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特許7203382試験システム、伝達効率算出装置、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】試験システム、伝達効率算出装置、プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01M 13/021 20190101AFI20230105BHJP
【FI】
G01M13/021
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019076533
(22)【出願日】2019-04-12
(65)【公開番号】P2020173223
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】502340996
【氏名又は名称】学校法人法政大学
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】相原 建人
【審査官】岩永 寛道
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-094698(JP,A)
【文献】特開2017-040475(JP,A)
【文献】特開2014-013055(JP,A)
【文献】特開平07-228382(JP,A)
【文献】特開2006-242962(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1931888(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 13/021
G01M 13/00 - 13/045
G01M 99/00
F16H 1/00 - 1/26
F16H 3/00 - 3/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に対し傾斜した方向に歯を設けた歯車の伝達効率の試験システムであって、
噛み合わせて配置された複数の歯車のうち一の歯車に加わるスラスト力と、別の歯車に加わるスラスト力とを荷重として測定する荷重計と、
前記荷重計によって測定した荷重に基づいて、歯車の伝達効率を算出する伝達効率算出装置と、
を有することを特徴とする試験システム。
【請求項2】
歯車の数が3つで各歯車の回転軸方向が同じであり、
一方の端部の歯車に駆動トルクが入力され、
他方の端部の歯車に負荷トルクが入力され、
前記荷重計は、一方の端部の歯車に加わるスラスト力と、中間部の歯車に加わるスラスト力とを荷重として測定することを特徴とする請求項1記載の試験システム。
【請求項3】
前記伝達効率算出装置は、前記一方の端部の歯車に加わり、前記回転軸方向の一方の向きを正とするスラスト力をf、前記中間部の歯車に加わり、前記回転軸方向の他方の向きを正とするスラスト力をfbとして、1-(fb/fa)の値により歯車の伝達効率を求めることを特徴とする請求項2記載の試験システム。
【請求項4】
歯車の数が4以上で各歯車の回転軸方向が同じであり、
一方の端部の歯車に駆動トルクが入力され、
他方の端部の歯車に負荷トルクが入力され、
前記荷重計は、中間部の歯車のうち一の歯車に加わるスラスト力と、別の歯車に加わるスラスト力とを荷重として測定することを特徴とする請求項1記載の試験システム。
【請求項5】
歯車の数は4つであり、
前記伝達効率算出装置は、前記一の歯車に加わり、前記回転軸方向の一方の向きを正とするスラスト力をfa、前記別の歯車に加わり、前記回転軸方向の前記一方の向きを正とするスラスト力をfbとして、fb/faの値により歯車の伝達効率を求めることを特徴とする請求項4記載の試験システム。
【請求項6】
回転軸に対し傾斜した方向に歯を設けた歯車の伝達効率を算出する伝達効率算出装置であって、
噛み合わせて配置された複数の歯車のうち一の歯車に加わるスラスト力と、別の歯車に加わるスラスト力に基づいて、歯車の伝達効率を算出することを特徴とする伝達効率算出装置。
【請求項7】
コンピュータを、
回転軸に対し傾斜した方向に歯を設けた歯車の伝達効率を算出する伝達効率算出装置であって、
噛み合わせて配置された複数の歯車のうち一の歯車に加わるスラスト力と、別の歯車に加わるスラスト力に基づいて、歯車の伝達効率を算出する伝達効率算出装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯車の伝達効率の試験システム等に関する。
【背景技術】
【0002】
はすば歯車は、回転軸に対し傾斜した方向に歯を設けた歯車であり、自動車や航空機をはじめとした輸送機械、工作機械等の産業機械に広く使用されている。
【0003】
はすば歯車の性能向上のためには、はすば歯車の伝達効率の試験が欠かせない。現在、歯車の伝達効率を測定する試験装置には大きく動力吸収型と動力循環型の2つがある(特許文献1、2参照)。
【0004】
特許文献1には、トランスミッション用の試験装置であって、インバータモータやサーボモータを備えた荷重付与部と、動力吸収用サーボモータとを使用した動力吸収型の試験装置について記載されている。特許文献2には、一対の共試ギアと一対の従動ギアを含む動力循環系に捩りモーメントによる負荷荷重を与えたうえで、当該動力循環系に駆動装置による駆動力を入力する動力循環型の試験装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-81103号公報
【文献】特開平06-317501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
動力吸収型の試験装置では、入出力のパワーを比較することにより歯車の伝達効率を求めるので、入力側および出力側のトルクと回転数を計測するため2組のトルクメータとロータリエンコーダが必要となり、トルクメータの定格容量も大きくなるので装置が大型化する。またトルクメータの定格容量が大きいと誤差範囲が大きくなるので、高精度に伝達効率を計測することも難しい。
【0007】
一方、動力循環型の試験装置では、歯車の伝達効率により動力循環系における動力損失が左右され、駆動装置はこの動力損失分の駆動力を入力する。そのため、歯車の伝達効率は入力パワーによって求めることができ、1組のトルクメータとロータリエンコーダがあればよい。また入力パワーは小さくてよいので、トルクメータの定格容量を小さくでき高精度に伝達効率を測定することが可能となる。しかしながら、動力循環型の試験装置は複雑な構成を有し、装置が高価となる。
【0008】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で歯車の伝達効率を測定可能な試験システム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した課題を解決するための第1の発明は、回転軸に対し傾斜した方向に歯を設けた歯車の伝達効率の試験システムであって、噛み合わせて配置された複数の歯車のうち一の歯車に加わるスラスト力と、別の歯車に加わるスラスト力とを荷重として測定する荷重計と、前記荷重計によって測定した荷重に基づいて、歯車の伝達効率を算出する伝達効率算出装置と、を有することを特徴とする試験システムである。
【0010】
本発明の試験システムでは、歯車に加わるスラスト力を荷重として測定するだけで、歯車の伝達効率を求めることができる。このように、本発明では、従来の試験方法とは全く異なる着想により、歯車に加わるスラスト力を伝達効率の試験に利用することで、簡易な構成で安価且つ高精度に歯車の伝達効率を求めることが可能となり、普及性の高い試験システムにより高効率で静粛な歯車の開発が促進される。
【0011】
例えば歯車の数が3つで各歯車の回転軸方向が同じであり、一方の端部の歯車に駆動トルクが入力され、他方の端部の歯車に負荷トルクが入力され、前記荷重計は、一方の端部の歯車に加わるスラスト力と、中間部の歯車に加わるスラスト力とを荷重として測定する。前記伝達効率算出装置は、前記一方の端部の歯車に加わり、前記回転軸方向の一方の向きを正とするスラスト力をf、前記中間部の歯車に加わり、前記回転軸方向の他方の向きを正とするスラスト力をfbとして、1-(fb/fa)の値により歯車の伝達効率を求める。
この場合、歯車の数が少なくて済み、装置構成が簡単になるという利点がある。また歯車の伝達効率は、上記の1-(fb/fa)の値により好適に求めることができる。
【0012】
歯車の数が4以上で各歯車の回転軸方向が同じであり、一方の端部の歯車に駆動トルクが入力され、他方の端部の歯車に負荷トルクが入力され、前記荷重計は、中間部の歯車のうち一の歯車に加わるスラスト力と、別の歯車に加わるスラスト力とを荷重として測定することも望ましい。例えば歯車の数を4つとし、前記伝達効率算出装置は、前記一の歯車に加わり、前記回転軸方向の一方の向きを正とするスラスト力をfa、前記別の歯車に加わり、前記回転軸方向の前記一方の向きを正とするスラスト力をfbとして、fb/faの値により歯車の伝達効率を求める。
この場合、荷重計の定格容量が小さくて良く、歯車の伝達効率の測定精度が向上する。歯車の数が4つの場合、伝達効率は上記のfb/faの値により好適に求めることができる。
【0013】
第2の発明は、回転軸に対し傾斜した方向に歯を設けた歯車の伝達効率を算出する伝達効率算出装置であって、噛み合わせて配置された複数の歯車のうち一の歯車に加わるスラスト力と、別の歯車に加わるスラスト力に基づいて、歯車の伝達効率を算出することを特徴とする伝達効率算出装置である。
【0014】
第3の発明は、コンピュータを、回転軸に対し傾斜した方向に歯を設けた歯車の伝達効率を算出する伝達効率算出装置であって、噛み合わせて配置された複数の歯車のうち一の歯車に加わるスラスト力と、別の歯車に加わるスラスト力に基づいて、歯車の伝達効率を算出する伝達効率算出装置として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、簡易な構成で歯車の伝達効率を測定可能な試験システム等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】試験システム1を示す図。
図2】伝達効率算出装置40のハードウェア構成を示す図。
図3】伝達効率の試験方法を示すフローチャート。
図4】測定装置10を示す図。
図5】測定装置10aを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0018】
[第1の実施形態]
(1.試験システム1)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る試験システム1の概略を示す図である。試験システム1は歯車の伝達効率を求めるものであり、測定装置10と伝達効率算出装置40を有する。
【0019】
歯車の伝達効率Eは、歯車同士が噛み合って回転する時に、一方の歯車に入力するトルクT0と回転数N0、他方の歯車から出力されるトルクT1と回転数N1を用いて以下のように表される。
E=(T1×N1)/(T0×N0)…(1)
回転数N0、N1は各歯車の歯数Z0、Z1の逆数に比例するので、歯車の伝達効率Eは歯数Z0、Z1を用いて以下のように表すこともできる。
E=(T1×Z)/(T0×Z1)…(2)
【0020】
本実施形態では、試験システム1により、はすば歯車の伝達効率Eを求める。はすば歯車は、回転軸に対しねじれるように傾斜した方向に歯を設けた歯車である。はすば歯車同士を噛み合わせて回転させると、両歯車の歯の接触面積が徐々に増加した後徐々に減少する。そのため歯車同士の噛み合いが滑らかであり、静粛性等に優れる。
【0021】
測定装置10は、試験対象の複数のはすば歯車2(以下、単に歯車2ということがある)が噛み合って回転する際に、歯車2に作用する荷重を測定するものであり、荷重計21、22、入力モータ31、ブレーキ32等を有する。
【0022】
本実施形態では、回転軸2aを同方向とする3つの歯車2(2-1、2-2、2-3)が、各歯車2の回転軸2aが平行に並ぶように設けられる。このうち歯車2-1が一方の端部に配置され、歯車2-3が他方の端部に配置される。歯車2-2はその中間部に配置される。これらの歯車2-1、2-2、2-3は同じ形状および材質を有する同一のものであり、歯数やねじれ角も同じである。
【0023】
入力モータ31は、歯車2-1に駆動トルクを与えて回転させるためのものであり、歯車2-1の回転軸2aに接続される。歯車2-2は歯車2-1と噛み合い、歯車2-1の回転に伴って回転軸2aを中心として回転する。
【0024】
歯車2-3は歯車2-2と噛み合い、歯車2-2の回転に伴って回転軸2aを中心として回転する。この回転軸2aはブレーキ32に接続される。ブレーキ32は、歯車2-3の回転方向と反対方向の負荷トルクを回転軸2aに与える。
【0025】
荷重計21は歯車2-1に設けられ、当該歯車2-1に作用する荷重を測定する。荷重計22は歯車2-2に設けられ、当該歯車2-2に作用する荷重を測定する。荷重計21、22としては、例えばロードセルなどを歯車2-1、2-2の回転軸2aの軸受等に取付けて用いる。
【0026】
伝達効率算出装置40は、荷重計21、22により測定した荷重(測定結果)に基づいて伝達効率の算出を行うものである。後述する例では歯車2-1、2-2の伝達効率を算出するが、前記したように歯車2-1、2-2、2-3は同一のものであるため、歯車2-2、2-3の伝達効率は歯車2-1、2-2の伝達効率と同じである。従って、この伝達効率を、以下単に歯車2の伝達効率という場合がある。
【0027】
図2は伝達効率算出装置40のハードウェア構成を示す図である。図2に示すように、伝達効率算出装置40は、制御部41、記憶部42、表示部43、入力部44、メディア入出力部45、通信部46等をバス等により接続して構成されたコンピュータなどにより実現できる。ただしこれに限ることは無く、適宜様々な構成をとることができる。
【0028】
制御部41はCPU、ROM、RAMなどから構成される。CPUは、記憶部42、ROMなどの記憶媒体に格納されたプログラムをRAM上のワークエリアに呼び出して実行する。ROMは不揮発性メモリであり、ブートプログラムやBIOSなどのプログラム、データなどを恒久的に保持している。RAMは揮発性メモリであり、記憶部42、ROMなどからロードしたプログラムやデータを一時的に保持するとともに、制御部41が各種処理を行うために使用するワークエリアを備える。
【0029】
記憶部42はハードディスクドライブやソリッドステートドライブ等であり、後述する処理に際し伝達効率算出装置40が実行するプログラム、プログラム実行に必要なデータ、OSなどが格納される。これらのプログラムやデータを制御部41により読み出して実行し、伝達効率算出装置40の各部を制御することで後述する処理が行われる。
【0030】
表示部43は、液晶ディスプレイ等の表示装置を備える。
入力部44は、伝達効率算出装置40に各種の設定入力を行うものである。
メディア入出力部45は、例えばCDドライブ、DVDドライブ等のメディア入出力装置を有する。
通信部46は無線あるいは有線による通信を媒介する通信インタフェースである。
【0031】
(2.伝達効率の試験方法)
次に、図3等を参照して試験システム1による歯車2の伝達効率の試験方法について説明する。図3は歯車2の伝達効率の試験方法を示すフローチャートである。
【0032】
本実施形態では、まず測定装置10にて入力モータ31とブレーキ32を駆動させ、荷重計21、22により、歯車2-1、2-2に加わるスラスト力(回転軸方向の力)を歯車2-1、2-2に作用する荷重として測定する(S1)。
【0033】
ここで、入力モータ31を駆動させ、歯車2-1を図4のAに示す方向に回転させると、歯車2-2は歯車2-1の回転方向Aと逆の方向Bに回転し、歯車2-3は歯車2-1の回転方向Aと同じ方向Cに回転する。ブレーキ32は、歯車2-3の回転方向Cと逆方向の負荷トルクを歯車2-3の回転軸2aに加える。
【0034】
この時、歯車2-1、2-2の噛み合いにより、歯車2-1、2-2にはそれぞれ逆方向のスラスト力F1が加わり、荷重計21は歯車2-1に加わるスラスト力F1を、歯車2-1に作用する荷重faとして測定する。ここで、荷重faは図の下向き(回転軸方向の一方の向き)を正とする。
【0035】
同様に、歯車2-2、2-3の噛み合いにより、歯車2-2、2-3にはそれぞれ逆方向のスラスト力F2が加わる。歯車2-2に加わるスラスト力F1、F2の向きは互いに逆であり、荷重計22はそれらの差分のスラスト力(F1-F2)を歯車2-2に作用する荷重fbとして測定する。ここで、荷重fbは図の上向き(回転軸方向の他方の向き)を正とする。
【0036】
本実施形態では、次に、荷重計21、22で測定した荷重(スラスト力)fa、fbを伝達効率算出装置40に入力し、伝達効率算出装置40により歯車2の伝達効率を算出する(S2)。
【0037】
なお、荷重fa、fbの入力は、例えば荷重計21、22と伝達効率算出装置40を有線あるいは無線により通信可能に接続し、荷重計21、22から伝達効率算出装置40へと荷重fa、fbを送信することで行う。あるいは、荷重計21、22で測定した荷重fa、fbを記憶媒体(メディア)に記録し、当該記憶媒体に記録された荷重fa、fbを伝達効率算出装置40で読み取ることによって行ってもよい。
【0038】
前記のスラスト力F2は、歯車2-1、2-2の伝達効率をEとして、F1×Eにより表される(特開2014-13055号公報参照)。そのため、荷重計21、22により測定する荷重fa、fbについて、
=F1…(3)
=F1-F2=(1-E)×F1…(4)
より、
E=1-(fb/fa)…(5)
が成り立ち、伝達効率算出装置40は、式(5)の右辺に荷重fa、fbの値を代入することで、歯車2の伝達効率Eを算出する。
【0039】
以上説明したように、本実施形態では、歯車2に加わるスラスト力を荷重fa、fbとして測定するだけで、歯車2の伝達効率Eを求めることができる。このように、本実施形態では、従来の試験方法とは全く異なる着想により、歯車2に加わるスラスト力を伝達効率Eの試験に利用することで、簡易な構成で安価且つ高精度に歯車の伝達効率を求めることが可能となり、普及性の高い試験システム1により高効率で静粛な歯車2の開発が促進される。
【0040】
また試験対象に3つの歯車2を用いる本実施形態では、前記した式(5)のE=1-(fb/fa)により、歯車2の伝達効率Eを好適に求めることができる。
【0041】
しかしながら、本発明はこれに限らない。例えば本実施形態では各歯車2が外歯車であるが、両端部の歯車2-1、2-3のいずれかが内歯車であってもよい。また、中間部の歯車2-2を、両端部の歯車2-1、2-3と異なるはすば歯車としてもよい。この歯車を仮に歯車aとすると、前記の伝達効率Eは、歯車2と歯車aの間の伝達効率として求められる。このように、試験対象の歯車は、回転軸に対し傾斜した方向に歯を設けたものであり、スラスト力が発生するものであればよい。
【0042】
また本実施形態では荷重計21、22として前記したロードセルを用いているが、測定結果から歯車2-1、2-2に加わるスラスト力を得ることができれば、荷重計21、22として何を用いるか、あるいは荷重計21、22を何処に取付けるか等も特に限定されない。例えば荷重計21、22として、回転軸2aをばねにより回転軸方向に支持し、歯車2に加わるスラスト力によるばねの変位をレーザー変位計で計測することも可能である。
【0043】
また、軸受挙動によるスラスト力を伝達効率Eの算出時に考慮し、伝達効率Eの測定精度を高めても良い。例えば回転軸2aの軸受がニードル軸受の場合、歯車2の噛み合いによるスラスト力だけでなく、ニードル軸受の挙動によるスラスト力も歯車2に作用するが、当該スラスト力はニードル軸受の構成から既知の算出式で算出できる(特開2014-13055号公報参照)ので、伝達効率算出装置40は、荷重計21、22により測定した荷重から当該スラスト力を引いて歯車2の噛み合いによるスラスト力を高精度に算出し、これを式(5)の右辺に代入する。
【0044】
また、本実施形態では3つの歯車2を噛み合せて回転させるが、歯車2の数もこれに限らない。以下、歯車2の数が異なる例を本発明の第2の実施形態として説明する。第2の実施形態は第1の実施形態と異なる構成について説明し、同様の構成については図等で同じ符号を付すなどして説明を省略する。
【0045】
[第2の実施形態]
第2の実施形態では、第1の実施形態の測定装置10に代えて図5に示す測定装置10aを用いる。
【0046】
図5に示すように、第2の実施形態に係る測定装置10aは、歯車2-3と噛み合う歯車2-4を更に配置してこの歯車2-4の回転軸2aにブレーキ32を設け、且つ荷重計21、22を歯車2-2、2-3のそれぞれに設けた点で、第1の実施形態の測定装置10と異なる。
【0047】
すなわち、本実施形態では回転軸2aを同方向とする4つの歯車2(2-1、2-2、2-3、2-4)が、各歯車2の回転軸2aが平行に並ぶように設けられる。このうち歯車2-1が一方の端部に配置され、歯車2-4が他方の端部に配置される。歯車2-2、2-3はその中間部に配置される。歯車2-4は、歯車2-1~2-3と同じ形状および材質を有する同一のものであり、従って歯数やねじれ角も同じである。
【0048】
本実施形態では、入力モータ31を駆動させ、歯車2-1を図5のA’に示す方向に回転させると、歯車2-2は歯車2-1の回転方向A’と逆の方向B’に回転し、歯車2-3は歯車2-1の回転方向A’と同じ方向C’に回転する。歯車2-4は、歯車2-1の回転方向A’と逆の方向D’に回転し、ブレーキ32は、当該回転方向D’と逆方向の負荷トルクを歯車2-4の回転軸2aに加える。
【0049】
この時、歯車2-1、2-2の噛み合いにより歯車2-1、2-2にはそれぞれ逆方向のスラスト力F1が加わり、歯車2-2、2-3の噛み合いにより歯車2-2、2-3にはそれぞれ逆方向のスラスト力F2が加わる。また、歯車2-3、2-4の噛み合いにより、歯車2-3、2-4にもそれぞれ逆方向のスラスト力F3が加わる。
【0050】
歯車2-2に加わるスラスト力F1、F2の向きは逆であり、荷重計21は、S1(図3参照)において、それらの差分のスラスト力(F1-F2)を歯車2-2に作用する荷重faとして測定する。同様に、歯車2-3に加わるスラスト力F2、F3の向きも逆であり、荷重計22は、S1(図3参照)において、それらの差分のスラスト力(F2-F3)を歯車2-3に作用する荷重fbとして測定する。荷重fa、fbは図の上向き(回転軸方向の一方の向き)を正とする。
【0051】
ここで、歯車2の伝達効率をEとして、スラスト力F2はF1×Eとして表され、スラスト力F3はF2×Eとして表される。そのため、荷重計21、22により測定する荷重fa、fbについては、
a=F1-F2…(6)
b=F2-F3=E×(F1-F2)…(7)
より、
E=fb/fa…(8)
が成り立ち、伝達効率算出装置40は、S2(図3参照)において、式(8)の右辺に荷重fa、fbを代入することで、歯車2の伝達効率Eを算出する。
【0052】
第2の実施形態でも、第1の実施形態と同様、歯車2に加わるスラスト力を測定するだけで歯車2の伝達効率Eを求めることができ、第1の実施形態と同様の効果が得られる。また4つの歯車2を有する第2の実施形態では、式(8)のE=fb/faにより歯車2の伝達効率Eを好適に求めることができる。
【0053】
さらに、第2の実施形態では第1の実施形態に比べて測定精度を向上させることもできる。すなわち、前記した第1の実施形態において、歯車2-1に作用する荷重faはスラスト力F1であり、歯車2-2に作用する荷重fbはスラスト力F1、F2の差分である。そのため、荷重fa、fbの大きさのオーダーが異なり、荷重faは荷重fbに比べてかなり大きくなる。結果、荷重計21には荷重計22よりも定格容量の大きなものが必要となり、伝達効率Eの測定精度が誤差範囲の大きな荷重計21の精度に依存するので伝達効率Eの測定精度が低下する。
【0054】
これに対し、第2の実施形態では歯車2-2、2-3に作用する荷重fa、fbがいずれもスラスト力の差分になるため、同オーダーの小さい値になる。そのため、各荷重計21、22の定格容量は小さくて良く、伝達効率Eの測定精度がいずれかの荷重計21、22の精度に依存することもないので伝達効率Eの測定精度が向上する。
【0055】
その他、第1の実施形態では荷重計21を設置する歯車2-1にモータ31が設けられているので、荷重計21の配置が多少難しいが、第2の実施形態では、歯車2-2、2-3にモータ31が設けられていないので、荷重計21、22の設置が容易であるという利点もある。一方、第1の実施形態では歯車2の数が第2の実施形態に比較して少なくて済み、装置構成が簡単になる。
【0056】
なお、本実施形態では歯車2の数を4つとしているが、5つ以上の歯車2を上記と同様に並べることも可能である。この場合、中間部の歯車2は3つ以上となるが、このうち荷重fa、fbを測定する2つの歯車2は隣り合う歯車2でもよいし、そうでなくてもよい。後者の場合、荷重fa、fbを測定する歯車2の間に存在する歯車2の数をnとすると、
E=(fb/fa1/(n+1)…(9)
により歯車2の伝達効率を求めることができる。
【0057】
以上、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0058】
1:試験システム
2:はすば歯車
2a:回転軸
10、10a:測定装置
21、22:荷重計
31:入力モータ
32:ブレーキ
40:伝達効率算出装置
図1
図2
図3
図4
図5