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特許7203377カチオン性L-アミノ酸トランスポーター関連疾患の診断または治療のためのウシ白血病ウイルスに由来する受容体結合ドメインの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】カチオン性L-アミノ酸トランスポーター関連疾患の診断または治療のためのウシ白血病ウイルスに由来する受容体結合ドメインの使用
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20230105BHJP
   C12Q 1/06 20060101ALI20230105BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20230105BHJP
【FI】
G01N33/53 D ZNA
C12Q1/06
C12N15/09 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018526633
(86)(22)【出願日】2016-11-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-01-24
(86)【国際出願番号】 EP2016078163
(87)【国際公開番号】W WO2017085271
(87)【国際公開日】2017-05-26
【審査請求日】2019-11-12
(31)【優先権主張番号】15195252.0
(32)【優先日】2015-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517001192
【氏名又は名称】メタフォラ,バイオシステムズ
(73)【特許権者】
【識別番号】516086358
【氏名又は名称】サントル ナショナル デ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(73)【特許権者】
【識別番号】516344465
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ ドゥ モンペリエ
(73)【特許権者】
【識別番号】520053762
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・パリ・シテ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PARIS CITE
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】イワノワ,スヴィレナ
(72)【発明者】
【氏名】ジョバンニーニ,ドナテラ
(72)【発明者】
【氏名】ベリス,ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】レザー,ジャウィダ
(72)【発明者】
【氏名】プティ,ヴィンセント
(72)【発明者】
【氏名】バッティーニ,ジャン‐リュック
(72)【発明者】
【氏名】シットボン,マーク
(72)【発明者】
【氏名】コーグノード,ヴァレリー
【審査官】西浦 昌哉
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-539856(JP,A)
【文献】特表2012-514744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
C12Q 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顆粒球ではない細胞中のカチオン性アミノ酸トランスポーター-1(CAT1)を検出および/または定量化するためのインビトロ方法であって、
a.前記細胞を少なくとも1種のウシ白血病ウイルス(BLV).RBDリガンド、その変異体および/または断片と接触させる工程と、
b.前記少なくとも1種のリガンド、その変異体および/または断片のCAT1への結合を決定および/または定量化する工程と
を含む方法。
【請求項2】
工程bで決定および/または定量化された結合レベルを基準値と比較する工程をさらに含む、請求項1に記載のインビトロ方法。
【請求項3】
対象におけるCAT1関連疾患またはBLV感染を診断または監視するための方法である、請求項1または2に記載のインビトロ方法。
【請求項4】
前記少なくとも1種のBLV.RBDリガンド、その変異体および/または断片は、配列番号21、配列番号27、その変異体および断片を含む群から選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載のインビトロ方法。
【請求項5】
顆粒球ではない細胞中のカチオン性アミノ酸トランスポーター-1(CAT1)を検出および/または定量化するための方法に使用するための、少なくとも1種の造影剤に結合させた少なくとも1種のBLV.RBDリガンド、その変異体および/または断片と薬学的に許容される賦形剤とを含む診断用組成物。
【請求項6】
顆粒球ではない細胞中のカチオン性アミノ酸トランスポーター-1(CAT1)を検出および/または定量化するための方法に使用するための、CAT1関連疾患のインビボ診断における使用のためのBLV.RBDリガンド、その変異体および/または断片。
【請求項7】
前記インビボ診断が医用画像診断によりなされる、請求項6に記載のBLV.RBDリガンド、その変異体および/または断片。
【請求項8】
前記CAT1関連疾患は、アルギニン関連疾患、リジン関連疾患、ヒスチジン関連疾患、オルニチン関連疾患、一酸化窒素関連疾患および炎症性疾患を含む群から選択される、請求項6またはに記載の使用のためのBLV.RBDリガンド、その変異体および/または断片。
【請求項9】
前記BLV.RBDリガンド、その変異体または断片は、配列番号21もしくは配列番号27、またはその変異体および/もしくは断片を含む、請求項6~のいずれか1項に記載の使用のためのBLV.RBDリガンド、その変異体および/または断片、または請求項5に記載の使用のための診断用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばCAT1関連疾患などのカチオン性L-アミノ酸トランスポーター関連疾患の診断または治療に関する。特に本発明は、カチオン性アミノ酸トランスポーターCAT1/SLC7A1とウシ白血病ウイルス(BLV)エンベロープ糖タンパク質に由来する受容体結合ドメイン(RBD)との結合の検出を含む方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルギニン、リジン、ヒスチジンおよびオルニチンは多様な代謝経路に関与するアミノ酸である。これらの経路は脂肪酸、グルコース、アミノ酸およびタンパク質の代謝を制御するが、窒素の輸送、処理および排泄、尿素の合成、クレアチンおよび一酸化窒素の合成にも関与する。
【0003】
これらの経路のうちの1つの調節不全は、そのような調節不全によって冒された細胞、組織または臓器へのアルギニン、リジン、ヒスチジンおよびオルニチンの取込みの増加または減少を特徴とする癌(特に、癌腫、肉腫および白血病など)、糖尿病、肥満症、心血管疾患および炎症性疾患などの多様な疾患の顕著な特徴のうちの1つである。従って、これらのアミノ酸に関連する経路を標的化することへの関心が高まっている。例えば、アルギニン関連経路の調節不全を特徴とする多くの種類の癌が存在する。アルギニン欠乏はこれらの癌と戦うための戦略のうちの1つである。しかし、望ましくない副作用に加えてこれらの治療に対する耐性が現れたため(Feunら,2015.Curr.Opin.Clin.Nutr.Metab.Care.18(1):78-82;Qiuら,2015.Cancer Lett.364(1):1-7)、新しい戦略および代替療法を開発することが求められている。
【0004】
最先端技術では、カチオン性L-アミノ酸トランスポーターCAT1がアルギニン(Clossら,2004.J.Nutr.134(10 Suppl):2752S-2759S)またはリジン、ヒスチジンおよびオルニチン流入のための主要トランスポーターであると教示されている。これまでのところ、マウスのC型エコトロピックレトロウイルスエンベロープ糖タンパク質がマウスまたはラットCAT1に結合することがよく知られている(Albrittonら,1993.J.Virol.67(4):2091-2096)。しかし、他の哺乳類のCAT1、特にヒト、ウシおよび鳥類(flock)のCAT1を標的化する正確なリガンドが不足している。
【0005】
本発明者らは、ヒトを含む異なる哺乳類のCAT1に特異的に結合するウシ白血病ウイルス(BLV)エンベロープ糖タンパク質に由来するリガンドを発見した。驚くべきことに、本発明者らは、このリガンドが細胞内へのアルギニン流入を阻止し、それによりこれらの細胞内でのアルギニン蓄積を防止することを実証する。
【0006】
従って、本発明は、CAT1関連疾患の診断または治療のためのBLV.RBDの使用に関する。
【発明の概要】
【0007】
従って、本発明は、細胞中のカチオン性アミノ酸トランスポーター-1(CAT1)を検出および/または定量化するためのインビトロ方法であって、
a.前記細胞を少なくとも1種のウシ白血病ウイルス(BLV).RBDリガンド、その変異体および/または断片と接触させる工程と、
b.前記少なくとも1種のリガンド、その変異体および/または断片のCAT1への結合を決定および/または定量化する工程と
を含む方法に関する。
【0008】
一実施形態では、前記方法は、工程bで決定および/または定量化された結合レベルを基準値と比較する工程をさらに含む。
【0009】
一実施形態では、前記方法は対象におけるCAT1関連疾患またはBLV感染を診断または監視するためのものである。
【0010】
一実施形態では、前記少なくとも1種のウシ白血病ウイルス(BLV).RBDリガンド、その変異体および/または断片は、配列番号21、3、4、13、15、17、19、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、47、48および49、その変異体および断片を含む群から選択される。
【0011】
本発明はさらに、少なくとも1種の造影剤に結合させた少なくとも1種のBLV.RBDリガンド、その変異体および/または断片と薬学的に許容される賦形剤とを含む診断用組成物に関する。
【0012】
本発明はさらに、好ましくは医用画像診断法によるCAT1関連疾患のインビボ診断における使用のためのBLV.RBDリガンド、その変異体および/または断片に関する。
【0013】
本発明はさらに、CAT1関連疾患の治療で使用するためのBLV.RBDリガンド、その変異体および/または断片に関する。
【0014】
一実施形態では、前記CAT1関連疾患は、アルギニン関連疾患、リジン関連疾患、ヒスチジン関連疾患、オルニチン関連疾患および炎症性疾患を含む群から選択される。
【0015】
本発明の別の目的は、BLV感染の治療で使用するためのBLV.RBDリガンド、その変異体および/または断片である。
【0016】
本発明の別の目的は、本明細書の上に記載されている使用のための少なくとも1種のBLV.RBDリガンド、その変異体および/または断片と薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物である。
【0017】
本発明はさらに、本明細書の上に記載されている使用のための少なくとも1種のBLV.RBDリガンド、その変異体および/または断片を含む薬に関する。
【0018】
一実施形態では、BLV.RBDリガンドは、配列番号21、3、4、13、15、17、19、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、47、48および/または49、その変異体および/または断片を含む。
【0019】
定義
本発明では、以下の用語は以下の意味を有する。
【0020】
「細胞表面栄養(cell surface nutrient)トランスポーター」という用語は栄養トランスポーターCAT1を指す。CAT1は細胞の細胞膜または細胞内に固定されていてもよい。
【0021】
「CAT1/SLC7A1」は、カチオン性L-アミノ酸トランスポーターを指す。CAT1は、アルギニン、オルニチン、リジンおよびヒスチジンを含むアミノ酸のナトリウム非依存性およびpH非感受性輸送を媒介する。CAT1は肝臓細胞および涙腺細胞には存在しないと考えられているが、遍在的に発現される。CAT1は本明細書ではBLV.RBDのための特異的受容体として同定される。一実施形態では、CAT1は配列番号2(受入番号:KJ892152)によってコードされるヒトCAT1(受入番号:AIC49738、配列番号1)である。一実施形態では、CAT1は、配列番号1と少なくとも70%の配列同一性、好ましくは配列番号1と少なくとも75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%またはそれ以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を含むかそれからなる。一実施形態では、CAT1は配列番号2と少なくとも70%の配列同一性、好ましくは配列番号2と少なくとも75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%またはそれ以上の配列同一性を示すヌクレオチド配列によってコードされる。一実施形態では、CAT1は、配列番号1の断片、好ましくは少なくとも約100個のアミノ酸、より好ましくは少なくとも約150、200、250、300、350、400、450、500、550、600個のアミノ酸の断片を含むかそれからなる。一実施形態では、CAT1はマウスCAT1(受入番号:Q09143、配列番号23)ではない。一実施形態では、CATはラットCAT1(受入番号:P30823、配列番号24)ではない。
【0022】
「診断用組成物」という用語は、診断、特にインビボ診断を行うために対象に投与される組成物を指す。一実施形態では、診断用組成物は、好ましくは対象の体内においてカチオン性L-アミノ酸トランスポーター、好ましくはCAT1の機能が調節不全である細胞を検出するためのものである。別の実施形態では、本発明は、好ましくは対象の体内においてBLVに感染しているかまだ感染していない細胞を検出するための診断用組成物に関する。
【0023】
「有効量」という用語は、カチオン性L-アミノ酸トランスポーター、好ましくはCAT1の機能が調節不全である対象またはBLVに感染した対象に対して有意な悪影響または有害な副作用を引き起こすことのない、CAT1への結合を目的としたリガンド、好ましくは少なくとも1種のBLV.RBDリガンドのレベルまたは量を指す。
【0024】
「治療的有効量」という用語は、標的に対して有意な悪影響または有害な副作用を引き起こすことなく、(1)CAT1関連疾患またはBLV感染の発症を遅らせるか予防する、(2)CAT1関連疾患またはBLV感染の1つ以上の症状の進行、増悪または悪化を減速または停止する、(3)CAT1関連疾患またはBLV感染の症状の寛解をもたらす、(4)CAT1関連疾患またはBLV感染の重症度または発生率を低下させる、または(5)CAT1関連疾患またはBLV感染を治癒させることを目的とした薬剤のレベルまたは量を意味する。予防処置のために、CAT1関連疾患またはBLV感染の発症前に治療的有効量を投与してもよい。代わりまたは追加として、治療処置のためにCAT1関連疾患またはBLV感染の開始後に治療的有効量を投与してもよい。
【0025】
「治療」という用語は治療処置および予防処置の両方を指し、その目的はCAT1関連疾患またはBLV感染を予防するか遅らせる(和らげる)ことである。治療を必要とするものとしては、CAT1関連疾患またはBLV感染を既に罹患しているものならびにCAT1関連疾患またはBLV感染に罹患しやすいものまたはCAT1関連疾患またはBLV感染が予防されるべきものが挙げられる。対象または哺乳類は、治療量の本発明に係るリガンドが投与された後に、その患者が病原性細胞数の減少、総病原性細胞の割合の減少および/または特定の疾患または病気に付随する1つ以上の症状のある程度の緩和、罹患率および死亡率の低下ならびに生活の質の問題の改善のうちの1つ以上の観察可能および/または測定可能な減少または不存在を示す場合に、疾患の「治療」が成功となる。治療の成功をおよび疾患の改善を評価するための上記パラメータは、医師が精通している通常の手順によって容易に測定可能である。
【0026】
「薬学的に許容される賦形剤」という用語は、動物、好ましくはヒトに投与した場合に副作用、アレルギー反応または他の有害反応を生じさせない賦形剤を指す。これは、ありとあらゆる溶媒、分散媒、被覆剤、抗菌薬および抗真菌薬、等張剤および吸収遅延剤などを含む。ヒトへの投与のために、製剤は例えばFDA局またはEMAなどの規制当局によって要求される無菌性、発熱性、一般的な安全性および純度基準を満たすものでなければならない。
【0027】
「ポリペプチド」という用語は、ペプチド結合によって互いに結合されたアミノ酸(好ましくは少なくとも50個のアミノ酸)の直鎖状ポリマーを指す。
【0028】
「タンパク質」という用語は特に、1種以上のポリペプチドと任意に非ポリペプチド共同因子とから形成される機能的実体を指す。
【0029】
「同一性」という用語は、2つ以上のポリペプチド配列または2つ以上のDNA配列間の関係において使用される場合、それぞれ2つ以上のアミノ酸残基または2つ以上のヌクレオチド残基からなる配列間の一致数によって決定される(それぞれ)ポリペプチドまたはDNA配列間の配列関連性(sequence relatedness)の程度を指す。「同一性」とは、特定の数学モデルまたはコンピュータプログラム(すなわち「アルゴリズム」)によって扱われるギャップアラインメント(存在すれば)を有する2つ以上の配列のより短い配列間の一致率の尺度である。関連するポリペプチドまたはDNA配列の同一性は、公知の方法によって容易に計算することができる。そのような方法としては、Arthur M.Lesk,Computational Molecular Biology:Sources and Methods for Sequence Analysis(コンピューターを使用した分子生物学:配列分析のための供給源および方法)(New-York:Oxford University Press,1988);Douglas W.Smith,Biocomputing:Informatics and Genome Projects(バイオコンピューティング:情報科学およびゲノムプロジェクト)(New-York:Academic Press,1993);Hugh G.GriffinおよびAnnette M.Griffin,Computer Analysis of Sequence Data,Part 1(配列データのコンピューター解析、パート1)(New Jersey:Humana Press,1994);Gunnar von Heinje,Sequence Analysis in Molecular Biology:Treasure Trove or Trivial Pursuit(分子生物学における配列分析:貴重な発見または小さな追及)(Academic Press,1987);Michael GribskovおよびJohn Devereux,Sequence Analysis Primer(配列解析プライマー)(New York:M.Stockton Press,1991)およびCarilloら,1988.SIAM J.Appl.Math.48(5):1073-1082に記載されているものが挙げられる。同一性を決定するための好ましい方法は、試験される配列間の最大の一致を与えるように設計されている。同一性の決定方法は、公的に入手可能なコンピュータプログラムに記述されている。好ましいコンピュータプログラムによる2つの配列間の同一性の決定方法としては、GAP(Devereuxら,1984.Nucl.Acid.Res.12(1 Pt 1):387-395;遺伝学コンピューターグループ(Genetics Computer Group),ウィスコンシン大学バイオテクノロジーセンター,ウィスコンシン州マディソン)、BLASTP、BLASTN、TBLASTNおよびFASTA(Altschulら,1990.J.Mol.Biol.215(3):403-410)などのGCGプログラムパッケージが挙げられる。BLASTXプログラムは、国立生物工学情報センター(NCBI)および他の提供源(BLAST Manual,Altschulら,NCB/NLM/NIH,メリーランド州ベセズダ,20894;Altschulら,1990.J.Mol.Biol.215(3):403-410)から公的に入手可能である。また、周知のSmith Watermanアルゴリズムを使用して同一性を決定してもよい。
【0030】
「対象」という用語は、哺乳類、好ましくはヒト、ウシ(例えば、雌ウシ、雄ウシ、子ウシ、若雌ウシ)、鳥類、ヒツジ(ovine)(例えば、ヒツジ(sheep)、子ヒツジ、雌ヒツジ)、ヤギ(caprine)(ヤギ(goat)、雄ヤギ、子ヤギ)、より好ましくはヒトまたはウシを指す。一実施形態では、対象は、医療的ケアを受けるのを待っているか受けている、あるいは過去に医療処置の対象であったか現在対象であるか今後対象になる、あるいは疾患の発現について観察される「患者」、すなわち哺乳類、温血動物、より好ましくはヒトまたはウシであってもよい。
【0031】
数字の前の「約」は前記数字の値の±10%を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、細胞中の細胞表面栄養トランスポーターCAT1を検出および/または定量化するためのインビトロまたはインビボ方法であって、
a.前記細胞を少なくとも1種のリガンド、好ましくは少なくとも1種のウシ白血病ウイルス(BLV).RBDリガンドまたはその変異体および/または断片と接触させる工程と、
b.前記少なくとも1種のリガンド、その変異体および/または断片のCAT1への結合を決定および/または定量化する工程と
を含む方法に関する。
【0033】
一実施形態では、本発明の方法は、工程bで決定および/または定量化された結合を基準結合値と比較する工程を含む。
【0034】
本明細書で使用される「細胞に存在するCAT1」という用語は、細胞の表面または細胞内に存在するCAT1を指してもよい。
【0035】
一実施形態では、本発明の方法は細胞表面に存在するCAT1の発現レベルを評価するためのものである。別の実施形態では、本発明の方法は細胞内に存在するCAT1の発現レベルを評価するためのものである。
【0036】
一実施形態では、本発明の方法は試料中のCAT1を検出および/または定量化するためのものある。
【0037】
一実施形態では、当該試料は本発明の方法の実施前に対象から得たものである。一実施形態では、本発明の方法は対象から試料を得る工程を含まず、すなわち本発明の方法は非侵襲的である。
【0038】
一実施形態では、本発明の方法を実施するために対象から得られた試料は生体試料である。
【0039】
一実施形態では、前記生体試料は体液試料である。体液の例としてはとしては限定されるものではないが、血液、血漿、血清、リンパ、尿、脳脊髄液または汗が挙げられる。
【0040】
別の実施形態では、前記生体試料は細胞試料である。細胞試料の例としては限定されるものではないが、末梢血単核細胞(PBMC)、末梢白血球、リンパ節生検、腸もしくは滑液生検などの組織生検から得られた細胞試料、気管支肺胞洗浄から得られた細胞試料または脳脊髄液が挙げられる。
【0041】
別の実施形態では、前記生体試料は組織試料である。組織試料の例としては、限定されるものではないが生検試料が挙げられる。
【0042】
一実施形態では、本発明の方法を実施するために対象から得られた試料は血液試料である。一実施形態では、本発明の方法を実施するために対象から得られた試料は全血試料または血漿試料である。
【0043】
一実施形態では、本発明の方法は顆粒球中のCAT1を検出および/または定量化するためのものではない。「顆粒球」とは、好中球、好酸球、好塩基球および肥満細胞などの骨髄球系または単球系に属する細胞を意味する。
【0044】
試料中のタンパク質レベルを決定および/または定量化するためのインビトロ方法は当該技術分野で周知である。そのような方法の例としては、限定されるものではないが、免疫組織化学、マルチプレックス法(Luminex)、ウエスタンブロット法、酵素結合免疫吸着法(ELISA)、サンドイッチELISA、蛍光結合免疫吸着法(FLISA:fluorescent-linked immunosorbent assay)、酵素免疫測定法(EIA)、放射免疫測定法(RIA)、フローサイトメトリー(FACS)などが挙げられる。
【0045】
タンパク質レベルを決定および/または定量化するためのインビボ方法は当該技術分野で周知である。そのような方法の例としては、限定されるものではないが、コンピューター断層撮影法(CTスキャン)、超音波内視鏡(EUS)、核磁気共鳴画像法(MRI)、陽電子放射断層撮影法(PET)、単一光子放射断層撮影法(SPECT)、磁気共鳴胆道膵管造影法、蛍光定量法、蛍光および近赤外線(NIR)蛍光イメージングが挙げられる。
【0046】
細胞表面または細胞、試料、組織または臓器中のタンパク質の存在を分析するための方法は当業者に周知であり、限定されるものではないが、FACS分析、免疫組織化学、細胞分画を伴うウエスタンブロット法、酵素結合免疫吸着法(ELISA)、サンドイッチELISA、固相蛍光免疫測定法(FLISA)、酵素免疫測定法(EIA)、放射性免疫測定法(RIA)、画像分析、例えばハイコンテント分析、コンピューター断層撮影法(CTスキャン)、超音波内視鏡(EUS)、核磁気共鳴画像法(MRI)、陽電子放射断層撮影法(PET)、単一光子放射断層撮影法(SPECT)、磁気共鳴胆道膵管造影法、蛍光定量法、蛍光および近赤外線(NIR)蛍光イメージングなどが挙げられる。
【0047】
一実施形態では、細胞表面あるいは細胞、試料、組織または臓器中のタンパク質を検出するために、本明細書の上に列挙されている方法のうちの1つを実施する前に、前記細胞、試料、組織または臓器の固定工程が必要となる場合がある。細胞、試料、組織または臓器の固定法は当業者に周知であり、限定されるものではないが、灌流、ホルムアルデヒドまたはメタノール/エタノール浸漬が挙げられる。
【0048】
細胞表面のタンパク質の存在を分析するための方法は当業者に周知であり、限定されるものではないが、FACS分析、イメージングフローサイトメトリー(例えばAMNIS)、免疫組織化学、細胞分画を伴うウエスタンブロット法、酵素結合免疫吸着法(ELISA)、サンドイッチELISA、固相蛍光免疫測定法(FLISA)、酵素免疫測定法(EIA)、放射性免疫測定法(RIA)、画像分析、例えばハイコンテント分析、コンピューター断層撮影法(CTスキャン)、超音波内視鏡(EUS)、核磁気共鳴画像法(MRI)、陽電子放射断層撮影法(PET)、単一光子放射断層撮影法(SPECT)、蛍光光度計、蛍光および近赤外線(NIR)蛍光イメージングなどが挙げられる。
【0049】
少なくとも1種のリガンド(好ましくは少なくとも1種のBLV.RBDリガンド)、その変異体および/または断片の「結合を決定および/または定量化する工程」という表現は、細胞表面栄養トランスポーターCAT1が存在する場合に、CAT1と本発明のリガンド、その変異体および/または断片との間で複合体が形成され、それを検出し、かつ任意に定量化できることを意味する。
【0050】
一実施形態では、上記複合体は、本リガンド、その変異体および/または断片が、例えば限定されるものではないが、抗体定常断片(Fc)または蛍光化合物(例えばシアニン色素、Alexa色素、量子色素など)などの検出可能な分子と共有結合的に結合されている場合に検出することができる。上記複合体は本リガンドが当業者に周知の異なる手段でタグ付けされている場合にも検出することができる。例えば限定されるものではないが、本発明で使用されるタグは、赤血球凝集素タグ、ポリアルギニンタグ、ポリヒスチジンタグ、Mycタグ、Strepタグ、S-タグ、HATタグ、3×Flagタグ、カルモジュリン結合ペプチドタグ、SBPタグ、キチン結合ドメインタグ、GSTタグ、マルトース結合タンパク質タグ、蛍光タンパク質タグ、T7タグ、V5タグおよびX-プレスタグを含むからそれらからなる群から選択されるタグであってもよい。これらのタンパク質タグは、本発明のBLV.RBDリガンドのN末端、C末端および/または内部に位置していてもよい。
【0051】
従って、本リガンドの使用により一方では同定や検出が可能となり、他方では形成された複合体の定量化が可能になる。一実施形態では、結合を検出および/または定量化する工程は、フローサイトメトリー、免疫蛍光法または画像分析、例えばハイコンテント分析によって行う。
【0052】
別の実施形態では、その複合体は本リガンドが例えば限定されるものではないが少なくとも1種の造影剤と共有結合的に結合されている場合に検出することができる。一実施形態では、結合を検出および/または定量化する工程を医用画像診断法で行う。
【0053】
本明細書で使用される「造影剤」という用語は、限定されるものではないが、核磁気共鳴画像法(MRI)、コンピューター断層撮影法(CT)などのX線を用いる画像診断法、X線撮影法、超音波内視鏡(EUS)、陽電子放射断層撮影法(PET)、単一光子放射断層撮影法(SPECT)、蛍光透視法、蛍光定量法、蛍光および近赤外線(NIR)蛍光イメージングなどの医用画像診断法で体内構造の可視性を向上させるために使用される薬剤を指す。
【0054】
一実施形態では、本リガンドを少なくとも1種の造影剤に結合させるが、前記造影剤は放射性標識薬剤または蛍光剤であってもよい。
【0055】
一実施形態では、本発明の放射性標識薬剤は、非金属放射性同位体、非金属もしくは金属色素、常磁性金属または放射性金属を含む群から選択される。
【0056】
非金属放射性同位体の例は、限定されるものではないが、I-125、I-123、I-131、C-11、F-18、Br-75、Br-76、Br-77、Br-80およびAt-211を含む。非金属放射性同位体は、本リガンドの末端すなわちアミノ酸側鎖の官能基のいずれかに共有結合的に結合されていてもよく、例えばフッ素、臭素またはヨウ素を有するアミノ酸フェニルアラニンまたはチロシン中のさらなる置換基として、あるいはさらなるカルボキシまたはメチル置換基として、あるいは本リガンド中の任意の規則炭素原子の代わりとして直鎖状安定化ペプチドの一部であってもよい。好ましくは、本リガンドをI-125に結合させる。これらの放射性同位体は陽電子断層撮影法(PET)プローブまたは単一光子放射断層撮影法(SPECT)プローブとしてリガンドにおいて有用である。
【0057】
非金属もしくは金属色素の例は、限定されるものではないが有機分子、例えば市販のAlexa Fluor(登録商標)色素、フルオレセイン、ローダミンまたはCy(登録商標)色素(Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7およびCy7.5など)、遷移金属の複合体、例えばEu3+、Tb3+のキレートあるいは可視域または近赤外線の光を吸収および/または放出するナノ粒子(量子ドット)を含む。有機色素およびキレート系はキレート剤のために上に記載されているようなリガンドに結合される。本リガンドと量子ドットとの結合は当業者に公知の手順によって行われる。色素を有するこれらのリガンドは光学イメージングプローブとして有用である。
【0058】
常磁性金属の例は、限定されるものではないが、Gd、Fe、Mnを含む。金属を本リガンドに結合させる。これらのリガンドは核磁気共鳴画像法(MRI)プローブとして有用である。
【0059】
放射性金属の例は、限定されるものではないが、Cu-64、Cu-67、Ga-67、Ga-68、Zr-89、Y-90、Tc-99m、In-111、Tb-161、Lu-177、Re-186、Re-188およびBi-213を含む。放射性金属(および上記常磁性金属)は、上に列挙されているようなキレート剤を介して本発明のリガンドに結合させ、本リガンドに直接またはスペーサーを介して接続されている。
【0060】
蛍光剤の例としては、限定されるものではないが、GFP、mPlum、mCherry、tdTomato、mStrawberry、J-Red、DS-Red Monomer、mOrange、mKO、mCitrine、Venus、YPet、EYFP、Emerald、EGFP、CyPet、mCFP、Cerulean、T-Sapphireg、インドシアニングリーン、ZW800-1、Cy5.5およびIRDye800CWが挙げられる。
【0061】
一実施形態では、造影剤はI-125である。
【0062】
典型的なリガンドとしては、限定されるものではないが、ポリペプチドおよびタンパク質が挙げられる。
【0063】
一実施形態では、本リガンドはCAT1に特異的な抗体であり、かつ本発明の方法は、前記抗体とCAT1との間で形成される複合体を検出および/または定量化する工程を含む。
【0064】
従って、一実施形態では、本発明は、細胞に存在する細胞表面栄養トランスポーターCAT1を検出および/または定量化するためのインビトロまたはインビボ方法であって、
a.前記細胞をCAT1に特異的な少なくとも1種の抗体と接触させる工程と、
b.前記少なくとも1種の抗体のCAT1への結合を決定および/または定量化する工程と
を含む方法に関する。
【0065】
一実施形態では、本発明の方法は、工程bで決定および/または定量化された結合を基準結合値と比較する工程を含む。
【0066】
一実施形態では、本リガンドは受容体結合ドメイン(RBD)リガンドであり、かつ本発明の方法は、前記RBDリガンドとCAT1との間で形成された複合体を検出および/または定量化する工程を含む。
【0067】
本発明の一態様では、本リガンドは受容体結合ドメイン(RBD)リガンド、好ましくはBLV-RBDリガンドであり、前記RBDリガンドは、CAT1と相互作用するエンベロープウイルスの糖タンパク質の可溶性部分に由来する受容体結合ドメイン(RBD)の一部または全体を含む。
【0068】
「CAT1と相互作用するもの」という表現は、それがその細胞に存在するCAT1受容体を認識しやすいことを意味する。従って、一実施形態では、CAT1と相互作用するリガンドはCAT1と複合体を形成し、その複合体は本明細書の上に記載されている方法によって検出することができる。
【0069】
「エンベロープウイルスの糖タンパク質の可溶性部分に由来する」という表現は、本リガンドがウイルスのエンベロープに含まれる糖タンパク質の断片または一部であり、かつ例えばクローニングによって得ることができることを意味する。
【0070】
「糖タンパク質」という用語は、エンベロープ糖タンパク質、コート糖タンパク質または融合糖タンパク質を意味するものとして理解されるべきであり、ここで「糖タンパク質」という用語は、ポリペプチド側鎖に共有結合的に結合されたオリゴ糖鎖を含むタンパク質を指す。
【0071】
RBDは特にウイルスのエンベロープの糖タンパク質中に存在し、従って受容体結合ドメインリガンドは、RBD全体またはRBDの断片すなわち一部を含む。
【0072】
一実施形態では、本発明のリガンドは、例えばBLV.RBDなどのウイルスの糖タンパク質エンベロープの細胞表面(SU)ドメインまたはSUドメインの断片を含む。別の実施形態では、本発明のリガンドはウイルスの糖タンパク質エンベロープの膜貫通(TM)ドメインを含まない。従って、本発明の一実施形態では、本発明のリガンドは可溶性ペプチド、特に可溶性BLV.RBDである。本明細書で使用される「可溶性ペプチド」という用語は、例えば膜貫通またはGPIアンカードメインなどによって膜内に固定されていないペプチドを指す。
【0073】
一実施形態では、RBDリガンドはマウスのC型エコトロピックレトロウイルスの糖タンパク質の可溶性部分に由来していない。一実施形態では、RBDリガンドはモロニーマウスの白血病ウイルス、Shinnick単離株(受入番号:P03385、配列番号25)の糖タンパク質の可溶性部分に由来していない。一実施形態では、RBDリガンドはフレンドマウス白血病ウイルス、57系(受入番号:P03390、配列番号26)の糖タンパク質の可溶性部分に由来していない。
【0074】
一実施形態では、RBDリガンドはデルタレトロウイルスの糖タンパク質の可溶性部分に由来している。
【0075】
デルタレトロウイルス属は、ヒト、各種サル種およびウシに感染するウイルスを含む。デルタレトロウイルスとしては、限定されるものではないが、ウシ白血病ウイルス(BLV)、ヒトT細胞白血病ウイルス1~4(HTLV1~4)およびサルのT細胞白血病ウイルス1~4(STLV1~4)が挙げられる。
【0076】
デルタレトロウイルスは、成熟したレトロウイルスウイルス粒子中に存在する糖タンパク質のエンベロープをコードする。エンベロープタンパク質はプロペプチドの形態で合成され、このプロペプチドがフューリンペプチダーゼによってゴルジ装置において切断され、2種類のポリペプチド、すなわち膜貫通(TM)および細胞表面(SU)成分が生じる。SUドメインは2つの主要なサブドメイン、すなわちTMドメインおよびアミノ端末RBDと相互作用するドメインを含み、後者は宿主細胞膜受容体と相互作用しやすい。
【0077】
一実施形態では、受容体結合ドメインリガンドはウシ白血病ウイルスのエンベロープ糖タンパク質から単離されたものであり、これを本明細書ではBLV.RBDと呼ぶ。
【0078】
従って、一実施形態では、本発明のリガンドは、例えばBLV.RBDなどのウシ白血病ウイルス(BLV)の糖タンパク質エンベロープの細胞表面(SU)ドメインまたはSUドメインの断片を含む。別の実施形態では、本発明のリガンドはウシ白血病ウイルス(BLV)の糖タンパク質エンベロープの膜貫通(TM)ドメインを含まない。従って、本発明の一実施形態では、本発明のリガンドは可溶性ペプチド、特に可溶性BLV.RBDである。
【0079】
従って、一実施形態では、本発明は、細胞に存在する細胞表面栄養トランスポーターCAT1を検出および/または定量化するためのインビトロまたはインビボ方法であって、
a.前記細胞を少なくとも1種のウシ白血病ウイルス(BLV).RBDリガンド、その変異体および/または断片と接触させる工程と、
b.前記少なくとも1種のBLV.RBDリガンド、その変異体または断片のCAT1への結合を決定および/または定量化する工程と
を含む方法に関する。
【0080】
一実施形態では、本発明の方法は、工程bで決定および/または定量化された結合を基準結合値と比較する工程を含む。
【0081】
本発明の一態様では、本リガンドはBLV.RBDリガンドであり、前記BLV.RBDリガンドは、CAT1と相互作用するBLVエンベロープウイルスの糖タンパク質の可溶性部分に由来する受容体結合ドメイン(RBD)の一部または全体を含む。
【0082】
一実施形態では、前記BLV.RBDは、配列番号21のアミノ酸配列(配列番号22または配列番号5によってコードされる)、その変異体または断片を含むかそれからなる。
【0083】
一実施形態では、前記断片は、配列番号21のアミノ酸34~181を含むかそれからなる。
【0084】
一実施形態では、前記断片は、配列番号21のアミノ酸1~149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179または180を含むかそれからなる。
【0085】
別の実施形態では、前記断片は、配列番号21のアミノ酸34~149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179または180を含むかそれからなる。
【0086】
一実施形態では、前記BLV.RBDは、配列番号28のアミノ酸配列、その変異体または断片を含むかそれからなる。
【0087】
一実施形態では、前記断片は、配列番号28のアミノ酸34~181を含むかそれからなる。
【0088】
一実施形態では、前記断片は、配列番号28のアミノ酸1~149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179または180を含むかそれからなる。
【0089】
別の実施形態では、前記断片は、配列番号28のアミノ酸34~149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179または180を含むかそれからなる。
【0090】
一実施形態では、前記BLV.RBDは、配列番号29のアミノ酸配列、その変異体または断片を含むかそれからなる。
【0091】
一実施形態では、前記断片は、配列番号29のアミノ酸34~181を含むかそれからなる。
【0092】
一実施形態では、前記断片は、配列番号29のアミノ酸1~149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179または180を含むかそれからなる。
【0093】
別の実施形態では、前記断片は、配列番号29のアミノ酸34~149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179または180を含むかそれからなる。
【0094】
一実施形態では、前記BLV.RBDは、配列番号4のアミノ酸配列、その変異体または断片を含むかそれからなる。
【0095】
一実施形態では、前記断片は、配列番号4のアミノ酸34~181を含むかそれからなる。
【0096】
一実施形態では、前記断片は、配列番号4のアミノ酸1~149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179または180を含むかそれからなる。
【0097】
別の実施形態では、前記断片は、配列番号4のアミノ酸34~149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179または180を含むかそれからなる。
【0098】
一実施形態では、前記BLV.RBDは、配列番号3のアミノ酸配列、その変異体または断片を含むかそれからなる。
【0099】
一実施形態では、前記断片は、配列番号3のアミノ酸34~215を含むかそれからなる。
【0100】
一実施形態では、前記断片は、配列番号3のアミノ酸1~182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213または214を含むかそれからなる。
【0101】
別の実施形態では、前記断片は、配列番号3のアミノ酸34~182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213または214を含むかそれからなる。
【0102】
一実施形態では、前記BLV.RBDは、配列番号30のアミノ酸配列、その変異体または断片を含むかそれからなる。
【0103】
一実施形態では、前記断片は、配列番号30のアミノ酸34~215を含むかそれからなる。
【0104】
一実施形態では、前記断片は、配列番号30のアミノ酸1~182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213または214を含むかそれからなる。
【0105】
別の実施形態では、前記断片は、配列番号30のアミノ酸34~182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213または214を含むかそれからなる。
【0106】
一実施形態では、前記BLV.RBDは、配列番号31のアミノ酸配列、その変異体または断片を含むかそれからなる。
【0107】
一実施形態では、前記断片は、配列番号31のアミノ酸34~215を含むかそれからなる。
【0108】
一実施形態では、前記断片は、配列番号31のアミノ酸1~182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213または214を含むかそれからなる。
【0109】
別の実施形態では、前記断片は、配列番号31のアミノ酸34~182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213または214を含むかそれからなる。
【0110】
一実施形態では、前記BLV.RBDは、配列番号32のアミノ酸配列、その変異体または断片を含むかそれからなる。
【0111】
一実施形態では、前記断片は、配列番号32のアミノ酸34~215を含むかそれからなる。
【0112】
一実施形態では、前記断片は、配列番号32のアミノ酸1~182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213または214を含むかそれからなる。
【0113】
別の実施形態では、前記断片は、配列番号32のアミノ酸34~182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213または214を含むかそれからなる。
【0114】
一実施形態では、前記BLV.RBDは、配列番号13のアミノ酸配列(配列番号14によってコードされる)、その変異体または断片を含むかそれからなる。
【0115】
一実施形態では、前記BLV.RBDは、配列番号15のアミノ酸配列(配列番号16によってコードされる)、その変異体または断片を含むかそれからなる。
【0116】
一実施形態では、前記BLV.RBDは、配列番号17のアミノ酸配列(配列番号18によってコードされる)、その変異体または断片を含むかそれからなる。
【0117】
一実施形態では、前記BLV.RBDは、配列番号19のアミノ酸配列(配列番号20によってコードされる)、その変異体または断片を含むかそれからなる。
【0118】
一実施形態では、前記BLV.RBDは、配列番号33のアミノ酸配列、その変異体または断片を含むかそれからなる。
【0119】
一実施形態では、前記BLV.RBDは、配列番号34のアミノ酸配列、その変異体または断片を含むかそれからなる。
【0120】
一実施形態では、前記BLV.RBDは、配列番号35のアミノ酸配列、その変異体または断片を含むかそれからなる。
【0121】
一実施形態では、前記BLV.RBDは、配列番号36のアミノ酸配列、その変異体または断片を含むかそれからなる。
【0122】
一実施形態では、前記BLV.RBDは、配列番号37のアミノ酸配列、その変異体または断片を含むかそれからなる。
【0123】
一実施形態では、前記BLV.RBDは、配列番号38のアミノ酸配列、その変異体または断片を含むかそれからなる。
【0124】
一実施形態では、前記BLV.RBDは、配列番号39のアミノ酸配列、その変異体または断片を含むかそれからなる。
【0125】
一実施形態では、前記BLV.RBDは、配列番号40のアミノ酸配列、その変異体または断片を含むかそれからなる。
【0126】
一実施形態では、前記BLV.RBDは、配列番号41のアミノ酸配列、その変異体または断片を含むかそれからなる。
【0127】
一実施形態では、前記BLV.RBDは、配列番号42のアミノ酸配列、その変異体または断片を含むかそれからなる。
【0128】
一実施形態では、前記BLV.RBDは、配列番号43のアミノ酸配列、その変異体または断片を含むかそれからなる。
【0129】
一実施形態では、前記BLV.RBDは、配列番号44のアミノ酸配列、その変異体または断片を含むかそれからなる。
【0130】
一実施形態では、前記BLV.RBDは、配列番号45のアミノ酸配列(配列番号46によってコードされる)、その変異体または断片を含むかそれからなる。
【0131】
一実施形態では、前記BLV.RBDは、配列番号47のアミノ酸配列、その変異体または断片を含むかそれからなる。
【0132】
一実施形態では、前記BLV.RBDは、配列番号48のアミノ酸配列、その変異体または断片を含むかそれからなる。
【0133】
一実施形態では、前記BLV.RBDは、配列番号49のアミノ酸配列、その変異体または断片を含むかそれからなる。
【0134】
本明細書で使用される「アミノ酸」は、それらの名前全体あるいは当該技術分野で周知のそれらの3文字コードまたはそれらの1文字コードによって表されている。ペプチド内のアミノ酸残基は以下のように省略されている。すなわち、フェニルアラニンはPheまたはF、ロイシンはLeuまたはL、イソロイシンはIleまたはI、メチオニンはMetまたはM、バリンはValまたはV、セリンはSerまたはS、プロリンはProまたはP、トレオニンはThrまたはT、アラニンはAlaまたはA、チロシンはTyrまたはY、ヒスチジンはHisまたはH、グルタミンはGlnまたはQ、アスパラギンはAsnまたはN、リジンはLysまたはK、アスパラギン酸はAspまたはD、グルタミン酸はGluまたはE、システインはCysまたはC、トリプトファンはTrpまたはW、アルギニンはArgまたはR、グリシンはGlyまたはGである。
【0135】
本明細書で使用される「アミノ酸」という用語は、天然および合成アミノ酸の両方ならびにDおよびLアミノ酸の両方を含む。「標準アミノ酸」または「天然に生じるアミノ酸」は、一般に天然に生じるペプチド中に存在する20種の標準L-アミノ酸のいずれかを意味する。「非標準アミノ酸残基」は、合成により調製されたか天然源に由来するかに関わらず標準アミノ酸以外の任意のアミノ酸を意味する。例えば、ナフチルアラニンをトリプトファンの代わりに使用して合成を容易にすることができる。置換することができる他の合成アミノ酸としては、限定されるものではないが、L-ヒドロキシプロピル、L-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニル、L-α-ヒドロキシルリル(hydroxylysyl)およびD-α-メチルアラニル、L-α-メチルアラニルなどのα-アミノ酸、β-アミノ酸およびイソキノリルが挙げられる。
【0136】
本明細書で使用される「アミノ酸」は、限定されるものではないが、塩、アミノ酸誘導体(アミドなど)および置換体などの化学的に修正されたアミノ酸も包含する。本発明のポリペプチド内、特にカルボキシまたはアミノ末端に含まれるアミノ酸は、それらの活性に悪影響を与えることなくポリペプチドの循環半減期を変えることができるメチル化、アミド化、アセチル化または他の化学基による置換によって修飾されていてもよい。さらに、本発明のポリペプチド内にジスルフィド結合が存在していても存在していなくてもよい。
【0137】
本発明のRBDリガンドは標準アミノ酸または非標準アミノ酸を含んでいてもよい。ポリペプチド模倣体としては、以下の修飾を有するポリペプチド、すなわち、i)1つ以上のペプチジル-C(O)NR-結合が-CH-カルバメート結合(-CHOC(O)NR-)、ホスホネート結合、-CH-スルホンアミド(-CH-S(O)NR-)結合、尿素(-NHC(O)NH-)結合、-CH-第二級アミン結合またはアルキル化ペプチジル結合(-C(O)NR-)(式中、RはC~Cアルキルである)などの非ペプチジル結合で置換されているポリペプチド、ii)N末端が-NRR基、-NRC(O)R基、-NRC(O)基または-NRS(O)R基、-NHC(O)NHR基(式中、RおよびRがどちらも水素でないという条件でRおよびRは水素またはC~Cアルキルである)に誘導体化されているポリペプチド、iii)C末端が-C(O)R(式中、RはC~Cアルコキシおよび-NR(式中、RおよびRは独立して水素およびC~Cアルキルからなる群から選択される)からなる群から選択される)に誘導体化されているポリペプチドが挙げられる。
【0138】
好ましい実施形態によれば、本BLV.RBDリガンドは、配列番号21、3、4、13、15、17、19、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、47、48および49の配列、その断片および変異体を含む群から選択され、より好ましくは配列番号21および4の配列、その断片および変異体を含む群から選択され、さらにより好ましくは配列番号21の配列、その断片および変異体を含む群から選択される。別の実施形態によれば、受容体結合ドメインリガンドは配列番号22、5、14、16、18、20および46の配列、その変異体および断片を含む群から選択されるDNA配列によってコードされる。
【0139】
一実施形態では、本BLV.RBDリガンドは、配列番号21、3、4、13、15、17、19、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、47、48または49の配列のうちの1つとと少なくとも70%の配列同一性、好ましくは配列番号21、3、4、13、15、17、19、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、47、48または49の配列のうちの1つと少なくとも約75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%またはそれ以上の配列同一性を示す配列を含むかそれからなる。
【0140】
別の実施形態では、本発明のBLV.RBDリガンドは、配列番号22、5、14、16、18、20または46の配列と少なくとも70%の配列同一性、好ましくは配列番号22、5、14、16、18、20または46の配列と少なくとも約75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%またはそれ以上の配列同一性を示すDNA配列によってコードされる。
【0141】
一実施形態では、本発明のBLV.RBDリガンドは、配列番号21、3、4、13、15、17、19、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、47、48および49の配列を有するポリペプチドのうちの1つの変異体である。
【0142】
本明細書で使用されるポリペプチド「変異体」という用語は、1つ以上の置換、欠失、付加および/または挿入の点で本明細書に具体的に開示されているポリペプチドとは典型的に異なるポリペプチドである。そのような変異体は、天然に生じたものであってもよく、あるいは、例えば、1つ以上の上記ポリペプチド配列を修飾し、本明細書に記載されているようにそのポリペプチドの1つ以上の生物活性を評価し、かつ/または当該技術分野で周知の複数の技術のいずれかを用いて合成により産生されたものであってもよい。修飾は、ポリペプチドの構造において行ってもよく、望ましい特性を有するポリペプチド変異体または誘導体をコードする機能性分子がなお得られる。
【0143】
ポリペプチドのアミノ酸配列を変化させて、同等またはさらに改良された本発明のリガンドの変異体または一部を生成したい場合、当業者は典型的に、コード化DNA配列のコドンの1つ以上を変化させる。例えば、細胞表面受容体、好ましくは細胞表面栄養トランスポーターに結合するその能力を大きく損失することなく、特定のアミノ酸をタンパク質構造中の他のアミノ酸で置換してもよい。タンパク質の生物学的機能活性を定めるのはタンパク質の結合能力および性質であるため、特定のアミノ酸配列の置換は、タンパク質配列および当然ながらその基礎をなすDNAコード配列において行うことができ、それにも関わらず、同様の特性を有するタンパク質が得られる。従って、ペプチド配列または前記ペプチドをコードする対応するDNA配列において、それらの生物学的有用性または活性を大きく損失することなく様々な変化をなし得ることが想定される。多くの例では、ポリペプチド変異体は、1つ以上の保存的置換を含む。「保存的置換」とは、ペプチド化学の当業者がポリペプチドの二次構造および親水性/疎水性(hydropathic nature)が実質的に変化されないことを期待するような、あるアミノ酸を同様の特性を有する別のアミノ酸で置き換える置換である。従って、上に概説したように、アミノ酸置換は一般にアミノ酸側鎖置換基の相対的類似性、例えば、それらの疎水性、親水性、電荷、大きさなどに基づいている。上記特性の様々なものを考慮した例示的な置換は当業者に周知であり、アルギニンとリジン、グルタミン酸とアスパラギン酸、セリンとトレオニン、グルタミンとアスパラギン、バリンとロイシンとイソロイシンが挙げられる。さらに、残基の極性、電荷、溶解性、疎水性、親水性および/または両親媒性における類似性に基づいてアミノ酸置換を行ってもよい。例えば、負に荷電したアミノ酸としてはアスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられ、正に荷電したアミノ酸としてはヒスチジン、リジンおよびアルギニンが挙げられ、同様の親水性値を有する荷電していない極性の頭部基を有するアミノ酸としては、ロイシンとイソロイシンとバリン、グリシンとアラニン、アスパラギンとグルタミン、セリンとトレオニンとフェニルアラニンとチロシンが挙げられる。保存的変化を表し得るアミノ酸の他の群としては、(1)Ala、Pro、Gly、Glu、Asp、Gln、Asn、Ser、Thr、(2)Cys、Ser、Tyr、Thr、(3)Val、Ile、Leu、Met、Ala、Phe、(4)Lys、Arg、His、および(5)Phe、Tyr、Trp、Hisが挙げられる。
【0144】
本明細書で使用される「保存的アミノ酸置換」という用語は、以下の5つの群:
I.小さい脂肪族の非極性または僅かに極性の残基:Ala、Ser、Thr、Pro、Gly
II.極性の負に荷電した残基およびそれらのアミド:Asp、Asn、Glu、Gln、
III.極性の正に荷電した残基:His、Arg、Lys
IV.大きい脂肪族の非極性残基:Met、Leu、Ile、Val、Cys
V.大きい芳香族の残基:Phe、Tyr、Trp
のうちの1つの中でのアミノ酸交換としてさらに定義してもよい。
【0145】
変異体は、追加または代わりとして、非保存的変化を含んでいてもよい。好ましい実施形態では、ポリペプチド変異体は、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸の置換、欠失または付加によって天然配列とは異なる。変異体は、追加(または代わりとして)、例えば、ポリペプチドの免疫原性、二次構造および親水性/疎水性に対して最小の影響を有するアミノ酸の欠失または付加によって修飾されていてもよい。
【0146】
一実施形態では、配列番号21、3、4、13、15、17、19、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、47、48または49の変異体はそれぞれ、配列番号21、3、4、13、15、17、19、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、47、48または49のうちの1つと少なくとも同等の親和性でCAT1に結合することができる。
【0147】
一実施形態では、配列番号21、3、4、13、15、17、19、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、47、48または49の変異体はそれぞれ、配列番号21、3、4、13、15、17、19、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、47、48または49の配列と比較した場合に、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の保存的アミノ酸置換などの保存的アミノ酸置換を含む。
【0148】
別の実施形態では、配列番号21、3、4、13、15、17、19、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、47、48または49の変異体はそれぞれ、配列番号21、3、4、13、15、17、19、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、47、48または49の配列からの1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸が存在しないか任意のアミノ酸で置換されているポリペプチド、あるいは1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸(隣接していても隣接していなくてもよい)が付加されているポリペプチドである。
【0149】
本発明の一実施形態では、本明細書の上に記載されているRBDリガンドは、当該技術分野で周知の手段、例えばリン酸、酢酸、脂質または炭水化物基などの1つ以上の官能基の付加および/または1つ以上の保護基の付加によって修飾されている。例えば、本RBDリガンドは、リン酸、酢酸または各種脂質および炭水化物などの1つ以上の官能基の付加によって修飾されていてもよい。本発明のRBDリガンドはポリペプチド誘導体として存在していてもよい。「ポリペプチド誘導体」という用語は、アミノ基(-NH-)、より詳細にはペプチド結合を有する化合物を指す。ポリペプチドは置換アミドとしてみなしてもよい。アミド基のようにペプチド結合は高度の共鳴安定化を示す。ペプチド結合内のC-N単結合は典型的には約40%の二重結合の性質を有し、かつC=O二重結合は約40%の単結合の性質を有する。「保護基」は保護されていない官能基に関与する望ましくない反応(タンパク質分解など)を防止する基である。アミノ保護基の具体例としては、ホルミル、トリフルオロアセチル、ベンジルオキシカルボニル、(オルト-またはパラ-)クロロベンジルオキシカルボニルや(オルト-またはパラ-)ブロモベンジルオキシカルボニルなどの置換ベンジルオキシカルボニル、およびt-ブトキシカルボニルやt-アミルオキシカルボニル(t-amiloxycarbonyl)などの脂肪族オキシカルボニルが挙げられる。アミノ酸のカルボキシル基は、エステル基への変換によって保護することができる。エステル基としては、ベンジルエステル、メトキシベンジルエステルなどの置換ベンジルエステル、シクロヘキシルエステル、シクロヘプチルエステルまたはt-ブチルエステルなどのアルキルエステルが挙げられる。グアニジノ部分は保護基を必要としないが、ニトロまたはトシル、メトキシベンゼンスルホニルもしくはメシチレンスルホニルなどのアリールスルホニルによって保護されていてもよい。イミダゾールの保護基としては、トシル、ベンジルおよびジニトロフェニルが挙げられる。トリプトファンのインドール基はホルミルによって保護されていても保護されていてもよい。
【0150】
本RBDリガンドの修飾は、特にインビボでのそれらの寿命を引き延ばすことを目的としている。修飾の一種は、ポリエチレングリコール(PEG)のRBDリガンドのN末端またはC末端への付加である。PEGは、それを高い水溶解性、溶液中での高い移動性および低い免疫原性などのポリペプチドのための理想的な担体にさせる多くの特性を有していることが当業者によって知られている。この修飾によりポリペプチドがエキソペプチダーゼから保護され、従ってそれらのインビボでの全体的安定性も高まる。
【0151】
エンドペプチダーゼまたはエキソペプチダーゼによるポリペプチドの分解を防止するために使用される他の修飾としては、アセチル化またはグリコシル化などのN端末修飾、アミド化などのC端末修飾、およびポリペプチド内の特定の部位における非天然アミノ酸(β-アミノおよびα-トリフルオロメチルアミノ酸)の使用が挙げられる。一実施形態では、本発明のBLV.RBDリガンドはグリコシル化されている。別の実施形態では、本発明のBLV.RBDリガンドはグリコシル化されていない。
【0152】
ポリペプチド分子のサイズを大きくするための別の代替法は、ポリペプチドのヒト免疫グロブリン(例えば、IgA、IgMおよびIgGなど)のFcドメインへの遺伝子融合またはポリペプチドのアルブミンへの融合である。
【0153】
一実施形態では、本明細書の上に記載されているBLV.RBDリガンドは、例えばFc断片またはGFPなどの検出タグに融合されたRBDの一部または全体を含む融合タンパク質である。Fc断片の例としては、限定されるものではないが、ウサギFc断片(配列番号9によってコードされる配列番号8のアミノ酸配列)、マウスFc断片(配列番号11によってコードされる配列番号10のアミノ酸配列)が挙げられる。
【0154】
一実施形態では、受容体結合ドメインリガンドは、ウサギFc断片に融合されたBLV.RBDである(例えば配列番号12のDNA配列によってコードされてもよい)。
【0155】
一実施形態では、本発明の受容体結合リガンドは少なくとも1種の造影剤に結合されている。造影剤の非限定的な例は本明細書の上に列挙されている。好ましい造影剤はI-125である。
【0156】
本明細書に記載されている本発明のRBDリガンドは、当該技術分野で周知の化学合成または酵素的合成によって合成により生成することができる。あるいは、本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列をタンパク質発現ベクターに導入し、好適な宿主生物(例えば、細菌、昆虫細胞など)において産生させ、次いで精製することができる。一実施形態では、受容体結合ドメインリガンドは、例えば、大腸菌、酵母、バキュロウイルス-昆虫細胞またはHEKもしくはCHOなどの哺乳類細胞発現系などの例えば当該技術分野で知られている任意の産生系を用いるクローニング法によって得られる。
【0157】
本発明の別の目的は、少なくとも1種の造影剤に結合させた本明細書の上に記載されているBLV.RBDリガンドである。一実施形態では、少なくとも1種の造影剤は放射性標識薬剤または蛍光剤である。一実施形態では、少なくとも1種の造影剤はI-125である。
【0158】
一実施形態では、少なくとも1種の造影剤に結合させた少なくとも1種のBLV.RBDリガンドを医用画像診断用プローブとして使用してもよい。
【0159】
少なくとも1種の造影剤をRBDリガンドに結合させるための方法は最先端技術において周知である。例えば、少なくとも1種の造影剤は共有結合的または非共有結合的に結合させてもよい。
【0160】
例えば、ポリペプチドをI-125に結合させるための技術は最先端技術において周知である。そのような方法の非限定的な例は、還元された形態で存在するヨウ素(NaI)をチロシンのフェノール基またはヒスチジン残基の側鎖と反応させることである。これらの基を酸化剤(ヨードゲン)で予め酸化させる。次いで、ペプチド製剤(1mci=37MBqに対して100μg)をヨードゲン溶液に添加し、4℃で10分間インキュベートする。例えば標識ごとにアジ化ナトリウムを含むPBS200μLを含む停止液を用いて反応を停止させる。同時に、マウス血清をPD10カラムに添加する。次いで、反応溶液をPD10カラムに添加し、ヨウ素に結合させたペプチドを回収する。
【0161】
本発明の一実施形態では、少なくとも1種の造影剤に結合させた本発明の少なくとも1種のBLV.RBDリガンド、その変異体および/または断片は、トレーサーとして使用するためのものである。本明細書で使用される「トレーサー」という用語は、術前、術中および術後においてCAT1関連疾患の位置、進行および/または構造の洞察を与える認識剤を指す。
【0162】
従って、本発明はさらに、それを必要とする対象におけるBLVに感染しているかまだ感染していない細胞、またはカチオン性L-アミノ酸トランスポーター機能、好ましくはCAT1機能が調節不全である細胞を追跡するためのインビボ方法であって、
a.少なくとも1種の造影剤に結合させた有効量の少なくとも1種のBLV.RBDリガンド、その変異体および/または断片を対象に投与する工程と、
b.医用画像診断法を用いて前記少なくとも1種のBLV.RBDリガンド、その変異体および/または断片の前記細胞への結合を検出および/または定量化する工程と
を含む方法に関する。
【0163】
一実施形態では、前記方法は術前、術中および術後のためのものである。別の実施形態では、前記方法は蛍光ガイド手術において使用するためのものである。
【0164】
使用することができる特定の医用画像診断法の例は当業者に周知であり、限定されるものではないが、例えばコンピューターX線体軸断層撮影法(CAT)、磁気共鳴分光法(MRS)、核磁気共鳴画像法(MRI)、陽電子断層撮影法(PET)または単一光子放射断層撮影法(SPECT)が挙げられ、Boonstraら(2015.Oncotarget.6(16):14260-73)に記載されている。
【0165】
一実施形態では、上記BLV.RBDリガンドを本明細書に記載されている放射性標識薬剤または蛍光剤に結合させる。標的化のために使用することができる放射性標識薬剤または蛍光剤の例としては、限定されるものではないが、I-125、I-131、F-18(すなわち、18-F-フルオロ-2-デオキシ-D-グルコース、18-F-フルオロ-17-エストラジオール)、11-C-酢酸、Tc-99m、O-15、N-13、Br-76、In-111、Cu-64、Ga-68、Zr-89、ZW800-1、Cy5.5、IRDye800CWが挙げられる。
【0166】
本明細書で使用される「カチオン性L-アミノ酸トランスポーター関連疾患、好ましくはCAT1関連疾患」という用語は、アルギニン、リジン、オルニチンまたはヒスチジンの恒常性および/または代謝に関与する経路が調節不全である疾患を指す。
【0167】
カチオン性L-アミノ酸トランスポーター関連疾患、好ましくはCAT1関連疾患の例、としては、限定されるものではないが、アルギニン関連疾患、リジン関連疾患、ヒスチジン関連疾患、オルニチン関連疾患、一酸化窒素関連疾患および炎症性疾患が挙げられる。
【0168】
アルギニン関連疾患の例としては、限定されるものではないが、アルギニン関連の癌、アルギニノコハク酸分解酵素関連疾患、アルギニノコハク酸合成酵素関連疾患、心筋線維化および筋肉線維症が挙げられる。
【0169】
アルギニン関連の癌の例としては、限定されるものではないが、アルギニン関連の腫瘍、アルギニン関連の肉腫、アルギニン関連の白血病、アルギニン関連の癌腫、アルギニン関連のリンパ腫、アルギニン関連の転移およびアルギニン関連の黒色腫、アルギニノコハク酸合成酵素関連の癌、アルギニノコハク酸分解酵素関連の癌、アルギニン栄養要求性腫瘍および急性骨髄性白血病が挙げられる。
【0170】
アルギニノコハク酸合成酵素関連の癌の例としては、限定されるものではないが、結腸直腸癌、膀胱癌、膵臓癌、肝臓癌、黒色腫、鼻咽腔癌、肝細胞癌、粘液線維肉腫、脳腫瘍、神経膠芽腫、ブドウ膜黒色腫、肺癌、小細胞肺癌、結腸癌、結腸直腸癌、肝癌、腎細胞癌、前立腺癌、乳癌、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、膵臓癌、悪性黒色腫、骨肉腫、悪性胸膜中皮腫、食道腺癌、肺転移、卵巣癌、急性骨髄性白血病、中皮癌、泌尿器癌およびバーキット・リンパ腫が挙げられる。
【0171】
アルギニノコハク酸分解酵素関連疾患の例としては、限定されるものではないが、肝臓癌、肝線維症、結腸直腸癌、アルギニノコハク酸分解酵素欠損症、アルギニノコハク酸尿症、尿素サイクル異常症、高アンモニア血症、発達遅滞、急性感染症または認知機能障害に対するストレス、行動異常および/または学習障害、肝腫、進行性脳症、嗜眠、発作、注意欠陥多動性障害、肝炎、肝硬変、全身性高血圧症、低カリウム血症および神経膠芽腫が挙げられる。
【0172】
アルギニノコハク酸合成酵素関連疾患の例としては、限定されるものではないが、シトルリン血症1型、高アンモニア血症、尿素サイクル異常症およびアルギニノコハク酸合成酵素関連の癌が挙げられる。
【0173】
リジン関連疾患の例としては、限定されるものではないが、高リジン血症、グルタル酸尿症1型、L-2ヒドロキシグルタル酸尿症、D-2ヒドロキシグルタル酸尿症および単純ヘルペス感染が挙げられる。
【0174】
ヒスチジン関連疾患の例としては、限定されるものではないが、ヒスチジン血症およびヒスチジンアンモニアリアーゼ欠損症が挙げられる。
【0175】
オルニチン関連疾患の例としては、限定されるものではないが、オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症、肝硬変および発癌が挙げられる。
【0176】
一酸化窒素関連疾患の例としては、限定されるものではないが、慢性腎不全、慢性心不全、鬱血性心不全、高血圧症、アテローム性動脈硬化症、脳卒中および血栓症が挙げられる。
【0177】
代謝性疾患の例としては、限定されるものではないが、肥満症、糖尿病、心血管系死亡、腎障害および虚血が挙げられる。
【0178】
炎症性疾患の例としては、限定されるものではないが、多発性関節炎、関節リウマチ、喘息、炎症性腸疾患、セリアック病、自己免疫疾患および多発性硬化症が挙げられる。
【0179】
ウシ白血病ウイルスは乳製品およびウシまたはヒツジの血液細胞および乳房組織に感染する。レトロウイルスは最初に直接接触、感染した血液および乳、場合により刺咬昆虫によってウシの間で容易に伝染する。さらに、最近の研究ではBLVに曝露された女性が乳癌を発症するリスクが高まることが実証されている。
【0180】
BLV感染の例としては、限定されるものではないが、白血病、持続性リンパ球増加症、リンパ球増殖、リンパ系腫瘍、悪性B細胞リンパ腫、(ウシにおける)地方病性ウシ白血病および乳癌が挙げられる。
【0181】
一実施形態では、本発明の方法はカチオン性L-アミノ酸トランスポーター関連疾患、好ましくはCAT1関連疾患またはBLV感染を診断するためのものである。一実施形態では、本発明の方法は炎症状態を診断するためのものではない。
【0182】
従って、本出願は、カチオン性L-アミノ酸トランスポーター関連疾患、好ましくはCAT1関連疾患またはBLV感染の診断のための方法であって、
a.有効量の少なくとも1種のBLV.RBDリガンド、その変異体および/または断片を細胞、試料、組織および/または臓器に接触させる工程と、
b.少なくとも1種のBLV.RBDリガンド、その変異体および/または断片の前記細胞、試料、組織および/または臓器中のCAT1への結合を検出および/または定量化する工程と
を含む方法に関する。
【0183】
一実施形態では、本発明の方法は、工程bで決定および/または定量化された結合を基準結合値と比較する工程を含む。
【0184】
本明細書で使用される「基準」という用語は、決定された結合に関する比較のための基準として使用することができるあらゆる好適な基準結合レベルを広く包含する。一実施形態では、この基準は、統計学的および階層的な分類のアルゴリズムおよび/または他の方法を用いて構築される。別の態様では、この基準結合レベルは、格納された結合レベルを提供するためにデータベースに格納されており、格納された結合レベルは結合レベルにおける差を決定するために使用される。このデータベースは例えばコンピューターまたはサーバに格納されていてもよい。
【0185】
一実施形態では、基準結合レベルは指標値であるか、カチオン性L-アミノ酸トランスポーター機能、好ましくはCAT1機能が調節不全である細胞またはBLVに感染しているかまだ感染していない細胞の存在についての1つ以上のリスク予測アルゴリズムまたはコンピューターで計算された指標に由来している。基準結合レベルは、限定されるものではないが、同様の年齢層である対象の集団、同じまたは同様の民族群である対象などの集団研究に由来する数または値に相対的なものであってもよい。
【0186】
本明細書で使用される「カチオン性L-アミノ酸トランスポーター、好ましくはCAT1機能が調節不全である細胞」という用語は、アルギニンまたはリジンまたはヒスチジンまたはオルニチン代謝または流入が異常に増加または減少している細胞を指す。
【0187】
アルギニンまたはリジンまたはヒスチジンまたはオルニチン代謝は、それらの合成、異化作用だけでなく食物摂取も含む。アルギニンは、多様な病態において不十分または異常な活性を示し、これらの病態に冒されているか冒されていないいくつかの臓器、組織、試料または細胞においてアルギニン蓄積を生じさせる2種類の鍵となる酵素すなわちアルギニノコハク酸合成酵素およびアルギニノコハク酸分解酵素によって合成される。リジンおよびヒスチジンは必須アミノ酸であり、従って動物の体内では合成されない。オルニチンは、L-アルギニンに対する酵素であるアルギナーゼの作用による尿素の生成に関与している。
【0188】
本発明の一実施形態では、当該基準結合レベルは、カチオン性L-アミノ酸トランスポーター関連疾患、好ましくはCAT1関連疾患またはBLV感染と診断された患者集団において測定された結合レベルである。
【0189】
本実施形態によれば、決定された結合レベルと当該基準結合レベルとの間の同等性(すなわち、差がないこと)、または当該基準結合レベルよりも高い決定された結合レベルは、カチオン性L-アミノ酸トランスポーター関連疾患、好ましくはCAT1関連疾患またはBLVによる感染の存在を示してもよい。
【0190】
本発明の一実施形態では、当該基準結合レベルは、実質的に健康な対象の集団、すなわちカチオン性L-アミノ酸トランスポーター関連疾患、好ましくはCAT1関連疾患またはBLV感染と診断されていない対象の集団において決定された結合レベルである。本実施形態によれば、当該基準結合レベルよりも高い決定された結合レベルは、カチオン性L-アミノ酸トランスポーター関連疾患、好ましくはCAT1関連疾患またはBLV感染の存在を示してもよい。
【0191】
本発明では、2種類の数値、特に2種類の結合レベルは、第1の数値が第2の数値よりも高い(例えば、第1の数値が第2の数値よりも約20%高い、好ましくは第2の数値よりも約30、40、50、60、70、80、90%またはそれ以上高いなど)または第2の数値よりも低い(例えば、第2の数値が第2の数値よりも約20%低い、好ましくは第2の数値よりも約30、40、50、60、70、80、90%またはそれ以上低いなど)場合に異なるものとみなされる。
【0192】
一実施形態では、当該基準値は、同じ対象において事前(例えば、カチオン性L-アミノ酸トランスポーター関連疾患、好ましくはCAT1関連疾患またはBLV感染の治療を受ける前など)に決定された個別化された基準である。
【0193】
一実施形態では、少なくとも1種のBLV.RBDリガンド、その変異体および/または断片は、本明細書の上に記載されている少なくとも1種の造影剤に結合させたBLV.RBDリガンドである。
【0194】
一実施形態では、本発明の診断方法はインビボ診断方法である。好ましくは、前記診断方法は医用画像診断法に基づいている。
【0195】
別の実施形態では、本発明の診断方法はインビトロまたはエクスビボ方法であり、すなわち、本発明の方法は、本発明の方法の実施前に患者から得られた細胞、試料、組織および/または臓器に対して行う。従って、一実施形態では、本発明の方法は患者から試料を得る工程を含まず、すなわち本発明の方法は非侵襲的である。
【0196】
一実施形態では、本発明の方法は対象におけるカチオン性L-アミノ酸トランスポーター関連疾患、好ましくはCAT1関連疾患を監視するためのものである。一実施形態では、本発明の方法は対象におけるBLV感染を監視するためのものである。本明細書で使用される「監視する」という用語は、例えばカチオン性L-アミノ酸トランスポーター関連疾患、好ましくはCAT1関連疾患またはBLV感染に対する治療の前、間および後などの時間の関数として対象の体内におけるアルギニン、リジン、ヒスチジンまたはオルニチン代謝が調節不全である細胞の量の決定を指す。
【0197】
本明細書で使用される「カチオン性L-アミノ酸トランスポーター関連疾患、好ましくはCAT1関連疾患またはBLV感染に対する治療法」という用語は、アルギニン欠乏、化学療法、放射線、外科手術、免疫療法およびカチオン性L-アミノ酸トランスポーター疾患(CAT1関連疾患を含む)またはBLV感染を治療するための薬物として当業者に公知の薬物を指してもよい。
【0198】
一実施形態では、本発明の監視方法は、2種類の結合レベル、例えば治療前に決定された結合と治療後に決定された結合レベルとを比較する工程を含む。
【0199】
一実施形態では、治療後の少なくとも1種のBLV.RBDリガンドの結合レベルの減少は治療の有効性を示す。
【0200】
一実施形態では、治療前に決定されたものと同等であるかより高い治療後の結合レベルは、治療の有効性がないことを示す。
【0201】
本出願は、対象におけるカチオン性L-アミノ酸トランスポーター関連疾患、好ましくはCAT1関連疾患またはBLV感染を監視するための方法であって、
a.好ましくは少なくとも1種の造影剤に結合させた有効量の少なくとも1種のBLV.RBDリガンド、その変異体および/または断片を前記対象の細胞、試料、組織および/または臓器に接触させる工程と、
b.好ましくは医用画像診断法により、少なくとも1種のBLV.RBDリガンド、その変異体および/または断片の前記細胞、試料、組織および/または臓器中のCAT1への結合を検出および/または定量化する工程と、
c.当該対象をカチオン性L-アミノ酸トランスポーター関連疾患、好ましくはCAT1関連疾患またはBLV感染に対する治療法で治療する工程と、
d.好ましくは少なくとも1種の造影剤に結合させた有効量の少なくとも1種のBLV.RBDリガンド、その変異体および/または断片を前記対象の細胞、試料、組織および/または臓器に接触させる工程と、
e.少なくとも1種のBLV.RBDリガンド、その変異体および/または断片の前記細胞、試料、組織および/または臓器中のCAT1への結合を検出および/または定量化する工程と
を含む方法にも関する。
【0202】
一実施形態では、本発明の方法は、工程e)で決定された結合を工程b)で決定された結合と比較し、それにより当該対象におけるカチオン性L-アミノ酸トランスポーター関連疾患、好ましくはCAT1関連疾患またはBLV感染を監視する工程をさらに含む。
【0203】
一実施形態では、カチオン性L-アミノ酸トランスポーター関連疾患(CAT1関連疾患を含む)またはBLV感染に対する治療後の細胞、試料、組織および/または臓器中のCAT1が検出されないことまたはその減少は寛解を示す。特に、そのような疾患としては、例えば一酸化窒素関連疾患、好ましくは慢性腎不全および慢性心不全を挙げることができる。
【0204】
別の実施形態では、カチオン性L-アミノ酸トランスポーター関連疾患(CAT1関連疾患を含む)に対する治療後の細胞、試料、組織および/または臓器中のCAT1が検出されることまたはその増加は寛解を示す。特に、そのような疾患としては、例えば、肥満症、糖尿病、心血管系死亡、腎障害または虚血などの代謝性疾患を挙げることができる。
【0205】
本出願はさらに、本明細書の上に記載されている少なくとも1種のBLV.RBDリガンド、その変異体および/または断片を含むかそれからなるか本質的にそれからなる組成物に関する。
【0206】
本出願はさらに、本明細書の上に記載されている少なくとも1種のBLV.RBDリガンド、その変異体および/または断片および少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含むかそれからなるか本質的にそれからなる医薬組成物に関する。
【0207】
本出願はさらに、本明細書の上に記載されている少なくとも1種のBLV.RBDリガンド、その変異体および/または断片を含むかそれからなるか本質的にそれからなる薬に関する。
【0208】
医薬組成物または薬に関して本明細書で使用される「本質的に~からなる」という用語は、本発明の少なくとも1種のBLV.RBDリガンドが前記医薬組成物または薬における唯一の治療薬または生物活性を有する薬剤であることを意味する。
【0209】
本出願は、本明細書の上に記載されている少なくとも1種の造影剤に結合させた少なくとも1種のBLV.RBDリガンド、その変異体および/または断片および少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含むかそれからなるか本質的にそれからなる診断用組成物にも関する。
【0210】
一実施形態では、本発明の診断用組成物は、本明細書の上に記載されている本発明の方法に従って、カチオン性L-アミノ酸トランスポーター関連疾患、好ましくはCAT1関連疾患を診断するためのもの、またはカチオン性L-アミノ酸トランスポーター関連疾患、好ましくはCAT1関連疾患を監視するためのものである。別の実施形態では、本発明の診断用組成物は、本明細書の上に記載されている本発明の方法に従ってBLV感染を診断するためのもの、またはBLV感染を監視するためのものである。一実施形態では、本発明の診断用組成物は炎症状態を診断するためのではない。
【0211】
薬学的に許容される賦形剤としては、水、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液およびエタノール、グルコース、スクロース、デキストラン、マンノース、マンニトール、ソルビトール、ポリエチレングリコール(PEG)、リン酸塩および酢酸塩の溶液、ゼラチン、コラーゲン、カーボポール(登録商標)、植物油などが挙げられる。賦形剤は、好適な防腐剤、安定化剤、抗酸化剤、抗菌剤および緩衝剤、例えば、BHA、BHT、クエン酸、アスコルビン酸、テトラサイクリンなどをさらに含んでもよい。
【0212】
本発明の組成物中に使用することができる薬学的に許容される賦形剤の他の例としては、限定されるものではないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒトの血清アルブミンなどの血清タンパク質、リン酸塩などの緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、植物性飽和脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質(例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩)、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸塩、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂が挙げられる。
【0213】
さらに、薬学的に許容される賦形剤は、例えば、界面活性剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース)、好適な担体(例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセリン、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)を含有する例えば溶媒および分散媒、好適なそれらの混合物および例えば落花生油および胡麻油などの植物油など)、等張剤(例えば、糖類または塩化ナトリウムなど)、被覆剤(例えば、レシチンなど)、吸収遅延剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなど)、防腐剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロロブタノール、チメロサールなど)、緩衝液(例えば、ホウ酸、重炭酸ナトリウムおよび重炭酸カリウム、ホウ酸ナトリウムおよびホウ酸カリウム、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウム、酢酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムなど)、等張化剤(例えば、デキストロース、塩化カリウム、プロピレングリコール、塩化ナトリウムなど)、抗酸化剤および安定化剤(例えば、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、チオ尿素など)、非イオン性浸潤剤または清澄剤(例えば、ポリソルベート80、ポリソルベート20、ポロキサマー282およびチロキサポールなど)、粘度調整剤(例えば、デキストラン40、デキストラン70、ゼラチン、グリセリン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルプロピルセルロース、ラノリン、メチルセルロース、ペトロラタム、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースなど)などのいくつかの賦形剤を含んでもよい。
【0214】
本出願は、カチオン性L-アミノ酸トランスポーター関連疾患、好ましくはCAT1関連疾患またはBLV感染を治療するため、またはそれらを治療する際に使用するための本明細書の上に記載されている少なくとも1種のBLV.RBDリガンド、組成物、医薬組成物または薬にも関する。
【0215】
一実施形態では、本明細書の上に記載されている少なくとも1種のBLV.RBDリガンド、組成物、医薬組成物または薬は炎症状態を治療するためのもの、またはそれを治療する際に使用するためのものではない。
【0216】
一実施形態では、本明細書の上に記載されている少なくとも1種のBLV.RBDリガンド、組成物、医薬組成物または薬はワクチンではない。従って、一実施形態では、本明細書の上に記載されている少なくとも1種のBLV.RBDリガンド、組成物、医薬組成物または薬は、抗体、特にBLVに対する抗体を産生するためのもの、それを産生する際に使用するためのものではない。
【0217】
本出願は、当該対象に本明細書の上に記載されている治療的有効量の少なくとも1種のBLV.RBDリガンドを投与する工程を含む、カチオン性L-アミノ酸トランスポーター関連疾患、好ましくはCAT1関連疾患またはBLV感染を治療するための方法にも関する。
【0218】
本出願は、対象に少なくとも1種のBLV.RBDリガンド、その変異体および/または断片を投与する工程を含む、BLVに感染しているかまだ感染していない細胞、試料、組織および/または臓器またはカチオン性L-アミノ酸トランスポーター機能、好ましくはCAT1機能が調節不全である細胞、試料、組織および/または臓器を標的化するための方法にも関する。そのような方法を使用して、例えば治療薬をBLVに感染しているかまだ感染していない細胞、試料、組織および/または臓器またはカチオン性L-アミノ酸トランスポーター機能、好ましくはCAT1機能が調節不全である細胞、試料、組織および/または臓器に標的化してもよい。一実施形態では、本発明の方法は対象を既にBLVに感染している他の対象から保護するため、またはBLV感染を防止するため、特にBLV感染の伝播を防止するためのものである。
【0219】
一実施形態では、前記少なくとも1種のBLV.RBDリガンドは、好ましくは少なくとも1種の造影剤に結合させる場合にはカプセル化されている。少なくとも1種の造影剤に結合させた少なくとも1種のBLV.RBDリガンドのカプセル化により、あらゆる分解を回避してもよい。カプセル化法は最先端技術において周知である。
【0220】
カプセルの例としては、限定されるものではないが、リン脂質、ポリマー、リポソームおよび量子ドットが挙げられる。
【0221】
一実施形態では、少なくとも1種の本BLV.RBDリガンドは、当該対象の体内のBLVに感染しているかまだ感染していない細胞、試料、組織または臓器またはカチオン性L-アミノ酸トランスポーター機能、好ましくはCAT1機能が調節不全である細胞、試料、組織または臓器に特異的に投与するための治療薬と共にカプセル化されている。
【0222】
一実施形態では、本発明の少なくとも1種のBLV.RBDリガンド、少なくとも1種の造影剤に結合させた少なくとも1種のBLV.RBDリガンド、組成物、診断用組成物、医薬組成物または薬は、当業者によって決定され、かつ各対象に個々に適合させた用量で投与することができる。
【0223】
一実施形態では、本発明の少なくとも1種のBLV.RBDリガンド、少なくとも1種の造影剤に結合させた少なくとも1種のBLV.RBDリガンド、組成物、診断用組成物、医薬組成物または薬は、有効量で投与することができる。
【0224】
当然のことながら、本発明の少なくとも1種のBLV.RBDリガンド、少なくとも1種の造影剤に結合させた少なくとも1種のBLV.RBDリガンド、組成物、診断用組成物、医薬組成物または薬の使用は、適切な医学的判断の範囲内で担当医によって決定される。あらゆる特定の患者のための具体的な有効量は、用いられる具体的な組成物、当該対象の年齢、体重、健康状態、性別および食事ならびに投与時間、投与経路および医療分野で周知の同様の因子などの様々な因子によって決まる。
【0225】
一実施形態では、本発明の少なくとも1種のBLV.RBDリガンド、少なくとも1種の造影剤に結合させた少なくとも1種のBLV.RBDリガンド、組成物、診断用組成物、医薬組成物または薬は、注射、経口、局所、経鼻、口腔内、直腸内、膣内、気管内、内視鏡、経粘膜または経皮投与によって投与することができる。
【0226】
一実施形態では、本発明の少なくとも1種のBLV.RBDリガンド、少なくとも1種の造影剤に結合させた少なくとも1種のBLV.RBDリガンド、組成物、診断用組成物、医薬組成物または薬は注射によって投与することができ、好ましくは全身注射することができる。全身注射に適した製剤の例としては、限定されるものではないが、液体溶液または懸濁液、注射前の液体中の溶液または懸濁液に適した固体形態が挙げられる。全身注射の例としては、限定されるものではないが、静脈内、皮下、筋肉内、皮内、硝子体内および腹膜内注射または灌流が挙げられる。別の実施形態では、本発明の組成物、診断用組成物、医薬組成物または薬は注射の際に無菌である。無菌組成物、診断用組成物、医薬組成物または薬を得るための方法としては、限定されるものではないが、GMP合成(GMPは「優良医薬品製造基準」を表す)が挙げられる。
【0227】
一実施形態では、本発明の少なくとも1種のBLV.RBDリガンド、少なくとも1種の造影剤に結合させた少なくとも1種のBLV.RBDリガンド、組成物、診断用組成物、医薬組成物または薬は経口で投与することができる。経口投与に適した製剤の例としては、限定されるものではないが、固体形態、液体形態およびゲルが挙げられる。経口投与に適した固体形態の例としては、限定されるものではないが、丸剤、錠剤、カプセル、軟ゼラチンカプセル、硬ゼラチンカプセル、カプレット、圧縮錠剤、カシェ剤、ウェーハ、糖被覆丸剤、糖被覆錠剤、または分散錠/崩壊錠、粉末、経口投与前の液体中の溶液または懸濁液に適した固体形態、および発泡錠が挙げられる。経口投与に適した液体形態の例としては、限定されるものではないが、溶液、懸濁液、飲用に適した溶液、エリキシル剤、密閉アンプル、頓服水剤、飲薬、シロップおよび水薬が挙げられる。
【0228】
別の実施形態では、本発明の少なくとも1種のBLV.RBDリガンド、少なくとも1種の造影剤に結合させた少なくとも1種のBLV.RBDリガンド、組成物、診断用組成物、医薬組成物または薬は局所投与することができる。局所投与に適した製剤の例としては、限定されるものではないが、スティック、ワックス、クリーム、ローション、軟膏、香膏、ゲル、マスク、洗い流さない洗浄剤(leave-on wash)などが挙げられる。
【0229】
標的化される細胞、試料、組織および/または臓器に応じて、当業者は少なくとも1種の本BLV.RBDリガンドを標的化される細胞、試料、組織および/または臓器に導入するのに必要な技術を決定することができる。
【0230】
一実施形態では、本発明の少なくとも1種のBLV.RBDリガンド、少なくとも1種の造影剤に結合させた少なくとも1種のBLV.RBDリガンド、組成物、診断用組成物、医薬組成物または薬は持続放出投与することができる。別の実施形態では、本発明の少なくとも1種のBLV.RBDリガンド、少なくとも1種の造影剤に結合させた少なくとも1種のBLV.RBDリガンド、組成物、診断用組成物、医薬組成物または薬は、当該薬剤の放出を制御する送達システムを含む。
【0231】
本明細書で使用される「標的化される細胞、試料、組織および/または臓器」は、カチオン性L-アミノ酸トランスポーター関連疾患、好ましくはCAT1関連疾患またはBLV感染に冒されているか冒されている疑いがある細胞、試料、組織および/または臓器を指してもよい。
【0232】
一実施形態では、治療的有効量の本発明のBLV.RBDリガンド、少なくとも1種の造影剤に結合させたBLV.RBDリガンド、医薬組成物または薬は少なくとも1日1回、1日2回または少なくとも1日3回投与される。
【0233】
別の実施形態では、治療的有効量の本発明のBLV.RBDリガンド、少なくとも1種の造影剤に結合させたBLV.RBDリガンド、医薬組成物または薬は2日、3日、4日、5日または6日ごとに投与される。
【0234】
別の実施形態では、治療的有効量の本発明のBLV.RBDリガンド、少なくとも1種の造影剤に結合させたBLV.RBDリガンド、医薬組成物または薬は1週間に1回、1週間に2回、2週間に1回、1ヶ月に1回投与される。
【0235】
別の実施形態では、治療的有効量の本発明の少なくとも1種のBLV.RBDリガンド、少なくとも1種の造影剤に結合させた少なくとも1種のBLV.RBDリガンド、医薬組成物または薬は、少なくとも2、3、4、5または6ヶ月の期間にわたって1ヶ月に1回投与される。
【0236】
別の実施形態では、本発明の少なくとも1種のBLV.RBDリガンド、少なくとも1種の造影剤に結合させた少なくとも1種のBLV.RBDリガンド、医薬組成物または薬の治療的有効量は約1μg~5gの範囲である。
【0237】
別の実施形態では、治療的有効量の本発明の少なくとも1種のBLV.RBDリガンド、少なくとも1種の造影剤に結合させた少なくとも1種のBLV.RBDリガンド、医薬組成物または薬は、約0.1μg/kg~1g/kgの範囲で投与することができる。
【0238】
別の実施形態では、本明細書の上に記載されている本発明の少なくとも1種のBLV.RBDリガンド、少なくとも1種の造影剤に結合させた少なくとも1種のBLV.RBDリガンド、組成物、医薬組成物または薬は、カチオン性L-アミノ酸トランスポーター関連疾患、好ましくはCAT1関連疾患またはBLV感染のための別の治療と組みわせて投与することができる。
【0239】
カチオン性L-アミノ酸トランスポーター関連疾患、好ましくはCAT1関連疾患またはBLV感染を治療するための薬剤の例としては、限定されるものではないが、アルギニン欠乏、化学療法、放射線、外科手術、タンパク質キナーゼ阻害剤、微小管阻害剤、代謝拮抗剤、腫瘍ワクチンまたは免疫刺激抗体が挙げられる。
【0240】
本発明の一実施形態では、それを必要とする対象におけるカチオン性L-アミノ酸トランスポーター関連疾患、好ましくはCAT1関連疾患またはBLV感染を治療するための方法は、当該対象に本発明の少なくとも1種のBLV.RBDリガンド、少なくとも1種の造影剤に結合させた少なくとも1種のBLV.RBDリガンド、組成物、医薬組成物または薬を、カチオン性L-アミノ酸トランスポーター関連疾患、好ましくはCAT1関連疾患またはBLV感染に対する別の治療の前、それと同時および/またはその後に投与する工程を含む。
【0241】
一実施形態では、当該対象は、カチオン性L-アミノ酸トランスポーター関連疾患、好ましくはCAT1関連疾患またはBLV感染に冒されている、好ましくそれらの疾患と診断されている。別の実施形態では、本発明の対象は、カチオン性L-アミノ酸トランスポーター関連疾患、好ましくはCAT1関連疾患またはBLV感染を発症するリスクがある。カチオン性L-アミノ酸トランスポーター関連疾患、好ましくはCAT1関連疾患を発症するためのリスク因子の例としては、限定されるものではないが、遺伝因子、喫煙、肥満症、糖尿病、アルコールおよび環境条件が挙げられる。BLV感染を発現するためのリスク因子の例としては、限定されるものではないが、例えば、BLVに感染している他の対象への曝露などの環境条件が挙げられる。
【0242】
別の実施形態では、本発明の対象は、カチオン性L-アミノ酸トランスポーター関連疾患後、好ましくはCAT1関連疾患後の寛解段階にある。
【0243】
本発明の別の目的は、細胞、試料、組織および/または臓器中のCAT1を検出および/または定量化するため、特に少なくとも1種の本BLV.RBDリガンドのCAT1への結合を決定するための手段を含む、本発明の方法を実施するためのキットである。
【0244】
一実施形態では、本発明のキットは、本明細書の上に記載されている少なくとも1種の造影剤に結合させた少なくとも1種のBLV.RBDリガンドを含む。
【0245】
「キット」とは、CAT1を特異的に検出および/または定量化するための少なくとも1種の試薬(例えば、少なくとも1種の造影剤に結合させたBLV.RBDリガンドなど)を含む任意の製造品(例えば、パッケージまたは容器)を意図している。本キットは、本発明の方法を行うための単位として宣伝、流通または販売されてもよい。さらに、本キットの試薬のいずれかまたは全ては、密封された滅菌容器などのそれらを外部環境から保護する容器に入れて提供されてもよい。本キットは本キットおよびその使用方法について記載した添付文書も含んでいてもよい。
【0246】
本発明の別の目的は、細胞におけるCAT1機能を調節する化合物を検出および/または定量化するためのスクリーニング方法であって、
a.前記化合物の存在下で細胞において発現される本明細書の上に記載されているBLV.RBDリガンドのCAT1への結合を決定および/または定量化する工程と、
b.先の工程で測定された結合を前記化合物の非存在下で前記細胞において発現された本明細書の上に記載されているBLV.RBDリガンドのCAT1への結合と比較する工程と
を含む方法である。
【0247】
従って、本明細書で使用される「調節する」および「調節」という用語は、細胞におけるCAT1の存在の増加または減少を指してもよい。
【0248】
本出願は、カチオン性L-アミノ酸トランスポーター関連疾患、好ましくはCAT1関連疾患またはBLV感染のインビトロまたはエクスビボまたはインビボ診断のための方法であって、
a.少なくとも1種のBLV.RBDリガンド、その変異体および/または断片を細胞、試料、組織または臓器と接触させる工程と、
b.前記対象の体内の細胞、試料、組織または臓器中に存在するCAT1に結合した少なくとも1種のBLV.RBDリガンドを検出および/または定量化する工程と
を含む方法にも関する。
【0249】
本出願は、カチオン性L-アミノ酸トランスポーター関連疾患、好ましくはCAT1関連疾患またはBLV感染のインビボ診断のための方法であって、
a.それを必要とする対象に有効量の少なくとも1種のBLV.RBDリガンド、その変異体および/または断片を投与する工程と、
b.前記対象の体内で少なくとも1種の本BLV.RBDリガンド、その変異体および/または断片を検出および/または定量化する工程と
を含む方法にも関する。
【0250】
本発明の一実施形態では、本BLV.RBDリガンドを少なくとも1種の造影剤に結合させ、医用画像診断法によるインビボ診断のために使用してもよい。
【0251】
本出願は、カチオン性L-アミノ酸トランスポーター関連疾患、好ましくはCAT1関連疾患またはBLV感染を治療するための方法であって、
a.本発明の方法に従ってそれを必要とする対象におけるカチオン性L-アミノ酸トランスポーター関連疾患、好ましくはCAT1関連疾患またはBLV感染を診断する工程と、
b.工程(a)でカチオン性L-アミノ酸トランスポーター関連疾患、好ましくはCAT1関連疾患またはBLV感染と診断された前記対象に、治療的有効量のカチオン性L-アミノ酸トランスポーター関連疾患、好ましくはCAT1関連疾患またはBLV感染に対する治療薬を投与する工程と
を含む方法にも関する。
【0252】
従って、一実施形態では、本発明のカチオン性L-アミノ酸トランスポーター関連疾患、好ましくはCAT1関連疾患またはBLV感染を治療するための方法は、
a.それを必要とする対象におけるカチオン性L-アミノ酸トランスポーター機能、好ましくはCAT1機能が調節不全である細胞またはBLVに感染した(もしくはBLVにまだ感染していない)細胞の存在を、
i.少なくとも1種の造影剤に結合させた有効量の少なくとも1種のBLV.RBDリガンド、その変異体および/または断片を対象に投与すること、および
ii.医用画像診断法を用いて少なくとも1種の本BLV.RBDリガンド、その変異体および/または断片を検出および/または定量化すること
によって決定する工程と、
b.治療的有効量のカチオン性L-アミノ酸トランスポーター関連疾患、好ましくはCAT1関連疾患またはBLV感染に対する治療薬を工程aでカチオン性L-アミノ酸トランスポーター関連疾患、好ましくはCAT1関連疾患またはBLV感染と診断された対象に投与する工程と
を含む。
【0253】
本出願は、治療的有効量の少なくとも1種のBLV.RBD、その変異体および/または断片をそれを必要とする対象に投与する工程を含む、カチオン性L-アミノ酸トランスポーター関連疾患、好ましくはCAT1関連疾患またはBLV感染を治療するための方法にも関する。
【0254】
本出願は、カチオン性L-アミノ酸トランスポーター関連疾患、好ましくはCAT1関連疾患またはBLV感染を治療するための方法であって、
a.本発明の方法に従ってそれを必要とする対象におけるカチオン性L-アミノ酸トランスポーター関連疾患、好ましくはCAT1関連疾患またはBLV感染を診断する工程と、
b.治療的有効量の少なくとも1種のBLV.RBD、その変異体および/または断片を、工程aでカチオン性L-アミノ酸トランスポーター関連疾患、好ましくはCAT1関連疾患またはBLV感染と診断された前記対象に投与する工程と
を含む方法にも関する。
【0255】
本出願は、細胞中のCAT1を検出および/または定量化するためのインビボ方法であって、
a.少なくとも1種の造影剤に結合させた少なくとも1種のBLV.RBDリガンド、その変異体および/または断片または本発明の診断用組成物を体、臓器、組織または細胞に投与する工程と、
b.医用画像診断法を用いて前記体、臓器、組織または細胞における少なくとも1種の本BLV.RBDリガンド、その変異体および/または断片のCAT1への結合を検出および/または定量化する工程と
を含む方法にも関する。
【0256】
一実施形態では、本発明の方法は、工程bで決定された結合を基準結合と比較する工程をさらに含む。
【0257】
本出願は、それを必要とする対象におけるCAT1活性を阻害するための方法であって、治療的有効量の少なくとも1種のBLV.RBDリガンドを前記対象に投与することを特徴とする方法にも関する。
【0258】
本明細書で使用される「CAT1活性を阻害する」という用語は、CAT1による細胞内へのアルギニン、ヒスチジン、リジンおよび/またはオルニチン輸送の流入の阻害を指してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0259】
図1】CAT1をBLV.RBD同族受容体として同定するBLV.RBD自動化スクリーニングを示すグラフである。172種のSLCメンバーに対するBLV.RBD結合のスクリーニングは、TecanロボットおよびCellomics顕微鏡を用いて行った。結合は各ウェルの総蛍光強度として表されている。
図2】BLV.RBDのCAT1/SLC7A1への特異的結合を示すグラフのセットである。HEK293T細胞をsiLUC、siCAT1、CAT1発現ベクターと組み合わせたsiCAT1(レスキューアッセイ)、空ベクター(pchix)またはCAT1発現ベクターのみのいずれかでトランスフェクトした。CAT1発現レベルはBLV.RBDリガンドを用いて監視した。
図3】ウシ白血病ウイルスエンベロープ糖タンパク質の受容体結合ドメイン(BLV.RBD)によるアルギニン取込みの特異的阻害を示す2つのヒストグラムのセットである。pCSImFc空ベクター(「空ベクター」)、pCSI発現ベクターにおいてrFcタグに融合されたBLV.RBD(「BLV-RBD」、配列番号12)、またはpCSI発現ベクターにおいてrFcタグに融合されたHTLV2.RBD(「HTLV2-RBD」、配列番号7)のいずれかでトランスフェクトしたHEK293T細胞による放射性標識したアルギニンおよびグルタミンの取込み。N=3、対応のないデータに対する両側スチューデント検定(**、p<0.01;全ての他の差は統計的に有意でない)。
図4】CHO細胞を用いた感染性試験を示すヒストグラムである。陰性対照としての空のpLXSN発現ベクター(LXSN)あるいはヒトCAT1(Hu-CAT1)、ウシCAT1(B-CAT1)またはヒトCAT2(Hu-CAT2)を発現するpLXSNベクターでトランスフェクトした細胞におけるBLV(左のパネル)およびHTLV(右のパネル)の感染性を試験した。結果は感染粒子数/mLとして示されている。
【実施例
【0260】
次に本発明を以下の実施例によってさらに例示するが、決してそれらに限定されるものではない。
【0261】
実施例1:BLV.RBDのCAT1への特異的結合
材料および方法
細胞培養およびトランスフェクション
全ての細胞株を10%補体除去ウシ胎児血清(PAN Biotech社)、非必須アミノ酸(11140-035、Life Technologies社)、グルタミン(25030-081 Life Technologies社)および抗生物質(ペニシリンおよびストレプトマイシン)を含むLife Technologies社によって提供されたDMEM培地(ダルベッコ変法イーグル培地)(参照番号:11965-092)中に維持した。全てを5%CO-95%空気雰囲気中37℃でインキュベートした。
【0262】
20000個のQT6細胞を96ウェルプレートに播種した。JetPrimeトランスフェクションプロトコルを用いて細胞を100ngのDNAでトランスフェクトした。BLV.RBDとの結合のための条件を自動化条件のために最適化した。
【0263】
TecanロボットおよびCellomics顕微鏡のための染色
トランスフェクションから48時間後にBLV.RBD-mFcリガンド(配列番号27)を用いて染色を行った。この目的のために、RBDリガンドを1/10(v:v)希釈で試験し、Alexa Fluor(登録商標)488に結合させた抗マウスIgG1を使用した(1~500の希釈)。
【0264】
RBDリガンドのインキュベーションを振盪させずに37℃で行い、二次抗マウスIgG1-Alexaを室温でインキュベートする(先のプロトコルにおける4℃とは対照的)。次いで、細胞を4%PFAで固定し、Cellomics Array Scan XTI HCS リーダー(Thermo Scientific社;CNRS MRIプラットフォームにおいて利用可能)を用いて蛍光強度を測定した。
【0265】
ハイスループットスクリーニングで検出されたSLC候補をHEK293T細胞におけるsiRNAおよび過剰発現の両方によって確認した(データは示さず)。
【0266】
293T細胞表面でのBLV受容体の天然の発現およびHEK293T細胞単層のプラスチックへのより緩い付着を理由に、本発明者らはウズラQT6細胞を使用すること選択し、それらは本発明らのSLCライブラリーの自動化スクリーニングに適合可能な本発明らのBLV.RBDリガンドの最も低い天然の結合および単層のプラスチックへの付着を有していた。本発明者らは、BLV.RBD同族受容体の発現からの蛍光性が非常に高いウズラQT6細胞単層から単離され得る病巣を検出および定量化することができるCellomics系蛍光自動化アッセイを準備することを選択する。
【0267】
結果
本発明らの研究室で得られた構築物により完成したヒトORFeome(MGCプラットフォーム)から得られた400種に近い上記メンバーのうち172種を含むSLCライブラリーを確立した。続けて、本発明者らはBLV受容体を検出および単離するために、ウズラQT6細胞株における一過性の過剰発現の自動化プロトコルおよびマウス免疫グロブリン(mFc)の定常断片によりフレーム内でタグ付けされたBLV.RBDとの結合を準備する。
【0268】
その結果、HEK293T細胞をCAT1 mRNAを標的化するように特異的に設計されたsiRNAでトランスフェクトし、BLV.RBD結合はフローサイトメトリーで測定した場合に3.5倍減少していた(n=3)。対照的に、HEK293T細胞をCAT1/SLC7A1発現ベクターでトランスフェクトした場合、これらの細胞におけるCAT1過剰発現は、空ベクター対照でトランスフェクトしたHEK293T細胞と比較した場合にBLV.RBD結合の3倍の増加を伴っていた(n=3)。
【0269】
本発明らのスクリーニング方法により、CAT1(SLC7A1)がBLV.RBDおよびBLV Env受容体であるという証拠が得られる(図1)。図1に示されている結果から、本発明者らはBLV.RBDリガンドの推定上の受容体としてのCAT1(SLC7A1)に本発明らの注意を集中させた。その結果、特異的siRNA(siCAT1、5’-UAAUUGCACCUUUGGCUGCTT-3’-配列番号6)によるCAT1 mRNAの下方調節により、HEK293T細胞に対するBLV.RBDによる結合の非常に有意な減少が生じた(135対49、図2)。本発明者らはレスキューアッセイ(siCAT1およびCAT1発現プラスミドの同時トランスフェクション)を行い、BLV.RBDリガンドにより監視されるCAT1発現を回復させることができた(49対218、図2)。さらに、BLV.RBDを使用して、pCHIX対照空ベクターまたはヒトCAT1発現ベクターのいずれかでトランスフェクトした細胞と比較した場合のCAT1の特異的増加発現を監視することができる(92対335、図2)。
【0270】
実施例2:BLV.RBDに誘導される細胞へのアルギニン取込み阻害
材料および方法
取込みアッセイ
1つのウェル当たり3.5×10個のHEK293T細胞をポリ-D-リジンで被覆した6ウェルプレートに播種した。翌日、この細胞をリン酸カルシウムを用いて、pCSIウサギFc(rFc)、pCSI BLV.RBD rFc(配列番号12)およびpCSI HTLV2.RBD rFc(配列番号7)ベクターでトランスフェクトした。トランスフェクションから16時間後に、細胞培地を交換し、24時間後に細胞を放射性標識したL-アルギニンまたはL-グルタミンの取込みのために24ウェルプレート(5×10細胞/ウェル)に播種するか6ウェルプレート(3×10細胞/ウェル)に播種して細胞を溶解し、免疫ブロット法によりRBDの発現を確認した。
【0271】
取込みのために、古典的なDMEMで希釈した5μCi/mLのL-アルギニンモノ塩酸塩[2,3,4-H](NET1123250UC、Perkin Elmer社)またはL-グルタミン[3,4-H(N)](NET551001MC Perkin Elmer社)と共に細胞を250μLの体積中37℃で30分間インキュベートした。冷たいPBSで2回洗浄した後、細胞を500μLのTriton X-100(1%)で溶解し、2mLの液体シンチレーションカクテル(ULTIMA GOLD、Perkin Elmer社)と混合した後、放射活性を測定した。
【0272】
同化作用の値は放射性標識したアルギニンまたはグルタミンの捕捉量(pmol)と各ウェル中のタンパク質量(mg)との比に相応する。その結果を計算し、GraphPad Prism 5を用いて報告する。対応のないデータに対する両側スチューデント統計検定を使用した。
【0273】
結果
BLV.RBDが結合時に同族受容体を機能的に変更させるその能力を試験した。この目的のために取込みアッセイを行い、これにより本発明者らは放射性標識したアルギニンを用いてマウスFc(mFc)(データは示さず)またはウサギFc(rFc)でタグ付けされたBLV.RBDがトランスポーター機能を阻止することができるか否かを監視することができた。
【0274】
CAT1は、肝臓および涙腺以外の全ての細胞型において遍在的に発現され、かつアルギニン、リジン、オルニチンおよびヒスチジンを含むカチオン性L-アミノ酸のナトリウム非依存性輸送を媒介すると言われている。
【0275】
放射性標識したアルギニンモノ塩酸塩を用いて、L-[2,3,4-H]によりBLV.RBDのCAT1/SLC7A1への結合のさらなる証拠が得られる。従って、CAT1により媒介されるアルギニン輸送はBLV.RBDの導入時に阻害され、データからBLV.RBDがCAT1輸送機能を阻止することができることが分かる(図3)。
【0276】
これらの結果は、BLV.RBDリガンドを使用してCAT1細胞表面発現を監視することができ、かつ多種多様な生体試料において適用することができることを実証している。従って、BLV.RBDリガンドをフローサイトメトリー、免疫組織化学(図示せず)および免疫蛍光法によりインビトロで、あるいはSPECT-CTイメージングによりインビボで使用することができる。
【0277】
実施例3:BLV感染に対するBLV.RBDの効果のインビトロ試験
材料および方法
材料
異なる哺乳類種(A23-LXSN:空ベクター、A23-ヒトCAT1、A23-ウシCAT1、A23-マウスCAT1マウスおよびA23-ハムスターCAT1)からCAT1を安定的に発現するA23細胞株の感染。
【0278】
培地:10%FBS、L-グルタミン、非必須アミノ酸および抗生物質(ペニシリンストレプトマイシン)を含むDMEMにおいてHEK293細胞を増殖させる。産生細胞(HEK293)および感染A23細胞はGFPをコードする。
【0279】
方法
0日目(D0):4つのペトリ皿(直径10cm)にHEK293細胞(ATCC)を3×10細胞/皿で播種する。
【0280】
D1(夕方):以下のエンベロープ(HTLV2、BLV、水疱性口内炎ウイルス(VSV)またはエンベロープなし)をコードする偽型ウイルスを産生するために、HEK293をトランスフェクトする。以下のベクター:
LNCG(GFPのコード):10μg、
BEB.GP57(gag-pol):5μg、
エンベロープ糖タンパク質:5μg
を用いて同時トランスフェクトする。
【0281】
リン酸カルシウムトランスフェクション(500μLのHeBSおよび33μLのCaCl)。
【0282】
D2(朝):HEK293細胞の培地を交換する。
【0283】
D3:HEK293細胞の上澄みを回収して濾過し(上澄みによる感染を維持するため)、産生細胞を剥がして計数する(細胞から細胞への感染のため)。
【0284】
上澄みによる感染
A23細胞(LXSN、hCAT1、ウシCAT1、マウスCAT1およびハムスターCAT1)を5000個の細胞/ウェルで96ウェルプレートに播種する(50μLの培地中に5000個の細胞を有するようにする)。等体積(50μL)のウイルスの上澄みを添加する。N=4。
【0285】
細胞から細胞への感染
異なる指標細胞(A23)を産生細胞(HEK293)と同時培養する。各条件で2500細胞/ウェルのA23を2500細胞の偽型産生細胞(例えば、偽型を産生するHEK293を含むA23-LXSN)と共に播種する。N=4。
【0286】
D5:(細胞から細胞へに感染のためのみ)。選択剤(2mg/mLのG418)を添加する。このようにして本発明者らは感受性の高い製造者の細胞を除外するが、A23は耐性を有する。
【0287】
D8:画像(10倍)および蛍光強度をハイコンテントCellomics ArrayScanにより得る(Montpellier Rio Imaging Platform:MRIにおいて利用可能)。
【0288】
実施例4:CAT1結合を介したBLV.RBDを有するBLV env糖タンパク質によるレトロウイルス感染のインビトロ試験
ウイルス感染
空のpLXSN発現ベクターまたはヒト(Hu-)またはウシ(B-)CAT1のいずれかを発現するpLXSN構築物で安定的にトランスフェクトしたCHO細胞またはヒトCAT2イソ型を6ウェルプレートに播種し、翌日、BLVまたはHTLV Env糖タンパク質で偽型化された複製欠損のpLKO-1-puroレンチウイルスベクターの連続希釈物で感染させた。ウイルス攻撃から1日後に、細胞を10日間の間に3ug/mLのピューロマイシンを用いて選択し、耐性細胞を計数してBLVまたはHTLV Envを用いて侵入によるウイルス価を決定した。
【0289】
結果
HTLV Env媒介感染に対するCHO細胞感受性はCAT1またはCAT2発現とは無関係である(図4、右のパネル)が、対照的にBLV Env媒介感染に対して天然に耐性を有するCHO細胞(図4、左のパネル、黒色のヒストグラム)は、ヒト(図4、左のパネル、濃い灰色のヒストグラム)またはウシ(図4、左のパネル、灰色のヒストグラム)CAT1のいずれかを発現する場合にBLV Env媒介感染に対して特に感受性が高くなるが、ヒトCAT2イソ型の発現時には耐性のままである(図4、左のパネル、淡い灰色のヒストグラム)。
【0290】
これらの結果から、ウシ白血病ウイルス(BLV)エンベロープ糖タンパク質はウシおよびヒトなどの異なる哺乳類のCAT1に特異的に結合するがCAT2には結合しないことが確認される。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
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