(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】二重管型継手構造
(51)【国際特許分類】
F16L 39/04 20060101AFI20230105BHJP
F16L 27/12 20060101ALI20230105BHJP
F16L 37/56 20060101ALI20230105BHJP
【FI】
F16L39/04
F16L27/12 E
F16L37/56
(21)【出願番号】P 2019123346
(22)【出願日】2019-07-02
【審査請求日】2021-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000230526
【氏名又は名称】日本ヴィクトリック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】石坂 聡
(72)【発明者】
【氏名】田中舘 勉
(72)【発明者】
【氏名】高柳 常男
(72)【発明者】
【氏名】榊田 高明
(72)【発明者】
【氏名】淺田 進一
(72)【発明者】
【氏名】寺田 佳弘
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-287787(JP,A)
【文献】特開2001-200980(JP,A)
【文献】特開2008-121746(JP,A)
【文献】実開昭61-014296(JP,U)
【文献】特開2001-352651(JP,A)
【文献】特開2000-035165(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 39/04
F16L 27/12
F16L 37/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体をシールする複数の外側用シール部材を介して連続的に順次接続された第1の外側管と、第2の外側管と、第3の外側管と、を有する外側伸縮可撓継手と、
流体をシールする複数の内側用シール部材を介して連続的に順次接続された第1の内側管と、第2の内側管と、第3の内側管と、第4の内側管と、第5の内側管と、を有する内側伸縮可撓継手と、
前記第1の内側管と前記第1の外側管とを固定する第1の固定部材と、
前記第3の内側管と前記第2の外側管とを固定する第2の固定部材と、
前記第5の内側管と前記第3の外側管とを固定する第3の固定部材と、を備え、
前記第1の内側管は前記第1の外側管の内側に位置し、
前記第2の内側管は前記第1の外側管と前記第2の外側管との接続位置の内側に位置し、
前記第3の内側管は前記第2の外側管の内側に位置し、
前記第4の内側管は前記第2の外側管と前記第3の外側管との接続位置の内側に位置し、
前記第5の内側管は前記第3の外側管の内側に位置し、
複数の前記外側用シール部材は、
第1の可撓角度以内の範囲内で曲げ方向に相対的に変位可能になるように、前記第1の外側管の外周面と前記第2の外側管の内周面とを接続し、前記第3の外側管の外周面と前記第2の外側管の内周面とを接続するものであり、
複数の前記内側用シール部材は、
前記第1の可撓角度よりも小さい第2の可撓角度以内の範囲内で曲げ方向に相対的に変位可能になるように、前記第1の内側管の外周面と前記第2の内側管の内周面とを接続し、前記第3の内側管の外周面と前記第2の内側管の内周面とを接続し、前記第3の内側管の外周面と前記第4の内側管の内周面とを接続し、前記第5の内側管の外周面と前記第4の内側管の内周面とを接続するものである
ことを特徴とする二重管型継手構造。
【請求項2】
一の前記外側伸縮可撓継手の内部に複数の前記内側伸縮可撓継手が並設されている
ことを特徴とする請求項1に記載の二重管型継手構造。
【請求項3】
前記外側伸縮可撓継手は複数設けられ相互に連結されており、
前記内側伸縮可撓継手は複数設けられ相互に連結されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の二重管型継手構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重管型継手構造に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力プラントにおいては、海水等の冷却水を建屋から建屋に移送する配管が土中埋設されている。この配管には、地震発生時に接続先建屋間の相対変位を吸収できるように、伸縮可撓継手が適用されている。また、この伸縮可撓継手は、外側配管と内側配管とを有する二重管構造になっており、冷却水は内側配管によって移送される。そして、外側配管と内側配管とは、移送する水の漏洩を防ぐために共に水密構造を有している。二重管構造を採る理由は、内側配管への土圧の伝播や、外部からの接液による腐食を防止するためである。また、伸縮可撓継手が土中埋設された後も、外側配管内をアクセスルートとして内側配管の漏洩検知やメンテナンスを行うことが可能である。伸縮可撓継手は、例えば以下の特許文献1,2に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-180323号公報
【文献】特開2013-194877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、原子力プラントの耐震条件の成立性評価に用いる地震動が、従来よりも厳しい条件に見直されつつある。このため、特に既設建屋間の土中埋設配管について、従来の伸縮可撓継手では所期の相対変位を吸収することが困難になりつつある。
この発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、許容変位が大きい二重管型継手構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため本発明の二重管型継手構造は、流体をシールする複数の外側用シール部材を介して連続的に順次接続された第1の外側管と、第2の外側管と、第3の外側管と、を有する外側伸縮可撓継手と、流体をシールする複数の内側用シール部材を介して連続的に順次接続された第1の内側管と、第2の内側管と、第3の内側管と、第4の内側管と、第5の内側管と、を有する内側伸縮可撓継手と、前記第1の内側管と前記第1の外側管とを固定する第1の固定部材と、前記第3の内側管と前記第2の外側管とを固定する第2の固定部材と、前記第5の内側管と前記第3の外側管とを固定する第3の固定部材と、を備え、前記第1の内側管は前記第1の外側管の内側に位置し、前記第2の内側管は前記第1の外側管と前記第2の外側管との接続位置の内側に位置し、前記第3の内側管は前記第2の外側管の内側に位置し、前記第4の内側管は前記第2の外側管と前記第3の外側管との接続位置の内側に位置し、前記第5の内側管は前記第3の外側管の内側に位置し、複数の前記外側用シール部材は、第1の可撓角度以内の範囲内で曲げ方向に相対的に変位可能になるように、前記第1の外側管の外周面と前記第2の外側管の内周面とを接続し、前記第3の外側管の外周面と前記第2の外側管の内周面とを接続するものであり、複数の前記内側用シール部材は、前記第1の可撓角度よりも小さい第2の可撓角度以内の範囲内で曲げ方向に相対的に変位可能になるように、前記第1の内側管の外周面と前記第2の内側管の内周面とを接続し、前記第3の内側管の外周面と前記第2の内側管の内周面とを接続し、前記第3の内側管の外周面と前記第4の内側管の内周面とを接続し、前記第5の内側管の外周面と前記第4の内側管の内周面とを接続するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、許容変位が大きい二重管型継手構造を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態による二重管型継手構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〈実施形態の概要〉
上述した特許文献1,2には、継手構造を二重化する点は特に記載されていないが、径の大きい継手構造の内側に径の小さい継手構造を配置すると、二重管型継手構造を実現できると考えられる。このような二重管型継手構造において、許容相対変位量を向上する第1の方法として、複数の二重管型継手構造を連結することで、可撓角度(許容できる折れ曲がり角)を大きくできると考えられる。
【0009】
しかし、複数の可撓点を持つ折れ線の両端が移動した場合、各可撓点における変位の組合せは複数存在する。特に、慣性力(主に重量が関係する)が異なる内側配管と外側配管に対して地震による振動が与えられた場合、各可撓点での変位の組合せが相違する可能性がある。すなわち、地震時において、慣性力の相違によって内側配管と外側配管とに異なる変位が生じると、両者に干渉が発生する。この干渉の際の衝撃による接触部分および継手部分の破損を考慮すると、単純な伸縮可撓継手の連結では二重管構造の成立性を担保できない可能性がある。
また、許容相対変位量を向上する第2の方法として、接続建屋間距離を大きくすることにより、可撓継手を用いた際の全体から見た許容相対変位量を大きくする方法が考えられる。しかし、既設の建屋に適用する場合、建屋間の距離は事実上変更できず、この第2の方法は採用できない。
【0010】
そこで、後述する実施形態においては、上述の第1の方法を採用し、可撓角度を大きくしながら、二重管構造を成立させている。そのため、内側配管と外側配管とが一体となって変位するように構造を工夫している。具体的には、内側配管と外側配管の可撓点以外の直管部分を拘束用サポートによって3軸方向の移動および回転を拘束することで、内側配管と外側配管の各可撓点の相対位置を統一し、内側配管と外側配管の変位モードが常に一体化するように調整した。また、拘束用サポートの設置は伸縮可撓継手の追加によって増加した自重による変位の制御や地震による応力発生を抑える点においても有効である。拘束用サポートの設置によって、内側配管と外側配管の干渉が回避され、二重管構造の成立性が確保できる。これにより、伸縮可撓継手の連結による可撓角度と軸方法伸縮量の増大が可能となった。
【0011】
〈実施形態の構成〉
図1は、本発明の第1実施形態による二重管型継手構造1の断面図である。
図1において、二重管型継手構造1は、二重管路状に配置された外側伸縮可撓継手10と、内側伸縮可撓継手20と、を有する。外側伸縮可撓継手10は、略円筒状の外側管11,12,13(第1~第3の外側管)と、シール部材41,42(外側用シール部材)と、を備えている。また、内側伸縮可撓継手20は、略円筒状の内側管21,22,23,24,25(第1~第5の内側管)と、シール部材51,52,53,54(内側用シール部材)と、を備えている。図上で、内側伸縮可撓継手20の右側および左側には、図示せぬ管路(例えば、建屋に固定された管路)が結合される。
【0012】
外側管11,13の内径および外径は等しく、外側管12の内径は、外側管11,13の外径よりも大きくなっている。シール部材41は略円環状に形成され、外側管12の内周面左端部と、外側管11の外周面との間に挿入されている。シール部材41は、外側管11,12を軸方向に沿って相対移動可能にし、所定の可撓角度θ1以内の範囲で曲げ方向にも相対的に変位可能にし、かつ、水密構造で外側管11,12を接続している。シール部材42は、シール部材41と同様に構成され、外側管12の内周面右端部と、外側管13の外周面との間に挿入され、可撓角度θ1を確保しつつ水密構造で外側管12,13を接続している。
【0013】
また、内側管21,23,25の内径および外径は等しく、内側管22,24の内径は、内側管21,23,25の外径よりも大きくなっている。シール部材51は、略円環状に形成され、内側管22の内周面左端部と、内側管21の外周面との間に挿入されている。シール部材51は、内側管21,22を軸方向に沿って相対移動可能にし、所定の可撓角度θ2以内の範囲で曲げ方向にも相対的に変位可能にしつつ、水密構造で内側管21,22を接続している。ここで、可撓角度θ2は、上述した可撓角度θ1よりも小さくなっている。これは、内側伸縮可撓継手20の内部には高圧の冷却水が流れるため、シール部材51に要求される耐圧性能が高くなり、曲げ方向の変位に対する制約が大きくなるためである。
【0014】
シール部材52は、シール部材51と同様に構成され、内側管22の内周面右端部と、内側管23の外周面との間に挿入されている。シール部材52も、可撓角度θ2を確保しつつ水密構造を維持し、軸方向に沿って相対移動可能に内側管22,23を接続している。シール部材53も、シール部材51と同様に構成され、内側管24の内周面左端部と、内側管23の外周面との間に挿入されている。シール部材53も、可撓角度θ2を確保しつつ水密構造を維持し、軸方向に沿って相対移動可能に内側管23,24を接続している。シール部材54も、シール部材51と同様に構成され、内側管24の内周面右端部と、内側管25の外周面との間に挿入されている。シール部材54も、可撓角度θ2を確保しつつ水密構造を維持し、軸方向に沿って相対移動可能に内側管24,25を接続している。また、内側管21,23,25には、随所にフランジ212,232,234,252が形成されている。これにより、内側管21,23,25の交換や分解等を行う際の搬入性やメンテナンス性を高めることができる。上述したシール部材41,42,51~54は、流体をシールする機能を有するものであれば特に限定されないが、例えば、上述した特許文献1に記載されているものを適用するとよい。
【0015】
拘束用サポート31,32,33(第1~第3の固定部材)は、何れも円環板状の部材である。拘束用サポート31は、外側管11と内側管21との間に挿入されつつ両者に固定されている。より詳細には、両者の3軸方向の相対的移動および相対的回転を規制する。同様に、拘束用サポート32は、外側管12と内側管23との間に挿入されつつ両者に固定され、両者の3軸方向の相対的移動および相対的回転を規制する。同様に、拘束用サポート33は、外側管13と内側管25との間に挿入されつつ両者に固定され、両者の3軸方向の相対的移動および相対的回転を規制する。
【0016】
〈実施形態の動作〉
上記構成において、二重管型継手構造1の両端の内側管21,25の相対位置が曲げ方向に移動すると、内側管22,23,24および外側管11,12,13等のなす角度がシール部材41,42,51~54において変化し、曲げ方向の変位を吸収する。また、内側管21,25の相対位置が軸方向に変化すると、シール部材41,42,51~54によって内側管22,23,24および外側管11,12,13等の軸方向の相対位置が変化し、軸方向の変位を吸収する。その際、内側管22の中心点C22は、シール部材41の中心位置と一致し、内側管24の中心点C24は、シール部材42の中心位置と一致する。
【0017】
このように、本実施形態によれば、一つのシール部材41,42,51~54あたりの可撓角度θ1,θ2が異なる外側伸縮可撓継手10および内側伸縮可撓継手20を適用しつつ、シール部材41,42,51~54の数を調整することによって必要な許容相対変位量を達成することができる。
【0018】
〈第1実施形態の効果〉
以上のように本実施形態によれば、複数の外側用シール部材(41,42)は、第1の外側管(11)の外周面と第2の外側管(12)の内周面とを接続し、第3の外側管(13)の外周面と第2の外側管(12)の内周面とを接続するものであり、複数の内側用シール部材(51~54)は、第1の内側管(21)の外周面と第2の内側管(22)の内周面とを接続し、第3の内側管(23)の外周面と第2の内側管(22)の内周面とを接続し、第3の内側管(23)の外周面と第4の内側管(24)の内周面とを接続し、第5の内側管(25)の外周面と第4の内側管(24)の内周面とを接続するものである。
すなわち、1個の外側用シール部材(41,42)に対応して複数の(本実施形態では2個の)内側用シール部材(51~54)を配置したため、内側用シール部材(51~54)の可撓角度が小さい場合であっても、大きな許容変位を確保できる。
【0019】
さらに、本実施形態によれば、第1の内側管(21)と第1の外側管(11)とを固定する第1の固定部材(31)と、第3の内側管(23)と第2の外側管(12)とを固定する第2の固定部材(32)と、第5の内側管(25)と第3の外側管(13)とを固定する第3の固定部材(33)と、を備えている。
これにより、外側伸縮可撓継手(10)と内側伸縮可撓継手(20)とを一体的に変位させることができ、両者の二重管構造を安定的に維持できる。
【0020】
〈変形例〉
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。上述した実施形態は本発明を理解しやすく説明するために例示したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、上記実施形態の構成に他の構成を追加してもよく、構成の一部について他の構成に置換をすることも可能である。上記実施形態に対して可能な変形は、例えば以下のようなものである。
【0021】
(1)
図1に示した二重管型継手構造1によって所期の許容相対変位量を満たせない場合は、図示の範囲の外側伸縮可撓継手10および内側伸縮可撓継手20を複数連結してもよい。上述のように、上記実施形態においては、拘束用サポート31,32,33を設けたことにより、外側伸縮可撓継手10と内側伸縮可撓継手20とを一体となって変位させることができ、二重管構造の成立性を維持できる。これにより、二重管型継手構造1を単に連結することによって可撓角度と軸方向伸縮量を増大させることができる。
【0022】
(2)上記実施形態においては、1本の外側伸縮可撓継手10の内部に1本の内側伸縮可撓継手20を配置した。しかし、1本の外側伸縮可撓継手10の内部に複数本の内側伸縮可撓継手20を並設してもよい。この変形例においても、二重管型継手構造が許容相対変位量を満たせない場合には、外側伸縮可撓継手10および内側伸縮可撓継手20を複数連結してもよい。
【符号の説明】
【0023】
1 二重管型継手構造
10 外側伸縮可撓継手
11,12,13 外側管(第1~第3の外側管)
20 内側伸縮可撓継手
21,22,23,24,25 内側管(第1~第5の内側管)
31,32,33 拘束用サポート(第1~第3の固定部材)
41,42 シール部材(外側用シール部材)
51~54 シール部材(内側用シール部材)