1は、複数の表示装置2の各々に、例えば、ナビゲーション情報、撮像画像、車速情報、歩行者情報、周辺車両情報、車線逸脱情報、及び車両コンディション情報等の、種々の運転支援情報を表示させ、運転者120に視認させることができる。本開示でいう「撮像画像」は、移動体100の周辺(車外)を撮像するカメラから得られる画像である。すなわち、表示システム10によれば、運転者120が視認可能な複数の表示装置2の各々に様々な情報を表示して、運転者120に様々な情報を提示することが可能である。本開示でいう「歩行者情報」及び「周辺車両情報」は、移動体100の周辺の歩行者及び移動体100の周辺の車両の存在又は距離等を表す情報である。これらの情報は、例えば、移動体100に搭載される先進運転支援システム(ADAS:Advanced Driver Assistance System)の検出部であるカメラ、ソナーセンサ、レーダ及びLiDAR(Light Detection and Ranging)等にて検出可能な情報である。
【0018】
ところで、本実施形態に係る表示制御システム1は、上述したように複数の表示装置21~26に個別に画面を表示させるだけでなく、複数の表示装置21~26を連携させて、複数の表示装置21~26にて単一の情報を表示させることも可能である。すなわち、表示制御システム1は、物理的に分離した複数の表示装置21~26を統括的に制御することにより、これら複数の表示装置21~26にて単一の情報を表示可能とする。言い換えれば、表示制御システム1は、複数の表示装置21~26を単一の表示器(ディスプレイ)のように見立てることにより、複数の表示装置21~26に跨る画面を表示させる。
【0019】
上記構成を実現するために、表示制御システム1は、表示制御部3(図4参照)と、単一の仮想フレームメモリ50(図4参照)と、を備えている。表示制御部3は、物理的に分離した複数の表示装置21~26を制御する。仮想フレームメモリ50は、複数の表示装置21~26に表示させる画面を記憶する。表示制御部3は、複数の表示装置21~26に跨って表示させる画面を、仮想フレームメモリ50に書き込むように構成されている。ただし、複数の表示装置21~26に跨って表示させる画面は、後述するグループが異なる2つ以上の表示装置2に跨って表示されればよく、複数の表示装置21~26の全てに跨って表示されることは必須でない。
【0020】
図2A図2Dは、このように構成される表示制御システム1の用途の一例を示している。図2A図2Dでは、運転者120が表示装置21に注目しているときに、移動体100の前方に歩行者130が現れたため、運転者120の視線(注視方向)を移動体100の前方の歩行者130に誘導する状況を想定している。運転者120が表示装置21に注目していることは、例えば、先進運転支援システム等の視線検知部により、運転者の視線方向等を検知することにより判断可能である。
【0021】
まず、図2Aに示すように、移動体100の前方に歩行者が存在しない状態では、表示制御システム1は、表示装置21~26に個別に画面を表示させている。図2Aの状態においては、運転者120が表示装置21の操作のために表示装置21に注目しており、運転者120の視線121が表示装置21に向けられている。
【0022】
その後、図2Bに示すように、移動体100の前方に歩行者130が現れると、表示制御システム1は、歩行者130を囲む枠状の虚像261を表示装置26に表示させる。このとき、表示制御システム1は、表示装置21を表示装置26と連携させ、運転者120に注意を促すようなアイコン201を表示装置21に対して表示させる。そのため、図2Bの状態においては、表示装置21に注目している運転者120は、何らかのイベントが発生したことに気付くことになる。
【0023】
その後、図2Cに示すように、表示制御システム1は、表示装置21及び表示装置25を表示装置26に連携させ、運転者120の視線を誘導するようなアイコン202及びアイコン203を、表示装置21及び表示装置25に表示させる。さらに、図2Dに示すように、表示制御システム1は、運転者120の視線を誘導するようなアイコン204を表示装置26に表示させる。アイコン202、アイコン203及びアイコン204は、運転者120から見て、表示装置21に表示されているアイコン201から、表示装置26に表示されている虚像261に向けて延びる光の筋状の画像(矢印画像)である。図2C及び図2D等に示す画像(矢印画像)は一例に過ぎず、アイコンは、例えば、単なる直線、点線又は文字列等であってもよい。
【0024】
そのため、図2C及び図2Dに示す状態において、運転者120の視線121は、表示装置26に表示されている虚像261に誘導させる。したがって、図2Dに示すように運転者120の視線122は、移動体100の前方の歩行者130に向けられることになる。
【0025】
このように、表示制御システム1は、複数の表示装置21~26に跨って単一の情報を表示させることが可能である。すなわち、図2A図2Dの例では、運転者120の視線を虚像261に誘導するためのアイコン201~204が、単一の情報として、表示装置21,25,26に跨って表示される。
【0026】
(2)構成
以下、本実施形態に係る表示制御システム1及びそれを備えた表示システム10の構成について、図3図5を参照して詳しく説明する。図3図5では、アプリケーションソフトを「アプリ」と表記する。
【0027】
表示制御システム1は、上述したように物理的に分離した複数の表示装置21~26を制御する表示制御部3(図4参照)と、複数の表示装置21~26に表示させる画面を記憶する単一の仮想フレームメモリ50(図4参照)と、を備えている。表示制御部3は、複数の表示装置21~26に跨って表示させる画面を、仮想フレームメモリ50に書き込むように構成されている。本開示でいう「仮想フレームメモリ」は、OS(Operating System)等が、1つ以上の物理的なメモリ(非一時的な記憶媒体)を用いて、連続した記憶領域を持つように設定する仮想的なメモリである。
【0028】
本実施形態に係る表示制御システム1は、基本構成として、図3に示すように、表示制御部3を構成する、第1制御部31、第2制御部32及び第3制御部33を有している。つまり、本実施形態では、表示制御部3は、物理的に分離した複数の制御部(第1制御部31、第2制御部32及び第3制御部33)を有している。第1制御部31、第2制御部32及び第3制御部33の各々は、プロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムを、コンピュータシステムのプロセッサが実行することにより、第1制御部31、第2制御部32又は第3制御部33の機能が実現される。プログラムは、メモリに予め記録されていてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通して提供されてもよく、メモリカード等の記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0029】
ここでは、第1制御部31、第2制御部32及び第3制御部33の各々は、ハードウェアとしてのECU(Electronic Control Unit)41,42,43を主構成としている。第1制御部31のECU41は、CPU(Central Processing Unit)411及びGPU(Graphics Processing Unit)412を含んでいる。同様に、第2制御部32のECU42はCPU421及びGPU422を含み、第3制御部33のECU43はCPU431及びGPU432を含んでいる。GPU412,422,432は、例えば、OpenGL(Open Graphics Library)に準拠した描画演算処理を実行する。
【0030】
また、第1制御部31、第2制御部32及び第3制御部33は、それぞれ第1のフレームメモリ(framememory)51、第2のフレームメモリ52及び第3のフレームメモリ53を有している。これら複数のフレームメモリ51,52,53は、それぞれ複数のECU41,42,43に含まれている。本開示でいう「フレームメモリ」は、複数の表示装置21~26に表示される1画面(1フレーム)分の表示内容(表示状態)を記憶するためのメモリ(フレームバッファ(frame buffer))である。複数のフレームメモリ51,52,53の各々は、専用のメモリであってもよいし、コンピュータシステムのメモリのうちの一部の領域で構成されていてもよい。
【0031】
言い換えれば、表示制御部3は、複数の表示装置21~26を複数のグループに分類した場合に、複数のグループと一対一に対応する複数のプロセッサ(GPU412,422,432)を有している。また、表示制御部3は、複数のプロセッサ(GPU412,422,432)と一対一に対応し、仮想フレームメモリ50を構成する複数のフレームメモリ51,52,53を有している。本実施形態では一例として、複数の表示装置21~26は第1~第3の3つのグループに分類されている。第1のグループには表示装置21が属し、第2のグループには表示装置25,26が属し、第3のグループには表示装置22~24が属する。そして、第1制御部31のGPU412は第1のグループ及び第1のフレームメモリ51に対応する。第2制御部32のGPU422は第2のグループ及び第2のフレームメモリ52に対応し、第3制御部33のGPU432は第3のグループ及び第3のフレームメモリ53に対応する。
【0032】
ここで、複数のプロセッサ(GPU412,422,432)の各々は、描画コマンドに従って対応するフレームメモリ51~53に書き込むことにより、対応するグループに属するいずれかの表示装置2に表示させる画面を生成するように構成されている。本開示でいう「描画コマンド」は、GPU412,422,432に対してフレームメモリへの描画、つまりフレームメモリへの書き込みを実行させるためのコマンド(命令)である。例えば、第1制御部31のGPU412であれば、描画コマンドに従って第1のフレームメモリ51に書き込むことにより、第1のグループに属する表示装置21に表示させる画面を生成する。第2制御部32のGPU422であれば、描画コマンドに従って第2のフレームメモリ52に書き込むことにより、第2のグループに属する表示装置25,26のうち少なくとも1つの表示装置に表示させる画面を生成する。第3制御部33のGPU432であれば、描画コマンドに従って第3のフレームメモリ53に書き込むことにより、第3のグループに属する表示装置22~24のうち少なくとも1つの表示装置に表示させる画面を生成する。
【0033】
本実施形態では、例えば、ECU41において、CPU411、GPU412及び第1のフレームメモリ51がバス接続されている。GPU412が表示装置21に何らかの画面を表示させる際には、第1のフレームメモリ51の内容を書き換え、一定のタイミングで第1のフレームメモリ51の内容が表示装置21に送信されて、表示装置21の表示内容が更新されることになる。他のECU42,43においても、ECU41と同様の構成が採用されている。さらに、第1制御部31のECU41と、第2制御部32のECU42と、第3制御部33のECU43とは、例えば、イーサネット(登録商標)に準拠した通信方式により、相互に通信可能に構成されている。ただし、この構成に限らず、第1制御部31のECU41と、第2制御部32のECU42と、第3制御部33のECU43とは、例えば、CAN(Controller Area Network)等の通信方式により通信してもよい。
【0034】
図3は、ハードウェア上でOSが動作し、OS上でアプリケーションソフトが動作している構造を、ハードウェアレイヤ、OSレイヤ及びアプリケーションレイヤに分けて概念的に示している。例えば、第1制御部31においては、ハードウェアとしてのECU41上で第1のOS61が動作し、第1のOS61上でアプリケーションソフト711~714が動作する。第2制御部32においては、ハードウェアとしてのECU42上で第2のOS62が動作し、第2のOS62上でアプリケーションソフト721,722が動作する。第3制御部33においては、ハードウェアとしてのECU43上で第3のOS63が動作し、第3のOS63上でアプリケーションソフト731,732が動作する。
【0035】
また、複数の表示装置21~26は、表示器群20を構成する。表示制御システム1は、表示器群20に含まれる複数の表示装置21~26を制御することにより、これら複数の表示装置21~26に、個別の画面を表示させたり、少なくとも2つの表示装置に跨る画面を表示させたりすることができる。表示制御システム1は、表示器群20(複数の表示装置21~26)と共に表示システム10を構成する。
【0036】
本実施形態に係る表示制御システム1は、上述したような基本構成をベースにして、ソフトウェア(コンピュータプログラム)により、図4に示すように、仮想フレームメモリ50を有する構成を実現する。
【0037】
仮想フレームメモリ50は、複数のフレームメモリ51~53を利用して、複数のECU41~43のOS(61~63)上に構築される。仮想フレームメモリ50は、複数の表示装置21~26に表示させる画面を記憶する。表示制御部3は、複数の表示装置21~26に跨って表示させる画面を、仮想フレームメモリ50に書き込むように構成されている。つまり、仮想フレームメモリ50は、アクセス可能な表示装置及びGPU412,422,432が制限されたフレームメモリ51~53とは異なり、複数の表示装置21~26の及び複数のGPU412,422,432全てから画一的にアクセス可能である。そのため、仮想フレームメモリ50に書き込まれた画面については、複数の表示装置21~26に跨って表示可能である。
【0038】
図4は、ハードウェア上でOSが動作し、OS上でアプリケーションソフトが動作している構造を、ハードウェアレイヤ、OSレイヤ及びアプリケーションレイヤに分けて概念的に示している。さらに、図4では、複数のフレームメモリ51~53に代えて、複数のECU41~43のOS(61~63)上に構築される仮想フレームメモリ50を図示している。
【0039】
本実施形態に係る表示制御システム1は、図4に示すように、仮想フレームメモリ50を有するので、第1制御部31、第2制御部32及び第3制御部33間において、シームレスな描画演算処理が可能になる。例えば、図4に示すように、第2制御部32に実装されているアプリケーションソフト721は、第2のグループに属する表示装置25,26だけでなく、第1のグループに属する表示装置21にも、仮想フレームメモリ50を通して直接的に描画が可能である。図4では、アプリケーションソフト721が仮想フレームメモリ50を通して表示装置2に描画を行う様子を、破線矢印で概念的に示している。
【0040】
一方、仮想フレームメモリ50が無い場合、つまり図3のような基本構成そのものにおいては、第1制御部31に実装されているアプリケーションソフト711~714は、表示装置21以外の表示装置(22~26)に直接的に画面を表示させることはできない。すなわち、仮想フレームメモリ50が無ければ、複数のプロセッサ(GPU412,422,432)の各々は、自身に対するフレームメモリ51~53に書き込むことで、自身に対応するグループに属する表示装置2にのみ直接的に描画が可能となる。そのため、例えば、第1制御部31に実装されているアプリケーションソフト711であれば、第1のグループに属する表示装置21についてのみ、直接的に表示させる画面を制御(生成)可能である。第1制御部31に実装されているアプリケーションソフト711において、第2のグループに属する表示装置25又は26に画面を表示させるには、第2制御部32に実装されているアプリケーションソフト721又は722と連携及び同期する必要がある。よって、異なるグループに属する複数の表示装置2に跨って画面を表示させる場合には、アプリケーションソフト間の連携及び同期が必須となる。このように、異なるECU41~43に実装されるアプリケーションソフトとの連携及び同期を実現可能なアプリケーションソフトの開発は容易でない。
【0041】
これに対して、本実施形態に係る表示制御システム1では、複数のGPU412,422,432から画一的にアクセス可能な仮想フレームメモリ50を備えることで、このようなアプリケーションソフト間の連携及び同期が不要となる。すなわち、表示制御システム1では、異なるグループに属する複数の表示装置2に跨って画面を表示させる場合でも、アプリケーションソフト間の連携及び同期が不要であるため、アプリケーションソフトの開発が容易になる。
【0042】
また、図5は、本実施形態に係る表示制御システム1の構成を、更に概念的に表した概念図である。図5は、ハードウェア上でOSが動作し、OS上で描画機能(Graphic services)及びアプリケーションソフトが動作している構造を、ハードウェアレイヤ、OSレイヤ、描画レイヤ及びアプリケーションレイヤに分けて概念的に示している。描画機能511,521,531からなる描画レイヤと、アプリケーションレイヤとの間に示したグラフィックスフレームワーク500は、仮想フレームメモリ50を実装するための処理である。グラフィックスフレームワーク500は、複数のプロセッサ(GPU412,422,432)でシームレスに実行されるフレームワーク(Seamless Graphics Framework)である。
【0043】
図5の例では、表示制御部3は、統合管理部8を更に有している。統合管理部8は、複数のプロセッサ(GPU412,422,432)と複数の描画領域R1~R3(図6参照)との対応関係を管理する。すなわち、仮想フレームメモリ50には、複数のプロセッサ(GPU412,422,432)と一対一に対応する複数の描画領域R1~R3が設定されている。これら複数の描画領域R1~R3と複数のプロセッサ(GPU412,422,432)との対応関係が、領域情報として統合管理部8で管理される。つまり、仮想フレームメモリ50の実体は、複数のプロセッサ(GPU412,422,432)と一対一に対応する複数のフレームメモリ51~53であるので、仮想フレームメモリ50には複数の描画領域R1~R3が設定される。本実施形態では一例として、統合管理部8は第1制御部31に含まれている。
【0044】
(3)動作
以下、本実施形態に係る表示制御システム1及びそれを備えた表示システム10の動作について、図6及び図7を参照して説明する。
【0045】
図6は、仮想フレームメモリ50の構造を概念的に表している。すなわち、仮想フレームメモリ50は、図6に示すように、第1層501及び第2層502を含む複層(ここでは2層)構造である。第1層501は、複数の表示装置21~26に跨って表示させる画面を描画するための層である。ただし、第1層501に描画される画面は、グループが異なる2つ以上の表示装置2に跨って表示させる画面であればよく、複数の表示装置21~26の全てに跨って表示させる画面でなくてもよい。第2層502は、複数の表示装置21~26に個別に表示させる画面を描画するための層である。ただし、第2層502に描画される画面は、グループが異なる2つ以上の表示装置2に跨って表示させる画面でなければよく、グループが同じ2つ以上の表示装置2(例えば、表示装置24,25)に跨って表示させる画面であってもよい。
【0046】
第1層501及び第2層502には、優先度が割り当てられている。本実施形態では、第1層501の優先度が「高い」、第2層502の優先度が「通常」である。一方、優先度は、複数のプロセッサ(GPU412,422,432)が取得する描画コマンドにも設定される。優先度が「高い」に設定された描画コマンドについては第1層501へ描画され、優先度が「通常」に設定された描画コマンドについては第2層502へ描画される。
【0047】
上述したような仮想フレームメモリ50への描画を実現するための表示制御部3の動作(図5におけるグラフィックスフレームワーク500)について、図7に示すフローチャートを参照して説明する。図7に示すフローチャートは、第1制御部31、第2制御部32及び第3制御部33(ECU41、42及び43)のうち、いずれか1つの制御部(ECU41、42又は43)の動作を示す。ここでは一例として、アプリケーションソフト721が動作している場合のECU42(第2制御部32)の動作について説明する。
【0048】
すなわち、ECU42は、アプリケーションソフト721が起動してグラフィックスフレームワーク500を開始すると、まずは統合管理部8から領域情報を取得する(S1)。その後、ECU42は、描画コマンドを取得し(S2)、この描画コマンドの取得先が他のECU41,43であるか否かを判定する(S3)。ECU42は、描画コマンドの取得先が、自身のアプリケーションソフト721であれば(S3:No)、この描画コマンドから、描画対象が仮想フレームメモリ50の第1層501か否かを判定する(S4)。つまり、ECU42は、描画コマンドの優先度を判定し、優先度が「高い」であれば、描画対象が仮想フレームメモリ50の第1層501である(S4:Yes)と判定する。優先度が「通常」であれば、ECU42は、描画対象が仮想フレームメモリ50の第2層502である(S4:No)と判定する。
【0049】
ECU42は、描画対象が仮想フレームメモリ50の第2層502であると判定した場合(S4:No)、GPU422へのコマンドの入力を行う(S5)。つまり、GPU422は、描画コマンドに従って複数のフレームメモリ51~53のうち対応する第2のフレームメモリ52に書き込みを行う。これにより、GPU422は、仮想フレームメモリ50の第2層502のうち対応する描画領域R2への描画処理を実行する。
【0050】
一方、描画対象が仮想フレームメモリ50の第1層501であると判定した場合(S4:Yes)、ECU42は、描画コマンドを他のECU41,43へ転送し(S6)、GPU422へのコマンドの入力を行う(S5)。このとき、ECU42は、描画コマンドをブロードキャストで送信することにより、他のECU41,43へ一斉に転送する。
【0051】
描画コマンドの転送先のECU41,43においては、描画コマンドの取得先が他のECU42であると判定されるので(S3:Yes)、描画コマンドを更に転送することなく、GPU412,432へのコマンドの入力を行う(S5)。要するに、他のECU(上記例ではECU42)から転送された描画コマンドを受信したECU(上記例ではECU41,43)は、ステップS4のような判定処理を行うことなく、ステップS5と同様の描画処理を実行する。ただし、例えば、仮想フレームメモリ50の第1層501のうち描画領域R3への描画処理は、実際には描画領域R3に対応するGPU432でのみ実現され、GPU412においては書き込み先の座標が存在しないため実現されない。
【0052】
ステップS5の後、ECU42は、描画コマンドの取得処理(S2)に戻る。ECU42は、アプリケーションソフト721が動作を継続している限り、ステップS2~S6の処理を繰り返し実行する。
【0053】
このように、複数のプロセッサ(GPU412,422,432)の各々は、複数のプロセッサのうち他の全てのプロセッサに描画コマンドを転送し、他の全てのプロセッサとの間で描画コマンドを共有する。これにより、複数のプロセッサ(GPU412,422,432)の各々は、複数のフレームメモリ51~53を仮想フレームメモリ50として機能させる。しかも、複数のプロセッサ(GPU412,422,432)の各々は、描画コマンドの優先度によって描画コマンドの転送を実行するか否かを決定するように構成されている。すなわち、GPU412,422,432は、複数の表示装置21~26に跨って表示させる画面を描画するための、優先度が「高い」描画コマンドついてのみ、転送を実行する。そのため、複数の表示装置21~26に個別に表示させる画面を描画するための、優先度が「通常」の描画コマンドについてまで無差別に転送される場合に比べて、描画コマンドの転送による通信トラフィックの増加を抑制できる。
【0054】
(4)変形例
実施形態1は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態1は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、表示制御システム1と同様の機能は、表示制御方法、コンピュータプログラム、又はコンピュータプログラムを記録した記録媒体等で具現化されてもよい。一態様に係る表示制御方法は、物理的に分離した複数の表示装置21~25を制御する表示制御方法である。この表示制御方法は、複数の表示装置21~25に表示させる画面を記憶する単一の仮想フレームメモリ50に、複数の表示装置21~25に跨って表示させる画面を書き込む。一態様に係る(コンピュータ)プログラムは、コンピュータシステムに、上記表示制御方法を実行させるためのプログラムである。
【0055】
以下、実施形態1の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0056】
本開示における表示制御システム1は、例えば、表示制御部3等に、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における表示制御システム1としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1乃至複数の電子回路で構成される。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。
【0057】
また、表示制御システム1における複数の機能が、1つの筐体内に集約されていることは表示制御システム1に必須の構成ではなく、表示制御システム1の構成要素は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。さらに、表示制御システム1の少なくとも一部の機能は、例えば、クラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。反対に、実施形態1において、複数の装置に分散されている表示制御システム1の少なくとも一部の機能が、1つの筐体内に集約されていてもよい。
【0058】
また、複数の表示装置21~26が搭載される移動体100は、路面を走行する自動車(四輪車)に限らず、例えば、二輪車、電車、航空機、ドローン、建設機械又は船舶等であってもよい。さらに、移動体100は、自動運転により運転者120無しで運転できる構成であってもよい。この場合、表示制御システム1又は表示システム10は、運転者ではない移動体100の乗員に対する表示を行う。
【0059】
また、表示装置2は、カーナビゲーションシステム、電子ミラーシステム、マルチインフォメーションディスプレイ又はヘッドアップディスプレイ等の表示器に限らず、例えば、前照灯、尾灯、ハザードランプ又は方向指示器等を含んでいてもよい。
【0060】
また、表示制御システム1は、移動体100に搭載されていなくてもよく、この場合に、移動体100に搭載された複数の表示装置21~26を、移動体100の外部から表示制御システム1が制御してもよい。すなわち、表示制御システム1は、例えば、V2X(Vehicle to Everything)等の通信により、移動体100と周辺車両又はインフラ(infrastructure)との通信により、移動体100に搭載された複数の表示装置21~26を制御することができる。さらに、複数の移動体100が連携して、単一の移動体100に搭載された複数の表示装置21~26を制御することも可能である。
【0061】
また、実施形態1では、統合管理部8は第1制御部31に含まれているが、これに限らず、統合管理部8は、第2制御部32又は第3制御部33に含まれていてもよいし、第1制御部31、第2制御部32及び第3制御部33とは別に設けられてもよい。
【0062】
また、表示制御システム1の制御対象となる複数の表示装置21~26は、移動体100に搭載される構成に限らず、例えば、屋内又は屋外の施設等に設置されてもよい。この場合に、複数の表示装置21~26は、例えば、デジタルサイネージ又は電光掲示板等として機能する。
【0063】
また、実施形態1では、表示装置が6つ、ECU(CPU及びGPUを含む)が3つ、フレームメモリが3つである場合を例に説明したが、これらの数は一例に過ぎず、例えば、表示装置が5つ以下又は表示装置が7つ以上であってもよい。
【0064】
(実施形態2)
本実施形態に係る表示制御システム1は、仮想フレームメモリ50への描画を実現するための表示制御部3の動作(図5におけるグラフィックスフレームワーク500)が、実施形態1に係る表示制御システム1と相違する。以下、実施形態1と同様の構成については、実施形態1と共通の符号を付して適宜説明を省略する。
【0065】
本実施形態では、仮想フレームメモリ50は、実施形態1のように第1層501及び第2層502を有する複層構造(図6参照)ではなく、単層構造である。そのため、描画コマンドに優先度は設定されない。
【0066】
本実施形態では、表示制御部3は、図8に示すフローチャートに従って動作する。図8に示すフローチャートは、第1制御部31、第2制御部32及び第3制御部33(ECU41、42及び43)のうち、いずれか1つの制御部(ECU41、42又は43)の動作を示す。ここでは一例として、アプリケーションソフト721が動作している場合のECU42(第2制御部32)の動作について説明する。
【0067】
すなわち、ECU42は、アプリケーションソフト721が起動してグラフィックスフレームワーク500を開始すると、まずは統合管理部8から領域情報を取得する(S11)。このとき取得する領域情報は、ECU42のGPU422と描画領域R2との対応関係だけでなく、他のECU41,43のGPU412,432と描画領域R1,R3との対応関係も含む。その後、ECU42は、描画コマンドを取得し(S12)、この描画コマンドの取得先が他のECU41,43であるか否かを判定する(S13)。ECU42は、描画コマンドの取得先が、自身のアプリケーションソフト721であれば(S13:No)、この描画コマンドから、仮想フレームメモリ50における座標を演算する(S14)。このとき求める「座標」は、GPU412にて書き込み(描画)を実行する仮想フレームメモリ50上の座標である。
【0068】
その後、ECU42は、演算により求めた座標と自身に対応する描画領域R2との対応関係を判定する(S15)。つまり、ECU42は、描画コマンドで指定される書き込み先の座標が、GPU422に対応する描画領域R2に含まれているか否かを判定する。求めた座標がECU42自身の描画領域R2に対応する、つまり描画領域R2に含まれると判定した場合(S15:Yes)、ECU42は、GPU422へのコマンドの入力を行う(S16)。つまり、GPU422は、描画コマンドに従って複数のフレームメモリ51~53のうち対応する第2のフレームメモリ52に書き込みを行う。これにより、GPU422は、仮想フレームメモリ50のうち対応する描画領域R2への描画処理を実行する。
【0069】
一方、求めた座標がECU42自身の描画領域R2に対応しない、つまり描画領域R2に含まれないと判定した場合(S15:No)、ECU42は、描画コマンドを他のECU41又は43へ転送する(S17)。このとき、ECU42は、求めた座標が含まれる描画領域R1又はR3を特定し、この描画領域R1又はR3に対応するプロセッサ(GPU412又は432)を有するECU41又は43に、描画コマンドをユニキャストで送信する。
【0070】
描画コマンドの転送先のECU41又は43においては、描画コマンドの取得先が他のECU42であると判定されるので(S13:Yes)、描画コマンドを更に転送することなく、GPU412又は432へのコマンドの入力を行う(S16)。要するに、他のECU(上記例ではECU42)から転送された描画コマンドを受信したECU(上記例ではECU41又は43)は、ステップS15のような判定処理を行うことなく、ステップS16と同様の描画処理を実行する。
【0071】
ステップS16の後、ECU42は、描画コマンドの取得処理(S12)に戻る。また、描画コマンドを他のECU41又は43へ転送する場合(S17)、ECU42は、GPU422へのコマンドの入力(S16)を行わずに、描画コマンドの取得処理(S12)に戻る。ECU42は、アプリケーションソフト721が動作を継続している限り、ステップS12~S17の処理を繰り返し実行する。
【0072】
このように、仮想フレームメモリ50には、複数のプロセッサ(GPU412,422,432)と一対一に対応する複数の描画領域R1~R3が設定されている。複数のプロセッサ(GPU412,422,432)の各々は、複数の描画領域R1~R3のうち対応する描画領域に、描画コマンドにて指定される仮想フレームメモリ50上の描画位置(座標)が属するか否か判定する。属さないと判定した場合には、複数のプロセッサ(GPU412,422,432)の各々は、複数のプロセッサ(GPU412,422,432)のうち他の少なくとも1つのプロセッサに描画コマンドを転送する。これにより、複数のプロセッサ(GPU412,422,432)の各々は、複数のフレームメモリ51~53を仮想フレームメモリ50として機能させる。
【0073】
実施形態2で説明した構成は、実施形態1で説明した種々の構成(変形例を含む)と適宜組み合わせて適用可能である。
【0074】
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様に係る表示制御システム(1)は、表示制御部(3)と、単一の仮想フレームメモリ(50)と、を備える。表示制御部(3)は、物理的に分離した複数の表示装置(21~26)を制御する。仮想フレームメモリ(50)は、複数の表示装置(21~26)に表示させる画面を記憶する。表示制御部(3)は、複数の表示装置(21~26)のうち少なくとも2つの表示装置に跨って表示させる画面を仮想フレームメモリ(50)に書き込むように構成されている。
【0075】
この態様によれば、表示制御部(3)が、複数の表示装置(21~26)のうち少なくとも2つの表示装置に跨って表示させる画面を仮想フレームメモリ(50)に書き込むことで、複数の表示装置(21~26)にて単一の情報を表示させることが可能である。すなわち、表示制御システム(1)によれば、物理的に分離した複数の表示装置(21~26)を統括的に制御することにより、物理的に分離した複数の表示装置(21~26)を連携させて単一の情報を表示可能となる、という利点がある。
【0076】
第2の態様に係る表示制御システム(1)は、第1の態様において、複数の表示装置(21~26)は単一の移動体(100)に搭載される。
【0077】
この態様によれば、移動体(100)に搭載された、例えば、カーナビゲーションシステム、電子ミラーシステム、マルチインフォメーションディスプレイ及びヘッドアップディスプレイ等の複数の表示装置(21~26)を連携させて単一の情報を表示可能となる。
【0078】
第3の態様に係る表示制御システム(1)は、第1又は2の態様において、表示制御部(3)は、複数の表示装置(21~26)に個別に表示させる画面を仮想フレームメモリ(50)に更に書き込むように構成されている。
【0079】
この態様によれば、仮想フレームメモリ(50)を利用して、複数の表示装置(21~26)に個別に画面を表示させることも可能である。
【0080】
第4の態様に係る表示制御システム(1)は、第1~3のいずれかの態様において、表示制御部(3)は、複数のプロセッサ(GPU412,422,432)と、複数のフレームメモリ(51~53)と、を有する。複数のプロセッサ(GPU412,422,432)は、複数の表示装置(21~26)を複数のグループに分類した場合に、複数のグループと一対一に対応する。複数のフレームメモリ(51~53)は、複数のプロセッサ(GPU412,422,432)と一対一に対応し、仮想フレームメモリ(50)を構成する。複数のプロセッサ(GPU412,422,432)の各々は、描画コマンドに従って複数のフレームメモリ(51~53)のうち対応するフレームメモリに書き込む。これにより、複数のプロセッサ(GPU412,422,432)の各々は、複数の表示装置(21~26)のうち対応するグループに属するいずれかの表示装置に表示させる画面を生成するように構成されている。
【0081】
この態様によれば、複数のプロセッサ(GPU412,422,432)が単一の仮想フレームメモリ(50)を共用することになるので、複数のプロセッサ(GPU412,422,432)間の連携が容易になる。
【0082】
第5の態様に係る表示制御システム(1)は、第4の態様において、複数のプロセッサ(GPU412,422,432)の各々は、複数のプロセッサ(GPU412,422,432)のうち他の全てのプロセッサに描画コマンドを転送する。複数のプロセッサ(GPU412,422,432)の各々は、他の全てのプロセッサとの間で描画コマンドを共有することにより、複数のフレームメモリ(51~53)を仮想フレームメモリ(50)として機能させる。
【0083】
この態様によれば、複数のプロセッサ(GPU412,422,432)間で描画コマンドを転送して共有する比較的簡単な構成で、仮想フレームメモリ(50)を実現できる。
【0084】
第6の態様に係る表示制御システム(1)は、第5の態様において、複数のプロセッサ(GPU412,422,432)の各々は、描画コマンドの優先度によって描画コマンドの転送を実行するか否かを決定するように構成されている。
【0085】
この態様によれば、全ての描画コマンドが無差別に転送される場合に比べて、描画コマンドの転送による通信トラフィックの増加を抑制できる。
【0086】
第7の態様に係る表示制御システム(1)は、第4の態様において、仮想フレームメモリ(50)には、複数のプロセッサ(GPU412,422,432)と一対一に対応する複数の描画領域(R1~R3)が設定されている。複数のプロセッサ(GPU412,422,432)の各々は、複数の描画領域(R1~R3)のうち対応する描画領域に、描画コマンドにて指定される仮想フレームメモリ(50)上の描画位置が属さない場合には、下記の転送処理を行う。転送処理は、複数のプロセッサ(GPU412,422,432)のうち他の少なくとも1つのプロセッサに描画コマンドを転送することにより、複数のフレームメモリ(51~53)を仮想フレームメモリとして機能させる処理である。
【0087】
この態様によれば、複数のプロセッサ(GPU412,422,432)間で描画コマンドを転送して共有する比較的簡単な構成で、仮想フレームメモリ(50)を実現できる。しかも、全ての描画コマンドが無差別に転送される場合に比べて、描画コマンドの転送による通信トラフィックの増加を抑制できる。
【0088】
第8の態様に係る表示制御システム(1)は、第7の態様において、表示制御部(3)は、複数のプロセッサ(GPU412,422,432)と複数の描画領域(R1~R3)との対応関係を管理する統合管理部(8)を更に有する。
【0089】
この態様によれば、複数のプロセッサ(GPU412,422,432)と複数の描画領域(R1~R3)との対応関係が一元管理されるので、この対応関係の変更等が容易になる。
【0090】
第9の態様に係る表示システム(10)は、第1~8のいずれかの態様に係る表示制御システム(1)と、複数の表示装置(21~26)と、を備える。
【0091】
この態様によれば、表示制御部(3)が、複数の表示装置(21~26)のうち少なくとも2つの表示装置に跨って表示させる画面を仮想フレームメモリ(50)に書き込むことで、複数の表示装置(21~26)にて単一の情報を表示させることが可能である。すなわち、表示システム(10)によれば、物理的に分離した複数の表示装置(21~26)を統括的に制御することにより、物理的に分離した複数の表示装置(21~26)を連携させて単一の情報を表示可能となる、という利点がある。
【0092】
第10の態様に係る移動体(100)は、第9の態様に係る表示システム(10)と、表示システム(10)が搭載された移動体本体(110)と、を備える。
【0093】
この態様によれば、表示制御部(3)が、複数の表示装置(21~26)のうち少なくとも2つの表示装置に跨って表示させる画面を仮想フレームメモリ(50)に書き込むことで、複数の表示装置(21~26)にて単一の情報を表示させることが可能である。すなわち、移動体(100)によれば、物理的に分離した複数の表示装置(21~26)を統括的に制御することにより、物理的に分離した複数の表示装置(21~26)を連携させて単一の情報を表示可能となる、という利点がある。
【0094】
第11の態様に係る表示制御方法は、物理的に分離した複数の表示装置(21~26)を制御する表示制御方法である。この表示制御方法では、複数の表示装置(21~26)に表示させる画面を記憶する単一の仮想フレームメモリ(50)に、複数の表示装置(21~26)に跨って表示させる画面を書き込む。
【0095】
この態様によれば、複数の表示装置(21~26)のうち少なくとも2つの表示装置に跨って表示させる画面を仮想フレームメモリ(50)に書き込むことで、複数の表示装置(21~26)にて単一の情報を表示させることが可能である。すなわち、上記表示制御方法によれば、物理的に分離した複数の表示装置(21~26)を統括的に制御することにより、物理的に分離した複数の表示装置(21~26)を連携させて単一の情報を表示可能となる、という利点がある。
【0096】
第12の態様に係るプログラムは、コンピュータシステムに、第11の態様に係る表示制御方法を実行させるためのプログラムである。
【0097】
この態様によれば、複数の表示装置(21~26)のうち少なくとも2つの表示装置に跨って表示させる画面を仮想フレームメモリ(50)に書き込むことで、複数の表示装置(21~26)にて単一の情報を表示させることが可能である。すなわち、上記プログラムによれば、物理的に分離した複数の表示装置(21~26)を統括的に制御することにより、物理的に分離した複数の表示装置(21~26)を連携させて単一の情報を表示可能となる、という利点がある。
【0098】
上記態様に限らず、実施形態1及び実施形態2に係る表示制御システム(1)の種々の構成(変形例を含む)は、表示制御方法、プログラム、又はプログラムを記録した非一時的記録媒体等で具現化可能である。
【0099】
第2~8の態様に係る構成については、表示制御システム(1)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0100】
1 表示制御システム
2,21~26 表示装置
3 表示制御部
10 表示システム
50 仮想フレームメモリ
51~53 フレームメモリ
100 移動体
110 移動体本体
412,422,432 GPU(プロセッサ)
R1~R3 描画領域
図1
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図8