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特許7203386ポリフェニレンエーテル樹脂組成物、並びに、それを用いたプリプレグ、樹脂付きフィルム、樹脂付き金属箔、金属張積層板及び配線基板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】ポリフェニレンエーテル樹脂組成物、並びに、それを用いたプリプレグ、樹脂付きフィルム、樹脂付き金属箔、金属張積層板及び配線基板
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20230105BHJP
   C08F 299/02 20060101ALI20230105BHJP
   C08G 65/48 20060101ALI20230105BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20230105BHJP
   B32B 5/00 20060101ALI20230105BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20230105BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230105BHJP
   B32B 27/26 20060101ALI20230105BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20230105BHJP
【FI】
C08F290/06
C08F299/02
C08G65/48
C08J5/24 CEZ
B32B5/00 A
B32B15/08 105A
B32B27/00 103
B32B27/26
H05K1/03 610H
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019562777
(86)(22)【出願日】2018-10-16
(86)【国際出願番号】 JP2018038418
(87)【国際公開番号】W WO2019130735
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-07-09
(31)【優先権主張番号】P 2017254635
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100162765
【弁理士】
【氏名又は名称】宇佐美 綾
(72)【発明者】
【氏名】梅原 大明
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 文人
(72)【発明者】
【氏名】安本 洵
(72)【発明者】
【氏名】井上 博晴
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107163244(CN,A)
【文献】特開2017-128718(JP,A)
【文献】国際公開第2017/067123(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0174835(US,A1)
【文献】特表2016-531959(JP,A)
【文献】特開2005-292413(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 299/00-299/08
C08F 290/00-290/14
C08G 65/00-67/04
C08J 5/24
B32B 5/00
B32B 15/08
B32B 27/00
B32B 27/26
H05K 1/03
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記式(1)で示される(A-1)化合物と、下記式(2)で示される(A-2)化合物を含む変性ポリフェニレンエーテル化合物と、
(B)炭素-炭素不飽和二重結合を分子中に2個以上有し、かつ、(A)変性ポリフェニレンエーテル化合物と反応させることによって、架橋を形成させて、硬化させることができる架橋型硬化剤とを含有し、
【化1】

【化2】

(式(1)および(2)中、R~R並びにR~R16は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ホルミル基、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、又はアルキニルカルボニル基を示す。Yは炭素数20以下の直鎖状、分岐状もしくは環状の炭化水素を示す。XおよびXは、同じであっても異なっていてもよく、炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基を示す。
また、AおよびBはそれぞれ下記式(3)及び(4)で示される構造である:
【化3】

【化4】

式(3)および(4)中、mおよびnはそれぞれ0~20の整数を示す。R17~R20並びにR21~R24は、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基を示す。)
前記式(1)及び式(2)において、X およびX が下記式(6)又は式(7)で示される置換基であり、かつ、前記式(1)におけるX 及びX 、並びに、前記式(2)におけるX 及びX のうち、少なくとも1つが下記式(6)で示される置換基である、ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
【化5】

(式(6)中、aは0~10の整数を示す。また、Zはアリーレン基を示す。また、R 27 ~R 29 はそれぞれ独立して水素原子またはアルキル基を示す。)
【化6】

(式(7)中、R 30 は水素原子またはアルキル基を示す。)
【請求項2】
前記式(2)において、Yが下記式(5)で示される基である、請求項1に記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
【化7】

(前記式(5)中、R25及びR26は、それぞれ独立して、水素原子またはアルキル基を示す。)
【請求項3】
前記(B)架橋型硬化剤が、トリアルケニルイソシアヌレート化合物、分子中にアクリル基を2個以上有する多官能アクリレート化合物、分子中にメタクリル基を2個以上有する多官能メタクリレート化合物、及び、分子中にビニル基を2個以上有する多官能ビニル化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
【請求項4】
前記(A)変性ポリフェニレンエーテル化合物と前記(B)架橋型硬化剤の合計量に対して、前記(A-1)変性ポリフェニレンエーテル化合物及び前記(A-2)変性ポリフェニレンエーテル化合物が、20~95質量%の含有量で含まれていることを特徴とする、請求項1~のいずれかに記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
【請求項5】
前記(A)変性ポリフェニレンエーテル化合物において、前記(A-1)変性ポリフェニレンエーテル化合物と前記(A-2)変性ポリフェニレンエーテル化合物の含有比が、質量比で(A-1):(A-2)=5:95~95:5であることを特徴とする、請求項1~のいずれかに記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~のいずれかに記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物と繊維質基材とを有するプリプレグ。
【請求項7】
請求項1~のいずれかに記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物を含む樹脂層と、支持フィルムとを有する樹脂付きフィルム。
【請求項8】
請求項1~いずれか1項に記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物を含む樹脂層と、金属箔とを有する、樹脂付き金属箔。
【請求項9】
請求項1~のいずれかに記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物の硬化物又は前記請求項に記載のプリプレグの硬化物を含む絶縁層と、金属箔とを有する、金属張積層板。
【請求項10】
請求項1~のいずれかに記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物の硬化物又は前記請求項に記載のプリプレグの硬化物を含む絶縁層と、配線とを有する、配線基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリフェニレンエーテル樹脂組成物、並びに、それを用いたプリプレグ、樹脂付きフィルム、樹脂付き金属箔、金属張積層板及び配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子機器は、情報処理量の増大に伴い、搭載される半導体デバイスの高集積化、配線の高密度化、及び多層化等の実装技術が急速に進展している。各種電子機器において用いられるプリント配線板の基材を構成するための基板材料には、信号の伝送速度を高め、信号伝送時の損失を低減させるために、誘電率及び誘電正接が低いことが求められる。
【0003】
ポリフェニレンエーテル(PPE)は、誘電率や誘電正接等の誘電特性に優れ、MHz帯からGHz帯という高周波数帯(高周波領域)においても誘電率や誘電正接等の誘電特性が優れていることが知られている。このため、ポリフェニレンエーテルは、例えば、高周波用成形材料として用いられることが検討されている。より具体的には、高周波数帯を利用する電子機器に備えられるプリント配線板の基材を構成するための基板材料等に好ましく用いられる。
【0004】
一方、基板材料等の成形材料として利用する際には、誘電特性に優れるだけでなく、耐熱性や密着性等に優れていることも求められる。例えば、これまでにも、末端を変性させたポリフェニレンエーテルと、高分子量体を併用して用いることで、誘電特性並びに耐熱性に優れる樹脂組成物を提供できることが報告されている(特許文献1)。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1記載の樹脂組成物では、誘電特性とある程度までの耐熱性を得ることはできると考えられるが、昨今、基板材料に対しては、誘電特性に加えて耐熱性、密着性、低熱膨張率等の性能におけるさらなる改善がより高い水準で求められている。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、低誘電特性に加えて、高い耐熱性、高Tg、低熱膨張率及び密着性を兼ね備えたポリフェニレンエーテル樹脂組成物を提供することを目的とする。また、前記樹脂組成物を用いたプリプレグ、樹脂付きフィルム、樹脂付き金属箔、金属張積層板、及び配線基板を提供することを目的とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2006-83364号公報
【発明の概要】
【0008】
本発明の一態様に係るポリフェニレンエーテル樹脂組成物は、(A)炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基により末端変性された変性ポリフェニレンエーテル化合物と、
(B)炭素-炭素不飽和二重結合を分子中に2個以上有する架橋型硬化剤とを含有するポリフェニレンエーテル樹脂組成物であって、
前記(A)変性ポリフェニレンエーテル化合物は、下記式(1)で示される(A-1)変性ポリフェニレンエーテル化合物と、下記式(2)で示される(A-2)変性ポリフェニレンエーテル化合物とを含むことを特徴とする。
【0009】
【化1】
【0010】
【化2】
【0011】
(式(1)および(2)中、R~R並びにR~R16は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ホルミル基、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、又はアルキニルカルボニル基を示す。Yは炭素数20以下の直鎖状、分岐状もしくは環状の炭化水素を示す。XおよびXは、同じであっても異なっていてもよく、炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基を示す。
【0012】
AおよびBはそれぞれ下記式(3)及び(4)で示される構造である:
【0013】
【化3】
【0014】
【化4】
【0015】
式(3)および(4)中、mおよびnはそれぞれ0~20の整数を示す。R17~R20並びにR21~R24は、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基を示す。)
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るプリプレグの構成を示す概略断面図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る金属張積層板の構成を示す概略断面図である。
図3図3は、本発明の一実施形態に係る配線基板の構成を示す概略断面図である。
図4図4は、本発明の一実施形態に係る樹脂付き金属箔の構成を示す概略断面図である。
図5図5は、本発明の一実施形態に係る樹脂フィルムの構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態に係るポリフェニレンエーテル樹脂組成物は、(A)炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基により末端変性された変性ポリフェニレンエーテル化合物と、
(B)炭素-炭素不飽和二重結合を分子中に2個以上有する架橋型硬化剤とを含有するポリフェニレンエーテル樹脂組成物であって、
前記(A)変性ポリフェニレンエーテル化合物は、下記式(1)で示される(A-1)変性ポリフェニレンエーテル化合物と、下記式(2)で示される(A-2)変性ポリフェニレンエーテル化合物とを含むことを特徴とする。
【0018】
【化5】
【0019】
【化6】
【0020】
(式(1)および(2)中、R~R並びにR~R16は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ホルミル基、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、又はアルキニルカルボニル基を示す。Yは炭素数20以下の直鎖状、分岐状もしくは環状の炭化水素を示す。XおよびXは、同じであっても異なっていてもよく、炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基を示す。
【0021】
AおよびBはそれぞれ下記式(3)及び(4)で示される構造である:
【0022】
【化7】
【0023】
【化8】
【0024】
式(3)および(4)中、mおよびnはそれぞれ0~20の整数を示す。R17~R20並びにR21~R24は、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基を示す。)
【0025】
このようなポリフェニレンエーテル樹脂組成物は、上述のように2種類の変性ポリフェニレンエーテル化合物を含んでいるため、低誘電率や低誘電正接などの低誘電特性に加えて優れた耐熱性を有し、かつ、高Tg及び密着性を兼ね備えていると考えられる。
【0026】
したがって、本発明によれば、低誘電率や低誘電正接などの低誘電特性に加えて、高い耐熱性、高Tg及び密着性を兼ね備えたポリフェニレンエーテル樹脂組成物を提供できる。また、この樹脂組成物は、成型性にも優れており、さらに、低い熱膨張率を有している。さらに本発明によれば、前記樹脂組成物を用いることにより、優れた性能を有するプリプレグ、樹脂付きフィルム、樹脂付き金属箔、金属張積層板、及び配線基板を提供できる。
【0027】
以下、本実施形態に係るポリフェニレンエーテル樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」ともいう場合もある)の各成分について、具体的に説明する。
【0028】
本実施形態で用いる(A)変性ポリフェニレンエーテル化合物は上記式(1)で示される(A-1)変性ポリフェニレンエーテル化合物と、上記式(2)で示される(A-2)変性ポリフェニレンエーテル化合物とを含む変性ポリフェニレンエーテルであれば、特に限定されない。
【0029】
また、式(1)及び式(2)において、R~R並びにR~R16は、それぞれ独立している。すなわち、R~R並びにR~R16は、それぞれ同一の基であっても、異なる基であってもよい。また、R~R並びにR~R16は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ホルミル基、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、又はアルキニルカルボニル基を示す。この中でも、水素原子及びアルキル基が好ましい。
【0030】
~R並びにR~R16について、上記で挙げられた各官能基としては、具体的には、以下のようなものが挙げられる。
【0031】
アルキル基は、特に限定されないが、例えば、炭素数1~18のアルキル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましい。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、及びデシル基等が挙げられる。
【0032】
また、アルケニル基は、特に限定されないが、例えば、炭素数2~18のアルケニル基が好ましく、炭素数2~10のアルケニル基がより好ましい。具体的には、例えば、ビニル基、アリル基、及び3-ブテニル基等が挙げられる。
【0033】
また、アルキニル基は、特に限定されないが、例えば、炭素数2~18のアルキニル基が好ましく、炭素数2~10のアルキニル基がより好ましい。具体的には、例えば、エチニル基、及びプロパ-2-イン-1-イル基(プロパルギル基)等が挙げられる。
【0034】
また、アルキルカルボニル基は、アルキル基で置換されたカルボニル基であれば、特に限定されないが、例えば、炭素数2~18のアルキルカルボニル基が好ましく、炭素数2~10のアルキルカルボニル基がより好ましい。具体的には、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、及びシクロヘキシルカルボニル基等が挙げられる。
【0035】
また、アルケニルカルボニル基は、アルケニル基で置換されたカルボニル基であれば、特に限定されないが、例えば、炭素数3~18のアルケニルカルボニル基が好ましく、炭素数3~10のアルケニルカルボニル基がより好ましい。具体的には、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びクロトノイル基等が挙げられる。
【0036】
また、アルキニルカルボニル基は、アルキニル基で置換されたカルボニル基であれば、特に限定されないが、例えば、炭素数3~18のアルキニルカルボニル基が好ましく、炭素数3~10のアルキニルカルボニル基がより好ましい。具体的には、例えば、プロピオロイル基等が挙げられる。
【0037】
また、上記式(1)および(2)において、上述の通り、Aは下記式(3)で、Bは下記式(4)でそれぞれ示される構造である:
【0038】
【化9】
【0039】
【化10】
【0040】
上記式(3)および(4)において、m及びnはそれぞれ0~20を示す。また、例えば、mとnとの合計値が、1~30となるものであることが好ましい。また、mが、0~20であることが好ましく、nが、0~20であることが好ましい。すなわち、mは、0~20を示し、nは、0~20を示し、mとnとの合計は、1~30を示すことが好ましい。
【0041】
17~R20並びにR21~R24は、それぞれ独立している。すなわち、R17~R20並びにR21~R24は、それぞれ同一の基であっても、異なる基であってもよい。また、本実施形態において、R17~R20並びにR21~R24は水素原子又はアルキル基である。
【0042】
次に、前記式(2)中、Yとしては、炭素数20以下の直鎖状、分岐状もしくは環状の炭化水素が挙げられる。より具体的には、例えば、下記式(5)で表される基等が挙げられる。
【0043】
【化11】
【0044】
前記式(5)中、R25及びR26は、それぞれ独立して、水素原子またはアルキル基を示す。前記アルキル基としては、例えば、メチル基等が挙げられる。また、式(5)で表される基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、及びジメチルメチレン基等が挙げられる。
【0045】
さらに、前記式(1)および(2)中、XおよびXで示される置換基は、同じであっても異なっていてもよく、炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基であることが好ましい。
【0046】
炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基としては、特に限定されない。前記置換基XおよびXの好ましい具体例としては、例えば、下記式(6)で示される置換基が挙げられる。
【0047】
【化12】
【0048】
式(6)中、aは0~10の整数を示す。また、Zはアリーレン基を示す。また、R27~R29はそれぞれ独立して同一の基であっても異なる基であってもよく、それぞれ水素原子またはアルキル基を示す。前記アルキル基は、特に限定されず、例えば、炭素数1~18のアルキル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましい。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、及びデシル基等が挙げられる。
【0049】
なお、式(6)において、aが0である場合は、Zがポリフェニレンエーテルの末端に直接結合しているものを示す。
【0050】
このアリーレン基は、特に限定されない。具体的には、フェニレン基等の単環芳香族基や、芳香族が単環ではなく、ナフタレン環等の多環芳香族である多環芳香族基等が挙げられる。また、このアリーレン基には、芳香族環に結合する水素原子がアルケニル基、アルキニル基、ホルミル基、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、又はアルキニルカルボニル基等の官能基で置換された誘導体も含む。
【0051】
上記式(6)に示す置換基の好ましい具体例としては、ビニルベンジル基を含む官能基が挙げられる。具体的には、下記式(8)に示される置換基等が挙げられる。
【0052】
【化13】
【0053】
前記変性ポリフェニレンエーテルにおいて末端変性される、炭素-炭素不飽和二重結合を有する上記以外の置換基としては、(メタ)アクリレート基が挙げられ、例えば、下記式(7)で示される。
【0054】
【化14】
【0055】
式(7)中、R30は水素原子またはアルキル基を示す。水素原子またはアルキル基を示す。前記アルキル基は、特に限定されず、例えば、炭素数1~18のアルキル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましい。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、及びデシル基等が挙げられる。
【0056】
本実施形態における前記置換基XおよびXとしては、より具体的には、例えば、p-エテニルベンジル基やm-エテニルベンジル基等のビニルベンジル基(エテニルベンジル基)、ビニルフェニル基、アクリレート基、及びメタクリレート基等が挙げられる。
【0057】
なお、(A-1)変性ポリフェニレンエーテル化合物及び(A-2)変性ポリフェニレンエーテル化合物において、前記置換基XおよびXは同一であっても異なっていてもよい。
【0058】
本実施形態の(A-1)変性ポリフェニレンエーテル化合物のより具体的な例示としては、下記式(9)で表される変性ポリフェニレンエーテルが挙げられる。
【0059】
【化15】
【0060】
また、本実施形態の(A-2)変性ポリフェニレンエーテル化合物のより具体的な例示としては、下記式(10)~式(11)で表される変性ポリフェニレンエーテルが挙げられる。
【0061】
【化16】
【0062】
【化17】
【0063】
上記式(9)~(11)において、Yは上記式(2)におけるYと同じであり、R27~R30は、それぞれ、上記式(6)および式(7)におけるR27~R30と同じであり、Zおよびaは上記式(6)におけるZおよびaと同じであり、かつ、mおよびnは上記式(3)および式(4)におけるmおよびnと同じである。
【0064】
また、本実施形態の(A)変性ポリフェニレンエーテル化合物において、前記(A-1)変性ポリフェニレンエーテル化合物と前記(A-2)変性ポリフェニレンエーテル化合物の含有比が、質量比で(A-1):(A-2)=5:95~95:5であることが好ましい。前記(A-1)成分と前記(A-2)成分がこのような質量比で含まれていることにより、耐熱性、Tg及び密着性にバランスよく優れる樹脂組成物を得ることができると考えられる。より好ましい質量比は10:90~90:10であり、さらに好ましくは10:90~70:30であり、よりさらに好ましくは20:80~50:50である。
【0065】
本実施形態において用いられる変性ポリフェニレンエーテル化合物の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されない。具体的には、500~5000であることが好ましく、800~4000であることがより好ましく、1000~4000であることがさらに好ましい。なお、ここで、重量平均分子量は、一般的な分子量測定方法で測定したものであればよく、具体的には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて測定した値等が挙げられる。また、変性ポリフェニレンエーテル化合物が、式(2)で表される繰り返し単位を分子中に有している場合、mは、変性ポリフェニレンエーテル化合物の重量平均分子量がこのような範囲内になるような数値であることが好ましい。具体的には、mは、1~50であることが好ましい。
【0066】
変性ポリフェニレンエーテル化合物の重量平均分子量がこのような範囲内であると、ポリフェニレンエーテルの有する優れた誘電特性を有し、硬化物の耐熱性により優れるだけではなく、成形性にも優れたものとなる。このことは、以下のことによると考えられる。通常のポリフェニレンエーテルでは、その重量平均分子量がこのような範囲内であると、比較的低分子量のものであるので、硬化物の耐熱性が低下する傾向がある。この点、本実施形態に係る変性ポリフェニレンエーテル化合物は、末端に炭素-炭素不飽和二重結合を有するので、高い反応性を示すため、硬化物の耐熱性が充分に高いものが得られると考えられる。また、変性ポリフェニレンエーテル化合物の重量平均分子量がこのような範囲内であると、比較的低分子量のものであるので、成形性にも優れると考えられる。よって、このような変性ポリフェニレンエーテル化合物は、硬化物の耐熱性により優れるだけではなく、成形性にも優れたものが得られると考えられる。
【0067】
また、本実施形態において用いられる変性ポリフェニレンエーテル化合物における、変性ポリフェニレンエーテル1分子当たりの、分子末端に有する、前記置換基の平均個数(末端官能基数)は、特に限定されない。具体的には、1~5個であることが好ましく、1~3個であることがより好ましく、1.5~3個であることがさらに好ましい。この末端官能基数が少なすぎると、硬化物の耐熱性としては充分なものが得られにくい傾向がある。また、末端官能基数が多すぎると、反応性が高くなりすぎ、例えば、樹脂組成物の保存性が低下したり、樹脂組成物の流動性が低下してしまう等の不具合が発生するおそれがある。すなわち、このような変性ポリフェニレンエーテルを用いると、流動性不足等により、例えば、多層成形時にボイドが発生する等の成形不良が発生し、信頼性の高いプリント配線板が得られにくいという成形性の問題が生じるおそれがあった。
【0068】
なお、変性ポリフェニレンエーテル化合物の末端官能基数は、変性ポリフェニレンエーテル化合物1モル中に存在する全ての変性ポリフェニレンエーテル化合物の1分子あたりの、前記置換基の平均値を表した数値等が挙げられる。この末端官能基数は、例えば、得られた変性ポリフェニレンエーテル化合物に残存する水酸基数を測定して、変性前のポリフェニレンエーテルの水酸基数からの減少分を算出することによって、測定することができる。この変性前のポリフェニレンエーテルの水酸基数からの減少分が、末端官能基数である。そして、変性ポリフェニレンエーテル化合物に残存する水酸基数の測定方法は、変性ポリフェニレンエーテル化合物の溶液に、水酸基と会合する4級アンモニウム塩(テトラエチルアンモニウムヒドロキシド)を添加し、その混合溶液のUV吸光度を測定することによって、求めることができる。
【0069】
また、本実施形態において用いられる変性ポリフェニレンエーテル化合物の固有粘度は、特に限定されない。具体的には、0.03~0.12dl/gであればよいが、0.04~0.11dl/gであることが好ましく、0.06~0.095dl/gであることがより好ましい。この固有粘度が低すぎると、分子量が低い傾向があり、低誘電率や低誘電正接等の低誘電性が得られにくい傾向がある。また、固有粘度が高すぎると、粘度が高く、充分な流動性が得られず、硬化物の成形性が低下する傾向がある。よって、変性ポリフェニレンエーテル化合物の固有粘度が上記範囲内であれば、優れた、硬化物の耐熱性及び成形性を実現できる。
【0070】
なお、ここでの固有粘度は、25℃の塩化メチレン中で測定した固有粘度であり、より具体的には、例えば、0.18g/45mlの塩化メチレン溶液(液温25℃)を、粘度計で測定した値等である。この粘度計としては、例えば、Schott社製のAVS500 Visco System等が挙げられる。
【0071】
また、本実施形態において用いられる変性ポリフェニレンエーテル化合物の合成方法は、上述したような置換基XおよびXにより末端変性された変性ポリフェニレンエーテル化合物を合成できれば、特に限定されない。具体的には、ポリフェニレンエーテルに、置換基XおよびXとハロゲン原子とが結合された化合物を反応させる方法等が挙げられる。
【0072】
原料であるポリフェニレンエーテルは、最終的に、所定の変性ポリフェニレンエーテルを合成することができるものであれば、特に限定されない。具体的には、2,6-ジメチルフェノールと2官能フェノール及び3官能フェノールの少なくともいずれか一方とからなるポリフェニレンエーテルやポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンオキサイド)等のポリフェニレンエーテルを主成分とするもの等が挙げられる。また、2官能フェノールとは、フェノール性水酸基を分子中に2個有するフェノール化合物であり、例えば、テトラメチルビスフェノールA等が挙げられる。また、3官能フェノールとは、フェノール性水酸基を分子中に3個有するフェノール化合物である。
【0073】
変性ポリフェニレンエーテル化合物の合成方法の一例として、例えば、(A-2)変性ポリフェニレンエーテル化合物の場合、具体的には、上記のようなポリフェニレンエーテルと、置換基XおよびXとハロゲン原子とが結合された化合物(置換基XおよびXを有する化合物)とを溶媒に溶解させ、攪拌する。そうすることによって、ポリフェニレンエーテルと、置換基XおよびXを有する化合物とが反応し、本実施形態で用いられる変性ポリフェニレンエーテルが得られる。
【0074】
また、この反応の際、アルカリ金属水酸化物の存在下で行うことが好ましい。そうすることによって、この反応が好適に進行すると考えられる。このことは、アルカリ金属水酸化物が、脱ハロゲン化水素剤、具体的には、脱塩酸剤として機能するためと考えられる。すなわち、アルカリ金属水酸化物が、ポリフェニレンエーテルのフェノール基と置換基XおよびXを有する化合物とから、ハロゲン化水素を脱離させ、そうすることによって、ポリフェニレンエーテルのフェノール基の水素原子の代わりに、置換基Xが、フェノール基の酸素原子に結合すると考えられる。
【0075】
また、アルカリ金属水酸化物は、脱ハロゲン化剤として働きうるものであれば、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウム等が挙げられる。また、アルカリ金属水酸化物は、通常、水溶液の状態で用いられ、具体的には、水酸化ナトリウム水溶液として用いられる。
【0076】
また、反応時間や反応温度等の反応条件は、置換基Xを有する化合物等によっても異なり、上記のような反応が好適に進行する条件であれば、特に限定されない。具体的には、反応温度は、室温~100℃であることが好ましく、30~100℃であることがより好ましい。また、反応時間は、0.5~20時間であることが好ましく、0.5~10時間であることがより好ましい。
【0077】
また、反応時に用いる溶媒は、ポリフェニレンエーテルと、置換基XおよびXを有する化合物とを溶解させることができ、ポリフェニレンエーテルと、置換基XおよびXを有する化合物との反応を阻害しないものであれば、特に限定されない。具体的には、トルエン等が挙げられる。
【0078】
また、上記の反応は、アルカリ金属水酸化物だけではなく、相間移動触媒も存在した状態で反応させることが好ましい。すなわち、上記の反応は、アルカリ金属水酸化物及び相間移動触媒の存在下で反応させることが好ましい。そうすることによって、上記反応がより好適に進行すると考えられる。このことは、以下のことによると考えられる。相間移動触媒は、アルカリ金属水酸化物を取り込む機能を有し、水のような極性溶剤の相と、有機溶剤のような非極性溶剤の相との両方の相に可溶で、これらの相間を移動することができる触媒であることによると考えられる。具体的には、アルカリ金属水酸化物として、水酸化ナトリウム水溶液を用い、溶媒として、水に相溶しない、トルエン等の有機溶剤を用いた場合、水酸化ナトリウム水溶液を、反応に供されている溶媒に滴下しても、溶媒と水酸化ナトリウム水溶液とが分離し、水酸化ナトリウムが、溶媒に移行しにくいと考えられる。そうなると、アルカリ金属水酸化物として添加した水酸化ナトリウム水溶液が、反応促進に寄与しにくくなると考えられる。これに対して、アルカリ金属水酸化物及び相間移動触媒の存在下で反応させると、アルカリ金属水酸化物が相間移動触媒に取り込まれた状態で、溶媒に移行し、水酸化ナトリウム水溶液が、反応促進に寄与しやすくなると考えられる。このため、アルカリ金属水酸化物及び相間移動触媒の存在下で反応させると、上記反応がより好適に進行すると考えられる。
【0079】
また、相間移動触媒は、特に限定されないが、例えば、テトラ-n-ブチルアンモニウムブロマイド等の第4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0080】
本実施形態に係る樹脂組成物には、変性ポリフェニレンエーテルとして、上記のようにして得られた変性ポリフェニレンエーテルを含むことが好ましい。
【0081】
なお、本実施形態の樹脂組成物には、上述したような変性ポリフェニレンエーテル化合物以外の熱硬化性樹脂を含めてもよい。例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂等が使用可能なその他の熱硬化性樹脂として挙げられる。
【0082】
好ましい実施形態では、本実施形態の樹脂組成物に含まれる熱硬化性樹脂は、変性ポリフェニレンエーテルと架橋剤とを含む樹脂であることが望ましい。それにより、より優れた耐熱性、電気特性等が得られると考えられる。
【0083】
次に、本実施形態において用いられる(B)成分、すなわち、架橋型硬化剤について説明する。本実施形態で用いられる架橋型硬化剤は、炭素-炭素不飽和二重結合を分子中に2個以上有する架橋型硬化剤であれば、特に限定されない。すなわち、架橋型硬化剤は、変性ポリフェニレンエーテル化合物と反応させることによって、架橋を形成させて、硬化させることができるものであればよい。架橋型硬化剤は、炭素-炭素不飽和二重結合を末端に2個以上有する化合物が好ましい。
【0084】
また、本実施形態において用いられる架橋型硬化剤は、重量平均分子量が100~5000であることが好ましく、100~4000であることがより好ましく、100~3000であることがさらに好ましい。架橋型硬化剤の重量平均分子量が低すぎると、架橋型硬化剤が樹脂組成物の配合成分系から揮発しやすくなるおそれがある。また、架橋型硬化剤の重量平均分子量が高すぎると、樹脂組成物のワニスの粘度や、加熱成形時の溶融粘度が高くなりすぎるおそれがある。よって、架橋型硬化剤の重量平均分子量がこのような範囲内であると、硬化物の耐熱性により優れた樹脂組成物が得られる。このことは、変性ポリフェニレンエーテル化合物との反応により、架橋を好適に形成することができるためと考えられる。なお、ここで、重量平均分子量は、一般的な分子量測定方法で測定したものであればよく、具体的には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて測定した値等が挙げられる。
【0085】
また、本実施形態において用いられる架橋型硬化剤は、架橋型硬化剤1分子当たりの、炭素-炭素不飽和二重結合の平均個数(末端二重結合数)は、架橋型硬化剤の重量平均分子量によって異なるが、例えば、2~20個であることが好ましく、2~18個であることがより好ましい。この末端二重結合数が少なすぎると、硬化物の耐熱性としては充分なものが得られにくい傾向がある。また、末端二重結合数が多すぎると、反応性が高くなりすぎ、例えば、樹脂組成物の保存性が低下したり、樹脂組成物の流動性が低下してしまう等の不具合が発生するおそれがある。
【0086】
また、架橋型硬化剤の末端二重結合数としては、架橋型硬化剤の重量平均分子量をより考慮すると、架橋型硬化剤の重量平均分子量が500未満(例えば、100以上500未満)の場合、2~4個であることが好ましい。また、架橋型硬化剤の末端二重結合数としては、架橋型硬化剤の重量平均分子量が500以上(例えば、500以上5000以下)の場合、3~20個であることが好ましい。それぞれの場合で、末端二重結合数が、上記範囲の下限値より少ないと、架橋型硬化剤の反応性が低下して、樹脂組成物の硬化物の架橋密度が低下し、耐熱性やTgを充分に向上させることができなくなるおそれがある。一方、末端二重結合数が、上記範囲の上限値より多いと、樹脂組成物がゲル化しやすくなるおそれがある。
【0087】
なお、ここでの末端二重結合数は、使用する架橋型硬化剤の製品の規格値からわかる。ここでの末端二重結合数としては、具体的には、例えば、架橋型硬化剤1モル中に存在する全ての架橋型硬化剤の1分子あたりの二重結合数の平均値を表した数値等が挙げられる。
【0088】
また、本実施形態において用いられる架橋型硬化剤は、具体的には、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)等のトリアルケニルイソシアヌレート化合物、分子中にメタクリル基を2個以上有する多官能メタクリレート化合物、分子中にアクリル基を2個以上有する多官能アクリレート化合物、ポリブタジエン等のように分子中にビニル基を2個以上有するビニル化合物(多官能ビニル化合物)、及び分子中にビニルベンジル基を有するスチレン、ジビニルベンゼン等のビニルベンジル化合物等が挙げられる。この中でも、炭素-炭素二重結合を分子中に2個以上有するものが好ましい。具体的には、トリアルケニルイソシアヌレート化合物、多官能アクリレート化合物、多官能メタクリレート化合物、及び多官能ビニル化合物等が挙げられる。これらを用いると、硬化反応により架橋がより好適に形成されると考えられ、本実施形態に係る樹脂組成物の硬化物の耐熱性や密着性等をより高めることができる。また、架橋型硬化剤は、例示した架橋型硬化剤を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、架橋型硬化剤としては、炭素-炭素不飽和二重結合を分子中に2個以上有する化合物と、炭素-炭素不飽和二重結合を分子中に1個有する化合物とを併用してもよい。炭素-炭素不飽和二重結合を分子中に1個有する化合物としては、具体的には、分子中にビニル基を1個有する化合物(モノビニル化合物)等が挙げられる。
【0089】
前記変性ポリフェニレンエーテル化合物の含有量は、前記変性ポリフェニレンエーテル化合物と前記架橋型硬化剤との合計量に対して、20質量%以上95質量%以下が好ましく、30質量%以上90質量%以下が更に好ましく、50質量以上90質量%以下が更により好ましい。また、前記架橋型硬化剤の含有量が、前記変性ポリフェニレンエーテル化合物と前記架橋型硬化剤との合計量に対して、5~80質量%であることが好ましく、10~70質量%であることがより好ましく、10~50質量%であることがより好ましい。すなわち、前記変性ポリフェニレンエーテル化合物と前記架橋型硬化剤との含有比が、質量比で95:5~20:80であることが好ましく、90:10~30:70であることが更に好ましく、90:10~50:50であることが更により好ましい。前記変性ポリフェニレンエーテル化合物及び前記架橋型硬化剤の各含有量が、上記範囲を満たすような含有量であれば、硬化物のTgや耐熱性及び密着性、低熱膨張率により優れた樹脂組成物になる。このことは、前記変性ポリフェニレンエーテル化合物と前記架橋型硬化剤との硬化反応が好適に進行するためと考えられる。
【0090】
さらに本実施形態の樹脂組成物は成型性にも優れており、また低い熱膨張率を有しているため、基板に適用した際に反りなどを起こすことも少ないという利点を有する。
【0091】
また、本実施形態に係る樹脂組成物は、前記(A)変性ポリフェニレンエーテル化合物と前記(B)架橋型硬化剤とを含むものであれば特に限定はされないが、他の成分をさらに含んでいてもよい。
【0092】
例えば、本実施形態に係る樹脂組成物には、さらに充填材を含有してもよい。充填材としては、樹脂組成物の硬化物の、耐熱性や難燃性を高めるために添加するもの等が挙げられ、特に限定されない。また、充填材を含有させることによって、耐熱性や難燃性等をさらに高めることができる。充填材としては、具体的には、球状シリカ等のシリカ、アルミナ、酸化チタン、及びマイカ等の金属酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、タルク、ホウ酸アルミニウム、硫酸バリウム、及び炭酸カルシウム等が挙げられる。また、充填材としては、この中でも、シリカ、マイカ、及びタルクが好ましく、球状シリカがより好ましい。また、充填材は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、充填材としては、そのまま用いてもよいが、エポキシシランタイプ、ビニルシランタイプ、又はアミノシランタイプのシランカップリング剤で表面処理したものを用いてもよい。このシランカップリング剤としては、充填材に予め表面処理する方法でなく、インテグラルブレンド法で添加して用いてもよい。
【0093】
また、充填材を含有する場合、その含有量は、有機成分(前記(A)成分および前記(B)成分)の合計100質量部に対して、10~200質量部であることが好ましく、30~150質量部であることが好ましい。
【0094】
さらに本実施形態の樹脂組成物には難燃剤が含まれていてもよく、難燃剤としては、例えば、臭素系難燃剤等のハロゲン系難燃剤やリン系難燃剤等が挙げられる。ハロゲン系難燃剤の具体例としては、例えば、ペンタブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールA、ヘキサブロモシクロドデカン等の臭素系難燃剤や、塩素化パラフィン等の塩素系難燃剤等が挙げられる。また、リン系難燃剤の具体例としては、例えば、縮合リン酸エステル、環状リン酸エステル等のリン酸エステル、環状ホスファゼン化合物等のホスファゼン化合物、ジアルキルホスフィン酸アルミニウム塩等のホスフィン酸金属塩等のホスフィン酸塩系難燃剤、リン酸メラミン、及びポリリン酸メラミン等のメラミン系難燃剤、ジフェニルホスフィンオキサイド基を有するホスフィンオキサイド化合物等が挙げられる。難燃剤としては、例示した各難燃剤を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0095】
さらに、本実施形態に係る樹脂組成物には、上記以外にも各種添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、シリコーン系消泡剤及びアクリル酸エステル系消泡剤等の消泡剤、熱安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、染料や顔料、滑剤、湿潤分散剤等の分散剤等が挙げられる。
【0096】
また、本実施形態に係るポリフェニレンエーテル樹脂組成物は、さらに反応開始剤を含有していてもよい。ポリフェニレンエーテル樹脂組成物は、変性ポリフェニレンエーテルと架橋型硬化剤とからなるものであっても、硬化反応は進行し得る。また、変性ポリフェニレンエーテルのみであっても、硬化反応は進行し得る。しかしながら、プロセス条件によっては硬化が進行するまで高温にすることが困難な場合があるので、反応開始剤を添加してもよい。反応開始剤は、変性ポリフェニレンエーテルと架橋型硬化剤との硬化反応を促進することができるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)-3-ヘキシン,過酸化ベンゾイル、3,3’,5,5’-テトラメチル-1,4-ジフェノキノン、クロラニル、2,4,6-トリ-t-ブチルフェノキシル、t-ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、アゾビスイソブチロニトリル等の酸化剤が挙げられる。また、必要に応じて、カルボン酸金属塩等を併用することができる。そうすることによって、硬化反応を一層促進させるができる。これらの中でも、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼンが好ましく用いられる。α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼンは、反応開始温度が比較的に高いため、プリプレグ乾燥時等の硬化する必要がない時点での硬化反応の促進を抑制することができ、ポリフェニレンエーテル樹脂組成物の保存性の低下を抑制することができる。さらに、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼンは、揮発性が低いため、プリプレグ乾燥時や保存時に揮発せず、安定性が良好である。また、反応開始剤は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。含有量としては、好ましくは、(A)末端変性ポリフェニレンエーテル化合物100質量部に対する添加量が0.1~2質量部となるように反応開始剤を用いる。
【0097】
次に、本実施形態のポリフェニレンエーテル樹脂組成物を用いたプリプレグ、金属張積層板、配線板、及び樹脂付き金属箔について説明する。
【0098】
以下で説明に用いる図面中、各符号は以下を表す:1 プリプレグ、2 樹脂組成物又は樹脂組成物の半硬化物、3 繊維質基材、11 金属張積層板、12 絶縁層、13 金属箔、14 配線、21 配線基板、31 樹脂付き金属箔、32、42 樹脂層、41 樹脂付きフィルム、43 支持フィルム。
【0099】
図1は、本発明の実施形態に係るプリプレグ1の一例を示す概略断面図である。
【0100】
本実施形態に係るプリプレグ1は、図1に示すように、前記樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物2と、繊維質基材3とを備える。このプリプレグ1としては、前記樹脂組成物又はその半硬化物2の中に繊維質基材3が存在するものが挙げられる。すなわち、このプリプレグ1は、前記樹脂組成物又はその半硬化物と、前記樹脂組成物又はその半硬化物2の中に存在する繊維質基材3とを備える。
【0101】
なお、本実施形態において、「半硬化物」とは、樹脂組成物を、さらに硬化しうる程度に途中まで硬化された状態のものである。すなわち、半硬化物は、樹脂組成物を半硬化した状態の(Bステージ化された)ものである。例えば、樹脂組成物は、加熱すると、最初、粘度が徐々に低下し、その後、硬化が開始し、粘度が徐々に上昇する。このような場合、半硬化としては、粘度が上昇し始めてから、完全に硬化する前の間の状態等が挙げられる。
【0102】
本実施形態に係る樹脂組成物を用いて得られるプリプレグとしては、上記のような、前記樹脂組成物の半硬化物を備えるものであってもよいし、また、硬化させていない前記樹脂組成物そのものを備えるものであってもよい。すなわち、前記樹脂組成物の半硬化物(Bステージの前記樹脂組成物)と、繊維質基材とを備えるプリプレグであってもよいし、硬化前の前記樹脂組成物(Aステージの前記樹脂組成物)と、繊維質基材とを備えるプリプレグであってもよい。具体的には、例えば、前記樹脂組成物の中に繊維質基材が存在するもの等が挙げられる。なお、樹脂組成物またはその半硬化物は、前記樹脂組成物を乾燥または加熱乾燥したものであってもよい。
【0103】
本実施形態に係る樹脂組成物は、前記プリプレグや、後述のRCC等の樹脂付金属箔や金属張積層板等を製造する際には、ワニス状に調製し、樹脂ワニスとして用いられることが多い。このような樹脂ワニスは、例えば、以下のようにして調製される。
【0104】
まず、変性ポリフェニレンエーテル化合物(A)、架橋型硬化剤(B)、反応開始剤等の有機溶媒に溶解できる各成分を、有機溶媒に投入して溶解させる。この際、必要に応じて加熱してもよい。その後、有機溶媒に溶解しない成分、例えば、無機充填材等を添加して、ボールミル、ビーズミル、プラネタリーミキサー、ロールミル等を用いて、所定の分散状態になるまで分散させることにより、ワニス状の樹脂組成物が調製される。ここで用いられる有機溶媒としては、変性ポリフェニレンエーテル化合物(A)、架橋型硬化剤(B)等を溶解させ、硬化反応を阻害しないものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、トルエン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。これらは単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0105】
本実施形態の樹脂ワニスは、フィルム可撓性や製膜性、及びガラスクロスへの含浸性に優れ、取り扱い易いという利点がある。
【0106】
得られた樹脂ワニス状の樹脂組成物を用いて本実施形態のプリプレグ1を製造する方法としては、例えば、得られた樹脂ワニス状の樹脂組成物2を繊維質基材3に含浸させた後、乾燥する方法が挙げられる。
【0107】
プリプレグを製造する際に用いられる繊維質基材としては、具体的には、例えば、ガラスクロス、アラミドクロス、ポリエステルクロス、LCP(液晶ポリマー)不織布、ガラス不織布、アラミド不織布、ポリエステル不織布、パルプ紙、及びリンター紙等が挙げられる。なお、ガラスクロスを用いると、機械強度が優れた積層板が得られ、特に偏平処理加工したガラスクロスが好ましい。本実施形態で使用するガラスクロスとしては特に限定はされないが、例えば、Eガラス、Sガラス、NEガラス、Lガラス、Qガラスなどの低誘電率ガラスクロス等が挙げられる。偏平処理加工としては、具体的には、例えば、ガラスクロスを適宜の圧力でプレスロールにて連続的に加圧してヤーンを偏平に圧縮することにより行うことができる。なお、繊維質基材の厚みとしては、例えば、0.01~0.3mmのものを一般的に使用できる。
【0108】
樹脂ワニス(樹脂組成物2)の繊維質基材3への含浸は、浸漬及び塗布等によって行われる。この含浸は、必要に応じて複数回繰り返すことも可能である。また、この際、組成や濃度の異なる複数の樹脂ワニスを用いて含浸を繰り返し、最終的に希望とする組成(含有比)及び樹脂量に調整することも可能である。
【0109】
樹脂ワニス(樹脂組成物2)が含浸された繊維質基材3を、所望の加熱条件、例えば、80℃以上、180℃以下で1分間以上、10分間以下で加熱する。加熱によって、ワニスから溶媒を揮発させ、溶媒を減少又は除去させて硬化前(Aステージ)又は半硬化状態(Bステージ)のプリプレグ1が得られる。
【0110】
また、図4に示すように、本実施形態の樹脂付金属箔31は、上述した樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物を含む樹脂層32と金属箔13とが積層されている構成を有する。すなわち、本実施形態の樹脂付金属箔は、硬化前の前記樹脂組成物(Aステージの前記樹脂組成物)を含む樹脂層と、金属箔とを備える樹脂付金属箔であってもよいし、前記樹脂組成物の半硬化物(Bステージの前記樹脂組成物)を含む樹脂層と、金属箔とを備える樹脂付金属箔であってもであってもよい。そのような樹脂付金属箔31を製造する方法としては、例えば、上述したような樹脂ワニス状の樹脂組成物を銅箔などの金属箔13の表面に塗布した後、乾燥する方法が挙げられる。前記塗布方法としては、バーコーター、コンマコーターやダイコーター、ロールコーター、グラビアコータ等が挙げられる。前記金属箔13としては、金属張積層板や配線基板等で使用される金属箔を限定なく用いることができ、例えば、銅箔及びアルミニウム箔等が挙げられる。
【0111】
また、図5に示すように、本実施形態の樹脂付フィルム41は、上述した樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物を含む樹脂層42とフィルム支持基材43とが積層されている構成を有する。すなわち、本実施形態の樹脂付フィルムは、硬化前の前記樹脂組成物(Aステージの前記樹脂組成物)と、フィルム支持基材とを備える樹脂付フィルムであってもよいし、前記樹脂組成物の半硬化物(Bステージの前記樹脂組成物)と、フィルム支持基材とを備える樹脂付フィルムであってもであってもよい。そのような樹脂フィルム41を製造する方法としては、例えば、上述したような樹脂ワニス状の樹脂組成物をフィルム支持基材43表面に塗布した後、ワニスから溶媒を揮発させて、溶媒を減少させる、又は溶媒を除去させることにより、硬化前(Aステージ)又は半硬化状態(Bステージ)の樹脂付フィルムを得ることができる。
【0112】
前記フィルム支持基材としては、ポリイミドフィルム、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、ポリエステルフィルム、ポリパラバン酸フィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム、アラミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアリレートフィルム等の電気絶縁性フィルム等が挙げられる。
【0113】
なお、本実施形態の樹脂付フィルム及び樹脂付金属箔においても、上述したプリプレグと同様、樹脂組成物またはその半硬化物は、前記樹脂組成物を乾燥または加熱乾燥したものであってもよい。
【0114】
前記金属箔13としては、金属張積層板や配線基板等で使用される金属箔を限定なく用いることができ、例えば、銅箔及びアルミニウム箔等が挙げられる。
【0115】
上記金属箔13やフィルム支持基材43の厚み等は、所望の目的に応じて、適宜設定することができる。例えば、金属箔13としては、0.2~70μm程度のものを使用できる。金属箔の厚さが例えば10μm以下となる場合などは、ハンドリング性向上のために剥離層及びキャリアを備えたキャリア付銅箔であってもよい。樹脂ワニスの金属箔13やフィルム支持基材43への適用は、塗布等によって行われるが、それは必要に応じて複数回繰り返すことも可能である。また、この際、組成や濃度の異なる複数の樹脂ワニスを用いて塗布を繰り返し、最終的に希望とする組成(含有比)及び樹脂量に調整することも可能である。
【0116】
樹脂付金属箔31や樹脂フィルム41の製造方法における乾燥もしくは加熱乾燥条件について、特に限定はされないが、樹脂ワニス状の樹脂組成物を上記金属箔13やフィルム支持基材43に塗布した後、所望の加熱条件、例えば、80~170℃で1~10分間程度加熱して、ワニスから溶媒を揮発させて、溶媒を減少又は除去させることにより、硬化前(Aステージ)又は半硬化状態(Bステージ)の樹脂付金属箔31や樹脂フィルム41が得られる。
【0117】
樹脂付金属箔31や樹脂フィルム41は、必要に応じて、カバーフィルム等を備えてもよい。カバーフィルムを備えることにより異物の混入等を防ぐことができる。カバーフィルムとしては樹脂組成物の形態を損なうことなく剥離することができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ポリオレフィンフィルム、ポリエステルフィルム、TPXフィルム、またこれらのフィルムに離型剤層を設けて形成されたフィルム、さらにはこれらのフィルムを紙基材上にラミネートした紙等を用いることができる。
【0118】
図2に示すように、本実施形態の金属張積層板11は、上述の樹脂組成物の硬化物または上述のプリプレグの硬化物を含む絶縁層12と、金属箔13とを有することを特徴とする。なお、金属張積層板11で使用する金属箔13としては、上述した金属箔13と同様ものを使用することができる。
【0119】
また、本実施形態の金属張積層板13は、上述の樹脂付金属箔31や樹脂フィルム41を用いて作成することもできる。
【0120】
上記のようにして得られたプリプレグ1、樹脂付金属箔31や樹脂フィルム41を用いて金属張積層板を作製する方法としては、プリプレグ1、樹脂付金属箔31や樹脂フィルム41を一枚または複数枚重ね、さらにその上下の両面又は片面に銅箔等の金属箔13を重ね、これを加熱加圧成形して積層一体化することによって、両面金属箔張り又は片面金属箔張りの積層体を作製することができるものである。加熱加圧条件は、製造する積層板の厚みや樹脂組成物の種類等により適宜設定することができるが、例えば、温度を170~220℃、圧力を1.5~5.0MPa、時間を60~150分間とすることができる。
【0121】
また、金属張積層板11は、プリプレグ1等を用いずに、フィルム状の樹脂組成物を金属箔13の上に形成し、加熱加圧することにより作製されてもよい。
【0122】
そして、図3に示すように、本実施形態の配線基板21は、上述の樹脂組成物の硬化物又は上述のプリプレグの硬化物を含む絶縁層12と、配線14とを有する。
【0123】
そのような配線基板21の製造方法としては、例えば、上記で得られた金属張積層体13の表面の金属箔13をエッチング加工等して回路(配線)形成をすることによって、積層体の表面に回路として導体パターン(配線14)を設けた配線基板21を得ることができる。回路形成する方法としては、上記記載の方法以外に、例えば、セミアディティブ法(SAP:Semi Additive Process)やモディファイドセミアディティブ法(MSAP:Modified Semi Additive Process)による回路形成等が挙げられる。
【0124】
本実施形態の樹脂組成物を用いて得られるプリプレグ、樹脂付きフィルム、樹脂付き金属箔は、低誘電特性に加えて、高い耐熱性、高Tg及び密着性を兼ね備えているため、産業利用上、非常に有用である。また、低い熱膨張率を有しているため、反りなどを起こすことも少なく、成形性にも優れている。また、それらを硬化させた金属張積層板及び配線基板は、高耐熱性、高Tg、高密着性及び低反り性を備える。
【0125】
本明細書は、上述したように様々な態様の技術を開示しているが、そのうち主な技術を以下に纏める。
【0126】
本発明の一態様に係るポリフェニレンエーテル樹脂組成物は、(A)炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基により末端変性された変性ポリフェニレンエーテル化合物と、(B)炭素-炭素不飽和二重結合を分子中に2個以上有する架橋型硬化剤とを含有するポリフェニレンエーテル樹脂組成物であって、前記(A)変性ポリフェニレンエーテル化合物は、下記式(1)で示される(A-1)変性ポリフェニレンエーテル化合物と、下記式(2)で示される(A-2)変性ポリフェニレンエーテル化合物とを含むことを特徴とする。
【0127】
【化18】
【0128】
【化19】
【0129】
(式(1)および(2)中、R~R並びにR~R16は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ホルミル基、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、又はアルキニルカルボニル基を示す。Yは炭素数20以下の直鎖状、分岐状もしくは環状の炭化水素を示す。XおよびXは、同じであっても異なっていてもよく、炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基を示す。
【0130】
また、AおよびBはそれぞれ下記式(3)及び(4)で示される構造である:
【0131】
【化20】
【0132】
【化21】
【0133】
式(3)および(4)中、mおよびnはそれぞれ0~20の整数を示す。R17~R20並びにR21~R24は、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基を示す。)
【0134】
このような構成により、低誘電特性に加えて、高い耐熱性、高Tg及び密着性を兼ね備え、さらに低い熱膨張率を有する樹脂組成物を提供することができる。
【0135】
また、上記ポリフェニレンエーテル樹脂組成物では、前記式(2)において、Yが下記式(5)で示される基であることが好ましい。
【0136】
【化22】
【0137】
(前記式(5)中、R25及びR26は、それぞれ独立して、水素原子またはアルキル基を示す。)
【0138】
それにより、上述したような効果をより確実に得ることができると考えられる。
【0139】
さらに、上記ポリフェニレンエーテル樹脂組成物では、前記式(1)及び式(2)において、XおよびXが下記式(6)又は式(7)で示される置換基であることが好ましい。
【0140】
【化23】
【0141】
(式(6)中、aは0~10の整数を示す。また、Zはアリーレン基を示す。また、R27~R29はそれぞれ独立して水素原子またはアルキル基を示す。)
【0142】
【化24】
【0143】
(式(7)中、R30は水素原子またはアルキル基を示す。)
【0144】
それにより、低誘電特性に加えて、高Tgであり、耐熱性や密着力に優れる樹脂組成物をより確実に提供することができると考えられる。
【0145】
さらに、上記ポリフェニレンエーテル樹脂組成物において、前記(B)架橋型硬化剤が、トリアルケニルイソシアヌレート化合物、分子中にアクリル基を2個以上有する多官能アクリレート化合物、分子中にメタクリル基を2個以上有する多官能メタクリレート化合物、及び、分子中にビニル基を2個以上有する多官能ビニル化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。それにより、耐熱性やTg及び密着性をより高めることができると考えられる。
【0146】
また、上記ポリフェニレンエーテル樹脂組成物において、前記(A)変性ポリフェニレンエーテル化合物と前記(B)架橋型硬化剤の合計量に対して、前記(A-1)変性ポリフェニレンエーテル化合物及び前記(A-2)変性ポリフェニレンエーテル化合物が、20~95質量%の含有量で含まれていることが好ましい。それにより、上述したような効果をより確実に得ることができると考えられる。
【0147】
さらに、前記(A)変性ポリフェニレンエーテル化合物において、前記(A-1)変性ポリフェニレンエーテル化合物と前記(A-2)変性ポリフェニレンエーテル化合物の含有比が、質量比で(A-1):(A-2)=5:95~95:5であることが好ましい。それにより、上述したような効果をより確実に得ることができると考えられる。
【0148】
本発明のさらなる他の一態様に係るプリプレグは、上述の樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物と繊維質基材とを有することを特徴とする。
【0149】
本発明のさらなる他の一態様に係る樹脂付きフィルムは、上述の樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物を含む樹脂層と支持フィルムとを有することを特徴とする。
【0150】
本発明のさらなる他の一態様に係る樹脂付き金属箔は、上述の樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物を含む樹脂層と金属箔とを有することを特徴とする。
【0151】
本発明のさらなる他の一態様に係る金属張積層板は、上述の樹脂組成物の硬化物又は上述のプリプレグの硬化物を含む絶縁層と、金属箔とを有することを特徴とする。
【0152】
また、本発明のさらなる他の一態様に係る配線基板は、上述の樹脂組成物の硬化物又は上述のプリプレグの硬化物を含む絶縁層と、配線とを有することを特徴とする。
【0153】
上述のような構成によれば、低誘電特性と高Tgと高耐熱性を有し、密着性に優れ、得られる基板の反りが抑制できる樹脂付金属箔、金属張積層板、配線基板等を得ることができる。
【0154】
以下に、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【実施例
【0155】
まず、本実施例において、樹脂組成物を調製する際に用いる成分について説明する。
【0156】
<A成分:ポリフェニレンエーテル>
(A-1)
・OPE-2St 1200:末端ビニルベンジル変性PPE(Mw:約1600、三菱瓦斯化学株式会社製)、上記式(9)で表される変性ポリフェニレンエーテル化合物である。
【0157】
・OPE-2St 2200:末端ビニルベンジル変性PPE(Mw:約3600、三菱瓦斯化学株式会社製)、上記式(9)で表される変性ポリフェニレンエーテル化合物である。
【0158】
(A-2)
・変性PPE-1:2官能ビニルベンジル変性PPE(Mw:1900)
【0159】
まず、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE-1)を合成した。なお、ポリフェニレンエーテル1分子当たりの、分子末端のフェノール性水酸基の平均個数を、末端水酸基数と示す。
【0160】
ポリフェニレンエーテルと、クロロメチルスチレンとを反応させて変性ポリフェニレンエーテル1(変性PPE―1)を得た。具体的には、まず、温度調節器、攪拌装置、冷却設備、及び滴下ロートを備えた1リットルの3つ口フラスコに、ポリフェニレンエーテル(SABICイノベーティブプラスチックス社製のSA90、固有粘度(IV)0.083dl/g、末端水酸基数1.9個、重量分子量Mw1700)200g、p-クロロメチルスチレンとm-クロロメチルスチレンとの質量比が50:50の混合物(東京化成工業株式会社製のクロロメチルスチレン:CMS)30g、相間移動触媒として、テトラ-n-ブチルアンモニウムブロマイド1.227g、及びトルエン400gを仕込み、攪拌した。そして、ポリフェニレンエーテル、クロロメチルスチレン、及びテトラ-n-ブチルアンモニウムブロマイドが、トルエンに溶解するまで攪拌した。その際、徐々に加熱し、最終的に液温が75℃になるまで加熱した。そして、その溶液に、アルカリ金属水酸化物として、水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム20g/水20g)を20分間かけて、滴下した。その後、さらに、75℃で4時間攪拌した。次に、10質量%の塩酸でフラスコの内容物を中和した後、多量のメタノールを投入した。そうすることによって、フラスコ内の液体に沈殿物を生じさせた。すなわち、フラスコ内の反応液に含まれる生成物を再沈させた。そして、この沈殿物をろ過によって取り出し、メタノールと水との質量比が80:20の混合液で3回洗浄した後、減圧下、80℃で3時間乾燥させた。
【0161】
得られた固体を、H-NMR(400MHz、CDCl3、TMS)で分析した。NMRを測定した結果、5~7ppmにエテニルベンジルに由来するピークが確認された。これにより、得られた固体が、分子末端において、エテニルベンジル化されたポリフェニレンエーテルであることが確認できた。
【0162】
また、変性ポリフェニレンエーテルの分子量分布を、GPCを用いて、測定した。そして、その得られた分子量分布から、重量平均分子量(Mw)を算出した結果、Mwは、1900であった。
【0163】
また、変性ポリフェニレンエーテルの末端官能数を、以下のようにして測定した。
【0164】
まず、変性ポリフェニレンエーテルを正確に秤量した。その際の重量を、X(mg)とする。そして、この秤量した変性ポリフェニレンエーテルを、25mLの塩化メチレンに溶解させ、その溶液に、10質量%のテトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)のエタノール溶液(TEAH:エタノール(体積比)=15:85)を100μL添加した後、UV分光光度計(株式会社島津製作所製のUV-1600)を用いて、318nmの吸光度(Abs)を測定した。そして、その測定結果から、下記式を用いて、変性ポリフェニレンエーテルの末端水酸基数を算出した。
【0165】
残存OH量(μmol/g)=[(25×Abs)/(ε×OPL×X)]×106
ここで、εは、吸光係数を示し、4700L/mol・cmである。また、OPLは、セル光路長であり、1cmである。
【0166】
そして、その算出された変性ポリフェニレンエーテルの残存OH量(末端水酸基数)は、ほぼゼロであることから、変性前のポリフェニレンエーテルの水酸基が、ほぼ変性されていることがわかった。このことから、変性前のポリフェニレンエーテルの末端水酸基数からの減少分は、変性前のポリフェニレンエーテルの末端水酸基数であることがわかった。すなわち、変性前のポリフェニレンエーテルの末端水酸基数が、変性ポリフェニレンエーテルの末端官能基数であることがわかった。つまり、末端官能数が、1.8個であった。
【0167】
得られた変性ポリフェニレンエーテルは、上記式(10)で表される変性ポリフェニレンエーテル化合物である。
【0168】
・SA-9000:2官能メタクリレート変性PPE(Mw:1700、SABIC社製)、上記式(11)で表される変性ポリフェニレンエーテル化合物である。
【0169】
(熱可塑性エラストマー)
・TR2003:スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(Mw:10万、JSR株式会社製)
・BI-3000:水素化ポリブタジエン(Mn:3300、日本曹達株式会社製)
【0170】
<B成分:架橋型硬化剤>
・DCP:ジシクロペンタジエン型メタクリレート(新中村化学工業株式会社製、分子量332、末端二重結合数2個)
・DVB810:ジビニルベンゼン(新日鐵住金株式会社製、分子量130、末端二重結合数2個
・B-1000:ポリブタジエンオリゴマー(日本曹達株式会社製、重量平均分子量Mw1100、末端二重結合数15個)
・FA-513M:ジシクロペンタニルメタクリレート(日立化成株式会社製、分子量220、末端二重結合数1個)
【0171】
<その他の成分>
(反応開始剤)
・パーブチルP:1,3-ビス(ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(日本油脂株式会社製)
(無機充填材)
・SC2500-SXJ:フェニルアミノシラン表面処理球状シリカ(株式会社アドマテックス製)
【0172】
<実施例1~20、比較例1~8>
[調製方法]
(樹脂ワニス)
まず、各成分を表1および2に記載の配合割合で、固形分濃度が60質量%となるように、トルエンに添加し、混合させた。その混合物を、60分間攪拌することによって、ワニス状の樹脂組成物(ワニス)が得られた。
【0173】
(プリプレグ)
各実施例および比較例の樹脂ワニスをガラスクロス(旭化成株式会社製、♯2116タイプ、Eガラス)に含浸させた後、100~170℃で約3~6分間加熱乾燥することによりプリプレグを得た。その際、プリプレグの重量に対する樹脂組成物の含有量(レジンコンテント)が約45質量%となるように調整した。
【0174】
(銅張積層板)
上記のプリプレグ1枚を、その両側に厚さ12μmの銅箔(古河電気工業株式会社製GT-MP)を配置して被圧体とし、真空条件下、温度200℃、圧力40kgf/cmの条件で120分加熱・加圧して両面に銅箔が接着された、厚み0.1mmの銅張積層板-Iを得た。また、上記プリプレグ8枚を重ね、同様の方法で厚み0.8mmの銅張積層板-IIを得た。
【0175】
<評価試験>
(ガラス転移温度(Tg))
上記銅張積層板-Iの外層銅箔を全面エッチングし、得られたサンプルについて、セイコーインスツルメンツ株式会社製の粘弾性スペクトロメータ「DMS100」を用いて、Tgを測定した。このとき、引張モジュールで周波数を10Hzとして動的粘弾性測定(DMA)を行い、昇温速度5℃/分の条件で室温から280℃まで昇温した際のtanδが極大を示す温度をTgとした。
【0176】
(オーブン耐熱性)
JIS C 6481(1996)の規格に準じて耐熱性を評価した。所定の大きさに切り出した上記銅張積層板-Iを280℃および290℃に設定した恒温槽に1時間放置した後、取り出した。そして熱処理された試験片を目視で観察し、290℃でフクレが発生しなかったときを◎、290℃でフクレが発生し280℃でフクレが発生しなかったときを○、280℃フクレが発生したときを×として評価した。
【0177】
(熱膨張係数(CTE))
上記の銅箔積層板-IIの銅箔を除去したものを試験片とし、樹脂硬化物のガラス転移温度未満の温度における、Z軸方向の熱膨張係数を、JIS C 6481に従ってTMA法(Thermo-mechanical analysis)により測定した。測定には、TMA装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製「TMA6000」)を用い、30~300℃の範囲で測定した。測定単位はppm/℃である。
【0178】
(銅箔接着力)
銅箔張積層板-Iにおいて、絶縁層からの銅箔の引き剥がし強さをJIS C 6481に準拠して測定した。幅10mm、長さ100mmのパターンを形成し、引っ張り試験機により50mm/分の速度で引き剥がし、その時の引き剥がし強さ(ピール強度)を測定し、得られたピール強度を、銅箔密着強度とした。測定単位はkN/mである。
【0179】
(誘電特性:誘電正接(Df))
上記銅張積層板-IIから銅箔を除去した積層板を評価基板として用い、誘電正接(Df)を空洞共振器摂動法で測定した。具体的には、ネットワーク・アナライザ(アジレント・テクノロジー株式会社製のN5230A)を用い、10GHzにおける評価基板の誘電正接を測定した。
【0180】
以上の結果を表1~表3に示す。
【0181】
【表1】
【0182】
【表2】
【0183】
【表3】
【0184】
(考察)
表1~3に示す結果から明らかなように、本発明により、低誘電特性に加えて、高い耐熱性、高Tg(220℃以上)及び優れた密着性(ピール0.5kN/m以上)を兼ね備えたポリフェニレンエーテル樹脂組成物を提供できることが示された。さらにいずれの実施例においても、熱膨張率(CTE)は40℃/ppm以下と低めであった。
【0185】
特に、前記(A)成分と前記(B)成分の割合を所定の範囲に調整するか、あるいは、前記(A)成分中における(A-1)変性ポリフェニレンエーテル化合物と(A-2)変性ポリフェニレンエーテル化合物との混合比を所定の範囲の割合にすれば、より確実に優れた樹脂組成物が得られることもわかった。
【0186】
それに対し、本発明の(B)成分である架橋型硬化剤を含んでいない比較例1では、Tgが低くなり、耐熱性が得られず、かつCTEが高くなるという結果になった。また、本発明の(A-2)成分を含んでいない比較例2では密着性に劣り、(A-1)成分を含んでいない比較例3ではTgが下がる結果となった。
【0187】
また(A-1)成分の代替として熱可塑性エラストマーを含有している比較例4~5、並びに(A-2)成分の代替として熱可塑性エラストマーを含有している比較例6~7では、Tg、耐熱性及びCTEのいずれにおいても劣る結果となった。
【0188】
さらに、本発明の(B)成分である架橋型硬化剤の代わりに単官能の架橋型硬化剤を含有する比較例8では、TgとCTEが劣る結果となった。
【0189】
この出願は、2017年12月28日に出願された日本国特許出願特願2017-254635を基礎とするものであり、その内容は、本願に含まれるものである。
【0190】
本発明を表現するために、前述において具体例等を参照しながら実施形態を通して本発明を適切かつ十分に説明したが、当業者であれば前述の実施形態を変更及び/又は改良することは容易になし得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態又は改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態又は当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【産業上の利用可能性】
【0191】
本発明は、電子材料やそれを用いた各種デバイスに関する技術分野において、広範な産業上の利用可能性を有する。
図1
図2
図3
図4
図5